弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成22年9月14日判決言渡
平成21年(行ケ)第10300号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成22年7月13日
判決
原告ジャス・インターナショナル株式会社
被告Y
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が,無効2008−890132号事件について,平成21年9月1日に
した審決を取り消す。
第2当事者間に争いのない事実
1特許庁における手続の経緯
被告は,別紙審決書写し「別掲」(1)のとおり,片目でウィンクをした人の
笑顔様図形よりなり,指定商品を同(1)(c)のとおりとする登録第4952
253号商標(平成17年1月7日出願。平成18年5月12日設定登録。以下
「本件商標」という。)の商標権者である。
原告は,平成20年12月5日,本件商標について,無効審判(無効2008
−890132号事件)を請求した。
特許庁は,平成21年9月1日,「本件審判の請求は,成り立たない。」と
の審決(以下「審決」という。)をし,その謄本は,平成21年9月8日,原告に送
達された。
2審決の理由
審決の理由は,次のとおり,本件商標は,商標法4条1項11号に違反して
登録されたものではなく,同法46条1項1号の規定により無効とすることは
できないというものである(別紙審決書写し参照)。
(1)引用各商標の類否について
ア称呼及び観念について
本件商標は,別紙審決書写し「別掲」記載(1)の構成よりなるもので
あり,格別の称呼及び観念を生ずるとは認められないから,称呼及び観念
については,同「別掲」記載(2)ないし(27)の引用商標(以下,個別
の引用商標を同「別掲」記載(2)以下の各かっこ書の略称に従って「引
用商標1」のようにいい,これらを包括して「引用商標」といい,引用商標
23を除く引用商標を「引用各商標」という。)と比較することができない
(商標の構成のみについては,別紙「構成一覧表」参照)。
イ外観について
本件商標は,別紙審決書写し「別掲」記載(1)のとおり,円で顔の輪
郭を表わし,小さい黒塗り縦長楕円で右目を表し,左端が重なった短い2
本の弧線で左目を表し,両端上がりの長い弧線及び当該弧線の両端にある
短い棒線で口及び口元を表した図形よりなるものであり,ウィンクをして
いる人間の顔を表現したものである。
他方,引用各商標は,別紙審決書写し「別掲」記載(2)ないし(27)
のとおりの構成よりなり,ほほ笑んでいる人間の顔(引用商標1,3,4,
6∼8,13,15,20∼22,24∼26),ほほ笑んでいる顔(引
用商標5,11,12,14,17,18),擬人化されたライオンの顔
又は擬人化された花(引用商標2),仮面又はロボットの顔(引用商標9),
架空の動物の顔(引用商標10,16,19)を表現したものであるから,
時と所を異にして本件商標と引用各商標を離隔的に観察した場合であって
も,取引者,需要者の通常の注意力をもってすれば,外観において紛れる
おそれはないというべきである。
ウよって,本件商標と引用各商標とでは,外観,称呼,観念のいずれの点
においても類似しない。
(2)引用商標23については,その登録出願日が平成17年11月8日で
あって,本件商標の登録出願日(平成17年1月7日)よりも前の出願に係
る登録商標であるとはいえないから,商標の類否について検討するまでもな
く,引用商標23との関係で本件商標の登録が商標法4条1項11号の規定
に違反してされたものであるとはいえない。
(3)したがって,本件商標は,商標法46条1項の規定により,その指定
商品中,請求に係る第16類についての登録を無効とすべきものであるとは
いえない。
なお,請求人(原告)は,平成21年7月31日付け弁駁書において,請
求の理由を「本件商標は,商標法第4条第1項第19号及び同法第3条第1
項第6号に該当するから無効にされるべきである。」旨主張しているが,係
る主張は,請求の理由の要旨を変更するものであるから,商標法56条1項
で準用する特許法131条の2第1項の規定により認められない。
第3当事者の主張
1審決の取消事由に係る原告の主張
(1)審決は,本件商標と引用各商標を細かく対比して「非類似」との判断
をしているが,結局は,本件商標が「つぶった片目」を有するのに対し,本
件各商標が「つぶった片目」を有しない点のみを理由として,非類似と判断
したものであって,誤りである。
(2)被告は,東京高等裁判所から平成12年1月19日に言い渡された判
決において詐欺の様相を呈している旨判示された「スマイル商品化ビジネス」
を後付けで正当化するとの不正な目的で本件商標の登録を出願したものであ
るから,本件商標の登録は無効である。
2被告の対応
被告は,適式な呼出しを受けながら,本件口頭弁論期日に出頭せず,答弁書
その他の準備書面も提出しない。
第4当裁判所の判断
当裁判所も,本件商標は,商標法4条1項11号に該当するとはいえず,本件
商標の登録を同法46条1項1号の規定により無効とすることはできないと判断
する。以下,その理由を述べる。
1引用商標23を引用商標とする商標法4条1項11号該当性について
引用商標23は,その登録出願日が平成17年11月8日であって,本件商
標の登録出願日(平成17年1月7日)よりも前の出願に係る登録商標である
