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平成13年11月30日判決言渡
平成8年(ワ)第1408号 損害賠償請求事件(以下「第1事件」という。)
同年(ワ)第3616号 同請求事件(以下「第2事件」という。)
平成9年(ワ)第5726号 同請求事件(以下「第3事件」という。)
平成10年(ワ)第1104号 同請求事件(以下「第4事件」という。)
判決
主    文
1 被告は,原告A1に対し,3995万5000円及びこれに対する平成8年3月17
日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告は,原告A2に対し,270万円及びこれに対する平成8年3月17日から支
払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告は,原告A3に対し,34万6500円及びこれに対する平成8年3月17日か
ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被告は,原告A4に対し,220万円及びこれに対する平成8年3月17日から支
払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 被告は,原告A5に対し,2350万円及びこれに対する平成8年4月28日から
支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6 被告は,原告A6に対し,4400万円及びこれに対する平成9年7月10日から
支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
7 被告は,原告A7に対し,160万円及びこれに対する平成9年7月10日から支
払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
8 被告は,原告A8に対し,593万円及びこれに対する平成9年7月10日から支
払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
9 被告は,原告A9に対し,1940万円及びこれに対する平成10年3月6日から
支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
10 被告は,原告A10に対し,1870万円及びこれに対する平成10年3月6日か
ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
11 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
12 訴訟費用は,原告A1及び被告との間で生じた分は,これを5分してその3を原
告A1の,その余を被告の負担とし,原告A2と被告との間で生じた分は,これを5
分してその2を原告A2の,その余を被告の負担とし,原告A3と被告との間で生じ
た分は,これを10分してその9を原告A3の,その余を被告の負担とし,原告A4
と被告との間で生じた分は,これを5分してその2を原告A4の,その余を被告の
負担とし,原告A5と被告との間で生じた分は,これを10分してその1を原告A5
の,その余を被告の負担とし,原告A6と被告との間で生じた分は,これを10分し
てその1を原告A6の,その余を被告の負担とし,原告A7と被告との間で生じた
分は,これを4分してその3を原告A7の,その余を被告の負担とし,原告A8と被
告との間で生じた分は,これを5分してその2を原告A8の,その余を被告の負担
とし,原告A9と被告との間で生じた分は,これを5分してその2を原告A9の,そ
の余を被告の負担とし,原告A10と被告との間で生じた分は,これを2分してそ
の1を原告A10の,その余を被告の負担とする。
13 この判決の第1項ないし第10項は仮に執行することができる。
事実及び理由
第1章 請求
1 被告は,原告A1に対し,9270万5925円及び内金5575万5000円に対す
る平成8年3月17日(訴状及び請求の趣旨拡張の申立書各送達の日の翌日)
から,内金3695万925円に対する平成9年6月14日(請求の趣旨・原因の拡
張の申立書送達の日の翌日)から,各支払済みまで年5分の割合による金員を
支払え。
2 被告は,原告A2に対し,481万3046円及びこれに対する平成8年3月17日
(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告は,原告A3に対し,430万7401円及びこれに対する平成8年3月17日
(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被告は,原告A4に対し,391万6704円及びこれに対する平成8年3月17日
(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 被告は,原告A5に対し,2550万円及びこれに対する平成8年4月28日(訴状
送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6 被告は,原告A6に対し,4510万円及びこれに対する平成9年7月10日(訴状
送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
7 被告は,原告A7に対し,675万0639円及びこれに対する平成9年7月10日
(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
8 被告は,原告A8に対し,1074万8100円及びこれに対する平成9年7月10
日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
9 被告は,原告A9に対し,3185万0504円及びこれに対する平成10年3月6
日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
10 被告は,原告A10に対し,3648万7000円及びこれに対する平成10年3月
6日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
第2章 事案の概要
 第1 本件は,被告の信者(以下「信者」という。)の行った違法な献金,物品購入,各
種セミナー参加の勧誘により,多額の金員の出捐を余儀なくされたと主張する原
告らが,被告に対して民法709条及び715条に基づき損害賠償及び遅延損害
金の支払を求める事案である。
    これに対し,被告は,一連の勧誘行為の違法性及び原告らの損害を争うととも
に,一連の勧誘は被告とは別人格の信者組織(全国しあわせサークル連絡協
議会〔以下「連絡協議会」という。〕ないし信徒会)の構成員が被告の与り知らな
いところで行ったものであるから,被告は不法行為責任を負わないと主張して争
っている。
 第2 前提事実
  1 被告は,昭和39年に設立登記された宗教法人であり,その母体である統一協会
は,B1を創始者として昭和29年(1954年)ソウルで設立された宗教団体であ
る。
  2 原告らは,いずれも信者からの勧誘により,献金ないし物品購入を行い,ビデオ
センターやカルチャーセンターと呼ばれる,信者が一般人に被告への入会を勧
めたり,被告の教義の伝道・教化を行ったりしている施設において,被告の教義
を学び被告に入会した者である。
  3 被告における主要な教義について
    被告の教義ないし考え方を要約すれば以下のとおりである(その概要自体には
争いはない。乙9,11,弁論の全趣旨)。
(1) 創造原理
  創造原理とは,神が人間と万物世界(自然)をどのように創造されたかを明ら
かにする原理である。その内容は,全知全能の神は人間を最も愛する神の子
として,肉身とともに霊人体を備えた霊肉の統一体,すなわち,寿命が尽きる
と肉身を脱ぎ,霊界において霊人体をもって永遠に生きる存在に創造したと
いうものである。
(2) 堕落論
  堕落論とは,人間が本来善の理想体として創造されたにもかかわらず,何故
に罪悪に苦しむ人類の歴史が続いてきたのか,その原因を説くものである。こ
こでは,このような悲惨な事態に至った原因を,人間が創造本然の位置と状
態を失ったこと(これを堕落と呼び,また,人間を不義に向かわせ不幸に陥れ
る悪の主体をサタン〔悪魔〕と呼ぶ。)にあるとして,堕落の契機,悪の根本と
サタンの正体が追究される。
(3) 罪観,天国と地獄の考え方
  人間の罪は,①人間始祖であるアダムとエバが愛の過ちによって犯した罪
で,すべての罪の根幹をなす原罪,②血統的な因縁をもって子孫が受け継ぐ
祖先の罪である遺伝罪,③連帯的に責任を負わなくてはならない罪である連
帯罪,④自身が直接犯した罪である自犯罪の4つに分類される。このうち原
罪は,子々孫々に遺伝される罪であり,この罪のために堕落性を受け継いだ
人間達は,子孫を繁殖して地上地獄と呼ばれる悪のまん延した世界を造り上
げ,そこで生活した後他界して肉身を脱ぎ霊人体となってからも,完全な愛の
主体である神の前に立つことが苦痛となり,神の愛とは遠い距離にある天上
地獄で生活することを自ら選択することを余儀なくされるという。この罪はメシ
アであるB1しか清算することができないとされる。
(4) 復帰原理
  復帰原理は,人間が罪ある状態に陥った立場から神が創造した本来の状態
に復帰する(神の救いを得る)ための摂理がどのような原則に基づいているの
かを究明するものである。ここでは,神がなぜ一時に悪を滅ぼし,人類を救う
ことができないのかという疑問や,歴史の法則と方向性,目的についても究明
し,歴史の終末にはメシアが再臨することが説かれる。
(5) 万物復帰と献金
  万物復帰は,象徴献祭の教えとして説かれる。象徴献祭とは,人間が堕落し
万物以下の立場に立ってしまったために,「象徴」的に人間の代わりに万物を
ささげることを意味する。象徴献祭は,万物と神が本来の関係を取り戻し,ま
た,人間が堕落する以前の立場に復帰するために立てる条件(蕩減条件)の
実践の一つとして行われる。典型的な象徴献祭の例は献金である。
(6) 祝福
  祝福とは各人に遺伝された原罪を,B1から祝福を受けること(未婚者にあっ
てはB1の選んだ相手〔相対者〕と婚姻関係を結び,合同祝福結婚式へ参加
すること)によって清算するという考え方である。
  4 ビデオセンターないしカルチャーセンターでの教育内容
原告らが通っていたビデオセンターないしカルチャーセンターでは,信者が,
最初のうちは受講者に一般教養,人生観に関する内容のビデオを見せ,その
後,ツーデイズ(1泊2日),ライフトレーニング(通いで1週間くらい),B1の路程
を紹介するスリーデイズ(2泊3日)やフォーデイズ(3泊4日),被告の教義と各
人の生活とのかかわり合いを講義する新生トレーニング(21日ないし30日間で
ホーム〔独身の信者が共同して生活する施設〕に入居ないし通い。新生トレーニ
ングは,A,Bと分かれ,Bでは,実践活動が主である。),主に実際に街頭に出
て統一原理を伝道する実践トレーニング(21日ないし30日間でホームに入居
ないし通い),被告ないし信者組織の活動に専従すること(献身すること)を目的
とする献身トレーニング(30日以上でホームに入居)の順で被告の教義につい
ての教育が行われる。なお,泊まり込みの講義を受けることのできない者のた
めには,ビデオセンターで上記教育内容に沿った講義が行われる場合がある。
これらの教育課程の中で被告やB1師の名が明かされる時期は,おおむねスリ
ーデイズのころまでである。
 第3 争点及び当事者の主張
  1 被告の組織的な金員出捐の働きかけによる不法行為(民法709条の責任)
  (原告らの主張)
   (1) 被告の教義の「万物復帰」というのは,教祖B1を中心とした地上天国を造るた
めに,サタン側に奪われた万物(お金等すべての財物)を神(再臨のメシアで
あるB1)の側に取り戻さなければならないという教えとして説かれている。被
告は,搾取のための教義である万物復帰を信者に徹底的に教え込み,この
教えを信じ込んだ信者をして,いわゆる霊感商法等の違法な資金集め行為に
狂奔させた。被告は,資金源の獲得のために,信者で構成される株式会社ハ
ッピーワールドやその傘下の全国各地の販売会社,特約店あるいは教育機
関であるビデオセンターないしカルチャーセンターを全国各地に作り上げた。
そして,それらを基盤に,勧誘相手の選別からその取り込み方まで一貫した
統一的なマニュアルをもとに,信者をして,被告の名を隠して相手に近づき,
霊能師役を演ずる信者が先祖の因縁による不幸を説いて脅すなどの方法を
用いて,客に低廉な商品(多宝塔,壺,弥勒菩薩,人蔘液,着物,絵画,毛皮
等)を高額な値段で購入させ,あるいは高額な献金をさせるなどの違法行為
を行わせている。これらの勧誘行為は,全国的に,統一的・画一的な手法で
行われており,被告全体の組織的な活動であることは明らかである。
   (2) また,被告は,組織的に巧みに勧誘相手をビデオセンターないしカルチャーセ
ンターに誘い入れて信者として取り込み,ツーデイズ,スリーデイズ,フォーデ
イズ,新生トレーニング,実践トレーニング等の段階的な教育を施す。このトレ
ーニング過程においては,外界と隔離された場所で情報を遮断して客観的判
断力を剥奪し,わずかの休憩時間や食事時間しか与えないことにより思考を
停止させ,さらには毎日感想文を書かせて精神管理を行う。また,受講生同
士の会話を禁じて,プライバシーを剥奪し,自己が正常か否かを判断させる
機会を失わせる等して,正常な判断能力を失わせ,被告の教義である創造原
理,堕落論,復帰原理を教え込む。こうして,被告を信じなければ救われない
と思い込ませて信者を心理的に支配していき,被告に絶対従わないといけな
いとの精神を植え付けて,万物復帰の名のもとに違法な物品購入ないし献金
の勧誘活動に励むよう,価値観の全面的変換を生じさせる。このように洗脳さ
せられ,精神面・生活面で被告に完全に従属した信者らに対して,献金させた
り物品購入させたり,あるいは違法な資金集めの活動に従事させたりして,更
なる犠牲を強いるのである。
   (3) 原告らに対する一連の金員出捐勧誘も,被告のこのような組織的違法活動の
一環として行われたものであり,このような行為は,もはや宗教活動としても
社会的相当性を逸脱したもので違法である。したがって,被告は民法709条
により不法行為責任を負う。
  (被告の主張)
   (1) 法は故意・過失といった人間の意思的要素を前提とする民法709条を,観念
的存在である法人に対して直接適用することまでを予定しておらず,法人に
ついて不法行為責任を肯定するには民法44条,宗教法人法11条又は民法
715条の規定を介する必要がある。したがって,法人の組織的不法行為とい
うことはあり得ず,原告らの主張は失当である。
   (2) 万物復帰は,人間を神の方に復帰するため象徴的蕩減条件(神に対する罪を
清算する償いの条件)を立てるということで,具体的な実践としては,献金を
神にささげる際に真心を尽くし,万物をささげるということであって,被告の資
金集めと何ら結び付けられるものではない。また,被告においては因縁話が
用いられることはなく,原告らが主張するような統一的なマニュアルなどない
し,連絡協議会で販売される商品の小売倍率は6から12倍の程度であるか
ら,信者らは廉価な商品を殊更に高額な値段で勧誘相手に売り付けているも
のでもない。
   (3) ビデオセンターで行う一連のトレーニングにおいては,何ら肉体的抑圧ないし
拘束が用いられるものでなく,単なる教え込みによる心理的支配などは不可
能であるから,原告らの主張する洗脳や違法な心理的支配などあり得ない。
   (4) また後記で述べるとおり,原告らが問題とする販売会社やビデオセンターはい
ずれも被告とは別組織の連絡協議会ないし信徒会が統括し,原告らに対して
一連の金員出捐を働きかけていていたのもこれらの構成員であるから,原告
らの主張は失当である。
  2 個々の信者の金員出捐勧誘による不法行為(民法715条の使用者責任)
   (1) 原告らに対する個々の勧誘の違法性について
   (原告らの主張)
    ア 原告A1
     (ア) 被告にかかわった経緯,1度目の献金等
       原告A1は,SLE(膠原病の一種)の療養中である昭和61年に,夫のB2に
オートバイの交通事故で先立たれ意気消沈していた。
       原告A1は,同年10月15日ころ,自宅を訪れた元夫の部下で信者のB3か
ら,手相を見てもらわないかと誘われて,「道場」と呼ばれる被告の施設
に連れて行かれ,先生役の信者から家系図を示されながら,「男が若死
にする家系だ。子ども(当時18歳)も20歳まで生きられるか分からな
い。お父さんも御主人も成仏ができなくて地獄で苦しんでいる。あなたに
助けてほしいと言っている。あなたを病気にすることによって助けを求め
ている。」「先祖に女難の相がある。」「バイクなどで御主人が死ぬはずが
ない。先祖の因縁があるから死んだのだ。」と恐怖心に駆り立てられ,
「先祖のことなどを清算するためには出家するか,お金を納めるしかな
い。子どもが小さいから出家できないでしょう。」と献金を要求された。さ
らに原告A1は,翌日も「道場」に連れて行かれ,またもや先生役の信者
から執ように献金を求められたため,夫が成仏し子どもが助かるのであ
ればという一心で献金することにした。
       原告A1は,同月17日,信者が運転する車に乗せられて,金融機関をまわ
り,合計1036万円を集めて,被告の施設であるビデオセンターのニュ
ーライフアカデミー藤井寺で1036万円を被告に献金した。この際,信者
は不当な献金を隠ぺいするため,原告A1に被告の関連会社である有限
会社あおばの本翡翠,多宝塔の購入申込書に署名押印させた。
     (イ) 2度目の献金等
       原告A1は,昭和61年12月ころ,信者から先祖の因縁を解くためにニューラ
イフアカデミー藤井寺で勉強をするように勧められた。既に,因縁話によ
って恐怖心に駆り立てられていた原告A1は,子どもを助けたい一心で,
信者の指示に従ってニューライフアカデミー藤井寺に通い,昭和62年1
月からは,自宅近くの西宮北口や門戸厄神にある被告の施設であるビ
デオセンターに通った。原告A1は,先祖の因縁や地獄,あるいはメシア
に関するビデオを見せられ,子どもや夫,先祖が救われるためには被告
の教義に従わなければならないと教え込まれた。
    原告A1は,夫の事故の慰謝料・生命保険金などを受領するようになった
同年2月ころ,再び先生役の信者から,「まだ御主人が苦しんでいる。た
くさんお金があるとお金のことで家族で争いになるから,お金を出しなさ
い。」と献金を要求され,金融機関から2099万5000円を引き出して被
告に献金した。この際,信者は不当な献金を隠ぺいするため,原告A1
に有限会社あおばの人蔘,水晶,石板などの購入申込書に署名押印さ
せた。
  (ウ) 3度目の献金等
    原告A1は,昭和62年8月ころ,さらに献金するよう求められ,1440万円
を被告に献金した。原告A1は,この献金の際に,信者から指示されるま
まに貯金通帳を預けたところ,信者からまだ貯金通帳に残額があると指
摘されたため,500万円の追加献金を余儀なくされた。
    原告A1は,このころB1の名を明かされ,ビデオセンターが被告関連施設
であることを知った。
  (エ) 借入れ(HG)
    原告A1は,別紙のとおり被告のために自分や子どもの名義で金融機関
から合計3183万925円を借り入れた(被告ではこれをHG〔「早く現金」
の意味〕という。)。被告は当初は直接利息等の支払をしていたが,平成
5年ころから返済を滞るようになり,原告A1が被告に代わって返済しな
ければならなくなった。
  (オ) 献金
    原告A1は,平成5年8月13日に100万円,同年9月27日に12万円をそ
れぞれ献金した。
  (カ) まとめ
    以上のとおり,信者らの違法な勧誘行為により,原告A1は後記3,(1)記
載のとおりの出捐を余儀なくされた。
 イ 原告A2
  (ア) 被告にかかわった経緯等
    原告A2は,平成3年11月27日ころ,印鑑販売と称して自宅を訪れた信
者のB4から,家族に短命な人はいなかったかと尋ねられ,実父が自殺
したことや,長男が出生時に仮死状態であったことを教えると,B4は,
「先祖に人を殺めた人がいる。男運の悪い家系だ。」と申し向け,お守り
のためにと原告A2に3本12万円の印鑑を購入させた。B4はさらに,
「良い先生がいるから家系図を見てもらわないか。できるだけ早く見ても
らった方がよい。」と言って,同月29日,原告A2を被告の施設であるビ
デオセンターのニューライフアカデミー藤井寺に誘い出し,先生役の信
者を紹介した。先生役の信者は,原告A2に家系図を示しながら,「先祖
に人を殺めた人がいる。先祖の因縁のために男が短命の家系だ。これ
からも自殺が三,四代と続く。御主人も,子どもも自殺の傾向がある。長
男は自殺しないとしても幼少で死亡する。あなたは先祖の因縁を解くた
めにも勉強する必要がある。」と言って,原告A2が日ごろ気に病んでい
た実父の自殺につけ込み,夫や子どもまで短命に終わるなどと脅し,ニ
ューライフアカデミー藤井寺に通うことを余儀なくさせた。原告A2は,そ
こで先祖の因縁や地獄,メシアに関するビデオを見せられた。
  (イ) 霊界解放献金
    原告A2は,平成4年1月末ころ,メシアの元で修行を積んだ霊感の強い
先生として,信者のB5を紹介された。原告A2は,B5から,家系図を示
されながら,「このままではみんな地獄に行くことになる。御主人や子ども
を救うためには霊界解放が必要だ。本来ならば頭を丸めて出家しなけれ
ばならないが,子どもがいるから出家はできないでしょう。それならば,あ
なたができる精一杯のお金を出しなさい。メシアが全世界を救済するた
めにそのお金を使うことによって,あなたの先祖も夫も子どもたちも救わ
れる。」と献金を要求され,恐怖心に駆り立てられ,同年2月5日に70万
円を被告に献金した。
  (ウ) 罪の清算献金
    原告A2は,平成4年6月下旬ころ,霊感の強い先生として信者のB6を紹
介され,B6から,以前に被告に提出していた内省文を根拠に,「あなた
自身の罪を清算するために献金しなければならない。そうしなければ,
あなたも家族も救われない。献金額は,霊界解放献金よりも多くしなさ
い。」と献金を要求され,恐怖心に駆り立てられ,同年7月2日ころ,70
万円を被告に献金した。
  (エ) 七五三の帯の購入
    原告A2は,その後も,継続的にカルチャーセンターに通い続け,被告の
講義を受けた結果,メシアであるB1こそが原告A2と家族を救うことがで
きるのであり,アベル(被告の組織で上位に位置する者)の言に背くこと
は,メシアの意思にも反し,原告A2と家族に不幸がもたらされると信じ
込まされるようになった。
    そのような中,原告A2は,平成5年7月末ころ,当時のアベルのB35か
ら,被告の関連会社の株式会社創美の製品を購入することはメシアが
世界を救済するために役立つと勧められ,七五三用の帯(7歳女児用)
を約10万円で購入させられた。
  (オ) 1万ドル献金
    原告A2は,韓国水澤里で行われる修練会に参加するように命ぜられ,平
成6年3月28日から同月31日までの水澤里の修練会に参加した。この
修練会で,原告A2は,B1からエバ国である日本を救うには日本の女性
が1人1万ドルを持ってくるようにと激しい調子で献金を迫られたため,夫
や子どもたちを守るためには1万ドル献金をしなければならないと信じ込
み,実母から100万円を借り入れるなどして同年8月20日までに合計1
10万円(1万ドル相当)を被告に献金した。
  (カ) 聖書シリーズイヤリング,高麗人蔘茶,水晶のサル,家系図,ネジュレッ
ト(スカラー)の購入
    原告A2は,平成6年8月19日に,当時のアベルから被告の関連会社の
株式会社アイビーの宝石展示会に連れて行かれ,「聖書シリーズの宝石
類は真の母様(B1の妻)B7がデザインしたから,天からの力を授かり,
霊的なパワーを与えられる。」と,宝石の購入を強引に勧めれられたた
め,41万2000円のイヤリングを購入させられた。 
    原告A2は,同月26日ころ,当時のアベルから被告の関連会社である有
限会社カナンの事務所に連れて行かれ,高麗人蔘茶4本26万7800円
をローンで購入し,合計8万2177円の支払を余儀なくされた(原告A2
は,現在に至るまで4本のうち2本の引渡しを受けていない。)。
    原告A2は,同年11月29日ころ,アベルのB36から,水晶玉の展示会が
あるからと言って有限会社カノンの事務所へ連れて行かれ,「お金がな
いのは皆同じだ。水晶玉には天のパワーがあり,祈祷している部屋に置
いておくと効果がある。」と水晶玉の購入を勧められ,夫のお守りとして
夫の干支である水晶のサルを8万6520円で購入させられた。
    原告A2は,同年12月19日ころ,アベルのB36から,家系図展があるか
らと言って有限会社カノンの事務所へ連れて行かれ,「先祖供養のため
には是非とも家系図が必要だ。除籍謄本は古いものから処分されてしま
うから少しでも早く調べて家系図を作らないといけない。」と,家系図の購
入を迫られ,被告の関連会社である有限会社光誉商事から16万4800
円の家系図を購入させられた。
       原告A2は,平成7年2月28日,アベルのB36から,スカラー(水晶玉をパワ
ーストーン用に加工した玉)の展示会があるからと言って有限会社カノン
の事務所へ連れて行かれ,「パワーストーンを体につけると宇宙の善の
パワーが体に入り,良くなる。」とスカラーの購入を迫られたため,スカラ
ーを3万円で購入させられた。
     (キ) まとめ
    以上のとおり,信者らの違法な勧誘行為により,原告A2は後記3,(2)記
載のとおりの出捐を余儀なくされた。
    ウ 原告A3
     (ア) 被告にかかわった経緯等
       原告A3は,看護婦として近畿大学付属病院で稼働していた平成3年1月こ
ろ,同病院の先輩である信者のB8から,手相や家系を見てくれる人が
