弁護士法人ITJ法律事務所

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         主   文
1 被告Yは,原告Aに対し,内金220万円については被告Cと連帯して,金1
528万9320円及びこれに対する平成11年11月10日から支払済みまで年
5分の割合による金員を支払え。
2 被告Yは,原告Bに対し,内金33万円については被告Cと連帯して,金14
80万2080円及びこれに対する平成11年11月10日から支払済みまで年5
分の割合による金員を支払え。
3 被告Cは,被告Yと連帯して,原告Aに対し,金220万円及びこれに対する
平成11年11月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被告Cは,被告Yと連帯して,原告Bに対し,金33万円及びこれに対する平
成11年11月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
6 訴訟費用の内,原告Aと被告Y間に生じたものは,これを5分し,その2を原
告Aの,その余を被告Yの各負担とし,原告Bと被告Y間に生じたものは,これを
2分し,その1を原告Bの,その余を被告Yの各負担とし,原告Aと被告C間に生
じたものは,これを5分し,その4を原告Aの,その余を被告Cの各負担とし,原
告Bと被告C間に生じたものは,これを10分し,その1を原告Bの,その余を被
告Cの各負担とし,原告らと被告D間に生じたものは,全て原告らの負担とする。
7 この判決は,原告ら勝訴部分に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告ら
(1) 被告株式会社Y(以下「被告会社」という。)は,原告Aに対し,内金110
0万円については被告Cと連帯して,内金220万円については被告Dと連帯し
て,金2558万9320円及びこれに対する平成11年11月10日から支払済
みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 被告会社は,原告Bに対し,内金1100万円については被告Cと連帯して,
内金220万円については被告Dと連帯して,金2688万2080円及びこれに
対する平成11年11月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
(3) 被告Cは,原告両名に対し,被告会社と連帯して,それぞれ金1100万円及
びこれに対する平成11年11月10日から支払済みまで年5分の割合による金員
を支払え。
(4) 被告Dは,原告両名に対し,被告会社と連帯して,それぞれ金220万円及び
これに対する平成11年11月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を
支払え。
(5) 訴訟費用は被告らの負担とする。
(6) 仮執行宣言
2 被告ら
(1) 原告らの請求をいずれも棄却する。
(2) 訴訟費用は原告らの負担とする。
第2 事案の概要
 本件は,被告会社の社員であった原告らが,上司であった被告Cから繰り返し性
的な言動をされるなどのセクシュアル・ハラスメント(以下「セクハラ」とい
う。)を受け,同じく被告Dから性的嫌がらせないし男女差別的発言を受けたと主
張して,被告らに対し,不法行為による損害賠償請求権(被告C及び同Dについて
は,民法709条,被告会社については,民法709条,715条[使用者責
任])に基づき損害賠償を請求(附帯請求は,それぞれの被告に対する訴状送達の
日の翌日である平成11年11月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合
による遅延損害金の支払請求。)した事案である。
1 争いのない事実等(証拠によって認定した事実については,括弧内に証拠を掲
記する。)
(1) 当事者
ア 被告会社は,平成元年5月6日に設立された,一般労働者派遣事業等を業とす
る,資本金3900万円の株式会社であり,同月24日にP2株式会社との間で,人
材企業経営を行うことを目的とし,被告会社の売上高の2.8パーセントをロイヤ
リティとしてP2株式会社に支払うとする内容のフランチャイズ契約を締結し,Q2株
式会社の商号で人材派遣業務等を行っていた。その後,被告会社は,平成9年4月
