弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件控訴はこれを棄却する。
     控訴費用及び当審における参加費用は控訴人の負担とする。
         事    実
 控訴代理人は原判決を取り消す、被控訴人らは控訴人に対し原判決添付目録記載
の各金員及びこれに対する昭和二十七年十月七日から支払ずみまで年五分の金員を
支払うべし、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とするとの判決を求め、
被控訴人ら代理人は控訴棄却の判決を求めた。
 事実上及び法律上の主張として控訴代理人は
 (一)、 本件桑樹は全部土地所有者が植付けたものであり、小作人が植えたも
のは存しない、本件土地は買収前はほとんど被控訴人らが控訴人から小作していた
ものであるが、右小作の目的から地上の桑樹は除外されていてただ土地(畑)だけ
の耕作が目的であり、桑樹は地主の使用収益にまかされていた、従つて解放前は桑
葉の採取は控訴人がしていたのである。
 (二)、 本件桑樹は農地の構成部分ではない、自作農創設特別措置法(以下自
創法という)においては未墾地、農地及び牧野の買収においてひとしく、土地上に
生立する竹木がある場合にはその対価の額は土地の価格と当該竹木の価格の合計額
としている、このことは竹木を農地等の構成部分とみたというよりは両者を別物視
していることをあらわすものである、昭和二十五年十月二十一日公布農林省告示第
三二七号立竹木等対価算定方法の趣旨からも両者別扱の態度がうかがえるのであ
る。農地とは耕作の目的に供せられる土地(自創法第二条)であることは疑いな
く、この耕作の目的からも桑樹のようなものは必要物とはみられず、この土地の構
成部分として地上の有価物を包含すると考えることは法の精神に反する、通常の売
買でたまたま地上物件が土地とともに移動するとしても、それは旧所有者が地上物
の権利を放棄したかもしくは各個別に価格を評価してその合算額をもつて対価とし
たことの結果にほかならない。
 (三)、 本件桑樹は農地と一体をなすものではない、自創法にいわゆる立木
を、立木ニ関スル法律にいう立木又は同法にいう立木の対象となり得べき樹木の集
団並びに成園を構成する樹木で土地と別個に評価する慣習のあるものをさすとし、
竹木とはこれ以外の樹木をいうとするのは相当でない、本件のような樹令数十年を
経た大木を含む桑樹をたんに登記がないとか明認方法がしてないとかの故で立木で
ないとするのは誤りである、もともと自創法のような非常の措置をもつて国民の所
有財産を強制買上するものについては、できるだけ厳格な法の解釈及び適用をし、
その目的達成の可能な限り国民の犠牲を最少限度にとどめなければならない、そう
とすれば立木等の意義も広く解すべきであり、本件のようになんぴとも立木として
疑わない桑樹を立木としないで土地と一体となすとするのは当を得ない、仮りに立
木てなく竹木であるとしても土地と一体をなすものではない。
 (四)、 本件桑樹は相当価値あるものである、本件桑樹は樹令数十年にも及ぶ
いわゆる喬木仕立の大木であつて、これを伐採したんに薪材としても相当の価格を
有するものであり、いわんやこれを年々桑葉を生む生立木として評価するときは桑
葉だけでも昭和二十二年十二月本件農地解放処分当時においてすら一駄(二十四
貫)少くとも金二百円以上の価格を有し桑樹一本平均二駄とみられるから金四百円
以上の価格を有していたものといわなければならない、これを買収価格一反歩約二
百円に比較すれば桑樹一本の価格の方が畑一反歩の価格よりもはるかに高く、しか
もこの種桑樹は一反歩に少くとも数本多とは数十本総計数千本に及んで生立してい
るのである、このような高価物の存在する現実を無視して買収処分により当然にこ
れら桑樹の所有権が国に移り、その当然の結果として被控訴人らに移つたものであ
るとすれば、これば全く控訴人の財産権を没収するにひとしく、憲法に違反する無
効処分といわなければならない。
 (五)、 今度の農地解放にあたり群馬県農地部が管下各町村農地関係者に配布
した「農地等の買収及売渡事務処理要領」(昭和二十二年二月一日通牒、同年三月
