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平成13年9月27日判決言渡
平成12年(ワ)第9065号不当利得金返還等請求事件
  主文
1 被告は,原告に対し,45万3000円及びこれに対する平成12年8月30日か
ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,これを5分し,その2を原告の負担とし,その余を被告の負担とす
る。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実
第1 当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨
(1) 被告は,原告に対し,91万円及びこれに対する平成12年8月30日から支
払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
(3) 仮執行宣言
2 請求の趣旨に対する答弁
(1) 原告の請求を棄却する。
(2) 訴訟費用は原告の負担とする。
第2 当事者の主張
1 請求原因
  (1)ア 被告は,原告に対し,平成10年8月20日,11万円を貸し付けた。
イ 原告は,被告に対し,第1項の借受金の返済として,下記の通り合計36
万2000円を支払った。
 平成10年 9月14日 2万6000円
  同  年10月 6日 2万6000円
  同  年12月 2日 1万6000円
  同  年12月 7日 1万円
  同  年12月16日 2万6000円
 平成11年 2月 1日 1万6000円
  同  年 2月16日 1万円
  同  年 3月 1日 2万6000円
  同  年 4月 1日 1万円
  同  年 4月20日 2万6000円
  同  年 5月14日 1万6000円
  同  年 5月31日 1万6000円
  同  年 6月18日 2万円
  同  年 7月12日 4万2000円
  同  年 9月 1日 2万6000円
  同  年11月 4日 5万円
ウ 被告は,原告に対し,平成11年11月30日,15万円を貸し付けた。
エ 原告は,被告に対し,第4項の借入金の返済として下記の通り合計30万
1000円を支払った。
 平成11年12月22日 4万3000円
  同  年12月29日 4万3000円
 平成12年 3月 1日 4万3000円
  同  年 3月27日 2万3000円
  同  年 4月 3日 2万円
  同  年 4月12日 4万3000円
  同  年 6月 2日 8万6000円
オ 被告は,前記ア及びウの各金銭貸借契約締結に際し,いずれも貸金業
を営むにはA知事に貸金業の登録を行い,法律の規制に服する必要があ
ることを知りながら,出資法所定の金利より多額の利得を得る目的で,原
告に「家具リース契約書」なる名称のリース契約書に署名捺印させ,貸金
業規制法,出資法等の脱法をする違法な契約を締結させ,不法に前記イ
及びエの金員を支払わせた。
カ 原告は,イ及びエのとおり被告に支払った金員から,それぞれア及びウ
で受け取った金員を控除した合計40万3000円の損害を被り,被告は原
告の損失において同額を利得している。
(2)ア 原告は被告の上記不法行為により支払を遅滞すれば家財道具を被告に
取り上げられるかもしれないとの恐れの中で,不安に怯えながら出資法,
利息制限法所定金利を超える違法な金銭の返還を強いられた。
   イ 原告は,被告の上記不法行為により40万7000円を下らない精神的苦痛を
受けた。
(3) 原告は本件の解決のために,B法律事務所に依頼せざるを得なかったた
め,弁護士費用として10万円の支払の約束をした。
(4) よって,原告は,被告に対し,不当利得返還請求権若しくは不法行為によ
る損害賠償請求権に基づき40万3000円及び不法行為による損害賠償
請求権に基づく50万7000円,合計91万円並びに上記金員に対する本
訴状送達の日である平成12年8月30日から支払済みまで商事法定利率
年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。
2 請求原因に対する認否
請求原因事実をいずれも否認する。
原告と被告間の契約は,金銭消費貸借契約ではなく,動産の売買契約及び
リースバック契約であり,原告から被告への支払は,借受金の返済ではなく,リ
ース料である。
理由
1 請求原因(1)ア及びウについて
 (1) 証拠(乙3,乙8)によれば,原告は,被告から,平成10年8月20日に11万
円及び平成11年11月9日に15万円を,それぞれ受領した事実を認めるこ
とができる。
 (2) 被告から原告に対する上記金員の交付が金銭消費貸借契約に基づくもの
か,リース契約に基づくものかについて
  ア 証拠(甲1,甲2,乙2ないし11,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,
次の各事実を認めることができる。
(ア) 平成10年8月20日の数日前ころ,原告は,金融業者からの借入金
の返済に困り,被告に電話したところ,同年8月20日,被告が,原告宅
に赴き,原告宅の家財道具を見て,どの程度の価値のものであるかを
評価した。
(イ) 同日,原告と被告は,被告が原告の家財道具を11万円で買い取る
旨の売買契約書を作成し,被告が原告に11万円を支払い,原告は,領
収証に「家財道具売渡金」と記載して署名捺印し,被告に交付した。そし
て,原告は,上記売買契約書に記載したものと同じ家財道具について,
リース契約申込書を作成し,被告が算出したリース料に基づき,被告と
の間において,次の内容のリース契約書を作成した。
 リース期間 平成10年8月20日から平成11年8月19日
 リース料及びその支払期日 
             リース料総額は,31万2000円とし,その支払期日を毎月19