15日にR2株式会社に商号を変更し,さらに,平成12年5月24日に,株式会社
Yに商号を変更した。被告会社の代表取締役には被告Dが,取締役には被告Cの
他,E,F,G,Hが,それぞれ就任し,監査役にはIが就任している。
イ 被告会社は,代表取締役社長である被告Dのもとに取締役営業部長をおき,平
成8年5月から,同年3月に入社した被告Cが専務として取締役営業部長の役に就
いていた。そして,代表取締役社長と取締役営業部長とが,被告会社の本社並びに
岡山,高松,徳島及び米子の各支店を総括していた。なお,被告Cは,平成11年
4月8日付けで,原告らへの対応に誤解を招きかねない不適切なものがあり,騒動
を惹起した責任を問うとして専務を解任され,単なる取締役営業部長に降格されて
いる。
ウ 原告Aは,平成7年2月16日,営業担当社員として被告会社に入社し,平成
8年7月に本社マネージャーとなり,平成11年3月に被告会社が岡山支店を開設
した際に同支店支店長となったが,平成11年4月8日付けで,支店長という監督
者の地位にありながら組織ルールを逸脱した行動に出て,社内全体を混乱させた責
任を問うとして,支店長職を解任されて岡山本社業務社員に降格となり,報酬給与
の3割を減じられた。その後,原告Aは,平成11年10月13日付けで一身上の
都合を理由に同月15日に退職したい旨の退職願を提出し,被告会社が同日付けで
退職願の受理通知を送付したことにより,被告会社を退職した。
エ 原告Bは,平成8年8月29日に被告会社高松支店支店長として採用され,平
成10年7月10日には徳島支店支店長を兼務することとなった(甲3)が,平成
11年4月8日付けで,原告Aと同様の理由から支店長職を解任されて高松支店の
営業社員に降格となり,報酬給与の3割を減じられた。その後,原告Bは,平成1
1年10月13日付けで一身上の都合を理由に同月15日に退職したい旨の退職願
を提出し,被告会社が同日付けで退職願の受理通知を送付したことにより,被告会
社を退職した。
オ 被告Cは,平成5年6月に株式会社S2を退社した後,同年7月から,T2の役員
に就任したが,同年12月に退任し,平成8年3月1日に被告会社に入社し,同年
5月に取締役に就任した。
カ 被告会社の売上高は,最初の決算である平成2年7月末日には4500万円に
すぎなかったが,平成9年には2億5700万円,平成10年には6億8400万
円,平成11年には8億3290万円となり(乙2,3),業績を伸ばしている。
2 主たる争点
(1) 被告Cについて
ア 原告Aに対する不法行為の成否
(ア) 原告らの主張
 被告Cは,別紙主張整理表1の③ないし⑤,⑦,⑧,⑩ないし<39>,<47>ない
し<50>,<52>ないし<57>,<59>ないし<71>,<73>ないし<76>及び<78>ないし<86>の
「被告らの言動」欄記載の各行為を行った。そして,これらの行為は,それぞれの
「不法行為となる根拠・法的構成」欄記載のとおり,不法行為となる。
(イ) 被告らの主張
 原告らの主張に対する認否及び反論は,別紙主張整理表1の「被告らの主張」欄
記載のとおりである。
イ 原告Bに対する不法行為の成否
(ア) 原告らの主張
 被告Cは,別紙主張整理表2の④ないし<21>,<25>ないし<28>,<30>ない
し<39>,<41>ないし<46>,<48>及び<49>の「被告らの言動」欄記載の各行為を行っ
た。そして,これらの行為は,それぞれの「不法行為となる根拠・法的構成」欄記
載のとおり,不法行為となる。
(イ) 被告らの主張
 原告らの主張に対する認否及び反論は,別紙主張整理表2の「被告らの主張」欄
記載のとおりである。
(2) 被告Dについて
ア 原告Aに対する不法行為の成否
(ア) 原告らの主張
 被告Dは,別紙主張整理表1の①,②,⑥,⑨,<43>,<58>の「被告らの言動」
欄記載の各行為を行った。そして,これらの行為は,それぞれの「不法行為となる
根拠・法的構成」欄記載のとおり,不法行為となる。
(イ) 被告らの主張
 原告らの主張に対する認否及び反論は,別紙主張整理表1の「被告らの主張」欄
記載のとおりである。
イ 原告Bに対する不法行為の成否
(ア) 原告らの主張
 被告Dは,別紙主張整理表2の①ないし③及び<22>の「被告らの言動」欄記載の
各行為を行った。そして,これらの行為は,それぞれの「不法行為となる根拠・法
的構成」欄記載のとおり,不法行為となる。