二十日訂正、甲第五号証)によれば、その「第四、買収計画の作製」中の「(八)
対価の決定」という項目中(ロ)の第三項中には「毛上耕作物の評価は施行令第二
十五条の基準によること」とあり、自作農創設特別措置法施行令第二十五条によれ
ば、土地の価格と立竹木の価格の合計額を超えてはならない趣旨を規定している。
従つてこれによれば群馬県当局は本件のように農地上に立竹木の存在する場合は、
農地以外の土地に立竹木のある場合と同様に取り扱うべきことを指示しているので
あつて、本件のような桑樹には相当の対価を認めるべきことが明らかであり、桑樹
が土地と一体をなすから無償でその所有も国に移つたとするのは右指導基準にも反
することになると述べ、
 被控訴人ら代理人は
 (一)、 本件桑樹は全部土地所有者が植付けたとの事実は争う、本件土地の賃
貸借の目的から桑樹が除外されているとの事実は否認する、ただ地主が賃貸地上の
桑樹から生ずる桑葉を勝手に収穫していたに過ぎない。
 (二)、 本件桑樹は農地の構成部分である、自創法において地上に竹木のある
場合その価格を合算することとしていることは、竹木を土地と別個の処分の対象と
した趣旨ではない。
 (三)、 本件桑樹は農地と一休をなすものである、この点に関する控訴人の所
論には反対である。
 (四)、 本件桑樹が相当の価値あるものとの事実は争う。本件の桑樹はその土
地上に存立することにおいては決して価値あるものではない、仮りに薪材としてい
くばくかの価値ありとするも、それば桑樹がそのまま存立することを前提とする本
件の場合に関係ない、控訴人は桑樹もしくは桑葉が高価であることをいうが、桑葉
の価値がないか、少いときはその主張は理由のないこととなる、すでに戦時中養蚕
は極度に圧縮され桑樹の存在は厄介視された時代があり、この時は桑樹は無価値で
あつた、控訴人の所論はいつたん無価値に帰したものが復活したということにな
り、とうてい賛成できない。
 (五)、 群馬県農地部が控訴人主張のような事務処理要領を配布したことは認
めるが、買収価格の変更を求めるものでない本件には関係ない(むしろ控訴人がこ
れを主張すること自体本件がたんなる価格の争いであることを自認するものという
べく、それならば控訴人は全く訴の方法をあやまつたというのである)、立木法に
よる登記又は明認方法の施されていない立木が土地と一体をなすものであることは
大審院判例の示すところである、しかも本件の桑樹は生産手段としての土地の特殊
な附加的構成要素であり、桑樹はかえつて土地の生産価値を低下させている事実を
無視し得ないと述べた。
 立証として控訴代理人は甲第五号証を提出し、当審における証人A、B、C、
D、E、F、G、H、I、Jの各証言、当審における検証の結果及び当審における
鑑定人K鑑定の結果を援用し、被控訴人ら代理人は当審における鑑定人K鑑定の結
果を援用し、甲第五号証の成立を認めると述べた。
 以上のほか当事者双方及び参加人の事実上及び法律上の主張、証拠の提出援用認
否はすべて原判決事実らんに記載されたとおりであるからここにこれを引用する。
         理    由
 被控訴人らは本案前の抗弁として本件は自創法の農地買収及び売渡処分を争うも
のであるから自創注に規定された手続により処分庁を相手方として争訟すべきであ
り、本件の訴は不適法であると主張するけれども、控訴人はなんら右買収売渡処分
の取消変更を主張するものでなく、買収売渡にかかる本件農地の上に生立する桑樹
が控訴人の所有にあることを主張するに過ぎないから、この点に関する被控訴人ら
の抗弁は理由がない。
 よつて本案について判断する。原判決添付目録記載の土地がもと控訴人の所有に
属したが自創法の規定により国に買収され、続いて被控訴人らに売渡され、被控訴
人らがそれぞれ右土地所有権を取得したことは当事者間に争ない。
 控訴人は右各土地の上には控訴人の所有当時から前記目録記載のようにそれぞれ
桑樹が存在するところ、右桑樹はその農地の買収売渡にかかわらず依然として控訴
人の所有に属するものであるのに、被控訴人らは農地の売渡を受けた後昭和二十三
年以来今日まで右桑樹から生ずる桑葉をなんらの権原なく収穫して利益を受けてい
