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平成26年11月26日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成26年(ネ)第10048号特許権に基づく損害賠償請求控訴事件
原審・東京地方裁判所平成24年(ワ)第4028号
口頭弁論終結日平成26年10月22日
判決
控訴人日本精機株式会社
控訴人有限会社ヒューマンリンク
上記2名訴訟代理人弁護士笠原基広
同坂生雄一
同中村京子
同竹中大樹
補佐人弁理士木村満
同杉本和之
同大神田梢
同早川牧子
被控訴人クラリオン株式会社
訴訟代理人弁護士古城春実
同牧野知彦
主文
1本件各控訴をいずれも棄却する。
2控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人は,控訴人日本精機株式会社に対し,1500万円及びこれに対す
る平成24年3月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3被控訴人は,控訴人有限会社ヒューマンリンクに対し,1500万円及びこ
れに対する平成24年3月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支
払え。
第2事案の概要
1本件は,発明の名称を「車両用監視装置」とする特許権の共有者である控訴
人らが,被控訴人が業として原判決別紙物件説明書記載のカーナビゲーショ
ン・システム(以下「本件カーナビ」という。)を構成する物の製造,販売又
は販売の申出をする行為は,特許法101条1号,2号により上記特許権を侵
害するものとみなされる旨主張して,被控訴人に対し,民法709条に基づき,
損害賠償金29億2974万円のうち,それぞれ1500万円及びこれに対す
る訴状送達の日の翌日である平成24年3月2日から支払済みまで民法所定の
年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
2原判決は,本件カーナビは上記特許権に係る特許の特許請求の範囲の請求項
1,3及び4に記載された発明の技術的範囲に属するが,上記請求項に係る特
許はいずれも特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから,控
訴人らは,被控訴人に対し,上記特許権を行使することができないとして,控
訴人らの請求をいずれも棄却した。
そこで,原判決を不服として,控訴人らが控訴したものである。
3前提事実(当事者間に争いのない事実並びに各項末尾掲記の証拠及び弁論の
全趣旨により認められる事実)
控訴人らの特許権
控訴人らは,次の特許権(以下「本件特許権」といい,本件特許権に係る
特許を「本件特許」という。)の共有者である。(甲1,2)
特許番号特許第4094831号
出願番号特願2001-243849
出願日平成13年8月10日
公開番号特開2003-61086
公開日平成15年2月28日
設定登録日平成20年3月14日
発明の名称車両用監視装置
本件特許の特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の請求項1,3,4の記載は,次のとおりであ
る。以下,請求項1に記載された発明を「本件発明1」,請求項3に記載さ
れた発明を「本件発明2」,請求項4に記載された発明を「本件発明3」と
いい,併せて「本件各発明」という。
また,本件特許に係る明細書(甲2)を,図面を含めて「本件明細書」と
いう。
【請求項1】
「ドアミラーに配設されており前輪近傍を撮像する撮像手段と,前記撮像
手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段と,を備えた車両用監
視装置であって,
前輪近傍の路面の画像を含む前記第一の画像と,車両の幅方向の距離を示
す第一の指標及び長さ方向の距離を示す第二の指標を有する第二の画像と,
を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段と,
前記第二の画像を上下左右に移動させ,前記画面における前記第二の画像
の位置を調整する表示位置調整手段と,を設けたことを特徴とする車両用監
視装置。」
【請求項3】
「前記第二の画像を表示するための画像データを記憶した記憶手段を有す
ることを特徴とする請求項1に記載の車両用監視装置。」
【請求項4】
「前記表示位置調整手段は,前記第二の画像を上下左右に移動させる操作
スイッチを有することを特徴とする請求項1に記載の車両用監視装置。」
本件各発明の構成要件の分説
本件各発明の構成要件を分説すると,次のとおりである(以下,分説した
各構成要件を付した符号に従い「構成要件1A」のようにいう。)。
ア本件発明1
1Aドアミラーに配設されており前輪近傍を撮像する撮像手段と,
1B前記撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段と,
を備えた車両用監視装置であって,
1C前輪近傍の路面の画像を含む前記第一の画像と,車両の幅方向の距
離を示す第一の指標及び長さ方向の距離を示す第二の指標を有する第
二の画像と,を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段と,
1D前記第二の画像を上下左右に移動させ,前記画面における前記第二
の画像の位置を調整する表示位置調整手段と,
1Eを設けたことを特徴とする車両用監視装置。
イ本件発明2
1F前記第二の画像を表示するための画像データを記憶した記憶手段
1Gを有することを特徴とする請求項1に記載の車両用監視装置。
ウ本件発明3
1H前記表示位置調整手段は,前記第二の画像を上下左右に移動させる
操作スイッチを有する
1Iことを特徴とする請求項1に記載の車両用監視装置。
審判関係
ア手続の経緯
被控訴人は,平成24年2月14日,特許庁に対し,本件特許の請求
項1ないし5に係る発明を無効にすることを求めて審判請求をし,特許
庁に無効2012-800010号事件として係属した。
特許庁は,平成24年7月20日,本件特許の請求項1ないし5に係
る発明についての特許を無効とする旨の審決をしたことから,控訴人ら
は,平成24年8月22日,当裁判所に対して上記審決を取り消すこと
を求めて訴訟を提起した(当庁平成24年(行ケ)第10301号事件)。
控訴人らは,平成24年10月26日,特許庁に対し訂正審判を請求
したため,当裁判所は,平成24年11月9日,平成23年法律第63
号による改正前の特許法181条2項により,上記審決を取り消す旨の
決定をした。
その後,控訴人らは,平成25年2月1日,訂正請求書を提出した(以
下「本件第1訂正」という。)。
特許庁は,平成25年7月18日,「訂正を認める。特許第4094
831号の請求項1ないし5に係る発明についての特許を無効とする。」
との審決をしたことから,控訴人らは,平成25年8月26日,審決取
消訴訟を提起し,現在,当裁判所に係属中である(当庁平成25年(行
ケ)第10241号事件)。(甲9,乙1,23,顕著な事実)
控訴人らは,平成25年8月30日,本件特許に係る請求項1につい
ての減縮等を目的とする訂正審判を請求し(以下「本件第2訂正」とい
う。甲11),特許庁に訂正2013-390128号事件として係属
した。
特許庁は,平成25年12月2日,「本件審判の請求は,成り立たな
い。」との審決をしたことから,控訴人らは,平成26年1月10日,
審決取消訴訟を提起し,現在,当裁判所に係属中である(当庁平成26
年(行ケ)第10013号事件)。(甲11,12,顕著な事実)
イ本件第1訂正による訂正後の請求項の記載
控訴人らは,本件第1訂正により,次の下線部の箇所のとおり,本件特
許の特許請求の範囲の記載を訂正した。
以下,本件第1訂正による訂正後の請求項1に記載された発明を「本件
第1訂正発明1」,同請求項3に記載された発明を「本件第1訂正発明2」,
同請求項4に記載された発明を「本件第1訂正発明3」といい,併せて「本
件各第1訂正発明」という。
【請求項1】
「ドアミラーに配設されており,前記ドアミラーよりも前にある前輪近
傍を撮像する撮像手段と,前記撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表
示する表示手段と,を備えた車両用監視装置であって,
前輪近傍の路面及び車両の画像を含むが,車両先端が写っていない前記
第一の画像と,車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの
長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示す第二の指標を有す
る第二の画像と,を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段と,
前記第二の画像を上下左右に移動させ,前記画面における前記第二の画
像の位置を調整する表示位置調整手段と,を設けたことを特徴とする車両
用監視装置。」
【請求項3】
「ドアミラーに配設されており前輪近傍を撮像する撮像手段と,前記撮
像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段と,を備えた車両
用監視装置であって,
前輪近傍の路面の画像を含む前記第一の画像と,車両の幅方向の距離を
示す第一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を直線で示す第二の指
標を有する第二の画像と,を合成して前記表示手段に表示させる画像合成
手段と,
前記第二の画像を上下左右に移動させ,前記画面における前記第二の画
像の位置を調整する表示位置調整手段と,を設け,
前記直線は,前記幅方向に沿って延び,
前記第二の画像を表示するための画像データを記憶した記憶手段を有す
ることを特徴とする車両用監視装置。」
【請求項4】
「前記第一の指標及び前記第二の指標は,前記路面上に位置するように
前記表示手段に表示され,
前記車両の画像は,前記ドアミラーよりも前にある前輪の画像を含み,
前記第二の指標は,車両先端からの長さ方向の距離が特定の長さとなる
位置に配置されており,
前記表示位置調整手段は,前記第二の画像を上下左右に移動させる操作
スイッチを有することを特徴とする請求項1に記載の車両用監視装置。」
ウ本件第2訂正による訂正後の請求項の記載
控訴人らは,本件第2訂正により,次の下線部の箇所のとおり,本件特
許の特許請求の範囲の記載を訂正した。
以下,本件第2訂正による訂正後の請求項1に記載された発明を「本件
第2訂正発明1」,同請求項3に記載された発明を「本件第2訂正発明2」,
同請求項4に記載された発明を「本件第2訂正発明3」といい,併せて「本
件各第2訂正発明」という。
【請求項1】
「ドアミラーに配設されており,前記ドアミラーよりも前にある前輪近
傍を撮像する撮像手段と,前記撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表
示する表示手段と,を備えた車両用監視装置であって,
前輪近傍の路面の画像及び車両の画像を含む前記第一の画像と,車両の
幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの車両の長さ方向の距離
を前記幅方向に沿って延びる直線によって示す第二の指標を有する第二の
画像と,を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段と,
前記第二の画像を上下左右に移動させ,前記画面における前記第二の画
像の位置を調整する表示位置調整手段と,を設け,
前記第二の指標は,前記幅方向を横方向とした場合の前記第一の画像に
おける車両の画像の横の位置であって前記第一の画像における路面上の位
置に配置された前記幅方向に沿って延びる直線の前記長さ方向における配
置位置によって前記長さ方向の距離を示す,
ことを特徴とする車両用監視装置。」
【請求項3】
「前記第二の画像を表示するための画像データを記憶した記憶手段を有
することを特徴とする請求項1に記載の車両用監視装置。」
【請求項4】
「前記表示位置調整手段は,前記第二の画像を上下左右に移動させる操
作スイッチを有することを特徴とする請求項1に記載の車両用監視装置。」
本件各第1訂正発明及び本件各第2訂正発明の構成要件の分説
ア本件各第1訂正発明
本件第1訂正発明1
2Aドアミラーに配設されており,前記ドアミラーよりも前にある前
輪近傍を撮像する撮像手段と,
2B前記撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段と,
を備えた車両用監視装置であって,
2C前輪近傍の路面及び車両の画像を含むが,車両先端が写っていな
い前記第一の画像と,車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車
両先端からの長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示
す第二の指標を有する第二の画像と,を合成して前記表示手段に表
示させる画像合成手段と,
2D前記第二の画像を上下左右に移動させ,前記画面における前記第
二の画像の位置を調整する表示位置調整手段と,
2Eを設けたことを特徴とする車両用監視装置。
本件第1訂正発明2
2Fドアミラーに配設されており前輪近傍を撮像する撮像手段と,
2G前記撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段と,
を備えた車両用監視装置であって,
2H前輪近傍の路面の画像を含む前記第一の画像と,車両の幅方向の
距離を示す第一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を直線で
示す第二の指標を有する第二の画像と,を合成して前記表示手段に
表示させる画像合成手段と,
2I前記第二の画像を上下左右に移動させ,前記画面における前記第
二の画像の位置を調整する表示位置調整手段と,を設け,
2J前記直線は,前記幅方向に沿って延び,
2K前記第二の画像を表示するための画像データを記憶した記憶手段
2Lを有することを特徴とする車両用監視装置。
本件第1訂正発明3
2M前記第一の指標及び前記第二の指標は,前記路面上に位置するよ
うに前記表示手段に表示され,
2N前記車両の画像は,前記ドアミラーよりも前にある前輪の画像を
含み,
2O前記第二の指標は,車両先端からの長さ方向の距離が特定の長さ
となる位置に配置されており,
2P前記表示位置調整手段は,前記第二の画像を上下左右に移動させ
る操作スイッチを有する
2Qことを特徴とする請求項1に記載の車両用監視装置。
イ本件各第2訂正発明
本件第2訂正発明1
3Aドアミラーに配設されており,前記ドアミラーよりも前にある前
輪近傍を撮像する撮像手段と,
3B前記撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段と,
を備えた車両用監視装置であって,
3C前輪近傍の路面の画像及び車両の画像を含む前記第一の画像と,
車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの車両の長
さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線によって示す第二の
指標を有する第二の画像と,を合成して前記表示手段に表示させる
画像合成手段と,
3D前記第二の画像を上下左右に移動させ,前記画面における前記第
二の画像の位置を調整する表示位置調整手段と,を設け,
3E前記第二の指標は,前記幅方向を横方向とした場合の前記第一の
画像における車両の画像の横の位置であって前記第一の画像におけ
る路面上の位置に配置された前記幅方向に沿って延びる直線の前記
長さ方向における配置位置によって前記長さ方向の距離を示す,
3Fことを特徴とする車両用監視装置。
本件第2訂正発明2
3G前記第二の画像を表示するための画像データを記憶した記憶手段
を有する
3Hことを特徴とする請求項1に記載の車両用監視装置。
本件第2訂正発明3
3I前記表示位置調整手段は,前記第二の画像を上下左右に移動させ
る操作スイッチを有する
3Jことを特徴とする請求項1に記載の車両用監視装置。
被控訴人の行為
被控訴人は,業として,本件カーナビからカメラを除いたものの全部又は
一部(以下「被控訴人製品」という。)を製造し,日産自動車株式会社(以
下「日産」という。)に対してこれを販売し,又は販売の申出をした。(甲
3の1~4,弁論の全趣旨)
本件カーナビの構成
原判決別紙物件説明書記載の本件カーナビの構成のうち,本件各発明,本
件各第1訂正発明,本件各第2訂正発明と関連する部分の構成は,次のとお
りである(以下,各構成に付した符号に従い「構成1a」のようにいう。)。
(甲3の1~4,甲17,弁論の全趣旨)
ア本件各発明
本件発明1
1aドアミラーに取り付けられており,前輪近傍を撮像するカメラと,
1bカメラで撮像した画像を画面に表示するディスプレイとを備えた
サイドブラインドモニター付きカーナビゲーション・システムで
あって,
1cカメラで撮像した前輪近傍の路面の画像を含む画像と,車両側面
から幅方向にドアミラー先端より約15㎝外側の所までの隔たりを
示す側方目安ライン,及び車両先端から長さ方向に約30㎝先の所
までの隔たりを示す前端目安ラインとを合成してディスプレイに表
示させる電子制御ユニットと,
1d操作手段からの入力に基づき,側方目安ラインと前端目安ライン
を上下左右に移動させ,画面における上記両目安ラインの位置を調
整する電子制御ユニットと,
1eを設けたサイドブラインドモニター付きカーナビゲーション・シ
ステム。
本件発明2
1f本件カーナビは,側方目安ラインと前端目安ラインを表示するた
めの画像データを記憶したメモリを有する,
1gサイドブラインドモニター付きカーナビゲーション・システム。
本件発明3
1h本件カーナビは,側方目安ラインと前端目安ラインの位置を調整
する電子制御ユニットが,上記両目安ラインを上下左右に移動させ
るインパネ等に設けられた操作スイッチ又はタッチパネル機能付き
ディスプレイに表示される操作ボタンを有する,
1iサイドブラインドモニター付きカーナビゲーション・システム。
イ本件各第1訂正発明
本件第1訂正発明1
2a本件カーナビは,ドアミラーに取り付けられており,ドアミラー
よりも前にある前輪近傍を撮像するカメラと,
2bカメラで撮像した画像を画面に表示するディスプレイとを備えた
サイドブラインドモニター付きカーナビゲーション・システムで
あって,
2cカメラで撮像した前輪近傍の路面及び車両の画像を含むが,車両
先端が写っていない画像と,車幅の目安を示す側方目安ライン及び
車両先端からの長さ方向の距離を車両の幅方向に沿って延びる直線
で示す前端目安ラインとを合成してディスプレイに表示させる電子
制御ユニットと,
2d操作手段からの入力に基づき,側方目安ラインと前端目安ライン
を上下左右に移動させ,画面における当該両目安ラインの位置を調
整する電子制御ユニットと,
2eを設けたサイドブラインドモニター付きカーナビゲーション・シ
ステム。
本件第1訂正発明2
2f本件カーナビは,ドアミラーに取り付けられており前輪近傍を撮
像するカメラと,
2gカメラで撮像した画像を画面に表示するディスプレイとを備えた
サイドブラインドモニター付きカーナビゲーション・システムで
あって,
2hカメラで撮像した前輪近傍の路面の画像を含む画像と,車幅の目
安を示す側方目安ライン及び車両先端からの長さ方向の距離を直線
で示す前端目安ラインとを合成してディスプレイに表示させる電子
制御ユニットと,
2i操作手段からの入力に基づき,側方目安ラインと直線で示す前端
目安ラインを上下左右に移動させ,画面における上記両目安ライン
の位置を調整する電子制御ユニットとを設け,
2j上記直線は,車両の幅方向に沿って延び,
2k上記両目安ラインを表示するための画像データを記憶したメモリ,
2lを有するサイドブラインドモニター付きカーナビゲーション・シ
ステム。
本件第1訂正発明3
2m本件カーナビは,側方目安ラインと前端目安ラインが,前輪近傍
の路面上に位置するようにディスプレイに表示され,
2n車両の画像は,ドアミラーよりも前にある前輪の画像を含み,
2p上記両目安ラインの位置を調整する電子制御ユニットは,上記両
目安ラインを上下左右に移動させるインパネ等に設けられた操作ス
イッチ又はタッチパネル機能付きディスプレイに表示される操作ボ
タンを有する,
2qサイドブラインドモニター付きカーナビゲーション・システム。
ウ本件各第2訂正発明
本件第2訂正発明1
3a本件カーナビは,ドアミラーに取り付けられており,ドアミラー
よりも前にある前輪近傍を撮像するカメラと,
3bカメラで撮像した画像を画面に表示するディスプレイとを備えた
サイドブラインドモニター付きカーナビゲーション・システムで
あって,
3cカメラで撮像した前輪近傍の路面の画像及び車両の画像を含む画
像と,車幅の目安を示す側方目安ライン及び車両先端からの車両の
長さ方向の距離を車両の幅方向に沿って延びる直線によって示す前
端目安ラインとを合成してディスプレイに表示させる電子制御ユ
ニットと,
3d操作手段からの入力に基づき,側方目安ラインと前端目安ライン
を上下左右に移動させ,画面における当該両目安ラインの位置を調
整する電子制御ユニットと,を設け,
3e前端目安ラインが,車両の幅方向を横方向とした場合のカメラで
撮像した画像における車両の画像の横の位置であって,カメラで撮
像した画像における路面上の位置に配置された車両の幅方向に沿っ
て延びる直線の車両の長さ方向における配置位置によって車両先端
からの車両の長さ方向の距離を示す,
3fサイドブラインドモニター付きカーナビゲーション・システム。
本件第2訂正発明2
3g本件カーナビは,側方目安ラインと前端目安ラインを表示するた
めの画像データを記憶したメモリを有する
3hサイドブラインドモニター付きカーナビゲーション・システム。
本件第2訂正発明3
3i本件カーナビは,側方目安ラインと前端目安ラインの位置を調整
する電子制御ユニットが,上記両目安ラインを上下左右に移動させ
るインパネ等に設けられた操作スイッチ又はタッチパネル機能付き
ディスプレイに表示される操作ボタンを有する,
3jサイドブラインドモニター付きカーナビゲーション・システム。
本件カーナビの構成要件充足性
ア本件各発明
本件カーナビは,本件発明1の構成要件1A,1B及び1Eを充足す
る。
本件カーナビは,本件発明2の構成要件1Fを充足する。
イ本件各第1訂正発明
本件カーナビは,本件第1訂正発明1の構成要件2A,2B及び2E
を充足する。
本件カーナビは,本件第1訂正発明2の構成要件2F,2G及び2J
ないし2Lを充足する。
本件カーナビは,本件第1訂正発明3の構成要件2M及び2Nを充足
する。
ウ本件各第2訂正発明
本件カーナビは,本件第2訂正発明1の構成要件3A,3B及び3F
を充足する。
本件カーナビは,本件第2訂正発明2の構成要件3Gを充足する。
4争点
構成要件充足性(争点1)
ア本件発明1の構成要件1C,1Dの充足性(争点1-1)
イ本件発明3の構成要件1Hの充足性(争点1-2)
本件特許の請求項1,3,4に係る特許は,特許無効審判により無効とさ
れるべきものか(争点2)
ア本件各発明の進歩性欠如(特許法29条2項)
乙2文献を主引例とする進歩性欠如(争点2-1)
乙3文献を主引例とする進歩性欠如(争点2-2)
イサポート要件違反(特許法36条6項1号)(争点2-3)
本件第1訂正による対抗主張の成否(争点3)
ア本件第1訂正は訂正要件を充たすものであるか(争点3-1)
イ本件第1訂正により無効理由を解消することができるか(争点3-2)
ウ本件カーナビが本件各第1訂正発明の技術的範囲に属するか(争点3-
3)
本件各第1訂正発明の進歩性欠如(特許法29条2項)(争点4)
ア乙2文献を主引例とする進歩性欠如(争点4-1)
イ乙3文献を主引例とする進歩性欠如(争点4-2)
本件第2訂正による対抗主張の成否(争点5)
ア本件第2訂正は訂正要件を充たすものであるか(争点5-1)
イ本件第2訂正により無効理由を解消することができるか(争点5-2)
ウ本件カーナビが本件各第2訂正発明の技術的範囲に属するか(争点5-
3)
本件各第2訂正発明の進歩性欠如(特許法29条2項)(争点6)
ア乙2文献を主引例とする進歩性欠如(争点6-1)
イ乙3文献を主引例とする進歩性欠如(争点6-2)
損害発生の有無及びその額(争点7)
第3争点に関する当事者の主張
1争点1(構成要件充足性)について
〔控訴人らの主張〕
本件発明1の構成要件1C,1Dの充足性(争点1-1)
ア構成要件1Cについて
本件カーナビの構成1cにおける「車両側面から幅方向にドアミラー先
端より約15㎝外側の所までの隔たりを示す側方目安ライン」は,本件発
明1の構成要件1Cの「車両の幅方向の距離を示す第一の指標」に該当す
る。
また,本件カーナビの構成1cにおける「車両先端から長さ方向に約3
0㎝先の所までの隔たりを示す前端目安ライン」は,本件発明1の構成要
件1Cの「長さ方向の距離を示す第二の指標」に該当する。
カメラで撮像した画像(第一の画像)とこれら「側方目安ライン」及び
「前端目安ライン」(第二の画像)とを合成してディスプレイに表示させ
る,本件カーナビの構成1cの「電子制御ユニット」は,本件発明1の構
成要件1Cの「・・・を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段」
に該当する。
したがって,本件カーナビは本件発明1の構成要件1Cを充足する。
イ構成要件1Dについて
本件カーナビの構成1dにおける「側方目安ラインと前端目安ライン」
は,本件発明1の構成要件1Dの「第二の画像」に該当する。
したがって,本件カーナビの構成1dにおける,操作手段からの入力に
基づき,側方目安ラインと前端目安ラインを上下左右に移動させ,画面に
おける上記両目安ラインの位置を調整する「電子制御ユニット」は,本件
発明1の構成要件1Dの前記第二の画像を上下左右に移動させ,前記画面
における前記第二の画像の位置を調整する「表示位置調整手段」に該当す
る。
したがって,本件カーナビは本件発明1の構成要件1Dを充足する。
本件発明3の構成要件1Hの充足性(争点1-2)
本件発明3の構成要件1Hの「表示位置調整手段」に該当する。
そして,本件カーナビの構成1hの「側方目安ライン及び前端目安ライン
を上下左右に移動させるインパネ等に設けられた操作スイッチ又はタッチパ
ネル機能付きディスプレイに表示される操作ボタン」は,本件発明3の構成
要件1Hの「前記第二の画像を上下左右に移動させる操作スイッチ」に該当
する。
したがって,本件カーナビは本件発明3の構成要件1Hを充足する。
構成要件充足性のまとめ
ア本件カーナビが,本件発明1の構成要件1A,1B及び1Eを充足する
ことは,前本件
カーナビは,本件発明1の構成要件1C及び1Dを充足するから,本件発
明1の技術的範囲に属する。
イ本件カーナビが,本件発明2の構成要件1Fを充足することは,前記第
上記アのとおり,本件カーナビは,本
件発明1の技術的範囲に属するから(本件発明2の構成要件1Gを充足す
るから),本件発明2の技術的範囲に属する。

のとおりであり,上記アのとおり,本件カーナビは,本件発明1の技術的
