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平成14年5月23日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 
平成12年(ワ)第371号 退職金請求事件
(口頭弁論終結の日 平成14年2月7日)
          判決
          主文
1 被告は,原告に対し,4139万7200円及びこれに対する平成12年7月
26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は5分し,その1を原告,その4を被告の各負担とする。
4 この判決は第1項に限り仮に執行することができる。
          事実及び理由
第1 請求
1 被告は,原告に対し,5381万6360円及びこれに対する平成12年7月
26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 1項につき仮執行宣言
第2 事案の概要
   本件は,原告が長年被告に勤務したところ,先般退職したので,被告労働協
約所定の退職金を請求したのに対し,被告は,①原告は被告の役員であり,一般の
従業員を対象とする退職金の支給は出来ない,②仮に,一般の従業員と同様の退職
金計算が可能としても,退職金規定部分が改定されており,同改定などによれば原
告主張の退職金は到底認められないなどと主張した事案である。
 1 争いのな事実及び証拠上容易に認められる事実
 (1) 被告は,石灰石,苦灰石の採掘,販売などを業として昭和22年11月
14日に設立された会社である(乙1)。
 (2) 入社時と退社日
ア 原告は,昭和36年3月日本大学工学部を卒業し,古河電気工業株式会社勤務
を経て,昭和43年1月23日被告に入社し,平成12年3月14日退社した(乙
4,5)。
   イ 原告は,被告に入社してから約1か月間,a県b町所在の第一工場で総務
係員として勤務したが,昭和43年2月26日から,c県d郡e村f番地所在のg工場に
単身赴任し,同年7月にはh市i町に住居を構え,同工場に出勤していた(乙4)。
   ウ 原告は,昭和43年2月26日g工場専従,昭和44年5月から工場次長
として勤務し,昭和47年7月1日被告取締役,昭和58年7月1日常務取締役,
平成5年7月1日専務取締役にそれぞれ就任した(乙4)。
 (3) 退職金規定等
   ア 被告労働協約(以下「本件(労働)協約」「(本件)協約」という。甲
1)44条では,停年は満60歳と定められている。
   イ これまでの被告役員の退職金支給に当たっては,協約の組合員退職金規
定に準じて支給することが慣行になっていた。
   ウ 被告は経営困難のため現在再建中であり,平成12年1月分から従業員
の給与の一部カットが行われている。
 2 原告の主張
 (1) 平成元年12月g工場は売却されたが,原告は,前記のとおり,取締役に
就任後も,同売却までの間,現場で,機械設備の管理,営業活動等に従事してき
た。
(2) 被告の協約97条(2)では,退職金支給は,停年に達したとき,但
し,満20年以上に達したときは,98条の規定の130%と定められている(甲
1,2)。
 (3) 被告では,平成8年5月1日役員退職・功労金規定が定められ,役員の
退職,功労金額については停年扱いとし,退職時の役職により,専務取締役には3
0%加算して支給されることとなっている(甲3)。
(4) 原告は,昭和43年1月1日被告に入社し,平成12年3月14日専務
取締役で退職したが(前記),退職金は,本件協約,役員退職功労金規定に基づ
き,以下のとおり,5381万6360円となる(甲1,2)。
    勤務期間 32年3か月
     33年(1116.7日)ー32年(1080.3日)=36.4日
     36.4日×3/12=9.1日
     従って,1089.4日×95万円(月額給与)/25日=4139.