るのは控訴人の損失において不当に利得するものであると主張する。原審における
検証の結果、同じく鑑定人L及びM鑑定の結果並びに原審における被控訴人N本人
尋問の結果をあわせると被控訴人N所有の本件土地の上には控訴人主張のような桑
樹が生立せず従つて桑葉の収穫もなかつたことが認められるから被控訴人Nに対す
る控訴人の本訴請求は他の諸点について審究するまでもなく理由がない。被控訴人
Nを除くその余の被控訴人らの所有主地上に控訴人主張のような桑樹のあること及
び同被控訴人らが昭和二十三年以来桑葉を採取していることは右被控訴人らの認め
るところである。被控訴人ら及び補助参加人は、右各土地上にある桑樹の所有権は
自創法の規定による買収及び売渡処分により土地とともに控訴人から国え、国から
被控訴人らえ、それぞれ適法かつ有効に移つたものであり、控訴人は土地とともに
桑樹の所有権を失つたものであると主張するのである。
 思うに、自創法は同法所定の目的を達成するため農地その他所定の物件等を政府
において強制的に買収するもので、その手続の一切は同法及び附属法令に規定する
ところにもとずいてなされるべきことはいうまでもないが、そこに規定のないもの
で、しかも同法の目的に反しない限りは、私有財産に関する一般法たる民法その他
の私法の適用を排除するものでないことは当然のことといわなければならない。民
法は土地及びその定著物を不動産とする。地上に生立する樹木は一時的に仮植えさ
れたものでない限り、土地の定著物であつて、土地とともに不動産としてその所有
権の客体となる。すなわちこのような樹木の生立する土地という一個の不動産の上
に一個の権利が成立する。ただ立木ニ関スル法律にいう立木はその地盤である土地
の権利をはなれて別個の権利の客体をなすものであり、また立木法の適用を受けな
い樹木の集団もしくは個々の樹木でも取引にあたつて特に土地から独立させいわゆ
る明認方法を講ずるときは、その時以後独立の不動産として地盤の所有権をはなれ
た別個の所有権の客体となり得べきものである。従つてこのような樹木については
土地の権利の処分は常にその樹木の処分を随伴するものではなく、それぞれ別個の
権利変動をするものというべきである。しかしこのような関係にない樹木はその生
立する土地をはなれては存立し得す反対の慣習ないし特約もしくは他の法令の制限
のない限りは、原則としてその生立する土地所有権の移転とその運命をともにする
ものといわなければならない。このことはその権利移転が売買等の有償行為にもと
ずくものである場合にその樹木そのものの対価が支払われるべきかがうかとは別個
の問題である。ただ事実として通常はかかる樹木のある土地全体としてその対価が
支払われるであろうから、樹木を除いた土地だけの対価が支払われて樹木の対価が
計上されいてないということは、場合によつて土地と樹木とを別々に処分したこと
の証とするに足りることがあり得るというに過ぎない。
 しからば自創法は買収の対象たるべき土地の上に樹木の存在する場合をいかに扱
つているか。自創法(本件の買収及び売渡のなされた時期は昭和二十二年末以前で
あることは本件口頭弁論の全趣旨から明らかであるから、当時適用された法律は昭
和二十一年十月二十一日公布法律第四三号、すなわち自創法の原規定であることは
おのずから明らかである。附属法令もこの時期のものであること同様である)第三
十条は未墾地買収にあたりその土地の上にある立木を買収し得べきことを定め、第
一次改正(昭和二十二年十二月二十六日公布法律第二四一号)により附加された同
法第四十条の二は牧野の上に存する立木を買収し得べきことを定め、また自創法の
実質上の改正法律である農地法(昭和二十七年七月十五日公布法律第二二九号)は
その第四十四条において未墾地につき同様の場合にその地上にある立木を買収し得
べき旨を定めている。一方自創法施行令第二十五条(昭和二十五年十月二十一日政
令第三一六号により削除されるまでのもの)は自創法第三十条第三十一条の場合未
墾地の上に竹木のある場合は土地の価額と竹木の価額とを合算したものをもつて当
該未墾地の買収価格とすることを規定し、自創法及び農地調整法の適用を受けるべ
