弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人小川剛の上告理由について。
 論旨は、要するに、第一審判決及びこれを引用する原判決において、被上告人等
に対する第一次的請求についての判示と被上告人愛知県に対する予備的請求につい
ての判示との間には、理由齟齬或は理由不備があるか又は違法な昭和三〇年一一月
二四日愛知教育委員会規則第一二号「公立学校職員の退職手当に関する条例施行規
則」を適用した違法があると主張するにある。
 しかしながら、第一審判決及びこれを引用する原判決によれば、原審は、その認
定に係る事実関係より、要するに、本件退職勧奨当時、被上告人B2としては、上
告人に対して愛知教育委員会の承認がなされ特別退職手当金の支給があるものと信
じて所論退職勧奨を行つたのであり、当時の客観的状況上、同被上告人がかく信ず
ることに無理もなく、しかもその処置は妥当であつたと視るべく、したがつて、同
被上告人に不法行為者としての責任を認められないのであり、然る以上、被上告人
名古屋市、同愛知県に対し、被上告人B2の使用者としての責任を追及する上告人
の請求も失当である旨認定判示し、かつ、上告人の退職に際し、同県教育委員会よ
り、昭和二九年七月一日同県条例「公立学校職員の退職手当に関する条例」四条一
項所定の同県委員会の承認が得られなかつた事実を確定した上、そのため上告人に
は右条項所定の所論特別退職手当の支給を受ける権利はないとして、上告人の被上
告人愛知県に対する予備的請求を排斥する判示をして居り、右判断は正当として是
認し得られる。以上の判示の間には、何等所論の如き理由不備、理由齟齬の違法が
あるとは考えられない。而して、原審は、所論の如くに、右県教育委員会において
予算がないからといつて右特別退職手当支給の承認を拒否することは許されないと
判示して居るのではなく、また、本件退職に際し愛知県教育委員会において右特別
退職手当支給の承認が得られなかつた事実は前叙の通りであるから、本件退職後公
布せられた所論施行規則が所論の通り違法であるか否か或は原審が右施行規則を適
用して居るか否かは、これを論ずる要を見ない。論旨は、原判決を正解しないで、
或は独自の見解を主張して原判決を非難するに帰する。
 論旨は理由がない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    横   田   正   俊

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