弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴はいずれもこれを棄却する。
     控訴費用は控訴人等の負担とする。
         事    実
 控訴人等訴訟代理人は原判決を取消す。被控訴人等の請求を棄却する訴訟費用は
第一、二審共被控訴人等の負担とする。
 との判決を求め被控訴人等代理人は主文と同旨の判決を求めた。
 当事者双方の事実上の主張は控訴代理人において
 一、 訴願棄却の裁決書謄本が昭和二十三年十二月十四日被控訴人Aに送達せら
れたこととは認める。
 二、 被控訴人Bは本件土地につき控訴人a地区農地委員会がした買収計画に対
し異議、訴願を経ることなく突如本訴を提起したものであるからその本訴は不適法
である。
 三、 本件土地の内bc番田三畝二十五歩中二畝六歩は現況宅地であつてその賃
借人たるCの請求により控訴人a地区農地委員会において自創法第十五条により買
収計画を定めたものである。
 四、 仮りに本件土地が被控訴人等主張の如く控訴人Bの所有であるとしても本
件買収計画が樹立された当時被控訴人Bは未だ所有権取得の登記を経由していなか
つたものであるから民法第百七十七条によりその所有権取得を以て前記a地区農地
委員会に対抗することができない。
 五、 被控訴人Aは数十年前から大阪方面において銀行に勤め本件土地を他人に
賃貸していたもので昭和二十一年九月高知市aに帰来したものである。
旨述べ被控訴代理人において
 一、 被控訴人Aに対し訴願棄却の裁決書の謄本の送達のあつたのは昭和二十二
年十二月四日である。
 一、 被控訴人Bが控訴人等主張の如く本件土地につき控訴人a地区農地委員会
がした買収計画に対し異議訴願を経ることなく本訴を提起したこと本件買収計画当
時本件土地につき現在被控訴人B名義に所有権取得登記の存しないこと並びに被控
訴人Aが昭和二十一年九月高知市に住所を移転したことはいずれも認めるけれども
その余は否認する。(尤も被控訴人Aは昭和二十年七月高知市に帰来したが労務調
整令の適用を受け昭和二十一年九月迄残務整理のため大阪府堺市にあり昭和二十一
年九月高知市に帰つた)
 と述べた外は原判決摘示事実と同一であるから茲に之を引用する。
 証拠として被控訴人は甲第一号証乃至第四号証を提出し原審証人D、E、F、G
の各証言原審における原告A(被控訴人)本人尋問の結果当番における証人H、
I、J、K、Fの各証言並びに当番における被控訴本人Aの尋問の結果を援用し、
乙号各証の成立を認め控訴人は乙第一号証乃至第四号証同第五号証の一乃至三同第
六号証の一、二同第七号証を提出し当番証人C、L、M、N、Oの各証言を援用し
甲第一、二号証の成立を認め同第三号証中公証部分のみ成立を認めその他の部分並
びに同第四号証は各不知を以て答えた。
         理    由
 別紙目録記載の土地につき控訴人a地区農地委員会が被控訴人Aの所有であり同
人が昭和二十年十一月二十三日現在不在地主であることを理由として買収計画を定
めたこと、被控訴人Aが右買収計画に対し異議の申立をしたところ同委員会は之を
棄却する決定をしたので更に控訴人県農地委員会に訴願したが棄却の裁決があり同
裁決書謄本が昭和二十三年十二月十四日同被控訴人に送達されたことは当事者間に
争がない。控訴人等は原審においては本件土地は全部被控訴人Aの所有に属する小
作地であつて昭和二十年十一月二十三日現在同被控訴人が不在地主であるとの理由
で控訴人a地区農地委員会がいわゆる遡及買収計画を定めた事実を自白しながら当
審において本件土地の内bc番田三畝二十五歩中二畝六歩は現況宅地であつてその
賃借人たるCの請求により控訴人a地区農地委員会において自創法第十五条により
買収計画を定めたものである旨主張するけれども、原審における右自白が控訴人等
の錯誤に基くものである点についてはこれを認むべき証拠がないから右自白の取消
は許されない。(なお仮りに右自白が錯誤に基くものであつてその取消が許さるべ
きものであるとしても後記説明の如く本件土地の買収計画そのものが違法であつて
取消さるべきものである以上自創法第十五条によるいわゆる附帯買収もできないも
のといわなければならない。)控訴人等は被控訴人Bが本件土地につき異議訴願を
経ずして本訴を提起したのは不適法である旨主張し同被控訴人が右<要旨第一>の如
