弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破棄し、第一審判決中主文第一項を取り消す。
     右部分につき被上告人の請求を棄却する。
     訴訟の総費用は被上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人吉田朝彦の上告理由一について
 一 被上告人の本訴請求は、(一) 昭和六一年一一月一四日開催の上告人会社の
取締役会は、その招集通知が当時の代表取締役である被上告人に対してされておら
ず同人も出席していないので不適法であり、右のような瑕疵のある取締役会におけ
る新株発行決議に基づく本件新株発行は無効である、(二) 本件新株発行は、D(
以下「D」という。)がこれを全部自ら引き受け、自己の株式持分比率を高めて実
質上自らが上告人会社を支配できるようにする目的の下にしたものであり、著しく
不公正な方法によりされたものであるから無効である旨を主張して、本件新株発行
の無効を求めるものである。
 二 原審は、右(二)の主張について、1の事実を認定した上、2の判断を示し、
被上告人の請求を認容した第一審判決を是認して、上告人の控訴を棄却した。
 1 上告人会社の取締役であったDは、創業以来の代表取締役で発行済株式の過
半数を有する被上告人と不仲となり、その信頼を失ったことから、被上告人が株主
総会を招集して上告人会社を解散する決議をしたり又はDを解任する決議をするこ
とを恐れるに至った。そこで、Dは、これを阻止する目的をもって、専ら、被上告
人から上告人会社の支配権を奪い取り、自己及び自己の側に立つ者が過半数の株式
を有するようにするために、昭和六一年九月一六日に取締役会を開催して自らの代
表取締役選任決議を経て代表取締役に就任し、同年一一月一四日に当時入院中であ
った被上告人に招集通知をしないで取締役会を開催し、本件新株発行の決議を得て、
被上告人に秘したまま右新株を発行し、右決議において新株の募集の方法は公募に
よるものとされていたが、その全部を自らが引き受けて払い込み、現在これを保有
している。
 2 右の経緯によれば、本件新株発行は著しく不公正な方法によりされたもので
あるというべきである。そして、著しく不公正な方法による新株発行は特別の事情
がある場合に限って無効となると解すべきところ、本件においては、新株はすべて
その発行を計画したDによって引き受けられ、保有されているのであるから、取引
の安全のために新株発行を無効とすることを特に制限する事情はなく、上告人会社
が小規模で閉鎖的な会社で、本件新株発行が前記の目的でされたことを併せ考える
と、右の特別事情がある場合に当たるというべきである。したがって、本件新株発
行は無効である。
 三 しかしながら、原審の右2の判断は、是認することができない。その理由は、
次のとおりである。
 新株発行は、株式会社の組織に関するものであるとはいえ、会社の業務執行に準
じて取り扱われるものであるから、右会社を代表する権限のある取締役が新株を発
行した以上、たとい、新株発行に関する有効な取締役会の決議がなくても、右新株
の発行が有効であることは、当裁判所の判例(最高裁昭和三二年(オ)第七九号同
三六年三月三一日第二小法廷判決・民集一五巻三号六四五頁)の示すところである。
この理は、新株が著しく不公正な方法により発行された場合であっても、異なると
ころがないものというべきである。また、発行された新株がその会社の取締役の地
位にある者によって引き受けられ、その者が現に保有していること、あるいは新株
を発行した会社が小規模で閉鎖的な会社であることなど、原判示の事情は、右の結
論に影響を及ぼすものではない。けだし、新株の発行が会社と取引関係に立つ第三
者を含めて広い範囲の法律関係に影響を及ぼす可能性があることにかんがみれば、
その効力を画一的に判断する必要があり、右のような事情の有無によってこれを個
々の事案ごとに判断することは相当でないからである。そうすると、本件新株発行
を無効と判断した原判決には、商法二八〇条ノ一五の解釈適用を誤った違法があり、
右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、この点をいう論旨は理由が
ある。
 四 以上の説示によれば、前記一の(一)及び(二)のいずれもその主張自体理由が
なく、本訴請求は失当であるから、原判決を破棄し、第一審判決中主文第一項を取
り消した上、被上告人の本訴請求を棄却すべきである。
 よって、民訴法四〇八条、三九六条、三八六条、九六条、八九条に従い、裁判官
全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    大   白       勝
            裁判官    大   堀   誠   一
            裁判官    小   野   幹   雄
            裁判官    三   好       達
            裁判官    高   橋   久   子

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