弁護士法人ITJ法律事務所

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         主    文
     原判決中被告人関係部分を破棄する。
     本件を熊本簡易裁判所に差し戻す。
         理    由
 弁護人金田一人が陳述した控訴趣意は記録に編綴の同弁護人提出の控訴趣意書記
載のとおりであるから、これを引用する。
 まず職権を以て調査するに、記録によれば、原審は被告人が第一回公判期日にお
ける冒頭陳述に際し、本件賍物故買の各公訴事実につき事実相違ない旨有罪の陳述
をしたので、刑事訴訟法第二九一条の二に則り簡易公判手続によつて審判する旨の
決定をした上、検察官提出にかかる各種証拠書類を取調べて審理を重ねていたとこ
ろ、第一〇回公判期日にいたり被告人が賍物たるの情を知らなかつた旨述べて有罪
の陳述をひるがえしたので原審は同公判期日において、刑事訴訟法第二九一条の三
に従いさきになした簡易公判手続によつて審判する旨の決定を取消したが、公判手
続を更新しないでその侭審理判決した事実が認められる。
 <要旨第一>おもうに、簡易公判手続によつて審判する旨の決定が取り消されたと
きは、検察官及び被告人又は弁護人に異議がないときを除いて公判手続
を更新しなければならないことは刑事訴訟法第三一五条の二に明定するところ、同
条にいわゆる異議がないときとはもとより簡易公判手続によつて審判する旨の決定
の取消決定に対する異議がない場合でないのは勿論、公判手続を更新しないことに
つき単に黙して消極的に異議申立をしないときをいうものではなく、公判手続を更
新しないことにつき異議がない旨の積極的陳述があつたときを指称するものと解す
べく、なお、公判手続を更新しないことにつき異議がない旨の陳述があつた場合、
該陳述はこれを公判調書に明確にすることを要するものと解するを相当とする。け
だし、右異議のないことによつて公判手続の更新、すなわち通常の手続による審理
のし直しは不要となり、従来の簡易公判手続がその侭効力を保持し、殊に既に取り
調べられた各種の証拠書類はすべて同意があつたものとして証拠能力を有するにい
たり、極めて<要旨第二>重大なる法律効果を生ずるからである。尤も、簡易公判手
続によつて審判する旨の決定の取消決定があり訴訟当事者において公判
手続を更新しないことに異議がない旨の陳述があつたとき、これを公判調書に記載
すべき旨の規定がないので、前記取消決定があつた上で、引続き審理をした場合右
の異議がない旨の陳述があつたのに、これを公判調書に記載しなかつたものと推定
されるもののように考えられるが、しかし右のごとき異議がない旨の陳述はもとよ
り公判手続において通常行われる種類の手続ではないので、これが公判調書に記載
のない場合、かかる異議がない旨の陳述があつたものと推定することはできないも
のといわなければならない。
 本件記録によれば原審が簡易公判手続によつて審判する旨の決定の取消決定をし
た際、検察官及び被告人又は弁護人において公判手続を更新しないことにつき異議
がない旨を陳述した事跡は全く認められないから、原審はすべからく公判手続を更
新し必要な限度において通常の訴訟手続によつて審理をし直さなければならないも
のというべきである。殊に、簡易公判手続においては刑事訴訟沃第三二〇条第二項
により伝聞証拠の証拠能力の制限に関する同法第三二一条乃至第三二八条の各規定
及び同法第三〇七条の二刑事訴訟規則第二〇三条の三により証拠調の方法に関する
同法第三〇五条同規則第二〇三条の二の各規定はその適用を排除され、検察官の提
出にかかる各種証拠書類はすべて公判期日における供述に代えて証拠能力を認めら
れ便宜な方法において取調べられたのであるから、右各証拠書類については改めて
刑事訴訟法第三二一条乃至第三二八条の各規定に依拠して証拠能力の有無を決し、
且つ被告人の同意の有無を明確にした上、同法第三〇五条刑事訴訟規則第二〇三条
の二に従いこれか取調べをなすことを要するものとする。
 してみると原審が簡易公判手続によつて審判する旨の決定を取消しながら、公判
手続を更新せず簡易公判手続において取調べた各種の証拠書類につき叙上の如き通
常の訴訟手続によることなくその侭審判したのは、訴訟手続に関する法令に違反し
たもので、その違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決は破棄
を免れない。
 そこで弁護人の控訴趣意については判断をするまでもなく、刑事訴訟法第三九七
条第一項に則り原判決中被告人関係部分を破棄し、同法第四〇〇条本文に従い原審
に差し戻すべきものとする。
 よつて主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 藤井亮 裁判官 中村荘十郎 裁判官 生田謙二)

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