72万円
     専務取締役加算  3割(1241万9160円)
     請求金額 5381万6360円
 (5) 原告の退職金の算定方法について
   ア 原告の役職は名目的なものであり,その実態は,工場の機械設備の管理
及び生産管理を担当する従業員に過ぎず,協約4条(1)には該当せず,組合員と
して協約の適用を受ける。
   イ 仮に,原告が非組合員であるとしても,これまでの被告役員の退職に当
たっては,協約の組合員の退職金規定に準じて支給することが慣行となっていた
(被告も自認)ところ,同規定の適用に当たって問題となる点を検討する。
   (ア) 原告の退職が自己都合退職として協約97条(6)に該当するか。
     A 原告は,定年を迎えた平成10年1月,被告に退職を申し出たが,
原告が工場の機械設備に精通しており,他に原告に替わるべき者がいなかったこと
から,被告に強く慰留されたため,原告は,短期間に限ることや毎週水曜日を休み
として貰うことを条件に,勤務を継続した。その後,原告は,平成12年3月14
日まで出勤し,翌15日に退職届を郵送で提出したが,今度は慰留されずに受理さ
れた。
       すなわち,原告は一方的に自己都合で退職したものではない。
     B 原告は,平成12年3月15日の時点で62歳であり,協約44条
に定める定年に達しており,協約97条(2)に該当する。したがって,原告は何
時退職しても同条(6)の自己都合退職には該当しない(従前の(退職)取締役
も,本人の希望により退職しているが,何れも協約97条(6)の適用を受けてい
ない。)。
       仮に,被告の主張が認められるならば,被告は定年に達した役員の
辞任を拒否することにより,退職金の金額を減額することが可能となり,著しく不
当な結果を招く。
   (イ) 原告の退職時の基本給はいくらか
     A 原告の平成12年1月,同年2月,同年3月の給与支払明細書(甲
4ないし6)には,基本給として86万円と明記されている。
       もっとも,平成12年1月から支払金額が一部減額されているが,
これは,再建期間限定の減額であって,退職金算定の基準となる基本給や役職手当
の変更ではない(同明細書の記載から明らか)。
     B 役員の退職金の算定に当たっては,基本給に役職手当も含めるのが
被告の慣行である(甲7)。
       したがって,原告の退職金算定基準となる基本給金額は,本来の基
本給に役職手当を加算した95万円である。
   (ウ) 退職金増加規定(甲2)は廃止されたか
  被告は,上記規定は平成12年1月25日に廃止されたと主張する
が,被告の労働組合が同規定の廃止を決定するには,組合大会,または,組合員投
票等による特別の授権が必要と考えられるが,当該手続が取られたことはない。
       しかも,同規定の廃止は,廃止を決定する時点で,既に退職金支払
請求権を有する組合員の権利を処分することになるので,当該組合員の個別的授権
を必要とする。しかるに,被告の労働組合がそのような授権を受けた事実はない。
   (エ) 功労金規定(甲3)は存在したか
       被告は,当該規定は,株主総会手続等を経ておらず,効力がないと
主張する。しかし,常務取締役Eは,平成8年12月に退職した際,同功労金規定
どおり20%加算の退職金を受け取っており,また,常務取締役Bも,平成9年4
月退職した際,20%には達しないが,一定額の功労金が加算された退職金を受け
取っている。したがって,同功労金規定は,有効に存在している。
 3 被告の主張
 (1) 原告の主張は争う。原告は,g工場のトップとして,管理職一切をしてい
たものであり,工場次長就任は昭和44年5月である。
 (2) 退職金増加協定(昭和54年7月17日付。甲2)は,平成12年1月
25日に廃止されている(乙2。全組合員対象の説明がなされ,了承のうえ廃止さ
れている。)。また,原告は,専務取締役であり,労働協約(甲1)4条(1)
(会社の利益代表者とみなすべきもの)に該当し,本件労働協約は原告には適用が
ない。
 (3) 原告主張の役員退職・功労金規定(平成8年5月1日制定。甲3)は,
原告の実兄Aが,被告の代表取締役を退任直前に,案として原告に作成させたもの
であるが,株主総会決議等の手続が取られていない。Bは,同規定(書面)の制定
後に常務取締役を退任したが,同規定は適用されていない。
 (4) 原告の退職時の報酬月額は,47万5000円である。