いるから一度来てみないかと誘われ,同女宅で信者のB9に姓名判断を
してもらったところ,「絶家の相,色情因縁の相がある。男性が早死にす
る。」「これらの問題はビデオセンターに来れば解決できる。現在は霊界
と地上界が接近しており,今を逃すとチャンスは200年先になる。」と言
われ,被告の施設であるビデオセンターの堺東カルチャーセンターに連
れて行かれた。
       原告A3は,堺東カルチャーセンターで霊界に関するビデオを見せられた後,
信者から,「あなたが学んで,氏族の中心者になって,苦しんでいる霊を
解放してあげないといけない。」と言葉巧みに勧誘され,頻繁に堺東カル
チャーセンターに通うようになった。
     (イ) 献金
       原告A3は,10回ほど堺東カルチャーセンターに通ったところで,信者のB1
0から,「地獄」という映画やビデオを見せられるなどして,献金をしない
と命を奪われるとの恐怖心を植え付けられ,「霊を解放することは,命を
ささげるくらい大切なことだ。しかし,死ぬわけにはいかないだろう。お金
には欲がからむから,そのような物は天に返しなさい。」と全財産の献金
を要求され,平成3年2月28日,全財産である113万8000円を被告に
献金した。
     (ウ) 絵画等の購入
       原告A3は,上記献金後も3日と開けず堺東カルチャーセンターに通い,統一
原理のビデオを見せられ続けた結果,被告により完全に心理的に支配さ
れ,被告のためにお金を差し出すことは良いことだという観念にとらわれ
るようになった。
       原告A3は,平成3年4月16日,被告の関連会社の株式会社創美で絵画を
購入するよう勧められ,72万1000円の絵画をクレジットで購入し,手数
料を含めて84万7319円を支払った。
     (エ) フォーデイズ,新生トレーニング,献金
       原告A3は,平成3年6月ないし7月にフォーデイズに参加させられ,さらに同
年7月から9月ころまでの3か月間新生トレーニングに参加させられて,
他の信者と共同生活をしながら講義を受けた。
       原告A3は,新生トレーニングの最中に,B1の妻であるB7が来日するので
この時期に新しく生まれ変わらなければならないと説得され,同年9月2
6日に60万円を被告に献金した。
     (オ) 研修隊
       原告A3は,新生トレーニングを平成3年9月ないし10月ころに終え,研修隊
(献身〔職業を放棄し被告の活動に専従すること〕する前に,家庭問題や
借金問題など献身への障害を取り除くことを目的として研修する信者ら
の集団)として,平成4年1月ころまで,信者と共同生活をしていた。そこ
での生活は,午前5時に起床し深夜の2時から3時ころに寝るという過酷
なものであった。
     (カ) 訪韓ツアーへの参加,ボーナス献金
       原告A3は,平成3年12月,メシアの心情に近づくためと説明され,約20万
円を出費して4泊5日の訪韓ツアーに参加し,同月24日には,ボーナス
献金として,20万円を被告に献金した。
     (キ) 合同祝福結婚式の心情献金等
       原告A3は,平成4年4月ころ,同年8月に韓国で実施される合同祝福結婚
式に参加することとなり,被告に心情献金と月例献金を続け,7万2000
円を献金した。さらに原告A3は,同年5月,6月祝福献金として,70万
円を支払った。
     (ク) 脱会
       原告A3は,平成4年7月に被告を脱会した。
     (ケ) まとめ
    以上のとおり,信者らの違法な勧誘行為により,原告A3は後記3,(3)記
載のとおりの出捐を余儀なくされた。
    エ 原告A4
     (ア) 被告にかかわった経緯
       原告A4は,平成4年当時,父B11,母B12及び弟と暮らしていた。原告A4
らは,弟が大学在学中に自律神経失調症にかかってから家にこもりがち
で,大学卒業後も職に就かずにいることを常々悩んでいた。
       B11,B12は,同年3月20日ころ,手相を見せてもらえないかと言って自宅
を訪れた信者のB13から,「B14家は,今転換期にある。一生懸命勉強
し,先祖供養をすれば,息子さんの病気も治る。」と被告の施設であるビ
デオセンターの橿原カルチャーセンターに行くよう勧められ,同センター
に赴いた。B12は,信者のB42から尋ねられるままに,B14家の資産
に関するアンケートに答え,息子の自律神経失調症のことやB11の弟も
精神病のために入院していることを話した。ほどなくして,原告A4もB1
1,B12らに同行して橿原カルチャーセンターに通うようになった。
     (イ) 献金
       原告A4とB12は,B42から「B11の家系もB12の家系もどちらも悪い。B1
5家(B12)の家系は殺傷因縁があり,B14家(B11)の家系は色情因
縁がある。良い先生を紹介する。」と言って,B43を紹介された。
       B43は,「ひどい家系ですね。先祖の供養をしなければ,家系は良くならな
い。」「御主人の命がない。先祖の因縁がたたっている。息子さんも人を
殺して警察のやっかいになるから,先祖のためにお供えをしなさい。」「お
宅なら,1200万円位用意しなさい。」と,1200万円の献金を要求した。
       恐怖心に駆り立てられた原告A4とB12は,B11や弟が救われるならと思
い,原告A4が200万円,B12が1000万円をそれぞれ出して,平成4
年4月10日ころ,合計1200万円を被告に献金した。
     (ウ) ペンダントの購入
       原告A4は,平成4年10月14日ころ,信者のB16から,被告の関連会社の
株式会社クリベルの展示会に誘われ,同社の商品を購入することは被
告に献金することと同じことであると言われ,135万円ものぺンダントを
ローンで購入し,56万0640円を支払った。
     (エ) まとめ
    以上のとおり,信者らの違法な勧誘行為により,原告A4は後記3,(4)記
載のとおりの出捐を余儀なくされた。
    オ 原告A5
     (ア) 被告にかかわった経緯
       原告A5は,平成2年12月中ころ,手相を見せてもらえないかと言って自宅
を訪れた信者のB17らから,被告の施設であるビデオセンターのニュー
ライフアカデミー藤井寺で先祖の因縁を見てもらわないかと言われて家
系図運勢鑑定券を手渡されたので,ニューライフアカデミー藤井寺を訪
れた。原告A5は,信者から勧められるままニューライフアカデミー藤井
寺に通うことにし,そこで因縁にまつわるビデオを見せられた。
     (イ) 1度目の献金
       原告A5は,平成2年12月末ころ,家系図を見る先生として信者のB46を紹
介され,B46から家系図を示されながら,「早世している御主人の父方
の祖母の思いがあなたに現れている。あなたが出家しなくてはならな
い。出家ができないならば,献金をしなさい。」と献金を要求された。原告
A5は,居合わせた信者のB47からも,「絶対いいことがあるから,献金
をしたほうがいいよ。」と再三献金を勧められたため,「100万円くらいな
ら献金できる。」と答えたが,B47から700万円の献金を承諾させられ
た。B47は,「いつ出せる。1人では何だから私がついて行ってあげる。」
と早く献金するように迫ったため,原告A5は平成3年1月8日,金融機関
から700万円を引き出し,被告阿倍野教会に献金した。
     (ウ) 2度目の献金
       原告A5は,献金後しばらくはニューライフアカデミー藤井寺に通っていたが,
そのうち次第に通わなくなった。ところが,原告A5は,平成3年9月に実
兄を白血病で亡くし,意気消沈していたところ,平成4年4月ころ,信者か
ら,「先生に会わないと,お兄さんはいいところへ行かない。」と言われ,
同月30日ころ再びニューライフアカデミー藤井寺を訪れ,信者のB18か
ら求められるままにA5家の預貯金の残高と金融機関名を書き出し,こ
れをB18に手渡した。
       その後,原告A5は先生として信者のB6を紹介され,B6から,「お兄さんの
思いがあなたに来ている。御主人の厄年をかばうために,あなたのお兄
さんが身代わりになった。献金したために救われた人がたくさんいるか
ら,あなたも献金しなさい。献金の金額が2100万円と出ている。」と献
金を迫られた。原告A5が,「今ある預貯金は,自宅の新築費用として蓄
えているものだ。」と答えると,B6から,「考える時間はない。今献金をし
ないと,御主人かあなたが亡くなるかもしれない。」と迫られた上,B18
からも,「一緒に銀行を回ってあげる。」と腕を引っ張られたため,原告A
5は献金に応じざるを得ない状況に陥った。
       原告A5は,B17の運転する車でいったん自宅に通帳を取りに戻り,指示さ
れるままに金融機関で約1700万円を下ろし,ニューライフアカデミー藤
井寺に戻ったが,「1700万円は夫の仕事の支払と自宅を新築するため
の金だ。これを出したら生活もできない。夫にも言わなければいけない。
家も建てられない。」と懇願したところ,仕事の支払分の200万円のみの
返還を受け,新築資金に当たる残額については,「今年新築すると,御
主人が亡くなる。3年したら家が建てられるようになるから待ちなさい。」
と返還を拒まれ,結局,原告A5は1500万円の献金を余儀なくされた。
     (エ) まとめ
    以上のとおり,信者らの違法な勧誘行為により,原告A5は後記3,(5)記
載のとおりの出捐を余儀なくされた。
    カ 原告A6
     (ア) 被告にかかわった経緯
       原告A6は,平成2年6月にB19と結婚したが,平成3年に交通事故で先立
たれ,意気消沈していた。原告A6は,平成4年6月初めころ,元勤務先
の先輩である信者のB48から,電話で「亡くなったB19さんの夢を見
た。B19さんは電話を枕元に置いて,泣きながらあなたからの電話を待
っている。」「B19さんの霊が浮かばれていない。こんな事故があるとい
うのは,何かがあるからだ。かみちゃん(原告A6)の命も危ないんじゃな
いかなあ。いい先生がいるから,一度見てもらったらいい。」と誘われ,被
告の施設であるビデオセンターの東大阪カルチャーセンターに赴いた。
原告A6は,東大阪カルチャーセンターで,信者のB20から尋ねられるま
まに,B19の生命保険金として7000万円程度の財産があることを教え
たところ,B20から,「ここに通っていることは誰にも言ってはいけない。
もし誰かに言ったら御主人は救われません。」と告げられた。
     (イ) 献金
       原告A6は,数日後,家系図を見る大先生として信者のB49を紹介された。
B49は,「御主人やあなたの先祖はみんな地獄で苦しんでいる。伯母が
未だに結婚せず,金遣いが荒いことや,祖父や従兄弟が交通事故に遭
ったのは,先祖が地獄にいることを伝えようとしているからだ。あなたの
御主人も浮かばれていない。霊界解放をしてあげなくてはならない。あな
たができるのは金を出すことだ。先祖全部の因縁の救済がかかってい
る。あなたの誕生日である7月までに何とかしないとあなたの命が危な
い。」と告げ,いったん席を外してから,「お祈りをしたところ4000万円と
いう数字が出た。4000万円を献金すれば救われる。」と原告A6に400
0万円もの献金を要求した。恐怖心に駆り立てられた原告A6は,B19
や伯母が救われるためには献金するしかないと考え,B20らに連れら
れて行って,銀行の預金から3700万円,生命保険会社から300万円
の合計4000万円を用立て,6月末に4000万円を被告に献金した。
     (ウ) まとめ
    以上のとおり,信者らの違法な勧誘行為により,原告A6は後記3,(6)記
載のとおりの出捐を余儀なくされた。
    キ 原告A7
     (ア) 被告にかかわった経緯,印鑑の購入,入会金等
       原告A7は,両親と暮らしながら,広告制作会社に勤務していた。原告A7
は,平成6年1月25日ころ,会社帰りに京橋の京阪モール前の広場で,
信者のB52から,「青年の生活意識調査アンケートに答えて下さい。」と
声をかけられたのがきっかけとなり,B52から被告の施設であるビデオ
センターの京橋カルチャセンターI&S(以下「I&S」という。)へ来るよう約
束させられ,その後も手紙や電話で同様の勧誘を受けるようになった。B
52は,原告A7が占いに関心があると知ると,「友達の知り合いに姓名
判断してくれる人がいるんだけど,一度見てもらったら。」「滅多に大阪に
来ない先生で,2,3時間かけて見てくれる。私の知り合いだから一緒に
行ってあげる。」「B21(原告A7の旧姓)さんの名前を見てもらったら,と
ても先祖の功労がある立派な方だとほめていたが,1つ気になることが
あるみたいだ。それはプライベートな話だから,直接本人に話したいと言
っていた。」と原告A7に申し向け,原告A7に姓名判断を受けることを承
諾させた。
       原告A7は,同年4月23日,B52に京橋の旅館に連れて行かれ,信者のB2
2に引き合わされた。原告A7は,B22から,「B21家は,功労のある家
系だけれども,色情因縁がある。色情因縁があると,幸せな結婚はでき
ない。長男が立たず(早死にしたり,結婚できないことをいう。),絶家す
る。今が転換期である。」と言われ,自分の祖父が何度も離婚,再婚を
繰り返していることや,母親が父親の暴力や酒乱に悩んでいること,兄
がなかなか結婚しようとしないこと,妹もあまり良くない男性と交際してい
ることは,すべてB22の言うように色情因縁のせいではないかと思い,
自分の悩みをB22に打ち明けた。
       すると,B22は「B21家は女性の恨みの強い家系だ。このままでは絶家す
る。あなたもこのままでは結婚しても,必ず離婚するか,母親のように苦
労するし,婦人科系の病気にかかる。水子にもなりやすい。だが,印鑑を
買えば,悪い因縁から身を守れる。先祖を救うために魔を切る数字40を
授かれば,先祖が喜び,あなたを守る。」と原告A7の恐怖心を駆り立
て,40万円の印鑑のセットを購入させた。 
       原告A7は,B22から,「道徳的なことを学んだ方がいい。どこかカルチャー
センターみたいなところに行くとよい。」と勧められ,同年4月30日にI&
Sを訪れ,ビフォーザカウサセミナー,ファーストカウサセミナー(ツーデイ
ズ),セカンドカウサセミナー(スリーデイズ)等に参加させられ,入会金
や参加費等の名目で12万円を支払った。原告は,ツーデイズを受講す
るころになって,初めて被告やB1のことを明かされた。
     (イ) 上級トレーニング,水澤里修練会(訪韓ツアー),1万ドル献金等
       原告A7は,平成6年8月上級トレーニングに参加し,参加費として5万5000
円を支払った。その際,「アベルに逆らうことはメシアに逆らうことだ。」と
(いわゆるアベル・カインの教えを)教え込まれ,アベルであるB23に絶
対的に服従していた。
       原告A7は,同年9月に水澤里の修練会に参加するよう誘われ,この修練会
に同年10月6日から9日まで参加して,参加費として7万円を支払った。
原告A7は,水澤里修練会に参加した後に,B52から,「日本を救うため
には,1万ドル献金をしなければならない。もし,失敗すれば,日本は海
に沈む。お金がない人は神も考慮するかもしれないが,あるのに献金で
きない人は霊界に行ったら地獄に落ちる。」と脅され,恐怖心をあおられ
て,1万ドル献金として同年10月に40万円,平成7年6月までに82万
円,さらに同年12月に3万円の合計125万円を支払った(なお,原告A
7は,平成6年10月に支払った40万円については,その10分の3に当
たる12万円が月例献金になるとして,28万円しか1万ドル献金として認
めてもらえなかった。)。
     (ウ) 着物,宝石,高麗人蔘茶の購入       
       原告A7は,平成6年11月6日,絶対服従していたB23から着物の展覧会
に連れ出され,着物を購入するように指示され,仕方なく一番安い着物
を選んでローンで購入し,合計78万3837円を支払った。さらに,原告A
7は,平成7年6月24日,B52から,被告の関連会社の株式会社アイビ
ーの宝石の展覧会に誘われ,「被告の商品は霊界から見ると天国に届く
光を放っている。先祖がその光をたどって霊界に行くことができる。」「本
来ならば,直接献金するべきだが,宝石を授かり,その代金を払うことに
よって,献金したことになる。」と宝石の購入を勧められ,既に家系に色
情因縁があるとの恐怖心を植え付けられていたため,79万3100円の
ペンダント(天上の調べ)をローンで購入し,合計59万9108円を支払っ
た。また,原告A7は,B52から購入を勧められていた高麗人蔘茶を同
年9月ないし10月ころ,8万円で購入させられた。
     (エ) 訪米ツアー
       原告A7は,平成7年9月,以前原告A7に印鑑を購入させたB22から,神の
啓示が降りたから訪米ツアーに参加するようにと指示され,63万円を出
捐して訪米ツアーに参加した。
     (オ) スリーデイズ,新生トレーニング,実践トレーニング,スリーデイズ
       原告A7は,平成7年12月ころから,上級トレーニングのため教会に入居さ
せられ,上級トレーニングホーム入居費として26万円を支払わされた
上,当初参加したスリーデイズを熱心に受講していなかったとして,同月
29日から31日までスリーデイズに再度参加させられ3万円を支払った。
その後,原告A7は,平成8年1月に新生トレーニング,同年2月に実践ト
レーニング,同年5月に青年部に参加させられ,新生トレーニング費50
00円,実践トレーニング費9000円,青年部費1万5000円をそれぞれ
支払った。
     (カ) 献金
       原告A7は,平成8年2月ころ,「10数復帰」として1人10万円を献金するよう
命じられ7万円を,さらに,月例献金として合計49万円を献金させられ
た。
       原告A7は,同年6月,「この時期に通帳にお金が残っている人は,霊界に行
ったら,ざん訴されるし,霊界で買物ができなくなる。通帳はすべて神に
ささげなさい。」と言われ,同年7月までに27万円の祝福献金をした。
     (キ) 脱会
       原告A7は,平成8年10月被告を脱会した。
     (ク) まとめ
    以上のとおり,信者らの違法な勧誘行為により,原告A7は後記3,(7)記
載のとおりの出捐を余儀なくされた。
    ス 原告A8
     (ア) 被告にかかわった経緯,入会金等
       原告A8は,コンピュータ関連会社に勤めていたが,常々自分がリストラの対
象になっているのではないかと思い悩んでいた。原告A8は,平成4年1
1月16日ころ,仕事帰りに京橋のツインタワー前の路上で,信者のB54
からアンケートに答えてほしいと声をかけられ,B54から「世の中のいろ
いろな問題について学べるいいところがあり,私もそこで学んでいる。一
度来てみてはどうか。」と勧められ,被告の施設であるビデオセンターの
京橋市民大学センターを訪れた。
       原告A8は,京橋市民大学センターでもB54らから,リストラの話を持ち出さ
れ,「あなたは,今転換期だ。あなたは,この分岐点で上がっていくことが
できるか,それともこのまま落ちていくのか。放っておくと落ちていくしか
ない時期にある。」と断定的に述べられ,「落ちて行きたくなかったらここ
で学んでいったほうがいい。」と勧められたため,京橋市民大学センター
に通うことを余儀なくされた。原告A8は,入会金,コース費の名目で合
計8万5000円を支出させられた。
       その後,原告A8は,B54から「偉い講師の方が来てくれる2日間の合宿が
あり,参加すれば,学んでいるビデオの内容がよく分かるようになる。」と
熱心に勧められ,2デイズに参加させられたが,そのころ勤務先の会社
から退職しなければ解雇すると言い渡され,会社を退職した。原告A8
は,平成5年1月下旬から同年2月10日まで,ライフトレーニングに参加
させられ,そのころはじめて被告とB1の名を明かされた。
     (イ) 献金
       原告A8は,平成5年2月中旬ころ,家系図を見る先生として,信者のB53を
紹介され,B53から家系図を示されながら,「祖母の時から女性,女性と
来て長男が立っていない。家系的には衰退していく家系です。ひいおじ
いさんは,殺傷の罪,戦争に行って人を殺した罪を犯した。ガンで亡くな
ったひいおじいさんの命日を見るとやはりサタン数だ。ひいおじいさんは
サタンによって命を奪われた。ガンで死ぬ家系だ。」「おばあさんが離婚
して再婚して色情の罪を犯している。最悪だ。事故死,病死から逃れるこ
とはできない。」「このまま行くと,あなたの家系はつぶれるしかないが,
あなたはその中で立った長男だ。この家系で,あなたはどう蕩減を払っ
ていくのか。」と不安をあおられた。B53は,「家系の罪を清算するため
には,あなたにとって一番大切なものを出しなさい。万物から執着心を取
ることによって,それが条件となって清算される。あなたにとって,一番大
切なものは何ですか,命ですか。命を引き換えにすることはできますか,
できないでしょう。命の次に大切なものは。」と強い口調で迫り,原告A8
に「お金です。」と答えさせ,あらかじめアンケートで把握しておいた原告
A8の貯金に合わせて430万円の献金を要求した。恐怖心に駆り立てら
れた原告A8は,同年2月ころ,被告に対し430万円の献金を余儀なくさ
れた。
     (ウ) フォーデイズ,上級トレーニング,月例献金等
       原告A8は,平成5年2月11日からフォーデイズ,上級トレーニングに,その
後は新生トレーニング等に参加させられ,新生トレーニングでは信者とと
もにホームに入居させられた。原告A8は,上級トレーニング費として5万
5000円,新生トレーニング費として5000円を支払い,また,入居生活
に入った時は無職の状態であったが,アベルから,新生トレーニングは,
勤めながらやってもらわないと困ると言われ,同年4月ころ再就職し,合
計20万円もの入居費を支払った。
       原告A8は,新生トレーニングBに参加した際に,これをすることで善を積むこ
とになり,万民を救うことができると虚偽の説明を受け,熱心にハンカチ
や靴下の販売をするようになった。
       原告A8は,新生トレーニング生になったころから,1か月の給料の3割を月
例献金として納めるよう要求され,以後ほぼ毎月献金を続け,脱会まで
合計139万9000円を献金させられた。
       その後,原告A8は青年部に配属され,部費として,平成5年11月から平成
7年4月までの間,合計2万7000円の支払をさせられた。
     (エ) 1万ドル献金,特別献金
       原告A8は,平成5年12月初めころ,被告から,「日本は,アダム国韓国に対
し,ひどい仕打ちを行ってきた。日本はエバ国としての務めをしなくては
ならない,1人1万ドル献金するように。もし献金しないと,日本はエイズ
パニックか天災で滅びてしまうだろう。日本を救い,背負っていくのはあ
なた達である。」と虚偽の説明を受けて1万ドルを献金するよう強く求め
られ,113万円の献金を余儀なくされた。
       原告A8は,この1万ドル献金の話があった同年12月には,特別献金として
7万円を献金した。
     (オ) 合同祝福結婚式参加と祝福献金 
       原告A8は,平成7年2月ころ,「B1氏が直接祝福をされるのは,これが最後
かもしれない。本来祝福を受けることができるのは,選ばれた人である
が,献金をすることで,特別に祝福を受けることができる。」と合同祝福
結婚式への参加を強要され,祝福献金として140万円を支払うことを余
儀なくされた。
     (カ) 脱会
       原告A8は,平成8年に被告を脱会した。
     (キ) まとめ
    以上のとおり,信者らの違法な勧誘行為により,原告A8は後記3,(8)記
載のとおりの出捐を余儀なくされた。
    セ 原告A9
     (ア) 被告にかかわった経緯
       原告A9は,平成3年5月20日ころ,姓名判断をさせてもらえないかと言って
自宅を訪問したB24らから,霊界解放の話を持ちかけられた。原告A9
は,長男に子どもが恵まれないことや,ホテルで料理人をしていた次男
が手の皮膚の病気にかかって仕事を辞めざるを得なくなったこと,夫が
中心性網膜症を患ったことなど様々な不安を抱えていたため,霊界解放
が問題解決の糸口になるのでないかと思い,B24に勧められるままに
同月26日被告の施設である堺東のビデオセンターを訪れた。
       原告A9は,担当となったB56に尋ねられるままに自分の財産を教え,父親
が母親以外に女性を作って家出したことや,妹の子どもが交通事故で亡
くなったこと,母親が膀胱黒色腫で亡くなったことを話したところ,「そのよ
うな不幸が起こるのはすべて色情因縁のためだ。あなたの長男が子ども
に恵まれないのも色情因縁のためだ。このままではあなたの子どもは,
男として立つことはできない。次男はサタンにやられて交通事故で死ぬ
かもしれない。」と告げられ,自分の子どもや夫にも因縁が及び,死んで
しまうのではないかと恐怖心に駆り立てられるようになった。
     (イ) 献金,HG
       原告A9は,2週間ほどした平成3年6月ころ,B56から,家系図を見る先生
として信者のB57を紹介され,B57から家系図を示されながら,「A9家
は転換期に来ている。長女のあなたが犠牲の道を行かなければならな
い。お母さんがあの世で苦しんでいる。霊界にいる先祖の方々を救うた
めにもあなたがその使命を果たさなくてはならない。」と迫られ,「命を差
し出せないのであれば,命の次に大切な財産を全部差し出しなさい。」と
献金を求められた。原告A9がなかなか決意できずにいると,他の信者
から入れ替わり立ち替わり,色情因縁のために不幸となった人の話や献
金したために救われた人の話を聞かせられたため,原告A9は献金をし
ないと子どもがサタンに狙われるかもしれないと恐怖心に駆り立てられ,
同月27日,1550万円を被告に献金した。
       原告A9は,B56から献金した事実を家族に隠すように指示された。その後
も,原告A9は,救国献金,祝福献金,HG献金などの名目で,後記