日限りとして,平成10年9月19日から平成11年8月
19日まで2万6000円宛にて支払う。
 支払方法  株式会社C銀行D支店普通預金口座×××△△宛に
て電信で振り込んで支払うか,または被告の住所に持
参して支払う。
 物件の保管場所 原告の住所地
 遅延損害金 年率36パーセント
(ウ) 平成11年11月9日,原告が被告宛に動産売渡申込書を作成した上
で,上記(イ)同様,被告が原告の家財道具を15万円で買い取り,原告
に15万円を支払った旨の売買契約書及び領収証が作成され,原告が
動産リースバック申込書を作成した上で,原告と被告との間において,
次の内容のリース契約を締結する旨の動産リースバック契約書が作成
された。
 リース期間 平成11年11月9日から平成12年11月5日
 リース料及びその支払期日 
リース料総額は,51万円とし,その支払期日を毎
月5日限りとして,平成11年12月5日から平成12年
5月5日まで4万3000円宛,同年6月5日から同年1
1月5日まで4万2000円宛にて支払う。
 支払方法  株式会社C銀行D支店普通預金口座○○○▲▲こと
被告宛にて電信で振り込んで支払うか,または被告の
住所に持参して支払う。
 物件の保管場所 原告の住所地
 遅延損害金 年率36パーセント
(エ) 上記事実によれば,いずれの場合においても,被告が原告から家財
道具を買い取り,その買い取った家財道具をリースするという,リースバ
ック契約の外見が認められ,被告もリースバックである旨供述する(乙1
7)。しかし,リース契約においては,リース料を支払終わっても原則とし
て物件所有権がユーザーに移転することはなく(乙13,乙15),原告と
被告との間のリース契約書(乙6)にも所有権が移転する旨の特約はな
いところ,上記ア(ウ)の各契約書の目的物は,いずれも上記ア(イ)の各
契約書の目的物と同一であることに照らすと,上記ア(イ)のリース契約
書に基づく「リース代金」支払後に家財道具の所有権は原告に移転した
と認められ,リース契約とは異なる取扱がなされている。また,同一の家
財道具であるにもかかわらず,2回目の売買代金及びリース料が1回目
より高額であり(乙5,乙10),家財道具の客観的価値をきちんと査定し
て売買やリースがなされたとは到底考えられない。したがって,本件各
契約は,リース契約あるいはリースバック契約の形式を取ってはいる
が,その実質は,金銭消費貸借契約であるというべきである。
2 請求原因(1)イ及びエについて
  証拠(甲5)によれば,原告主張とおりの弁済がなされたことをいずれも認め
ることができる。
3 請求原因(1)オの事実について
ア 上記認定事実によれば,平成10年8月20日のリース料金なる合計31
万2000円は,同日被告が原告に交付した11万円を元本としてこれに利
息を加えたものというべきである。したがって,31万2000円から元本部
分11万円を控除した20万2000円は利息部分となり,利率にして約年1
84パーセントであり,これは貸付け当時における利息制限法の定めた年
18パーセントの利率をはるかに上回るものであり,上記利息に該当する
部分を支払う旨の契約は無効である。
イ 同様に,平成11年11月30日のリース料なる51万円は,同日被告が原
告に交付した15万円に対し,利率にして約年242パーセントであり利息に
該当する部分を支払う旨の契約は無効である。
  4 以上によれば,被告は,原告から支払いを受けた合計66万3000円のうち
原告に貸し付けた合計26万円を超える合計40万3000円を原告の損失に
おいて利得したということができる。 
 5 被告の不法行為の成否について
   前記認定事実に照らせば,平成10年8月20日及び平成11年11月30日に
おける被告の原告に対する貸付けは,いずれもリース契約の形式を取ること
により,出資法,利息制限法,貸金業規制法の規制を逃れ,リース料名目で
高額の利息を得ることを目的とする契約であるといえ,このような行為自体,
不法行為というべきである。
 6 請求原因(2)について
 上記のとおり,原告は,被告から出資法・利息制限法所定金利を超える違
法な金銭の支払を求められたことは認められるが,本件全証拠によるも,取
立方法が悪質であるなど返済しなければならないという精神的負担以上の
特に慰謝が必要な精神的損害が原告に生じたことは認められないから,原
告の受けた損害は,財産的損失が填補されることにより,回復するというべき
である。したがって,原告の慰謝料請求は理由がない。
7 請求原因(3)について
 原告が,本件訴訟の提起等を弁護士に委任したことは明らかであるところ,
被告の不法行為と相当因果関係がある弁護士費用相当分の損害は,5万円
と認めるのが相当である。
8 原告は,被告に対して,商事法定利率による遅延損害金の支払を求めてい
るが,本件各貸付けが商行為であるとは認めるに足りる証拠はないから,原
告の上記請求は理由がない。
9 以上によれば,原告の本件請求のうち,不当利得返還請求権又は不法行為
による損害賠償請求権に基づく40万3000円,不法行為による損害賠償請
求権に基づく5万円の合計45万3000円並びにこれに対する不法行為の日
の後である本件訴状送達の日である平成12年8月30日から支払済みまで
民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があ
るからこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとし,訴訟
費用の負担について民事訴訟法64条本文,61条を,仮執行宣言について
同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第17民事部
裁判官  森    純  子

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