弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人河原正和作成名義の控訴趣意書および控訴趣意補充書
に記載されたとおりであるから、これをここに引用し、これに対して、当裁判所
は、次のとおり判断する。
 控訴趣意第二点(補充書によつて補足された趣意を含む。)について。
 所論は、原判決は、被告人が前車であるA運転の自動車との間に車間距離をとら
なかつたために信号に従つて停止した同車に追突したことが本件事故を惹起した被
告人の過失であると認定しているけれども、右Aやその同乗者の供述によると、右
の過失を認めることができないし、右過失を認定し得るのは被告人の自白のみであ
るから、原判決は事実を誤認すると共に刑事訴訟法第三一九条第二項、審法第三八
条第三項に違反し、また理由不備ないし訴訟手続の法令違反があると主張する。 
しかし、記録によると、被告人は原審公判廷において、原判示事実と同一の公訴事
実を認めて争つていないのであつて、右供述を含む原判決挙示の関係証拠を総合す
れば、原判示第三の業務上過失傷害の事実はこれを肯認することができる。なるほ
ど、所論が指摘するとおり、追突された自動車の運転者Aおよびその同乗者B、同
Cの検察官や司法警察員に対する各供述調書および司法警察員作成の実況見分調書
二通の各記載によると、右Aらは信号待ちのために停止して後暫らくしてから被告
人車両に追突されたというのであつて、これらから被告人の単なる車間距離不保持
に過失を求めることは疑問であるけれども、、結局は加害者と被害者間にあり勝ち
な供述の対立であり、さればといつて本件では他に第三者の供述というような証拠
もない以上、原判決が自由な心証により、右Aらの供述を採用しないで、被告人の
自白通り事実を認定したことに誤りがあるとまではいえない。そして、追突の事実
について補強証拠があり、自白を信用することができると認められるときに、所論
のいう過失の態様を自白のみで認定することに差支えはなく、刑事訴訟法や憲法の
規定に違反するものでもないから、原判決には何ら所論のような違法は存しない。
論旨は理由がない。
 同第一点について。
 所論は、原判決は、本件無免許運転の罪と酒気帯び運転の罪および義務上過失傷
害の罪を併合罪としているけれども、右の三罪は観念的競合として処断すべきであ
るから、原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがあると主
張する。
 <要旨>しかし、刑法第五四条第一項前段の「一個ノ行為」であるかどうかを決定
するについては、それが所論のように、社会的自然的に観察して一個の運転
行為であるというだけでは足りず、各構成要件の性格、目的ないし存在理由、沿革
および相互の関係といつた構成要件的評価を加えて決定すべきである。本件につい
てこれをみるに、原判決が認定するところによれば、被告人は原判示の日時場所に
おいて、無免許で酒気を帯びて普通貨物自動車を運転中、前車との間に安全な車間
距離を保つて進行すべき業務上の注意義務を怠つた過失により、信号に従つて停止
した同車に追突させてその運転者等に原判示の各傷害を負わせたものであつて、運
転中に惹き起した過失傷害であつても、その過失行為は違法な運転行為それ自体と
は構成要件的には自ら別個の行為であるということができる。次に、道路交通法は
自動車の運転に際し遵守すべき多数の事項を定め、その違反をそれぞれ各別に処罰
することとしている。運転者がこれらの事項に違反したときは、その相互の間に特
段の目的、性格の近似性が認められない以上、同時に数個の違反を併わせ犯したも
のとして、併合罪となると解すべきである。無免許運転と酒気帯び運転との関係に
ついても、両者は道路交通法上自動車の運転に際し遵守すべき事項として定められ
た目的性格を異にしていて、前者は、一定の資格を有する者にのみ自動車の運転を
許可することとしているのに違反し、後者は、右の資格の有無を問わず一定限度以
上の酒気を帯びて自動車を運転することを禁止していることに対する違反であつ
て、被告人は、これに二重に違反したものであり、二つの違反を併わせ行つたもの
といわなければならない。両者が同一の自動車運転行為であるということは、、た
またま二個の違反行為が同時に行われたというだけで、構成要件的評価からはこれ
を一個の行為であるとみるのは相当でない。したがつて、原判示第一、第二、第三
の各所為を併合罪として処断した原判決は正当である。論旨は理由がない。
 同第三点について。
 所論は、原判決の被告人に対する量刑は重きに失すると主張するが、本件各犯罪
の性質、態様殊に被告人の運転経験や技倆、飲酒運転するに至つた経緯や飲酒量、
過失の内容に照らせば、時節柄被告人の責任は軽視することができず、所論が指摘
するような、傷害の程度は比較的軽微であつて示談が成立していること、被告人に
は何らの前科前歴もないこと、現在では充分反省していること、その他家庭の状況
等被告人にとり量刑上有利な諸事情を斟酌しても、原判決程度の量刑はやむを得な
いところであつて、原審が被告人を懲役五月(求刑は六月)の実刑に処したことを
もつて量刑が重きに失するとまでは考えられない。論旨は理由がない。
 よつて、刑事訴訟法第三九六条により本件控訴を棄却し、当審における訴訟費用
は、刑事訴訟法第一八一条第一項本文により被告人に負担させることとして、主文
のとおり判決する。
 (裁判長判事 龍岡資久 判事 宮脇辰雄 判事 桑田連平)

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