く異議訴願を経ないで本訴を提起したことは同人の認めるところであるけれどもそ
もそも訴願前置主義の</要旨第一>目的は裁判所に出訴する前に当該行政処分の当
否につき一応行政庁をして反省を促し処分の匡正の機会を与えるにある。然るとこ
ろ被控訴人Aから本件買収計画に対し異議訴願をしたうえ(このことは控訴人等の
争わぬところである。)被控訴人Bは右Aと共同し同一の請求原因の下に本訴を提
起したのであるから右の欠缺は補正せられたものと解する。されば此点に関する控
訴人等の抗弁は採用しない。よつて本件土地が右昭和二十年十一月二十三日現在被
控訴人Aの所有に属していたか否かにつき考えるに成立に争ない甲第一号証原審証
人D、E、F、G、当審証人H、I、J、K、Fの各証言、原審並びに当審におけ
る被控訴本人(原告)Aの尋問の結果を綜合すれば本件土地はもと被控訴人Bの所
有に属していたところ同人の夫Pは放蕩をしてその妻である被控訴人Bの所有土地
をも処分するおそれが多分にあつたのでこれを防止する目的から単に登記簿上の所
有名義のみをその子である被控訴人Aに移転したものであり、従つて登記簿上は被
控訴人Aの所有名義になつているけれども真実は同被控訴人の所有ではなく被控訴
人Bの所有であることが認められ右に反する当審証人C、L、N、M、Oの各証言
は信用しない。また成立に争のない乙第一乃至第四号証によれば本件土地の小作料
領収証には被控訴人A名義を以て作成されたもののあることが認められるけれど
も、当審における被控訴人A本人尋問の結果によればそれはAが直接小作料を受取
つた場合もあるかも知れないがそのような場合には同人が被控訴人貞恵方の家族の
一員として同人名義で領収証を出したことがあるかも知れずまたBが受取つた場合
でも登記簿上の名義人が被控訴人A名義になつているので便宜A名義を使つて作成
されたものであることが認められるから単に小作料の領収証が被控訴人A名義にな
つているからといつて直ちに本件の土地が被控訴人Aの所有に属するものとは断じ
難くその他控訴人等提出の証拠によつては前記認<要旨第二>定を覆するに足らな
い。控訴人等は仮りに被控訴人Bが本件土地の所有権者であるとしても本件買収計
画の樹立された当時同被控訴人は未だ所有権取得登記を経由していなか
つたのであるから、民法第百七十七条によりその所有権取得を以て控訴人a地区農
地委員会に対抗し得ないものであると抗争し、前説示の如く被控訴人Aは登記簿上
本件土地の所有者として登記せられたに止まり真実の所有者は被控訴人Bである
が、かかる場合国は名義上の所有権者を標準として買収を行うべきか又は実際の所
有権者を標準として買収を行うべきか。行政機関が農地買収処分をするに当つては
一定の要件を具備する限り国が公権力を以て農地の買上を行うものであるから、そ
の実施にあたつては真正の所有者を標準として行はるべきものと解するが妥当であ
り、表見上の所有名義に従つて買収手続を開始したとしても、その実施の過程にお
いてこれと異なる真正の所有者が他に存し、しかもその者につき買収処分をなすべ
きでないことが明かになつた以上はさきにした処分を取消すが至当であるといわな
ければならない。従つて右の場合私法上の物権変動における対抗要件を規定した民
法第百七十七条は適用ないものと解すべきである。されば控訴人等の右主張は採用
の限りでない。されば控訴人a地区農地委員会が被控訴人Bの所有に属する本件農
地を被控訴人Aの所有する小作地と認定して為した本件買収計画はもとより違法で
あつて取消を免れぬものである。よつて被控訴人等の本訴請求は正当として認容す
べきであり(被控訴人Aは本訴において本件土地の所有者でないと主張するのであ
るけれども同被控訴人は本件行政処分の相手方であり且つ登記簿上の所有名義人で
あるから本件買収計画の取消を求むる法律上の利益があるものと解するを相当とす
る。)これと同旨の原判決は相当であるから民事訴訟法第三百八十四条第一項第八
十九条第九十三条を適用して主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 前田寛 判事 三野盛一 判事 萩原敏一)
 (別紙目録省略)

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