範囲に属するから(本件発明3の構成要件1Iを充足するから),本件発
明3の技術的範囲に属する。
〔被控訴人の主張〕
本件発明1の構成要件1C,1Dの充足性(争点1-1)について
ア構成要件1Cについて
本件明細書の発明の詳細な説明には,構成要件1Cの「第二の画像」に
当たる距離指標画像32が「第一の指標」に当たる距離ライン32aと「第
二の指標」に当たる距離ライン32b,数字32cから構成されることが
記載されている(段落【0015】等)。
また,控訴人らは,平成17年9月30日に提出した拒絶査定不服審判
請求書(乙12)において,本件各発明が引用例と異なり,車両から障害
物までの正確な距離を把握することができることを強調していた。
そうすると,本件各発明における「指標」は,障害物との位置関係を把
握するための単なる目安程度のものではなく,構成要件1Cの「第一の指
標」及び「第二の指標」は,数値としての距離が示されているものでなけ
ればならないと解される。
本件カーナビの「側方目安ライン」や「前端目安ライン」は,単に,車
両の外周の位置の目安を示すものにすぎず,数値としての距離が示されて
いるものではないから,「第一の指標」,「第二の指標」には該当しない。
したがって,本件カーナビは,本件発明1の構成要件1Cを充足しない。
イ構成要件1Dについて
本件明細書の発明の詳細な説明には,表示位置調整手段として,車両の
シルエット形状である車両指標画像33を車両の画像31aに一致させ
て,表示位置の調整を行うものしか記載されていないから,本件発明1に
おける「表示位置調整手段」は車両指標画像の位置を調整するものである
必要がある。
本件カーナビでは,「目安ライン」を移動させるだけであるから,本件
発明1の「表示位置調整手段」には該当しない。
したがって,本件カーナビは本件発明1の構成要件1Dを充足しない。
本件発明3の構成要件1Hの充足性(争点1-2)について
前記
から,本件発明3の構成要件1Hを充足しない。
以上によれば,本件カーナビは本件各発明の技術的範囲に属しない。
2争点2(本件特許の請求項1,3,4に係る特許は,特許無効審判により無
効とされるべきものか)について
〔被控訴人の主張〕
乙2文献を主引例とする進歩性欠如(争点2-1)
以下のとおり,本件各発明は,本件特許の出願日前に頒布された刊行物で
ある実願昭60-30262号(実開昭61-146450号)のマイクロ
フィルム(以下「刊行物1」という。乙2)に記載された発明(以下「引用
発明1」という。),特開2001-180401号公報(以下「刊行物2」
という。乙3)に記載された発明(以下「引用発明2」という。)及び周知
技術(乙4~7)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたもので
あるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないもの
であり,同法123条1項2号により特許無効審判において無効とされるべ
きものに当たる。
ア引用発明1の内容
「ドアミラーに配設されており前輪近傍を撮像する撮像手段と,
前記撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段
を設けたことを特徴とする車両用監視装置」
イ引用発明2の内容
「車両からの距離を示す線である距離線64~66と車両の左前端部分
の画像PFLとを合成し,表示手段に表示する画像合成手段を有する車両用
監視装置」
ウ本件発明1の容易想到性
本件発明1と引用発明1との対比
(一致点)
「ドアミラーに配設されており前輪近傍を撮像する撮像手段と,
前記撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段と
を設けたことを特徴とする車両用監視装置」
(相違点1)
本件発明1が,「前輪近傍の路面の画像を含む前記第一の画像と,車
両の幅方向の距離を示す第一の指標及び長さ方向の距離を示す第二の指
標を有する第二の画像と,を合成して前記表示手段に表示させる画像合
成手段」(構成要件1C)を有するのに対し,引用発明1は,「車両の
幅方向の距離を示す第一の指標及び長さ方向の距離を示す第二の指標を
有する第二の画像」がなく,また,第一の画像と第二の画像を「合成し
て前記表示手段に表示させる画像合成手段」を有しない点
(相違点2)
本件発明1が,「前記第二の画像を上下左右に移動させ,前記画面に
おける前記第二の画像の位置を調整する表示位置調整手段」(構成要件
1D)を有するのに対し,引用発明1は,このような構成を有しない点
相違点1の検討
引用発明1は「車両用監視装置」であり,「車両にカメラを取付け,
カメラからの画像に車の進行する方向の先端からの距離を示す画像を重
ねて表示すること」は,周知技術であること(乙4~7)を勘案すれば,
車両用監視装置に係る引用発明1に,車両用監視装置であり,車両の画
像と距離を示す画像を合成して表示するものである引用発明2を適用す
ることは,当業者が容易に着想できることである。
引用発明1に引用発明2を適用することは,引用発明1における「撮
像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段」に,障害物を
回避するために「距離線」を表示することとなり,引用発明1に,車両
からの距離を示す線である距離線と第一の画像とを合成して表示手段に
表示する画像合成手段を設けることとなる。「第一の画像」は,刊行物
1の第4図のようなフロントフェンダ部側方近傍の映像(画像)であり,
車の進行方向も写っているものであって,運転者は,側方だけでなく,
当然前方にも注意を払うものである。この画像において,障害物が存在
し得る場所は,車両の左側及び車両の前方であって,障害物を回避する
ために「距離線」を表示する場所は,車両の左側及び車両の前方となる。
そして,車両の左側の距離線は,車両の左側方向の距離を示す距離線と
いえ,車両の前方の距離線は,車両の前方向の距離を示す距離線といえ
る。
引用発明1に引用発明2を適用して,車両の左側における障害物を回
避するための車両の左側方向の距離を示す線を第一の画像に表示するこ
とは,車が進行した場合に脱輪や左側を接触しないようにするためで
あって,刊行物2には「車両11の最外側の縁を表す表示ライン54」
が記載され,「表示ライン54は,車両11の最外側のラインを地面に
垂直に下ろし,前記ラインを車両11の前後方向に延長させることに
よって設定され,車両11の前方又は後方に向けて突出させられる」(段
落【0043】)ものであり,表示ライン54は車両11の最外側の縁
を表すから,距離線の基準となるものであり,車両の左側方向の距離を
示す線は,車両の最外側の縁からの距離を示す線となり,この線は「車
両の幅方向の距離を示す第一の指標」といえるから,引用発明1に引用
発明2を適用して,車両の左側方向を示す線を「車両の幅方向の距離を
示す第一の指標」とすることは,当業者が容易に想到し得ることである。
引用発明1に引用発明2を適用して,車両の前方における障害物を回
避するための車両の前方向の距離を示す線を第一の画像に表示するにあ
たり,「車両にカメラを取付け,カメラからの画像に車の進行する方向
の先端からの距離を示す画像を重ねて表示すること」は,周知技術であ
るから(乙4~7),車両の前方向の距離を示す線を「車両の長さ方向
の距離を示す第二の指標」とし,「前輪近傍の路面の画像を含む前記第
一の画像と,車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び長さ方向の距離
を示す第二の指標を有する第二の画像と,を合成して前記表示手段に表
示させる画像合成手段」を設けることは,当業者が容易に想到し得るこ
とである。
なお,控訴人らは,距離線64~66が車両の左斜め前方向の距離の
みを示す線であると主張するが,①刊行物2には,「距離線」と記載さ
れているのであるから,車両11からの距離を示す線であると理解する
のが自然であること,②段落【0064】に記載されているように,【図
16】は障害物回避表示処理によって形成される画像であるが,障害物
は車両11の周囲の色々な場所に存在し得るにもかかわらず,刊行物2
には,障害物が存在する方向を把握して,その方向ごとに別々の距離線
を表示することを窺わせるような記載は一切ないことに照らし,控訴人
らの上記主張は当たらない。本件各発明の奏する「障害物までの幅方向
及び長さ方向の距離を把握することができる」という効果との関係でい
えば,本件各発明の指標(車両からの距離の目安を示す線にすぎず,車
両からの正確な距離を示すようなものではない。)と引用発明2の距離
線とは,何ら異なるところがないといえる。
相違点2の検討
「カメラからの画像と距離を示す画像の表示位置がずれた場合等に備
え,距離を示す画像の表示位置を調整できるようにすること」は,周知
技術である(乙4~6)。
そして,乙4には,「固定しても車体の振動,風圧等によりカメラの
位置がずれ,正確な距離が表示できない可能性があった。」(2頁左上
欄14行~右上欄6行)と記載され,乙6には,「走行中の振動でカメ
ラの取り付け傾斜角がずれたりした場合には,距離目盛りパターン画像
と後方画像との対応関係が不適切となり」(段落【0004】)と記載
されているように,カメラからの画像と距離を示す画像との表示位置が
ずれることは,普通に想定されるから,引用発明1に引用発明2を適用
する際に,車体の振動等によりカメラからの画像と距離を示す画像との
表示位置がずれることに備え,距離を示す画像の表示位置を調整できる
ようにすることは容易であり,2つの画像の表示位置の合わせ方として,
平行移動や回転移動させることは普通のことであるから,「前記第二の
画像を上下左右に移動させ,前記画面における前記第二の画像の位置を
調整する表示位置調整手段」を設けることは,当業者が容易に想到し得
ることである。
以上のとおり,本件発明1は,引用発明1に,引用発明2及び周知技
術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができた
ものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができな
いものである。
エ本件発明2の容易想到性
本件発明2と引用発明1との対比
本件発明2と引用発明1とは,相違点1及び2に加え,以下の点にお
いても相違する。
(相違点3)
本件発明2が,「前記第二の画像を表示するための画像データを記憶
した記憶手段」(構成要件1F)を有するのに対し,引用発明1は,こ
のような構成を有しない点
相違点3の検討
引用発明2は,「車両からの距離を示す線である距離線64~66」
と「車両の左前端部分の画像PFLとを合成し,表示手段に表示する」ので
あるから,「車両からの距離を示す線である距離線64~66」の画像
データを記憶した記憶手段を有することは明らかである。
したがって,相違点3に係る構成は,引用発明1に引用発明2を組み
合わせた場合,第一の画像と,第二の画像とを合成して表示手段に表示
させるために,「前記第二の画像を表示するための画像データを記憶し
た記憶手段」を設けるようにすることは,当業者において容易に想到し
得ることである。
以上のとおり,本件発明2は,引用発明1に,引用発明2及び周知技
術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができた
ものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができな
いものである。
オ本件発明3の容易想到性
本件発明3と引用発明1との対比
本件発明3と引用発明1とは,相違点1及び2に加え,以下の点にお
いても相違する。
(相違点4)
本件発明3が,「前記表示位置調整手段は,前記第二の画像を上下左
右に移動させる操作スイッチを有する」(構成要件1H)のに対し,引
用発明1は,このような構成を有しない点
相違点4の検討
表示位置を調整するための手段として,画像を移動させる操作スイッ
チは,周知技術であり,また,上下左右を指示する操作スイッチは,周
知慣用の技術であるから,表示位置調整手段として,このような操作ス
イッチを用い,「前記表示位置調整手段は,前記第二の画像を上下左右
に移動させる操作スイッチを有する」ことは,引用発明1に引用発明2
及び周知技術を組み合わせることで当業者が容易に想到し得ることであ
る。
以上のとおり,本件発明3は,引用発明1に,引用発明2及び周知技
術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができた
ものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができな
いものである。
乙3文献を主引例とする進歩性欠如(争点2-2)
以下のとおり,本件各発明は,引用発明2,引用発明1及び周知技術(乙
4~7)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,
特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,同
法123条1項2号により特許無効審判により無効とされるべきものに当た
る。
ア本件発明1の容易想到性
本件発明1と引用発明2との対比
(一致点)
「前輪近傍を撮像する撮像手段と,
前記撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段と,
を備えた車両用監視装置であって,
前輪近傍の路面の画像を含む前記第一の画像と,車両の幅方向の距離
を示す第一の指標及び長さ方向の距離を示す第二の指標を有する第二の
画像と,を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段と,
を設けたことを特徴とする車両用監視装置」
(相違点5)
本件発明1の撮像手段が「ドアミラー」に配設されているのに対し(構
成要件1A),引用発明2では,「車両前方の左前端及び右前端に配設
されて」いる点
(相違点2)
本件発明1が,「前記第二の画像を上下左右に移動させ,前記画面に
おける前記第二の画像の位置を調整する表示位置調整手段」(構成要件
1D)を有するのに対し,引用発明2ではこの点の明示がない点
相違点5の検討
車両の前方を撮像する撮像手段を設ける場所としては,車両前方の端
部に設けるか,あるいは,ドアミラーに設けるかの二通りしか考えられ
ない。引用発明2における撮像手段は,車両付近の状況を確認し,車両
と障害物との距離を測定するための手段であるから,このような撮像手
段を配設する場所として,ドアミラーに設けてはならないとする理由は
ない。
むしろ,ドアミラーは車両前方からやや後退した位置にあり,車両か
ら突出しているから撮像手段を配設する場所としては適しているといえ,
本件特許の出願当時,撮像手段をドアミラーに配設する構成は周知とも
いい得るほどよく知られた構成であったから(引用発明1のほか,乙7
~9参照),引用発明2に引用発明1のドアミラーに撮像手段を配置す
る構成を組み合わせることは,当業者が容易に想到し得たことである。
相違点2の検討
相違点2に係る構成は,引用発明2
に開示されているに等しい事項であるか,又は必然的に備えることが要
求される周知技術にすぎず,引用発明2に相違点2に係る構成を設ける
ことは,当業者において容易に想到し得たことである。
以上のとおり,本件発明1は,引用発明2に引用発明1及び周知技術
を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができたも
のであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない
ものである。
イ本件発明2の容易想到性
本件発明2と引用発明2との対比
本件発明2と引用発明2とは,相違点5及び2に加え,以下の点にお
いても相違する。
(相違点3)
本件発明2が,「前記第二の画像を表示するための画像データを記憶
した記憶手段」(構成要件1F)を有するのに対し,引用発明2では,
この点の明示がない点
相違点3の検討
に開示されているに等しい事項であり,当業者において容易に想到し得
たものである。
以上のとおり,本件発明2は,引用発明2に,引用発明1及び周知技
術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができた
ものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができな
いものである。
ウ本件発明3の容易想到性
本件発明3と引用発明2との対比
本件発明3と引用発明2とは,相違点5及び2に加え,以下の点にお
いても相違する。
(相違点4)
本件発明3が,「前記表示位置調整手段は,前記第二の画像を上下左
右に移動させる操作スイッチを有する」(構成要件1H)のに対し,引
用発明2は,このような構成を有しない点
相違点4の検討
いて容易に想到し得たものである。
以上のとおり,本件発明3は,引用発明2に,引用発明1及び周知技
術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができた
ものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができな
いものである。
サポート要件違反(特許法36条6項1号)(争点2-3)
本件明細書の記載(段落【0017】,【0018】,【0020】)か
らすれば,本件明細書が開示している表示位置調整手段は,「車両指標画像
33」を「上下左右に移動させ,前記画面における前記第二の画像の位置を
調整する」発明であって,「距離指標画像32」,すなわち「(車両の幅方
向の距離を示す第一の指標及び長さ方向の距離を示す第二の指標を有する)
第二の画像」を「上下左右に移動させ,前記画面における前記第二の画像の
位置を調整する」発明が記載されているとはいえない。
したがって,本件各発明は,特許法36条6項1号の要件を満たしていな
いものであるから,特許法123条1項4号により特許無効審判において無
効とされるべきものに当たる。
〔控訴人らの主張〕
乙2文献を主引例とする進歩性欠如について(争点2-1)
ア本件発明1
本件発明1と引用発明1との一致点,相違点は認める。
相違点1について
a引用発明2について
⒜刊行物2に記載された距離線64~66は,以下のとおり,車両
11から左斜め前方方向に沿った距離を示す線であって,距離の基
準が車両のどこでもよいというような距離線やどのような方向の距
離を示すものであってもよいというような距離線を開示するもので
はないから,「車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び長さ方向
の距離を示す第二の指標」には相当しない。
第1に,刊行物2には,「そのために,前記選択スイッチ25
は,・・・車両11の左前端部分における障害物を回避する際に障
害物回避表示機能を選択するための左前スイッチ31,・・・等を
備える。」(段落【0028】)と記載されており,また,【図1
6】とともに,「また,画像PFLの第2の例においては,車両61
と車両11との間の間隔の目安となる距離線64~66を車両11
からの距離(例えば「15cm」,「50cm」,「2m」等)と
共に画像PFLに表示することもできる。」(段落【0066】)と
記載されていることから(なお,【図16】の車両11は車両の左
前端部分である。),距離線64~66は,車両61と車両11と
の間隔の目安となるもの,すなわち,車両の左前端部からの距離を
示すものであることは明白である。
そして,刊行物2には,距離線64~66の距離の基準が車両の
左前端部分以外の部分であってもよいことは開示も示唆もされてい
ない。
したがって,刊行物2に記載された距離線64~66は,車両の
左前端部分からの距離を示す線であって,距離の基準が車両のどこ
でもよいというような距離線を開示するものではない。
第2に,刊行物2の【図16】の距離線64~66は,車両61
と車両11との間の間隔の目安となるものであるので,車両11(左
前端部分)から車両61(車両61は,【図15】から,車両11
の左斜め前方に位置する。)に向かった左斜め前方方向に沿った距
離を示すものであり,他の方向に沿った距離を示すものではない。
障害物回避においては,運転者はハンドルを右に切って車両を前進
させて障害物を回避する(【図15】,段落【0064】~【00
67】)。このとき,運転者は,車両の左前端部分が障害物にこす
らないように注意をするものであることからも,距離線64~66
が車両11(左前端部分)から車両61に向かった左斜め前方方向
に沿った距離を示すものであり,他の方向に沿った距離を示すもの
ではないことが分かる。
刊行物2の【図16】において,距離線66は,車両11からの
距離を示す15cmとともに記載されているので,当該距離線66
は,車両11(車両の左前端部分)からある方向に沿って15cm
離れた距離を示す線である。ここで,距離線66は,車両11の輪
郭線を模した線を,車両11から左上斜め方向に移動させた線で描
かれているので,距離線66は,車両11から左斜め前方向に15
cm離れた距離を車両11の輪郭線を模した線によって示すもので
ある。距離線64~66のうち,距離線66が車両11に最も近く
かつ長く,距離線64及び65は距離線66と略同じ形状といえる
ので,距離線64及び65も,同様に,車両(左前端部分)の左斜
め前方向の距離を示す線であることは明らかである。
刊行物2の【図16】では,距離線64~66は,車両11から
離れるほど車両11の左斜め前方方向にある線を共通部分として短
くなっており,距離線64~66をまとめて見た場合,左斜め前方
方向に向かって先細りとなっていることから,距離線64~66は,
先細りの方向,つまり,車両11の左斜め前方方向を問題としてい
ることは明らかである。そして,距離線64~66が先細りとなっ
ているということは,当該距離線が複数の異なる方向を問題として
いないことは明らかであり,距離線64~66が車両の左斜め前方
向の距離のみを示す線であることが分かる。
⒝刊行物2の距離線64~66は,車両の左前端部分からの左斜め
前方に沿った距離を示すことを目的とするものであるから,上記距
離線をその目的から離れて,車両の先端からの距離を示す線に変更
したり,長さ方向の距離や幅方向の距離を示す線に変更したりする
ことには阻害要因がある。
したがって,引用発明1に刊行物2に記載された発明及び周知技
術を組み合わせても,相違点1に係る構成には容易に想到し得ない。
b周知技術について
先行技術文献(乙4~7)は,車両の後方を確認するものであって,
車両の前方を確認するものではないから,上記文献に開示されている
技術は,「車両後方を確認するためのカメラを車両後部に取り付け,
カメラからの画像に車両の後端からの距離を示す画像を重ねて表示す
ること」にすぎない。
上記文献には,上記技術を車両前方など他の方向にまで上位概念化
できることについての開示や示唆はない。
そもそも,車両後方は,死角が大きいので後方全体をカメラで監視
する必要があり,距離を示す画像の距離の基準は当然車両の後端にな
るが,車両の前方については,死角が車両の後方よりも格段に少なく,
運転者は車両の前方を見て運転するのが常態であるから,運転者は車
両前方の障害物の確認が比較的容易であり,特に,車両の中央前方(車
両先端の前方)にある障害物については確認が容易なので,距離を示
す画像の距離の基準を車両の先端にする必要性は低い。
したがって,「車両後方を確認するためのカメラを車両後部に取り
付け,カメラからの画像に車両の後端からの距離を示す画像を重ねて
表示すること」を車両前方にまで上位概念化することはできず,先行
技術文献(乙4~7)の記載から,車両前方についても含む技術,す
なわち,「車両にカメラを取付け,カメラからの画像に車の進行する
方向の先端からの距離を示す画像を重ねて表示すること」までが周知
技術であるとすることはできない。
ところで,乙7には,「前方カメラ,側方カメラの表示もカメラの
視野角,方向に合わせてオンスクリーンのパターンを設定すれば,同
様にオンスクリーン表示ができる。」との記載(段落【0023】)
があるが,このような言及がされているのは乙7のみであり,しかも,
乙7には,前方カメラや側方カメラの具体例や距離を示す画像の例な
どは一切開示されていないから,上記記載を根拠に,車両後方につい
ての技術を車両前方についても含む技術にまで上位概念化することは
できない。
上記のとおり,周知技術の内容は,「車両後方を確認するためのカ
メラを車両後部に取り付け,カメラからの画像に車両の後端からの距
離を示す画像を重ねて表示すること」にとどまるから,引用発明1に
上記周知技術を適用しても,本件発明1の「車両の長さ方向の距離を
示す第二の指標」という構成は得られない。
c車両の前方の距離線を設けることが容易想到とはいえないことにつ
いて
⒜刊行物1の第4図は正確なものではないことに加え,引用発明1
で得られるカメラ画像は,フロントフェンダ部側方近傍の画像であ
ればよく,フロントフェンダ部側方近傍を撮像する場合,必ずしも
車両の進行方向がカメラ画像に写るわけではないから,刊行物1に
は,車両の進行方向まで撮影するという技術思想(発明)が開示さ
れているとはいえない。
したがって,当業者は,刊行物1の記載から,車両の前方の距離
線を設けるという課題を見い出すことはないから,引用発明1にお
いて,車両の前方の距離線を設けるという動機付けはない。
⒝引用発明1で得られるカメラ画像は,フロントフェンダ部側方近
傍の画像であればよく,車両の進行方向が写っていないこともある。
また,刊行物1の第4図は正確なものではなく,本来のカメラ画像
は車両の側方が広く写り,ボンネット側は狭いものであることは,
当業者であれば容易に想像がつく。さらに,刊行物1において,カ
メラは車両の前輪近傍を撮影するものであり,ドアミラーの位置な
ど車両の形状との関係によっては,車両の進行方向(車両の前方部
分)がわずかな領域となり,進行方向を良く確認できない場合もあ
る。
このような画像において,当業者は,運転者が車両側方に注意を
払うことを見い出すことができたとしても,車両前方に注意を払う
ことを見い出すことはできない。
刊行物1には,運転者が車両前方に注意を払うことについての開
示や示唆はなく,当業者において,「運転者は,側方だけでなく,
当然前方にも注意を払うものである。」との課題を見い出すことは
できないから,引用発明1で得られるカメラ画像(第一の画像)に,
車両の前方の距離線を設けるという動機付けはない。
dカメラによって監視したい領域と車両の進行方向先端とが車両の幅
方向において重なる場合についての周知技術を両者が重ならない場合
に係る引用発明1には適用し得ないことについて
⒜仮に,「車両後方を確認するためのカメラを車両後部に取り付け,
カメラからの画像に車両の後端からの距離を示す画像を重ねて表示
すること」を車両前方にまで上位概念化したものが周知技術であっ
たとしても,上記周知技術は,「車の進行する方向の先端(車両の
進行方向先端)とカメラによって監視したい領域とが車両の幅方向
において重なる場合において,カメラからの画像に車の進行する方
向の先端からの距離を示す画像を重ねて表示すること」であり(後