3,(9),ア,(ア)のとおり,合計2433万8784円の献金を余儀なくされ
た。
     (ウ) 12トレーニング,新生トレーニング,訪韓,訪米ツアー等
       原告A9は,平成3年7月16日から12トレーニング,同年9月4日からフォー
デイズ,同年10月24日から新生トレーニングに参加し,被告を信じなけ
れば夫や子どもが因縁により不幸になると教え込まれた。
       原告A9は,平成4年3月ころから伝道活動をさせられた上,指示されるまま
に,度々韓国やアメリカを訪れ,その費用として合計149万8000円の
支払を余儀なくされた。
     (エ) 物品購入
       原告A9は,信者から勧められ,後記3,(9),ア,(ウ)のとおり,絵画,指輪,
ハンドバック等を購入させられ,合計211万8220円の支払を余儀なくさ
れた。  
     (オ) まとめ
    以上のとおり,信者らの違法な勧誘行為により,原告A9は後記3,(9)記
載のとおりの出捐を余儀なくされた。
    コ 原告A10
     (ア) 被告にかかわった経緯
       原告A10は,原告A9の実妹である。原告A10は,平成5年当時,次女のB
25が登校を拒否していたことに毎日頭を悩ませていたが,原告A9か
ら,「B25ちゃんの相談に乗ってくれる場所がある。」と誘われ,同年11
月3日ころから,被告の施設である堺東ビデオセンターに通うようになっ
た。
     (イ) 1度目の献金
       原告A10は,信者のB60から,家系図を見る先生としてB57を紹介され,B
57から尋ねられるままに父親の女性問題や,母親が膀胱黒種で死亡し
ていること,自分がかつて伯母の養女に出されたことを話したところ,B5
7から家系図を示されながら,「お父さんの色情因縁がB25ちゃんにも
現れている。子どももできずに死んでしまった伯母さんが寂しい気持ちを
B25ちゃんを通じて伝えている。このままでは,B25ちゃんだけでなく,
他の子どもにも良くないことが起こる。伯母さんの霊が霊界で下の地位
にいて苦しんでいる。これを現世にいる人間が救ってあげなければ因縁
が及ぶ。」と繰り返し聞かされるうちに,母や伯母の霊を救わなくては子
どもたちも救われないと思うようになったが,解決方法が分からず絶望
的な気持ちに陥った。ところが,原告A10は,平成5年11月末ころにな
ってB57から「あなたが,出家すれば,お母さんや伯母さんの霊を救うこ
とができる。出家ができないのなら,財産を差し出しなさい。あなたが出
家する代わりに,すべての財産を浄財として差し出し,先祖の霊を救え
ば,それですべての困難が解決する。」と被告への入会と1200万円も
の献金を迫られた。恐怖心に駆り立てられた原告A10は,子どもたちを
救いたいという一心で,被告へ入会し,同月25日,1200万円を被告に
献金した。
       原告A10は,献金後も堺東ビデオセンターに通い続け,霊界で祖先の霊が
苦しんでいることで現世の人間にも苦しみが訪れるとか,サタンに汚され
たこの世は救世主により救われるとか教え込まれた。
     (ウ) 救国献金(1万ドル献金),復帰献金,祝福献金,訪米,訪韓ツアー等
       原告A10は16万人の信者が韓国を訪問することで被告が世界的な宗教と
して成功すると言われ,平成6年3月,5月,10月の3度にわたり水澤里
の修練会に参加し,その都度救国献金(1万ドル献金)という名目で,合
計330万円を献金させられた。
       原告A10は,夫婦ともに被告から祝福を受けるのでなければ真の幸福を実
現することができないと言われ,夫であるB26も被告に入会させた。そ
の際,原告A10は,B1から祝福を受け復帰(入会)するための条件とし
て,同年6月,500万円の復帰献金を余儀なくされた。原告A10は,平
成7年6月,B26が韓国を訪問した際も,救国献金として110万円を,
同年7月には,祝福献金として200万円を被告にそれぞれ献金した。
       原告A10は,同年3月アメリカへ行き,その費用として82万円を支払わされ
た。
       さらに,原告A10はB60から頼まれる度に,平成7年5月から平成9年4月
までの間,合計402万円を献金した。
     (エ) 物品の購入
       原告A10は,被告の関連会社の商品を購入することでその教義の実現に寄
与し先祖の因縁から解放されると教えられて,後記3,(10),ア,(ウ)のと
おり,絵画,着物,印鑑等を購入し,合計339万円の支払を余儀なくされ
た。  
     (オ) まとめ
    以上のとおり,信者らの違法な勧誘行為により,原告A10は後記3,(10)
記載のとおりの出捐を余儀なくされた。
  (被告の主張)
以下のとおり,原告らは信仰に基づき,あるいは,自発的に金員の出捐を
したので,これに係る勧誘を違法とする余地はない。
  ア 原告A1
  (ア) 被告にかかわった経緯,その後の信仰について
    原告A1は,B3らに被告を紹介されビデオセンターに通ううちに,被告の
信仰に確信を持つようになり,母親や子どもにもビデオセンターを紹介し
たり,信者の集会の際には自宅を提供したりするようになった。
  (イ) 献金について
    原告A1が昭和61年10月17日に献金したとする1036万円は,有限会
社あおばの販売する多宝塔,数珠の代金である。原告A1は,因縁話で
恐怖心に駆り立てられて出捐に至ったのではなく,パンフレットや仏教の
説話集を用いた説明を受けて,その商品価値を十分に理解した上で,喜
んでこれらを購入したのである。また,原告A1が,昭和62年2月に献金
したとする2099万5000円は,有限会社あおばの販売する高麗人蔘
茶,石板,水晶,念珠の代金であり,原告A1が体質改善と親子関係の
改善を願って,喜んでこれらを購入した。さらに,原告A1は,同年8月に
被告に1440万円を献金したことは一切ないし,そのころ被告に献金し
たとする500万円は,弥勒像,サウナ,浄水器(ミネクール)等の購入代
金である。
    原告A1がHGとして主張している3183万0925円の借入れは,原告A1
が被告に対する信仰心から自発的に行ったもので,何らの強制や欺罔
も加えられていない。またこれは,連絡協議会のために行った借入れで
あり被告への貸金ではない。
    原告A1は,平成5年8月13日に100万円,同年9月27日に12万円を
被告に献金したというが,被告にも連絡協議会にも献金していない。
    イ 原告A2について
     (ア) 被告にかかわった経緯,その後の信仰について
       原告A2が印鑑を購入したのは,B4から先祖に人を殺めた人がいると言わ
れて恐怖心に駆り立てられたからではなく,息子の愛情運の開運を希望
したからである。B4は,印鑑購入時に原告A2から夫の金遣いが荒いこ
とや子どもの将来が不安であることを聞かされ,原告A2の家庭の幸せ
を願いニューライフアカデミー藤井寺を紹介したところ,原告A2も,主体
的にニューライフアカデミー藤井寺を訪れ,自ら深い内容を学びたいと受
講に励んでいた。当時,家庭のことで悩んでいた原告A2は,アベルの丁
寧なアドバイスを受けながら受講に励む中で被告の信仰に確信を持つ
ようになり,夫とともに祝福を受けたいと願って,反対する夫を説得して
水澤里の修練会にも進んで参加したのであって,原告A2は因縁話によ
る恐怖に駆り立てられて被告の教義を信じ込まされたのではない。
     (イ) 献金について
       原告A2が,霊界解放献金として70万円を献金したのは,信者のB5から因
縁話により献金を迫られたからではなく,ビデオセンターでの受講を通じ
て被告の教義に感銘したからである。また,罪の清算献金70万円につ
いても,当時,姑,夫との関係や子育てのことで悩んでいた原告A2が,
B6のアドバイスを手掛かりに再出発する契機として感謝の献金をしたも
ので,因縁話で脅されたために献金させられたのではない。
さらに,1万ドル献金110万円については,原告A2は,進んで参加した水澤
里の修練会の内容に感銘を受けて110万円を献金したものである。
     (ウ) 商品(七五三の帯,聖書シリーズイヤリング,高麗人蔘茶,水晶のサル,
家系図,ネジュレット〔スカラー〕)の購入について
       これらの商品の購入の際には,原告A2に対して何ら威圧的な勧誘はなされ
ておらず,原告A2は,喜んでこれらの商品を購入した。七五三の帯は,
原告A2が長女の七五三の帯にちょうどいいと,長女に合う帯を喜んで
購入し七五三時の写真をB35に見せていたし,水晶のサルは原告A2
が,水晶には不思議な力があると信じ夫のお守りにと夫の干支であるサ
ルをわざわざ選んだのである。また,家系図も,原告A2が,受講の中で
「ルーツを求めて」というビデオを見て,夫のルーツを知りたいと申し出た
ので,好意で信者が展示会に誘ったまでのことである。ネジュレットにつ
いても,当時健康が優れなかった原告A2が,スカラーは宇宙からの不
思議な力があるから身につけることによって体が健康になればと希望し
て商品を購入したもので,購入後もスカラーを喜んで胸に付けていた。そ
の他の商品も同様に原告A2が自発的に購入したもので,上記商品の販
売方法に何ら違法性はない。
    ウ 原告A3
     (ア) 被告にかかわった経緯,その後の信仰について
原告A3は,もともと霊界について興味を持っており,被告の主旨に賛同し,自
ら進んで被告に入会した。
       被告は原告A3を強制的にトレーニングに参加させたものではなく,原告A3
はフォーデイズや新生トレーニングに主体的に参加し,被告の教義に感
銘を受けていた。現に原告A3は,新生トレーニングBの伝導において
は,優秀な成績を修めていた。
       研修隊は,将来連絡協議会の活動に専従しようとする者がホームで,1か月
ないし3か月間,主に伝道の実践をするものであるが,その1日のスケジ
ュールは,さほど過酷なものではない。これにも原告A3は主体的意思を
もって参加した。原告A3は,研修隊では班長を務めるほどに確信をもっ
て被告の信仰を実践し,さらに平成4年4月ころには,合同祝福結婚式
に自ら進んで参加することを希望し,祝福の相手の男性が決まって,喜
んでいた。
     (イ) 献金,絵画購入,訪韓ツアー費について
       原告A3は,献金の意義を説明され,信仰を持った喜びと神様への感謝の気
持から,自発的に113万8000円を献金したのであり,恐怖心に駆り立
てられて献金したのではない。また,原告A3は,その後B7来日記念60
万円,ボーナス献金20万円,祝福献金70万円,心情献金・月例献金7
万2000円の各献金をしているが,これらはすべて被告の信仰により充
実した毎日を送る中で自発的に献金をしたものであり,強制されて献金
に至ったのではない。
       また,原告A3が購入した絵画は,自らが会場に展示してあった絵画の中か
ら気に入ったものを購入したのであり,他から強制されて購入したのでは
ないし,訪韓ツアー費20万円についても,原告A3は主体的意思で訪韓
ツアーに参加したものであり,被告がその支出義務を負担する理由はな
い。
    エ 原告A4
     (ア) 被告にかかわった経緯,その後の信仰について
       平成4年3月ころ,B14宅を訪ねたB13は,B12から息子が自律神経失調
症で入院したことを聞かされ,B14家の家庭が良くなればと思い橿原カ
ルチャーセンターを紹介したところ,B11,B12らは,同カルチャーセン
ターで勉強することを自ら望んだ。
       B42は,B12夫婦から,息子が自律神経失調症であることは聞いたが,原
告A4の叔父が精神病で入院をしていた話を聞いたこともなく,B12から
幸福度チェックのためのアンケートを採ったことはあっても,殊更にこの
アンケートによってB14家の資産を把握しようとしたわけではない。橿原
カルチャーセンターに通うB11,B12がだまされているのではないかと
心配になって同カルチャーセンターに赴いた原告A4は,B42から講義
内容を説明され,「心配だったら自分で学んでみて,確かめてみたら。」と
言われて,橿原カルチャーセンターに通い始めるうちに,足繁く通うよう
になり,B42には何でも相談し,統一原理が納得できて喜んで学んでい
ると感想を述べていた。
       原告A4は,次第に被告の信仰に確信を持ち,信者の会では自らまとめ役を
買って出たし,弟にも統一原理を伝えようとビデオを見せ逆に弟から,
「おねえちゃんはだまされている。」と反対されるや,B42に弟を説得す
る方法を相談するまでになっていた。
     (イ) 献金,ペンダント購入について
       B42やB43は,原告A4らに殺傷因縁や色情因縁といった話を持ち出して
いない。原告A4らは,B43に統一原理を教えられ,愛を中心として神様
の前に信仰を立てて再出発するために象徴献祭としての献金があると
献金の意義を説明されると,話に感動し,むしろ原告A4の方が,積極的
にB12に献金しようと勧めて,2人で1200万円(原告A4の献金は200
万円)を献金することを決めた。
       原告A4が購入したペンダントは,原告A4が講義の中で宝石は身につけて
いるといいものだと聞いて自発的に購入したものである。
  オ 原告A5
   (ア) 被告にかかわった経緯,その後の信仰について
     原告A5は,ニューライフアカデミー藤井寺で,B46からカウンセリングを受
けながら講義を受け,メシアを受け入れようとの決意を感想文に表して
いた。原告A5は,一度目の献金の後,一時はニューライフアカデミー藤
井寺から遠ざかっていたが,実兄に先立たれた後,救いを求めて再びニ
ューライフアカデミー藤井寺を訪れ,B6から実兄の供養をしてもらったり
嫁姑の関係改善についてのアドバイスを受けたりして,自らも積極的に
フォーデイズに参加していた。
(イ) 献金について
     原告A5は,1度目の700万円の献金の際,ただ1度のカウンセリングで因
縁話を持ち出され,恐怖心に駆り立てられて献金に至ったのではない。
原告A5は,ビデオを8本程度見た後に,B46から少なくとも5回にわた
るカウンセリングを受け,そこで家庭問題について相談したり,受講内容
や献金の意義について詳細な説明を受けたりしているうちにメシアを受
け入れ,感謝の気持ちから自発的に700万円の献金をしたのである。
原告A5は,2度目の1500万円の献金の際,預貯金残高を書き出すよ
うに指示されてもいないし,殊更因縁話により恐怖心に駆り立てられて
献金を要求されたものでもない。原告A5は,実兄に死なれてから救いを
求めて再びニューライフアカデミー藤井寺を訪れ,B6から実兄の供養や
嫁姑の関係改善についてアドバイスを受け,B6に供養祭をしてもらった
り,何回かビデオの受講をしたりするうちに,霊界の存在に確信を持ち感
謝するようになり,兄や家族のために自分のできることなら何でもやりた
いとの思いから喜んで被告に献金したのである。
カ 原告A6
 (ア) 被告にかかわった経緯について
   原告A6と親しく付き合っていたB48は,自分も死にたいと言って意気消
沈し,占いや霊能者に足繁く通う原告A6の気持ちの整理のためになる
ならばと思い,原告A6を東大阪カルチャーセンターに誘うなどしていた。
そして,B48が,平成4年3月末ころB19の一周忌のお参りができなか
ったことを詫びるために原告A6に電話し,その際にB19の夢を良く見る
と話したところ,その後は原告A6の方からB48に電話を掛けてくるよう
になり,自ら進んで東大阪カルチャーセンターに行き,B19のために何
かしたいと言って受講を申し込んだ。この一連の経緯の中で,B48は,
原告A6に対して自分の方からB19が浮かばれていないと申し向けたこ
とはないし,ましてやかみちゃんの命が危ないと脅したことも全くない。
   原告A6がB20から受けたアンケートは,今後のカウンセリング等の参
考のために趣味,性格,健康,運勢に関するバランスをみる健康チェック
のアンケートであって,財産を把握するためのアンケートではない。B20
は,原告A6から預金が7000万円あると聞いたことなどなかったし,原
告A6にカルチャーセンターに通っていることを口止めしてもいない。その
後,原告A6は,被告を批判するテレビ報道を見て,自分の通っているカ
ルチャーセンターが被告施設ではないかと悩んでいたが,今まで見たビ
デオの内容に感銘していることもあって東大阪カルチャーセンターに通
い続け,被告に入会した。
 (イ) 献金について
   B49らは献金を勧誘する際に,因縁話を用いて原告A6の恐怖心を駆り
立ててはいない。B49は,霊感商法,合同祝福結婚式等に関するマスコ
ミの批判が間違っていることを教え,B1の半生をふまえながら,B1が再
臨のメシアであると説明し,信仰基台(神様に対する自発的な信仰)と実
体基台(人類を愛する,奉仕する,為に生きる心情の実践)や献金の意
義を説明し,原告A6のためにB19の供養祭を行ったところ,原告A6
は,献金をすることによってB19の供養になるとともに原告A6の信仰の
再出発になることを理解し,B49の勧める4000万円の献金を快く承諾
した。
   原告A6は,献金後も周囲の信者に「本当にすっきりした。」と述べてい
た。
キ 原告A7
 (ア) 被告にかかわった経緯,印鑑の購入
   B52は,原告A7から,交際相手のことや仕事の転職について見てもら
えるところがあれば見てもらいたいと頼まれ,当時仏光堂の委託販売員
で姓名判断,印相の鑑定士をしていたB22を原告A7に紹介した。B22
が原告A7に対して,原告A7の家系は男の運が弱く母親のように苦労す
る可能性があることや,婦人科系の病気になりやすいことを説明したとこ
ろ,原告A7は運勢を良くしたいと言って,自ら40万円の印鑑を選び購入
した。その際,B22は原告A7に対して,B21家は色情因縁があるとか,
絶家になると言っていないし,印鑑を購入しなければ身を守れないなどと
脅してもいない。
 (イ) 被告の各種セミナー受講について
   その後,原告A7は,主体的にI&Sを訪れ,I&Sでの受講内容について
丁寧に説明を受けた上で受講を申込み,ワンデイ,ファーストカウサセミ
ナー(ツーデイズ)等のセミナーに自ら進んで参加した。原告A7は,平成
6年8月9日ころ,ファーストカウサセミナーの講義の中で初めてB1のこ
とを知るようになったが,特に怒りや困惑を表すこともなく,B1の活動に
感動したと素直に述べていた。原告A7は,その後もセカンドカウサセミ
ナー(スリーデイズ),上級トレーニング,新生トレーニング,実践トレーニ
ング,青年部に主体的に参加し,被告の教義やB1師の人柄,活動に感
銘し,むしろ,平成7年12月からの上級トレーニングにおいては,原告A
7の方からホームに入居することを強く希望していた。原告A7が再度ス
リーデイズに参加したのは,日ごろ仕事などで時間がとれず統一原理の
勉強ができない者を対象にしたセミナーに,原告A7が自発的に参加し
たまでのことである。
   被告の教えには,原告A7の主張するようなアベル・カインの教えはなく,
現に原告A7も日ごろからB23の助言に耳を貸さず,B23を悩ませてい
た。また,原告A7が参加したトレーニングはいずれも過酷なものではな
く,強制的に参加しなければならないものでもなかった。
   さらに,原告A7は,メシアに会ってみたいと自発的意思で水澤里修練会
に喜んで参加し,訪米ツアーについても,B22が訪米セミナーに参加を
した感想を聞いて,自ら訪米ツアーに参加することを希望し主体的に参
加した。訪米セミナーに参加した原告A7は,まだ参加していなかったB5
2に,「訪米は良かった,早く行った方がいい。」と参加を強く勧めるほど
に感動していた。
 (ウ) 献金について
   原告A7は,水澤里修練会に参加するに当たって,1万ドル献金の主旨
を教えられ,十分理解した上で水澤里修練会に参加した。そもそも,1万
ドル献金は,強制的なものではなく,献金しない者もいたし,その時にで
きる範囲の額を献金すればよく,原告A7もできる範囲で分割で献金し,
平成7年6月末に完納した後はB52とともに感謝の祈りをしたりB52の
完納を祈ったりしていた。なお,原告A7は,上記献金を合計125万円で
あると主張するが,原告A7は,1万ドル献金110万円と月例献金の12
万円の合計122万円を献金したのであり,125万円ではない。
   原告A7は,通帳はすべて神にささげなさいと言われたために,27万円
を祝福献金として支払ったのではなく,当時祝福を受けることを希望して
いたために献金をしたのである。また,原告A7が月例献金として49万
円を支払ったことは否認するが,仮に原告A7の主張するとおり献金が
なされたとしても,原告A7は自発的に献金したものである。
   なお,原告A7のいうような「10数復帰」なる献金はなく,原告A7は10数
復帰名目で7万円を献金していない。
 (エ) 商品(着物,宝石,高麗人蔘茶)の購入について
これらの商品購入は,いずれも何らの強制もなく原告A7が主体的に
購入したものである。すなわち,原告A7は,展示していた着物の中から
気に入ったものを選んで喜んで購入したものであるし,宝石もB52から
誘われて,進んで株式会社アイビーの展示会に赴き,気に入った宝石を
購入した。原告A7は,購入した宝石を身に付けてB52に喜んで見せ,
肌身離さず身に付けていた。
   さらに,高麗人蔘茶は,原告A7の方からB52に,体質改善のために手
持ちの高麗人蔘茶を譲ってほしいと頼んで購入したものである。
ク 原告A8
 (ア) 被告にかかわった経緯,被告の各種セミナー受講について
   原告A8は,B54から人生の目的について学べるところがあると言って
京橋市民大学センターを紹介され,リストラのことで将来に不安を感じ,
人生の目的を求めていたこともあり,進んで京橋市民大学センターに赴
き受講を申し込んだ。
   原告A8はその後,学んでいる内容がよく理解できるようになるならと期
待して,進んでツーデイズやライフトレーニング,フォーデイズに参加し,
そこで他の参加者とも意気投合し,講義の内容に満足していた。原告は
ライフトレーニングに参加したころメシアを明かされて感銘を受け,その
後も統一原理の勉強を精力的に行っていた。原告A8は,自ら進んで祝
福を受けることを望み,相対者も決まり喜んで合同祝福結婚式に参加し
た。その後は,被告の講師になるための勉強にいそしんでいた。
   なお,当時の新生トレーニングBでは,ハンカチや靴下等の販売は一切
行っていないし,これに関し原告A8が主張するような教えもない。以上
のとおり,原告A8の各種セミナーへの参加が違法性を有する余地はな
い。
  (イ) 献金について
     原告A8は,B53から因縁話で恐怖心に駆り立てられて430万円を献金し
たのではない。B53は,原告A8から,リストラ,人間関係の悩みを聞い
た後,家系図を示しながら,A8家は女性の運勢が強く男性の運勢が弱
いので,原告A8がA8家を復興させていく使命があることを話した上,自
己中心的な生き方から価値観を転換して神様の愛,真の愛で生きること
の大切さ,神様の前に帰っていくための蕩減条件としての献金の意義を
話した。原告A8は,B53の説明を理解して献金を望んだので,B53
は,430の数字の意味を丁寧に説明したところ,原告A8は喜んで430
万円の献金をした。
     その後,原告A8は,月例献金として139万9000円を被告に献金してい
るが,これは原告A8が信仰に基づき,自らの自発的意思で行ったもの
であるし,原告A8がなした1万ドル献金113万円も,献金しない者が多
くいる中,原告A8は救国,救世のために献金しようとの呼びかけに賛同
し,主体的に献金をしたものである。
     原告A8は,合同祝福結婚式の前に自分自身を精神的にも成長をさせた
いと思って会社を退職し,祝福献金140万円を準備するために熱心に
ハンカチや靴下を販売し,自発的に140万円の献金をした。合同祝福結
婚式への参加者には,祝福献金を全額献金して参加した者や,経済的
に厳しく合同祝福結婚式参加後に自分のできる範囲で努力しながら期
間をかけて献金をした者など様々であり,事前に全額の献金が強制され
るわけではない。
  ケ 原告A9
   (ア) 被告にかかわった経緯,その後の信仰について
     原告A9は,B24の姓名判断の話に興味を持ち,主体的に堺東カルチャー
センターに通うようになった。B56は,原告A9から夫の金遣いが荒いこ
とや長男に子どもができないこと,次男の職が定まっていないことを聞か
されて,悩みの原因や悩みを解決する方法を教えてほしい,家系を見て
ほしいと頼まれ,その際,原告A9に,本当の夫婦の愛を学んで幸せな
家庭を築いたらいいとは言ったが,悩みの原因が色情因縁にあるとか,
次男が交通事故で死ぬかも知れないとか話して原告A9の恐怖心を駆り
立ててはいない。原告A9は,堺東カルチャーセンターの講義内容に日
々感動し,B1をメシアであると明かされてからは,人類の救世主の存在
に感動し救われたいと願って自らの意思で被告に入会した。原告A9は
その後,日々感動しながら12トレーニング,新生トレーニング,水澤里修
練会や訪米ツアーに参加し,進んで伝道活動にいそしみ,実妹である原
告A10を被告に勧誘した。
(イ) 献金について
     B57は,平成3年6月5日から少なくとも5回程度原告A9にカウンセリング
を行っていたが,その際,原告A9に対して色情因縁や家族に不幸が起
こるなどと話してその恐怖心を駆り立ててはおらず,話の内容は受講の
意義や創造原理,堕落論,復帰原理といったものが中心であった。B57
は最後のカウンセリングの際に献金の意義を話したところ,原告A9は理
解を示し,主体的に感謝して1550万円を献金した。B57らは,献金の
意義を話した際に,原告A9に対して献金は感謝して精一杯の真心を込
めて行うものだと話したことはあっても,全財産を差し出せと脅したことも
ないし,原告A9が献金したことを家族には隠すように指示したこともな
い。
     また,原告A9は済州島や水澤里の修練会に参加した際,世界を救うため
に献金しようとの呼びかけに賛同し主体的に救国献金として220万円
を,さらに,夫とともに祝福を受けたいと願い主体的に祝福献金として21
5万円を被告に献金した。