き土地の譲渡に関する政令は同令第二条第五条及び同政令施行令第十四条第四項に
より農地、牧野、木墾地等の対価の額は当該土地に生立する竹木があるときは当該
土地の価額と竹木の価額を合算したものとすると規定し、農地法施行令第二条は農
地法による農地又は採草放牧地につき当該土地に生立する竹木がある場合は土地の
価額と竹木価額との合計額とすることを規定している。これらを通覧して考えれ
ば、右法令において未墾地又は牧野の上に存在する立木については、その地盤たる
土地の買収処分のほかに特にこれを買収処分の対象としていることは明らかであ
り、このことはかかる立木はその存立する土地の買収によつては当然にこれに買収
の効力が及ばないことを前提としているもの<要旨第一>と解すべきであつて、これ
によつて考えれば、これらの法律にいう立木とは、さきに一般の原則について説
したように、立木法により特に別個の権利の客体となつた樹木の集団
又は特に明認方法を施して別個の権利の客体となつてる樹木の集団もしくは個々の
樹木をさすものといわなければならない。このことは自創法及び農地法か買収処分
の対象としている一切のものは土地、家屋、工作物等それ自体独立して権利の客体
となり得るものについて定めていることからも明らかである。かく考えれば前記政
令において農地、未墾地、採草放牧地等の地上にある竹木とはこのような意味にお
ける立木を除いたその余の樹木をさすものと解すべきことはお<要旨第二>のずから
明らかである。そしてこれら竹本については、法はその生立する土地の買収処分に
ついて、竹木をその土地の買収処分から除外すべきものとはなんら規定
するところなく、かえつてかかる竹木は前記一般の原則に従いその生立する土地の
買収処分に包含されてそれとともに権利の移転を生ずることを前提としているもの
と解さなければならない。しかもかかる竹木については、買収処分が自作農の創設
維持のため国において法定の土地につき所有者の意思にかかわりなく強制的にこれ
を買上げるものである制度の本質にてらしてみると、国において特に買収処分の対
象から除外しない限り、所有者の任意の留保によつては、別個の措置を採り得べか
らざるものと解さなければならない。あるいは自創法にいう農地とは耕作の目的に
供される土地をいうとし、かかる農地上の樹木の生立する直下の地盤は耕作の目的
に供されるものでないから農地買収処分が当然には地上樹本に及ばぬとするのは
(控訴人はかく主張する)、一見理由あるもののようにみえる、、しかし農地に生
立する樹木ある場合樹木が土地の耕作から無関係であるとするのは早計で、後に本
件についてみるようにかかる樹木は地上の耕作の効果を享受するとともにむしろ土
地の利用に悪影響を及ぼすのを通例とするのであるから、かかる所論は採用に値い
しおい。
 以上法令の検討によつて明らかであるように、当時適用のあつた自創法及びその
後の改正法並びにそれらの附属政令は農地そのものの上に前記のような意味におけ
る立木の存する場合については全く規定を欠いているものであり。むしろそのこと
を予定してはいないのである。しかしもし仮りにたまたま農地上にかかる意味の立
木が存在したとすればその地盤たる農地の買収処分は当然には地上立木に及ばない
とすることはこれを肯認しなければならず、かかる意味の立木てない竹木につい
で、常に地盤の権利と別個に権利の客体となるべき慣習があれば、これまたたんに
土地のみの買収が樹木に当然に及ぶとすることは疑問としなければならないであろ
う。
 次に農地の上に右にいう立木以外の樹木すなわち竹木が存する場合につき、かか
る樹木ある農地の買収価格の算定において、当時適用のあつた自創法及び附属政令
は樹木に関してはなんらの規定を置かなかつたのに、未墾地についてはこれを規定
し、またその後の立法たる前記譲渡政令及び農地法施行令は未墾地等のほか農地に
ついても樹木の価額を合算するものとしていること前記のとおりである。しかし当
時の立法の立法技術上の良否はともあれ、このことから直ちに当時の法令は農地上
の樹木についてはなんらの対価をも支払うことなくして土地とともに買収すること
としたかどうかはさらに検討しなければならない。けだし土地に生立する樹木が土