記の参考図1参照),「車の進行する方向の先端(車両の進行方向
先端)とカメラによって監視したい領域とが車両の幅方向において
ずれている場合において,カメラからの画像に車の進行する方向の
先端からの距離を示す画像を重ねて表示すること」(後記の参考図
2参照)までもが周知技術であったわけではない。
すなわち,参考図1のように「車の進行する方向の先端(車両の
進行方向先端)とカメラによって監視したい領域とが車両の幅方向
において重なる場合」には,車両が進行した場合に,カメラによっ
て監視したい領域に写る障害物が最初に車両の進行方向先端と接触
し得るので,距離を示す画像の距離の基準は,車の進行する方向の
先端となる。
一方,参考図2のように「車の進行する方向の先端(車両の進行
方向先端)とカメラによって監視したい領域とが車両の幅方向にお
いてずれている場合」には,車両の進行方向先端とカメラによって
監視したい領域に写っている障害物との距離感が問題になるという
よりは,カメラによって監視したい領域に車両の幅方向において重
なる車両の部分(参考図2の部分A)とカメラによって監視したい
領域に写る障害物との距離感が問題となる。
以上のように,カメラによって監視したい領域と車両の進行方向
先端とが車両の幅方向において重なる場合(参考図1の場合)と重
ならない場合(参考図2の場合)とを同列に考えることはできない
から,「車の進行する方向の先端(車両の進行方向先端)とカメラ
によって監視したい領域とが車両の幅方向においてずれている場合
において,カメラからの画像に車の進行する方向の先端からの距離
を示す画像を重ねて表示すること」までが周知技術であったとはい
えない。
【参考図1】(車両を上からみたときの車両,障害物等を示す図)
【参考図2】(車両を上から見たときの車両,障害物等を示す図)
⒝そして,引用発明1は,車両の前輪近傍の側方をカメラによって
監視したい領域(死角部分)としているから,車の進行する方向の
先端とカメラによって監視したい領域とが車両の幅方向においてず
れている場合に該当することは明らかである。
なお,刊行物1の第4図では,車両の前方が広く写っているが,
同図面は,特許図面として描かれたものであって正確なものでない。
また,刊行物1において,テレビカメラ1は車体Aの左側のドアミ
ラー2の背面2aに前方やや下方を向けて内蔵設置されており,カ
メラの撮影方向(光軸)は,車両を上から見た場合に,車両の長さ
方向に沿った方向になっていること(3頁10~12行,第1図,
第2図参照)から,カメラからの映像は,車両の側面(前輪近傍の
側面)よりもカメラの配置位置分左にずれたところを中心とした画
像となり,さらに水平線が画像の縦方向の中央よりも上にある画像
となるはずであること,すなわち,刊行物1のカメラで得られる撮
影画像は,通常,第4図のようにボンネットや前方方向が広く写る
ようなものでなく,車両の側方が広く写り,ボンネット側(車両の
前方)は狭い画像になることは,当業者であれば容易に把握するこ
とができる。
⒞先行技術文献(乙4~7)の記載から認定し得る周知技術は,「車
の進行する方向の先端とカメラによって監視したい領域とが車両の
幅方向において重なる場合」においての周知技術であって,「車の
進行する方向の先端とカメラによって監視したい領域とが車両の幅
方向においてずれている場合」である引用発明1には適用し得ない。
また,「車の進行する方向の先端とカメラによって監視したい領
域とが車両の幅方向においてずれている場合」には,カメラによっ
て監視したい領域に車両の幅方向において重なる車両の部分(参考
図2の部分A)とカメラによって監視したい領域に写る障害物との
距離感が問題となるが,このような場合に,カメラからの画像に車
の進行する方向の先端からの距離を示す画像を重ねて表示するよう
にすると,問題となっている上記の距離感がかえって分かりにくく
なってしまうので,カメラからの画像に車の進行する方向の先端か
らの距離を示す画像を重ねて表示するようにすることには阻害要因
がある。
相違点2について
a引用発明1において,相違点2に係る構成に当業者が容易に想到し
得るとするには,引用発明1に引用発明2を適用して画像に距離線を
表示するようにした上で,更に引用発明2の距離線を上下左右に移動
可能とするように変更する必要がある。
しかしながら,引用発明1に引用発明2を適用する動機は「車両か
らの距離を把握する」ということであり,引用発明2の構成をさらに
変更する動機は,「カメラからの画像と距離を示す画像との表示位置
のずれを補正する」ということであって,二つの動機は全く異なるも
のであるから,「引用発明1に引用発明2を適用する際に,車体の振
動等によりカメラからの画像と距離を示す画像との表示位置がずれる
ことに備え,距離を示す画像の表示位置を調整できるようにする」と
いうことはない。
b「前記第二の画像を上下左右に移動させ」ることは,乙2~7等の
いずれの先行技術文献にも開示も示唆もされていない。
乙4や乙6には,カメラの可動範囲が上下方向であり,カメラから
の画像に表示される距離スケールが画像上における上下方向にずれる
ことが想定されるので,距離スケールを上下方向に動かすことが記載
されているだけであり,乙5には,カメラの可動範囲が上下方向であ
るが,カメラの撮影方向が車両の前後方向に対して斜め方向になって
いるため,カメラからの画像に表示される距離スケールが画像上にお
ける上下斜め方向にずれることが想定されるので,距離スケールを上
下斜め方向に動かすことが記載されているだけである。
したがって,乙4~6の記載から把握することができるのは,「カ
メラの可動範囲から,画像のずれる方向を把握して,距離を示す画像
の移動可能な方向を設定すること」にすぎず,当該距離を示す線の移
動方向を上下左右に設定することではない。
そもそも,引用発明1におけるカメラはドアミラーに内蔵されてお
り,カメラの可動が想定されないから,当業者において,カメラの可
動範囲があることを前提とする周知技術を組み合わせる動機付けがな
いし,仮に,組み合わせたとしても,距離線の移動方向をどのような
方向に設定するのかを認識することはできないから,「前記第二の画
像を上下左右に移動させ」るという構成には容易に想到し得ない。
以上によれば,本件発明1は,引用発明1に,引用発明2及び周知技
術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができた
ものであるとは認められない。
イ本件発明2
前記アと同様の理由により,本件発明2は,引用発明1に,引用発明2
及び周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすること
ができたものであるとは認められない。
ウ本件発明3
前記アと同様の理由により,本件発明3は,引用発明1に,引用発明2
及び周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすること
ができたものであるとは認められない。
乙3文献を主引例とする進歩性欠如について(争点2-2)
ア本件発明1
本件発明1と引用発明2との対比のうち,両者が「車両の幅方向の距
離を示す第一の指標及び長さ方向の距離を示す第二の指標を有する第二
の画像」を有する点で一致するとの点は否認し,その余は認める。
は,車両11から左斜め前方方向に沿った距離を示す線であって,「車
両の幅方向の距離を示す第一の指標及び長さ方向の距離を示す第二の指
標」ではない。
本件発明1と引用発明2との相違点について
a引用発明2の撮像手段で撮像した画像は,障害物と車両の左前端部
分との接触を回避するために,実際に接触が予想される車両の左前端
部分やその近傍が写る画像となっていなければならない。
これに対し,引用発明1の撮像手段で撮像した画像は,狭い道路に
おける離合や車庫入れ等に際し,運転者から死角となる左側面近傍を
監視することができるように,フロントフェンダ部左側方近傍を写す
画像であり,車両の左前端部分やその近傍が写っているものではない。
したがって,引用発明2における撮像手段を引用発明1のようにド
アミラーに設けようとした場合,引用発明2において監視することが
できていた死角部分(車両の左前端部分の前部分やその近傍領域)を
監視することができなくなってしまうため,引用発明2に引用発明1
を組み合わせる動機付けがない。
b引用発明2の距離線64~66は,車両の左前端部分からの左斜め
前方に沿った距離を示すことを目的とするものであるから,上記距離
線をその目的から離れて,車両の先端からの距離を示す線に変更した
り,長さ方向の距離や幅方向の距離を示す線に変更したりすることに
は阻害要因がある。
したがって,引用発明2において,「車両の幅方向の距離を示す第
一の指標及び長さ方向の距離を示す第二の指標」の構成には容易に想
到し得ない。
c仮に,引用発明2の距離線64~66が,車両11の前方方向の距
離を示す線であるならば,当該距離線は,車両11の前方にある障害
物と車両11との距離を把握する目的で設けられる線であるから,引
用発明2は,車両11の前方を撮像することを必須とする発明である
といえる。
これに対し,引用発明1では,車両11の前方は撮像されないから,
引用発明2に引用発明1を適用することには阻害要因がある。

動させ,前記画面における前記第二の画像の位置を調整する表示位置
調整手段」との構成に,当業者において容易に想到し得たとは認めら
れない。
以上によれば,本件発明1は,引用発明2に,引用発明1及び周知技
術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができた
ものであるとは認められない。
イ本件発明2
前記アと同様の理由により,本件発明2は,引用発明2に,引用発明1
及び周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすること
ができたものであるとは認められない。
ウ本件発明3
前記アと同様の理由により,本件発明3は,引用発明2に,引用発明1
及び周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすること
ができたものであるとは認められない。
サポート要件違反(特許法36条6項1号)について(争点2-3)
本件明細書の段落【0017】には,「十字形スイッチ25を操作するこ
とにより,距離指標画像32及び車体指標画像33を上下左右に移動させる
ことができる。車両指標画像33が,車両の画像31aに一致していない場
合は,画面28aにおける距離指標画像32及び車両指標画像33の表示位
置を十字形スイッチ25で調整する。」と記載されており,本件明細書には,
前記第二の画像である距離指標画像32を上下左右に移動させることができ,
前記第二の画像である距離指標画像32の表示位置を十字形スイッチ25で
調整することが記載されている。
したがって,本件明細書には「第二の画像を上下左右に移動させ,前記画
面における前記第二の画像の位置を調整する」ことが記載されているから,
被控訴人のサポート要件違反の主張は理由がない。
3争点3(本件第1訂正による対抗主張の成否)について
〔控訴人らの主張〕
本件第1訂正は訂正要件を充たすものであること(争点3-1)
ア本件第1訂正における訂正事項は,特許請求の範囲の減縮を目的とする
訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり,かつ本件第
1訂正は,本件明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり,
実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
したがって,本件第1訂正は認められるべきものである。
イ被控訴人の主張について
被控訴人は,本件明細書には「第二の指標」が,車両形状にかかわりな
く直線であることは記載されておらず,本件第1訂正は許されない旨主張
するが,本件明細書の「距離ライン32b」の「ライン」という文言の概
念に「直線」が含まれることは明らかであり,【図1】の32bは直線で
描かれており,「第二の指標」が「直線」であることは,本件明細書に記
載した事項である。
本件第1訂正により無効理由が解消されること(争点3-2)
本件各第1訂正発明は,「車両先端からの長さ方向の距離を前記幅方向に
沿って延びる直線で示す第二の指標」との構成を有するから,本件第1訂正
により争点2-1,2-2の無効理由はいずれも解消される。
本件カーナビは,本件各第1訂正発明の技術的範囲に属すること(争点3
-3)
ア本件第1訂正発明1

の構成要件2A,2B及び2Eを充足する。
構成要件2Cについて
本件カーナビの構成2cの「側方目安ライン」,「前端目安ライン」,
「電子制御ユニット」は,それぞれ本件第1訂正発明1の構成要件2C
の「第一の指標」,「第二の指標」,「画像合成手段」に該当するから,
本件カーナビは,本件第1訂正発明1の構成要件2Cを充足する。
構成要件2Dについて
本件カーナビの構成2dの「側方目安ラインと前端目安ライン」,「電
子制御ユニット」は,それぞれ本件第1訂正発明1の構成要件2Dの「第
二の画像」,「表示位置調整手段」に該当するから,本件カーナビは,
本件第1訂正発明1の構成要件2Dを充足する。
以上によれば,本件カーナビは,本件第1訂正発明1の技術的範囲に
属する。
イ本件第1訂正発明2
の構成要件2F,2G及び2Jないし2Lを充足する。
構成要件2Hについて
本件カーナビの構成2hの「側方目安ライン」,「前端目安ライン」,
「電子制御ユニット」は,それぞれ本件第1訂正発明2の構成要件2H
の「第一の指標」,「第二の指標」,「画像合成手段」に該当するから,
本件カーナビは,本件第1訂正発明2の構成要件2Hを充足する。
構成要件2Iについて
本件カーナビの構成2iの「側方目安ラインと直線で示す前端目安ラ
イン」,「電子制御ユニット」は,それぞれ本件第1訂正発明2の構成
要件2Iの「第二の画像」,「表示位置調整手段」に該当するから,本
件カーナビは,本件第1訂正発明2の構成要件2Iを充足する。
以上によれば,本件カーナビは,本件第1訂正発明2の技術的範囲に
属する。
ウ本件第1訂正発明3
の構成要件2M及び2Nを充足する。
構成要件2Oについて
本件カーナビの「前端目安ライン」は,本件第1訂正発明3の「第二
の指標」に該当する。そして,前端目安ラインは,車両先端からの長さ
方向の距離が特定の長さとなる位置に配置されているものであるから,
本件カーナビは,本件第1訂正発明3の構成要件2Oを充足する。
構成要件2Pについて
本件カーナビの「側方目安ラインと前端目安ライン」は,本件第1訂
正発明3の構成要件2Pの「第二の画像」に該当するから,本件カーナ
ビの構成2pの「両目安ラインを上下左右に移動させるインパネ等に設
けられた操作スイッチ又はタッチパネル機能付きディスプレイに表示さ
れる操作ボタン」は,本件第1訂正発明3の構成要件2Pの「操作スイッ
チ」に該当する。
したがって,本件カーナビは,本件第1訂正発明3の構成要件2Pを
充足する。
構成要件2Qについて
本件カーナビが,本件第1訂正発明1の技術的範囲に属することは,
前記ア記載のとおりであるから,本件カーナビは,本件第1訂正発明3
の構成要件2Qを充足する。
以上によれば,本件カーナビは,本件第1訂正発明3の技術的範囲に
属する。
〔被控訴人の主張〕
本件第1訂正は訂正要件を充たすものではないこと(争点3-1)
本件第1訂正は,車両の形状にかかわらず,第二の指標が「直線」である
ことを規定する発明に訂正する事項を含む。
しかしながら,本件明細書には「第二の指標」が,車両形状にかかわりな
く直線であることは記載されておらず,単に,【図1】などにおいて,長方
形状の車両に関して指標の直線近似が記載されているのみである。すなわち,
本件明細書の記載からは,車両形状に合わせて車両側面あるいは車両先端か
らの距離を示したものが本件発明における「指標」であることが理解される
のみであって,当該「指標」が直線であることは理解できない。むしろ,障
害物までの幅方向及び長さ方向の距離を把握することができるとの本件各発
明の効果からすれば,当該「指標」は車両形状に合わせた形状にするものと
理解することが合理的であるといえる。
したがって,本件第1訂正は,本件明細書に記載した事項の範囲内におい
てするものとはいえない事項を含むものとして,許されない。
本件第1訂正によっても無効理由は解消されないこと(争点3-2)
本件第1訂正により争点2-1,2-2の無効理由がいずれも解消される
との控訴人らの主張は否認ないし争う。
本件カーナビは,本件各第1訂正発明の技術的範囲に属しないこと(争点
3-3)
本件カーナビは,前記1〔被控訴人の主張〕記載のとおり,「第一の指標」
及び「第二の指標」を有さず,また,「表示位置調整手段」も有しないから,
本件各第1訂正発明の技術的範囲に属しない。
4争点4(本件各第1訂正発明の進歩性欠如)について(争点4)
〔被控訴人の主張〕
乙2文献を主引例とする進歩性欠如(争点4-1)
以下のとおり,本件各第1訂正発明は,引用発明1,引用発明2及び周知
技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特
許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
ア本件第1訂正発明1の容易想到性
本件第1訂正発明1と引用発明1との対比
(一致点)
「ドアミラーに配設されており,前記ドアミラーよりも前にある前輪
近傍を撮像する撮像手段と,
前記撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段と,
を設け,
前記第一の画像は前輪近傍の路面及び車両の画像を含むが,車両の先
端が写っていない画像である,
ことを特徴とする車両用監視装置。」
(相違点1a)
本件第1訂正発明1が「前輪近傍の路面及び車両の画像を含むが,車
両先端が写っていない前記第一の画像と,車両の幅方向の距離を示す第
一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延び
る直線で示す第二の指標を有する第二の画像と,を合成して前記表示手
段に表示させる画像合成手段」(構成要件2C)を有するのに対し,
引用発明1は「車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端から
の長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示す第二の指標を
有する第二の画像」がなく,また,第一の画像と第二の画像を「合成し
て前記表示手段に表示させる画像合成手段」を有していない点
(相違点2)
本件第1訂正発明1が「前記第二の画像を上下左右に移動させ,前記
画面における前記第二の画像の位置を調整する表示位置調整手段」(構
成要件2D)を有しているのに対し,引用発明1ではこのような構成を
有していない点
相違点1aの検討

b加えて,引用発明1に引用発明2を適用して,車両の前方における
障害物を回避するための車両の前方向の距離を示す線を第一の画像に
表示するにあたり,「車両にカメラを取付け,カメラからの画像に車
の進行する方向の先端からの距離を示す画像を重ねて表示すること」
は周知技術であるから(乙4~7),車両の前方向の距離を示す線の
基準を車両の先端とし,上方から見た車両の形状は,刊行物2の【図
2】の車両の概念図に示されているように通常四角であって,直線的
であり,また,刊行物2の「目標駐車枠基準線75」(段落【007
9】)は距離線ではないが,車両に関係する線が直線で表されている
ことを勘案すれば,刊行物1の第4図に示されているような車体の画
像に,引用発明2を適用し,車両の前方向の距離を示す線を「車両先
端からの長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示す第二
の指標」にすることは,当業者が容易に想到し得ることである。
cしたがって,引用発明1に引用発明2を適用して,引用発明1に「前
輪近傍の路面及び車両の画像を含むが,車両先端が写っていない前記
第一の画像と,車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端か
らの長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示す第二の指
標を有する第二の画像と,を合成して前記表示手段に表示させる画像
合成手段」を設けるようにすることは,当業者が容易に想到し得るこ
とである。
相違点2の検討
以上のとおり,本件第1訂正発明1は,引用発明1に引用発明2及び
周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることが
できたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることが
できないものである。
イ本件第1訂正発明2の容易想到性
本件第1訂正発明2と引用発明1との対比
(一致点)
「ドアミラーに配設されており前輪近傍を撮像する撮像手段と,
前記撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段と,
を設けたことを特徴とする車両用監視装置。」
(相違点1b)
本件第1訂正発明2が「前輪近傍の路面の画像を含む前記第一の画像
と,車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの長さ方向
の距離を直線で示す第二の指標を有する第二の画像と,を合成して前記
表示手段に表示させる画像合成手段」(構成要件2H)を有し,「前記
直線は,前記幅方向に沿って延び(,)」(構成要件2J)るものであ
るのに対し,引用発明1は,「車両の幅方向の距離を示す第一の指標及
び車両先端からの長さ方向の距離を直線で示す第二の指標を有する第二
の画像」がなく,また,「前記直線は,前記幅方向に沿って延び(,)」
るものではなく,さらに,第一の画像と第二の画像を「合成して前記表
示手段に表示させる画像合成手段」を有していない点
(相違点2)
本件第1訂正発明2が「前記第二の画像を上下左右に移動させ,前記
画面における前記第二の画像の位置を調整する表示位置調整手段」(構
成要件2I)を有しているのに対し,引用発明1ではこのような構成を
有していない点
(相違点3)
本件第1訂正発明2が「前記第二の画像を表示するための画像データ
を記憶した記憶手段」(構成要件2K)を有するのに対し,引用発明1
がこのような構成を有しない点
相違点1bの検討

b加えて,引用発明1に引用発明2を適用して,車両の前方における
障害物を回避するための車両の前方向の距離を示す線を第一の画像に
表示するにあたり,「距離を示す画像において車の進行する方向の先
端を基準とすること」は周知技術であるから(乙4~7),車両の前
方向の距離を示す線の基準を車両の先端とし,上方から見た車両の形
状は,刊行物2の【図2】の車両の概念図に示されているように通常
四角であって,直線的であり,また,刊行物2の「目標駐車枠基準線
75」(段落【0079】)は距離線ではないが,車両に関係する線
が直線で表されていることを勘案すれば,刊行物1の第4図に示され
ているような車体の画像に,引用発明2を適用し,車両の前方向の距
離を示す線を「車両先端からの長さ方向の距離を直線で示す第二の指
標」とし,「前記直線は,前記幅方向に沿って延び(,)」るものと
することは,当業者が容易に想到し得ることである。
cしたがって,引用発明1に引用発明2を適用して,引用発明1に「前
輪近傍の路面を含む前記第一の画像と,車両の幅方向の距離を示す第
一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を直線で示す第二の指標
を有する第二の画像と,を合成して前記表示手段に表示させる画像合
成手段」を設けるようにし,「前記直線は,前記幅方向に沿って延び
(,)」るようにすることは,当業者が容易に想到し得ることである。
相違点2の検討
相違点3の検討
以上のとおり,本件第1訂正発明2は,引用発明1に引用発明2及び
周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることが
できたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることが
できないものである。
ウ本件第1訂正発明3の容易想到性
本件第1訂正発明3と引用発明1との対比
(一致点)
「ドアミラーに配設されており,前記ドアミラーよりも前にある前輪
近傍を撮像する撮像手段と,
前記撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段と,
を設け,
前記第一の画像は前輪近傍の路面及び車両の画像を含むが,車両の先
端が写っていない画像であり,
前記車両の画像は,前記ドアミラーよりも前にある前輪の画像を含む,
ことを特徴とする車両用監視装置。」
(相違点1c)
本件第1訂正発明3が「前輪近傍の路面及び車両の画像を含むが,車
両先端が写っていない前記第一の画像と,車両の幅方向の距離を示す第
一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延び
る直線で示す第二の指標を有する第二の画像と,を合成して前記表示手
段に表示させる画像合成手段」(構成要件2C)を有し,「前記第一の
指標及び前記第二の指標は,前記路面上に位置するように前記表示手段
に表示され」(構成要件2M),「前記第二の指標は,車両先端からの
長さ方向の距離が特定の長さとなる位置に配置され」(構成要件2O)
るのに対し,引用発明1は「車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び
車両先端からの長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示す
第二の指標を有する第二の画像」がなく,「前記第一の指標及び前記第
二の指標は,前記路面上に位置するように前記表示手段に表示され」ず,
「前記第二の指標は,車両先端からの長さ方向の距離が特定の長さとな
る位置に配置され」ておらず,また,第一の画像と第二の画像を「合成
して前記表示手段に表示させる画像合成手段」を有していない点
(相違点2)
本件第1訂正発明3が「前記第二の画像を上下左右に移動させ,前記
画面における前記第二の画像の位置を調整する表示位置調整手段」(構
成要件2I)を有しているのに対し,引用発明1ではこのような構成を
有していない点
(相違点4)
本件第1訂正発明3が「前記表示位置調整手段は,前記第二の画像を
上下左右に移動させる操作スイッチを有する」(構成要件2P)のに対
し,引用発明1がこのような構成を有しない点
相違点1cの検討

b加えて,引用発明1に引用発明2を適用して,車両の前方における
障害物を回避するための車両の前方向の距離を示す線を第一の画像に
表示するにあたり,「距離を示す画像において車の進行する方向の先
端を基準とすること」は周知技術であるから(乙4~7),車両の前
方向の距離を示す線の基準を車両の先端とし,上方から見た車両の形
状は,刊行物2の【図2】の車両の概念図に示されているように通常
四角であって,直線的であり,また,刊行物2の「車両11の最外側