     原告A9が損害であると主張しているその他の献金については争う。
   (ウ) 商品購入,訪米,訪韓費用について
原告A9は,いずれの商品も,因縁話により購入しているものではな
く,自らの意思で購入したものである。また,原告A9は,訪米,訪韓セミ
ナーにも喜んで主体的に参加したものである。
  コ 原告A10について
(ア) 被告にかかわった経緯,その後の信仰
  原告A10は,ニューグレースアカデミー(堺東ビデオセンター)を訪れた
当初からそこが被告の関連施設であることを知っていたが,その日のう
ちに受講を申し込んだ。原告A10は,ニューグレースアカデミーで「思春
期外来」,「てんびんの詩」といった一般教養的なビデオを見て,母親とし
て子ども達を心から愛していなかったことを悔やみ,また統一原理やB1
に関するビデオを見て感銘を受け,平成5年11月23日,被告の主旨に
賛同して喜んで被告に入会した。原告A10は,夫のB26や子どもをも被
告に入信させ家族そろって礼拝やセミナーに参加したり,喜んで水澤里
修練会や訪米ツアーにも参加したりしていた。平成8年11月ころ,原告
A9が反対牧師や家族に監禁されて被告を脱会したが,原告A10は,原
告A9が被告を脱会しても自分は脱会しないと公言し,自ら会社を辞めて
世界宣教(日本人女性が被告のために世界各国で布教活動を行うこと)
に参加しようとするほど被告の信仰に確信を持っていた。
(イ) 献金について
  B57は,原告A10に対して少なくとも5回にわたりカウンセリングを行っ
たが,その際にB57は受講の意義や人生の目的,堕落論や復帰原理と
いった被告の教義を説き,原告A10が被告に入会した日には,献金の
意義を話し,ために生きる愛の実践をしていくことが重要であると献金を
勧めたところ,原告A10は献金することを喜んで承諾し,B57から家庭
の完成数として12数にちなんだ数を献金してはどうかと提案されると,1
200万円の献金をすることを自分で決めた。その際に原告A10に対し
て,父親の因縁がB25に現れているとか,このままでは他の子ども達に
も良くないことが起こるとか,出家する代わりにすべての財産を浄罪とし
て差し出して霊界解放をすればすべての因縁が解決するなどと申し向け
て,原告A10の恐怖心を駆り立ててはいない。
  原告A10が被告に救国献金名目で行った330万円の献金は,献金を
しない者もおり,いずれも,原告A10が3回にわたって水澤里の修練会
に参加した後,世界のためにと自発的な意思でなされたものである。
  原告A10は,B26が被告に入会することを望み,B26がB27のカウン
セリングを受ける際も立ち会い,献金の意義について説明されると自ら5
00万円の復帰献金を申し出た。原告A10は平成7年7月25日に合同
祝福結婚式に進んで参加し,その際に喜んで祝福献金として200万円
を献金した。なお,この祝福献金は,諸費用と感謝献金であり,被告に献
金されたものではなく,世界体育大典祝福実行委員会に献金されたもの
である。また,B26が平成6年に韓国水澤里の修練会に参加した後は,
主体的に110万円の献金をした。
  その他に原告A10が行った402万円の献金は,原告A10の信仰に基
づいて行われたものである。  
(ウ) 物品購入,訪米費用について
  原告A10が購入した商品は,いずれも自らの主体的意思で購入された
もので違法とされる余地はない。また,原告A10は,自主的に訪米セミ
ナーに参加したものであり,その費用が損害となるものではない。
   (2) 被告の使用者責任
    (原告らの主張)
    ア 連絡協議会ないし信徒会は,実体のあるものではなく,被告と別にそれらの
団体の組織があるわけではない。したがって,それらの構成員である信者
の活動は,被告の構成員の活動にほかならず,それらの団体の活動は被
告の活動にほかならない。
    イ たとえ連絡協議会等の組織があるとしても,それらの構成員の信者は被告の
ために伝道・教化活動を行い,原告らに被告の教義を説いて献金等の勧
誘を行い,被告に献金させている。したがって,それらの信者は被告の指
揮監督下にあり,また信者が原告らになした一連の勧誘は被告の事業の
執行についてなされたことが明らかであるから,被告は民法715条によっ
て責任を負う。
    (被告の主張)
    ア 原告らが問題とする販売会社やビデオセンターはいずれも被告とは別組織の
連絡協議会ないし信徒会が統括し,また,原告らに対して一連の金員出捐
を働きかけていていたのもこれらの構成員である。
      連絡協議会ないし信徒会は,株式会社ハッピーワールド(当初の商号は幸世
商事株式会社,その後世界のしあわせ株式会社と変更された後,現商号と
なった。代表者は,信者のB28である。)及びその傘下の全国各地の販売
会社,特約店の委託販売員と顧客が,販売の促進や顧客同士の親睦,顧
客に対して統一原理を分かりやすく説いたしあわせ原理を紹介するゼミナ
ールを開催することを目的として昭和57年4月に発足した「全国しあわせ
会」を前身とする組織であって,この設立過程に被告は何ら関与していな
い。全国しあわせ会は,全国各地にビデオセンターを設置して,人生観,教
養,統一原理を伝えていたが,昭和57年8月,販売促進のための連絡業
務及び新規ゲスト獲得や教育に関する活動の強化を図るため,発展的に
解消し連絡協議会となった。連絡協議会は,B28(本部長),B29(補佐
役)らの統括する中央本部を中心とし,ほぼ販売各社の販売エリアに対応
して全国をブロック単位に分け,その傘下に,各都道府県単位の特約店に
対応した地区を設け,ブロックにはブロック長とか管区長と呼ばれるブロッ
クの責任者の下に専務,総団長,組織部長,総務部長などのスタッフを置
き,地区では青年支部,壮年婦人部を設けて,その下にビデオセンターを
置いて活動を行っていた。これは被告とは全く別個の組織であるから,その
本部の場所も異にし,また,被告との間で人事交流が行われたこともなく,
販売会社ないし特約店やビデオセンターの利益が被告に帰属することもな
かった(なお,連絡協議会は,B1の提唱する「還故郷」〔自分の生まれ故郷
に帰って伝道をせよとの教え〕に従い,平成3年末に解散し各地方の自主
性に任せて権限を委譲し,各地の信徒会が連絡協議会の活動を承継し
た。)。
    イ 報償責任を基礎におく民法715条の趣旨からすれば,同法でいう「事業」と
は,なにがしかの経済的活動であることを要するが,被告は,何らの経済
的な活動を行っておらず,そもそも本責任の主体とはなり得ない。また,上
記のとおり原告らに金員出捐を働きかけたのは,被告とは別組織の連絡協
議会の構成員であり,それらの者と被告とは,信者であるという以上に指
揮監督の関係にはないから,この点からしても,被告に使用者責任が発生
する余地はない。
  3 損害額
  (原告らの主張)
 (1) 原告A1                9270万5925円
             (うち3695万0925円は追加請求分)
    ア 経済的損害              8370万5925円
     (ア) 献金 
      a 昭和61年10月17日          1036万円
      b 昭和62年2月          2099万5000円      c 同年8月   
              1440万円
      d 同                     500万円
      e 平成5年8月13日      100万円(追加請求分)
      f 同年9月27日         12万円(追加請求分)
     (イ) HG         3183万0925円(追加請求分)
    イ 慰謝料500万円(うち200万円は追加請求分)
     (違法な金員出捐勧誘や被告に入会させられて教義の伝道・教育を受け,ない
しは被告の活動に従事させられたことによる精神的損害。以下,他の原
告についても同様。)
    ウ 弁護士費用    400万円(うち200万円は追加請求分)
   (2) 原告A2                 481万3046円
    ア 経済的損害               337万5497円
     (ア) 献金 平成4年2月5日  霊界解放献金    70万円
          同年7月2日     罪の清算献金    70万円
          平成6年4月5日,8月 1万ドル献金  110万円
     (イ) 物品購入代金
      a 帯購入代金                  10万円
      b イヤリング購入代金          41万2000円
      c 高麗人蔘茶購入支払代金         8万2177円
      d 水晶玉購入代金             8万6520円
      e 家系図購入代金            16万4800円
      f ネジュレット購入代金              3万円
    イ 慰 謝 料                   100万円
ウ 弁護士費用                43万7549円
   (3) 原告A3                 430万7401円
    ア 経済的損害               291万5819円
     (ただし,下記合計額375万7319円から,和解契約による既払金84万1500
円を控除した額。)
     (ア) 献金
a 平成3年2月28日         113万8000円
b 同年9月26日    B7来日記念      60万円
      c 同年12月24日   ボーナス献金      20万円      d 平成4年
5月,6月  祝福献金        70万円
      e 心情献金,月例献金           7万2000円
     (イ) 絵画購入代金             84万7319円
     (ウ) 訪韓ツアー費                 20万円
    イ 慰 謝 料                   100万円
    ウ 弁護士費用                39万1582円
   (4) 原告A4                 391万6704円
ア 経済的損害               256万0640円
     (ア) 献金                    200万円
     (イ) ペンダント購入代金          56万0640円
    イ 慰 謝 料                   100万円
ウ 弁護士費用                35万6064円
   (5) 原告A5                    2550万円
    ア 経済的損害(献金)              2200万円
a 平成3年1月                 700万円
     b 平成4年4月          1500万円
    イ 慰 謝 料                   200万円
    ウ 弁護士費用                   150万円
   (6) 原告A6                    4510万円
ア 経済的損害(献金)              4000万円
    イ 慰 謝 料                   100万円
    ウ 弁護士費用                   410万円
   (7) 原告A7                675万0639円
    ア 経済的損害               513万6945円
     (ア) 献金 
      a 平成6年10月から平成7年12月
                 1万ドル献金,月例献金  125万円
 b 平成8年2月   10数復帰献金        7万円
 c 平成8年6月から同年7月
            祝福積立          27万円
 d 月例献金                   49万円
     (イ) 物品購入代金
      a 印鑑購入代金                 40万円
      b 着物購入代金             78万3837円
      c 宝石購入代金             59万9108円
      d 高麗人蔘茶購入代金               8万円
     (ウ) 受講関係費
      a I&Sセミナー費               12万円
      b 水沢里修練会費                 7万円
      c 訪米ツアー費                 63万円
      d 宝塚スリーデイズ費               3万円
      e 上級トレーニング費           5万5000円
      f 新生トレーニング費             5000円
      g 実践トレーニング費             9000円
      h 青年部費                1万5000円
      i 上級トレーニングホーム入居費         26万円
    イ 慰 謝 料                   100万円
    ウ 弁護士費用                61万3694円
   (8) 原告A8               1074万8100円
         (下記損害の合計金額は1064万8100円となる。)
    ア 経済的損害               877万1000円
     (ア) 献金 
a 平成5年2月                430万円
b 平成5年12月から平成7年3月 
          1万ドル献金        113万円
c 平成5年12月 特別献金            7万円
d 平成5年11月から平成7年12月
          祝福献金          140万円
e 平成5年4月から平成7年12月
          月例献金     139万9000円
     (イ) 受講関係費
a ビデオセンター入会費          8万5000円
b 上級トレーニング費           5万5000円
c 新生トレーニング費             5000円
d 青年部部費               2万7000円
e 新生トレーニングホーム入居費         20万円
    イ 慰 謝 料                   100万円
    ウ 弁護士費用                97万7100円
   (9) 原告A9               3185万0504円
    ア 経済的損害              2795万5004円
     (ア) 献金,HG            2433万8784円
(献金)
a 平成3年6月27日            1550万円
b平成4年3月27日              30万円
      c 平成5年3月29日              18万円
  d 平成5年6月6日              200万円
  e 平成5年9月3日               30万円
      f 平成5年11月5日              10万円
      g 平成6年2月27日               4万円
  h 平成6年3月から12月  救国献金(1万ドル献金)
                          220万円
  i 平成7年         聖地公国献金    11万円
      j 平成7年7月                  5万円
  k 平成8年4月       B1来日記念    10万円
  l 平成8年2月21日から10月21日
                 祝福献金     215万円
  m 平成8年7月12日              10万円      (HG) 
  n 平成3年12月26日         65万8784円
      o 平成4年7月31日ないし平成5年5月26日  38万円
      p 平成5年6月24日ないし平成6年7月11日  17万円
     (イ) 訪米,訪韓費用           149万8000円
     (ウ) 物品購入代金            211万8220円
a 株式会社創美
         平成4年1月26日   絵画        40万円
b 有限会社光誉商事(真仏弥勒堂)
 (a) 平成4年12月13日  水晶五輪塔    12万円
       (b) 平成6年        水晶        6万円
       (c) 平成7年12月17日  家系図  25万7500円
       (d)             位牌       24万円
      c 株式会社トップワールド
 (a) 平成4年春,7月26日 ミネクールDX2台23万円
 (b) 平成7年10月29日  印鑑
               B30分  11万5200円              
 原告A9分  1万6200円
 (c) 平成7年10月29日  スペリオ  3万5000円
       (d) 平成8年2月25日   スペリオ      3万円
  d 教育センター内で販売されていたもの
       (a) 平成7年12月17日  人蔘茶      18万円
 (b) 平成7年4月26日から平成9年2月26日
               人蔘茶   29万4320円
e 株式会社クリベル 
 (a) 平成4年4月      指輪        5万円
 (b) 同年4月        ハンドバック    1万円
 (c) 平成7年5月19日   真珠ペンダント   8万円
  イ 慰 謝 料                   100万円
  ウ 弁護士費用               289万5500円
(10) 原告A10              3648万7000円
  ア 経済的損害                  3217万円
     (ア) 献金                   2742万円
a 平成5年11月25日           1200万円
b 平成6年3月,5月,10月の3回 
               救国献金(1万ドル献金)
                        330万円
c 平成6年6月       B26復帰献金  500万円
d 平成7年6月       救国献金     110万円
e 平成7年7月       祝福献金     200万円
f 平成7年5月から平成9年4月        402万円
     (イ) 訪米費用                   82万円
     (ウ) 物品購入代金                393万円
   a 株式会社創美
      平成6年1月10日ころ 着物        80万円
   b 美術世界株式会社 
    (a) 平成6年8月      絵画2点    197万円
    (b) 平成9年4月ころ    絵画       95万円
   c 株式会社トップワールド
     平成8年10月ころ    印鑑        21万円
  イ 慰謝料                     100万円
  ウ 弁護士費用               331万7000円
 (被告の主張)
  いずれも損害であることについて争う。
第3章 判断
 第1 争点1(被告の組織的な金員出捐の働きかけによる不法行為〔民法709条の責
任〕)について
 1 原告らは,被告は万物復帰の教義のもとに,専ら財物搾取の目的で,組織的
に,信者らをして,祖先の因縁を用いて脅す等の違法な手段で相手方に献金や
物品購入を勧めて金員交付をさせていたもので,原告らに対する献金や物品購
入の勧誘はすべて,このような被告の組織的な違法行為の一環としてなされた
ものであると主張する。
   しかし,まず万物復帰の教義については,万物以下の立場に立ってしまった人
間を神の方に復帰するため,蕩減条件を立てること,象徴献祭をささげることと
され,具体的なその一つの態様として献金があり,献金を神にささげるに際し真
心を尽くすことがこれに当たると説かれている(乙9,11)。この教義の内容の中
に,献金を説く部分があることは間違いないが,宗教団体が献金を勧めること自
体は何ら違法・不当なものでなく,それが違法な手段をもってしても献金・物品購
入をさせることを奨励するものとして解釈される等の事情がない限り,教義自体
を違法なものということはできない。したがって,万物復帰の教義自体を,違法・
不当なものとまでいうことはできない。
   また,被告の信者が過去の一時期にいわゆる霊感商法と呼ばれる,多宝塔や
壺,人参液等を異常な高額で売りつける強引な販売活動を行い,社会的に問題
となったことは顕著な事実であり,さらに,B1や被告の幹部が,説教や被告の
機関誌の中で,万物復帰(甲全6,9,56,191),あるいは人蔘液等の販売(甲
全1,16,21,57,58,68)を奨励する内容の発言をしているとの事実が認め
られるものの,それらのみから,被告が本件当時,全組織的に,信者らをして違
法な献金・物品購入の勧誘を行わせていて,原告らに対する本件金員出捐勧誘
行為がそのような組織的な違法行為の一環としてなされたとの事実まで認定す
ることはできない。
   さらに,後記認定のとおり,本件において原告らに対してなされた献金・物品購
入の勧誘行為は,霊能師の信者が祖先の因縁を説くといった共通の態様でなさ
れており,物品販売は比較的廉価な商品を相当な高額で売りつける場合が多
く,勧誘のやり方については一部でマニュアルが作成されていたこともうかがえ
(甲全16,21,22,35,36,40,57,58,76,86ないし117,138,159,
170,177),したがって,それらの勧誘行為の背後にある程度組織性があるこ
とが推測されるが,それをもってしても,被告が組織全体として原告ら主張のよう
な違法行為を行っていたとの認定にまで至るものでないし,B31の陳述(甲全1
59)・証言も,そのような事実の裏付けとしては不十分である。
 2 また本件において,原告らに対してなされた被告の教義の伝道・教育が,宗教活
動として許される範囲を超えた違法なものであるとの事実を認めるに足る証拠
はない。
3 よって,本件で原告らのした金員の出捐が,すべて被告の組織的な違法行為に
よるものであり,被告は民法709条の不法行為責任を負うとの原告らの主張
は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。
 第2 争点2(1)(個々の信者の金員出捐勧誘による不法行為〔民法715条の使用者
責任〕・原告らに対する個々の勧誘の違法性)について
  1 一連の金員出捐勧誘行為の違法性の判断基準について
   (1) 原告らは,献金,物品購入代金,被告のための借入れ(HG),各種セミナー受
講費,ツアー費用などの金員出捐に対する勧誘行為が違法であると主張して
いる。原告らの主張によれば,原告らに共通する被告の勧誘の特徴は,深刻
な悩みを抱えている原告らに被告の信者が近付き,家系図などを用いながら
その原因は先祖にあると断言し,被告への入会ないし被告の関連施設への
出入りを勧め,それから短期間のうちに,高額の献金や客観的価値の乏しい
物品の購入を勧め,その後は,各種の献金,物品購入,被告のための借入
れ,各種セミナーの受講,ツアーへの参加などを次々と求めていくというもの
である。
   (2) 宗教的教義にのっとって,ないしは布教活動に伴い,献金等一定の金員の出
捐を勧誘する行為は,信教の自由に由来する宗教活動の一環として当然許
容されるべきものであり,これを殊更に制限することは許されない。また,およ
そ宗教的動機から金員出捐に至る動機形成過程においては,他者からの積
極的な働きかけが多分に影響することはいうまでもなく,その動機には,自己
の置かれた不幸な境遇が好転することを願い,あるいは禍が自己に及ぶこと
を回避することを願うといったいうなれば利己的なものが含まれ得ることも否
定できない。したがって,金員出捐を勧誘する場合において,相手方に吉凶
禍福を説き,人知を超えた能力のある存在に帰依,あるいはその存在に献金
することによって禍が解決されると説くこと自体が違法と評価されるものでは
ない。また,当初の勧誘段階においては宗教団体であることを告げずに相手
方に接触を図り,あらかじめ相手方の境遇や悩みを把握した上で勧誘を行っ
たからといって,一連の勧誘行為が当然に違法となるものでもない。しかし,
当該勧誘態様が相手方に害悪を告知し殊更に相手方の不安,恐怖心をあお
るなどして意思の自由に制限を加え,相手方の資産状況や生活状況に照らし
て過大な出捐をなさしめたと認められるような場合には,当該勧誘行為は相
手方の自由な意思決定に不当な影響を及ぼすものであり,もはや社会的に
相当な範囲を逸脱した行為として,違法と評価されるものといわざるを得な
い。
   (3) 以下,各原告ごとに具体的な害悪の告知の有無,献金の金額などから,原告
らの自由な意思決定に不当な影響を及ぼすような勧誘形態であり,違法性を
帯びるものか否かにつき検討を加えることとする。
  2 原告らに対する個々の勧誘行為の違法性について
(1) 原告A1について
    ア 証拠(甲A1ないし19,乙3ないし6,15,27ないし30,証人B32,同B33,
原告A1本人)及び争いがない事実によれば以下の事実が認められる。
     (ア) 原告A1の身上
       原告A1は昭和21年生まれの女性である。原告A1は,昭和61年6月ころか
らSLE(膠原病の一種)の療養のために病院に入院していたが,その間
に夫のB2が単車にひかれて死亡した。原告A1は,しばらくの間は錯乱
状態に陥り,なぜ自分だけが病気にかかったり,夫に先立たれたりしてし
まうのかと意気消沈の日々を過ごしていた。
     (イ) B3の勧誘
       原告A1が,B2の月命日供養のために一時退院して自宅に戻っていた昭和
