弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破毀する。
     本件を仙台高等裁判所に差戻す。
         理    由
 弁護人勅使河原直三郎の上告趣意第二点「原判決ハ本件ヲ断スル証拠トシテ証人
Aノ予審調書ヲ引用シタリ。然レトモ憲法第三十七条第二項ニ依レハ、刑事被告人
ハ公費ヲ以テ自己ノ為ニ強制手続ニ依リ証人ヲ求ムル権利ヲ有スルト同時ニ刑事訴
訟法ノ応急的措置ニ関スル法律第十二条第一項ニ依レハ、右予審調書ハ被告人ノ請
求アルトキハ其ノ供述者又ハ作成者ヲ公判期日ニ於テ訊問スル機会ヲ被告人ニ与へ
サルトキハ之ヲ証拠ト為スコトヲ得サルモシトス。弁護人ハ原審ニ於テ右Aヲ証人
トシテ訊問ヲ求メタルニ拘ラズ、原審ハ何等ノ理由ヲ示スコトナク必要ナキモノト
シテ其ノ申請ヲ却下シナカラ、右予審調書ヲ証拠トシテ採用シタリ。此ノ如キハ憲
法並ニ右法律ノ根本規定ニ違背スル不法ノ判決ナリトス」というのである。
 案ずるに弁護人が原審において証人Aの訊問を申請したに拘はらず原審はこれを
却下しながら同人に対する予審訊問調書の記載を証拠として採用しこれを断罪の資
料としたこと所論の通りである。かゝる措置は日本国憲法の施行に伴う刑事訴訟法
の応急的措置に関する法律第十二条に違反し延いて所論憲法の法条に違反するもの
で原判決は破毀を免れぬこと当裁判所の判例とする処である(昭和二二年(れ)第
六号事件同年一一月二六日言渡判決、昭和二三年(れ)第五二三号事件同年一一月
五日言渡大法廷判決参照)(尤も右証人申請却下第一回公判との問に十五日以上の
日数をを経過した為め、原審は第二回公判において弁護を更新して居るけれどもか
ゝる場合でも尚前記第十二条適用あるものと解すべきことは前記大法廷の判示する
処であり、又特に右第十二条の訊問として請求された場合でなくても同条所定の供
述者を証人として申請された事実あるときは同条の適用あることは前記昭和二二年
(れ)第六号事件判決の判示する処であり共に今尚変更の要を見ない)
 以上説示の点により原判決は破毀を免れないから他の上告論旨に対する判断を省
略し刑事訴訟法第四百四十八条の二、最高裁判所裁判事務処理規則第九条第四項に
従い主文の如く判決する。
 以上は当小法廷裁判官全員一致の意見である。
 検察官 岡本梅次郎関与
  昭和二三年一一月一六日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           介
            裁判官    河   村   又   保

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