の縁を表す表示ライン54」(段落【0043】)や「目標駐車枠基
準線75」(段落【0079】)は距離線ではないが,車両に関係す
る線が直線で表されていることを勘案すれば,刊行物1の第4図に示
されているような車体の画像に,引用発明2を適用し,車両の前方向
の距離を示す線を「車両先端からの長さ方向の距離を前記幅方向に
沿って延びる直線で示す第二の指標」とし,「前記第二の指標は,車
両先端からの長さ方向の距離が特定の長さとなる位置に配置され」る
ようにすることは,当業者が容易に想到し得ることである。
また,引用発明1に引用発明2を適用する際に,乙4~乙6に示さ
れているように,距離を示す画像は,路面上に位置するように表示す
ることは周知の技術であることを勘案し,「前記第一の指標及び前記
第二の指標は,前記路面上に位置するように前記表示手段に表示され」
るようにすることは,当業者が容易に想到し得ることである。
cしたがって,引用発明1に引用発明2を適用して,引用発明1に「前
輪近傍の路面及び車両の画像を含むが,車両先端が写っていない前記
第一の画像と,車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端か
らの長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示す第二の指
標を有する第二の画像と,を合成して前記表示手段に表示させる画像
合成手段」を設け,「前記第一の指標及び前記第二の指標は,前記路
面上に位置するように前記表示手段に表示され」,「前記第二の指標
は,車両先端からの長さ方向の距離が特定の長さとなる位置に配置さ
れ」るようにすることは,当業者が容易に想到し得ることである。
相違点2の検討
相違点4について
以上のとおり,本件第1訂正発明3は,引用発明1に引用発明2及び
周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることが
できたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることが
できないものである。
乙3文献を主引例とする進歩性欠如(争点4-2)
と同様の
理由により,引用発明2に引用発明1及び周知技術を組み合わせることによ
り,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項
の規定により特許を受けることができないものである。
〔控訴人らの主張〕
乙2文献を主引例とする進歩性欠如について(争点4-1)
本件各第1訂正発明は,「車両先端からの長さ方向の距離を前記幅方向に
沿って延びる直線で示す第二の指標」との構成を有し,以下のとおり,引用
発明1に,引用発明2及び周知技術を組み合わせても,当業者において,上
記の構成に容易に想到し得たとはいえない。
ア周知技術について
「車両後方を確認す
るためのカメラを車両後部に取り付け,カメラからの画像に車両の後端か
らの距離を示す画像を重ねて表示すること」が周知技術であるとはいえて
も,当該周知技術を車両前方にまで上位概念化することはできず,先行技
術文献(乙4~7)の記載から,車両前方についても含む技術,すなわち,
「車両にカメラを取付け,カメラからの画像に車の進行する方向の先端か
らの距離を示す画像を重ねて表示すること」までが周知技術であるとする
ことはできない。
したがって,引用発明1に,引用発明2及び周知技術を適用しても,本
件各第1訂正発明の「車両先端からの車両の長さ方向の距離を・・・示す
第二の指標」という構成は得られない。
イ車両の前方向の距離を示す線を直線で示すことが容易想到とはいえない
ことについて
車両を上方から見た場合,車両の前部の形状は,空気抵抗などが考慮さ
れて曲線的になるのであって,直線的ではない。
また,刊行物2の段落【0079】の「目標駐車枠基準線75」は,駐
車スペースの形状の線であって,車両に関係する線ではないから,この記
載は,曲線的である車両の前部の前方向の距離線を直線とする理由とはな
らない。
引用発明2の距離線64~66は,車両の左前端部分を模した形状とす
ることで車両の左前端部分からの距離を把握しやすくするものであるが,
ドアミラーを有する車両の前部は必ず曲線になっておりこの部分が直線で
構成されることはあり得ないから,引用発明1に引用発明2を適用する場
合,当業者は,車両の前方向の距離を示す距離線を車両の左前端部分の曲
線的な形状に合わせて曲線のままにするはずである。
この距離線を直線とすると,車両の左前端部分からの距離を把握しにく
くなってしまうから,引用発明2の距離線64~66の,車両の左前端部
分を模した形状とすることで車両の左前端部分からの距離を把握しやすく
するという本来の目的が失われてしまうことになるので,距離線を直線と
することには阻害要因がある。
以上のとおり,当業者であっても,車両の前方向の距離を示す線を直線
で示すことには容易に想到し得ない。
ウ本件各第1訂正発明は顕著な効果を奏することについて
本件各第1訂正発明は,路面上の位置に配置した幅方向に延びる直線(第
二の指標)によって,通常幅方向中央に位置するカメラには映し出されな
い車両先端から車両の長さ方向の距離を示すことができるという,引用発
明1に引用発明2を組み合わせたとしても得られない顕著な効果を奏する。
本件各第1訂正発明の上記効果に照らせば,当業者において,「車両先
端からの長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示す第二の指
標」という構成には容易に想到し得ないというべきである。
乙3文献を主引例とする進歩性欠如について(争点4-2)
と同様の理由により,本件各第1
訂正発明は,引用発明2に,引用発明1及び周知技術を組み合わせることに
より,当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
5争点5(本件第2訂正による対抗主張の成否)について
〔控訴人らの主張〕
本件第2訂正は訂正要件を充たすものであること(争点5-1)
ア本件第2訂正における訂正事項は,特許請求の範囲の減縮を目的とする
訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり,かつ本願の
願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするもの
であり,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
したがって,本件第2訂正は認められるべきものである。
イおり,「第二の指標」が
「直線」であることは,本件明細書に記載した事項である。
本件第2訂正により無効理由が解消されること(争点5-2)
本件各第2訂正発明は,「車両先端からの車両の長さ方向の距離を前記幅
方向に沿って延びる直線によって示す第二の指標」との構成及び「前記第二
の指標は,前記幅方向を横方向とした場合の前記第一の画像における車両の
画像の横の位置であって前記第一の画像における路面上の位置に配置された
前記幅方向に沿って延びる直線の前記長さ方向における配置位置によって前
記長さ方向の距離を示す」との構成を有するから,本件第2訂正により争点
2-1,2-2の無効理由はいずれも解消される。
本件カーナビは,本件各第2訂正発明の技術的範囲に属すること(争点5
-3)
ア本件第2訂正発明1
の構成要件3A,3B及び3Fを充足する。
構成要件3Cについて
本件カーナビの構成3cの「側方目安ライン」,「前端目安ライン」,
「電子制御ユニット」は,それぞれ本件第2訂正発明1の構成要件3C
の「第一の指標」,「第二の指標」,「画像合成手段」に該当するから,
本件カーナビは,本件第2訂正発明1の構成要件2Cを充足する。
構成要件3Dについて
本件カーナビの構成3dの「側方目安ラインと前端目安ライン」,「電
子制御ユニット」は,それぞれ本件第2訂正発明1の構成要件3Dの「第
二の画像」,「表示位置調整手段」に該当するから,本件カーナビは,
本件第2訂正発明1の構成要件2Dを充足する。
構成要件3Eについて
本件カーナビの構成3eの「前端目安ライン」,「カメラで撮像した
画像」は,それぞれ本件第2訂正発明1の「第二の指標」,「第一の画
像」に該当するから,本件カーナビは,本件第2訂正発明1の構成要件
3Eを充足する。
以上によれば,本件カーナビは,本件第2訂正発明1の技術的範囲に
属する。
イ本件第2訂正発明2
訂正発明2
の構成要件3Gを充足する。
上記アのとおり,本件カーナビは,本件第2訂正発明1の技術的範囲
に属するから(本件第2訂正発明2の構成要件3Hを充足するから),
本件第2訂正発明2の技術的範囲に属する。
ウ本件第2訂正発明3
本件発明
3の構成要件1Hを充足するから,本件第2訂正発明3の構成要件3I
を充足する。
上記アのとおり,本件カーナビは,本件第2訂正発明1の技術的範囲
に属するから(本件第2訂正発明3の構成要件3Jを充足するから),
本件第2訂正発明3の技術的範囲に属する。
〔被控訴人の主張〕
本件第2訂正は訂正要件を充たすものではないこと(争点5-1)
本件第2訂正は,車両の形状にかかわらず,第二の指標が「直線」である
ことを規定する発明に訂正する事項を含む。
は「第二の指標」が,車両形状にかかわりなく直線であることは記載されて
おらず,本件第2訂正は,本件明細書に記載した事項の範囲内においてする
ものとはいえない事項を含むものとして,許されない。
本件第2訂正によっても無効理由は解消されないこと(争点5-2)
本件第2訂正により争点2-1,2-2の無効理由がいずれも解消される
との控訴人らの主張は否認ないし争う。
本件カーナビは,本件各第2訂正発明の技術的範囲に属しないこと(争点
5-3)
本件カーナビは,前記1〔被控訴人の主張〕記載のとおり,「第一の指標」
及び「第二の指標」を有さず,また,「表示位置調整手段」も有しないから,
本件各第2訂正発明の技術的範囲に属しない。
6争点6(本件各第2訂正発明の進歩性欠如)について(争点6)
〔被控訴人の主張〕
乙2文献を主引例とする進歩性欠如(争点6-1)
以下のとおり,本件各第2訂正発明は,引用発明1,引用発明2及び周知
技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特
許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
ア本件第2訂正発明1の容易想到性
本件第2訂正発明1と引用発明1との対比
(一致点)
「ドアミラーに配設されており,前記ドアミラーよりも前にある前輪
近傍を撮像する撮像手段と,
前記撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段と,を
備えた車両用監視装置であって,
前記第一の画像は前輪近傍の路面の画像及び車両の画像を含む,
ことを特徴とする車両用監視装置」
(相違点1d)
本件第2訂正発明1が,「前輪近傍の路面の画像及び車両の画像を含
む前記第一の画像と,車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先
端からの車両の長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線によっ
て示す第二の指標を有する第二の画像と,を合成して前記表示手段に表
示させる画像合成手段」(構成要件3C)を有し,「前記第二の指標は,
前記幅方向を横方向とした場合の前記第一の画像における車両の画像の
横の位置であって前記第一の画像における路面上の位置に配置された前
記幅方向に沿って延びる直線の前記長さ方向における配置位置によって
前記長さ方向の距離を示す」(構成要件3E)のに対し,引用発明1は,
「車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの車両の長さ
方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線によって示す第二の指標を
有する第二の画像」がなく,「第二の画像」がないから,「前記第二の
指標は,前記幅方向を横方向とした場合の前記第一の画像における車両
の画像の横の位置であって前記第一の画像における路面上の位置に配置
された前記幅方向に沿って延びる直線の前記長さ方向における配置位置
によって前記長さ方向の距離を示す」ものもなく,また,第一の画像と
第二の画像を「合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段」も有
しない点
(相違点2)
本件第2訂正発明1が,「前記第二の画像を上下左右に移動させ,前
記画面における前記第二の画像の位置を調整する表示位置調整手段」
(構成要件3D)を有するのに対し,引用発明1は,このような構成を
有しない点
相違点1dの検討
a記載のとおり。
b「第二の指標」についての「前記第二の指標は,前記幅方向を横方
向とした場合の前記第一の画像における車両の画像の横の位置であっ
て前記第一の画像における路面上の位置に配置された前記幅方向に
沿って延びる直線の前記長さ方向における配置位置によって前記長さ
方向の距離を示す」との限定については,直線か否かの違いはあると
しても,刊行物2に記載されている事項にすぎないし,また,乙7に
記載された発明において,カメラを引用発明1のようにドアミラーに
配設しさえすれば,自動的に導かれる構成にすぎない(段落【002
3】,【0025】)。
cしたがって,引用発明1に引用発明2を適用して,「前輪近傍の路
面及び車両の画像を含む前記第一の画像と,車両の幅方向の距離を示
す第一の指標及び車両先端からの車両の長さ方向の距離を前記幅方向
に沿って延びる直線によって示す第二の指標を有する第二の画像と,
を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段」を設け,「前記
第二の指標は,前記幅方向を横方向とした場合の前記第一の画像にお
ける車両の画像の横の位置であって前記第一の画像における路面上の
位置に配置された前記幅方向に沿って延びる直線の前記長さ方向にお
ける配置位置によって前記長さ方向の距離を示す」ようにすることは,
当業者が容易に想到し得たことである。
相違点2の検討
以上のとおり,本件第2訂正発明1は,引用発明1に,引用発明2及
び周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすること
ができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けること
ができないものである。
イ本件第2訂正発明2の容易想到性
本件第2訂正発明2と引用発明1との対比
本件第2訂正発明2と引用発明1とは,相違点1d及び2に加え,以
下の点においても相違する。
(相違点3)
本件第2訂正発明2が,「前記第二の画像を表示するための画像デー
タを記憶した記憶手段」(構成要件3G)を有するのに対し,引用発明
1は,このような構成を有しない点
相違点3の検討
以上のとおり,本件第2訂正発明2は,引用発明1に,引用発明2及
び周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすること
ができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けること
ができないものである。
ウ本件第2訂正発明3の容易想到性
本件第2訂正発明3と引用発明1との対比
本件第2訂正発明3と引用発明1とは,相違点1d及び2に加え,以
下の点においても相違する。
(相違点4)
本件第2訂正発明3が,「前記表示位置調整手段は,前記第二の画像
を上下左右に移動させる操作スイッチを有する」(構成要件3I)のに
対し,引用発明1は,このような構成を有しない点
相違点4の検討
以上のとおり,本件第2訂正発明3は,引用発明1に,引用発明2及
び周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすること
ができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けること
ができないものである。
乙3文献を主引例とする進歩性欠如(争点6-2)
本件各第2と同様の
理由により,引用発明2に引用発明1及び周知技術を組み合わせることによ
り,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項
の規定により特許を受けることができないものである。
〔控訴人らの主張〕
乙2文献を主引例とする進歩性欠如について(争点6-1)
本件各第2訂正発明は,「車両先端からの車両の長さ方向の距離を前記幅
方向に沿って延びる直線によって示す第二の指標」との構成及び「前記第二
の指標は,前記幅方向を横方向とした場合の前記第一の画像における車両の
画像の横の位置であって前記第一の画像における路面上の位置に配置された
前記幅方向に沿って延びる直線の前記長さ方向における配置位置によって前
記長さ方向の距離を示す」との構成を有し,以下のとおり,引用発明1に,
引用発明2及び周知技術を組み合わせても,当業者において,上記の構成に
容易に想到し得たとはいえない。
ア前記4〔控訴人らの主張〕のとおり。
イ距離線(距離を示す画像)を車両の画像の横の位置に配置することが容
易想到とはいえないことについて
引用発明2における距離線64~66は,車両61と車両11との間の
間隔の目安となるものであるから(刊行物2の段落【0066】),車両
の左前端部と障害物との間に配置されることからすると,ドアミラーに設
けたカメラからの画像において,前方向についての距離線は,車両前方の
障害物との距離感を把握するために,車両の進行方向に沿って(すなわち,
車両先端と,車両の長さ方向に沿った車両先端の前方に位置する障害物と
の間に)配置されるはずであり,車両の画像の横の位置に配置されること
はない。
したがって,引用発明1に引用発明2を適用し,車両先端を距離線64
~66の距離の基準とする場合,距離線64~66は車両先端と車両先端
前方にある障害物との間に配置されるのが通常であり,車両の画像の横の
位置には配置しない。
先行技術文献(乙2~7)には,車両の画像の横の位置に第二の指標を
配置するという技術思想は開示も示唆もされていない。
以上のとおり,当業者であっても,距離線(距離を示す画像)を,車両
の画像の横の位置に配置すること(第二の指標を車両の画像の横の位置に
配置すること)には容易に想到し得ない。
ウ本件各第2訂正発明は顕著な効果を奏することについて
本件各第2訂正発明は,車両先端からの車両の長さ方向の短い距離を幅方
向に沿って延びる直線で示すことができることにより,車両先端から車両
に近い位置にある障害物までの長さ方向の距離を把握することができると
いう効果を奏する。
また,本件各第2訂正発明は,車両前輪近傍を俯瞰的に撮像した画像に
おいて,車両の先端及びその近傍を見ることはできないが,車両先端から
の車両の長さ方向の距離を車両の画像の横の位置かつ路面上の位置に直線
で示すことにより,車両先端から車両に近い位置にある障害物までの長さ
方向の距離を把握することができるという,引用発明1に引用発明2を組
み合わせたとしても得られない顕著な効果を奏する。
本件各第2訂正発明の上記効果に照らせば,当業者において,距離線(距
離を示す画像)を車両の画像の横の位置に配置する(第二の指標を車両の
画像の横の位置に配置する)という構成には容易に想到し得ないというべ
きである。
乙3文献を主引例とする進歩性欠如について(争点6-2)
と同様の理由により,本件各第2
訂正発明は,引用発明2に,引用発明1及び周知技術を組み合わせることに
より,当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
7争点7(損害発生の有無及びその額)について
〔控訴人らの主張〕
間接侵害行為
ア被控訴人の販売する製品
被控訴人は,以下の被控訴人製品を製造し,日産に対してこれを販売し,
又は販売の申出をした。
⒜ドアミラーに取り付けられ,前輪近傍を撮像するカメラに接続可能
であり,⒝前記カメラで撮像された画像を表示するディスプレイに接続
され,又はそのようなディスプレイを含み,⒞カメラで撮像した画像と,
側方目安ライン及び前端目安ラインとを合成して,ディスプレイに表示
させる,電子制御ユニットを備え,⒟表示画像を上下左右に移動するた
めの操作手段からの入力に基づいて目安ラインの表示位置を調整する電
子制御ユニットを備える,⒠カーナビゲーション・システムのメインユ
ニット。
⒜ドアミラーに取り付けられ,前輪近傍を撮像するカメラと,⒝カメ
ラで撮像された画像を表示するディスプレイとを備え,⒞カメラで撮像
した画像と,側方目安ライン及び前端目安ラインとを合成して,ディス
プレイに表示させ,⒟表示画像を上下左右に移動するための操作手段か
らの入力に基づいて目安ラインの表示位置を調整する,⒠カーナビゲー
ション・システムのメインユニットに接続して用いる,前記⒞又は⒟の
動作の少なくとも一部を実行するカメラコントロールユニット。
イ間接侵害
被控訴人が業として被控訴人製品を製造し,日産に販売及び販売の申出
をする行為は,以下のとおり,本件各発明に係る特許権を侵害する行為と
みなされる。
101条1号該当性
被控訴人製品は,本件各発明の技術的範囲に属する本件カーナビの構
成部品であり,その生産にのみ用いられるものである。
したがって,被控訴人の行為は,特許法101条1号に該当する。
101条2号該当性
被控訴人製品は,本件各発明の技術的範囲に属する本件カーナビの構
成部品であり,本件各発明による課題の解決に不可欠な物である。
また,被控訴人製品は,本件カーナビに固有の仕様に基づいて製造さ
れる物であり,日本国内において広く一般に流通しているものではない。
被控訴人は,遅くとも平成21年9月16日までには,これに先立ち
控訴人らから本件特許権に関しての協議の申出を受けた日産との間で,
本件カーナビと本件特許権との関係について対応を協議しており,遅く
とも同日には,本件各発明が特許発明であること及び被控訴人製品が本
件各発明の実施に用いられることを知っていた。
したがって,被控訴人の行為は,特許法101条2号に該当する。
損害額
ア本件カーナビに該当するカーナビゲーション・システム製品の型番は,
少なくとも下記のとおりである。

T00NA-1BB1A,T00NA-1BB2A,T00NA-1B
B3A,T00NA-1BB4A,T00NA-1BB5A,T00NA
-1BB6A,T00NA-1SU0A,T00NA-1SU1A,T0
0NA-1SU3A,T00NA-1VB0A,T00NA-1VB1A,
T00NA-1VB2A,T00NA-3UC0A,T00NA-JG0
2A,T00NA-JG04A,T00NA-JG05A,UTN24-
T875J,UTN27-T8Z3J,UTN30-T970J,HC5
09D-W,HC309-W,HC509D-A,HC309D-A,H
C510D-W,HC510D-A,MC311D-W,MC311D-

イ上記アの型番のカーナビゲーション・システム製品の対象車種の平成2
0年から平成22年までの3年間の販売台数は合計91万7260台であ
り,1か月当たりの平均販売台数は2万5479台である。
本件カーナビが搭載されている割合は,販売台数の25%を下らないか
ら,本件カーナビの1か月当たりの平均販売台数は6369台を下らない。
ウ本件カーナビの販売価格は1台当たり20万円を下らないから,被控訴
人製品の販売価格は1台当たり10万円を下らない。
したがって,被控訴人の1か月当たりの被控訴人製品の売上高は,6億
3690万円を下らない。
エ控訴人らが,本件各発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額
(特許法102条3項)は,売上高の10%とみるべきであるから,1か
月当たり6369万円を下らないというべきである。
したがって,控訴人らの損害額は,本件特許権の設定登録日である平成
20年3月14日から平成24年1月までの46か月間について,29億
2974万円を下らない。
〔被控訴人の主張〕
間接侵害行為について
控訴人らの主張は否認ないし争う。
なお,被控訴人の販売形態には,ディスプレイ,制御ユニット,コントロー
ルパネル等で構成される一体のシステム製品(ただし,カメラは含まない。)
を販売する場合と,その一部のみを単体で,あるいは,組み合わせて販売す
る場合とがある。いずれの場合においても,被控訴人は,製品に側方カメラ
を組み合わせた形での販売は行っておらず,側方カメラは,日産やそのカー
ディーラ(以下「日産等」という。)において,別途購入し,側方カメラと
その他の製品を組み合わせている。
また,制御ユニットには,サイドビューモニター(側方カメラを配備し,
車両の前方及び側方を確認できる機能)用のプログラムが組み込まれている
場合と組み込まれていない場合があり,組み込まれている場合であっても,
被控訴人が出荷する段階では,機能はオフの状態とされており,日産等にお
いて,機能をオンにする設定を行わなければ作動しないものである。
損害額について
控訴人らの主張は否認ないし争う。
控訴人らの主張するカーナビゲーション・システム製品の型番は,被控訴
人が日産に製品を納入するに際して付している製造番号(型番)とは異なる
ため,控訴人ら主張の型番の製品に被控訴人の製品がどの範囲で含まれてい
るのか知らない。
第4当裁判所の判断
1被控訴人は,本件各発明は,刊行物1に記載された発明,刊行物2に記載さ
れた発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたもの
であるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないもの
であり,同法123条1項2号により特許無効審判において無効とされるべき
ものであるから,控訴人らは,被控訴人に対し,本件各発明に係る本件特許権
を行使することはできない(特許法104条の3第1項)旨主張するので,本
件事案に鑑み,争点2-1(乙2文献を主引例とする進歩性欠如)から判断す
る。
2争点2-1(乙2文献を主引例とする進歩性欠如)について
本件明細書の記載
ア本件各発明の特許請求の範囲のとおりである。
イ本件明細書(甲2)には,次のような記載がある(下記記載中に引用す
る図面については,別紙1の本件明細書図面目録を参照。)。
発明の属する技術分野
「本発明は,電荷結合素子(CCD)カメラ等の撮像手段により車両
の周辺を監視する車両用監視装置に関するものである。」(段落【00
01】)
従来の技術
「従来より,車両の周辺を監視する撮像カメラを備えた車両用監視装
置が種々提案されており,例えば実開昭61-146450号公報(判
決注・刊行物1)に開示されている。斯かる車両用監視装置は,ドアミ
ラー1のハウジング2内に撮像カメラ3を配設し,この撮像カメラ3に
より前輪4の近傍を撮像し,前輪4の近傍の映像を車室内のモニターに
表示するものである(図7参照)。このような車両用監視装置を用いる
ことにより,運転席から目視できないエリアに障害物等がないかどうか
をモニターで監視することができる。しかし,運転者がモニターで障害
物を発見しても,その障害物が車両からどの程度の距離に位置している