61年10月15日ころ,元B2の勤務先で働いていた信者のB3がB2の
焼香のためと言って自宅を訪問し,その際に手相を見てもらわないかと
勧誘した。原告A1は,B3らから尋ねられるままに,12歳の時に兄が交
通事故に遭って死亡したことを話すとともに,自分が現在SLDに罹患し
ていることを素直に話した。
     (ウ) 本念珠,多宝塔の購入
       原告A1は,その日の夕方,手相を見るためにと言われて,「道場」と呼ばれ
る場所に連れて行かれ,先生と呼ばれる信者を紹介された。先生と呼ば
れる信者は,原告A1に対して家系図を示しながら,「御主人が単車にひ
かれて死ぬはずがありません。御主人が死んだのは先祖の因縁のせい
です。あなたの家系は,男性が若死にする家系です。このままだと,あな
たの子どもも20歳まで生きられるかどうか分かりません。あなたの父親
も御主人も成仏ができなくて地獄で苦しんでいます。あなたを病気にする
ことによって助けを求めています。」と申し向けて,原告A1を不安に陥
れ,「先祖の因縁を清算するためには出家するか,お金を納めるしかあ
りません。しかし,子どもがまだ小さいから出家できないでしょう。」と暗に
献金を要求した。原告A1は翌日も「道場」に連れ出されて,献金を迫ら
れた。原告A1は,不安にかられ,献金することによってB2が成仏し子ど
もが助かるのであればと考え,1000万円余りの献金を承諾した。その
後,原告A1は,信者に車で連れられて,金融機関をまわり,1036万円
を集めて,昭和61年10月28日ころこれをすべてビデオセンターのニュ
ーライフアカデミー藤井寺において献金した。原告A1は,献金する際に
有限会社あおばの本翡翠念珠(500万円)及び多宝塔(540万円)の購
入申込書に署名押印し(甲A2,3),本翡翠念珠についてはそのころに
引渡しを受け,多宝塔については昭和62年1月23日ニューライフアカ
デミー藤井寺で奉納式を行ない,自宅を増築した後に引き取った。
       被告は,これらの購入の際に信者は因縁話を用いてはおらず,原告A1は販
売員から説話集を紹介したパンフレットを見せられると自発的にこれらを
購入したと主張するが,この主張を裏付ける具体的な証拠は説話集を
紹介したパンフレット以外にないし,それまで多宝塔や念珠に興味を持っ
ていたことはうかがえない原告A1が,何らの害悪を告知されることもな
く,突如1000万円以上もの高額の金員を出捐をしてまでこれらの商品
を購入すること自体考え難く,被告の主張を採用することはできない。 
 
     (エ) ビデオセンターでの受講
       原告A1は,退院後,信者のB33らからビデオセンターで受講をすることによ
って先祖の因縁を解くことができると勧められ,ニューライフアカデミー藤
井寺に通った。原告A1は,昭和62年1月ころからは,自宅近くの門戸
厄神のビデオセンターに通い,そこで,被告とB1の名を明かされ,その
ころ被告に入会した。
     (オ) 人蔘液,水晶等の購入
       原告A1は,夫の事故の慰謝料や生命保険金を受け取った昭和62年2月こ
ろ,B33らから,有限会社あおばの主催する展示会に誘われ,4日間に
わたり先生と呼ばれる信者から,「まだ,御主人が苦しんでいます。たくさ
んお金があると,争いになるからお金を出しなさい。」と原理数(被告にお
いて意味のあるとされる数字)の21にちなんで,2100万円の献金を求
められ,同月10日ころ2099万5000円を献金した。原告A1は,この支
払の際に有限会社あおばの人蔘液110個(880万円,10年分以上),
水晶4個(790万円),石板(210万円,子ども3人分),念珠5本(220
万円)の売買申込書(甲A4,5)に署名押印し,これらの商品を受け取っ
た。
       これに対して,被告は,これらの商品は,原告A1の体質改善と家族のお守
りのために原告A1が自発的に購入に至ったものであると主張し,証人B
33の証言がこれに副うが,同証人も,勧誘の中で先祖の死亡日時や死
亡原因を記した家系図を用いたことは認めている上,何らの害悪も告知
されることなく,原告A1が2100万円もの多額の金員を出捐し,あるい
は,一度に10年分以上もの高麗人蔘茶を購入すること自体考え難く,
証人B33の証言は採用できない。
     (カ) 弥勒像等の購入
       原告A1は,昭和62年8月ころ,信者から求められるままに預金通帳を預け
たところ,多額の預金が残っていることを指摘され,500万円の献金を
要求された。原告A1は,預金の中から500万円を献金し,見返りに浄
水器やサウナ,弥勒像を受け取った。
       なお,原告A1は,上記500万円の出捐に先立ち,ユダヤ人が殺された人数
になぞらえて,1440万円を献金したと主張・供述するが,同人の供述は
あいまいであり,他にこの出捐を裏付ける証拠は全くなく,同人の供述は
採用できない。
     (キ) 被告における活動,HG
       原告A1は,昭和62年1月ないし2月ころ被告に入会し,被告の信仰にのめ
り込むようになり,自分の母親や,子ども達をもビデオセンターに連れて
いっては被告の信仰を勧めたり,積極的に韓国水澤里の修練会に参加
したり,被告のために進んでアンケート取りや展示会のチラシ配り,講座
の人集めを行ったりするようになった。また,原告A1は,信者のB32か
ら,月初めや月末に頻繁に被告のためにHG(現金の借入れ)を頼まれ
るようになり,自己の所有する西宮市青葉台の自宅(土地建物)を担保
にしたり,息子の名義を使用したりまでして借入れを行い金を用立てるよ
うになった。
     (ク) 原告A1は,平成5年8月13日に100万円,同年9月27日12万円を被告
に献金したと主張するが,その具体的な事情が全く不明であり,出捐を
裏付ける客観的証拠もないから,これらの献金を認めることはできない。
     (ケ) 脱会の経緯
       ところが,平成5年初めころから原告A1がHGによって用立てた借入金の支
払が滞るようになり,原告A1自身が弁済することを余儀なくされるように
なった。そのころから,原告A1と子どもらとの関係も悪化し,平成6年夏
ころ,原告A1は被告を脱会した。
    イ 上記アの事実経過によれば,以下のとおり認められる。
     (ア) 信者は,夫に交通事故で先立たれて意気消沈していた原告A1に対し,突
然「道場」に誘い出し,殊更に,家系図を用いながら祖先の「因縁」を持ち
出して夫の死亡原因を断定し,出家するか献金しなければ,因縁による
禍により長男の命も危ういと原告A1の不安感をあおり,執ように1000
万円以上の献金を迫り,多宝塔,念珠の売買代金名目に1036万円も
の高額な金員を出捐させている。その後,原告A1が夫の生命保険金な
どを受領することを把握するや,まだ御主人が救われていないと言って
なおも不安感をあおり,10年分以上もの高麗人蔘茶や,石版,水晶,念
珠の売買代金名目に2100万円もの金員を出捐させた。さらに,預金通
帳を預けさせて多額の預金があることを把握するや,従前の因縁話の
続きで,その影響下にある原告に弥勒像,ミネクール,サウナの売買代
金名目に500万円を出捐させている。
       これらの一連の金員出捐勧誘行為は,原告A1に,殊更に具体的な害悪を
告知して不安感を植え付け,客観的価値に乏しい商品の購入名下に異
常に高額の金員を出捐させるもので,社会的に相当な範囲を逸脱する
違法行為というべきである。なお,原告A1は,高麗人蔘茶や多宝塔,弥
勒像を購入した後,高麗人蔘を愛飲し,あるいは,自宅を増築して多宝
塔や弥勒像を飾っているが,これらの事情は,上記に述べたところによ
れば,勧誘行為が客観的に違法とされることを何ら妨げるものではな
い。
     (イ) 他方,原告A1は,信者の求めにより被告のために頻繁に借入れ(HG)を
行っているが,それらの借入れは,原告A1が被告に入会した後2年半
近く経ってから行われ始めたもので,その際に何らかの害悪が告知され
た形跡はうかがえず,むしろ,原告A1においても,被告の信仰にのめり
込んでいたがゆえに,被告のために自発的に借入れを行ったものと認め
ざるを得ない。また,被告の教義や,被告に入信させ,被告の教義・信仰
について教育を実践し,被告の宗教的活動に従事させること自体が違
法ということはできないのは前述のとおりである。したがって,かかる借
入れをさせたことが原告A1に対する被告の不法行為と評価する余地は
ない。
   (2) 原告A2について
    ア 証拠(甲B1ないし26,乙13,14,16ないし18,33,36ないし40,45ない
し51,55,57,証人B34,同B35,同B36,原告A2本人)及び争いがな
い事実によれば,以下の事実が認められる。
     (ア) 原告A2の身上
       原告A2は昭和34年生まれの女性である。原告A2は,かねてから,実父が
飛び降り自殺をしたことを常日ごろ気にかけていた。
     (イ) B4の勧誘
       原告A2は,平成3年11月19日ころ,仏光堂の委託販売員と称して自宅を
訪問した信者のB4に姓名判断をしてもらった。原告A2は,B4から家族
に短命の人はいなかったかと尋ねられ,父,祖父が自殺したことや,長
男が出生時に仮死状態であったことを話したところ,B4から原告A2の
家系は男性運の弱い家系で長男も短命の相が出ていると告げられた。
そして,勧められるままに長男のために印鑑3本を代金12万円で購入し
た。
     (ウ) ニューライフアカデミー藤井寺での受講
       原告A2は,平成3年11月27日,B4の訪問を受け,「先祖のことや運勢に
ついて家系図をもとに話してくれる先生がいるから見てもらいません
か。」と誘われ,同月29日ころ,ビデオセンターのニューライフアカデミー
藤井寺に赴き,そこで信者のB37を紹介された。原告A2は,B37に自
分の父や祖父が自殺したことを打ち明けたところ,B37から,家系図を
示されながら,「先祖に人を殺めた人がいます。先祖の因縁のために男
性が短命の家系となっています。自殺者が二代続けば,その後,自殺者
が三代,四代と続き,御主人も,子どもも自殺する可能性が高くなりま
す。先祖の因縁を解くためにも勉強する必要があります。」と言われ,不
安と疑問でどうしてよいか分からなくなり,ニューライフアカデミー藤井寺
に通うようになった。原告A2は,因縁にまつわる映画を見たり,講義を
受ける中で,色情,人殺し,自殺といった罪を犯した者は死後も地獄界
で苦しみ,これらの罪は子孫にも因縁として遺伝するので,これらを断ち
切るためには霊界を解放する必要があることを教えられた(甲全122,
甲B3,乙39,40)。
       そのような中,原告A2は,平成4年1月23日ころ,新生セミナーの中で,被
告とメシアとしてB1の名を明かされ,メシアによって因縁を断ち切ること
ができるのだと教えられた(甲B3,乙40)。
     (エ) 霊界解放献金
       原告A2は,平成4年1月末ころ,アベル(被告の組織の上位に位置する者)
のB38から,メシアの下で修行を受けた信者としてB5を紹介され,B5
から,家系図を示されながら,「あなたの先祖の武家の出の人は人を殺
めたので地獄で苦しんでいます。あなたのお父さんがあなたに地獄から
助け出してほしいと望んでおられます。このままではあなたの家族もみ
んな地獄に行くことになります。お父さんや御主人や子どもさんを救うに
は霊界解放が必要です。そのためには,頭を丸めて出家するか,今ある
精一杯のお金を献金するかどちらかです。今,子どもさんが小さいので
出家することはできないでしょう。だから,献金しなさい。」と献金を要求さ
れた。そこで,原告A2は,夫や子どもを救うためには献金するほかはな
いと考え,同月27日ころ,できる限りの預金を払い戻すなどして,70万
円を集め,同年2月5日ころ,被告阿倍野教会に献金した。
       これに対して,被告は,B5が原告A2に対して因縁話を用いてはおらず,原
告A2は献金の意義を説かれて喜んで献金をするに至ったと主張する
が,これを具体的に裏付ける証拠はない。かえって,原告A2は家系図を
見てもらうためにビデオセンターに赴き,因縁や霊界にかかわる講義を
受け,因縁を断ち切りたいという思いを強く有していたのであり(乙40),
原告A2は,被告の信者から因縁話によって不安感をあおられ,やむなく
70万円の献金をしたと見るのが自然であるから,被告の主張は採用で
きない。
     (オ) 罪の清算献金
       原告A2は,平成4年2月ころには被告に入会した。その後,同年5月ころ,
信者から,自分の過去の過ちや恨みに思っていることをすべて内省文と
して書き出すように言われ,子どものころからの悪事を書き連ね,これを
信者に提出した。原告A2は,アベルのB35から,信者のB6を紹介さ
れ,B6から,内省文をもとに,「あなたも罪深いことをしてきましたね。自
分自身の罪を清算しないと家族は救われません。霊界解放のときよりも
多めに献金しなさい。」と献金を要求された。原告A2は,お金がないと答
えたが,同席していたB35からも,「私も子どもの保険からお金を借りて
献金した。」と迫られ,夫と子どもを救うために,同年7月2日,家族の生
命保険からの契約者貸付によって借り入れるなどして,70万円を被告
阿倍野教会に献金した。
       これに対して,被告は,原告A2が,B6のアドバイスを手掛かりに再出発の
契機として感謝の献金をしたものであると主張し,証人B35は,B6が神
様の前に感謝の意味の献金をされたらよいと申し向けたところ原告A2
は喜んで献金をしたと,これに副う証言をする。しかし,同証人も,原告A
2に内省文を書かせ,霊界解放のとき以上の気持ちで献金をするように
申し向けたこと自体は認めていることや,原告A2が何らの害悪を告知さ
れることなく家族の保険の契約者貸付を利用してまで70万円もの献金
をすることも考え難く,証人B35の証言は採用できない。
     (カ) 七五三の帯の購入 
       原告A2は,平成4年7月末ころ,B35から,株式会社創美で着物の展示会
があると誘われ,メシアが世界を救済するために役立つと着物の購入を
勧められた。原告A2は,長女の七五三用の着物の帯がないからちょう
どよいと考え,約10万円で七五三用の帯を購入した。
     (キ) 1万ドル献金
       原告A2は,夫の反対を押し切って平成6年3月28日から同月31日まで韓
国水澤里の修練会に参加した。そこで,原告A2は,B1から「蕩減復帰
の峠を越えましょう。エバ国である日本を救うには日本の女性が1人1万
ドルを持ってこなくてはならない。土地を売って,借金しても,日本を救う
ために1万ドルを作りなさい。」と献金を唱えられ,同様のことを講義で信
者からも唱えられたため,母親から100万円を借りて資金を用立て,同
年4月5日に100万円,同年8月20日に10万円を1万ドル献金として支
払った。
     (ク) 聖書シリーズイヤリングの購入 
       原告A2は,平成6年8月19日,株式会社アイビーの宝石展示会に誘われ,
「聖書シリーズの宝石類は真の母様(B1の妻B7)がデザインしたから,
天からの力を授かり,霊的なパワーを与えられる。」と宝石の購入を勧め
れられ,平成5年7月ころ被告のために金融会社から借り入れてニュー
ライフアカデミー藤井寺のB39宛に貸し付けていた40万円の返還を受
け,41万2000円でイヤリングを購入した(甲B14)。
     (ケ) 高麗人蔘茶の購入
       原告A2は,平成6年8月26日,高麗人蔘茶の説明会があると誘われ,有限
会社カナンの事務所へ行って,健康チェックと称して機械を使った健康チ
ェックを受けた。そこで,担当者から,「冷え性だから高麗人蔘茶を飲み
なさい。」と高麗人蔘茶の購入を勧められ,高麗人蔘茶4本を購入した
(原告A2は,8万2177円を支払ったところで,クレジット会社の支払を
停止し,購入した4本のうち,2本は未だ受領していない。)(甲B15,1
6)。
     (コ) 水晶のサルの購入 
       原告A2は,平成6年11月29日,アベルのB36から,水晶の展示会に誘わ
れた。原告A2は,お金がないと訴えたが,「お金がないのは皆同じでは
ないか。水晶玉には天のパワーがあり,祈祷している部屋に置いておく
と効果がある。」と購入を勧められ,夫のお守りとして夫の干支である水
晶のサルを8万6520円で購入した(甲B18)。
     (サ) 家系図の購入
       原告A2は,ニューライフアカデミー藤井寺で「ルーツを求めて」というビデオ
を見て,夫の家系を詳しく知りたいと思うようになった(乙47)。その後,
原告A2は,B36から有限会社カナンでの家系図展に誘われ,「先祖供
養のためには是非とも家系図が必要だ。除籍謄本は古いものから処分
されてしまうから少しでも早く調べて家系図を作らないといけない。」と家
系図の購入を勧められ,平成6年12月19日,16万4800円で家系図
を購入した(甲B19)。
     (シ) ネジュレット(スカラー)の購入
       原告A2は,平成7年2月28日,B36から,有限会社カナンのスカラーの展
示会に誘われた。そのころ,体調が思わしくなかった原告A2は,「パワ
ーストーンを体につけると宇宙の善のパワーが体に入り,良くなる。」と
購入を勧められ,3万0900円のスカラーを購入し,腕に付けて喜んで
見せていた(甲B20)。
     (ス) 脱会の経緯
       原告A2は,被告のビデオを持って帰っては,夫にも信仰を勧めるようになっ
ていたが,その後,家族にマンションの一室に監禁され,そこで家族や統
一協会に対する反対牧師(以下「反対牧師」という。),脱会者らに説得さ
れ,被告を脱会した。
イ 上記アの事実経過によれば,以下のとおり認められる。
 (ア) 信者は,原告A2に対し,殊更に,家系図を用いながら祖先の「因縁」を
しつこく説いて,父親が自殺という罪を犯したのは家系に問題があるから
ではないか,今後も自殺者が続くのではないかとの意識に苛まれるよう
仕向けて,因縁を解放しなければならないとの意識を植え付け,さらに
家族が地獄に行くと申し向けてその不安感をあおり,霊界解放献金名目
にできる限りの預金を払い戻して献金することを迫っている。さらに,信
者は原告A2のこれまで犯した罪を赤裸々に告白させ,これをもとに既に
因縁を解放しなければならないとの意識に苛まれていた原告A2に対し
て,原告A2自身の罪のために因縁が清算できないとその不安感をあお
って,罪の清算献金名目に献金を迫り,家族の生命保険についての契
約者貸付の制度を利用させてまで罪の清算献金名目に献金をさせてい
る。これらの一連の金員出捐勧誘行為は,原告A2に,殊更に具体的な
害悪を告知して不安感を植え付け献金を迫るもので,献金額が原告A2
の財産に照らして高額であることにもかんがみれば,社会的に相当な範
囲を逸脱するもので違法である。
 (イ) また,原告A2がなした1万ドル献金は,B1や信者らが,「エバ国であ
る日本を救うには,日本女性が土地を売って,借金しても,1万ドルを献
金しなければならない。」などと,いわれもない害悪を告知して,被告の
教義に浸り被告から言われることについて批判的に吟味する能力が鈍
磨している多くの信者らに対してあまねく,1万ドルという相当高額な献
金をきつく求め,お互い資力に少しでも余裕のある他の信者が献金する
ことから自分もしなければならないという心理的圧力を加えて,結果とし
て原告A2にとって高額の110万円もの金員を,母親から借り入れるな
ど無理をしてまで調達して献金させるに至ったもので,このような献金の
勧誘態様も,もはや宗教として許された範囲を超えるものであって違法と
いうべきである。
 (ウ) 他方,原告A2は信者の誘いを受けて様々な物品を購入しているが,
これらの購入の際に,殊更に害悪を告知されたような事情もうかがえ
ず,かえって原告A2は商品の価値を認めた上で購入に至っていること
が認められ,これらを違法とする余地はない。
   (3) 原告A3について 
    ア 証拠(甲B1ないし5,乙21,58ないし61,証人B40,原告A3本人)及び争
いがない事実によれば,以下の事実が認められる。
     (ア) 原告A3の身上
       原告A3は昭和43年生まれの女性で,平成3年当時は,看護婦として近畿
大学付属病院に勤めていた。原告A3は,平成2年ころ,祖父が見慣れ
ない墓石を持ち帰ってからまもなくして墓で転んで頭を打ち,担ぎ込まれ
た病院で原因が分からないまま死亡したという奇妙な経験を経て,この
世には霊界という場所があるのではないかと信じるようになり,このこと
を勤務先の先輩であるB8にも話していた。
     (イ) B8の勧誘
       原告A3は,平成3年1月ころ,B8から手相や家系図を学んでいるのであな
たも見てもらわないかと誘われ,B8の自宅に赴いた。原告A3は,信者
のB9に姓名判断をしてもらったところ,同女から,「あなた自身は幸せに
なるが,将来,あなたの家系は,色情因縁,絶家の相があり,男の人が
早死にする家系です。あなたも因縁を解放して,幸せになるための勉強
をした方がよい。」とビデオセンターである堺東カルチャーセンターで勉
強するように勧められた。そして,B9やB8からなおも,「亡くなったおじ
いさんがあなたの助けを求めている。今を逃すと,霊界と地上界の接近
は200年後になってしまう。」と誘われたので,堺東カルチャーセンター
に赴いた。原告A3は,堺東カルチャーセンターの印象が思ったよりも良
かったことから,継続的にカルチャーセンターに通うようになり,信者から
求められるままに自分の趣味や預貯金額に関するアンケートに答えた。
     (ウ) 献金
       原告A3は,カルチャーセンターで勉強するようになって1か月ほど経ったころ
に,被告とB1の名を明かされ,信者のB10から,「先祖の霊を苦しみか
ら解放していくのは,命をささげるくらい大事なことだが,命をささげること
はできないでしょう。その代わりに献金をしなさい。」とあるだけの金を献
金するよう要求された。B10はさらに,原告A3に色情因縁を象徴的に
描いた「地獄」という映画や,「善行銀行」(悪いことをすれば命を取られ,
良いことをすれば命を得ることができるという内容のもの)というテレビド
ラマのビデオを見せた後,信者のB41とともに,献金をして幸せになった
人の話や,献金せずに不幸に遭った者の話を持ち出して,原告A3に執
ように献金を勧誘した。原告A3は,それまで霊界の存在は信じていたも
のの,献金の必要性について理解できずにいたが,先祖が苦しんでいる
のに献金をしなければ,自分の将来に不幸が起きるかも知れないと思う
ようになり,あるだけの積立定期貯金や預金を解約して献金することにし
た。
       原告A3は,献金するまでに時間を置くとサタンに奪われるからと言われ,数
日後の平成3年2月28日ころ,積立定期貯金や預金を解約して集めた
全財産とでもいうべき113万8000円を,被告阿倍野教会に献金した。
       これに対して,被告は,原告A3は神様への感謝の気持ちから自発的に献金
したものであると主張し,B10は,原告A3に先祖の因縁や霊の話を持
ち出したことはなく,堕落した人間が神様の前に立ち返るための象徴献
祭としての献金を勧めたところ,原告A3は喜んで献金したとこれに副う
陳述をするが(乙60),カルチャーセンターに通い始めてわずか1か月
余りの後に原告A3において何らの害悪の告知を受けることなく象徴献
祭という抽象的な話が持ち出されただけで自発的に全財産に匹敵する
献金を行うに至ることは考え難く,B10の陳述を採用することはできな
い。
     (エ) 絵画等の購入
       原告A3は,献金後も3日と開けずB41の指導を受けながら堺東センターに
通い,被告に入会して,そのうちに被告の信仰にのめり込むようになっ
た。
       原告A3は,平成3年4月ころ,B41から株式会社創美の絵画展に誘われ,
前々から絵画が好きで購入したいと思っていたこともあり,また被告のた
めにお金を出すことは献金することと同じようなものだという思いもあっ
て,72万1000円で絵画を購入した(甲C4,5)。
     (オ) フォーデイズ,新生トレーニング,献金
       原告A3は,フォーデイズに参加した後,平成3年7月から9月ころまで3か月
間,両親にはマナー研修であると偽り,他の信者と共同生活をしながら,
新生トレーニングに参加した。
       原告A3は,新生トレーニングBの最中に,B1の妻のB7が日本に来るの
で,原告A3自身がこの時期に新しく生まれ変わらなければならないと言
われ,同年9月26日ころ,以前の献金以降に貯めた60万円を献金し
た。
     (カ) 研修隊
       原告A3は,平成3年9月ないし10月の新生トレーニングを終了したころに
は,被告の活動に専従(献身)したいと欲するようになり,看護婦としての
仕事を続けながら,研修隊(献身を目的として研修する人の集まり)とし
て,平成4年1月ころまで,ホームに転居し生活するようになった。
     (キ) 訪韓ツアー,ボーナス献金
       原告A3は,平成3年12月に,両親には勤務先のツアーであると偽り,約20
万円を出して,4泊5日の訪韓ツアーに参加したほか,同月24日にはボ
ーナス献金としてボーナスの中から20万円を被告に献金した。
     (ク) 家出
       原告A3は,平成4年1月ころいったん家に戻り,家からホームに通っていた
が,そのような活動に明け暮れる生活に反対する両親と口論になり,同
年3月ころ家出して,再びホームで生活し始めた。そのころ,原告A3は
研修隊の班長となった。
     (ケ) 合同祝福結婚式のための祝福献金等
       原告A3は,平成4年4月ころ,かねてから希望していた同年8月に韓国で行
われる合同祝福結婚式に参加することになり,そのころから心情献金や
月例献金を続け,7万2000円を献金した。また祝福献金として同年5月
25日に40万円,6月22日に30万円をそれぞれ支払った。
     (コ) 脱会に至る経緯
       原告A3は,平成4年7月ころ,家族にマンションの一室に監禁され,そこで反