 (5) 被告役員の退職功労金扱いと原告の退職功労金
     退職功労金については,定款(乙1)に定めが無く,退職金規定(甲
3)も前記のとおりであり,これまでの役員退職に当たっては,労働協約の組合員
退職規定に準じて支給されることが慣行となっていた。したがって,原告の退職
は,協約(甲1)97条(6)の自己都合によるものであって,98条による計算
の50%支給になる。また,役員には定年制度はない。
     原告の退職時の基本給は,47万5000円であるから,日額は,1万
9000円であり,勤務期間計算は,32年3か月であるから,協約98条の表に
よって計算すると,次のようになる。
     1万9000円×838日÷2(自己都合退職)=796万1000円
 (6) 原告退職功労金の支払について
     被告は,金融機関の監督下に,再建計画を実施中であり,原告退職金の
支払も一括は困難であり,しかも,被告の現状については,原告にも多大な経営責
任があることも考慮すれば,長期の分割支払とされるべきである。
 4 争点
   原告主張の退職金の額は幾らとすべきか。
第3 当裁判所の判断
   証拠(甲1ないし13,乙1ないし7,原告,被告代表者A)に基づき,以
下のとおり認定,判断する。
 1 原告に対する本件協約(甲1)適用の肯否(甲13,乙4,5,原告)
(1) 原告は,昭和47年7月1日被告取締役,昭和58年7月1日常務取締
役,平成5年7月1日専務取締役にそれぞれ就任し,平成12年3月14日に退任
(職)した。
(2) 原告は,平成12年3月29日商業登記簿上取締役辞任登記がなされた。
(3) 原告は,被告に入社以降,同期の職員及び現場従業員よりも高額の給与を
支給され,平成元年7月以降,役員賞与を支給されており,取締役就任時以来,被
告の経営者会議に出席していた。
(4) 以上の事実を総合すると,原告は,昭和47年7月1日から平成12年3
月14日退任(職)するまで原告会社の取締役に就任しており,その役職が名目的
であったと認めるに足りる証拠はなく,本件協約(甲1)4条(1)の「会社の利
益代表と看做すべきもの」に該当する。
(5) よって,原告には本件協約が適用されない。
2 自己都合退職(協約97条(6))適用の肯否(甲7,8)
(1) 原告は,平成10年1月,被告に退職を申し出たが,原告が工場の機械設
備に精通しており,他に原告に替わるべき者がいなかったことから,被告に強く慰
留され,結局,短期間に限ることや毎週水曜日を休みとして貰うことを条件に,勤
務を継続した。その後,原告は,平成12年3月14日まで出勤し,翌15日に退
職届を郵送で提出し,退職届は受理された。
(2) 原告は,平成12年3月15日の時点で62歳であり,本件協約44条に
定める停年の年齢満60歳に達していた。
    原告には,本件協約が直接適用されないが,退職金支払については協約の
組合員退職金規定に準じて支給されることが慣行になっており,本件協約(甲1,
2)97条(2)に準じた扱いを受けるものである。したがって,原告が満60歳
に達した後は何時退任であっても自己都合退職にはならない。
(3) 原告退任(職)以前にも他の取締役においてその希望により退任(職)し
ているが,いずれも退職金は本件協約に則り支給されており半減していない。
(4) 被告代表者尋問の結果によると,被告取締役Bは任期中退任しているが,
被告は同人を自己都合退職の扱いとしていない。
(5) 以上の事実を総合すると原告は,自己都合退職に当たらず,仮に当たると
しても本件協約97条(2)に該当し,同条(6)の規定は適用されない。
 3 退職金増加規定(協約97条(2)。甲1,2)適用の肯否
(1) 被告代表者は,被告の役員には停年制はなく,任期年の再任制があるので
あり,また,満60歳に到達したとき停年として退職するという扱いもしておら
ず,任期切れと満60歳とは必ずしも一致するものではなく,任期途中の退職であ
っても60歳とは一致しないと供述する。しかし,同供述は後記認定に照らし採用
しない。
 前記争いのない事実によると,原告は,昭和43年1月23日被告に入社し,平
成12年3月14日に退社するまで満20年以上(約32年間)勤続し,昭和47
年7月1日から退任まで満20年以上(約28年間)被告の役員に就任していたこ
とが認められる。そして,被告役員の退職金支給に当たっては,協約の組合員の退
職金規定に準じて支給することが慣行になっていたものであり(前記),満20年