のか把握し難いという問題を有していた。」(段落【0002】)
「この問題に対して,撮像カメラ3で撮った画像に,車両からの距離
の指標となるマークを重畳させて表示することが考えられる。例えば,
図8に示すように,撮像カメラ3で撮像した画像5と,距離指標画像6
とをスーパーインポーズ回路等で合成してモニターに表示することで,
運転者は距離指標画像6を目安にして,障害物が車両からどの程度の距
離に位置しているか把握することができる。なお,距離指標画像6は,
車両側面からの距離を示す距離ライン6aと,この距離ライン6aの傍
らに表示される数字6bとからなるものである。」(段落【0003】)
発明が解決しようとする課題
「しかしながら,上述の距離ライン6aは,車両側面からの距離,即
ち,幅方向の距離の目安にはなるが,車両の長さ方向の目安にはならな
いため,例えば,車両前方の壁に車両を可及的に近付けるための目安に
はならないという問題を有していた。本発明は,この問題に鑑みなされ
たものであり,車両の長さ方向の距離を示す指標を表示することにより,
長さ方向の距離を把握できる車両用監視装置を提供するものである。」
(段落【0004】)
課題を解決するための手段
「本発明は,前記課題を解決するため,ドアミラーに配設されており,
前記ドアミラーよりも前にある前輪近傍を撮像する撮像手段と,前記撮
像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段と,を備えた車
両用監視装置であって,前輪近傍の路面及び車両の画像を含むが,車両
先端が写っていない前記第一の画像と,車両の幅方向の距離を示す第一
の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる
直線で示す第二の指標を有する第二の画像と,を合成して前記表示手段
に表示させる画像合成手段と,前記第二の画像を上下左右に移動させ,
前記画面における前記第二の画像の位置を調整する表示位置調整手段と,
を設けたものである。」(段落【0005】)
「また,本発明は,前記第二の画像を表示するための画像データを記
憶した記憶手段を有するものである。」(段落【0007】)
「また,本発明は,前記表示位置調整手段は,前記第二の画像を上下
左右に移動させる操作スイッチを有するものである。」(段落【000
8】)
発明の実施の形態
「10はドアミラーであり,このドアミラー10はハウジング11の
内部にミラー12を設けたものである(図2及び図3参照)。ドアミラー
10は,ハウジング11を支持する支持部13を有しており,この支持
部13は車両のドアに固定されている。ミラー12はホルダー14に固
定されており,このホルダー14はハウジング11に支持されている。
ホルダー14は揺動自在になっており,使用者はミラー12の角度を調
整することができる。」(段落【0011】)
「15はCCDカメラ(撮像手段)であり,このCCDカメラ15は
ハウジング11に収容されている。ハウジング11にはCCDカメラ1
5のレンズに対向する開口16が形成されており,この開口16からC
CDカメラ15により車両の前輪近傍を撮像する。開口16には,CC
Dカメラ15に雨滴が浸入しないように透明カバー17が接着されてい
る。」(段落【0012】)
「次に,図4に基づいて,表示位置調整手段20について説明する。
表示位置調整手段20は,操作器21及びマイコン22からなるもので
ある。操作器21はメインスイッチ23,セットスイッチ24及び十字
形スイッチ25(操作スイッチ)を有しており,操作器21から出力さ
れる操作信号はマイコン22に出力される。26はフラッシュメモリ(記
憶手段)であり,このフラッシュメモリ26には画像データが記憶され
ている。」(段落【0013】)
「マイコン22は,CPU22a,ROM22b,RAM22cを有
しており,操作器21からの操作信号に基づいて,フラッシュメモリ2
6から画像データを読み出して,表示コントローラ27に出力する。表
示コントローラ27は,CCDカメラ15から出力された画像データと,
フラッシュメモリ26から読み出された画像データとを合成して,表示
器28に表示させる。表示器28としては,TFT(ThinFilmTransistor)
型の液晶表示器,有機電界発光表示素子またはCRT(CathodeRayTube)
等を用いることができる。」(段落【0014】)
「図1は,表示器28の画面28aに表示された画像の一例を示すも
のである。31は撮像画像(第一の画像)であり,この撮像画像31は
CCDカメラ15で撮像した車両の画像31aや前輪近傍の路面の画像
からなる。32は車両からの距離を示す指標である距離指標画像(第二
の画像)であり,この距離指標画像32は,車両側面からの距離を示す
距離ライン32a(第一の指標)と,車両先端からの距離を示す距離ラ
イン32b(第二の指標)と,距離ライン32aの傍らに表示される数
字32cとからなるものである。33は車両指標画像(第三の画像)で
あり,この車両指標画像33は,車両のシルエット形状になっている。
距離指標画像32及び車両指標画像33を表示させるための画像データ
は,フラッシュメモリ26に記憶されている。」(段落【0015】)
「運転者がメインスイッチ23をオンにすると,撮像画像31及び距
離指標画像32が画面28aに表示され,運転者は,画面28aに映し
出された撮像画像31を参考にしながら,車両を移動させることができ
る。
例えば,側方の壁に車両を可及的に近づけたり,高速道路の入口にお
いて自動チケット発券機に車両を近づけることができる。このとき,距
離ライン32aを目安にすることにより,側方の壁や自動チケット発券
機が,車両からどの程度の距離があるか判断できる。また,例えば,車
両前方の壁に車両を可及的に近付けることができ,このとき,距離ライ
ン32bを目安にすることにより,前方の壁が車両の先端からどの程度
の距離にあるか判断できる。」(段落【0016】)
「次に,距離指標画像32の表示位置調整について説明する。メイン
スイッチ23がオンになっている状態で,セットスイッチ24をオンす
ると,撮像画像31及び距離指標画像32と共に,車両指標画像33が
表示される。そして,十字形スイッチ25を操作することにより,距離
指標画像32及び車体指標画像33を上下左右に移動させることができ
る。車両指標画像33が,車両の画像31aに一致していない場合は,
画面28aにおける距離指標画像32及び車両指標画像33の表示位置
を十字形スイッチ25で調整する。」(段落【0017】)
「例えば,図6のように,車両指標画像33が車両の画像31よりも
左側に位置しているときは,十字形スイッチ25の右方向マーク部分2
5aを押して,距離指標画像32及び車両指標画像33を右側に移動さ
せ,車両指標画像33を車両の画像31aに一致させる(図1参照)。
そして,再びセットスイッチ24を押すと,表示位置調整が終了する。」
(段落【0018】)
「本実施形態にように,車両の幅方向の距離を示す距離ライン32a
と,長さ方向の距離を示す距離ライン32bとを,画面28aに表示す
ることにより,側方の障害物までの距離だけでなく,前方の障害物まで
の距離を把握することができる。」(段落【0019】)
「なお,表示器28は,車両用監視装置の専用であっても良いが,例
えばナビゲーション装置のディスプレイと共用させても良い。また,本
実施形態の車両用監視装置は,メインスイッチ23がオンになっている
ときは,撮像画像31及び距離指標画像32が表示されるものであるが,
距離指標画像32を選択的に表示させるものであっても良い。また,距
離指標画像32及び車両指標画像の位置を調整するだけでなく,距離指
標画像32及び車両指標画像を回転させて角度も調整するようにしても
良い。また,距離指標画像32,車両指標画像33は,実線であったが,
本実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能であり,例えば
点線であっても良いし,着色領域であっても良い。」(段落【0020】)
発明の効果
「本発明は,ドアミラーに配設されており前輪近傍を撮像する撮像手
段と,前記撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する表示手段と,
を備えた車両用監視装置であって,前輪近傍の路面の画像を含む前記第
一の画像と,車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び長さ方向の距離
を示す第二の指標を有する第二の画像と,を合成して前記表示手段に表
示させる画像合成手段と,前記第二の画像を上下左右に移動させ,前記
画面における前記第二の画像の位置を調整する表示位置調整手段と,を
設けたものであり,障害物までの幅方向の距離及び長さ方向の距離を把
握することができる。」(段落【0022】)
ウ前記ア及びイの記載によれば,本件各発明の構成及びその特徴は以下の
とおりであると認められる。
「本発明」は,CCDカメラ等の撮像手段により車両の周辺を監視す
る車両用監視装置に関する。
従来より,車両の周辺を監視する撮像カメラを備えた車両用監視装置
が種々提案されており,例えば刊行物1に開示された車両用監視装置は,
ドアミラー1のハウジング2内に撮像カメラ3を配設し,この撮像カメ
ラ3により前輪4の近傍を撮像し,前輪4の近傍の映像を車室内のモニ
ターに表示するものであり,このような車両用監視装置を用いることに
より,運転席から目視できないエリアに障害物等がないかどうかをモニ
ターで監視することができるものである。
この車両用監視装置では,運転者がモニターで障害物を発見しても,
その障害物が車両からどの程度の距離に位置しているのか把握し難いと
いう問題があるが,撮像カメラ3で撮像した画像5に,車両側面からの
距離を示す距離ライン6aとこの距離ライン6aの傍らに表示される数
字6bとからなる距離指標画像6を重畳させてモニタに表示することで,
運転者は距離指標画像6を目安にして,障害物が車両からどの程度の距
離に位置しているか把握することができた。
しかしながら,距離ライン6aは,車両側面からの距離(すなわち幅
方向の距離)の目安にはなるが,車両の長さ方向の目安にはならないた
め,例えば,車両前方の壁に車両を可及的に近付けるための目安にはな
らないという問題を有していた。
「本発明」は,距離ライン6aが車両の幅方向の距離の目安にはなる
が,車両の長さ方向の目安にはならないという前記課題を解決するため,
車両の長さ方向の距離を示す指標を表示することにより,長さ方向の距
離を把握できる車両用監視装置を提供することを目的とするものであり,
その解決手段として,本件発明1は,ドアミラーに配設されており,前
記ドアミラーよりも前にある前輪近傍を撮像する撮像手段と,前記撮像
手段で撮像した第一の画像(31)を画面に表示する表示手段と,を備
えた車両用監視装置であって,前輪近傍の路面及び車両の画像を含むが,
車両先端が写っていない前記第一の画像と,車両の幅方向の距離を示す
第一の指標(距離ライン32a)及び車両先端からの長さ方向の距離を
前記幅方向に沿って延びる直線で示す第二の指標(距離ライン32b)
を有する第二の画像(32)と,を合成して前記表示手段に表示させる
画像合成手段と,前記第二の画像を上下左右に移動させ,前記画面にお
ける前記第二の画像の位置を調整する表示位置調整手段(20)と,を
設ける,という構成を,本件発明2は,本件発明1の構成に加え,第二
の画像を表示するための画像データを記憶した記憶手段(26)を有す
る,という構成を,本件発明3は,本件発明1の構成に加え,表示位置
調整手段が第二の画像を上下左右に移動させる操作スイッチ(25)を
有する,という構成を,採用した。
本件各発明によれば,車両の幅方向の距離を示す第一の指標(距離ラ
イン32a)と,長さ方向の距離を示す第二の指標(距離ライン32b)
とを,表示手段(画面28a)に表示することにより,側方の障害物ま
での距離だけでなく,前方の障害物までの距離を把握することができる。
したがって,本件各発明は,障害物までの幅方向の距離のみならず,
長さ方向の距離をも把握することができるという効果を奏する。
刊行物1の記載
ア刊行物1(乙2)には,次のような記載がある(下記記載中に引用する
図面については,別紙2の刊行物1図面目録を参照。)。
考案の名称
「自動車の側方監視装置」(1頁3行)
実用新案登録請求の範囲
「自動車に装着された左右のドアミラーのうち,少なくとも運転席と
反対側のドアミラーの背面にテレビカメラを設置し,車室内の運転席近
傍には前記テレビカメラと接続されたテレビ受像機を配し,前記テレビ
カメラによってテレビ受像機に自動車のフロントフェンダ部側方近傍を
映しだすようにした自動車の側方監視装置。」(1頁5行~11行)
産業上の利用分野
「本考案は自動車の側方監視装置に係り,特に自動車の側方の死角部
分を運転者が運転席に居ながらにして十分に確認できるようにした監視
装置に関するものである。」(1頁14行~17行)
従来の技術及び考案が解決しようとする問題点
「最近,自動車のフロントボンネット形状が従来の箱型からウェッジ
型へと変化し,またリアビューミラーの取付位置もフロントフェンダ部
分からドア部分へと変わってきた。その結果,運転席(運転席は車体中
央より右側寄りにあるものとして説明する)からは車体の左端の位置を
確認するための基準となるべきものが何も見えず,従って,車体の左端
がどこまであるのかがよく解らない状態となっている。またこのような
デザインの自動車はもちろんのこと,従来の箱型等のものであっても,
運転席から見ると車体左側面近傍は所謂死角となり,安全運転上問題と
なっていた。特に狭い道路における離合や車庫入れ等に際しては,車7
左側面近傍の死角部分についての安全が確認できず,そのために車体左
側面を電柱や塀等に接触させたり,溝の中へ左車輪を脱落させたり,ま
た極端な場合には通行人に接触することなどがあった。」(1頁19行
~2頁16行)
問題点を解決するための手段
「本考案は上記の点に鑑みてなされたもので,運転席と反対側の車体
側方近傍を十分に確認できる自動車の側方監視装置を提供するもので,
該目的を達成するため,ドアミラーのうち少なくとも運転席と反対側の
ドアミラーの背面にテレビカメラを設置し,車室内の運転席近傍にはテ
レビカメラと接続されたテレビ受像機を配し,テレビカメラによってテ
レビ受像機に自動車のフロントフェンダ部側方近傍を映しだすようにし
たことを特徴としている。」(2頁18行~3頁7行)
実施例
「第1図は本考案実施例におけるテレビカメラ1の実装外観図である。
テレビカメラ1は車体Aの左側のドアミラー2の背面2aに前方やや下
方を向けて内蔵設置されている。」(3頁9行~12行)
「第3図は車室内運転席近傍の外観図であり,運転席3の左側方に位
置するコンソールボックス4にはテレビ受像機5が設置され,このテレ
ビ受像機5は前記テレビカメラ1の出力コード1cとケーブル(図示せ
ず)によって接続されている。」(3頁20行~4頁4行)
「第4図は前記テレビカメラ1によって映し出されたテレビ受像機5
上の映像である。画面5aには,車体Aの左側フロントフェンダ部6,
左前輪7,フェンダ部側方近傍の路肩8あるいは塀9等が映しだされ,
運転席3からは通常視認できない死角部分が確認される。」(4頁10
行~15行)
考案の効果
「本考案は以上の如くであるから,テレビカメラによってフロントフェ
ンダ部近傍を運転席から十分に監視できるようになり,脱輪や障害者と
の衝突を未然に防ぐなど,安全確認効果は極めて著しい。」(7頁11
行~15行)
イ前記アの記載によれば,刊行物1には,「ドアミラーに配設されており
前輪近傍を撮像する撮像手段と,前記撮像手段で撮像した第一の画像を画
面に表示する表示手段を設けたことを特徴とする車両用監視装置。」との
発明(引用発明1)が記載されているものと認められる。
ウ前記アの記載によれば,引用発明1の特徴は以下のとおりであると認め
られる。
引用発明1は,自動車の側方監視装置に係り,特に自動車の側方の死
角部分を運転者が運転席に居ながらにして十分に確認できるようにした
監視装置に関する。
従来,自動車の運転席(車体中央より右側寄りにあるものとする。)
から見ると,車体左側面近傍はいわゆる死角となり,特に,狭い道路に
おける離合や車庫入れ等に際しては,車体左側面近傍の死角部分につい
ての安全が確認できず,そのために,車体左側面を電柱や塀等に接触さ
せたり,溝の中へ左車輪を脱落させたり,極端な場合には通行人に接触
したりするなど,安全運転上問題があった。
引用発明1は,上記課題に鑑み,運転席と反対側の車体側方近傍を十
分に確認できる自動車の側方監視装置を提供することを目的とし,その
解決手段として,ドアミラーのうち少なくとも運転席と反対側のドアミ
ラーの背面にテレビカメラを設置し,車室内の運転席近傍にはテレビカ
メラと接続されたテレビ受像機を配し,テレビカメラによってテレビ受
像機に自動車のフロントフェンダ部側方近傍を映し出すようにするとい
う構成を採用した。
引用発明1に係る実施例では,テレビカメラ1は車体Aの左側のドア
ミラー2の背面2aに前方やや下方を向けて内蔵設置されており,テレ
ビカメラ1によって映し出されたテレビ受像機5上の映像(第4図)に
は,車体Aの左側フロントフェンダ部6,左前輪7,フェンダ部側方近
傍の路肩8あるいは塀9等が映し出され,運転席3からは通常視認でき
ない死角部分が確認されるようになっている。
引用発明1によれば,テレビカメラによってフロントフェンダ部近傍
を運転席から十分に監視できるようになり,脱輪や障害者との衝突を未
然に防ぐなど,安全確認の効果を奏する。
本件発明1の進歩性の有無について
ア本件発明1と引用発明1との対比
記載の一致点において一致し,相違点1及び2の点において相違するもの
と認められる。
イ相違点1の検討
刊行物2の記載
刊行物2(乙3)には,次のような記載がある(下記記載中に引用す
る図面については,別紙3の刊行物2図面目録を参照。)。
a発明の属する技術分野
「本発明は,運転支援装置及び運転支援方法に関するものである。」
(段落【0001】)
b従来の技術及び発明が解決しようとする課題
「従来,自動車等の車両においては,一般に大きな車体を有するの
で,運転者が運転席に座って車外を見ると,車両の外部周縁の近傍に
死角が形成される。そこで,通常,運転者は,サイドミラー及びバッ
クミラーを介して反射された映像を見たり,窓から顔を出したり,車
両から降りたりして車外の様子を確認するようにしている。」(段落
【0002】)
「ところが,サイドミラー及びバックミラーによって得られる映像
の範囲は,サイドミラー及びバックミラーの寸法によって決まるので,
確認することができる映像の範囲が限られる。また,窓から顔を出し
たり,車両から降りたりして車外の様子を確認する作業が煩わしい。
したがって,運転者は死角の部分を推定して運転することが多く,そ
の場合,車両が障害物に接触したり,車輪が路肩の溝にはまったりす
ることがある。」(段落【0003】)
「そこで,運転者にとって死角の部分のうち,車両の後方の左右両
側を撮影するために第1,第2のカメラを,車両の前方の左右両側を
撮影するために第3,第4のカメラをそれぞれ配設した運転支援装置
が提供されている(特開平5-310078号公報参照)。この場合,
第1~第4のカメラによって撮影された被撮影体の画像の情報を合成
することによって,表示画面の四つの領域に,車両の後方の左右両側
の第1,第2の画像,及び車両の前方の左右両側の第3,第4の画像
を形成することができる。」(段落【0004】)
「しかしながら,前記従来の運転支援装置においては,第1~第4
の画像が並行に,かつ,同時に運転者に提供されるので,運転者にとっ
て各第1~第4の画像から必要な情報を得るための作業が煩わしい。
また,所定の選択キー等を操作することによって,第1~第4の画像
のうちの必要な一つの画像を選択し,表示画面の全体にわたって形成
することができるが,前記選択キー等を操作する必要があるので,画
像を形成するための作業が煩わしい。さらに,最適な画像を選択する
ために運転者による思考が要求されるので,画像上の有用な情報が見
過ごされてしまうことがある。しかも,緊急性を要する情報である場
合,即座に画像を選択することが困難であり,作業が一層煩わしくなっ
てしまう。」(段落【0005】)
「本発明は,前記従来の運転支援装置の問題点を解決して,運転者
にとって死角の部分の画像のうち,運転者の意図に合う最適な画像を
形成することができ,しかも,画像を形成するための作業を簡素化す
ることができる運転支援装置及び運転支援方法を提供することを目的
とする。」(段落【0006】)
c課題を解決するための手段
「そのために,本発明の運転支援装置においては,車両に搭載され,
所定の被撮影体を撮影する撮像装置と,表示画面を備えた表示部と,
運転者によって操作され,あらかじめ設定された表示機能を選択する
ための操作手段と,撮影によって得られた画像を前記表示画面に形成
する画像形成処理手段と,現在の車両状況を検出する車両状況検出手
段と,現在の車両状況において表示機能が実行された履歴があるかど
うかを判断する表示履歴判断処理手段とを有する。」(段落【000
7】)
d発明の実施の形態
⒜「図1は本発明の実施の形態における運転支援装置の機能ブロッ
ク図である」(段落【0013】)
「図において,CFL,CFR,CRL,CRRは,車両に搭載され,所定の
被撮影体を撮影する撮像装置としてのカメラ,22は表示画面を備
えた表示部としてのディスプレイ,25は,運転者によって操作さ
れ,あらかじめ設定された表示機能を選択するための操作手段とし
ての選択スイッチ,91は,撮影によって得られた画像を前記表示
画面に形成する画像形成処理手段,14は現在,車両が置かれてい
る状況,すなわち,現在の車両状況を検出する車両状況検出手段と
してのビーコンセンサ,92は現在の車両状況において表示機能が
実行された履歴があるかどうかを判断する表示履歴判断処理手段で
ある。」(段落【0014】)
「図2は本発明の実施の形態における車両の概念図,図3は本発
明の実施の形態における車両の制御装置を示すブロック図である。」
(段落【0016】)
「図2において,11は車両であり,該車両11の前端(図にお
ける上端)の中央に障害物センサSFMが,左前端に障害物センサSFL
及びカメラCFLが,右前端に障害物センサSFR及びカメラCFRが,左
端の中央に障害物センサSML及びカメラCMLが,右端の中央に障害物
センサSMR及びカメラCMRが,後端(図における下端)の中央に障害
物センサSRMが,左後端に障害物センサSRL及びカメラCRLが,右後
端に障害物センサSRR及びカメラCRRがそれぞれ搭載される。」(段
落【0017】)
「前記カメラCFL,CFR,CML,CMR,CRL,CRRは,CCDカメラ
から成り,被撮影体としての車外の道路,溝,壁,車両11の一部
等を撮影する撮像装置を構成する。また,障害物センサSFM,SFL,
SFR,SML,SMR,SRM,SRL,SRRは,超音波センサ,レーザー,ミ
リ波レーダ等から成り,車両11と図示されない障害物との間の距
離を検出する距離検出手段を構成する。なお,障害物センサSFM,
SFL,SFR,SML,SMR,SRM,SRL,SRRに代えて,前記カメラCFL,
CFR,CML,CMR,CRL,CRRによって得られた画像の画像データを画
像処理する画像処理装置を配設し,該画像処理装置によって間接的
に車両11と障害物との距離を検出することもできる。」(段落【0
018】)
⒝「次に,前記カメラCFL,CFR,CML,CMR,CRL,CRRのうちの車
両11の4隅に配設されたカメラCFL,CFR,CRL,CRRについて説明
する。」(段落【0024】)
「カメラCFL,CFR,CRL,CRRは,車両11の前端,後端,左端及
び右端の延長線上を推測するために必要な範囲を撮影することがで
きるように,しかも,運転者が運転席に座って車外を見るときの視
線の方向とほぼ一致する方向に向けて配設される。」(段落【00
25】)
「ところで,運転者にとって死角の部分を前記カメラCFL,CFR,
CRL,CRRによって撮影し,撮影によって得られた画像を形成する各
種の表示機能が運転支援機能として設定され,前記撮影によって得
られた画像のうち,表示機能に対応する画像が前記ディスプレイ2
2に形成されるようになっている。」(段落【0026】)
「本実施の形態においては,前記表示機能として,縁寄表示機能,
障害物回避表示機能,駐車操作表示機能,ブラインドコーナ表示機
能,後方死角表示機能,白線表示機能等が設定される。そして,前
記縁寄表示機能は車両11の縁寄せを行う際に車外を確認する場合,
障害物回避表示機能は車外の障害物を回避する場合に,駐車操作表
示機能は車両11を駐車スペースに案内する場合に,ブラインド
コーナ表示機能は狭い道路から広い道路に出る際に広い道路の状態
を確認する場合に,後方死角表示機能は高速道路等で車線を変更す
る際の車両11の後方を確認する場合に,白線表示機能は雨が降っ
ている夜間等に車両11を走行させる際に道路の白線ラインを確認
する場合にそれぞれ選択される。そのうち,縁寄表示機能,障害物
回避表示機能,駐車操作表示機能及びブラインドコーナ表示機能は
低速走行時に運転者が選択スイッチ25をオンにすることによって
選択され,後方死角表示機能及び白線表示機能は中・高速走行時に
図示されないヘッドランプ,ワイパ等の作動状態によって自動的に
選択される。また,前記選択スイッチ25は,現在の車両状況にお
いて表示機能が実行された履歴がある場合,自動的にオンにされ
る。」(段落【0027】)
「そのために,前記選択スイッチ25は,車両11の左方への縁
寄せを行う際に縁寄表示機能を選択するための左寄せスイッチ26,
車両11の右方への縁寄せを行う際に縁寄表示機能を選択するため
の右寄せスイッチ27,車両11の前方又は後方への縁寄せを行う
際に縁寄表示機能を選択するための中央スイッチ28,車両11の
左前端部分における障害物を回避する際に障害物回避表示機能を選
択するための左前スイッチ31,車両11の右前端部分における障
害物を回避する際に障害物回避表示機能を選択するための右前ス
イッチ32,車両11の左後端部分における障害物を回避する際に
障害物回避表示機能を選択するための左後スイッチ33,車両11
の右後端部分における障害物を回避する際に障害物回避表示機能を
選択するための右後スイッチ34,車両11を後方左側の駐車ス
ペースに駐車させる際に駐車操作表示機能を選択するための左駐車
スイッチ(PL)35,車両11を後方右側の駐車スペースに駐車
させる際に駐車操作表示機能を選択するための右駐車スイッチ(P
R)36,広い道路を前進走行中において,車両11の左前方向を
確認する際にブラインドコーナ表示機能を選択するための左前ス
イッチ(BFL)37,広い道路を前進走行中において,車両11の
右前方向を確認する際にブラインドコーナ表示機能を選択するため
の右前スイッチ(BFR)38,広い道路を後進走行中において,車
両11の左後方向を確認する際にブラインドコーナ表示機能を選択
するための左後スイッチ(BRL)39,広い道路を後進走行中にお
いて,車両11の右後方向を確認する際にブラインドコーナ表示機
能を選択するための右後スイッチ(BRR)40,白線を表示するた
めの白線表示スイッチ46等を備える。なお,前記左寄せスイッチ
