弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
一 被申立人が平成二年一〇月一九日付けでAに対してなした別紙一の目録記載の
文書を公開するとの決定の効力は、当庁平成二年(行ウ)第九号事件の判決確定に
至るまで停止する。
二 申立費用は被申立人の負担とする。
第一 当事者の主張
申立人の申立の趣旨及び理由の要旨は、別紙二の申立人の執行停止申立書写しに記
載のとおりであり、これに対する被申立人の意見は、別紙三の被申立人の意見書写
しに記載のとおりである。
第二 当裁判所の判断
一 本件処分の経緯
本件記録によると次の事実が一応認められる。
1 宇都宮市と申立人とは、宇都宮市と栃木県の実施する大学誘致政策に基づき、
昭和六一年二月ころ、申立人がその理工学部を宇都宮市に設置するにつき、基本的
合意を交わし、同年三月、宇都宮市が申立人にその建設費について応分の援助をす
る等を内容とする基本協定を締結した。
2 申立人は、同年五月、宇都宮市との右話合いの経過にかんがみ、栃木県に対
し、帝京大学理工学部設置に関する補助金交付の要望をした。
3 栃木県は、帝京大学理工学部設置に係る建設費補助として一〇億円を交付する
こととし、右債務負担行為は、昭和六二年七月、栃木県議会定例本会議において、
帝京大学理工学部施設整備費補助金として限度額一〇億円とすることで可決され
た。
4 栃木県は、栃木県補助金等交付規則及び私立大学施設整備費補助金交付要領に
基づき、申立人が右補助金の交付を受けようとするときは補助金交付申請書に次の
書類を添付しなければならないと定めた。
(一) 理由書
(二) 事業計画書
(三) 大学の概要及び教職員組織表
(四) 学則
(五) 現年度予算書
(六) 前年度収支計算書
(七) 貸借対照表
(八) 財産目録
(九) その他知事が必要と認める書類
5 申立人は、平成元年三月一四日付けで、被申立人に対して、右4の(一)ない
し(八)の書類、詔可証写、契約書写、工程表の書類を添付したうえ、前記建設費
補助金のうち昭和六三年度分四億円の交付申請をしたところ、同年三月二〇日付け
で、栃木県から四億円を交付する旨の決定がされ、その通知を受けた。
6 A(以下「A」という。)は、平成元年三月三一日、被申立人に対し、栃木県
公文書の開示に関する条例(以下「本件条例」という。)に基づき、申立人が提出
した前記補助金交付申請書及び添付書類について、公文書開示請求をした。
7 被申立人は、同年四月一三日付けで、補助金交付申請書、理由書、大学の概要
及び教職員組織表、学則、認可証写及び工程表については開示、事業計画書につい
ては部分開示、現年度予算書、前年度収支計算書、貸借対照表、財産目録及び契約
書写については非開示とする旨の決定(以下「本件原処分一という。)をし、同月
一四日、開示することとした文書について、Aに開示した。
8 Aは、同年四月二七日付けで、本件原処分に対して、現年度予算書、前年度収
支計算書、貸借対照表、財産目録の非開示決定の取消を求める旨の異議申立をし
た。
9 被申立人は、右異議申立を受け、同年五月一日付けで、栃木県公文書開示審査
会に対し諮問をし、同審査会は、平成二年九月七日、現年度予算書のうち資金収支
予算書及び消費収支予算書、前年度収支計算書のうち資金収支計算書及び消費収支
計算書並びに貸借対照表のうち各大科目部分については開示すべきものとの答申を
した。
10 被申立人は、右答申を踏まえて、平成二年一〇月一九日、本件原処分を「前
年度収支計算書、貸借対照表については部分開示とする。」と変更する旨の決定
(以下「本件処分」という。)をし、別紙目録記載の文書(以下「本件文書」とい
う。)を平成二年一一月六日に開示することとした。
二 本案の理由について
本件条例は、法人その他の団体に関する情報であって、公開することにより、当該
法人等に不利益を与えることが明らかであると認められる情報が記録されている文
