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平成15年5月14日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成14年(ハ)第85680号 立替金請求事件
口頭弁論終結日 平成15年4月23日
判決
主       文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請   求
   被告は,原告に対し,金118万2720円及びこれに対する平成14年12月6日か
ら支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1請求の原因
(1) 原告は,平成14年7月15日,被告との間で次の要旨の立替払い契約を締結し
た。
   ① 原告は,被告が販売店株式会社A(以下「販売店」という)から平成14年7月1
5日に購入した絵画の代金84万円を立替払いする。
  ② 被告は,原告に対し,①の立替金及び手数料34万2720円の合計金118万2
720円を次のとおり分割して支払う。
ア 平成14年8月27日限り         金2万0420円
    イ 平成14年9月から平成19年7月まで毎月27日限り
                           金1万9700円
   ③ 被告が②の割賦金の支払を怠り,原告から20日間以上の相当な期間を定め
てその支払を書面で催告されたにもかかわらず,その支払をしないときは,期限
の利益を失う。
  (2) 原告は,平成14年7月22日販売店に対し,前記購入代金を立替払いした。
  (3) 原告は,被告に対し,平成14年11月15日到達の書面で,支払期の過ぎた割
賦代金を20日間以内に支払うよう催告した。
  (4) よって,原告は,被告に対し,前記立替金及び手数料の残金118万2720円及
びこれに対する平成14年12月6日(期限の利益喪失の日の翌日)から支払済
みまで年6パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める。
2 争点
(1)販売店の行為は消費者契約法4条3項2号に該当するか
(2)クーリングオフによる支払停止の抗弁が認められるか
  (被告の主張の要約-被告提出の答弁書及び第1準備書面並びに弁論の全趣旨に
よる)
   (1) 販売店の担当者は,絵画の展示場において,被告が絵画の購入意思のないこ
とを繰り返し告げているにもかかわらず被告を帰そうとせず,絵画の購入を申
し込ませ,本件立替払契約を締結させた。この販売店の行為は,消費者契約
法4条3項2号に該当する。
販売店は,信販会社である原告から本件立替払契約締結の委託を受けたものと
解されるので,被告は,消費者契約法5条1項の規定により,原告に対し,本
件立替払契約申込みの意思表示を取り消す。
   (2) 仮に,(1)の主張が認められなくとも,被告は,クーリングオフについて説明した
法定の契約書面を未だ受け取っていないので,販売店に対し本件売買契約
を解除する旨の意思表示をする。
第3 争点に対する判断
 1 証拠によれば,以下の事実を認めることができる。
   被告は,本件契約当時,家出中であり,友人の家を転々としていた。また,定職も
なく定まった収入もなかった。たまたま新宿の街を歩いていたときに販売店の男性
担当者から声をかけられ,何度も断ったものの絵画の展示場に連れて行かれた。
展示場には20点位の絵画が展示されていた。しかし,被告は絵画についての趣
味はなく,その旨繰り返し担当者に話したが,担当者は,気分がすぐれないときに
部屋に飾ってある絵画を見ればリラックスするからなどと言って購入を勧め,被告
に対し契約書にサインすることを求めた。
   被告は,再度断ったが,担当者が被告の言動を無視するように繰り返し契約書へ
の記入を求め,記入しなければ帰してもらえないような気がしたため,展示されて
いた絵画の中から何となく気に入ったものを指定し,言われるままに契約書の契約
者欄に署名押印をした。収入の欄については,担当者が,被告に定職のないことを
知っていたにもかかわらず,これくらいにしておけば大丈夫などと言って,被告に
「月収27万円」と記載させた。被告は,自分が指定した絵画の価額が80万円であ
ることを教えられたのみで,毎月の支払額や支払回数,手数料等クレジットの具体
的な内容についての説明を受けなかった。
   同年8月ころ,被告は,自分の携帯電話に販売店担当者から来店するようにとの連
絡を受けた。その当時も被告は家に帰っておらず,家出中のままだった。被告が再
度来店したところ,販売店の担当者は,商品を引き渡すので納品確認書に署名押
印するように求めた。被告は,絵画を購入したつもりはないし,受け取っても家には
飾る場所がないからと言って断ったが,担当者が,受け取ったことにしてもらえない
と困るのでとにかく受取のサインをするようにと要求した。そこで,被告は,サインを
しないと帰してもらえなくなると思い,仕方なく上記確認書に署名押印した。しかし,
絵画は現在も被告のもとにはない。
 2 以上の事実に基づき検討する。
(1)販売店の勧誘行為は消費者契約法4条3項2号に該当するか
    被告は,展示場において,自分が家出中であり,定職を有しないことや絵画には
興味のないことを繰り返し話したにもかかわらず,担当者は,被告のこれらの事
情を一切顧慮することなく勧誘を続け,契約条件等について説明しないまま契約
書に署名押印させ,収入についても虚偽記載をさせたものである。販売店の担
当者は「退去させない」旨被告に告げたわけではないが,担当者の一連の言動
はその意思を十分推測させるものであり,被告は,販売店の不適切な前記勧誘
行為に困惑し,自分の意に反して契約を締結するに至ったものである。販売店
のこの行為は,消費者契約法4条3項2号に該当するというべきである。
(2)期間内の取消権行使か
    被告は,前記販売店の不適切な勧誘行為を理由として,平成15年1月23日提
出の答弁書(同年1月27日原告に対しファクシミリにより送信済み)において,
信販会社である原告に対し,本件立替払契約を取り消す旨の意思表示をした。
消費者契約法においては,上記取消権行使期間は追認することができる日から
6ヶ月間とされており,被告の取消権行使がこの期間内のものであったかどうか
について検討する。
    被告は,販売店から商品を引き取りに来るようにとの連絡を受け,平成14年8月
10日納品確認書に署名押印している。そして,この時点においても,被告は,契
約の意思も商品引取りの意思もないことを販売店に表明しているのであり,申込
時におけると同様,販売店の担当者の言動に基因する困惑した状況のもとに,
納品確認書に署名押印したことが認められる。この引渡しの手続は,販売店の
債務履行のためになされたものであり,申込時における契約と一体をなすもので
あると考えられる(因みに,鑑賞のために購入したはずの絵画が,飾る場所がな
いからという理由でその後も引き続き販売店において保管されている事実は,被
告には当初から絵画の購入意思がなかったことを推認させるものである。)。し
たがって,取消権行使期間も,この時から進行すると解するのが相当である。そ
うすると,被告の取消権行使は,行使期間である6ヶ月間の期間内になされたと
いうことになる。
 3 以上によると,本件立替払契約は,被告の取消権行使により取り消されたことにな
り,その余について判断するまでもなく,原告の本件請求は理由がないことになる。
   よって,主文のとおり判決する。
     東京簡易裁判所民事第1室
裁判官廣瀬信義

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