26,右寄せスイッチ27及び中央スイッチ28によって縁寄せス
イッチが,左前スイッチ31,右前スイッチ32,左後スイッチ3
3及び右後スイッチ34によって角スイッチが,左駐車スイッチ3
5及び右駐車スイッチ36によって駐車スイッチが,左前スイッチ
37,右前スイッチ38,左後スイッチ39及び右後スイッチ40
によってブラインドスイッチがそれぞれ構成される。」(段落【0
028】)
⒞「次に,図4のステップS6における縁寄表示処理のサブルーチ
ンについて説明する。」(段落【0039】)
「図8は本発明の実施の形態における縁寄表示処理のサブルーチ
ンを示す図である。」(段落【0040】)
「続いて,制御装置12の図示されない画像選択処理手段は,現
在の車両状況において,どの縁寄せスイッチがオンにされたか,及
びポジションスイッチ15のオン・オフ信号に基づいて前進レンジ
が選択されているかどうかを判断する。そして,左寄せスイッチ2
6がオンにされ,前進レンジが選択されている場合,画像形成処理
手段91(図1)は車両11の左前端部分の画像PFLをディスプレ
イ22の表示画面に形成し,左寄せスイッチ26がオンにされ,前
進レンジが選択されていない,すなわち,後進レンジが選択されて
いる場合,前記画像形成処理手段91は車両11の左後端部分の画
像PRLを表示画面に形成する。また,中央スイッチ28がオンにさ
れ,前進レンジが選択されている場合,前記画像形成処理手段91
は車両11の画像PFL及び右前端部分の画像PFRを一つの表示画面
に隣接させて形成し,中央スイッチ28がオンにされ,後進レンジ
が選択されている場合,前記画像形成処理手段91は車両11の画
像PRL及び右後端部分の画像PRRを一つの表示画面に隣接させて形
成する。そして,右寄せスイッチ27がオンにされ,前進レンジが
選択されている場合,前記画像形成処理手段91は車両11の画像
PFRを表示画面に隣接させて形成し,右寄せスイッチ27がオンに
され,後進レンジが選択されている場合,前記画像形成処理手段9
1は車両11の画像PRRを表示画面に形成する。」(段落【004
2】)
「なお,画像PFL,PFR,PRL,PRRには,車両11の一部,溝52,
壁53等が表示されるとともに,車両11の最外側の縁を表す表示
ライン54が表示される。該表示ライン54は,車両11の最外側
のラインを地面に垂直に下ろし,前記ラインを車両11の前後方向
に延長させることによって設定され,車両11の前方又は後方に向
けて突出させられる。なお,一部の図面においては,溝52,壁5
3等は図示されていない。」(段落【0043】)
「例えば,前進走行中に,道路の左側にある溝52の直近に停車
しようとする場合,運転者は左寄せスイッチ26をオンにする。そ
の状態で,車速Vが閾値V1より低くなると,画像PFLが表示画面
に形成される。運転者は,前記表示ライン54が画像PFL上の溝5
2に重ならないように運転操作を行うと,容易に縁寄せを行うこと
ができる。」(段落【0045】)
「次に,前記表示ラインの他の例について説明する。なお,この
場合,画像PFLに表示される表示ラインの例について説明する。」
(段落【0048】)
「図9に示される表示ライン55は,車両11を前進させる場合
に舵角の大きさに対応させて車両11の最外側の縁が通る予測軌跡
線を表す。また,図10に示される表示ライン57は,タイヤ56
の最外側の縁を表す。そして,図11に示される表示ライン58は,
車両11を前進させる場合にタイヤ56の最外側の縁が通る予測軌
跡線を表す。」(段落【0050】)
「また,画像PFL(図8),PFR,PRL,PRRに絵を表示することも
できる。」(段落【0051】)
「図12は本発明の実施の形態における画像に表示された絵を示
す図である。」(段落【0052】)
⒟「次に,図4のステップS7における障害物回避表示処理のサブ
ルーチンについて説明する。」(段落【0058】)
「続いて,前記画像選択処理手段は,角スイッチ判定処理を行い,
現在の車両状況において,どの角スイッチがオンにされたかを判断
し,判断結果に基づいて,画像PFL(図8),PFR,PRL,PRRのうち
の所定の角の画像を形成する。そして,制御装置12は,前記検出
距離判断手段によって検出された検出距離が基準値以上であるかど
うかを判断し,検出距離が基準値以上である場合に,角スイッチを
オフにする。」(段落【0061】)
「次に,障害物を回避する場合の画像PFLの例について説明す
る。」(段落【0063】)
「図15は本発明の実施の形態における障害物回避表示処理に
よって形成される画像の第1の例を示す図,図16は本発明の実施
の形態における障害物回避表示処理によって形成される画像の第2
の例を示す図である。」(段落【0064】)
「図において,11は車両,61は障害物としての他の車両であ
る。この場合,画像PFL(図8)の第1の例においては,車両11を
前進させる場合に,舵角の大きさに対応させて車両11の最外側の
縁が通る予測軌跡線を表す表示ライン55,及び車両11を後退さ
せる場合に,舵角の大きさに対応させて車両11の最外側の縁が通
る予測軌跡線を表す表示ライン63が画像PFLに表示される。なお,
車外が暗い場合,及び太陽又は照明灯の光によって道路の面51(図
12)に車両11又は他の物体の影が写る場合においては,車両1
1の色が暗色系であると,表示画面上の車両11の輪郭を判別する
ことが困難になる。そこで,車両11の周縁に重ねて輪郭線67を
表示することができる。」(段落【0065】)
「また,画像PFLの第2の例においては,車両61と車両11と
の間の間隔の目安となる距離線64~66を車両11からの距離
(例えば「15cm」,「50cm」,「2m」等)と共に画像P
FLに表示することもできる。」(段落【0066】)
「したがって,例えば,運転者が所定の角スイッチをオンにする
と,該角スイッチに対応する角の画像が表示画面に形成される。ま
た,舵角の大きさに対応させて車両11の最外側の縁が通る予測軌
跡線を表す表示ライン55,63が重ねて表示される。したがって,
運転者は,前記表示ライン55,63が画像PFL上の車両61に重
ならないように運転操作を行うと,容易に障害物を回避することが
できる。なお,画像PFL,PFR,PRL,PRRにおける障害物センサSFL
(図2),SFR,SRL,SRRが搭載された部分を警戒色で表示したり,
点滅させたりすることもできる。」(段落【0067】)
⒠「次に,図5のステップS8における駐車操作表示処理のサブルー
チンについて説明する。」(段落【0068】)
「図17は本発明の実施の形態における駐車操作表示処理のサブ
ルーチンを示す図,図18は本発明の実施の形態における駐車操作
の説明図,図19は本発明の実施の形態における駐車操作表示処理
で形成される画像の第1の例を示す図,図20は本発明の実施の形
態における駐車操作表示処理で形成される画像の第2の例を示す図
である。」(段落【0069】)
「なお,車両11を後退させ,位置ST2から位置ST3を経て,
駐車スペースに移動させる間,画像PRL,PRRが一つの表示画面に形
成される。この場合,図20に示されるように,表示画面の左側に
は画像PRLが,右側には画像PRRが形成され,それぞれ表示ライン5
4が表示され,画像PRL,PRRの間隔は運転者が実感することができ
るように設定される。」(段落【0078】)
「なお,図20に示されるように,画像PRL,PRRに目標駐車枠基
準線75を表示することもできる。該目標駐車枠基準線75は,車
両11を標準的な駐車スペースに正確に駐車させたときの駐車ス
ペースの形状を表す。」(段落【0079】)
e発明の効果
「したがって,現在の車両状況において表示機能が実行された履歴
がある場合,運転者の意図に合う最適な画像だけを自動的に形成する
ことができるので,形成された画像から必要な情報を容易に得ること
ができる。そして,画像を選択するために運転者による思考が要求さ
れないので,画像上の有用な情報が見過ごされることはない。」(段
落【0115】)
引用発明2の内容
傍に形成された死角から必要な情報を得るために,車両の前端,後端,
左端及び右端の延長線上を推測するために必要な範囲を撮影することが
でき,しかも,運転者が運転席に座って車外を見るときの視線の方向と
ほぼ一致する方向に向けて,車両の左前端(CFL),右前端(CFR),左
後端(CRL),右後端(CRR)にカメラ(撮像手段)を搭載し,該カメラ
によって撮影された画像を形成する各種の表示機能として,縁寄表示機
能,障害物回避表示機能,駐車操作表示機能等が運転支援機能として設
定されており,選択された表示機能に対応する画像がディスプレイ(表
示手段)に形成されるようになっている運転支援装置が開示されており,
当該運転支援装置において,①車両の縁寄せを行う際に車外を確認する
場合に選択される縁寄表示機能では,車両の左寄せを前進で行う場合,
車両の左前端部分の画像PFLがディスプレイの表示画面に形成されるが,
当該画像には,車両の一部,溝や壁等の縁寄せをする際の対象物が表示
されるとともに,車両の最外側のラインを地面に垂直に降ろし,前記ラ
インを車両の前後方向に延長させることによって設置した,車両の前方
又は後方に向けて突出させられたラインであって,車両の最外側の縁を
表す表示ライン54が表示されるようになっていること,②車外の障害
物を回避する場合に選択される障害物回避表示機能では,画像選択処理
手段の判断結果に基づいて,画像PFL,PFR,PRL,PRRのうちから選択さ
れた所定の画像がディスプレイの表示画面に形成されるが,車両の左前
端部分の画像PFLが形成された場合,車両を前進又は後退させる際に舵
角の大きさに対応させて車両の最外側の縁が通る予測軌跡線を表す表示
ライン55又は63が画像に表示されるようになっていたり,あるいは,
障害物(他の車両)と車両との間の間隔の目安となる距離線64~66
が車両からの距離(例えば「15㎝」,「50㎝」,「2m」等)とと
もに画像に表示されるようになっていたりすること,③車両を駐車ス
ペースに案内する場合に選択される駐車操作表示機能では,車両を後退
させる場合,画像PRL,PRRがディスプレイの表示画面に形成されるが,
それぞれの画像に表示ライン54が表示されるとともに,車両を標準的
な駐車スペースに正確に駐車させたときの駐車スペースの形状を表す目
標駐車枠基準線75が表示されるようにすることもできること,がそれ
ぞれ開示されているといえる。
ここで,距離線64~66は,段落【0066】に「距離線64~6
6を車両11からの距離(例えば「15cm」,「50cm」,「2m」
等)と共に画像PFLに表示することもできる。」と記載されており,車
両の特定の部位からの距離を示す線であるなどとは説明されていない。
そして,距離線64~66は,刊行物2に記載された障害物回避表示機
能における他の実施例である「車両の最外側の縁が通る予測軌跡線を表
す表示ライン55又は63」,縁寄表示機能における「車両の最外側の
縁を表す表示ライン54」,駐車操作表示機能における「表示ライン5
4」や「車両を標準的な駐車スペースに正確に駐車させたときの駐車ス
ペースの形状を表す目標駐車枠基準線75」等と同じく,車両の外縁と
溝や壁,障害物,駐車枠等の外的要因との位置関係を把握し易いものと
することで運転者に安全運転上有益な情報を提供することを目的とする
ものであるところ,車両が障害物と接触する可能性がある箇所は車両の
外縁部分全体であることから,距離線64~66は,車両の外縁からの
距離,すなわち「車両からの距離を示す線」であると認められる。
車両からの距離を示す線である距離線64~66を車両の左前端部分
の画像PFLに表示する障害物回避表示機能(段落【0033】の障害物
回避表示処理手段)は,距離線64~66と画像PFLとを合成して表示
手段に表示させる画像合成手段であるといえ,刊行物2に記載された「運
転支援装置」が本件発明1や引用発明1にいう「車両監視装置」に相当
するものであることは明らかである。
したがって,刊行物2には,「車両からの距離を示す線である距離線
64~66と車両の左前端部分の画像PFLとを合成し,表示手段に表示
する画像合成手段を有する車両用監視装置」が記載されているといえる。
周知技術の内容
a周知例(乙4~7,16,20)の記載によれば,これらの刊行物
には以下の点が開示されているものと認められる(下記記載中に引用
する図面については,別紙4の周知例図面目録を参照。)。
⒜乙4(特開平4-103444号公報)
ⅰ乙4に記載された発明は,車両後方確認カメラを搭載した後方
確認表示装置に関する。
後方確認カメラを搭載する車が増えており,従来の後方確認表
示装置は,後方確認カメラ,モニタ,モニタ前面カバーに印刷さ
れた距離を示すスケールを備えるものであり,後方確認カメラよ
り入力された映像信号はモニタにより映し出されるが,モニタの
本体,または前面カバーに距離を示すスケールが印刷されており,
障害物があった場合,そこまでの距離が容易に認識でき,後方の
安全を確認することができるというものであった。
この従来の後方確認表示装置では,後方確認カメラを車両へ取
付け,表示距離の位置を調整する場合,カメラを回転する人と,
モニタを見ながら回転方向位置を指示する人が必要であり,また,
固定しても車体の振動,風圧等によりカメラの位置がずれ,正確
な距離が表示できない可能性があった。
ⅱ乙4に記載された発明は,上記欠点を解消し,後方確認カメラ
からの映像信号に図形文字信号を発生する信号発生器からの距離
スケールを多重させ,この距離スケールを任意に上下できる手段
を付加し,距離合せの正確化,容易化を図る後方確認表示装置を
提供することを目的とするものである。
ⅲ乙4には実施例として次のような記載がある。
「第1図は本発明の構成図を示す。カメラ1から出力された映
像信号はインタフェース2によりR,G,B信号3に変換される。
一方,CPU4はROM5に記憶されたプログラムデータにした
がい,システム全体をコントロールし,図形や文字パターンをR
OM5から読み出し,ビデオRAM6で画面の表示位置に対応し
た特定の座標へ書き込む。CRTコントローラ7は一定期間毎に
ビデオRAM6からR,G,Bの画像信号8を読み出し,インタ
フェース9を介して多重装置10へ入力する。多重装置10はイ
ンタフェース9とインタフェース2からのR,G,B信号をCR
Tコントローラ7からの切替コントロール信号11にしたがい高
速に切替え,多重するものであり,その画像信号はCRT12へ
入力され,表示される。キースイッチ13はROM5から読み出
された画像パターンや文字パターンを上下方向に移動させるス
イッチで,14はアップキー,15はダウンキーである。」(2
頁左下欄1行~18行)
「第1図においてキースイッチ13のアップキー14,ダウン
キー15を押す毎にROM5よりパターンを読み出し,キーの種
類と回数により上記演算をし,ビデオRAM6に書き込めば,任
意に図形,文字パターンを上下方向に移動させることができる。
第3図は実際に位置合せする方法を図示したものであり,車両
16の屋根に後方確認カメラ1が取り付けられている。車両の後
方にたとえば,10mの位置にフラッグ17を立て,その映像を
表示したものが画面21であり,ここで,アップキー14を押す
とパターン22,25が上方に移動し,パターン23,26はそ
れぞれ24,27の中間まで移動する。逆にダウンキー15を押
すと22~27は下方に移動し,任意にフラッグ17の位置に合
せ込むことができる。」(3頁左上欄10行~右上欄4行)
ⅳ乙4に記載された発明は,車両の後方を確認するカメラと,距
離スケールの図形や文字を発生させる信号発生装置と,カメラか
らの映像信号と信号発生装置から出力された画像信号を多重させ
る多重装置と,多重された画像信号を上下方向に移動させる入力
手段と,前記多重装置から出力された画像信号を表示するモニタ
と,これらの装置を制御するコントローラから構成され,前記モ
ニタ上に映し出される後方の風景の中で,前記距離スケールを上
下に任意に動かすことにより,距離スケールと実画面上の正確な
位置合せを容易に実現させることを特徴とする後方確認表示装置
である。
⒝乙5(特開平11-11210号公報)
ⅰ乙5に記載された発明は,車両の後方に設置されたカメラから
の映像を表示するとき,同時に車幅や距離等の目安をモニタ上に
表示するカメラスケール表示装置に関する。
従来のカメラスケール表示装置として,刊行物3に記載された
構成が知られているが,ここでは,カメラスケールを一定条件下
でのパターンとしてROMに記憶しているため,自由に後方確認
用カメラ1の取付け位置を選択できず,想定と異なる条件下では,
後方確認用カメラの取付け角度を変更したり,カメラスケール全
体パターンの上下移動だけではカメラスケールと実際の車幅や距
離を合わせることができず,カメラスケールの表示が実際の車幅
や距離と大きく異なってしまうという問題があった。
ⅱ乙5には,実施例として次のような記載がある。
「以下,本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説
明する。図1は本発明の一実施の形態におけるカメラスケール表
示装置を示すブロック図である。」(段落【0013】)
「図3に示す前述の従来例のカメラスケール表示装置とほぼ同
じ機能の構成要素,信号等には同じ符号を付し,その説明を省略
する。本実施の形態において,前述の従来例と異なる点は,書換
可能メモリ9と描画LSI110を備え,カメラスケールの座標
データは書換可能メモリ9に記憶されており,変更可能であり,
そして,描画LSI110は座標データに合わせたカメラスケー
ル信号をオンスクリーン表示処理回路4に送り,表示デバイス5
により表示させるようにしたことにある。」(段落【0014】)
「図2はカメラスケールの表示例を示すものである。後方確認
用カメラ1を車両13に対して図2(a),(b)に示すような
位置関係で取り付けた場合,基本カメラスケールのままで図2
(c)に示すように,カメラスケール21,22,23,24,
25,26,27,28は実際の距離や車幅を示す線と全く異なっ
てしまう。こそで,カメラスケール21~28を図2(d)に示
すカメラスケール31~38の位置に移動させればよい。」(段
落【0015】)
「まず,書換可能メモリ9内のカメラスケール21の座標デー
タ(X21,Y21)をカメラスケール31の座標データ(X3
1,Y31)に変更し,書換可能メモリ9に記憶する。例えば,
カメラスケール21が車両右側後方10mの位置を示す予定であ
れば,そのポイントに何か目印を置き,そのポイントにカメラス
ケール21が表示されるようにカメラスケール21を移動させ,
その座標データ(X31,Y31)を新たなカメラスケール21
の座標データとして書換可能メモリ9内の座標データを変更する。
同様にして,カメラスケール22~28のそれぞれの座標データ
をカメラスケール32~38の各座標データに変更する。その新
たな座標データにて描画LS110がカメラスケールを表示デバ
イス5に表示させることにより,図2(d)に示すように実際の
車幅や距離に合ったカメラスケールとして表示が可能となる。」
(段落【0016】)
「なお,以上の説明では,表示デバイス5に表示されるカメラ
スケールは「+」にて表示したが,どのような形であってもよい。
また,カメラスケールは図形だけでなく,各カメラスケールの距
離を図形と共に表示してもよく,距離を表示する座標データもそ
れぞれ自由に設定可能としてもよい。」(段落【0017】)
ⅲ乙5に記載された発明は,前記ⅰ記載の問題を解決し,基本カ
メラスケールを想定した車幅やカメラ取付け位置の地上高や左右
位置に関係なく,後方確認用カメラの取付け位置を自由に選択で
き,実際の車幅,距離に合ったカメラスケールに表示位置を修正
可能なカメラスケール表示装置を提供することを目的とするもの
である。
⒞乙6(特開平8-80791号公報)
ⅰ乙6に記載された発明は,目視による後方確認が困難な車両に
適用する車載用後方確認装置の改良に関する。
従来より,いわゆる車載用後方確認装置が用いられているが,
最も簡単な車載用後方確認装置は,車両後部の高所にカメラを取
り付け,このカメラで撮影した車両の後方画像を運転席のディス
プレイ上に表示するというものであるが,上記カメラは,少なく
とも車両最後端部を含む広範囲の画像を撮影する必要があり,そ
の撮影レンズには広角レンズが用いられるから,ディスプレイ上
の表示画像は距離感に欠けるものであったことから,後方画像に,
距離目盛りパターン画像をオーバーラップ表示する装置も現れた。
しかしながら,上記装置にあっては,距離目盛りパターン画像
が固定のものであったため,カメラの取り付け方が適正でなかっ
たり,走行中の振動でカメラの取り付け傾斜角がずれたりした場
合には,距離目盛りパターン画像と後方画像との対応関係が不適
切となり,運転者は,誤った距離認識をしてしまうという問題点
があった。
ⅱ乙6には,実施例として次のような記載がある。
「図1において,1はCCD(ChargeCoupledDevice)又は撮
像管等を用いたテレビカメラ(以下「カメラ」と略す)であり,
このカメラ1は,車両2の所定位置(車両後方を広く見渡すこと
のできる,たとえば車両後部の高所)に取り付けられ,その撮影
レンズ1aは,車両2の後方に向いている。すなわち,カメラ1
は,車両2に取り付けられ,該車両2の後方画像Vを撮影する撮
影手段として機能する。」(段落【0011】)
「3はカメラ1を車両2に取り付けるための取り付け金具であ
る。この取り付け金具3は,カメラ1の取り付け傾斜角(カメラ
アングルθ;以下,単に「アングルθ」と言う)を,所定の範囲
内で自在に調節できるものであり,アングルθは角度センサ4に
よって検出される。また,5はカメラ1の取り付け高Hを設定す
るための設定スイッチであり,この設定スイッチ5には,たとえ
ば,ディップスイッチやロータリースイッチ等が用いられ,地面
からカメラ1までの高さを計測して,その値を手動で設定するも
のである。上記の角度センサ4及び設定スイッチ5は,一体とし
て検出手段を構成する。」(段落【0012】)
「次に,作用を説明する。図2はコントロールユニット7にお
ける概略的な処理フローである。このフローに示すように,本実
施例では,まず,アングルθ及び取り付け高Hを読み込み(ステッ
プ10),次いで,これらのθ及びHに基づいて距離目盛りパター
ン画像Sを選択し(ステップ11),さらに,選択された距離目
盛りパターン画像Sと後方画像Vとを合成してオーバーラップ画
像Oを生成し(ステップ12),最後に,リバース信号Rの有無
を点検して(ステップ13),リバース信号Rが有れば,すなわ
ち車両の後退時であれば,オーバーラップ信号Oをディスプレイ
8に出力する(ステップ14),という処理を繰り返して実行す
る。」(段落【0015】)
「図3は,三つの画像,すなわち,高さHの位置からアングル
θで撮影された後方画像V,θとHとに応じて選択された距離目
盛りパターン画像S,及び,これら二つの画像V,Sを合成した
オーバーラップ画像Oの一例である。後方画像Vにおいて,20
は障害物として注目しなければならない任意の物体であるが,こ
の後方画像Vだけでは,物体20までの距離を正確に特定するこ
とはできない。一方,距離目盛りパターン画像Sにおいて,末広
がりの二本の縦線21,22の間には,横方向の多数の距離目盛
り線23が引かれており,距離目盛り線23の間隔は,グリッド
(GRID)値として表示されている。ここで,1GRIDはymである。
なお,オフセット(OFFSET)値は,画面最下端の距離目盛り線か
ら車両最後端部(一般にバンパー)までの距離であり,OFFSETは
xmである。」(段落【0016】)
「ここに,本実施例のポイントは,距離目盛りパターン画像S
を,カメラ1の取り付け高Hとアングルθとに応じて“選択”す
るという点にあるが,この選択動作は,Hとθのある組み合わせ
(便宜的にH1とθ1)が,他の組み合わせ(便宜的にH2とθ2)
に変化したとき,H1とθ1の組み合わせで最適であった距離目
盛りパターン画像Sを,H2とθ2の組み合わせで最適となるよ
うに“補正”していることに他ならない。このことは,上記の選
択動作以外にも,画像演算処理,たとえば,三次元的な視点補正
処理を行なうことによって,同様な作用が得られることからも理
解できる。」(段落【0018】)
「図4は,カメラ1のアングルθの変化状態(例として3態)
を示す図である。符号Aはアングルθaのときの視野角,符号B
はアングルθbのときの視野角,符号Cはアングルθcのときの
視野角である。ただし,θa>θb>θc,A=B=Cである。
AN,AN,BN,BF,CN及びCFは,それぞれの視野角におけ
る最も近い撮影地点と最も遠い撮影地点とを表しており,添え字
のFはFar(遠い)の頭文字,NはNear(近い)の頭文字である。
すなわち,ANからAFはアングルθaのときの撮影範囲,BNか
らBFはアングルθbのときの撮影範囲,CNからCFはアングル
θcのときの撮影範囲である。なお,ここでは,車両2の最後端
部から4mの地点に物体(障害物)20が位置しているものと仮
定する。」(段落【0019】)
「図5は,それぞれのアングルθa,θb及びθcにおけるオー
バーラップ画像Oを示す図である。なお,ここでは識別のために,
それぞれのオーバーラップ画像にアングルと同一の添え字(a,
b,c)を付している。画像Oa,Ob及びOcのグリッド値は
いずれも1mであるが,オフセット値はそれぞれ異なっている。
すなわち,画像Oaのオフセット値は1m,画像Obの同値は2
m,画像Ocの同値は3mであり,それぞれのオフセット値はAN,
BN及びCNに一致する。」(段落【0020】)
「いま,走行中の振動によってカメラ1のアングルがずれた場
合を考える。たとえば,アングルθaにずれた場合である。この
場合,図4からも認められるように,撮影範囲はBN~BFから
AN~AFへと変化し,オーバーラップ画像Oaにおける物体2
0の位置は,ほぼ画面最上部に位置することになる。仮に,本実
施例を適用しないとすると,オーバーラップ画像Oa中の距離目
盛りパターン画像Sは,基本アングルθbのそれになるから,距
離目盛りの一致性が損なわれることは明白である。」(段落【0
022】)
「これに対して,本実施例を適用した場合には,オーバーラッ
プ画像Oa中の距離目盛りパターン画像Sの距離目盛り線23の
間隔が補正され,画像下端から物体20までの距離目盛り線23
の本数は4本となるから,上式(1)より,物体20までの距離
Dを,基本アングルθbと同一の4mと読み取ることができる。
したがって,本実施例によれば,カメラ1のアングルθが変化し
た場合でも,常に適切な距離目盛りパターンSが合成されるから,
物体20までの距離Dを正確に読み取ることができ,車両後退時
における安全確保の維持を図ることができる。」(段落【002
3】)
ⅲ乙6に記載された発明は,カメラの取り付け状態に応じて距離
目盛りパターン画像を補正することにより,距離目盛りパターン
画像と後方画像との対応関係を常に適切化し,以て,運転者によ
る正確な距離認識を安定的に確保することを目的とする。
⒟乙7(特開平9-193710号公報)
ⅰ乙7に記載された発明は,車両の後方等に設置されたカメラか
らの映像を運転席のモニターに表示するようにしたカメラシステ
ム表示装置に関する。
