弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人A弁護人三木今二の上告趣意第一点について。
 論旨は憲法三一条違反を主張するのであるが、その実質は単なる訴訟法違反の主
張に帰し、刑訴四〇五条に定める上告の理由にあたらない。そして被告人Aの犯罪
事実たる第一審判決の判示第六の事実はこれをその挙示する各証拠に照し合せて見
ると論旨第二点に摘示する(一)乃至(五)の各証拠で認定されたものであること
が明らかであるから、原判決には所論の違法はない(昭和二五年(あ)一〇六八号
同年九月一九日第三小法廷判決、判例集四巻九号一六九六頁以下参照)。されば刑
訴四一一条を適用すべきものとも認められない。
 同第二点について。
 共同審理を受けていない共犯者の供述はただ共犯者たるの一事を以て完全なる証
拠能力を欠くものということはできないし、共同審理を受けた共同被告人の供述と
被告人の供述とは互に補強するに足る証拠能力を有することは、昭和二三年(れ)
七七号同二四年五月一八日大法廷判決(判例集三巻六号七三四頁以下)の示すとお
りであるから、所論謝獻允の供述記載は被告人の供述を補強する完全な証拠能力を
有するものといわなければならぬ。されば、原判決は被告人の自白を唯一の証拠と
して有罪としたものではないから、所論憲法三八条三項(論旨に八三条三項とある
は誤記と認む)に違反すとの主張はその前提を欠きとるをえないので、論旨は刑訴
四〇五条に定める上告の理由にあたらないし、また同四一一条を適用すべきものと
も認められない。
 被告人B、同Cの弁護人野呂清一の各上告趣意について。
 論旨はいずれも単なる訴訟法違反の主張に帰し、刑訴四〇五条に定める上告の理
由にあたらない。そして仮りに所論に主張するような事実があるとしても、そのこ
とのために、所論の各聴取書及び各始末書が不当に強制の下に作成されたものとい
うことはできないし、他にこれを肯定するに足る事跡を記録上発見することができ
ないから、所論の各聴取書、各始末書に証拠能力なしとする論旨はとるをえない。
また、共同被告人の供述は、これを裏付ける他の証拠がなくとも、被告人の自白を
補強する証拠能力を完全に有するものであることは、三木弁護人の上告趣意第二点
について説明したとおりであるから、原判決は被告人の自白を唯一の証拠として被
告人を有罪としたものではない。されば本件には刑訴四一一条を適刑すベきものと
も認められない。
 よつて刑訴施行法三条の二、刑訴四〇八条に従い裁判官全員一致の意見で主文の
とおり判決する。
  昭和二六年一二月六日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    岩   松   三   郎

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