(イ) 被告らの主張
 原告らの主張に対する認否及び反論は,別紙主張整理表2の「被告らの主張」欄
記載のとおりである。
(3) 被告会社の責任
 原告の主張
ア 被告会社は,同社の取締役である,被告D及び被告Cが,会社の機関として職
務を行うにつき,それぞれ上記の不法行為を行ったのであるから,商法261条3
項,78条2項,民法44条1項に基づき不法行為責任を負う。
イ 被告会社は,同社の取締役である,被告D及び被告Cが,業務に関連して上記
の不法行為を行ったのであるから,715条に基づき使用者責任を負う。
ウ 被告会社は,原告らに対し,就業規則(40条,41条2項)や労働基準法に
違反した不当ないし違法な減給及び降格処分をなした上,被告D及び被告Cの不法
行為について事後にすみやかな改善や調整措置をとらず,かえって原告らに犠牲を
強いて退職に追い込んだのであって,民法709条に基づき不法行為責任を負う。
エ 被告会社は,使用者として,被用者に対し,労働契約上の付随義務として,信
義則上,被用者にとって働きやすい職場環境を保つよう配慮すべき義務(職場環境
配慮義務)を負う。にもかかわらず,被告会社は,別紙主張整理表1の<40>ない
し<46>,<51>,<58>,<72>及び<77>並びに別紙主張整理表2の<22>,<23>,<29>及
び<40>の「被告らの言動」欄記載の各行為に及び,職場環境を配慮する義務を怠っ
た。よって,被告会社は,債務不履行責任を負う。
(4) 損害
 原告らの主張
ア 慰謝料
(ア) 被告Cの不法行為による慰謝料
a 原告Aについて
 原告Aは,平成7年から被告会社に勤務し,その貢献を認められて岡山支店開設
に伴い支店長にまで任ぜられたものであるが,被告Cから,性的自由あるいはプラ
イバシーその他人格権を侵害され,性的内容の虚偽の事実を流布されたため働く女
性としての評価を著しく低下させられ,不名誉な降格処分を受け,最終的には職場
環境の悪化のために退職せざるを得ない状況に追い込まれた。これにより原告Aが
受けた精神的苦痛は筆舌に尽くしがたく,これを慰謝するに足る金額は1000万
円を下らない。
b 原告Bについて
 原告Bは,平成8年から被告会社に勤務し,その営業力が高く評価されて高松支
店長に任ぜられ,さらには徳島支店長を兼務するに至ったものであるが,被告Cか
ら,名誉感情その他の人格権を侵害され,性的内容の虚偽の事実及び被告会社の乗
っ取りを謀ったとの虚偽の事実を流布されたため,働く女性としての評価を著しく
低下させられ,不名誉な降格処分を受け,最終的には職場環境の悪化のために退職
せざるを得ない状況に追い込まれた。これにより原告Bが受けた精神的苦痛は筆舌
に尽くしがたく,これを慰謝するに足る金額は1000万円を下らない。
(イ) 被告Dの不法行為による慰謝料
 被告Dが,被告会社の代表取締役の地位にあり,原告らが被告Cのセクハラ行為
について助けを求めた相手であったにもかかわらず,原告らを裏切り,原告らの直
訴後に,更に被告D自身がセクハラ行為及び名誉毀損行為を重ねたことを考慮する
と,被告Dの行為は極めて悪質であり,原告らに及ぼした悪影響は大きく,被告D
の不法行為によって原告らは多大の精神的苦痛を被った。
 よって,原告両名を慰謝するに足る金額はそれぞれ200万円を下らない。
(ウ) 被告会社について
 原告らは,被告会社が職場環境配慮義務に違反して,法外な降格及び減給を行う
等の措置をしたことにより,甚大な精神的苦痛を受け,長期間の通院を余儀なくさ
れ,退職に追い込まれた。また,原告らは,再就職の困難な状況下で,就職活動に
苦労することとなった。これら被告会社による,長期間にわたる数々の義務違反行
為により,原告らは甚大な精神的苦痛を受けており,これらを慰謝するに足る金額
は1200万円を下らない。
イ 未払給料相当損害金
 被告会社は,原告らからセクハラ行為の苦情を受けた後に,就業規則及び労働基
準法に違反する不当な降格及び減給処分をした。そのため,原告らは本来支給され
るべき給料の支払いを受けられず,以下のごとくこれに相当する損害を被った。
(ア) 原告Aについて合計339万円
a 平成10年3月16日から同年4月15日まで 21万円
b 同月16日から同年7月15日まで120万円
c 同月16日から同年8月15日まで 58万円
d 同月16日から同年10月15日まで140万円
(イ) 原告Bについて合計354万円