以上勤続した者に退職金を増額する規定をあえて適用しない理由,必要性はない。
(2) 以上の検討によれば,原告に本件協約(甲1,2)第97条(2)但書の
規定(退職金増加規定)が適用される。
 4 退職金増加規定(協約97条(2)但書)廃止の肯否(乙2,3)
(1) 本件協約を変更・廃止するためには,会社・組合が変更の合意を締結し,
書面で双方確認しなければならない(本件協約(甲1)115条2項)。そして,
会社・組合双方の合意が有効に成立するためには,当該合意が協約締結権限を有す
る者によって締結されることが必要である。具体的には,会社側は,締結権者が当
該事項について処分権限を有しているか,特別の授権を与えられていることが必要
であり,組合側は,規約その他により交渉過程で必要とされる組合大会の決議等協
約締結権限の授権手続を経ていることが必要である。
(2) 被告代表者は,被告役員会に対して会社の実情を報告し,平成12年1月
分より役員報酬を半額減額し,組合員の給与を10パーセントカットすること,本
件協約97条(2)但書の規定(退職金増加規定)を廃止する了承を得た。
(3) 被告は,平成12年1月19日,被告労働組合に対して団体交渉の申し入
れをした。
(4) 被告は,同月25日,職員に対して上記(2)と同じく説明をし,職員か
ら上記(2)と同様の了承を得た。
(5) 被告は,同日,組合役員に対しても上記(2)と同じく説明をし,(2)
と同様の了承を得た。
(6) 被告は,同日,出社している全員の従業員に対しても上記(2)と同じく
説明をし,組合員全員から(2)と同様の了承を得た。
(7) 以上の事実を総合すると,被告側は,役員会で本件協約97条(2)但書
の規定(退職金増加規定)を廃止する了承を得ており,被告代表者(締結権者)は
退職金増加規定廃止について処分権限を有しており,また,被告労働組合側は,組
合員全員が退職金増加規定廃止を了承しているのであるから,組合大会の決議等を
経なくても協約締結権限の授権手続があったと認められる。
(8) 以上の検討によれば,本件協約97条(2)但書の規定(退職金増加規
定)が廃止されたことが認められ,上記認定を覆すに足りる証拠はない。
5 役員・功労金規定(甲3,以下「本件役員規定」という。)適用の肯否(甲
7,乙1,3,被告代表者)
(1) 役員退職・功労金は,商法269条の「報酬」に当たるので,役員退職・
功労金支給を適法化するには,役員退職・功労金規定を定款に定めるか株主総会決
議によって定めることが必要である。 
(2) 被告の定款には,役員退職・功労金に関する規定が存在しない。
(3) 被告の株主総会において本件役員退職・功労金規定が決議された事実はな
い。
(4) 以上の事実を総合すると,本件役員退職・功労金規定は有効に成立してい
ないことが認められる。
(5) 次に,成立に争いのない甲7によると,過去に本件規定に基づいて被告役
員の退職金が支給されたケースが認められるが,本件規定は定款に定めがなく株主
総会決議を経ていない。
(6) さらに,常務取締役Bは,役員退職・功労金規定(甲3)の作成日(平成
8年5月1日)後に退職しているが,その際,同規定に従った退職功労金が支給さ
れてはいない(甲7)。
(7) 以上の検討によれば,上記規定は無効であり,原告には同規定は適用され
ない。
6 原告の退職金(甲2,4ないし7,乙1,2,7)
(1) 退職金算定の基礎になる支給日数について
    団体交渉確認書(乙2)は平成12年1月25日に成立したが,これによ
ると,20年以上勤続した組合員は退職金が130パーセント増しの規定があった
がこれを今回廃止し,100パーセントにすることとなったところ,退職金算定の
基礎になる支給日数に関する規定はない。
被告の定款には,被告役員の退職金算定の基礎になる支給日数に関する定めがな
く,被告株主総会において被告役員の退職金算定の基礎になる支給日数に関する規
定が定められたことはない。
(2) 以上の事実を総合すると,団体交渉確認書においては,昭和54年4月1
7日に締結された協定書(甲2)97条2項但書(退職金割増制度)の部分のみが
廃止されたのであり,同協定書の支給日数に関する98条の部分は依然有効であ
り,同協定の支給日数が基準となる。
(3) 原告の被告における勤務期間は32年3か月であり,本件協定によると原
告の支給日数は1089.4日である(計算は以下のとおり)。
1116.7日(33年)-1080.3日(32年)=36.4日