書については、開示をしないことができる旨規定しており(六条二号)、申立人は
本件文書の開示は右規定により許されない旨主張している。他方、本件記録による
と、帝京大学も加入している日本私立大学団体連合会は平成元年七月に倫理綱領及
び指針を定めたが、右倫理綱領においては、学校法人の資産の公共財産的性格が述
べられ、右指針においては、学校法人の経理の開示については、学園関係者に資金
収支計算書、消費収支計算書、貸借対照表を大科目を中心とするなどの方法で行う
ものとされていることが一応認められ、被申立人は、右事実を指摘して、本件文書
を公開しても、社会通念上、申立人に不利益を与えるものでない旨主張している。
そこで、検討するに、本件文書のうち、前年度収支計算書は、申立人の前年度(昭
和六二年度)一年間における、申立人の資金の流れ、収支の均衡状況を示す文書で
あり、貸借対照表は申立人の資産、負債、正味財産の状態を示す文書であって、そ
の性質上、これを開示するときは、申立人が、その詣活動のうち、いかなる活動に
重点を置いているか、あるいは、財産の状況、信用能力、収入支出の実態など学校
の経営の方針、ノウハウを相当程度把握することが可能となる文書であるというこ
とができる。右に述べたところは、開示部分を大科目に限定した場合であっても、
経営方針等を把握できる程度が小さくなることは考えられるものの、なお妥当する
というべきである。
なお、前記倫理綱領や指針等の存在や学校法人の公共的性格は、本件条例で規定さ
れた非公開事由に関する規定の解釈、本件文書が非公開とされるべき文書に該当す
るか否かの判断をするにおいて、十分斟酌されるべきものであるが、本件文書の前
記性格や、本件記録によると、栃木県総務部文書学事課発行の情報公開事務の手引
(条例の解釈・運用規準)は、前記非公開事由となる情報の例として、生産技術上
のノウハウ、信用上不利益を与える情報、経理、人事等の情報を挙げていることが
認められること等に鑑みると、未だ十分な審理を尽くしていない現段階において、
本件文書が、本件条例で定められた前記非公開とさるべき文書に該当しないと即断
することはできない。
したがって、申立人の本案について、理由がないものとは判断できない。
三 効力停止の緊急の必要性について
一 旦、本件文書の公開がなされれば、原状回復することは不可能となり、本件処
分の取消を求める本案訴訟も無意味なものとなるから、申立人には、本件処分の効
力の停止を求める緊急の必要性があるというべきである。
四 公共の福祉
本件処分の効力を停止することによって、公共の福祉に重大な影響を及ぼす虞があ
ることを認めるに足りる疎明はない。
五 結論
よって、行訴法二五条により本件処分の効力を停止することとし、申立費用の負担
につき、行訴法七条、民訴法八九条を適用して、主文のとおり決定する。
(裁判官 長嶺信榮 達 修 朝日責浩)
別紙一
目録
昭和六三年度私立大学施設整備費補助金交付申請書(帝京大学理工学部)に添付さ
れた次の文書
1 前年度収支計算書
(1) 資金収支計算書
予算及び差異欄を除き、決算欄について、大科目部分
(2) 消費収支計算書
予算及び差異欄を除き、決算欄について、
大科目部分
2 貸借対照表
本年度末欄、前年度末及び増減欄について、大科目部分
* 本書において、大科目とは学校法人会計基準別表第1、第2、第3による大科
目及び第1、第4、第6号様式における大科目に相当する科目
別紙二
執行停止申立書
申立の趣旨
一 被申立人が栃木県公文書の開示に関する条例に基づき平成二年一〇月一九日付
けでした別紙目録記載の文書を公開するとの決定の効力を本案判決の確定まで停止
する。
二 申立費用は被申立人の負担とする。
申立の理由
一 本案について理由のあること
1 被申立人は、栃木県公文書の開示に関する条例(昭和六一年三月三一日栃木県
条例第一号、同年一〇月一日施行、以下「本件条例」という。)に基づき平成二年
