弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人浅野憲一、同石田省三郎の上告理由第二点について
 労働者が使用者(出向元)との間の雇用契約に基づく従業員たる身分を保有しな
がら第三者(出向先)の指揮監督の下に労務を提供するという形態の出向(いわゆ
る在籍出向)が命じられた場合において、その後出向元が、出向先の同意を得た上、
右出向関係を解消して労働者に対し復帰を命ずるについては、特段の事由のない限
り、当該労働者の同意を得る必要はないものと解すべきである。けだし、右の場合
における復帰命令は、指揮監督の主体を出向先から出向元へ変更するものではある
が、労働者が出向元の指揮監督の下に労務を提供するということは、もともと出向
元との当初の雇用契約において合意されていた事柄であつて、在籍出向においては、
出向元へ復帰させないことを予定して出向が命じられ、労働者がこれに同意した結
果、将来労働者が再び出向元の指揮監督の下に労務を提供することはない旨の合意
が成立したものとみられるなどの特段の事由がない限り、労働者が出向元の指揮監
督の下に労務を提供するという当初の雇用契約における合意自体には何らの変容を
及ぼさず、右合意の存在を前提とした上で、一時的に出向先の指揮監督の下に労務
を提供する関係となつていたにすぎないものというべきであるからである。
 これを本件についてみるのに、原審が確定した事実は、次のとおりである。
 1 被上告人B1電気工業株式会社(以下「被上告人B1電工」という。)とD
電気工業株式会社(以下「D電工」という。)は、両社の核燃料部門を新設の会社
に引き継いで営業させる旨の合意に基づき、昭和四七年七月八日被上告人B2工業
株式会社(以下「被上告人B2工業」という。)を設立した。被上告人B2工業と
しては、当座の操業に支障を生じないようにするため、被上告人B1電工及びD電
工の両社から拠出された人的・物的施設をそのまま引き継ぐこととするが、これを
有機的に統合して合理化し、かつ、両社からの出向者がほぼ同数になるように人員
を調整することを予定していた。被上告人B1電工は、同年九月一日その原子力部
門の物的施設を被上告人B2工業に譲渡あるいは賃貸すると共に、上告人ら同部門
の従業員一五一名に対し、自社との雇用契約関係は存続させたまま休職の形で被上
告人B2工業に派遣を命じ、以後右従業員は全員異議なく被上告人B2工業の業務
に従事して来た。ちなみに、D電工から被上告人B2工業への出向者は一〇五名で
あつた。
 2 被上告人B2工業としては、発足後間もない時期においては、前記の人員調
整だけでなく、適材適所等の観点からの適切な人員配置をする必要があり、その結
果一部の出向者をそれぞれの出向元に復帰させるという事態の生じ得ることも予想
されたため、被上告人B1電工からの出向者が被上告人B2工業の従業員として定
着することとなるのか、出向元に復帰することとなるのかは、極めて流動的な状態
にあつた。被上告人B1電工は、被上告人B2工業が企業としての統一性、独立性
を備え、独立の企業としての基盤を持つに至るまでの間は、出向者を被上告人B2
工業における人員調整、適切な人員配置等の人事上の都合により自社に復帰させる
ことがあり得ることを予定して従業員に出向を命じ、出向を命じられた者もそのこ
とを予定して出向に同意した。
 3 上告人に対する本件復帰命令は昭和四七年一二月一八日にされたものである
が、当時、被上告人B2工業は、設立後なお半年に満たず、独立の企業としての基
盤を有するに至つていない状態にあつたものである。以上の原審の事実認定は、原
判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の
違法はない。
 右の事実関係によれば、上告人の被上告人B2工業への出向は、被上告人B1電
工又は被上告人B2工業の業務上の都合により被上告人B1電工へ復帰を命ずるこ
とがあることを予定して行われたものであつて、上告人が被上告人B1電工の指揮
監督の下において労務を提供するという当初の雇用契約における合意がその後変容
を受けるに至つたとみるべき特段の事情の認められない本件においては、被上告人
B1電工は上告人に対し復帰を命ずる際に改めて上告人の同意を得る必要はないも
のというべきである。したがつて、これと同旨の原審の判断は正当として是認する
ことができ、その過程に所論の違法はない。
 論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難す
るか、又は原審の認定にそわない事実若しくは独自の見解に基づいて原判決を論難
するものにすぎず、採用することができない。
 同第一点、第三点及び第四点について
 所論の点に関する原審の認定判断及び措置は、原判決挙示の証拠関係及び本件記
録に現われた本件訴訟の経過に照らし、正当として是認することができ、その過程
に所論の違法はない。論旨は、いずれも採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    牧       圭   次
            裁判官    木   下   忠   良
            裁判官    鹽   野   宜   慶
            裁判官    大   橋       進
            裁判官    島   谷   六   郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