36.4日×3÷12=9.1日
1080.3+9.1=1089.4日
(4) よって,退職金算定の基礎になる支給日数は1089.4日である。
(5) 退職金算定の基礎になる原告退職時の基本日額について
原告の退任以前(平成9年4月30日)に退任した常務取締役B及び原告の退任以
後(平成12年6月30日)に退任した取締役Cの退職金算定の基礎となる基本月
額は,月額給与を25日で割って計算された。
常務取締役Bの退職金算定の基礎になる基本日額は基本給(33万5000円)に
役職手当(8万円)を足した金額である。
取締役Cの退職金算定の基礎になる基本月は基本給(22万7000円)に役職手
当(6万円)を足した金額である。
(6) 原告の平成11年12月分給与は,基本給86万円,役職手当9万円,総
支給額95万円であった。
原告の平成12年2月分給与は,基本給86万円,役職手当9万円,削減47万5
000円,総支給額47万5000円であった。
原告の平成12年3月分(同月14日退社)給与は,基本給86万円,役職手当9
万円,削減71万2500円,総支給額23万7500円であった。
(7) 以上の事実を総合すると,被告役員の退職金算定の基本月額は,基本給に
役職手当を足したものであり,基本日額は基本月額を25日で割って計算するのが
被告の慣行であり,原告退職時も上記慣行が存在していたと認められ,原告退職時
の基本日額は3万8000円(95万円÷25日=3万8000円)であったと認
められる。
この点,被告は,被告役員会決議により,平成12年1月から役員報酬が50パー
セントカットされ,また,退職金算定の基準となる役員退職時の基本日額は役員の
総受領月額を25日で割って計算することとなったと主張するが,上記役員会決議
の事実を認めるに足りる証拠はなく,仮に上記役員会決議があったとしても商法上
株式会社の機関でない役員会に退職金算定の基準となる役員退職時の基本日額を決
定する権限はないのであり,総受領月額を25日で割って計算することはできな
い。
(8) よって,退職金算定の基礎になる原告退職時の基本日額は3万8000円
である。
(9) 原告の退職金について
上記認定事実によると,原告の退職金算定の基礎になる支給日数は1089.4
日,基本日額は3万8000円である。
よって,原告の退職金は金4139万7200円(3万8000円×1089.4
日)である。
7 長期分割払の肯否(乙3,被告代表者)
(1) 被告は,原告の兄Dが被告社長であった際,Dが過積載,拡大路線の安売
り,過剰な貸付等の放漫経営をしたにもかかわらず,当時取締役であった原告はD
を諫めることなく放漫経営に加担し,被告の経営を悪化させ,銀行から被告役員の
個人資産の担保提供を求められた際にも原告は担保提供を拒否しているのであるか
ら,原告には多大な経営責任があると主張する。しかし,これを認めるに足りる証
拠はない。むしろ,甲9,11によると,現社長Aは,自己取引に当たるにもかか
わらず取締役会決議を経ないで自己所有の土地を被告に賃貸して高額の賃料を得,
また自己所有地上の立木を被告会社に高額で買い取らせた事実が認められ,Aを中
心とする役員が被告の資産を私物化したことが推認される。
また,上記認定事実によると,被告は,経営困難のため現在再建中であり,平成1
2年1月分から従業員の給与の一部カットが行われていることが認められるが,原
告への退職金の一括支払が困難である程度にまで経営が悪化していると認めるに足
りる証拠はない。
さらに,被告の支払能力の有無は,原告の被告に対する退職金請求権の有無とは無
関係である。
(2) 以上の検討によれば,被告の長期分割弁済の抗弁には理由がない。
第4 結論
 以上によれば,原告の請求は,被告に対し,4139万7200円及びこれに対
する訴状送達の日の翌日である平成12年7月26日から支払済みまで年5分の割
合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるからこれを認容し,そ
の余の請求は失当であるから棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法64
条本文,61条,仮執行宣言につき同法259条第1項を適用して,主文のとおり
判決する。
前橋地方裁判所民事第2部
        裁 判 官東 條  宏

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