弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     被告A株式会社を
     判示第一の(1)の罪につき、罰金百六拾弐万七千九百参拾五円六拾銭
に、
     同(2)の罪につき、罰金百六拾一万参千九百弐拾七円六拾銭に、
     同(3)の罪につき、罰金七拾弐万五千九拾七円六拾銭に、
     同(4)の罪につき、罰金七拾弐万七千四百六拾四円に、
     同第二の罪につき、罰金弐拾九万五千四拾円に
     処する。
         理    由
 (罪となるべき事実)
 被告会社は和紙製造販売を業としておるものであるが、高松市a町に在る同会社
第二工場においては、その販売主任Bをしてその製造にかかる紙が物品税法の規定
する第一種戊類に属する課税物品に該るので同税法による所轄税務署に対する移出
申告をする等の業務をも担当させていたものであるところ、右Bは叙上業務に関し
物品税を逋脱するため、昭和二三年二月一日以降前記第二工場より左記製品をも含
む製品を移出販売した(証第一号売上帳記載の通り)に拘らず、
 第一、 (1) 同年二月二日から同月二九日までの間におけるC株式式会社外
八名に対する二十数回に仙貨紙二号計七九〇二貫六〇〇匁、その価格税込計金一九
五三、五二二円七二銭の移出を、
 (2) 同年三月一日から同月三一日までの間におけるC株式会社外八名に対す
る三十回位に仙貨紙二号計七、八三四貫六〇〇匁その価格税込計金一九三六、七一
三円一二銭の移出を、
 (3) 同年四月五日頃から同月三〇日までの間における、C株式会社外一二名
に対する二十数回に仙貨紙二号八五貫六〇〇匁、京花紙二号計九、二六〇貫、その
価格(税込)計金八四八、九五六円八〇銭の移出を、
 (4) 同年五月四日から同月三一日までの間におけるC株式会社外一二名に対
する二十一回位に仙貨紙二号六〇貫、京花紙二号計九三六〇貫、その価格(税込)
計金八五八、一二四円八〇銭の移出を、殊更ら記帳しない出荷簿(証第二号「証第
一号売上帳のA印だけを移記」)所謂二重帳簿を作り右(1)乃至(4)の移出が
ないように作為すると共に該出荷簿によつて虚偽の移出申告書を作成し(証第三
号)所轄税務署に対し所定期日毎に順次提出し因つて同税務署長をして該申告通り
に順次税額を調定し徴収するに至らせもつて事実移出した、
 (1) の製品に対する物品税計金三二五、五八七円一二銭(国庫出納金端数計
算法により銭位未満切捨以下同じ)
 (2) の製品に対する物品税計金三二二、七八五円五二銭
 (3) の製品に対する物品税計金一四五、〇一九円五二銭
 (4) の製品に対する物品税計金一四五、四九二円八〇銭
 の各納付を免れて逋脱した。
 第二、 同年六月四日から同月一一日までの聞におけるC株式会社外二名に対す
る京花紙二号計三、六〇〇貫、その価格(税込)計金三三〇、〇四八円の移出を前
同様殊更ら記帳しない出荷簿(前記証第二号)所謂二重帳簿を作り移出しないよう
に作為し、それにより作成する虚偽の申告書を所定期日の到来を待ち税務署に提出
して税額を調定、徴収するに至らせ、その移出した製品に対する物品税計金五五、
〇〇八円を逋脱せんとしたものである。
 (証拠)
 右の事実中判示課税標準価格(税込)の点を除いてその余は、
 (1) 当審公判調書(第一回)における被告会社代表者の判示冐頭の事実に符
合する供述の記載、
 (2) 証人Bの当審公判廷における同人は判示会社第二工場の販売主任で同工
場における物品税に関する判示の事務を扱つていた旨並に同工場においては実際の
取引から或る程度の取引を抹消して税務署へ申告しそれだけ税金を減らすため二た
通りの帳簿を作つた、そして判示の頃判示の者等に対し判示に照応する数量の紙を
販売したがその移出を申告しないために右移出を記載しない申告をし脱税をした
り、又しようとしていた旨の供述
 (3) 大蔵事務官作成の犯則事件顛末書中Bの代金を除いて判示事実に照応す
る供述の記載及添付別表二(記録五〇丁乃至五八丁)の記載
 (4) Bの検事の聴取調書に判示工場の販売主任をしていた同人は判示の頃判
示の紙を財務局員作成の販売状況調査表(別表二)の通り販売した及該表には昭和
二三年二月一五日Dに仙貨紙二号四七〇貫を販売したのを脱落しておるから追加す
る、しかして右販売は申告しなかつた旨の供述記載
 を綜合して認め、
 課税標準価格は、
 <要旨>物品税が従価税であり同法には「移出のときにおける価格」として製造場
から移出されるときの現況においての価格を予定しているので、個々の現実
な取引における価格とは異なり又生産原価を意味するものでもないことが判ると共
に通常の取引形態及取引事情における価格従つて適正な市場価格又は取引価格でな
ければならない、加之昭和二二年一〇月九日の物価庁告示第八四七号(機械漉和紙
の統制額指定)の販売条件七、「この表の統制額は物品税法により課税されるもの
については、物品税を含むものとする」と規定し統制額には物品税を含ませ指定さ
れておる等のことを綜合し叙上摘示の告示による統制額の定めある本件物品につい
ては該統制額を課税の標準価格とするを妥当と解する。
 よつて判示事実の証明は充分である。
 (法令の適用)
 被告会社の判示使用人Bの判示所為は、昭和二四年一二月二七日法律第二八六号
附則第八項改正前の物品税法第一八条第一項(刑法第六条により罰金等臨時措置法
の規定は適用しない)に該る違反行為なので物品税法第二二条により被告会社に対
し、右本条の罰金刑を科すべきであるところ以上は刑法第四五条前段の併合罪であ
るけれども物品税法第二一条に則り判示各罪につきその逋脱し又は逋脱せんとした
物品税の五倍の罰金に処すものとする。
 弁護人は、昭和二三年二月一五日Dに対し、仙貨紙二号、四七〇貫を販売移出し
た関係については告発がないので起訴条件を欠くと主張するけれども、物品税は毎
月移出した物品につき、その申告書を翌月一〇日までに政府に申告すべしとし又政
府は該申告その他資料により課税標準額を調定課税する等月を標準とし申告課税徴
収する所謂月税であると解する。従つて逋脱罪も亦月を標準として罪の個数を定め
るべきである。しかして主張の移出は判示第一の(1)の罪の一部であつて、その
他の部分につき告発がある(記録上明らかである)
 以上起訴条件に欠陥があるとは云えないので右主張は採用し得られない。
 よつて主文の通り判決する。
 (裁判長判事 満田清四郎 判事 太田元 判事 横江文幹)

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