弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 被告人Aの弁護人山本茂雄の上告趣意について。
 論旨は、違憲をいう点もあるが、実質は、単なる訴訟法違反、事実誤認の主張を
出でないものであつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 被告人Aの弁護人高橋英吉、同秋山邦夫、同神谷咸吉郎、同秋山昭八、同秋知和
憲、同石原輝、同平井二郎の上告趣意第一について。
 論旨は、違憲をいうが、原判示(原判決は、判示一五七二番の三の母番たる一五
七二番の二を檜造林地たるいわゆる現地山林に該るものとしてB、Cとの間に売買
契約を締結した旨判示している)に副わない事実関係を前提とする単なる訴訟法違
反の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 同第二について。
 論旨は、違憲法をいうが、その実質は、量刑不当の主張に帰し、刑訴四〇五条の
上告理由に当らない(なお、所論のごとき場合に憲法三六条違反をもつて目すべき
ものでないことは、当裁判所大法廷のしばしば判示したところである)。
 同第三について。
 論旨中判例違反をいう点は、所論引用の判例は、本件に適切でないから、その前
提を欠くもので採るを得ない。その余の論旨は、単なる訴訟法違反、事実誤認の主
張を出でないものであつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。なお、相弁護人
山本茂雄、被告人Aの各上告趣意を引用する点については同趣意についての判断参
照。
 同第四について。
 論旨は、事実誤認、単なる法令違反の主張を出でないものであつて、刑訴四〇五
条の上告理由に当らない。
 被告人Aの弁護人牧義朝の上告趣意第一点について。
 論旨中判例違反をいう点については弁護人高橋英吉外六名の上告趣意第三につい
ての判断参照。その余の論旨は、原判示に副わない事実関係を前提とする法令違反
の主張であつて刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 同第二点について。
 論旨は、違憲をいうか、実質は、事実誤認の主張(原判決は、第一審判決を是認
して、判示一五七二番の二は、D木材防腐株式会社所有の一五七二番の東北部を占
める実測二一町八反歩の全部灌木地帯の地域であつて、熊本県が農林省のため端海
野開拓地の一部として、自作農創設特別措置法三〇条の規定により買収し、実測の
上同社社員E立会の上、現地の引渡を受け、開拓農民を移植させたものであつて、
当初から実測二一町八反歩の開拓地の外論旨に所謂残地又は余剰地の全然存在しな
いものと判示している)に帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 被告人Fの弁護人林忠康の上告趣意第一点について。
 論旨は、違憲をいうが、実質は、原第一審判決の判示(第一審判決は、結局判示
一五七二番の二の開拓地の地積が二一町八反歩であるにも拘らず四町六反五畝一八
歩であるがごとき虚偽の測量図を作成して虚偽の測量をした上、土地台帳及び不動
産登記簿に一五七二番の二山林二一町八反から一五七二番の三として実測四町六反
五畝一八歩の山林が分筆されたごとく不実の記載をさせ行使した趣旨を判示したも
のであること明らかである)に副わない事実関係を前提とする法令違反の主張であ
つて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 同第二点、第三点について。
 論旨は、違憲をいう点もあるが、実質は、単なる法令違反の主張に帰し、刑訴四
〇五条の上告理由に当らない。そして、土地の分筆は、権利者が所論のごとくただ
観念的に形成確定するものではなく、実地について現実に土地を分割した上これが
登録をなすべきものであり、また、刑法一五七条一項の権利義務に関する公正証書
とは、公務員がその職務上作成する文書であつて、権利義務に関するある事実を証
明する効力を有するものをいい、公務員において申立に基きその内容の如何を審査
することなく記載するものであるともしくはその内容を審査しこれを取捨選択して
記載するものであると、また、その目的が特に私法上の権利義務を証明するためで
あると、否とは問うを要せず、従つて、土地台帳のごときは、いわゆる権利義務に
関する公正証書に該当するものであることは、夙に大審院の判例とするところであ
つて(大審院判例集一巻八二八頁以下)、当法廷もこれを正当とするものであるか
ら、所論法令違反の主張も採ることができない。
 被告人Aの上告趣意について。
 論旨は、違憲をいうが、実質は、単なる訴訟法違反、事実誤認の主張であつて、
刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 被告人Fの上告趣意について。
 論旨中憲法三八条違反をいう点は、同被告人の検察官に対する供述調書が所論誘
導、威圧、捏造等によるものであることを認めるべき証拠がないから、その前提を
欠き採るを得ない。また、憲法三九条違反をいう点は、原判決の事実誤認、単なる
法令違反の主張(所論分筆申告書添附の測量図は、開拓地の実測面積が二一町八反
であるにかかわらず、四町六反五畝一八歩となるよう県から借り受けた図面の面積
を縮少変形して架空の地積としたものであること明らかであるから、土地家屋調査
士法一二条にいわゆる虚偽の測量に当るものといわなければならない)を前提とす
るものであつて、その前提を肯認できないから、これまた採ることができない。
 そして、記録を調べても、本件につき刑訴四一一条一号ないし三号を適用すべき
ものとは認められない。
 よつて、刑訴四一四条、三九六条に従い、裁判官の全員一致で、主文のとおり判
決する。
 検察官 村上朝一公判出席
  昭和三六年三月三〇日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    高   木   常   七

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