弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は,控訴人の負担とする。
事実及び理由
1控訴の趣旨
(1)原判決を取り消す。
(2)処分行政庁が平成17年7月11日付けでした原判決別紙物件目録記載1の
土地について建築基準法42条2項道路位置を廃止する処分が存在しないこと
を確認する。
(3)処分行政庁が平成17年7月11日付けでした原判決別紙物件目録記載1の
土地について建築基準法42条2項道路位置を廃止する処分が無効であること
を確認する。
2事案の概要
(1)事案の要旨
本件は,処分行政庁が,原判決別紙物件目録記載1の土地(以下「本件対象
地というについて建築基準法42条2項の道路位置を廃止する処分以下」。)(
本件廃止処分というをしたところ本件対象土地の隣地である原判決別「」。),
(「」。),紙物件目録記載2の土地以下本件隣地というの共有者である控訴人が
本件隣地も前記道路位置に含まれているから,道路位置を廃止するには,控訴
人を含めた本件隣地所有者らの承諾が必要であり,また,仮に,前記道路位置
に本件隣地が含まれていないとしても控訴人は本件隣地所有者であるから,そ
の承諾が必要であるが,本件廃止処分は,控訴人を含めた本件隣地所有者の承
諾を得ていないこと,さらに,上記のとおり,本件廃止処分は,廃止の対象道
路位置を誤っているとして本件廃止処分の不存在ないし無効(以下「本件廃止
処分の無効等」という)であることの確認を求めている事案である。。
原審は,道路位置廃止処分に当たって道路敷地の所有者の承諾は必要ではな
く,道路敷地の隣地の所有者についても,法令は道路位置の廃止に関して隣地
所有者の一般的な利用利益までは保護していないから,控訴人は,本件廃止処
分の無効等の確認を求めるにつき行政事件訴訟法36条の「法律上の利益を有
する者」には該当せず,本件訴えは不適法であって,その不備を補正すること
ができないとして,口頭弁論を経ないで本件訴えを却下したところ,控訴人が
請求の認容を求めて控訴した。
(2)当事者の主張
次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第2請求の
原因」に記載のとおりであるから,これを引用する。
ア2頁2行目を削る。
イ2頁19行目の次に,改行して次のとおり加える。
「3被控訴人の主張
(1)行政処分の無効等確認の訴えについては原告適格は無効等の確,,
認を求めるにつき法律上の利益を有する者に限られるところ,道路位
置の廃止処分は主として道路位置の指定による私権の制限の解除を意
味し,控訴人にとって利益処分と考えられ,また,建築基準法施行規
則9条は道路位置の指定について隣接土地所有者の承諾を要件として
いないこと,被控訴人の「道路の位置の指定・変更および廃止の取扱
い基準」の第2.13も道路位置の廃止処分について隣接土地所有者
の承諾を必要としていないことからすると,本件隣地の所有者である
控訴人には,本件廃止処分の無効等確認を求める利益はなく,本件訴
えはいずれも不適法である。
よって,本件訴えを却下することを求める。
(2)請求の原因1は認め,同2は争う」。
3当裁判所の判断
当裁判所も控訴人は本件廃止処分の無効等の確認を求めるにつき法律上,,「
の利益を有する者」とはいえず,本件訴えは不適法であるから却下すべきものと
判断する。その理由は,次のとおり控訴理由に対する判断を付加するほかは,原
判決の「事実及び理由」中の「第3当裁判所の判断」において説示するところ
と同一であるから,これを引用する。
(控訴理由に対する判断)
(1)控訴人は私道の廃止について法45条で廃止を禁止し又は制限するこ,「,
とができる」場合を規定しているのみであり,本件道路のように,法42条2
項の法定道路の廃止について定めがない,法定道路は,公共的性格を有し,存
在することで当該道路周辺の土地を所有し,利用する者に大きな影響力を有し
ているから,原則として廃止できず,例外的に廃止するためには,関係権利者
所有者のほか隣地所有者も含まれるの承諾を必要とし関係権利者である(。),
控訴人の承諾を得ない本件廃止処分は無効又は不存在であると主張する。
しかし,法45条1項は,その文理に照らし,法42条2項の道路について
も適用されるものであり,法42条2項の道路の廃止について,控訴人が主張
する権利関係者の承諾が必要であると解すべき法律上の根拠はないから,控訴
人の上記主張は,採用することができない。
(2)控訴人は本件廃止処分が存在しなければ本件隣地上の建物以下本件,,(「
建物というを建て替える際に本件建物の東側の道路を接道要件とする建」。),
物と西側の道路(本件道路)を接道要件とする建物の2棟を建てることができ
るのであり,このような利益は,法律上の利益として保護されるべきであると
主張する。
しかし,控訴人の主張する上記利益は,隣地所有者の将来の可能性を想定し
た一般的利益に過ぎず,このような利益は,隣地所有者の個別的利益として保
護されるものとはいえないから,控訴人の上記主張は,採用することができな
い。
4結論
,,「」以上によれば控訴人は行政事件訴訟法36条の法律上の利益を有する者
に当たらず,本件訴えは不適法であるから却下すべきであり,これと同旨の原判
決は相当であって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとする。
東京高等裁判所第12民事部
裁判長裁判官柳田幸三
裁判官田中治
裁判官白石史子

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