弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
     参加申出を却下する。
     参加に関する費用は参加人の負担とする。
         理    由
 上告人の上告状記載の上告理由一、二、及び上告理由書記載の上告理由第二乃至
第四点について。
 所論の事実は、上告人と訴外Dとの間の関係であつて、かりに存在したとしても、
被上告人の本訴請求の当否判断を左右するものとは認められない。論旨は、すべて
採用し得ない。
 同上告状記載の上告理由三乃至八及び同上告理由書記載の上告理由第五点につい
て。
 論旨は、原審の証拠上認め得ないとした虚偽の意思表示乃至通謀虚偽の意思表示
を前提として原判決の違法を主張し、原審の適法にした事実認定を徒らに非難し或
は原審の認定しないか原審において主張なく従つて原審の判断しない事実を前提と
して原判決を攻撃するものであつて、上告適法の理由とはならない。論旨は、すべ
て採用できない。
 同上告理由書記載の上告理由第一点について。
 論旨は、原判決には、本訴請求の正当なることにつき、何等具体的理由を明示し
て居ないから、違法であると主張する。しかし、第一審判決には、首肯し得る理由
が具体的に明示してあり、原判決はこれを引用して本訴請求の正当なることの理由
として居る。原判決に所論の違法があるとはいえぬ。その他所論は、原審において
主張がなく、従つて判断されて居ない事実を前提として居るのであるから上告適法
の理由とはならない。論旨は採用し得ない。
 同上告理由書記載の上告理由第六点について。
 仮に訴外Dに所論の如き事実があつたとしても、その故に当然被上告人と同人と
の間の本不動産の売買が無効となり、その売買を以つて上告人に対抗し得ないこと
となるものと解すべき根拠がない。論旨は、採用できない。
 同上告理由第七乃至第九点について。
 論旨は、被上告人の本訴請求の当否判断を左右するに足るものでないか或は原審
において主張なく従つて原審の認定しない事実を前提とするものであつて、採用の
限りでない。
 同上告状及び上告理由記載の自余の上告理由について。
 これらの論旨は、証拠調の限度に関する原審の採量、原審の証拠の取捨判断、事
実認定を非難し或は原審において主張なく従つて原審の認定しない事実を前提とす
るものであつて、上告適法の理由とならないばかりではなく、記録によるも、原判
決に所論の違法を認め得られないから、論旨は、すべて採用できない。
 参加人は、本件訴訟において被上告人より上告人に対し所有権に基き明渡を求め
ている本件家屋を、参加人が昭和三二年二月二〇日被上告人より買受けてその所有
権を取得したので、本申出に及んだというのである。(本件申出書には訴訟手続受
継の申立書と記載され、また、本件訴訟手続は中断したので受継を申立てる旨の記
載があるけれども、申出人は上記のように訴訟の繋属中その訴訟の目的となつてい
る権利を譲受けたことを主張して本件訴訟を引継ぎたいというのであるから、その
真意は民訴法七三条、七一条の参加申出の趣旨に解するのが相当である。なお、訴
訟繋属中訴訟の目的物が他に譲渡されても、訴訟手継は中断せず、従つて訴訟手続
の受継ということもあり得ない。)
 しかしながら、参加人が事実審でない当裁判所に対し民訴法七三条、七一条に基
き当事者として訴訟に参加することは許されないから(大審院、昭和一三年一二月
二六日言渡判決参照)、本件参加の申出は不適法として却下すべきである。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    高   橋       潔

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