一〇月一九日付けでAに対し別紙目録記載の文書(以下「本件文書」という。)を
公開するとの決定をした(以下「本件公開処分」という。)。
2 本件公開処分に至る経過は、次のとおりである。
(宇都宮市と申立人との関係について)
(1) 宇都宮市と申立人(当時の法人名は、学校法人帝京第一学園)とは、宇都
宮市と栃木県の実施する大学(理工学部)誘致政策に基づき、昭和六一年二月こ
ろ、申立人がその理工学部を宇都宮市に設置するについて、基本的合意を交わし、
次いで、同年三月九日、宇都宮市が申立人に対し、その建設費について応分の援助
をする等を内容とする基本協定を締結した。
(2) 宇都宮市は、前記協定に基づき、同年一一月一〇日、申立人に対し、その
建設費の補助として三分の一である四〇億円を限度として交付することを約束し
た。
(3) 昭和六二年二月一九日、宇都宮市及び栃木県から、文部省に対し、帝京大
学理工学部設置計画の原案どおりの実現方についてのお願いがされた。
(4) 宇都宮市の申立人に対する右債務負担行為は、昭和六二年六月二二日の定
例市議会において、事項・帝京大学理工学部建設費補助金、期間・昭和六三年度か
ら昭和六五年度まで、限度額・金三〇億円とすることで議決された。
(5) 宇都宮市は、宇都宮市補助金等交付規則(昭和四一年規則第二二号)及び
帝京大学理工学部建設費補助金交付要綱に基づき、申立人に対し、校舎、図書館、
体育館等教育の用に供する施設の建設費及び機械器具等の経費に対する補助として
右金員を交付することとし、申立人が右補助金の交付を受けようとするときは、補
助金交付申請書に次の書類を添付しなければならないと定めた。
(1) 事業計画書
(2) 収支予算書
(3) 学則
(4) 学生収容定員及び教職員組織表
(5) 前年度収支計算書
(6) 貸借対照表
(7) 財産目録
(8) その他市長が必要と認める書類
なお、本件では、右(8)に該当するものとして定められた書類はない。
(6) 申立人は、平成元年三月九日付けで、宇都宮市に対して、前記(5)記載
の(1)から(7)までの書類及び認可証写、契約書写、工程表の書類を添付した
うえ、右建設費補助金の交付申請をしたところ、同年三月二二日付けで、宇都宮市
から金三〇億円を昭和六三年度分として金一二億円、平成元年度分として金九億
円、平成二年度分として金九億円に分割して申立人に交付する旨の決定がされ、そ
の通知を受けた。
(7) Aは、平成元年四月一日、宇都宮市公文書公開条例(平成元年三月二三日
条例第一〇号、同年四月一日施行、以下「宇都宮市条例」という。)第二条第一号
の実施機関である宇都宮市長に対して、同条例第五条第一号に基づき、申立人が宇
都宮市に提出した前記(5)記載の(2)(ただし、現年度予算書)、(5)、
(6)、(7)の書類及び前記(6)記載の認可証写及び契約書写の書類の公開を
請求した。
(8) 宇都宮市長は、平成元年四月一四日付けで、右請求に係る書類のうち、前
記(6)記載の認可書写の書類の公開をする旨の決定をし、その余は、非公開とす
る旨決定(以下「宇都宮市長の原処分」という。)した。
(9) Aは、平成元年四月二〇日、宇都宮市長のした右宇都宮市長の原処分に対
して、行政不服審査法に基づき異議申立てをし、前記(5)記載の(2)、
(5)、(6)、(7)及び前記(6)記載の契約書写の書類の開示を求めた。
宇都宮市長は、宇都宮市条例第一一条に基づき、右異議申立てに対する裁決又は決
定について、宇都宮市公文書公開審査会に対し諮問した。
(栃木県と申立人との関係について)
(1) 申立人は、宇都宮市との前記話し合いの経過にかんがみ、昭和六一年五月
一三日、栃木県に対し、帝京大学理工学部設置に関する補助金交付の要望をした。
(2) 昭和六二年二月一九日、栃木県及び宇都宮市から、文部省に対し、帝京大
学理工学部設置計画の原案どおりの実現方についてのお願いがされた。
(3) 栃木県は、申立人に対し、右帝京大学理工学部設置に係る建設費補助とし