とはいえないから,本件商標と引用商標23との類否を検討するまでもなく,
本件商標の登録が引用商標23との関係で商標法4条1項11号に該当すると
はいえない。
2引用各商標を引用商標とする商標法4条1項11号該当性について
(1)称呼について
本件商標は,別紙「構成一覧表」記載(1)のとおり,片目を閉じて,ウ
ィンクをした人の顔様の図形であって,同図形からは,「ウィンク」等に関
連した称呼が生じる余地があるものの,格別の称呼は生じないといって差し
支えない。
これに対し,別紙「構成一覧表」記載(2)以下の引用各商標のうち,①
引用商標1,2,5ないし15,17,18,20,21,24ないし26
は,笑顔様の図形で文字を含まないから,同図形からは,「スマイル」「わ
らい」「えがお」等に関連した称呼が生じる余地はあるものの,格別の称呼
は生じないといって差し支えない,②引用商標3,4,16及び19は,そ
れぞれ欧文字を含んでおり,その欧文字に即して,順に,「スマイリーフェ
イス」(引用商標3),「スマイリー」(引用商標4),「ハーベイボール」
(引用商標16,22),「スマイルエンジェルズ」(引用商標19),又
は「スマイリーフェイス,ハーベイボール」(引用商標23)等の称呼を
生じさせる。
そうすると,本件商標と引用各商標とは,称呼において類似しない。
(2)外観について
本件商標は,別紙「構成一覧表」記載(1)のとおり,円で顔の輪郭を描
き,小さい黒塗り縦長楕円で右目を開いた様に描き,中央から右端に向かっ
て短い2本の上向きの松葉状の弧で左目を閉じたように描き,下向きの長い
弧線及びその両端に短く点と棒状の模様を配して,口元を描いた図形よりな
り,全体として,ウィンク又は片目を閉じた顔を表現した図形である。
他方,引用各商標は,別紙「構成一覧表」記載(2)ないし(27)のと
おりの構成よりなり,人がほほ笑んでいるように描かれた図形(引用商標1,
3∼8,12∼15,17,18,20∼22,24∼26),擬人化され
た花がほほ笑んでいるように描かれた図形(引用商標2),四角の枠で囲ま
れた中に,目と口状に描かれた図形(引用商標9),ほほ笑んだ顔と左右に
翼が描かれた図形(引用商標10,16,19)である(なお,引用商標1
1は,必ずしも,ほほ笑んだ表情が描かれているとまではいえない。)
本件商標は,片目を閉じ,又はウィンクをしている表情を描いたものとし
て印象づけられるものであるのに対し,引用商標は,その多くは,ほほ笑ん
でいる表情を描いたものとして印象づけられるものであって,外観において
相違する。
(3)観念について
本件商標は,片目を閉じ,又はウィンクをしている顔との観念を生じる。
これに対し,引用各商標は,いずれもほほ笑んだ顔との観念を生じる(もっ
とも,引用商標11は,必ずしも,ほほ笑んだ顔との観念は生じない。)。
そうすると,本件商標は,引用各商標のいずれとの関係においても,観念
において相違する。
(4)まとめ
以上のとおり,本件商標と引用各商標とは,称呼が類似しているとはいえ
ず,外観,観念のいずれの点においても異なるといえるから,本件商標は商
標法4条1項11号所定の「類似する商標」には当たらない。
したがって,本件商標の登録は,商標法4条1項11号に該当するものに
対してされたものではないから,商標法46条1項の規定により,その指定
商品中,請求に係る第16類についての登録を無効とすべきものであるとは
いえない。
なお,原告は,被告が東京高等裁判所から平成12年1月19日に言い渡
された判決において詐欺の様相を呈している旨判示された「スマイル商品化
ビジネス」を後付けで正当化するために不正な目的で本件商標の登録を出願
したから本件商標の登録は無効である旨主張する。しかし,原告の主張は採
用の限りでない。すなわち,原告の上記主張が,審判段階での商標法4条1
項19号該当の主張を指摘してその点に係る審決の判断の誤りを主張するも
のであるとしても,請求の理由の要旨を変更するものであって商標法56条
1項で準用する特許法131条の2第1項の規定により認められないとした
審決の判断には誤りがないから,採用の限りでない。また,上記主張が本件
審決取消訴訟において新たに取消事由の主張をするものであるとしても,本
件取消訴訟の審理範囲を超えるものであるから,上記主張は,主張自体失当
である。
3結論
以上によれば,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。その他,原告は
縷々主張するが,いずれも理由がない。よって,原告の本訴請求は理由がない
から,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官
飯村敏明
裁判官
齊木教朗
裁判官
武宮英子
(別紙)「構成一覧表」
(1)本件商標(2)引用商標1(3)引用商標2(4)引用商標3(5)引用商標4
(6)引用商標5(7)引用商標6(8)引用商標7(9)引用商標8(10)引用商標9
(11)引用商標10(12)引用商標11(13)引用商標12(14)引用商標13(15)引用商標14
(16)引用商標15(17)引用商標16(18)引用商標17(19)引用商標18(20)引用商標19
(21)引用商標20(22)引用商標21(23)引用商標22(24)引用商標23(25)引用商標24
(26)引用商標25(27)引用商標26

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