a 平成10年3月16日から同年4月15日まで 22万円
b 同月16日から同年6月15日まで 96万円
c 同年7月16日から同年8月15日まで 76万円
d 同月16日から同年10月15日まで160万円
ウ 逸失利益
 原告らは,被告らの違法な行為がなければ,少なくとももう1年間は被告会社に
勤務し,降格される前に支給されていた給与を得ていたはずである。そして,降格
前,原告Aは月額70万円の,原告Bは月額80万円の収入をそれぞれ得ていた。
 よって,被告会社は,原告Aに対し,799万9320円を,原告Bに対し,9
14万2080円をそれぞれ支払う義務がある。
エ 弁護士費用
 原告らは,被告らの不法行為により本件訴訟についての弁護士費用の負担を余儀
なくされたのであるから,被告らは下記弁護士費用を賠償する義務を負う。
(ア) 被告Cにつき各100万円
(イ) 被告Dにつき各20万円
(ウ) 被告会社のみに対する請求につき各100万円
第3 争点に対する判断
1 前記第2,1の争いのない事実,証拠(甲4ないし9,11,12,16ない
し22,24,25,27ないし29,33ないし35,39,41,43ないし
48,乙2,3,7ないし21,23,33,34,36,39ないし43,4
7,50,51ないし55,57,58,61,64ないし67,70ないし7
4,80ないし82,84,88,93,100,105[枝番を含む。],原告
A,原告B,被告C,被告D)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ
る(なお,個々の認定事実についての理由を括弧内に記載する。)。
(1) 被告Dは,原告Aが,平成7年5月ころ離婚し,再婚せずに子供を育てている
ことから,いい人がいれば紹介しようと考え,度々同人に対し,「君は再婚しない
の。」と尋ねていた。
 そして,被告Dは,原告Aの仕事中に同人に,「今友人と飲んでいる。その人は
独身でお嫁さんを探している。君も独身だから,代わるので話しをしなさい。いい
人ですよ。」などと電話をかけ,原告Aと友人との縁結びをしようとしたこともあ
った。
(2) 被告Dは,原告Bに対し,子供はまだかという話を度々していた。また,原告
Bが派手な服装をしている時に注意をしたことがある。
(3) 被告Cは,原告Aに代わって,原告AのPHSにかかってきた電話をとった
が,そのことを同人に告げなかったことがある。
(4) 被告Cは,平成11年1月12日,原告Aとともに行った米子への出張の帰り
のJR山陰本線特急やくもの中で,被告会社と同じく被告D一族が経営するU2の業
績が悪く,U2だけではだめかもしれない,このままでいくと,再編になるかもしれ
ない,そうするとしょっちゅう社長が岡山に来るようになるといった話をした。
 また,被告Cは,同列車の中で,原告Aに対し,「君のこと,僕は好きだ
よ。」,「僕が今の立場じゃなかったら既に君に言ってる。君はそうは思っていな
いと思うけど,君を磨いたのは僕なんだ。君は僕の芸術なんだよ。」と言った。原
告Aは,通常,出張帰りに駅まで岡山の社員に迎えに来てもらうことはなかった
が,気持ちが悪かったため,当時被告会社の社員であった男性社員のN2に岡山駅ま
で迎えに来てもらった。
(この点,被告Cはこのような発言はしていないと主張する。しかし,同人も認め
るように,通常は社員が駅まで迎えに来ることはないにもかかわらず,この日に限
って,原告Aが,岡山支店の男性社員にわざわざ連絡をして駅まで迎えに来てもら
っていたことを考えると,米子からの帰りの電車内で原告Aが気味悪く思うような
通常とは異なる事態があったと考えられるから,原告ら主張のとおりの発言があっ
たと認める。)
(5) 高松支店長である原告Bの年俸交渉は,支店長会議で既に済んでいたが,平成
11年3月10日,高松支店において,社員の年俸交渉があった。被告会社は,年
俸交渉の際に契約書を作成していなかったところ,原告Bは,後に紛争が起きると
困ると考え,高松支店の社員全員の契約書を作成し,それに被告Cの署名をしても
らっていた。しかし,原告Bの契約書については,被告Cは署名をしなかった。
(ところで,被告Cは,同日,原告Bから,原告AとP2株式会社営業本部フランチ
ャイズ担当社員Jがつき合っており,被告会社の情報が外部に漏れていると聞いた
と主張する。
 被告Cは,P2株式会社の聴聞会において,原告Bは,平成9年11月に倉敷で開