地とともに一体をなすとしても、いやしくも当該樹木に価値があるならばこれに対
するなんらの対価を支払うことなくその所有権を奪うことは憲法第二十九条に違反
するからである。思うに農地の上の樹木はそれが存立するためにかえつて農地の効
用を害する場合のあることはみやすいところであり、樹木があることによつてそれ
がない場合に比し必ず樹木の価額だけ農地の価額か高くなるとすべき理由のないこ
と(このことは未墾地の上の樹木の場合と同一に論ずることを得ない)を考えれ
ば、当時適用のあつた自創法及び附属政令は農地の買収価格はかかる樹木の生立す
る状態において評価して定めるべきものとしているものと解すべきであつて、これ
によつて農地の評価の中に樹木の価額は包含されているものというべくかかる評価
のなされる限り、なんら憲法違反の問題を生ずることはないのである。
 ひるがえつて本件の場合についてみる。原審及び当審における検証の結果によれ
ば、本件土地上の桑樹はおおむね樹令数十年を経た大木で農地の周囲に点在しその
数必ずしも少しとしないが、これについて控訴人が立木法に定める登記をしたこと
は控訴人においてなんら主張立証しないのみでなく、これを認めるべき資料もない
からこのような登記はなかつたものと認めるべきものである。また本件土地はすべ
て従前控訴人の所有でありこれを大部分の被控訴人らに賃貸していたが、桑樹につ
いては二三遠隔の地にあるものを除きすべて控訴人が自らその桑葉を取得していた
ことは本件口頭弁論の全趣旨からこれをうかがい得るところであり、甲第一号証の
一ないし五、同第二号証の一ないし六の各土地小作賃貸借証書には附記事項として
地上の桑樹は賃貸借の目的外とすべき旨の記載があるけれども、右甲号各証の附記
事項の部分の成立に関する原審における原告本人尋問の結果は直ちに信用できない
のみでなく、後記事情にてらせばこれをもつて控訴人が土地の賃貸にあたり桑樹を
特に除外したものと認めることはできない。かえつて原審証人Oの証言、原審及び
当審における検証の結果並びに当審における鑑定人K鑑定の結果をあわせて考えれ
ば、元来桑樹は自然に生立するものでなく、かつ自然に放置すれば雑草にまけてそ
の生産力を速かに失うものであつて、本件土地においても地上作物の耕作は桑樹の
根元に及び、桑樹はこの耕転肥培によつてその生産力を維持している関係にあり、
結局<要旨第三>土地の耕作は地上の普通作物のみならず桑樹をも対象とし、桑樹は
一種の永年性作物というべく、しかも地主が従来小作料として若干の金
員を徴するほか桑樹の生産する桑葉を収穫するのは、この土地の小作関係が一種の
分益小作制度の性質をもちその物納小作料としてこれを取得するという関係にある
ことが明らかである。従つて従前地主たる控訴人か土地の賃貸にかかわらず桑葉を
収穫したことは、桑樹を除外して土地を賃貸したためではなく、従つてまた土地と
地上の桑樹とについて別個の使用収益をし、それによつて別個の権利の客体とした
ものということはできないから、これあるがため地上の桑樹についていわゆる明認
方法を施したものということはできない。その他にかかる方法を施したことを認め
るべきものはない。しからば本件の桑樹は前段説明のような立木に該当するものと
いうことができず、前記法令にいう竹木と解するほかはない。しかも買収にあたつ
て国が特に本件桑樹を除外する旨のかくべつの措置を講じたことはこれを認めるべ
き資料がなく、また本件において拠るべき反対の慣習もこれを認めるべき的確な証
拠がない。もつとも原審における証人P、同Qの各証言によれば利根郡c村及びe
村地方において桑樹のある農地の売買にあたつて土地と別個に地上桑樹の価額を評
価加算してその代金とする事例があることかうかがわれ、また当審における証人
A、同B、同C、同D、同E、同G、同Iの各証言によればa村地方において桑樹
のある農地を東京電力株式会社に売渡した際桑樹の価額を算定加算の上その対価が
支払われ、しかも売渡後旧地主が会社の承諾を得て地上桑樹を伐採取得したことが
認められるが、これをもつて直ちに農地の売買にあたり特段の意思表示なき限り土
地と地上の樹木とが別個に権利の対象となるとの慣習あることを認めしめるもので
