弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     被告人Aに関する原判決を破棄する。
     被告人Aに関する本件公訴事実中原判決判示第一の物価統制令違反の点
につき同被告人を免訴する。
     被告人Aを懲役弐年に処する。
     押収にかかる偽造公文書一通(証第八号)を没収する。
     原審における訴訟費用中証人B、C、D、Eに支給した部分は被告人A
及び被告人Fの負担とする。
     被告人Fの本件上告を棄却する。
         理    由
 被告人Aの弁護人杉村逸楼の上告趣意第一点並びに被告人Fの弁護人小玉治行、
同丹波景政の上告趣意について
 被告人Aに関する原判決判示第三事実並びに被告人Fに関する原判決判示事実に
よれば、被告人等の偽造にかかる所論文書は、大分県議会事務局印が押捺され、県
議局第一〇四号という番号が附けてある同事務局作成名義の九二式電纜解体工事委
託書と題するA宛の書面であつて、その内容は大分県警察部通信用資材として電纜
百五十噸を貴下推薦の株式会社G鉄工所に解体工事依託方を指定する旨記載されて
いるものである。
 しかるに偽造文書が一般人をして公務所または公務員の職務権限内において作成
せられたものと信ぜしめるに足る形式外観を具えている以上は、その作成名義者た
る公務所または公務員にその権限がない場合においても、刑法一五五条の偽造公文
書というを妨げないものであることは、累次の大審院判例の示すところであつて(
昭和八年(れ)四四号、同年三月三一日判決、昭和八年(れ)一〇三八号、同年一
〇月二日判決、昭和一一年(れ)一一六二号、同年九月一一日判決、昭和一六年(
れ)三八八号、同年五月二〇日判決、昭和一八年(れ)一〇六三号、同一九年二月
二二日判決)、当裁判所においても右の見解を変更するの要を認めない。そこで右
文書について按ずるに、右文書の内容事項につきその作成名義者たる大分県議会事
務局の権限の有無に関しては、原判決に判示されていないところであるが、仮に所
論のごとく同事務局にかかる文書を作成する権限が全くないことが事実であつたと
しても、右文書自体は大分県議会事務局名義で作成されていて一般人をして同事務
局がその権限内において作成したものと信ぜしめるに足る形式外観を具えているこ
とは否定し得ないところであるから、原判決が右文書の偽造を大分県議会事務局名
義の公文書を偽造したものとして刑法一五五条の公文書偽造罪に問擬したことは少
しも違法ではない。杉村弁護人の所論は右見解と全く相容れない主張をなすもので
あつて、これを採用することはできない。また小玉弁護人等の所論引用にかかる大
審院判例の見解はその後の大審院判例によつて、自ら変更されたものというべきで
あるから、右判例違反の主張はあたらない。
 ついで職権により調査するに、被告人Aに関する本件公訴事実中原判決判示第一
の物価統制令違反の点については、原判決言渡後昭和二七年政令一一七号大赦令一
条八七号により赦免せられたものであるから、刑訴施行法二条、三条の二、刑訴四
一一条五号、旧刑訴四四八条、四五五条、三六三条三号により、同被告人に関する
原判決を破棄し、同被告人に対し右公訴事実につき免訴の言渡をなすべく、なお右
原判決において右公訴事実と併合罪の関係にあるものとして処断したその他の犯罪
事実につき更に刑を定める。
 右原判決が認定した判示第二及び第三の事実(並びに前科の事実)につき法律を
適用するに、判示第二の詐欺の点は刑法二四六条一項に、判示第三の公文書偽造の
点は同法一五五条一項、六〇条に、偽造公文書行使の点は同法一五八条一項、一五
五条一項、六〇条に詐欺の点は同法二四六条一項に各該当し、判示第三の公文書偽
造、行使、詐欺の間には順次手段結果の関係があるので、同法五四条一項後段、一
〇条により最も刑並びに犯情の重い偽造公文書行使罪の刑に従い、なお同被告人に
は判示前科があるので同法五六条五七条を適用して右各罪の刑にそれぞれ累犯の加
重をなし、以上は同法四五条前段の併合罪であるから同法四七条本文、一〇条、一
四条により重い偽造公文書行使罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内において、同
被告人を懲役二年に処すべきものとし、押収にかかる偽造公文書一通(証第八号)
は判示第三の偽造公文書行使罪の組成物件で何人の所有をも許さないものであるか
ら同法一九条一項一号二項により没収すべく、訴訟費用については刑訴施行法二条
旧刑訴二三七条一項により主文第五項記載のとおり負担を定める。(杉村弁護人の
上告趣意第二点については、所論は被告人Aに対する原判決の量刑に関するもので
あつて、同被告人に対し前示のごとく処断すべきものとする以上論旨に対する判断
を示す必要がない。)
 被告人Fの本件上告は前示のごとく理由がないのみならず記録を調べても本件に
つき刑訴四一一条を適用すべきものとは認められないから、刑訴施行法二条旧刑訴
四四六条により、その上告を棄却する。
 よつて主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官谷村唯一郎の杉村弁護人の上告趣意第一点、小玉弁護人等の上
告趣意について反対意見がある外、裁判官全員一致の意見によるものである。
 谷村裁判官の反対意見は次のとおりである。
 原判決は、判示の文書偽造の事実につき、公文書偽造罪の成立を認定しているの
であるが、その対象である文書の作成名義は大分県議会事務局で、標目は「九二式
電纜解体工事委託書」と題する文書である、そして右事務局がかゝる文書を作成す
る職務権限を有するや否やの点については、原判決は何等判示するところはないが、
地方自治法に拠れば、県議会は議決機関であり、議会事務局は議長の命を受け議会
の庶務を掌理する機関であるから、執行機関の職務に属する工事の委託契約をする
ような権限のないことは明らかである、(原審挙示の証拠によるも同様に権限のな
い事が窺はれる)従つて本件のように公文書の名義者である公務所それ自体が法制
上(従つて内規又は慣習上)権限を有しないことが明白であるばかりでなく、更に
その機関の性格から見て、県議会並びに議会事務局が県の執行事務を行う所でなく
従つてかゝる権限のないことは常識ある一般人の知り得るところであるから(恰も
衆議院事務局名義で政府の職務に属する工事委託の契約書を作成したような場合と
同一である)かゝる偽造文書は公文書の公信力を害するものとは言い難い、よつて
単に本件詐欺の手段として見るに止めるべく、従来の判例で認めている刑法一五五
条の公文書と解し得る文書の範囲を本件のごとき場合にまで拡張してこれを公文書
と認めることは相当でない、従つてこの点に関する弁護人の論旨は理由があるから、
被告人両名の公文書偽造同行使については無罪とし爾余の行為につき夫々相当法条
を適用して判決を為すべきである。
 検察官 浜田龍信関与
  昭和二八年二月二〇日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

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