て金一〇億円を交付することとしたが、右債務負担行為は、昭和六二年七月三日の
栃木県議会定例本会議において、事項・帝京大学理工学部施設整備補助金、期間・
昭和六三年度から昭和六五年度まで、限度額・金一〇億円(昭和六三年度金四億
円、昭和六四年度金三億円、昭和六五年度金三億円)とすることで可決された。
(4) 栃木県は、栃木県補助金等交付規則(昭和三六年栃木県規則第三三号)及
び私立大学施設整備費補助金交付要領に基づき、申立人に対し、前記金員を交付す
ることとし、申立人が右補助金の交付を受けようとするときは右補助金交付申請書
に次の書類を添付しなければならないと定めた。
(1) 理由書
(2) 事業計画書
(3) 大学の概要及び教職員組織表
(4) 学則
(5) 現年度予算書
(6) 前年度収支計算書
(7) 貸借対照表
(8) 財産目録
(9) その他知事が必要と認める書類
なお、本件では、右(9)に該当するものとして定められた書類はない。
(5) 申立人は、平成元年三月一四日付けで、栃木県に対して、前記(4)記載
の(1)から(8)までの書類及び認可証写、契約書写、工程表の書類を添付した
うえ、右建設費補助金のうち昭和六三年度分金四憶円の交付申請をしたところ、同
年三月二〇日付け(交付額の確定は、同年五月三一日)で、栃木県から右四億円を
交付する旨の決定がされ、その通知を受けた。
(6) Aは、平成元年三月三一日、本件条例第二条第一項の実施機関である被申
立人に対して、同条例第五条第一号に基づき、申立人が栃木県に提出した補助金交
付申請書及び前記中記載の(1)から(8)までの書類及び前記(5)記載の認可
証写、工程表の書類の公開を請求した。
(7) 被申立人は、平成元年四月一三日付けで、右請求に係る書類のうち、前記
補助金交付申請書、前記(4)記載の(1)、(2)の一部、(3)、(4)及び
前記(5)記載の認可証写及び工程表の書類の公開をする旨の決定をし、その余
は、非公開とする旨決定(以下「栃木県知事の原処分」という。)した。
(8) Aは、平成元年四月二七日、被申立人のした右栃木県知事の原処分に対し
て、行政不服審査法に基づき異議申立てをし、前記(4)記載の(5)、(6)、
(7)、(8)の書類の開示を求めた。
被申立人は、本件条例第一二条に基づき、栃木県公文書開示審査会に対し、諮問し
た。
(9) 栃木県公文書開示審査会は、右諮問に基づき、平成二年九月七日、審議の
うえ、被申立人に対し、異議申立てに係る文書のうち次の文書部分は開示すべきも
のとし、その余の部分及び他の文書を非開示としたことは妥当であるとの答申をし
た。
「現年度予算書のうち資金収支予算書及び消費収支予算書、前年度収支計算書のう
ち資金収支計算書及び消費収支計算書並びに貸借対照表のうち各大科目部分」
この答申を踏まえて、被申立人は、平成二年一〇月一九日、本件文書を開示すると
の本件公開処分をした。
3 本件条例第六条には、法人に関する情報であって、公開することにより当該法
人に不利益を与えることが明らかであると認められるものは開示しないことができ
る旨規定されている。
すなわち、同条柱書及び同条第二号は、次のとおり規定している。
「実施機関は、次の各号のいずれかに該当する情報が記録されている公文書につい
ては、公文書の開示をしないことができる。
(2) 法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。以下「法人等」とい
う。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公開す
ることにより、当該法人等又は当該事業を営も個人に不利益を与えることが明らか
であると認められるもの。ただし、次に掲げる情報を除く。
イ 人の生命、身体又は健康を法人等又は個人の事業活動によって生ずる危害から
保護するため、公開することが必要と認められる情報
ロ 人の財産又は生活を当該法人等又は当該事業を営む個人の違法又は不当な事業