対牧師や脱会者からの説得を受けて,被告を脱会した。
イ 上記アの事実経過によれば,以下のとおり認められる。
 (ア) 原告A3は,被告から勧誘を受ける前から霊界の存在を信じていたも
のの,信者は,原告A3に対し,地獄で苦しんでいる先祖の霊を苦しみか
ら解放するため献金するようにと迫り,さらに因縁を強調した映画や献金
(善行)をしなければ禍が降りかかることを強調したビデオを見せるなど
して不安感をあおり,積立貯金や預金をすべて解約させて献金を迫って
いる。この金員出捐勧誘行為は,原告A3に,殊更に具体的な害悪を告
知し不安感を植え付けて献金を迫るもので,献金額が原告A3の資産等
に照らして高額であることにもかんがみれば,社会的に相当な範囲を逸
脱するもので違法である。
 (イ) しかし,原告A3がなした絵画の購入,訪韓ツアーやその余の献金は,
これらの際に害悪が告知されたこともうかがえず,むしろ,原告A3は商
品の価値を認めた上で自発的に商品を購入し,あるいは信仰心から自
発的に献金をしたり,訪韓ツアーに参加したりしていたことが認められ
る。原告A3は,これらの出捐は被告に心理的に支配され,被告の教義
を教え込まされたことによると供述する。しかし,被告の教義や宗教活動
自体が違法といえないことは前述のとおりであり,原告A3についても,
同女を入信させ被告の教義・信仰について教育を実践し,被告の宗教活
動に従事させられたことをもって,違法とするまでの事情は認められな
い。また,原告A3が被告に一方的にその心理を支配され,被告のいう
がままに操られたことを示す的確な証拠はない。したがって,これらの出
捐を違法とする余地はない。
   (4) 原告A4
ア 証拠(甲D1ないし6,乙7,8,64,証人B42,同B43,原告A4本人)及
び争いのない事実によれば,以下の事実が認められる。
     (ア) 原告A4の身上
       原告A4は昭和42年生まれの女性で,平成4年当時は農業を営む父B11,
母B12及び弟と同居しながら会社に勤めていた。原告A4は,弟が大学
生の時に自律神経失調症を発症して以来,職に就くこともなく家にこもり
がちであるので,このまま,精神病を患って以来回復することなく病院に
入院している叔父と同じような将来をたどるのではないかと不安に思っ
ていた。
     (イ) B13の勧誘
       B11,B12は,平成4年3月20日ころ,手相を見させてほしいと言って自宅
を訪れた被告信者のB13に,息子が自律神経失調症に罹患しているこ
とを打ち明けたころ,同女から,家系を良くしてもらわないといけないと言
って誘われ,ビデオセンターである橿原カルチャーセンターに通い始め
た。
     (ウ) 献金
       B12は,橿原カルチャーセンターで,信者のB42に対して,息子が自律神経
失調症に罹患していることなど家庭の悩みを打ち明け,B42から尋ねら
れるままにB14家の資産状況を話した。B42は,B12の話をもとに家
系図を作成し,「B11さんの家系には色情因縁があります。B12さんの
家系には殺傷因縁があります。」と申し向け,家系図を見る先生として信
者のB43を引き合わせた。B43は,B12に対して,「先祖が地獄で苦し
がっています。息子さんが病気に悩まされるのは,地獄界にいる先祖が
弟に取りすがっているためです。しかし,今は,地上界と天上界,霊界が
近づいていて,メシアの力が強くなっているから,メシアにささげ物をして
霊界解放することによって,息子さんの病気も良くなります。しかし,この
まま献金をしなかったら,B12さんの家系に殺傷因縁があるので,息子
さんが人を殺して警察の厄介になりますよ。」と申し向け,「あなた方の場
合は原理数の12にちなんで1200万円をささげなければなりません。」
と1200万円の献金を要求した。B12は,「急な話であるから,もう少し
考える余地がほしい。もう少し待ってもらえないか。」と懇請したが,B42
らは,すぐに献金しなければ効果がないと返答し,献金を渋るB12に対
して,複数の信者を集めて証し会(信者らが献金による効能を明かし合う
会)を開いた。B12は,証し会の場で信者から口々に,「交通事故に遭っ
たが,献金をしたために無傷で済んだ。」「献金をしたために隣家からの
延焼を免れた。」と言われ,献金を迫られた。
       このころ,原告A4もB12から家系の問題を見てくれるところだと誘われて,
橿原カルチャーセンターに通い始め,平成4年4月6日ころ被告に入会し
た。原告A4は,B12とは別に,B43らから家系図を示されながらB12
同様の話をされ,献金しなければ弟の病気は治らず,殺傷事件でも起こ
すのではないかと不安感に駆り立てられるようになった。そこで,原告A
4は,献金を渋るB12を説得し,B12だけでは1000万円しか調達でき
ないことが分かると,足りない200万円を貯金を解約するなど無理をし
て用立て,同月10日ころ,B11には内緒で合計1200万円を被告奈良
教会に献金した。
       これに対して,被告は,因縁話で原告A4らの不安をあおったことはなく,象
徴献祭としての献金を勧めたところ原告A4らは喜んで1200万円の献
金をしたと主張し,証人B43はこれに副う証言をするが,同人も勧誘の
中で家系図を用いながら,原告A4の弟の病気の原因は原告A4の家系
に問題があることを説明したことは認めている上,弟の自律神経失調症
の解決のためにカルチャーセンターに通い始めた原告A4らが,わずか
1か月足らずで,何らの害悪も告知されることなく象徴献祭という抽象的
な教義の説明だけによって1200万円もの高額の献金に至ることは考え
難く,証人B43の証言を採用することはできない。 
     (エ) 橿原教育センターにおける受講
       献金後も弟の病気は改善の兆しを見せなかったところ,原告A4は,B11,B
12とともに,新たにB44という信者を有名な先生として紹介された。B4
4は,B14家は献金も半端な額では解決できないほど悪い家系だから,
更に献金するよう要求したが,B11,B12はこれに立腹して,その後橿
原カルチャーセンターに通うことを止めた。他方,原告A4は,B44やB4
2から被告の教義を更に勉強して被告に奉仕すれば家系の膿を出し尽く
すことができると言われ,今ここで自分が信仰を止めると弟の病気が良く
ならず,自分がメシアとつながっていくことで弟が良くなっていくと信じ,両
親から反対されながらも橿原教育センターに通い,統一原理の勉強を続
けていた。
     (オ) ペンダントの購入
       原告A4は,平成4年10月14日,信者のB16からクリベルの展示会に誘わ
れた。原告A4は,講義の中で宝石を身につけていると良いと教えられた
ことや,被告関連会社の商品を買うことで被告に献金することになるの
ではないかと考え,135万円のペンダントをローンで購入し,うち56万0
640円を支払った(甲D4)。
     (カ) 脱会に至る経緯
       その後,原告A4は,弟に対して被告への入信を勧めたり,地域の青年部の
まとめ役を買って出たりするまでに被告の信仰にのめり込むようになっ
たが,家族に監禁され,そこで家族や反対牧師,脱会者から説得されて
被告を脱会した。
    イ 上記アの事実経過によれば,以下のとおり認められる。
     (ア) 信者は,弟の自律神経失調症のことを思い悩む原告A4らに対し,家系図
を用いながら「因縁」を持ち出して,弟の病気は地獄界にいる先祖が弟
に取りすがっているためだとその原因を断定し,献金をしなければ弟が
人を殺傷しかねないと原告A4らの不安感をあおり,B12だけで用立て
ることのできる1000万円のみでは納得せず,証し会を開くなどして,12
00万円もの高額な献金を執ように迫り,原告A4に200万円もの献金を
させている。この金員出捐勧誘行為は,原告A4らに,殊更に具体的な
害悪を告知し不安感を植え付けて献金を迫るもので,献金額が原告A4
らの資産等に照らして高額であることにもかんがみれば,社会的に相当
な範囲を逸脱するもので違法である。
     (イ) 他方,原告A4の父母は上記献金後,カルチャーセンターに通うことを止め
ているのに,原告A4は父母の反対を押し切ってまで被告の信仰にのめ
り込んでおり,原告A4のペンダントの購入については,その信仰の過程
でなされたもので,その際に害悪が告知されたこともうかがえず,原告A
4においてむしろ相応の商品価値を認めた上で自発的に購入したことが
認められ,被告の教義及び宗教活動自体が違法といえないことは前述
のとおりであるから,これを違法とする余地はない。
   (5) 原告A5
    ア 証拠(甲全122,甲E1ないし6,乙65ないし67,72ないし75,証人B45,
同B46,同B47,原告A5本人)及び争いがない事実によれば,以下の事
実が認められる。
     (ア) 原告A5の身上
       原告A5は,昭和28年生まれの女性で,平成2年当時は自営業を営む夫及
び子ども2人と暮らしていた。
     (イ) B17の勧誘
       原告A5は,平成2年12月10日,手相を見せてほしいと言って自宅を訪れ
た信者のB17らから,家系図をもとに運勢を見てくれる先生がいるから
見てもらわないかと勧められてビデオセンターであるニューライフアカデ
ミー藤井寺の家系図運勢鑑定券(甲E4)を手渡され,同月12日,ニュー
ライフアカデミー藤井寺に赴いた。原告A5は,応対した女性から霊界に
ついて深く学んでみてはどうかと誘われ,とりあえずしばらくの間はニュ
ーライフアカデミー藤井寺に通って勉強をすることにした。
     (ウ) 1回目の献金
       原告A5は,講義の中で色情,人殺し,自殺の罪のある者は死後も地獄界で
苦しみ,先祖を祭り霊界解放をしなければ子孫にも因縁として受け継が
れていくことを教えられた(甲全122,乙65,72ないし75)。
       原告A5は,平成2年12月末ないし平成3年初めころ,家系図を見る先生と
して信者のB46を紹介され,B46から尋ねられるままに,夫の祖母が若
くして亡くなったことや,自分の親類の中にも若死にした女性や孫を道連
れに焼身自殺した人がいること,実兄には子どもがいないことを話したと
ころ,B46は,原告A5に家系図を示しながら,「御主人の祖母があなた
を頼っています。あなたが出家をしないと,先祖の人も助からないし,あ
なたも御主人も助かりません。」と申し向け,出家はできないと答える原
告A5に,献金をすれば救われますと迫った。
       同席していた信者のB47も,原告A5の夫が以前交通事故に遭い,運良く一
命を取り留めたことを引き合いに出して,「御主人が助かったのは先祖
が守ってくれたからよ。今度は,あなたが頑張らなくてはならない。献金
した人の中にも,交通事故に巻き込まれそうになって命拾いをした人が
いる。」と原告A5に献金を勧めた。同女らは,数日後にも再び同様の説
得をしたため,原告A5も,自分達が救われるためならばと思い,100万
円ぐらいなら献金できると答えた。ところが,B47は,「天と地がつながる
には適切な数字があって,3,5,7にちなんだ額を献金するのがよい。」
と言って,700万円を提示した。原告A5は「そんな大金は出せない。」と
拒んだが,B47から,「簡単に出せる額ならあまり意味がない。大金だ
から救われるのよ。」と迫られ,700万円を献金することを承諾した。
       原告A5は,B47から近々に献金してほしいと求められ,平成3年1月18
日,700万円を被告阿倍野教会に献金した。
       これに対して,被告は,原告A5はメシアを受け入れ,感謝の気持ちから自発
的に700万円の献金をしたと主張し,証人B46,同B47は,原告A5に
対して象徴献祭としての献金を求めたところ,原告A5は喜んで献金に至
ったこれに副う証言をする。しかし,B46やB47も原告A5に対して家系
図を示しながら因果応報の考え方を説き,応対の中で原告A5の先祖の
中に焼身自殺者がいる話が出たことや,出家をするような気持ちで献金
をするようにと求め,原理数にちなんで7という数字を示したこと自体は
認めている上(証人B47,乙65),ビデオセンターに通って間もない原告
A5が何らの害悪も告知されることなく単に象徴献祭という抽象的な教義
の説明をされただけで,700万円もの高額な献金に至ることは考え難
く,証人B46,同B47の証言は採用できない。
     (エ) 2回目の献金
       原告A5は,被告に入会したものの,献金後も未だに被告の信仰に確信を持
つことができなかったが,信者から,「勉強していったら,分かることだ。」
と勉強を続けるよう勧められたため,半年ほどはニューライフアカデミー
藤井寺に通っていた。ところが,平成3年9月ころ実兄を急性骨髄性白血
病で突然亡くし,気持ちが落ち込んでニューライフアカデミー藤井寺への
足が遠のいた。
       しばらくして,原告A5は気持ちが落ち着くにつれ,今まで被告に献金したり
被告の教義を勉強したりしていたことが全く役に立たなかったことに腹立
ちを覚え,平成4年4月ごろ,ニューライフアカデミー藤井寺を訪れて怒り
をぶつけた。しかし,そこで応対した信者のB18から,かえって,「お兄さ
んは子どもに恵まれず,跡取りができないまま,早くして亡くなられまし
た。そうしたことがあなたにも起こるかもしれませんから,もう一度先生に
相談してみましょう。」となだめられ,B18から指示されるままに,手持ち
の預金残高等を書き連ね,B18に手渡した。
       原告A5は,同月30日,B6を紹介され,B6から,「お兄さんの思いがあなた
に表れています。お兄さんは御両親を置いて逝ったことを悔やんでいま
す。あなたがお兄さんを救ってあげなくてはなりません。お兄さんは御主
人の身代わりになったのだから,お兄さんを供養していかなくてはなりま
せん。」「お兄さんの四十九日までに献金をしなくてはいけません。献金
しなければ,御主人に不幸が起きます。」「お祈りしたところ,『2100万』
という数字が出ました。考えている時間などありません。献金しないと,
御主人の命が危ない。不幸が起きます。」などと言って,原告A5に210
0万円の献金を迫った。
       B18も,「献金したある信者さんの御主人が車と車の間に挟まれるという事
故に遭ったが,ちょうどその時に奥さんが教会に献金されたために命拾
いをした。あなたの御主人にも,今そういう不幸が起きるかもしれません
よ。あなたは御主人を救えないのですか。」と,原告A5に献金を迫った。
原告A5は,貯金は夫の事業資金や自宅新築費であるから貯金を解約
して献金することはできないと答えたが,B18からなおも強引に献金を
迫られ,仕方なく,B17の車にB18と同乗して,通帳,印鑑を取りに自
宅に戻り,銀行で合計1700万円を引き出し,ニューライフアカデミー藤
井寺に戻った。
       原告A5は,「このお金は家を新築する費用と夫の仕事の事業資金なのでど
うしても献金できません。5月10日に夫の仕事の支払があって,200万
円どうしても必要です。」とB6に懇願したところ,B6は,「200万円は返
しますが,献金した年に家を建てると御主人の命がありません。新築は
平成6年まで待ちなさい。」と200万円のみを返還し,その余の返還を拒
んだ。原告A5は,B6の言に従い,渋々被告阿倍野教会に1500万円
を献金した。
       これに対して,B18は,原告A5はB6からアドバイスを受けるうちに霊界に
ついて確信し,亡くなった実兄のためならば何でもやりたいとの思いから
献金に至ったと陳述するが(乙66),その陳述内容を見ると,原告A5は
いったんは2100万円の献金を快く申し出ていたにもかかわらず,B18
はわざわざ自分から銀行に付き添って行って預金の払戻しを見届けて
おり,また原告A5は預金を引き出した後急に夫の営業資金が必要であ
ると懇願して1500万円のみを献金したというもので,2100万円の献金
を自発的に申し出た割にはその後の献金の経緯があまりにも不自然で
ある。また,原告A5が何らの害悪も告知されずに自発的に自宅新築資
金を取り崩してまで1500万円もの高額の献金に至ることも考え難く,B
18の陳述は採用できない。
     (オ) 脱会に至る経緯
       原告A5は,献金後も献金したことを後悔し,また,夫の仕事の支払も苦しい
状態に陥ったことから,信者に献金を返してもらえないかと相談したが,
B18から50万円のみを金銭消費貸借名目で交付されたのみで,いった
ん献金したものを戻せば恐ろしいことが起きるとたしなめられた。しかし,
その後原告A5は実母にも死なれ,被告に献金しても幸せにならないこと
を悟り,被告を脱会した。
    イ 上記アの事実経過によれば,以下のとおり認められる。
信者は,原告A5に対し,先祖を奉らなければ家族が不幸になるのでは
ないかという不安を植え付け,家系図を用いながら「因縁」をしつこく説い
て,原告A5が献金しないと先祖も助からず,夫も交通事故に遭うと不安感
をあおり,原告A5が申し出た100万円の献金では納得せず,あえて700
万円もの高額な献金を執ように迫っている。さらに,原告A5の実兄が早世
するや,献金しなければ今度は夫の命が危ないと不安感をあおって2100
万円もの献金を迫り,最終的には自宅の新築費用を取り崩させて1500万
円を献金させている。これらの一連の金員出捐勧誘行為は,原告A5に,
殊更に具体的な害悪を告知し不安感を植え付けて献金を迫るもので,献金
額が高額であることにもかんがみれば,社会的に相当な範囲を逸脱するも
ので違法である。
 (6) 原告A6
  ア 証拠(甲全203,204,甲F1,乙68ないし71,84,証人B48,同B49,
原告A6本人)及び争いのない事実によれば,以下の事実が認められる。
     (ア) 原告A6の身上
       原告A6は,昭和34年生まれの女性である。原告A6は,平成2年6月に職
場で知り合ったB19と結婚したが,同人に平成3年3月28日単車事故
で先立たれた後は実家に戻っていた。原告A6は,B19の後を追って死
にたいとまで思って意気消沈し,B19に会いたいという一心で霊能者を
訪問するなどしていた。
     (イ) B48の勧誘
       原告A6は,平成3年9月ころ,職場の先輩であった信者のB48から,気分
転換のために行っている場所があるので一緒に行ってみないかと言わ
れ,ビデオセンターである東大阪カルチャーセンターに誘われたが,内
容に興味が持てず誘いを断っていた。また,原告A6は,B48から誘わ
れて株式会社アイビーの絵画展に赴いたものの,特に絵画を購入するこ
ともなかった。
       原告A6は,平成4年6月ころ,B48からB19が枕元に電話を置いて原告A
6からの電話を泣きながら待っている夢を見たことを教えられ,なぜB19
が自分の夢には出てこないのかと気になり,以前にB19と住んでいた所
へ電話を掛けたり,B48に対して夢の内容をしきりに尋ねたりするように
なった。
       そのころ,原告A6は,B48から,「夢にB19さんが出てくるのは,霊が浮か
ばれていないからだ。B19さんが亡くなるのは,家系がおかしいからだ。
家系図を見てもらえるところに行って一度家系を見てもらった方がよ
い。」と勧められ,同月12日ころ,B48とともに東大阪カルチャーセンタ
ーを訪れた。
       原告A6は,信者のB50に尋ねられるままに,祖父と従兄弟が交通事故で
亡くなっていることや,叔父と母の伯母がガンで亡くなっていることを話
し,家系図を作成してもらった。そして,B50から,とにかく10回程度は
カルチャーセンターに通うようにと勧められ,とりあえず東大阪カルチャ
ーセンターに通うことにした。原告A6は,カルチャーセンターからの帰り
道,B48から,「B19さんはささげ物で,おじいさんや従兄弟が交通事故
で亡くなったのも因縁のせいだ。これからも犠牲者がどんどん出る。B1
9さんが夢に出ているのは,その悪い因縁を伝えようとしているからだ
よ。」と言われた。 
     (ウ) 献金
       その後,原告A6は,信者のB20から求められるままに,自己の性格や家族
状況,資産に関する「六つの健康チェック」と題するアンケートに答え(甲
全203),自分にはB19の死亡保険金7000万円があり,ユニセフや交
通災害遺児の会に寄付しようかと考えていることを漏らした。
       原告A6は,平成4年6月14日ころ,B20から,「滅多にお会いできない先生
に会うことができます。」と信者のB49を紹介された。原告A6は,B49
から尋ねられるままに,B19が単車を運転中に路上で滑って転倒し,後
続車にひかれて死亡したことや,自分の祖父も自転車を運転中に転倒し
て車にひかれたこと,従兄弟も交通事故で死亡していることなどを打ち
明けた。これに対して,B49は,家系図を示しながら,祖父や従兄弟,B
19が続けざまに交通事故で死亡しているのは,すべて因果律(必ず原
因があって結果が生じるという法則)によるのだと原告A6に説明した。
       原告A6は,同月23日ころには,被告やB1の名を明かされ,B20から求め
られるままに,被告への入会届に署名押印した。
       原告A6は,同月27日ころ,再びB49に会い厳しい口調で,「あなたがしっか
りしなければなりません。あなたの御主人は地獄で苦しんでいます。御
主人を始め先祖を霊界解放しなくてはなりません。霊界解放できるのは
あなただけです。霊界解放しなければ,良くないことが起こる。あなたの
誕生日である7月14日までに何とかしないとあなたの命が危ない。」「霊
界解放には,3つの選択肢があります。命を捨てることができますか。命
を捨てることができなければ,出家をすることができますか。出家ができ
なければ,お金は出せますか。」と迫られた。原告A6は,B19が命に代
えたお金でB19と自分が救われるのであればよいという思いで,献金す
ると答えた。
       そうすると,B49は,お祈りをしてくると言っていったん席を外し,戻ってから
原告A6に対して,「家庭の完成数でかつ地の数である4数がよい。だか
ら4000万円で救われます。」と告げ,原告A6に献金を承諾させた。原
告A6は,同月28日にB49らに供養祭をしてもらい,その翌日の29日
にB20らに伴われ銀行から3700万円,保険会社から300万円を用立
てて,合計4000万円を被告東大阪教会に献金した。
       原告A6は,献金前のお清めの際に,B49から「御主人はすごく高いところに
おられるから,これで霊界解放ができました。御主人は救われました。」
と告げられ,霊界解放ができたと確信し,これ以上宗教に関わりを持ち
たくないこともあって,その後B20から再三カルチャーセンターで学ぶよ
うにとの誘いを受けても,断っていた。
       これに対して,被告は,原告A6は献金をすることによってB19の供養になる
とともに原告A6の信仰の再出発にもなると考え快く4000万円の献金を
したものであると主張し,証人B48,同B49らは,原告A6に対して家系
に問題があるとか,B19はささげ物で霊が浮かばれていないなどと申し
向けたこともなく,原告A6はB49から霊界を解放して信仰の再出発をす
る手段として献金の意義を説明され,喜んで献金に至ったとこれに副う
証言をする。しかし,B49も,家系図を用いながらB19の交通事故死と
祖父,従兄弟の交通事故死を因果律をもって説明したこと自体は認めて
いる上,原告A6は,献金後はB19が救われたからと思い,B20からの
誘いを断っていることからすれば,原告A6が献金に至った動機が信仰
の再出発にあったとは考えられず,同証人らの証言は採用できない。
    イ 上記アの事実経過によれば,以下のとおり認められる。
信者は,B19に交通事故で先立たれて意気消沈していた原告A6に対
し,「因果律」を持ち出しB19の交通事故死と原告A6の祖父や従兄弟の
交通事故死との連関をもっともらしく指摘し,B19はささげ物となって地獄
で苦しんでいるとか,献金をしなければ交通事故死の禍が原告A6にも波
及するとかと述べて,4000万円もの高額な献金を迫っている。この金員出
捐勧誘行為は,原告A6に,殊更に具体的な害悪を告知し不安感を植え付
けて献金を迫るもので,献金額が極めて高額であることにもかんがみれ
ば,社会的に相当な範囲を逸脱するもので違法である。
   (7) 原告A7 
    ア 証拠(甲全11,12,甲G1,乙76,77,79,80,83,85ないし102,証人
B51,同B52,原告A7本人)及び争いがない事実によれば,以下の事実
が認められる。
     (ア) 原告A7の身上
       原告A7は昭和45年生まれの女性である。原告A7は,平成6年当時は両親
と同居しながら広告制作会社に勤務していた。
     (イ) B52の勧誘
       原告A7は,平成6年1月25日ころ,京阪・JR京橋駅間の広場で,信者のB
52から,青年の生活意識調査と称するアンケートを求められた。原告A
7はアンケートに回答する度に,B52から賛美されたり,真剣に相槌を
打たれたりして,次第に親近感を覚え,回答理由を尋ねられていくうち
に,父親や祖父が酒乱であることや,父親が何度も倒産を経験している
こと,結婚を約束している交際相手と結婚してもうまくいかないのではな
いかと不安に思っていること等,自分の悩み事を洗いざらい話すように
なった。
       原告A7はB52から青年サークルに来てみないかと誘われ,その後も,何回
か電話や手紙で同様の誘いを受けたが,仕事が忙しいこともあってB52
の誘いを断っていた。
     (ウ) 印鑑の購入
       ところが,原告A7は,B52に会ってから3か月ほどしてから,B52から,「よ
く当たると評判の姓名判断の先生がたまたま京橋に泊まっている。知り
合いの先生なので,A7さんのことを聞いてみたところ,先祖の功労のあ
る立派な方だけど,一つ気になることがあるみたい。鑑定料は特別に20
00円にしてあげるから,見てもらってはどう。」と誘われ,姓名判断に興
味を持っていたことや,一つ気になることがあるとの先生の言葉が気掛
かりに思い,B52から誘われるままに京橋の旅館を訪れ,姓名判断の
先生であるとしてB22を紹介された。
       B22は,「あなたの先祖を末代まで呪ってやると思って死んだ女性がいま