催されたフランチャイジー会議の時に,朝,原告AとJが一緒の部屋から出てきた
こと,原告らが,平成10年1月23日から同月26日まで東京に出張していた時
にも,同年5月29日から同月30日に,広島で,西日本のエリア・ミーティング
を行った時にも,同年8月28日から29日に,岡山でのミーティングにJが来
て,三光荘に泊まった時にも,同年9月3日から同月5日に,原告らが,東京へ出
張に行った時にも,同様のことがあったと具体的に述べたと供述している(乙7
3)。そして,被告Cは,原告AとJがつき合っていることにつき,かなりの確信
を持っていたと供述し,これによって被告会社の情報が外部に漏れているのであれ
ば,原告Aを降格処分とするほどの重大な事であると考えていたというのであるか
ら,仮に,被告Cが,原告Bから前記のような具体的な話を聞いていたのであれ
ば,原告Aがいかに動揺したとしても,被告Cの供述のとおり,原告A及びJに両
者の関係を1度尋ねただけで,その後何らの調査もしないということは理解しがた
いし,原告Bからこのような話を聞かされた後の同月15日から,原告Aが
東京へ出張に行くに際して,同人に何らの質問や追及もしないということも考えら
れない。また,原告Bと原告Aとの関係が良好な友人同士であったこと,同人らと
被告Cとは必ずしも良好な関係にはなかったことからすると,原告Bが,上記のよ
うな情報を被告Cに対して提供し,原告Aを陥れることは考えにくい。したがっ
て,この点についての被告Cの供述は採用できない。)
(6) 平成11年3月13日,原告Aは,午後7時ころまで仕事をしており,帰りが
けに岡山支店の社員であるK及びLに対し,明日は家にいると思うから,もし何か
あったら連絡してくれるようにと言って帰宅した。
(7) 翌日の14日は原告Aの休日であったが,同人に連絡をとる必要が生じたこと
から,岡山支店に出社していたKらが原告Aに連絡をとろうとした。しかし,原告
Aは,午前10時30分ころ,クライアントであり私的に友人でもあるV2の関連会
社の人と高知へ出発したため,Kらは原告Aと連絡がとれなかった。そこで,K
は,午前11時ころ,被告Cに連絡をして事情を説明した。原告Aが高知について
からPHSの留守番電話を確認すると,Mから,スタッフからその日の仕事のキャ
ンセルが入ったので,どうしたらよいか,メッセージを聞いたら連絡が欲しいとの
留守番電話が入っていたので,原告Aは,岡山支店に連絡を入れ,今高知にクライ
アントと一緒に来ており,用事が済んだら岡山支店へ戻ると伝えた。
 そして,原告Aが岡山へ引き返そうとしているときに,同人のPHSに被告Cか
ら電話が入り,同人は,原告Aに対し,「Kらが,君が女で仕事を取ってきている
とか言う。今も男性と2人なんじゃないかと言っている。」と言った。そこで原告
Aは,Kらがそのような事を言っているのであれば,帰って彼女達に話しをすると
被告Cに言ったが,同人は,自分が話しておいたので別に岡山支店に寄る必要はな
い,それより岡山本社に寄るようにと言った。
 原告Aは,Kらに,自分が何かあったら連絡してくれと言っておきながら連絡が
つかなかったことを謝罪しようと思い,岡山支店へ行こうと考えたが,被告Cから
突然「女で仕事を取ってきている」と言われたことを不審に思い,まず被告会社の
岡山本社に寄って被告Cと話をしようと考え,岡山支店の入っているW2ビルから歩
いて5分程度のa町にある岡山本社へ行った。原告Aは,自ら連絡するように言っ
ておきながら,高知へ行くことになったにもかかわらず,これをKらに連絡しなか
ったことを被告Cに詫びたところ,被告Cはそれはいいと言い,その後,原告Aに
対し,高知へ行ったのはどういうことなのか,みんなが,原告Aは体で仕事を取っ
てきていると言っている,最近平日にも休みを取っているが,本当に子供の行事な
のか,何かあれば子供を言い訳にしているのではないかと社員は疑っていると言っ
た。原告Aは,2日休んだだけで,何かあれば子供を言い訳にしているなどと言わ
れる筋合いではないとの反論をした。
 その後,原告Aは,岡山支店へ行き,まず,連絡がつかなかったことをKに詫び
た後,自分が体で仕事を取ってきているとか,子供を言い訳にしているなどと岡山
支店で話が出ていると聞いたが本当か,もし何か自分に不満があるならば直接自分
に言って欲しいと言ったところ,Kは,自分達はそのようなことを言ったことはな