はない。
 しからば右買収にあたつて本件桑樹の対価は支払われたものとうべきであるか。
この点につき前記証人Oの証言及び鑑定人Kの鑑定の結果、原審及び当審検証の結
果並びに前認定の事実に公知の事実たるa村及びb村地方の地理的位置とをあわせ
考えれば、本件各土地の存在するa村、b村地方は日光の裏山にあたる山村であつ
て、これらの農地上にある桑樹は、一方においてこれら高冷地帯にあつてその下の
一般作物を冷たい気流の動揺に対し被蔽する役割をするとともに傾斜が急で砂礫の
多い畑では桑はその根によつて土地の崩壊を防ぐ効果をもち、かつ年々養蚕に不可
欠な桑葉の収穫をもたらす(桑の反当収入はその畑の全租収入の一一%ないし一五
%又は八%ないし一二%概して一割であるとされる)というプラスの面を有プる
が、他方においてその下作たる一般作物の収穫を著しく減少せしめ(普通で夏作は
七〇%、冬作は八〇%の収穫しか得られない。一部の証人によれば桑のため畑作は
三割の減収という)かつ耕転を困難ならしめるとともに畑や周囲の普通作物に対し
日光や気水をさえきり病虫害を招きやすいというマイナスの面をも有し、この両面
を比較してみると桑樹の生立はむしろこの地方における土地利用にマイナスとなつ
ていたものであり、昭和二十二年十二月頃においてはそのため畑の収益価額はむし
ろ減少していたものと理解すべく、財産税の課税において果樹園と桑園が形態的に
似ているにかかわらず一は課税され一はその目的とならなかつたのもこのためであ
<要旨第四>ることが認められる。そして農地の買収価格の算定にあたつてその基準
として採用された農地の賃貸価格が本件土地の以上の如き現実に即して
定められたものであることを疑うべきなんらの資料もないから(控訴人もこの賃貸
価格が不当なものであることを主張するものではない)、これに法定の倍率の最高
を乗じて得たその最高価格の対価の支払われたこと弁論の全趣旨から明らかである
本件においては、この支払われた価格は、桑樹の生立することを計算に入れて、
(もつとも、それは価格評定に消極的作用をおよぼす事実としてではあるが)評定
した価格というべきであり、したがつて桑樹の対価は右価格中に包含されていたこ
とに帰するのであるから、それ自体価値ある桑樹の対価が支払われることなくして
買収されたものとすることはできない。原審証人P、同R、同Qの各証言原審にお
ける原告本人尋問の結果によれば農地解放にあたり利根郡c村、d村、e村各地方
ないし本件土地の地方においても法定の買収対価のほかに国から売渡を受ける小作
人と旧地主との間で桑樹についてあらためて対価を定めてこれを授受したことのあ
ることがうかがわれるが、これ当事者任意の行為であつて、もとより自創法の関す
ることでなく、かかる事例あるの故をもつてそのことなかりし買収処分においては
桑樹の対価の支払がなかつたものと解すべきでないことはもちろんである。
 控訴人は本件の農地買収にあたり群馬県当局が農地の上に樹木ある場合は自創法
施行令第二十五条に準じ土地の価額と樹木の価額とを合算すべき旨指導したと主張
し、この事実は被控訴人らの認めるところであるが、本件において生立する桑樹は
むしろ農地の価額を減少せしめるものとして働くものであること前記のとおりであ
るから、本件桑樹のある農地の買収について前記のような価格算定をしたことをも
つて違法とすべき理由はないのである。
 しからば本件農地上の樹木たる桑樹はすべて自創法による買収処分によつてその
農地とともに国の所有に移り、その反面控訴人はこれが所有権を失つたものという
べきことは明らかである。従つてこれらの桑樹が控訴人の所有であることを前提と
する控訴人の本訴請求は失当として棄却すべきものである。
 よつてこれと同旨の原判決は相当であるから本件控訴は理由のないものとして棄
却すべく、訴訟費用及び参加費用の負担につき民事訴訟法第九十五条第八十九条第
九十四条を適用して、主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 藤江忠二郎 判事 原宸 判事 浅沼武)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