す。あなたの家系は,色情因縁,女性の恨みの強い家系なので,長男が
立たず(早死にしたり,離婚再婚を繰り返したり,結婚ができなかったり
すること),絶家になります。これから功労を更に積んでいかないと,あな
たのお兄さんは早死にするし,あなたも婦人科系の病気に悩んだり,幸
せな結婚はできないことになります。あなたのお祖母さんが亡くなった後
はその因縁をあなたが受け継ぐことになるので,お祖母さんが何回も病
気しているようなことはあなたにも起きます。」と告げた。原告A7は,祖
父が離婚再婚を繰り返し,祖父の兄弟が早死にしていることや,祖母が
腸と卵巣が癒着する病気等の重病を患っていることなどB22の話に思
い当たることがあったため,B22の予言が的中するのではないかと不安
に思った。
       さらに,B22は,原告A7に対して,「あなたの家系は色情因縁のために長男
が立たない家系だから,あなたが必然的に中心人物になります。あなた
の家が絶家になるならば,先祖が救いを求めても供養をしてくれる子孫
がいないので,結局無縁仏になって悪霊となってほかの人にたたって出
たりしますから,魔を切る方法として,40の数字のつく印鑑を買いなさ
い。」と,40万円の印鑑の購入を勧めた。
       原告A7は,月給16万円足らずで印鑑を購入するだけの経済的な余裕もな
く,購入を渋っていたが,B52からも隣で象牙の印鑑を見せられて,「私
も,同じ印鑑を持っている。」と購入を勧められ,印鑑を購入しなければ,
B22の予言が的中するのではないかと不安に思い,その場で印鑑の購
入を決め,1万円を内払いした。その後,原告A7は,平成6年4月30
日,預金を解約して残額の39万円を支払った。
       これに対して,被告は,印鑑購入に際して何ら脅していないと主張し,B22,
証人B52は,姓名判断によれば原告A7の家系は男運が弱く,原告A7
も婦人科系の病気になりやすく母親のように苦労する可能性があると説
明したところ,運勢を良くしたいと欲して喜んで印鑑を購入したとこれに
副う陳述(乙77)・証言をするが,当時の収入が1か月16万円程度であ
った原告A7が貯金を解約してまで差し当たり特に必要もない40万円も
の高額な印鑑を購入していることからすれば,上記で認定のとおり因縁
話を持ちかけられて不安感から印鑑購入に至ったと考えるのが自然で
あり,これらの陳述・証言は採用できない。
     (エ) I&Sでの受講
       原告A7は,前記のとおり平成6年4月30日に印鑑の残代金を支払った際
に,B22から,「印鑑を買うだけでは功労を積むのが不十分なので,何
か道徳的なものを学んだ方がよい。」と勧められ,ビデオセンターであるI
&Sに赴いた。
       原告A7は,同年5月21日,ワンデイ(ビフォーザカウサセミナー)に参加し,
同年6月には,世界平和女性連合カウサセミナーに参加した。
       原告A7は,同年7月23日会社を休んでツーデイズ(ファーストカウサセミナ
ー)に参加し,その後,参加したライフトレーニングで,被告とB1の名を
明かされた。原告A7は,I&Sは,カルチャーセンターであると聞かされ
ていたため,I&Sが被告の施設であると聞き驚いたが,受講を続けてB
1がメシアかどうかを自分の目で見極めようと思い,同年8月12日から
同月14日までスリーデイズ(セカンドカウサセミナー)に参加した。原告A
7は,スリーデイズに感銘を受け,感想文では被告を批判するマスコミの
誤った情報に自分も踊らされていたと述べている(乙91)。
       原告A7は,そのころまでには被告に入会している。
     (オ) 上級トレーニング,月例献金
       原告A7は,新生トレーニングに参加するよう誘われたが仕事の都合がつか
ず,平成6年8月15日から通所でも勉強することが可能な上級トレーニ
ングに参加し,統一原理やB1の生き方に共鳴するようになっていった。
       原告A7はこのころから,できる限りでかまわないからと月例献金を求められ
るようになった。
     (カ) 水澤里修練会,1万ドル献金
       原告A7は,平成6年9月ころ,B52から水澤里修練会に参加するよう誘わ
れ,B1に会ってみたいとの思いから,参加費7万円を支払って,同年10
月6日から9日までの間,水澤里の修練会に参加し,メシアと教えられて
いたB1とB7と会うことができ感激した。
       ところが,原告A7は,B52から帰国後に,水澤里修練会に参加する者は献
金として1万ドル(110万円)を支払わなければならないことになっている
と言われ,当初は渋っていたが,上級トレーニングのアベルであったB2
3から,個室に呼びつけられて,「献金しないと日本が沈没する。ここで
失敗すると折角先祖に功労があったのに,霊界が解放されずすべてが
台無しになる。あなたもあなたの先祖も地獄に落ちる。」と迫られ,渋々
献金することにし,まず40万円をまとめて献金した(うち12万円は月例
献金に充当された。)。
       これに対して,被告は1万ドル献金は強制的なものではなく,原告A7は自発
的にできる範囲で分割で献金したものであると主張する。しかしながら,
上記B23の発言内容を否定し得るだけの証拠はなく,原告A7の資産に
照らしても,原告A7が1万ドルもの高額な金員を何らの害悪の告知もな
くして献金することは考え難く,したがって,上記献金については,B23
からの働きかけがあったことは明らかであって,被告の主張は採用でき
ない。
     (キ) 着物の購入
       原告A7は,平成6年11月6日ころ,B23に京都の着物の展覧会に誘われ,
B23の指導を日ごろ実行できないでいる自分に負い目を感じ,着物を買
うことで償うことができればよいと考え,73万円余りの着物を購入した。
     (ク) 一時的な脱会,B22,B52の下で復帰,祝福献金
       原告A7は,何かと献金を求め,原罪を清算するために交際相手と別れて被
告に献身するようにと執ように説得するB23と,そのうちに意見が対立
するようになり,次第にI&Sから足が遠のくようになった。原告A7は,交
際相手からも被告から脱会するように説得され,被告を脱会することをB
23に告げ,B23からは止まるようきつく説得されたが,I&Sに通うことを
止めた。
       ところが,平成7年春ころ,以前原告A7の姓名判断をしたB22が上級トレー
ニングのマザー(アベル)になり,原告A7は,B22から,「せっかく色情
因縁を断ち切るために印鑑を購入したのに,このままでは功労がすべて
台無しになってしまう。」と諭され,再びI&Sに通うようになった。
       原告A7は,被告の教義をやさしく分かりやすい形で諭すB22を慕うようにな
り,以前にも増して積極的にI&Sで統一原理を勉強をするようになった。
また,原告A7は,このころから,1万ドル献金や月例献金を再開したが,
平成7年6月ころ,6月末日までに完納しなければ大変なことになると言
われ,貯金を解約して1万ドル献金の残額である69万円を用立てて1万
ドル献金110万円を完納した。
       このころ,原告A7は,通帳に預金が残っている人はすべて神にささげるよう
にと言われ,平成8年7月までに貯金の中から祝福献金として27万円を
出捐した。
       なお,原告A7は,平成7年12月に1万ドル献金として3万円足りないと言わ
れて3万円の献金を余儀なくされたと主張し,原告A7の供述もこれに副
うものであるが,原告A7は同年6月末日で1万ドル献金を完納している
はずであるから,その後唐突に3万円を1万ドル献金として支払うよう求
められたとするのは不自然である上,他に同原告の供述を裏付ける証
拠もないから,この点の原告A7の供述は採用できない。
     (ケ) 宝石の購入
       原告A7は,平成7年6月24日ころ,B52から宝石の展示会に誘われ,ペン
ダントの由来を聞き,ペンダントを買うことによって以前自分が祝福結婚
を拒み,交際相手に説得されて脱会まで決意した罪が清められるので
はないかと考えて,ペンダントを購入し,その後も肌身離さず持ってい
た。
     (コ) 訪米ツアー
       原告A7は,B22から訪米ツアーに参加するようにとの神の啓示があったと
告げられ,平成7年10月ころ,アメリカツアーに行った。
     (サ) 高麗人蔘茶の購入
       原告A7は,平成7年9月末ないし10月初めころ,自己の体質改善のため
に,B52に高麗人蔘を購入したいと頼み,これを購入した。
     (シ) 脱会に至る経緯
       原告A7は,被告の信仰にのめり込むようになり,スリーデイズ,新生トレー
ニング,実践トレーニングや青年部の活動に参加し,進んでホームに入
居するようになった。
       ところが,原告A7は,平成8年8月ころ,家族にマンションの一室に監禁さ
れ,そこで家族や,反対牧師,脱会者から説得され,被告を脱会した。 
イ 上記アの事実経過によれば,以下のとおり認められる。
 (ア) 信者は,原告A7に対し,祖父が離婚再婚を繰り返していること,祖父
の兄弟に早世している者が多いこと,祖母が重病を患っていることなど
の原因は,先祖を末代まで呪ってやると思って死んだ女性がいるからだ
とか,原告A7の家系には色情因縁があり,女性の恨みの強い家系であ
るからだとか言って,印鑑を購入しなければ原告A7も祖母のように重病
を患ったり,幸せな結婚ができなかったりすると不安感をあおり,40万円
もの印鑑を購入させている。この金員出捐勧誘行為は,原告A7に,殊
更に具体的な害悪を告知し不安感を植え付けて,差し当たり特に必要も
ない商品の購入を迫るもので,原告A7の当時の収入や当該商品が通
常の印鑑の小売価格と比して相当に高額なものであることにもかんがみ
れば,社会的に相当な範囲を逸脱するもので違法である。
 (イ) また,原告A7がなした1万ドル献金については,B23らにおいて,原
告A7に対して,「献金しないと日本が沈没する。あなたも先祖も地獄に
落ちる。」などと,いわれもない害悪を告知して,相当執ように献金の支
払を迫り,結果として原告A7にとって高額の110万もの金員を支払うこ
とを決意させた挙げ句,分割払いを始めた原告A7に対して一方的に完
納期限を定めてこの日までに完納しなければ大変なことになるとあおっ
て,最終的に貯金を取り崩して69万円を用立てさせ,完納させるに至っ
たというものである。このように,被告の教義に浸り被告から言われるこ
とについて批判的に吟味する能力が鈍磨している原告A7に対して,い
われもない害悪を告知して1万ドルもの原告A7にとって相当高額な献金
を勧誘することは,仮に献金を勧誘されながら信者の中にはこれらの献
金をしない信者もいる(証人B51,同B52)との事情をも加味しても,も
はや宗教として許された範囲を超えるものであって違法というべきであ
る。
 (ウ) 他方,原告A7がなした月例献金は月々に支払う献金額がそれほど高
額なものでもなく,また献金勧誘の際に具体的な害悪が告知されたこと
もうかがえず,原告A7も可能な範囲で献金をしていたことが認められ
る。また,祝福献金は,その際に害悪が告知されたこともうかがえず,む
しろ,原告A7が望んで信仰心から自発的に献金に至ったと認めるほか
ない。したがって,これまでに述べた他の原告の場合と同様に,これらの
献金を違法とする余地はない。また,原告A7が主張するその余の献金
については,これを認めるに足る証拠がない。
   さらに,原告A7は,信者から誘われて様々な商品を購入しているが,そ
の際に殊更に害悪が告知されたような事情もうかがえず,かえって原告
A7は商品の価値を認めた上で購入に至っていることが認められ,これら
を違法とすることはできない。
   また,原告A7は,自発的に一連のトレーニングやセミナー,ツアーに参
加し,ホームに入居したといえ,被告の教義や宗教活動自体が違法とい
えない以上は,原告A7が出捐した一連の受講関係費,ツアーないし入
居費用の出捐を違法とする余地はない。
(8) 原告A8
ア 証拠(甲H1ないし10,乙35,78,79,81ないし83,109,110,証
人B51,同B53,同B54,原告A8本人)及び争いがない事実によれ
ば,以下の事実が認められる。
      (ア) 原告A8の身上
    原告A8は昭和42年生まれの男性で,平成4年当時は,コンピュータソ
フトのプログラミングの派遣会社で働いていた。当時,勤務先ではリス
トラが進み,原告A8も本来のプログラミングの仕事から,雑用ばかり
をさせられるようになっていたため,自分もリストラの対象となっている
のではないかと思い悩んでいた。
  (イ) B54の勧誘
    原告A8は,平成4年11月6日ころ,京橋のツインタワー前の路上で,
信者のB54からアンケートを求められた。原告A8は,当時リストラ問
題に思い悩んでいたこともあって,アンケートに答えながら,B54と人
生の目的や,社会の矛盾について語り合った。アンケートを終えて,
原告A8は,B54から,「京橋市民大学センターに通えば,あなたの不
安や疑問が解消されますよ。あなたはこのまま落ちていくのですか。」
と勧められ,心の不安を解消できるのではないかと期待してビデオセ
ンターである京橋市民大学センター(後のI&S)を訪れた。
  (ウ) 京橋市民大学センターでの受講
    原告A8は,京橋市民大学センターでビデオを1本見せられた後,B54
らから,「あなたは,今が転換期です。この分岐点で上がっていくこと
ができるか,それともこのまま落ちていくのか。今放っておくと落ちてい
くしかありません。」と勉強することを勧められた。原告A8は,京橋市
民大学センターで学ぶことで具体的に何が解決できるのかが分から
ず,B54らに対してバブル経済の崩壊やエイズの問題,不倫問題,
宗教戦争について問いかけてみたところ,「我々はこういった様々な
思想も最終的に一つの思想に統一し,最終的には宗教を無くす運動
をしている。」と言われ,続けて京橋市民大学センターに通うことにし
た。
    原告A8は,初めのうちは講義の内容に満足していなかったが,京橋市
民大学センターを訪れる度に信者と親しく会話を交わしたり,B54か
らこまめに原告A8を気遣う手紙をもらったりするうちに,京橋市民大
学センターに親近感を持つようになった。原告A8は,入会金,コース
費として合計8万5000円を支払った。
  (エ) ツーデイズ,ライフトレーニング
    原告A8は,勤務先の冬のボーナスも低く査定され,リストラの不安を
切実に感じるようになった。そのような折,原告A8は,B54から,「偉
い講師の方が来てくれる2日間の合宿があり,参加すれば,今学んで
いるビデオの内容がよく分かるようになる。ツーデイズに通えば不安
や疑問を解消できる。」と誘われツーデイズに参加した。
    原告A8は,ツーデイズに参加後,ついに平成5年1月ころ,退職を余
儀なくされ,ますます将来に対する不安に苛まれるようになった。その
ような中,原告A8は,心の不安を解消することができると言われてラ
イフトレーニングに参加することを勧められ,同年1月下旬から2月10
日までライフトレーニングに参加し,そこで被告やB1の名を明かされ
た。
    原告A8はそのころ被告に入会した。
    原告A8は,このころ,自分の財産に関するアンケートを求められ,素直
に自分の退職金と預金額を答えていた。
  (オ) 献金
    原告A8は,平成5年2月初めころ,家系図を見る先生として信者のB5
3を紹介され,B53から家系図を示されながら,「あなたの家系は,お
祖母さんの代から,女性,女性と続き,長男が立っておらず衰退して
いく家系です。あなたのひいお祖父さんは戦争で人を殺すという罪(殺
傷の罪)を犯した因縁があります。あなたが罪を清算しなければ,あな
たの子孫が,更に悲惨な運命を負うことになります。」と告げられた。さ
らに,原告A8はB53に聞かれるままに,曾祖父がガンで死んでいる
ことを告げると,B53は,「死んだ日付を見るとやはりサタン数です
ね。ひいお祖父さんは殺傷の罪を負っているから,サタンによって命を
奪われたのです。このままいくと,あなたの家系はつぶれるしかありま
せん。あなたは,その中で立った長男です。」「お祖母さんが離婚して
再婚と,色情の罪を犯している。お祖母さんが短命なのもサタンの仕
業ですよ。あなたのお母様が体調が悪いのはこのお祖母さんの運命
を背負っているからですよ。」などと申し向けた。原告A8は,これを聞
いて自分のリストラも因縁によるものではないか,このままでは,自分
はもっと不幸になるのではないかと不安に駆られ,B53にどうすれば
よいのか尋ねたところ,B53は,「家系の罪を清算するには,あなた
にとって一番大切なものを出してください。万物から執着心を取ること
によって,それが条件となって清算されるのです。あなたにとって,一
番大切なものは何ですか,命ですか。命を引換えにすることはできな
いでしょう。命の次に大切なものはお金ですね。」と献金を迫り,お祈り
をしてくると言っていったん席を外した後,400が蕩減の復帰数で,3
0が新たな出発の数字であるとして,430万円を献金額として提示し
た。原告A8は,貯金,退職金を取り崩せば何とか430万円を都合す
ることができたので,献金を承諾し,信者に銀行まで付き添われて行
き,預金を解約するなどして430万円を集め,その足で被告阿倍野教
会に献金した。
    原告A8は,この献金後,B53から,「あなたは罪を負っているから常に
意識していなさい。」と家系図を手渡され,この家系図を縮小コピーし
て,定期入れに入れて持ち歩くようになった(甲H2)。
    これに対して,被告は,原告A8は蕩減条件としての献金の意義を理解
した上で自発的に430万円の献金をしたと主張し,証人B53は,献
金勧誘の際に家系図を用いたのは,原告A8の先祖の中で人間関係
に苦労した者がいるのも元をたどればアダムとエバが原罪を犯したこ
とにあるということを説明するためにすぎず,原告A8は喜んで自発的
に蕩減条件を立てるために献金を決意したとこれに副う証言をする。
しかし,証人B53の証言するようにアダムとエバの原罪について説明
するためだけに家系図を用いるというのであれば,わざわざ先祖の生
年月日や死亡年月日,原因までもを家系図(甲H2)に細かく記す必要
があるとは考え難く,現に原告A8は,献金勧誘後も,家系図を常に縮
小コピーして持ち歩き,新生トレーニングへの参加動機として原罪以
外にも自分は罪を負っていると意識している旨述べている(乙109)。
その上,原告A8が,何らの害悪も告知されずに抽象的な教義に基づ
き自発的に退職金等で得た430万円もの高額な献金に至ることも考
え難く,証人B53の証言は採用できない。
  (カ) フォーデイズ,新生トレーニング,月例献金
    原告A8は,平成5年2月11日からフォーデイズに参加し,講義の内容
に感銘を受け,そのまま,上級トレーニングに参加した。その後,原告
A8は,同年4月から,ホームで生活しながら新生トレーニングに参加
した。原告A8は,そのころは無職であったが,B55マザーから勧めら
れて再就職した。原告A8は,講義の中で地上地獄から救われるため
には罪を清算する必要があるから給料の10分の3を献金するように
と言われ,月例献金として脱会まで合計139万9000円を献金した。
    その後,原告A8は,青年部に配属された。
  (キ) 1万ドル献金等
    原告A8は,平成5年12月初めころ,信者から,「日本は,アダム国韓
国に対し,ひどい仕打ちを行ってきた。日本はエバ国としての努めをし
なくてはならない,1人1万ドル献金するように。もしこれをしないと,日
本はエイズパニックか天災で滅びてしまうだろう。日本を救い,背負っ
ていくのは,協会員であるあなた達である。」と,1万ドル献金を求めら
れ,交通事故に遭ったため参加できなかった済州島ツアーの費用9万
円を併せた合計113万円を平成5年12月から平成7年3月まで分割
で献金した。
    なお,この1万ドル献金の話があった同年12月には,特別献金として7
万円も献金した。
  (ク) 合同祝福結婚式への参加 
    原告A8は,平成7年2月ころ,「B1が行うのはこれが最後かも知れな
い。」と合同祝福結婚式への参加を勧められて,参加を決意し,祝福
献金として合計140万円を献金した。原告A8は,同年8月25日に合
同祝福結婚式に参加し,日本人女性と結婚した。
  (ケ) 脱会に至る経緯
    原告A8は,平成8年1月,生命保険の解約をしてその解約金を献金す
るため,保険証書を取りに自宅に戻ったところを家族に監禁され,家
族や反対牧師の説得を受け,脱会に至った。
 イ 上記アの事実経過によれば,以下のとおり認められる。
  (ア) 信者は,リストラに遭い将来に不安を抱えていた原告A8に対し,家
系図を用いながら「因縁」を持ち出し,リストラや曾祖父がガンで死ん
でいること,祖母が短命であることの原因はすべて曾祖父や祖母の犯
した罪のためであるとその原因を断定し,献金しなければ,この因縁
を原告A8も引継ぎ自己に禍が及ぶと不安感をあおって,預金や退職
金をほとんど取り崩させて430万円もの高額の献金をすることを迫
り,銀行まで付き添い,預金を引き下ろさせた後,その足で献金させて
いる。この金員出捐勧誘行為は,原告A8に,殊更に具体的な害悪を
告知し不安感を植え付けて献金を迫るもので,献金額が原告A8の財
産に照らして高額であることにもかんがみれば,社会的に相当な範囲
を逸脱するもので違法である。
  (イ) また,原告A8がなした1万ドル献金については,信者が,原告A8ら
に対し,「日本は,アダム国韓国に対し,ひどい仕打ちを行ってきた。
日本はエバ国としての努めをしなくてはならない,1万ドル献金をしな
いと,日本はエイズパニックか天災で滅びてしまうだろう。」などと,い
われもない害悪を告知して,被告の教義に浸り被告から言われること
について批判的に吟味する能力が鈍磨している多くの信者らに対して
あまねく,1万ドルという相当高額な金額をきつく求め,お互い資力に
少しでも余裕のある他の信者が献金することから自分もしなければな
らないという心理的圧力を加えて,結果として原告A8にとって高額の
113万円もの金員を無理して分割で献金させるに至っている。このよ
うな献金の勧誘態様も,もはや宗教として許された範囲を超えるもの
であって違法というべきである。
  (ウ) 他方,原告A8がなした月例献金は,月々に支払う献金額がそれほ
ど高額なものでもなく,原告A8ができる限りの範囲(甲H1,3,4,原
告A8本人によれば,原告A8が月例献金として常に一定額を納めて
いたわけでもなく,また,全く献金をしていない月もあることがうかがえ
る。)で自発的に献金したものであることが認められるし,祝福献金
も,その際に害悪が告知されたものでもなく,むしろ,原告A8が望ん
で祝福を受けるために自発的に献金に至ったものと認められる。した
がって,これまでに述べた他の原告の場合と同様に,これらの献金を
違法とすることはできない。
    また,原告A8は,自発的に一連のトレーニングやセミナー,ツアーに参
加し,ホームに入居したといえ,被告の教義や宗教活動自体が違法と
いえない以上は,原告A8が出捐した受講関係費,ツアーないし入居
費用を違法とする余地はない。
   (9) 原告A9
    ア 証拠(甲I1ないし13,乙33,56,103,104,106,112ないし118,証人
B56,証人B57,原告A9本人)及び争いがない事実によれば,以下の事
実が認められる。
     (ア) 原告A9の身上
   原告A9は,昭和10年生まれの女性であり,夫の営む洋服のネーム作
製業の仕事を手伝っていたが,長男が結婚して4,5年にもなるのに子ど
もができないこと,ホテルで料理人をしていた次男が皮膚の病気で勤め
を辞めざるを得なくなったこと,夫が中心性網膜症に罹患し仕事もままな
らない状況に至ったこと等の不安を抱えていた。
 (イ) B24の勧誘
   原告A9は,平成3年5月20日ころ,姓名判断をさせてほしいと言って自
宅を訪れた信者のB24らから,「霊界解放」(現世で神様に奉仕すること
で,霊界で苦しんでいる先祖を救い,現在この地上で生きている家族に
救いを与えられるという教え)と書かれたプリントを示され,もし興味があ
れば堺東ビデオセンターで勉強してはどうかと誘われ,何かの問題解決
の糸口でもつかめないかと思い,同月26日ころ堺東ビデオセンターを訪
れた。
 (ウ) 堺東ビデオセンターでの受講
   原告A9は,信者のB56から尋ねられるままに,自分の財産や,父親が
母親以外に女性を作って家出したこと,姪が18歳で交通事故で亡くなっ
たこと,母親が膀胱黒色腫で亡くなったこと,兄が離婚したことなどを話し
たところ,B56から家系図を示されながら,「霊界における最大の罪は色
情で,あなたのお父さんはこれに当てはまります。あなたのお父さんの
色情因縁のために,お兄さんが離婚したり,御長男が子どもに恵まれな
かったりするのです。姪御さんが18歳で交通事故で死亡したのは,サタ
ンに命を取られたからです。次はあなたの家の番です。」と告げられ,さ
らに「そういう先祖の因縁を断ち切るために霊界解放というのがあるので
す。A9家は転換期に来ています。あなたが長女として中心人物として立
って,先祖を救い,家族に降りかかる災難からも救っていかなければな
らない大事な立場にあります。」と教えられた。
   これと併行して原告A9は,講義の中でも霊界における最大の罪は色情
で,人殺しや色情によって霊界において地獄に行く者は,地上界の人間
に病気や事故などを起こして自身が苦しんでいることを知らせるので,因
縁を断ち切って不幸から免れるためには,万物を神様に返さなければな
らない(献金をしなくてはならない。)と教えられ(甲I12),また,色情因縁
にまつわる「地獄」という映画を見せられて,父親の色情因縁を断ち切る
ためには献金しなければいけないのではないかと考えるようになった。
原告A9は,平成3年6月22日ころ,ビデオセンターの講義の中で,被告
とB1の名を明かされ,ビデオセンターがマスコミで取り上げられている
被告の関連施設であることを知ったが,自分の目で被告がマスコミの批
判するような宗教団体であるのかどうかを見極めようと思い,被告に入