従来から車両の後方移動を安全に行うため,車両の後方にカメ
ラを設置し,運転席にはカメラ映像を映し出すモニターが配置さ
れ,このモニターの前面板または前面板に貼り付けられたシール
等で,カメラ映像に対応した車両後部からの距離表示や,車両の
車幅表示を印刷したものを装着して後方移動の目安になるように
していた。
しかしながら,上記従来の表示装置では,モニターに後方確認
カメラのカメラ映像に対応した車両後部からの距離表示,車両の
車幅表示を印刷したものを装着しているため,モニターのオン/
オフに関係なく常に後方確認用の表示を視認することになるとい
う問題があった。
ⅱ乙7に記載された発明は,上記課題の解決を目的とするもので
あり,その実施形態として,車両に設置する後方確認用カメラと
モニターで構成されたカメラシステム表示装置で,車両のバック
ギヤオン信号を検出したとき,モニターと車両の後方確認用とし
て設置された後方確認カメラが動作し,前記モニターにカメラ映
像とともにオンスクリーン表示処理によってオンスクリーンまた
はスーパーインポーズで距離表示や車幅表示等を出画するように
したものが記載されている。
ⅲ乙7には,実施例として次のような記載がある。
「本発明の実施の形態は,車両に設置する後方確認用カメラと
モニターで構成されたカメラシステム表示装置で,車両のバック
ギヤオン信号を検出したとき,モニターと車両の後方確認用とし
て設置された後方確認カメラが動作し,前記モニターにカメラ映
像とともにオンスクリーン表示処理によってオンスクリーンまた
はスーパーインポーズで距離表示や車幅表示等を出画するように
したものである。」(段落【0012】)
「このカメラシステム表示装置によれば,後方確認カメラのモ
ニターとして使用するときには後方確認用の距離表示,車幅表示
等をモニター上に出画することができ,前記以外のモニターとし
て使用するときには視覚上障害となる後方確認用の表示を消すこ
とができる作用を有する。」(段落【0013】)
「前記従来例の図3と異なる点は,マイコン・オンスクリーン
表示処理回路8を有し,スイッチング処理回路5を介して車両の
バックギヤ入力端子Aからのバックギヤオン信号S3が入力され
て起動され,映像切替回路9からは映像切替信号S4が入力され,
カメラ映像S1を認識し,映像同期処理回路3からは同期信号が
入力され,マイコン・オンスクリーン表示処理回路8からは映像
同期処理回路3から出力されたカメラ映像S1に同期したオンス
クリーンまたはスーパーインポーズ信号が出力され,表示処理・
表示デバイス4のディスプレイ上に距離表示や車幅表示等を出力
表示する構成となっている。」(段落【0016】)
「次に上記構成の動作を図2のスクリーン表示例図を用いて説
明する。まず,車両を後方へ移動するとき,後方確認カメラ1と
モニター2が自動的に動作するように車両のバックギヤ入力端子
Aにバックギヤオン信号S3を入力する。このバックギヤオン信
号S3はスイッチング処理回路5を介して電源回路7およびマイ
コン・オンスクリーン表示処理回路8へ入力され,電源回路7か
らは各回路へ電源が供給されるとともに,後方確認カメラ1へも
電源が供給される。」(段落【0017】)
「そして,後方確認カメラ1の映像信号(カメラ映像S1)は映像
切替回路9を介して映像同期処理回路3に入力されて処理され,
表示処理・表示デバイス4のディスプレイ上へ映像信号を出力し,
モニター2に後方確認カメラ1の映像が映し出される。なお,こ
のときバックギヤオン信号S3は映像切替回路9に入力され,強
制的に後方確認カメラ1の映像信号に切り替える動作が行われ
る。」(段落【0018】)
「また,マイコン・オンスクリーン表示回路8も前記バックギ
ヤオン信号S3で動作し,映像同期処理回路3から同期信号の供
給を受け,同期した状態でオンスクリーン信号が表示処理・表示
デバイス4に供給されてカメラ映像S1の上にオンスクリーンが
表示される。」(段落【0019】)
「なお,以上の説明では,後方確認カメラ1とモニター2で構
成した例で説明したが,モニター2への映像入力を増設していき,
前方カメラ,側方カメラの表示もカメラの視野角,方向に合わせ
てオンスクリーンのパターンを設定すれば,同様にオンスクリー
ン表示ができる。」(段落【0023】)
ⅳ乙7に記載された発明によれば,表示はオンスクリーンで出す
ため,種々の車両やカメラの取付位置,高さに対応した何種類も
の距離表示,車幅表示をすることができ,カメラの視野角の異な
る場合でも対応することができる。
乙7に記載された発明は,後方確認ばかりでなく,前方カメラ,
側方カメラのオンスクリーン表示もすることができる。
⒠乙16(特開平7-2021号公報)
ⅰ乙16に記載された発明は,車両に搭載し,車両の周辺を確認
するための画像を得る周辺確認装置に関する。
ⅱ乙16に記載された発明の実施例として,次のとおりの記載が
ある。
「実施例5.図11は請求項5の発明の一実施例による周辺確
認装置の構成を示すブロック回路図である。図において,61~
66は図9と同様のものであるので説明を省略する。71は傾斜
角検出装置,72はインジケータ情報の記憶されたメモリ,73
は選択回路であり,メモリ72と選択回路73でインジケータ発
生回路74を構成している。75は映像信号に簡単な図形や文字
を重ね合わせる合成回路である。図12は本実施例によってディ
スプレイ装置66に表示されるインジケータの一例を示したもの
である。76は車両の後部,77は車両後端からの距離を示す線
であり,78は車両の中心および車幅を示す線である。」(段落
【0045】)
「また,上記実施例では撮像装置61を車両の後部に取り付け
たが,車両の前方,あるいはその他の任意の場所に取り付けても
構わない。」(段落【0048】)
⒡乙20(実願昭63-70368号(実開平1-173035号)
のマイクロフィルム)
ⅰ乙20に記載された発明(考案)は,車両の後部または側部に
ビデオカメラを設置し,その映像を車両の運転席近傍に配置され
たディスプレーの画面上に表示して後方視界を確認する車載後方
モニター装置に関する。
ⅱ乙20に記載された車載後方モニター装置は,車両の後部また
は側部にビデオカメラを設置し,ディスプレー上に入力に対応し
た距離線および距離数字を前記ビデオカメラからの映像に重畳し
て表示するものであるが,その実施例として,次のとおりの記載
がある。
「・・・このモニター装置を搭載した車両のディスプレー2の
画面上に,第2図A1のような線および数字の距離表示を希望す
る場合,・・・ディスプレー2上の距離表示は,0mからその設
定した距離までの表示が現れるようになっている。」(6頁12
行~7頁6行)
「さらに,第2図B4のように左下表示のキーを選択してカー
ソルで20mと10mの点を位置設定すると,第2図A4のよう
に車体の一部21とともに車両の左側後方の20mまでの距離表
示が行われる。逆に第2図B5のように右下表示のキーを選択し
てカーソルで20mと10mの点を設定すると,第2図A5のよ
うに車体の一部21とともに車両の右側後方の20mまでの距離
表示が行われる。」(7頁13行~8頁1行)」
b上記a記載の周知例(乙4~7,16,20)に開示された内容に
よれば,「車両後方にカメラを取り付け,カメラからの画像に車両か
らの距離を示す画像を重ねて表示すること」は,本件特許の出願日前
に一般に知られている周知技術であったといえる。
また,乙7,乙16及び乙20に記載された発明は,いずれも車両
の後方確認のみを目的とするものではなく,これらの刊行物には,上
記技術を車両の後方確認ばかりでなく,車両の前方や側方の確認のた
めにも用いることができることが記載されているから,車両の後方の
みならず前方や側方を含め,「車両にカメラを取り付け,カメラから
の画像に車両からの距離を示す画像を重ねて表示すること」は,本件
特許の出願日前に,一般に知られている周知技術であったと認められ
る。
そして,上記周知技術において,距離を示す画像は,車両から障害
物などの対象物までの距離を把握するためのものであるから,距離の
基準となるのは,車両が進行した場合に最も早く障害物などの対象物
に到達する部分,すなわち,車両の進行方向の先端部分である。
したがって,「車両にカメラを取り付け,カメラからの画像に車の
進行する方向の先端からの距離を示す画像を重ねて表示すること」は,
本件特許の出願日前に,一般に知られている周知技術であったと認め
られる。
ア記載のとおり,「・・・運転席(運転席は車
体中央より右側寄りにあるものとして説明する)からは車体の左端の位
置を確認するための基準となるべきものが何も見えず,従って,車体の
左端がどこまであるのかがよく解らない状態となっている。・・・運転
席から見ると車体左側面近傍は所謂死角となり,安全運転上問題となっ
ていた。特に狭い道路における離合や車庫入れ等に際しては,車7左側
面近傍の死角部分についての安全が確認できず,そのために車体左側面
を電柱や塀等に接触させたり,溝の中へ左車輪を脱落させたり,また極
端な場合には通行人に接触することなどがあった。」(1頁19行~2
頁16行),「本考案は上記の点に鑑みてなされたもので,運転席と反
対側の車体側方近傍を十分に確認できる自動車の側方監視装置を提供す
るもので,・・・」(2頁18行~20行)と記載されている。したがっ
て,引用発明1は,車両用監視装置(側方監視装置)であり,運転席と
反対側の車体側方近傍(死角部分)を十分に確認できる自動車の側方監
視装置を提供することを目的とし,その解決手段として,ドアミラーの
うち少なくとも運転席と反対側のドアミラーの背面にテレビカメラを設
置し,車室内の運転席近傍にはテレビカメラと接続されたテレビ受像機
を配し,テレビカメラによってテレビ受像機に自動車のフロントフェン
ダ部側方近傍を映し出すようにするという構成を採用したものである。
「従来,自動車等の車両におい
ては,・・・運転者が運転席に座って車外を見ると,車両の外部周縁の
近傍に死角が形成される。」(段落【0002】),「・・・運転者は
死角の部分を推定して運転することが多く,その場合,車両が障害物に
接触したり,車輪が路肩の溝にはまったりすることがある。」(段落【0
003】),「そこで,運転者にとって死角の部分のうち,車両の後方
の左右両側を撮影するために第1,第2のカメラを,車両の前方の左右
両側を撮影するために第3,第4のカメラをそれぞれ配設した運転支援
装置が提供されている・・・」(段落【0004】),「本発明は,前
記従来の運転支援装置の問題点を解決して,運転者にとって死角の部分
の画像のうち,運転者の意図に合う最適な画像を形成することができ,
しかも,画像を形成するための作業を簡素化することができる運転支援
装置及び運転支援方法を提供することを目的とする。」(段落【000
6】)と記載されている。したがって,引用発明2は,車両用監視装置
(運転支援装置)であり,運転者にとって死角の部分の画像のうち,運
転者の意図に合う最適な画像を形成することができ,しかも,画像を形
成するための作業を簡素化することができる運転支援装置を提供するこ
とを目的とし,その解決手段として,車両に搭載され,所定の被撮影体
を撮影する撮像装置と,表示画面を備えた表示部と,運転者によって操
作され,あらかじめ設定された表示機能を選択するための操作手段と,
撮影によって得られた画像を前記表示画面に形成する画像形成処理手段
と,現在の車両状況を検出する車両状況検出手段と,現在の車両状況に
おいて表示機能が実行された履歴があるかどうかを判断する表示履歴判
断処理手段とを有する構成を採用した発明の実施例であり,あらかじめ
設定された表示機能のうち障害物回避表示機能が選択され,車両の左前
端に搭載されたカメラにより撮像された車両の左前端部分の画像PFLに,
車両からの距離を示す線である距離線64~66を合成し,合成された
画像を表示手段に表示するようにしたものである。
以上のとおり,引用発明1と引用発明2は,いずれも車両に搭載した
撮像手段により運転者から死角になる部分等の画像を撮像し,撮像され
た画像を表示手段に表示して,運転者に安全運転上有益な情報を提供す
ることを目的とするものである。
そして,記載のとおり,運転者から死角になる部分等を監視
する車両用監視装置において,車両にカメラを取り付け,カメラからの
画像に車の進行する方向の先端からの距離を示す画像を重ねて表示する
ことは,周知技術であるから,当業者において,上記周知技術をも勘案
し,運転者に安全運転上有益な情報をより多く提供するために,引用発
明1に,引用発明2の構成を組み合わせて,引用発明1における「ドア
ミラーに配設されており前輪近傍を撮像する撮像手段で撮影した第一の
画像」に,障害物を回避する運転操作を支援するために車両からの距離
を示す線である距離線64~66を合成し,合成された画像を表示手段
に表示するようにすること,すなわち,引用発明1において,第一の画
像に車両からの距離を示す線である距離線64~66を合成して表示手
段に表示する画像合成手段の構成を採用することは容易であると解され
る。
引用発明1における「第一の画像」は,フロントフェンダ部側方近傍
が映っている画像であり,例えば,刊行物1の第4図のような,左前輪
近傍の路面や車体の左側フロントフェンダ部に加え,進行方向である車
両の左斜め前方もある程度映っている画像であり,運転者は,障害物を
回避するについて,車両各部が障害物に接触することがないように,少
なくとも表示手段に表示された画像の範囲のすべてにおいて,障害物と
車両各部との距離に注意して運転操作を行うのは当然であり,側方のみ
ならず,前方にも注意を払うものであるから,例えば刊行物1の第4図
のような第一の画像において,車両からの距離を示す線である距離線6
4~66を表示する場所は,車両の左側及び車両の前方ということにな
る。
刊行物2には,縁寄せする運転操作を支援するために車両からの距離
を示す線である「車両11の最外側の縁を表す表示ライン54」が記載
されており,この「表示ライン54」は,「車両11の最外側のライン
を地面に垂直に下ろし,前記ラインを車両11の前後方向に延長させる
ことによって設定され,車両11の前方又は後方に向けて突出させられ
る」ものであるから(刊行物2の段落【0043】),当業者において,
刊行物2に記載された「車両11の最外側の縁を表す表示ライン54」
を距離線の距離の基準とし,車両の左側に表示する距離線を車両の最外
側の縁からの距離を示す線とすることは容易であるといえる。したがっ
て,引用発明1において,「車両の幅方向の距離を示す第一の指標」を
第一の画像に合成して表示する構成を採用することは,容易であると解
される。
また,前記のとおり,車両にカメラを取り付け,カメラからの画像に
車の進行する方向の先端からの距離を示す画像を重ねて表示することは
周知技術であるから,当業者において,距離線の距離の基準を車両の先
端とし,車両の前方に表示する距離線を「長さ方向の距離を示す」線と
することは容易であるといえる。したがって,引用発明1において,「長
さ方向の距離を示す第二の指標」を第一の画像に合成して表示する構成
を採用することは,容易であると解される。
以上によれば,引用発明1に引用発明2を適用して,引用発明1に「前
輪近傍の路面の画像を含む前記第一の画像と,車両の幅方向の距離を示
す第一の指標及び長さ方向の距離を示す第二の指標を有する第二の画像
と,を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段」を設けるよう
にすることは,当業者が容易に想到し得ることであると認められる。
ウ相違点2の検討
に記載した乙4~6の記載から,「カメラからの画像
と距離を示す画像の表示位置がずれた場合に備え,距離を示す画像の表示
位置を調整できるようにすること」は周知技術であるといえる。したがっ
て,乙4の記載や乙6の記載にもあるように,車両用監視装置において,
車両に搭載したカメラからの画像と距離を示す画像との表示位置にずれが
生じることは普通に想定されることであるから,引用発明1に引用発明2
の構成を組み合わせた構成において,合成された2つの画像の表示位置に
ずれが生じる場合に備え,ずれを修正する手段を設けることには動機付け
があるといえる。
2つの画像の表示位置の合わせ方として,1つの画像を平行移動したり,
回転移動したりする方法は技術常識であると認められるから,「前記第二
の画像を上下左右に移動させ,前記画面における前記第二の画像の位置を
調整する表示位置調整手段」を設けることは,当業者が容易に想到し得る
ことである。
エ控訴人らの主張について
刊行物2に記載された距離線64~66について
a控訴人らは,「距離線64~66」は,車両61と車両11との間
隔の目安となるものであるから,車両の左前端部からの距離を示すも
のであることは明白である旨主張する。
しかしながら,刊行物2の距離線64~66が,車両11の左斜め
前方に位置する車両61との間隔の目安となる線であるからといって,
距離線64~66の距離の基準が車両の左前端部のみに限られなけれ
ばならない必然性はないから,控訴人らの上記主張は理由がない。
b控訴人らは,「距離線64~66」が車両61と車両11との間隔
の目安となるものであること,車両の左斜め前方に障害物が位置する
場合,運転者は車両の左前端部分が障害物にこすらないように注意を
するものであること,「距離線64~66」は,それぞれ車両11の
輪郭線を模した線を車両から左上斜め方向に移動させた線で描かれて
いること,「距離線64~66」は左斜め前方方向に向かって先細り
となっており車両の左斜め前方方向を問題としていることが明らかで
あることなどから,「距離線64~66」の示す距離は,車両の左斜
め前方に沿った距離を示すものである旨主張する。
控訴人らの上記主張の趣旨は必ずしも判然としないものの,控訴人
らの指摘する上記の点は,いずれも,距離線64~66を車両の外縁
からの距離,すなわち「車両からの距離を示す線」であると解するこ
とと矛盾するものではない。
刊行物2の段落【0066】の記載や,距離線64~66が刊行物
2に記載された障害物回避表示機能における他の実施例である「表示
ライン55又は63」,縁寄表示機能における「表示ライン54」,
駐車操作表示機能における「表示ライン54」や「目標駐車枠基準線
75」等と同様の技術思想の下で表示される距離線であることに照ら
せば,距離線64~66は,車両の外縁からの距離,すなわち「車両
記載のと
おりである。
また,控訴人らは,車両の左斜め前方に障害物が位置する場合,運
転者は車両の左前端部分が障害物にこすらないように車両の左前端部
分のみに注意を向けるものであると主張するが,運転者が障害物の回
避のために運転操作を行うことにより,あるいは,車両などの障害物
が移動することにより,車両と障害物との相対的な位置関係も刻々と
変化するものであるから,運転者は,障害物を回避するについては,
車両各部が障害物に接触しないように,少なくとも画像PFLに表示さ
れた範囲のすべてにおいて,障害物と車両各部との距離に注意して運
転操作を行うのは当然であって,車両の左前端部分の左斜め前方の距
離のみに限って注意を払うわけではないから,控訴人らの主張は,こ
の点においても理由がない。
c控訴人らは,距離線64~66は,「車両からの距離を示す線」で
はなく,「車両の左前端部分からの左斜め前方に沿った距離のみを示
す線」であるから,これを車両の先端からの距離を示す線に変更した
り,長さ方向の距離や幅方向の距離を示す線に変更したりすることに
は阻害要因がある旨主張するが,距離線64~66が「車両からの距
離を示す線」であると認められることは,前記イ記載のとおりであ
り,控訴人らの上記主張はその前提を欠き,失当である。
周知技術について
控訴人らは,先行技術文献(乙4~7)は,車両の後方を確認するも
のであって,車両の前方を確認するものではないから,上記刊行物に開
示されている技術は,「車両後方を確認するためのカメラを車両後部に
取り付け,カメラからの画像に車両の後端からの距離を示す画像を重ね
て表示すること」にすぎず,これを車両前方など他の方向にまで上位概
念化することはできない旨主張する。
しかしながら,乙4~7,乙16,乙20の記載から,車両の後方の
みならず前方や側方を含め,「車両にカメラを取り付け,カメラからの
画像に車の進行する方向の先端からの距離を示す画像を重ねて表示する
こと」が周知技術であったと認められるこb認定のとお
りであり,控訴人らの上記主張は理由がない。
なお,控訴人らは,車両の前方については,死角は車両の後方よりも
格段に少なく,運転者は車両の前方を見て運転するのが常態であるから,
運転者は車両の前方の確認が比較的容易であり,距離を示す画像の距離
の基準を車両の先端にする必要性が低い点をその主張の根拠として挙げ
る。しかしながら,運転者が,車両と障害物との接触等を回避するため
に,車両の進行方向において車両が最初に障害物等に到達し得る部分(車
両の進行方向における先端部)と障害物等との距離に注意を払いつつ運
転操作を行うことは通常であって,これは,車両が前進している場合で
あっても異ならないといえるから,控訴人らの上記指摘は前記認定を左
右するに足りない。
控訴人らは,刊行物1には,車両の進行方向まで撮影するという技術
思想は開示されていないから,当業者は,刊行物1の記載から,車両の
前方の距離線を設けるという課題を見い出すことはない旨主張する。
ウ記載のとおり,自動車
の運転席から見ると,車体左側面近傍はいわゆる死角となり,特に,狭
い道路における離合や車庫入れ等に際しては,車体左側面近傍の死角部
分についての安全が確認できず,そのために,車体左側面を電柱や塀等
に接触させたり,溝の中へ左車輪を脱落させたり,極端な場合には通行
人に接触したりするなど,安全運転上問題があったことから,このよう
な運転席と反対側の車体側方近傍を十分に確認できる自動車の側方監視
装置を提供することを目的とし,具体的には,テレビカメラ1を車体A
の左側のドアミラー2の背面2aに前方やや下方を向けて内蔵設置し,
テレビカメラ1によって映し出されたテレビ受像機5上の映像(第4図)
には,車体Aの左側フロントフェンダ部6,左前輪7,フェンダ部側方
近傍の路肩8あるいは塀9等が映し出されるようにして,運転席3から
は通常視認できない死角部分(フロントフェンダ部側方近傍)を確認で
きるようにし,脱輪や障害者との衝突等自動車の安全運転上の問題を未
然に防ぐようにしたものである。
引用発明1の内容は,「ドアミラーに配設されており前輪近傍を撮像
する撮像手段と,前記撮像手段で撮像した第一の画像を画面に表示する
表示手段を設けたことを特徴とする車両用監視装置。」というものであ
るところ,引用発明1の「撮像手段」,すなわちテレビカメラは,前記
のとおり,車体の左側のドアミラーの背面に前方やや下方を向けて内蔵
設置され,刊行物1の第4図のような,ドアミラーよりも前にある,車
体の左側フロントフェンダ部,左前輪,フェンダ部側方近傍の路肩や塀
等が写し出された映像を撮像するものであるから,本件発明1の「ドア
ミラーに配設されており前輪近傍を撮像する撮像手段」に相当し,また,
引用発明1における「第一の画像(撮像手段で撮像した第一の画像)」
は,前輪近傍の路面の画像を含むものであると認められる。
そして,刊行物1には,撮像手段であるテレビカメラが,車体の左側
のドアミラーの背面に前方やや下方を向けて内蔵設置されていること,
第4図は上記テレビカメラで撮像した映像であること,第4図には車体
Aの左側フロントフェンダ部6,左前輪7,フェンダ部側方近傍の路肩
8あるいは塀9等が映し出されることが記載されている。
そうすると,引用発明1において,車体のドアミラーの背面に前方や
や下方を向けて設置されたテレビカメラにより撮像された映像は,左前
輪近傍の路面や車体の左側フロントフェンダ部のみならず,車両の左側
前方もある程度映ったものとなると認められる。
ところで,図面は,発明(考案)の技術内容を理解するための補助的
機能を果たすものであるから,当業者であれば,刊行物1の第4図の記
載のみならず,発明(考案)自体の作用効果や明細書における発明(考
案)の詳細な説明の記載を併せて,開示された技術内容を理解するもの
といえる。刊行物1の第4図は,図面としての正確性はともかくとして,
刊行物1の考案の詳細な説明に記載された内容と齟齬のないものとなっ
ていることも併せ考慮すれば,刊行物1に接した当業者において,車体
のドアミラーの背面に前方やや下方を向けて設置されたテレビカメラに
より撮像された映像は,左前輪近傍の路面や車体の左側フロントフェン
ダ部のみならず,車両の左側前方もある程度映ったものとなると認識し
得るものといえる。
したがって,控訴人らの上記主張は理由がない。
控訴人らは,引用発明1で得られるカメラ画像において,当業者は,
運転者が車両前方に注意を払うことを見い出すことはできず,車両の前
方の距離線を設ける動機付けがない旨主張する。
ラーの背面に前方やや下方を向けて設置されたテレビカメラにより撮像
された映像は,左前輪近傍の路面や車体の左側フロントフェンダ部のみ
ならず,車両の左側前方もある程度映ったものとなると認められ,刊行
物1に接した当業者においても,テレビカメラにより撮像された映像が
上記のようなものとなることを当然に認識し得るものといえる。
そして,運転者が障害物の回避のために運転操作を行うことにより,
あるいは,車両などの障害物が移動することにより,車両と障害物との
相対的な位置関係も刻々と変化するものであって,運転者は,障害物を
回避するについては,車両各部が障害物に接触しないように,画像に表
示された範囲において,障害物と車両各部との距離に注意して運転操作
を行うのは当然であるといえるから,刊行物1に接した当業者において,
運転者が車両側方の距離のみならず,車両前方の距離にも注意を払うも
のであることを考慮して,障害物等との接触を回避するための距離線を,
車両の側方のみならず,前方にも表示することは容易に想到し得ること
であるといえる。
したがって,控訴人らの上記主張は理由がない。
控訴人らは,仮に,「車両後方を確認するためのカメラを車両後部に
取り付け,カメラからの画像に車両の後端からの距離を示す画像を重ね
て表示すること」を車両前方にまで上位概念化したものが周知技術で
あったとしても,上記周知技術は「車の進行する方向の先端(車両の進
行方向先端)とカメラによって監視したい領域とが車両の幅方向におい
て重なる場合において,カメラからの画像に車の進行する方向の先端か
らの距離を示す画像を重ねて表示すること」であるから,これを「車の
進行する方向の先端(車両の進行方向先端)とカメラによって監視した
い領域とが車両の幅方向においてずれている場合」に当たる引用発明1
の場合に適用することはできない,「車の進行する方向の先端とカメラ
によって監視したい領域とが車両の幅方向においてずれている場合」に
カメラからの画像に車の進行する方向の先端からの距離を示す画像を重
ねて表示するようにすると,カメラによって監視したい領域に写る障害
物との距離感がかえって分かりにくくなってしまうので,阻害要因があ
る旨主張する。
しかしながら,まず,控訴人らの想定する車両と障害物等の関係は,
参考図1及び2の場合に限られるものではなく,参考図1の障害物が横
に直線的に広がっており,カメラによって監視できる領域が参考図2の
場合においても,車両の進行方向先端と障害物との距離を知る必要があ
る場合も考えられるから,参考図1及び2の場合に限定する控訴人らの