活動によって生ずる侵害から保護するため、公開することが必要と認められる情報
ハ イ又はロに掲げる情報に準ずる情報であって、公開することが公益上必要と認
められるもの」
4 右不利益であることが明らかな情報として開示の対象外となる文書としては、
次のように解釈され、運用されている(栃木県総務部文書学事課・情報公開事務の
手引(I)疎甲第一号証三八頁以下参照)。
すなわち、「不利益を与える」とは、当該法人等又は当該個人の競争上の地位その
他正当な利益を害することであり、「不利益を与えることが客観的に明らかな情
報」としては、生産技術上のノウハウ、販売、営業上のノウハウ、信用上不利益を
与える情報、経理、人事等の情報がこれに当たる、と解され、また、そのように運
用上の取り扱いがされている。
5 本件文書は、法人たる申立人の経理内容に関する情報を記載した文書であり、
また、申立人の経営する各学校及び病院等の経営に係る全事業についての事業戦
略、事業方針、ノウハウ等の情報が記載されており、開示されると申立人の正当な
利益が害される関係にあるし、経理内容に関する情報であるから開示されると信用
上不利益を受けるものであって、これらを開示すると申立人に不利益を与えること
が明らかであると認められるものである。
6 右条例同条同号は、被申立人に裁量権を与えたものではなく、いわゆる不利益
文書に当たると認められる場合はこれを非公開とすべきものと解される(前掲疎甲
第一号証二九頁)から、本件文書を開示してはならない。
したがって、これを開示する旨の本件公開処分は、違法である。
7 仮に、裁量権が与えられているとしても、被申立人の本件公開処分には、裁量
権の逸脱、濫用がある。
8 なお、本件条例第二条第二項にいわゆる「公文書」とは、実施機関の職員が、
法令、条例、規則、規定、訓令、通達等により、与えられた任務又は権限を、その
範囲内において処理するうえで、作成し、又は取得した文書を指すものと解されて
いる(前掲情報公開事務の手引(I)甲第一号証九頁)ところ、前記認可証写、契
約書写及び工程表は、これを提出するのに何らの根拠がなくてされたものであるか
ら、そもそも右にいう「公文書」に該当しないものである。
この点は、宇都宮市条例第二条第二項にいう「公文書」の解釈についても同様に妥
当するから、何らの根拠なくして提出された前記契約書写の開示を求める異議申立
ては、この点で失当というほかはない。
二 効力停止の必要性
申立人は、本件公開処分により不利益を受けるため、以上の理由で、本件公開処分
の取消訴訟を提起しているが、本件公開処分に基づいて本件文書が公開されてしま
うと、申立人の利益が損なわれ、社会的評価等が下落することになり、金銭では償
えない回復困難な測り知れない損害を蒙る。また、右公開がされてしまえば、本件
取消訴訟は、無意味なものになってしまい、申立入は、本案訴訟では救済されない
ことになる。しかも、本件公開処分の内容によれば、被申立人は、平成二年一一月
六日干後二時、本件文書の開示をすることになるから、本件公開処分の効力を停止
する緊急の必要がある。
Aにおいて、本件文書の公開を本案判決までに延ばされると重大な不利益を受ける
などの事情にはなく、この情報の開示を求める差し迫った必要性もない
執行停止によって、公共の福祉に重大な影響を及ぼすこともない。
三 よって、申立人は、本件公開処分の効力の惇止を求める。
別紙三
意見書
意見の趣旨
一 本件申立てを却下する。
二 申立費用は申立人の負担とする。
との決定を求める。
○ 理由
第一 事件の経過
一 Aは、学校法人帝京大学から栃木県知事(以下「知事」という。)に提出され
た昭和六十三年度私立大学施設整備費補助金交付申請書及び添付書類について、栃
木県公文書の開示に関する条例(昭和六十一年栃木県条例第一号。以下「条例」と
いう。)(疎乙第一号証)に基づき、平成元年三月三十一日付けで、公文書開示請
求をした。(疎乙第二号証)