会した。
 (エ) 献金
   原告A9は,ビデオセンターで受講を始めてから2週間ほどして,B56か
ら,家系図を見る先生として信者のB57を紹介され,B57から,家系図
を示されながら,「あなたのお父さんの色情因縁のために,長男は子ども
に恵まれません。あなたのお母さんもあの世で苦しんでいます。霊界に
いる先祖の方々を救うためにもA9家の長女であるあなたがその使命を
果たさなくてはなりません。」と告げられ,「使命を果たすためには,出家
しなさい。出家することができなければ献金をしなさい。すべての万物
は,神様が作られたんだから,その万物を神様に返していくことによっ
て,すべての災いから救われるのです。」と献金を迫られるようになっ
た。
   原告A9は,「200万円か300万円くらいなら献金できる。」と答えたが,
B56からは,そんな少ない額では救われないとたしなめられ,B57から
も,「最低1500万円は出してもらわねばなりません。」と言われたため,
献金を渋っていた。
   B57は,渋る原告A9のために原告A9の母の供養祭をし,なおもきつく
献金を迫った。そのため,原告A9は,数日間悩んだ挙げ句,1500万円
を献金することを承諾した。その後,さらに4,5人の信者が,原告A9に
対し,口々に,「献金して霊界解放した人は,多くの恵みを受けられる。
逆に,献金をしなかった者は,家族がガンや交通事故で死んだりする。」
と申し向けた。
   原告A9は,平成3年6月27日ころ,生命保険や銀行の預金を解約し,1
550万円の金を集め,全額を被告浪速教会に献金した。
   これに対して,被告は,原告A9は献金の意義を理解して主体的に献金
したと主張し,証人B57,同B56は,神の前に復帰する蕩減条件として
の献金の意義を説いたところ,原告A9は献金の主旨を理解して喜んで
献金をしたとこれに副う証言をする。しかし,証人B57も,先祖が自己中
心的な生き方をしたために愛を完成することなく地獄界にいる(霊界でも
寂しい思いをしている)ことや,自己中心的な人生を送られた先祖がい
て,家庭が衰退に引っ張られていくことを原告A9に言ったこと自体は認
めている上,長男や次男の将来を案じてビデオセンターに赴いた原告A
9において,何らの害悪の告知もなくして蕩減条件としての献金などの抽
象的な教義の教示のみで1550万円もの高額な献金を入会からわずか
5日の後にするとは考え難く,証人B57,同B56の証言は採用できな
い。
 (オ) 12トレーニング,4デイズ,新生トレーニング
   原告A9は,献金したことにより使命を果たしたと思っていたが,B56か
ら,「これで終わりじゃないですよ。」と告げられ,平成3年7月16日から
12トレーニング,同年9月4日から4デイズ,同年10月24日から新生ト
レーニングに参加した。
 (カ) 救国献金,祝福献金,HG等
   原告A9は,韓国の済州島や水澤里を訪れる度に,B1から,「日本はエ
バ国としての使命を果たさねばならない。世界を救うためには日本人は
1万ドルを献金しなければならない。」と唱えられ,信者からも「あなたは
払えない人の分も併せて2人分である220万円を支払わなければなら
ない。」と執ように要求され,平成6年3月から同年12月にかけて,分割
して救国献金として220万円を献金した(甲I1,原告A9本人)。
   その他にも,原告A9は,信者のB58やB59らから求められるままに,
平成3年12月26日,被告のために夫名義で金融機関から100万円を
借り入れ,そのうち28回分65万8784円を支払い(HG)(甲I3),平成5
年6月6日には200万円を(甲I13,原告A9本人),平成8年2月21日
ないし同年10月21日には祝福献金として合計215万円をそれぞれ献
金した。
   なお,原告A9が主張するその他の献金は,出捐の有無,金額及び出捐
の具体的な経緯が明らかではなく,これらが信者の働きかけによって出
捐されたと認めることは到底できない。
 (キ) 訪米・訪韓ツアー
   原告A9は,信者から勧められるままに,5度の韓国ツアー(済州島1回,
水澤里4回)と2度の訪米ツアーに参加し,合計149万8000円を支出し
た。
 (ク) 物品購入
   原告A9は,被告とかかわりのある商品を購入することによって神の加護
が得られるのではないかと考え,絵画,五輪塔,家系図,位牌,ミネクー
ル,スペリオ,印鑑,高麗人蔘茶等を購入し,合計211万8220円を支
払った。
 (ケ) 脱会に至る経緯
   原告A9は,被告の信仰にのめり込むようになり,平成4年1月ころから
は,被告の礼拝に参加したり,被告の伝道活動に参加したり,ニューグ
レースアカデミー(堺東ビデオセンター)の受付を進んでしたりするように
なった。
   さらに,原告A9は,自分と同じ因縁を持つ妹の原告A10を救うことにな
ると信じて,平成5年11月ころ,同人とその家族を被告に勧誘した。しか
し,原告A9は,平成8年12月ころ,家族にマンションの一室に監禁さ
れ,そこで家族や反対牧師,脱会者から説得され,被告を脱会した。
イ 上記アの事実経過によれば,以下のとおり認められる。
 (ア) 信者は,家族の将来に不安を持っていた原告A9に対し,家系図を用
いながら「因縁」を持ち出して,長男が子どもに恵まれないことや姪の交
通事故死の原因は原告A9の父親が最大の罪である色情を犯したことに
あると断定して,献金しなければA9家に不幸が起こると不安感をあお
り,原告A9が申し出た200万円ないし300万円程度の献金では納得せ
ず,あえて1500万円の献金をしなければ禍を避けることはできないと
執ように献金を迫り,最終的には1550万円もの献金に至らせている。
この金員出捐勧誘行為は,原告A9に,殊更に具体的な害悪を告知し不
安感を植え付けて献金を迫るもので,献金額が高額であることにもかん
がみれば,社会的に相当な範囲を逸脱するもので違法である。
 (イ) また,原告A9がなした救国献金(1万ドル献金)については,B1や信
者らにおいて,「日本はエバ国としての使命を果たさなければならない。
そのためには1人1万ドルを支払わねばならない。」などと,日本人がこ
の献金を行わなければ日本に禍が及びかねないかの如くいわれもない
害悪を告知して,被告の教義に浸り被告から言われることについて批判
的に吟味する能力が鈍磨している多くの信者らに対してあまねく,1万ド
ルという相当高額な献金(原告A9にあっては2人分の220万円の献金)
をきつく求めるもので,お互い資力に少しでも余裕のある他の信者が献
金することから自分もしなければならないという心理的圧力を加えて,結
果として原告A9にとって高額の220万円もの金員を,無理をして分割で
支払わせたもので,このような献金の勧誘態様は,もはや宗教として許
された範囲を超えるものであって違法というべきである。
 (ウ) 他方,原告A9が問題とするその余の献金は,金員の出捐自体の裏付
けのないものも少なくなく(前記ア(カ)),また,出捐自体は認められるも
のも(平成3年12月26日のHG65万8784円,平成5年6月6日の20
0万円,平成8年2月ないし10月の祝福献金215万円),献金に際し信
者により殊更に害悪が告知されたとの事情がうかがえる証拠がない。ま
た,原告A9がなした一連の商品購入についても,その際に殊更に害悪
が告知されたことをうかがわせる証拠はなく,かえって,原告A9が商品
の価値を認めた上で自発的に商品を購入したことが認められる。同様
に,原告A9がツアーに参加するに際して,殊更に害悪が告知されたこと
をうかがわせる証拠はなく,かえって自発的に一連のツアーに参加した
と認められる。したがって,これまでに述べた他の原告の場合と同様に,
これらの出捐を違法とする余地はない。
   (10) 原告A10
    ア 争いがない事実に,証拠(甲J1ないし8,乙108,119,121ないし127,証
人B60,同B57,原告A10本人)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下
の事実が認められる。
     (ア) 原告A10の身上
       原告A10は,昭和21年生まれの女性で,原告A9の実妹である。原告A10
は,平成5年当時,中学1年生であった次女B25の登校拒否に悩んで
いたが,そのような折,実姉である原告A9から,「B25ちゃんの登校拒
否について相談に乗ってくれるカウンセリングの人がいるから,一度ビデ
オセンターに行ってみてはどうか。」と誘われ,平成5年11月3日,原告
A9とともにニューグレースアカデミー(堺東ビデオセンター)に赴いた。
     (イ) ビデオセンターの受講
       原告A10は,信者のB60から,「子どもの登校拒否の問題は,先祖にそもそ
もの原因があるから家系図を取りましょう。」と勧められ,B60から尋ね
られるままに,原告A10の父親が母親以外に女性を作って家に帰らな
かったことや母が膀胱黒色腫で死亡したこと,伯母に子どもができず自
分が養子となったことなどを話した。
       原告A10は,当初は,市販されているような映画や育児に関するビデオ,夫
婦関係のビデオを見せられていたが,そのうちに,霊界と地上界とか,運
勢学,統一原理のビデオを見せられるようになり,この世の人間は堕落
しているので,蕩減条件を立てて,元の位置の神の血統に帰っていかな
ければならないと教えられた。
     (ウ) 献金
       原告A10は,ニューグレースアカデミーに赴いた数日後に,家系図を見る先
生として,原告A9に対しても献金を勧誘したB57を紹介され,B57から
「今この世で生きているときに,どういう生き方をしたか,その生き様によ
って霊界に行ってからの位置付けが決まります。あなたのお父さんは,
自己中心的に家庭も捨ててしまった人だから,今,地獄界にいます。お
母さんは,生きている時に夫婦の間の愛が完成できなかったからやはり
地獄界います。あなたの伯母さんも子どもに恵まれず,親子の愛を完成
できなかったから,地獄界におられます。」「あなたのお父さんの色情因
縁が,B25ちゃんにも現れています。愛を完成できず寂しい思いを持っ
たあなたのお母さんや伯母さんが地獄界にいるということを知らせたく
て,B25ちゃんにも同じように寂しい思いをさせています。このまま放っ
ておけば,他の子ども達にも悪い影響が波及します。」と告げられた。
       さらに,B57は,平成5年11月末ころ,原告A10に対して,「先祖を救うため
に,あなたが出家をしなさい。出家ができなければ,あなたの財産を浄財
として差し出しなさい。」と献金を要求し,「あなたの財産はいくらぐらいあ
りますか。」と尋ねた。原告A10は,母親の遺産が900万円余りあり,家
族名義の生命保険や貯金があると答えると,B60から,「原理数である
12という数字にちなんで,1200万円はできませんか。」と献金を要求さ
れ,何とかB25の登校拒否問題を解決したいという思いから,1200万
円の献金を承諾し,数日後に被告阿倍野教会に1200万円を献金した。
       これに対して,被告は,原告A10は自発的に献金したものであると主張し,
証人B60,同B57は,同人らは原告A10に因縁話を持ちかけたことは
なく,証人B57が象徴献祭として献金の意義を説いたところ,原告A10
はその説明を理解して喜んで1200万円の献金をしたとこれに副う証言
をする。しかし,証人B57も,原告A10に対して家系図を用いながら因
果果報の教えをもとに,原告A10の先祖は寂しい思いをして霊界に行
き,その生き方は子孫の生き方にも現れるけれども努力すれば流れを
変えていくことはできるということを話したことは認めている上,B25の登
校拒否の問題を解決しようとニューグレースアカデミーを訪れた原告A1
0において,何らの害悪を告知されることもないままに象徴献祭といった
抽象的な教義を教示されただけで自発的に1200万円もの高額な献金
に至ることは考え難く,被告の主張及びこれに副う同証人らの証言は採
用できない。
     (エ) その後の献金,B26の入信等
      a 1万ドル献金,訪米ツアー
        原告A10は,献金後もビデオセンターに通い続け,平成6年3月,5月,10
月には16万人の日本人女性信者が韓国を訪問すると統一協会が世
界的な宗教として成功すると言われ,水澤里修練会に参加し,参加す
る度に1万ドル献金として合計330万円を献金した。さらに,原告A1
0は,平成7年3月には,82万円の費用を支払って訪米ツアーに参加
した。
      b 復帰献金,祝福献金等
        原告A10は,B25の登校拒否の問題を解決するためには,夫婦がそろっ
てビデオセンターで学んだ方がよいと信者から勧められ,夫であるB2
6や娘らにも入会を勧めるようになった。平成6年4月ころ,原告A10
は,信者のB27から,原告A10が寂しい思いを体験しなければなら
なかったのは両親が和合できなかったことが原因であるとして,両親
の供養祭をしてもらい(乙108,127),同年5月ころ,B26をB27に
引き合わせた。原告A10やB26は,B27から家系図を示されなが
ら,B26の父親がB26が生まれる前に早世していることなど原告A1
0の家系だけではなくB26の家系にも問題があることを指摘され,B2
5の登校拒否問題の解決等のためにB26も被告に入会して復帰する
必要があり,家族が救われるために献金が必要であると言われて,B
26が復帰するための条件として,500万円の献金を求められ,復帰
献金として500万円を被告堺教会に献金した(甲J1,乙108,原告A
10本人)。
        復帰献金後,原告A10はB26や子どもらを連れて,日曜礼拝やトレーニン
グに参加するようになり,平成7年6月にはB26が水澤里修練会に参
加した際の救国献金として110万円を献金した。
        さらに,原告A10は,夫婦信者は救いを得るため改めて祝福を得なくては
ならないと教えられ,同年年7月祝福献金として200万円を献金した。
        その後も,原告A10は,B60から度々献金を要求され,平成7年5月から
平成9年4月ころまでの間に,1万ドル献金や祝福献金をできない者
の肩代わり分を含めて合計402万円を献金した。
     (オ) 商品の購入
       さらに,原告A10は,被告とかかわりのある商品を購入することにより神の
加護が得られるのではないかと考えて,信者から勧められるままに着物
や絵画,印鑑等を購入し,合計339万円を支払った。  
     (カ) 脱会に至る経緯
       原告A10は,被告の信仰にのめり込むようになり,平成9年4月ころから,世
界宣教(日本人女性が被告のために世界各国で布教活動を行うこと)に
参加しなければならないのではないかと思うようになったが,同年6月,
既に被告を脱会した原告A9らから,被告の教えは誤りであると説得さ
れ,被告を脱会した。
    イ 上記アの事実経過によれば,以下のとおり認められる。
 (ア) 信者は,次女の登校拒否に悩む原告A10に対し,家系図を用いなが
ら「因縁」を持ち出し,次女の登校拒否の原因は,原告A10の父親が最
大の罪である色情の罪を犯したことや,原告A10の母親や伯母が地獄
界で苦しんでいることにあると断定し,献金しなければ次女の登校拒否
は直らないし他の子ども達にも禍が及ぶと不安感をあおり,1200万円
もの高額な献金するよう迫っている。さらに,B26を被告に入信させる際
にも,家系図を用いながらB26の家系にもにも問題があることを指摘
し,既に因縁を解放をしなければ先祖の因縁が子どもらに及ぶと教えら
れていた原告A10に対して,家族が救われるためにB26の復帰が必要
であるとして,復帰のため500万円もの高額な献金を迫っている。これら
の一連の金員出捐勧誘行為は,原告A10らに,殊更に具体的な害悪を
告知し不安感を植え付けて献金を迫るもので,献金額が高額であること
にもかんがみれば,社会的に相当な範囲を逸脱するもので違法である。
 (イ) 他方,原告A10がなした一連の商品購入やその余の献金は.その際
殊更に害悪が告知されたことをうかがわせる証拠はなく,かえって,原告
A10が商品の価値を認めた上で自発的に商品を購入し,あるいは専ら
信仰心から自ら進んで献金をしたことが明らかであるから,これまでに述
べた他の原告の場合と同様に(1万ドル献金も,原告A10の場合は専ら
信仰心から献金したと認められる。)これらを違法とすることはできない。
さらに,原告A10がツアー参加に際して殊更に害悪を告知されたことを
うかがわせる証拠はなく,かえって主体的に一連のツアーに参加したと
認められるから,これらの出捐も違法とする余地はない。
 第3 争点2(2)(個々の信者の金員出捐勧誘による不法行為〔民法715条の使用者
責任〕・使用者責任)について
  1 宗教団体は,信者が第三者に加えた損害について,当該信者との間に直接の雇
用関係がなくても,当該信者に対して直接又は間接の指揮監督関係を有してお
り,かつ,当該加害行為が当該宗教法人の宗教活動などの事業の執行につき
なされたものと認められるときは,民法715条により使用者責任を負うと解する
のが相当である。
  2 被告は,原告らに対して一連の金員出捐を勧誘したのは被告とは別組織である
連絡協議会ないし信徒会の構成員でこれらの信者と被告との間には指揮監督
関係があるとはいえないし,一連の勧誘行為が被告の事業の執行につきなされ
たものであるともいえないと主張する。
    しかし,被告の主張を前提とすれば,連絡協議会や信徒会は販売会社やビデオ
センターを統括する全国的で大規模な団体であるにもかかわらず,その組織関
係について何らの規約も存在しないというのである。また,原告らはいずれも被
告に入会後もそれらの組織の存在を知らされておらず,被告側の証人となった
信者のこれらの組織に関する証言内容もあいまいで,本件訴訟に至ってから連
絡協議会ないし信徒会を初めて知らされたと証言する者(証人B56,同B57,
同B60)もいる。さらに,被告が統一運動の一環として掲げる経済プロジェクト
(甲全193,194,196ないし199,201,乙2)を推進する財団(財団法人亜
細亜技術協力会)の理事には,連絡協議会の中枢にあったとされるB28やB2
9が就任しているし,連絡協議会の幹部を務めていた信者の中には被告の教区
長や教会長に就任した者や(証人B45),被告の講師の認定を受けた者がいる
(甲全216)。その他,連絡協議会の幹部ないし有力者が,被告教会の行事に
執事として参加したり(甲全189),あるいは被告の関連友好団体である世界平
和統一家庭連合の幹部となって(なお,甲全186によると,被告は世界平和統
一家庭連合に名称変更するとの記載がある。)被告教会の行事に参加したりす
るなど(甲全218,証人B34,同B51),連絡協議会の幹部の中には被告と深
いかかわりを持った活動をする者が少なくない。他方で,連絡協議会内の組織と
される青年支部やビデオセンターにおいても,被告の教会でなされるのと同じよ
うな礼拝が行われ(証人B32,同B51),信者らの作成した会報でビデオセンタ
ーが教区の下部組織ないしは被告教会支部,教会と呼称されることがあり(甲
全217,221,222),ビデオセンター内に被告教会の伝道所が設けられている
ところがある(証人B42,甲D1)。また,被告教会長がビデオセンターでの講義
に訪れたり(甲C1,原告A2本人),信者組織が主催するという新生トレーニング
や上級トレーニングのホームとして被告教会の一室が使用されているような実
態もある(乙35,証人B51)。以上のような事情にかんがみると,連絡協議会な
いし信徒会という信者組織が被告と別個に独立して存在するのかどうか疑わし
いといわざるを得ないが,たとえ存在するとしても,被告とそのような信者組織の
活動の区別があいまいで不明瞭なものとなっていることは否定できない。
  3 以上の事情に加えて,連絡協議会ないし信徒会も信者を主要な構成員とし,被告
への入教者の勧誘や被告の教義の伝道・教育・実践を目的としており,物品購
入の勧誘に当たっては,被告の教義と同じ内容のことが多く説かれており,献金
も被告に対してなされていること等の事情をも勘案すると,これらの信者組織の
構成員である信者の活動に被告の指揮監督が及び得る関係があることは明ら
かである。また,上記の事情からすれば,本件において,信者が原告らに対して
なした金員出捐勧誘行為が被告の事業の執行につきなされたことも明らかであ
る。
    よって,被告は信者が原告らに対してした不法行為(違法な献金・物品購入の勧
誘行為)につき,民法715条の責任を負う。
 第4 損害額について
    当裁判所が認定した原告らが信者の不法行為により被った損害は,以下のとお
りである。
  1 原告A1                 3995万5000円
 (1) 商品購入代金ないし献金        3635万5000円
  ア 昭和61年10月(本念珠,多宝塔)      1036万円
  イ 昭和62年2月(人蔘液,水晶等)   2099万5000円
  ウ 昭和62年8月(浄水器,サウナ,弥勒像)    500万円
   (2) 弁護士費用                   360万円
なお,原告A1が被った精神的苦痛はその経済的損害をてん補することによ
って慰謝されるものと認められるので,慰謝料の必要を認めない。
2 原告A2                      270万円
   (1) 献   金                   250万円
    ア 平成4年2月    霊界解放献金         70万円
    イ 平成4年7月    罪の清算献金         70万円
    ウ 平成6年4月,8月 1万ドル献金        110万円
   (2) 弁護士費用                    20万円
なお,原告A2が被った精神的苦痛はその経済的損害をてん補することによ
って慰謝されるものと認められるので,慰謝料の必要を認めない。
  3 原告A3                   34万6500円
   (1) 献   金               113万8000円
   (2) 既払控除分                84万1500円
   (3) 弁護士費用                     5万円
なお,原告A3が被った精神的苦痛はその経済的損害をてん補することによ
って慰謝されるものと認められるので,慰謝料の必要を認めない。
4 原告A4                      220万円
 (1) 献   金                   200万円
 (2) 弁護士費用                    20万円
なお,原告A4が被った精神的苦痛はその経済的損害をてん補することによ
って慰謝されるものと認められるので,慰謝料の必要を認めない。
5 原告A5                     2350万円
 (1) 献   金                  2200万円
ア 平成3年1月                  700万円
イ 平成4年4月                 1500万円
(2) 弁護士費用             150万円
なお,原告A5が被った精神的苦痛はその経済的損害をてん補することによ
って慰謝されるものと認められるので,慰謝料の必要を認めない。
6 原告A6                     4400万円
 (1) 献   金                  4000万円
 (2) 弁護士費用                   400万円
なお,原告A6が被った精神的苦痛はその経済的損害をてん補することによ
って慰謝されるものと認められるので,慰謝料の必要を認めない。
7 原告A7                      160万円
 (1) 物品購入代金ないし献金150万円
  ア 印鑑購入代金                   40万円
  イ 平成6年10月から 1万ドル献金110万円
 (2) 弁護士費用                    10万円
なお,原告A7が被った精神的苦痛はその経済的損害をてん補することによ
って慰謝されるものと認められるので,慰謝料の必要を認めない。
8 原告A8                      593万円
 (1) 献   金 543万円
  ア 平成5年2月    献金            430万円
  イ 平成5年12月から 1万ドル献金        113万円
 (2) 弁護士費用                   50万円
なお,原告A8が被った精神的苦痛はその経済的損害をてん補することによ
って慰謝されるものと認められるので,慰謝料の必要を認めない。
9 原告A9                     1940万円
 (1) 献   金1770万円
  ア 平成3年6月   献金            1550万円
  イ 平成6年3月から 1万ドル献金         220万円
 (2) 弁護士費用                   170万円
なお,原告A9の被った精神的苦痛はその経済的損害をてん補することによ
って慰謝されると認められるので,慰謝料の必要を認めない。
10 原告A10                    1870万円
 (1) 献   金                  1700万円
ア 平成5年11月  献金          1200万円
イ 平成6年6月   復帰献金        500万円
 (2) 弁護士費用                   170万円
なお,原告A10が被った精神的苦痛はその経済的損害をてん補することによ
って慰謝されるものと認められるので,慰謝料の必要を認めない。
第4章 結論
 したがって,原告らの請求は主文の限度で理由がある。
  
 大阪地方裁判所第3民事部
裁判長裁判官     山  垣   清  正
          裁判官     河  村      浩
裁判官     秋  田   智  子

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