主張は採用し難い。そして,カメラによって監視される領域が,本来カ
メラによって監視したい領域のすべてではなくその一部である場合,例
えば,カメラによって撮影された画像が,車両の左前部付近を表示する
だけであって,車両の進行方向先端とその前方の障害物等との関係を直
接表示できない場合であっても,車両と障害物との衝突を避けるために
は,カメラの画像に車の進行する方向の先端からの距離を直線で示す画
像を重ねて表示することが有用な場合も考えられるから,そのような表
示をすることは当然前記周知技術の範囲内の事柄である。また,カメラ
に写る障害物との距離感についても,車両からの距離線を,車両の進行
方向の先端部を基準として直線とするか,車両の形態に沿った線とする
かは,車両用監視装置の目的や設計によって異なるところであって,車
両の進行する方向の先端からの距離を示す画像を重ねて表示することが
直ちに距離感を分かりにくくするとはいえず,そのことが阻害要因にな
ると認めることはできない。したがって,控訴人らの上記主張は理由が
ない。
また,控訴人らの上記主張は,車両の左斜め前方に障害物が位置する
場合,運転者は車両の左前端部分が障害物にこすらないように車両の左
前端部分のみに注意を向けるものであることを前提とするものと考えら
れるが,運転者が障害物の回避のために運転操作を行うことにより,あ
るいは,車両などの障害物が移動することにより,車両と障害物との相
対的な位置関係も刻々と変化するものであるから,運転者は,障害物を
回避するについては,車両各部が障害物に接触しないように,少なくと
も画像に表示された範囲に注意を払い,障害物と車両各部との距離に注
意して運転操作を行うのは当然であって,車両の左前端部分の左斜め前
方の距離のみに限って注意を払うわけではないから,控訴人らの上記主
張は,この点においても理由がない。
以上によれば,控訴人らの上記主張は理由がない。
控訴人らは,相違点2について,引用発明1に引用発明2を適用する
動機と引用発明2の構成を更に変更する動機は全く異なるものであるか
ら,引用発明1に引用発明2を適用する際に,車体の振動等によりカメ
ラからの画像と距離を示す画像との表示位置がずれることに備え,距離
を示す画像の表示位置を調整できるようにするということはない旨主張
する。
しかしながら,引用発明1に引用発明2を適用することは,引用発明
1に車両からの距離を示す線である距離線を有する第二の画像と第一の
画像とを合成して表示手段に表示する画像合成手段を設けることになる
a⒜の乙4や同⒞の乙6の記載にもあるように,車
両用監視装置において,車両に搭載したカメラからの画像と距離を示す
画像との表示位置にずれが生じることは普通に想定されることであるか
ら,合成された2つの画像の表示位置にずれが生じる場合に備え,ずれ
を修正する手段を設けることには動機付けがあるといえる。なお,カメ
ラがドアミラーに内蔵されており,機能的にはカメラの可動が想定され
ない場合であっても,自動車は走行に供されるものであって,道路状況
その他の要因により,車両に搭載したカメラからの画像と距離を示す画
像との表示位置がずれることがないとはいえないから,上記動機付けが
あることに変わりはない。
以上によれば,控訴人らの上記主張は理由がない。
控訴人らは,2つの画像の表示位置の合わせ方として,平行移動や回
転移動させることが普通であることは,先行技術文献(乙2~7等)に
は開示も示唆もされていない旨主張するが,2つの画像の表示位置の合
わせ方として,1つの画像を平行移動したり,回転移動したりする方法
が技術常識であると認められることは,前記ウ記載のとおりである。
また,控訴人らは,乙4~乙6には,距離スケール(第二の画像)を
上下方向に移動させることが記載されているのみであり,第二の画像を
上下左右に移動させることについては開示も示唆もないから,第二の画
像を上下左右に移動させる表示位置調整手段を設けることが容易想到で
あるとはいえない旨主張する。
しかしながら,車両用監視装置において,車両に搭載したカメラから
の画像と距離を示す画像との表示位置にずれが生じることは普通に想定
記載のとおりであり,車両に搭載したカメラの位
置がずれる方向は上下方向に限られず,左右方向においてもずれが生じ
得るといえるから,当業者において,カメラからの画像と距離を示す画
像の表示位置がずれた場合等に備え,距離を示す画像の表示位置を調整
できるようにする場合に,上下方向のみならず左右方向のずれが生じた
場合にも対応し得るように,第二の画像を上下左右に移動させる表示位
置調整手段を設けることは容易に想到し得ることであるといえる。
したがって,控訴人らの上記主張は理由がない。
オ小括
以上によれば,本件発明1は,引用発明1に,引用発明2及び周知技術
を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができたもの
であり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないもの
である。
本件発明2の進歩性の有無について
ア本件発明2と引用発明1との対比

記載の相違点3において相違するものと認められる。
イ相違点3の検討
引用発明2は,「車両からの距離を示す線である距離線64~66」と
「車両の左前端部分の画像PFLとを合成し,表示手段に表示する」のである
から,「車両からの距離を示す線である距離線64~66」の画像データ
を記憶した記憶手段を有することは明らかである。
したがって,引用発明1に引用発明2を組み合わせた場合,第一の画像
と,第二の画像とを合成して表示手段に表示させるために,「前記第二の
画像を表示するための画像データを記憶した記憶手段」を有するようにす
ることは,当業者において容易に想到し得ることである。
ウ小括
本件発明2と引用発明1との相違点1及び2に係る構成が容易想到であ
記載のとおりであり,相違点3に係る構成も容易想到で
あるから,本件発明2は,引用発明1に,引用発明2及び周知技術を組み
合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができたものであり,
特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
本件発明3の進歩性の有無について
ア本件発明3と引用発明1との対比
本件発明
記載の相違点4において相違するものと認められる。
イ相違点4の検討
表示位置を調整するための手段として,画像を移動させる操作スイッチ
は,周知技術であり,また,上下左右を指示する操作スイッチは,周知慣
用の技術であるから,表示位置調整手段として,このような操作スイッチ
を用い,「前記表示位置調整手段は,前記第二の画像を上下左右に移動さ
せる操作スイッチを有する」ことは,引用発明1に引用発明2及び周知技
術を組み合わせることで当業者が容易に想到し得ることである。
ウ小括
本件発明3と引用発明1との相違点1及び2に係る構成が容易想到であ
記載のとおりであり,相違点4に係る構成も容易想到で
あるから,本件発明3は,引用発明1に,引用発明2及び周知技術を組み
合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができたものであり,
特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
以上によれば,本件各発明は,引用発明1に,引用発明2及び周知技術を
組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができたものであ
り,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである
と認められる
3争点4(本件各第1訂正発明の進歩性の欠如)について
控訴人らは,前記2で認定した乙2文献を主引例とする進歩性欠如の無効
理由に対する対抗主張として,本件第1訂正により,上記無効理由が解消さ
れる旨主張する(争点3-2)のに対し,被控訴人は,本件各第1訂正発明
は引用発明1,引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をす
ることができたものである旨主張する(争点4-1)ので,以下検討する。
本件第1訂正発明1の進歩性の有無について
ア本件第1訂正発明1と引用発明1との対比
本件第1訂正発明1と引用発明1とは,前記第3の4〔被控訴人の主張〕
記載の一致点において一致し,相違点1a及び2の点において相違
するものと認められる。
イ相違点1aの検討
で認定したところに加え,車両にカメラを取付け,
カメラからの画像に車の進行する方向の先端からの距離を示す画像を重ね
て表示することは周知技術であるから,当業者において,距離線の距離の
基準を車両の先端とし,また,上方から見た車両は,通常略四角形の形状
をしているから,車両前部の外縁を略直線形状として捉えて,車両の幅方
向に沿って延びる直線で示すこと,すなわち,車両の前方に表示する距離
線を「車両先端からの長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線に
よって示す」線とすることは容易であるといえる。したがって,引用発明
1において,「車両先端からの長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延び
る直線によって示す第二の指標」を第一の画像に合成して表示する構成を
採用することは,容易である。
以上によれば,引用発明1に引用発明2を適用して,引用発明1に「前
輪近傍の路面及び車両の画像を含むが,車両先端が写っていない前記第一
の画像と,車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの長さ
方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示す第二の指標を有する第
二の画像と,を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段」を設け
るようにすることは,当業者が容易に想到し得ることであると認められる。
ウ相違点2の検討
ウで認定したとおり,「前記第二の画像を上下左右に移動させ,
前記画面における前記第二の画像の位置を調整する表示位置調整手段」を
設けることは,当業者が容易に想到し得ることである。
エ控訴人らの主張について
控訴人らは,車両の前方向の距離を示す線を直線で示すことが容易想
到であるとはいえない旨主張する。
しかしながら,上方から見た車両は,通常略四角形の形状をしている
から,車両前部の外縁を略直線形状として捉え得ることは,前記イ記載
のとおりである。
そして,たとえ,上方から見た車両の形状が車両の前部においてやや
曲線的になっていたとしても,車両の前方向の距離を示す線の基準を車
両の先端とすれば,車両の前部の全体的な形状がやや曲線的となってい
る点を捨象して距離線を直線で表したとしても,車両の前方における障
害物を回避するための指標としての役割を果たし得るものであるから,
上方から見た車両前部の外縁を略直線形状として捉え,車両の前方向の
距離を示す線を「車両先端からの長さ方向の距離を前記幅方向に沿って
延びる直線で示す」ことは,当業者において容易に想到し得ることであ
るといえる。
控訴人らは,距離線を直線とすると,車両の左前端部分からの距離を
把握しにくくなってしまうから,引用発明2の距離線64~66を直線
とすることには阻害要因があるとも主張する。
しかし,前記のとおり,車両の進行する方向の先端からの距離を示す
画像を重ねて表示することが直ちに距離感を分かりにくくするとはいえ
ない上,距離線64~66は,認定のとおり,車両左前端
部分からの距離のみを示すものではなく,車両の外縁からの距離,すな
わち「車両からの距離を示す線」であるが,車両の前方向の距離を示す
線の基準を車両の先端とすれば,車両の前部の全体的な形状がやや曲線
的となっている点を捨象して距離線を直線で表したとしても,車両の前
方における障害物を回避するための指標としての役割を果たし得るもの
であるから,距離を直線で表すか曲線で表すかは,当業者がその目的に
応じて適宜選択する設計的事項であるといえる。したがって,距離線6
4~66を直線とすることに阻害要因があるとはいえない。
以上によれば,控訴人らの上記主張は理由がない。
控訴人らは,本件各第1訂正発明は,路面上の位置に配置した幅方向
に延びる直線(第二の指標)によって,通常幅方向中央に位置するカメ
ラには映し出されない車両先端から車両の長さ方向の距離を示すことが
できるという顕著な効果を奏するから,進歩性を有する旨主張する。
しかしながら,通常幅方向中央に位置するカメラには映し出されない
車両先端から車両の長さ方向の距離を示すことができるという効果は,
容易想到である相違点1aに係る構成,すなわち,「前輪近傍の路面及
び車両の画像を含むが,車両先端が写っていない前記第一の画像と,車
両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離
を前記幅方向に沿って延びる直線で示す第二の指標を有する第二の画像
と,を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段」という構成か
ら予想し得る範囲内のものにすぎないから,控訴人らの上記主張は失当
である。
オ小括
以上のとおり,本件第1訂正発明1は,引用発明1に,引用発明2及び
周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることがで
きたものであると認められる。
本件第1訂正発明2の進歩性の有無について
ア本件第1訂正発明2と引用発明1との対比
本件第1訂正発明2と引用発明1とは,前記第3の4〔被控訴人の主張〕
記載の一致点において一致し,相違点1b,2及び3の点において
相違するものと認められる。
イ相違点1bの検討
車両の前方向の距離を示す線を
「車両先端からの長さ方向の距離を直線で示す第二の指標」とし,「前記
直線は,前記幅方向に沿って延び(,)」るものとすることは,当業者が
容易に想到し得ることである。
したがって,引用発明1に引用発明2を適用して,引用発明1に「前輪
近傍の路面の画像を含む前記第一の画像と,車両の幅方向の距離を示す第
一の指標及び車両先端からの長さ方向の距離を直線で示す第二の指標を有
する第二の画像と,を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段」
を設けるようにし,「前記直線は,前記幅方向に沿って延び(,)」るよ
うにすることは,当業者が容易に想到し得ることである。
ウ相違点2の検討
ウで認定したとおり,「前記第二の画像を上下左右に移動させ,
前記画面における前記第二の画像の位置を調整する表示位置調整手段」を
設けることは,当業者が容易に想到し得ることである。
エ相違点3の検討
イで認定したとおり,「前記第二の画像を表示するための画像
データを記憶した記憶手段を有する」ようにすることは,当業者が容易に
想到し得ることである。
オ小括
以上のとおり,本件第1訂正発明2は,引用発明1に,引用発明2及び
周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることがで
きたものであると認められる。
本件第1訂正発明3の進歩性の有無について
ア本件第1訂正発明3と引用発明1とは,前記第3の4〔被控訴人の主張〕
記載の一致点において一致し,相違点1c,2及び4の点において
相違するものと認められる。
イ相違点1cの検討
「車両先端からの長さ方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示す
第二の指標」とし,「前記第二の指標は,車両先端からの長さ方向の距離
が特定の長さとなる位置に配置され」るようにすることは,当業者が容易
に想到し得ることである。
また,引用発明1に引用発明2を適用する際に,距離を示す画像は,路
面上に位置するように表示することは周知の技術であることを勘案し,「前
記第一の指標及び前記第二の指標は,前記路面上に位置するように前記表
示手段に表示され」るようにすることは,当業者が容易に想到し得ること
である。
したがって,引用発明1に引用発明2を適用して,引用発明1に「前輪
近傍の路面及び車両の画像を含むが,車両先端が写っていない前記第一の
画像と,車両の幅方向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの長さ方
向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示す第二の指標を有する第二
の画像と,を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段」を設け,
「前記第一の指標及び前記第二の指標は,前記路面上に位置するように前
記表示手段に表示され」,「前記第二の指標は,車両先端からの長さ方向
の距離が特定の長さとなる位置に配置され」るようにすることは,当業者
が容易に想到し得ることである。
ウ相違点2の検討
ウで認定したとおり,「前記第二の画像を上下左右に移動させ,
前記画面における前記第二の画像の位置を調整する表示位置調整手段」を
設けることは,当業者が容易に想到し得ることである。
エ相違点4の検討
イで認定したとおり,「前記表示位置調整手段は,前記第二の
画像を上下左右に移動させる操作スイッチを有する」ようにすることは,
当業者が容易に想到し得ることである。
オ小括
以上のとおり,本件第1訂正発明3は,引用発明1に,引用発明2及び
周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることがで
きたものであると認められる。
以上によれば,本件各第1訂正発明は,引用発明1に,引用発明2及び周
知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができた
ものであるから,本件第1訂正により本件各発明の無効理由が解消されたも
のとは認められない。
4争点6(本件各第2訂正発明の進歩性欠如)について
控訴人らは,前記2で認定した乙2文献を主引例とする進歩性欠如の無効
理由に対する対抗主張として,本件第2訂正により,上記無効理由が解消さ
れる旨主張する(争点5-2)のに対し,被控訴人は,本件各第2訂正発明
は引用発明1,引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をす
ることができたものである旨主張する(争点6-1)ので,以下検討する。
本件第2訂正発明1の進歩性の有無について
ア本件第2訂正発明1と引用発明1との対比
本件第2訂正発明1と引用発明1とは,前記第3の6〔被控訴人の主張〕
記載の一致点において一致し,相違点1d及び2の点において相違
するものと認められる。
イ相違点1dの検討
なわち「第二の指標」は,直線によって示すものであるから,車両の長さ
方向においてその直線が配置された位置が車両先端からの車両の長さ方向
の距離を示すことになることは明らかである。そして,刊行物2には「車
両11の最外側の縁を表す表示ライン54」が記載されており,この「表
示ライン54」は,「車両11の最外側のラインを地面に垂直に下ろし,
前記ラインを車両11の前後方向に延長させることによって設定され,車
両11の前方又は後方に向けて突出させられる」ものであるから,当業者
において,刊行物2に記載された「車両11の最外側の縁を表す表示ライ
ン54」を,「第一の指標」と同様に,「第二の指標」の距離の基準とし,
「第二の指標」は,車両先端のラインを地面に垂直に下ろし,車両の左方
及び右方に向けて突出させた線を基準にした線とすることは容易であると
いえる。そうすると,このように設定された「第二の指標」は,「前記第
一の画像における路面上の位置に配置された前記幅方向に沿って延びる直
線の前記長さ方向における配置位置によって前記長さ方向の距離を示す」
ものとなる。
「第二の指標」は,第一の画像に合成されて表示手段に表示され,運転
者に安全運転上有益な情報を提供することを目的とするものであるから,
当業者において,運転者が把握し易い位置に距離線を配置しようとするこ
とは当然のことであり,引用発明1の第一の画像において,車両を避けて,
これと重ならないように距離線を表示しようとすれば,距離線を車両の画
像の左側,すなわち「前記幅方向を横方向とした場合の前記第一の画像に
おける車両の画像の横の位置」に表示することになる。
以上によれば,引用発明1に引用発明2を適用して,引用発明1に「前
輪近傍の路面の画像及び車両の画像を含む前記第一の画像と,車両の幅方
向の距離を示す第一の指標及び車両先端からの車両の長さ方向の距離を前
記幅方向に沿って延びる直線によって示す第二の指標を有する第二の画像
と,を合成して前記表示手段に表示させる画像合成手段」を設け,「前記
第二の指標は,前記幅方向を横方向とした場合の前記第一の画像における
車両の画像の横の位置であって前記第一の画像における路面上の位置に配
置された前記幅方向に沿って延びる直線の前記長さ方向における配置位置
によって前記長さ方向の距離を示す」ようにすることは,当業者が容易に
想到し得ることであると認められる。
ウ相違点2の検討
ウで認定したとおり,「前記第二の画像を上下左右に移動させ,
前記画面における前記第二の画像の位置を調整する表示位置調整手段」を
設けることは,当業者が容易に想到し得ることである。
エ控訴人らの主張について
控訴人らは,引用発明1に引用発明2を適用し,車両先端を距離線6
4~66の距離の基準とする場合,距離線64~66は車両先端と車両
先端前方にある障害物との間に配置されるのが通常であり,車両の画像
の横の位置には配置しないから,第二の指標を車両の画像の横の位置に
配置することは容易想到であるとはいえない旨主張する。
しかしながら,車両の前方向の距離を示す線を「車両先端からの長さ
方向の距離を前記幅方向に沿って延びる直線で示す第二の指標」とする
ことは,当業者において容易に想到し得ることは前記イ認定のとおりで
ある。
そして,この第二の指標は,車体のドアミラーの背面に前方やや下方
を向けて設置されたテレビカメラにより撮像された映像(第一の画像)
に合成されて表示手段に表示され,運転者に安全運転上有益な情報を提
供することを目的とするものであるから,当業者において,運転者が把
握し易い位置に距離線を配置しようとすることは当然のことであり,引
用発明1の第一の画像において,車両を避けて,これと重ならないよう
に距離線を表示しようとすれば,距離線を車両の画像の左側,すなわち
車両の画像の横の位置に配置することになるものと認められる。
以上によれば,控訴人らの上記主張は理由がない。
控訴人らは,本件各第2訂正発明は,その構成に基づき,車両を壁な
どに可及的に近づけることができるという顕著な効果を奏するから,進
歩性を有する旨主張する。
しかしながら,車両を壁などに可及的に近づけることができるという
効果は,容易想到である相違点1dに係る構成,すなわち,前輪近傍の
路面の画像及び車両の画像を含む第一の画像と,車両の幅方向の距離を
示す第一の指標及び車両先端からの車両の長さ方向の距離を前記幅方向
に沿って延びる直線によって示す第二の指標を有する第二の画像とを合
成して表示手段に表示させる画像合成手段を備え,前記第二の指標を上
記合成画像において,車両の画像の横の位置かつ路面上の位置に配置す
るという構成から予想し得る範囲内のものにすぎないから,控訴人らの
上記主張は失当である。
オ小括
以上のとおり,本件第2訂正発明1は,引用発明1に,引用発明2及び
周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることがで
きたものであると認められる。
本件第2訂正発明2の進歩性の有無について
ア本件第2訂正発明2と引用発明1との対比
本件第2訂正発明2と引用発明1とは,前記第3の6〔被控訴人の主張〕
記載の相違点3において相違するものと認められる。
イ相違点3の検討
イで認定したとおり,「前記第二の画像を表示するための画像
データを記憶した記憶手段」を有するようにすることは,当業者が容易に
想到し得ることである。
ウ小括
以上のとおり,本件第2訂正発明2は,引用発明1に,引用発明2及び
周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることがで
きたものであると認められる。
本件第2訂正発明3の進歩性の有無について
ア本件第2訂正発明3と引用発明1とは,前記第3の6〔被控訴人の主張〕
において相違するものと認められる。
イ相違点4の検討
イで認定したとおり,「前記表示位置調整手段は,前記第二の
画像を上下左右に移動させる操作スイッチを有する」ようにすることは,
当業者が容易に想到し得ることである。
ウ小括
以上のとおり,本件第2訂正発明3は,引用発明1に,引用発明2及び
周知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることがで
きたものであると認められる。
以上によれば,本件各第2訂正発明は,引用発明1に,引用発明2及び周
知技術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができた
ものであるから,本件第2訂正により本件各発明の無効理由が解消されたも
のとは認められない。
5まとめ
以上のとおり,本件各発明はいずれも進歩性を欠如しており,また,本件第
1訂正及び本件第2訂正によっても,本件各第1訂正発明及び本件各第2訂正
発明がいずれも進歩性を欠如していることに変わりはないから,本件各発明は
いずれも特許無効審判により無効とされるべきものと認められ,控訴人らは,
本件各発明に係る本件特許権に基づく権利を行使することはできない。
したがって,本件各発明に係る本件特許権に基づく控訴人らの本訴請求は,
その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がない。
第5結論
以上の次第であるから,控訴人らの請求をいずれも棄却した原判決は結論に
おいて相当であり,本件各控訴はいずれも理由がないからこれを棄却すること
とし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官富田善範
裁判官大鷹一郎
裁判官柵木澄子
(別紙1)
本件明細書図面目録
【図1】【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
(別紙2)
刊行物1図面目録
第1図第3図
第4図
(別紙3)
刊行物2図面目録
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】【図10】
【図11】【図12】
【図15】
【図16】
【図18】
【図20】
(別紙4)
周知例図面目録
1乙4
第1図
第3図
2乙5
【図1】
【図2】
【図3】
3乙6
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
4乙7
【図2】
【図3】
5乙16
【図9】
【図11】
【図12】
6乙20
第2図

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