二 知事は、平成元年四月十三日付けで条例に基づき部分開示の決定(以下「原処
分」という。)をした。(疎乙第三号証)
原処分において開示することとした文書は、補助金交付申請書、理由書、大学の概
要及び教職員組織表、学則、認可証写及び工程表であり、部分開示とした文書は事
業計画書である。また、非開示とした文書は、現年度予算書、前年度収支計算書、
貸借対照表、財産目録及び契約書写である。
三 知事は、平成元年四月十四日、開示及び部分開示決定文書をAに開示した。
四 原処分に対し、Aから平成元年四月二十七日付けで異議申立てが提起された。
異議申立ての趣旨は、右事実により部分開示又は非開示とされた公文書のうち、
「現年度予算書、前年度収支計算書、貸借対照表及び財産目録の非開示決定の取消
しを求める。」というものである。(疎乙第四号証)
五 前記四記載の異議申立てを受け、知事は、平成元年五月一日付けで栃木県公文
書開示審査会に対し諮問したところ、平成二年九月七日付けで答申書が提出され
た。(疎乙第五号証)
六 知事は、前記五記載の答申書の趣旨を尊重し、平成二年十月十九日、原処分を
「「前年度収支計算書、貸借対照表については部分開示とする。」と変更する。」
との決定(以下「本件処分」という。)をし、別紙目録記載の文書(以下「本件文
書」という。)を平成二年十一月六日に開示することとした。(疎乙第六号証の一
~二)
また、平成二年十月二十日に、その旨、A及び申立人に通知した。
第二 本件申立ての却下を求める理由
一 本案訴訟に理由のないことは明らかであること
申立人は、「本件文書は、法人たる申立人の経理内容に関する情報を記載した文書
であり、また、申立人の経営する各学校及び病院等の経理に係る全事業についての
事業戦略、事業方針、ノウハウ等の情報が記載されており、開示されると申立人の
正当な利益が害される関係にあるし、経理内容に関する情報であるから開示される
と信用上不利益を受けるものであって、これらを開示すると申立人に不利益を与え
ることが明らかであると認められるものである。」と主張する。
しかし、経理情報は基本的に非開示となるものであるとしても、本件文書に記載さ
れた情報については、私立大学経営倫理綱領及び私立大学の経営に関する指針(疎
乙第七号証)に示されているように、学園関係者に開示するとしているところか
ら、社会通念上、学校法人に不利益を与えるものではないと判断される。
従って、本件文書については、条例第六条第二号でいう、不利益を与えることが明
らかであると認められるものには該当しない。
よって、本件処分は適法正当な行為であるから、本案訴訟に理由がないことは明ら
かである。
二 本件は「回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があるとき」に該当しない
こと
申立人は、「本件文書が公開されてしまうと、申立人の利益が損なわれ、社会的評
価等が下落することになり、金銭では償えない回復困難な測り知れない損害を蒙
る。」と主張するが、申立書を見る限り、測り知れない損害を蒙ることについて何
の疎明もされていない。
さらに、右の主張は、あくまで可能性にしかすぎない。
仮に、社会的評価が下落したとしても、それは社会通念上、金銭では償えない回復
困難な測り知れない損害とはいえず、処分の効力を停止する緊急の必要もない。
なお、申立人は、「右公開がされてしまえば、本件取消訴訟は、無意味なものにな
ってしまい・・・」と主張するが、損害賠償請求等への訴えの変更の余地も残され
ているから、本件取消訴訟が無意味なものになるとはいえない。
従って、本件申立ては、「回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があるとき」
に該当しない。
三 よって、本件公文書開示決定処分効力停止申立ては失当である。

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