い,被告Cが,Kらに対し,原告Aが体で仕事を取ってきていると言っていたこと
はあると返答した。
(被告Cは,原告AがV2のNと高知へプライベート旅行に行っていると同人から聞
いたとき,岡山本社にて,同人に対し,私生活のことではあるが気を付けるように
と注意したと供述するが,Oの陳述書(甲25)によれば,Nの所属する会社の仕
事を被告会社に依頼する際にはすべてOの会社を通して依頼しており,かつ,N
は,原告Aが参加をしたハワイ旅行に参加する予定であったが,参加予定であった
ものの,出発日に台風のために交通機関が乱れ,不参加となった者であって,原告
AがNと個人的な面識があったと認めるに足る証拠はないから,この点についての
被告Cの供述は採用できない。)
(8) 原告Aは,同月15日から17日まで,東京へ出張に行った。被告会社では,
出張の際には被告Cの決裁が必要であるが,出張の申請は書面でなされず口頭で行
われ,同じく口頭で決裁されていた。原告Aは,17日まで東京へ出張に行くつも
りで被告Cに出張の申請をしたが,被告Cは,1泊2日の出張であり,16日には
帰ってくるものと考えていた。
 原告Aは,同月15日の午前6時に家を出て,前日である同月14日にスタッフ
が急遽仕事をキャンセルしたことについて,クライアントに謝罪をしに福山市へ行
き,岡山市へ戻ってきてから,P総務課長と2人で東京へ出発し,昼過ぎに東京へ
着き,夕方からPと共に原告Aの女友達を交えて食事をした。同月16日の午前中
には,Pと共にP2株式会社の営業本部を挨拶を兼ねて訪問し,午後に,被告会社が
管理システムとして使用しているX2のオルディアのバージョンアップの打ち合わせ
を行い,その後,X2の担当者からPと共に接待を受けた。そして,同月17日の午
後12時ころ岡山空港へ到着し,その後,Pと昼ご飯を食べてから岡山支店へ戻っ
た。原告Aは,通常の出張の際には,「今打ち合わせが終了しました。帰って報告
します。」程度の簡単な連絡を入れていたが,今回の出張は,岡山本社の総務部の
Pが同行しているため,岡山本店への連絡は同人にまかせようと考え,原告Aは岡
山支店にのみ連絡を入れていた。
(9) 被告Cは,原告Aが東京へ出張中の同月16日に,高松支店にいる原告Bに対
して電話をしては,原告Aは今頃何をやっているだろうかと言っていた。また,同
日,被告Cから電話が欲しいとの伝言があったため,原告Bが,被告Cに午後8時
過ぎに電話をかけると,被告Cは,原告Aから全く連絡がないのは変だ,男と会っ
ているに違いないなどと言った。
(10) 同月17日の午前中,被告Cは,徳島支店へ出張し,徳島発午後1時9分,
高松着午後2時14分の特急うずしおに乗って高松支店へ行き,午後3時からQの
面接を行った。
(この日,原告Bは,被告Cとリーガロイヤルホテルのレストランへ昼食を食べに
行き,そこで,同人から,原告Aから電話がない,原告Aは男関係が乱れているか
ら直してやらなければならない,高知で何があったかわからないなどと言われたと
供述する。しかし,被告Cは,上記の列車に乗る予定を立てていたことが認められ
(乙80),この予定どおりに高松へ行ったと推認できるところ,午後3時から面
接を行ったのであれば,午後2時14分に高松駅に着いてから,駅から車でも約1
0分程度かかるリーガロイヤルホテルのレストランに原告Bと共に昼食を食べに行
くとは考えられない。原告Bは,午後1時半か2時位に被告Cが高松支店に来たと
供述するが,原告Bは,被告Cが高松支店に着いた時間よりも明確に覚えていると
思われるQの面接を開始した時間についてさえ,陳述書(甲28)では3時から
と,被告訴訟代理人の事務所での聞き取りの際(乙65)には2時からと,主尋問
では2時からと,反対尋問では3時からと供述し,その供述が変遷しており,被告
Cが高松支店に到着した時間についての原告Bの供述は採用できない。)
(11) 原告Aが同日岡山空港へ到着した後,同人のPHSにY2の社員から連絡があ
り,被告Cが原告Aの受信メールのデータのみを吸い上げて報告するようにと言っ
ているので,帰りにY2に来て欲しいと告げられた。原告Aは,Y2へ行き,フロッピ
ーディスクで受信メールのデータを提出しようかと話したが,同人が被告Cから直
接データを提出するように言われていないことや,他の社員のデータも吸い上げろ
との話になると困るであろうという配慮から結局データは提出しなかった。
(12) 同日午後3時過ぎに,Pが,原告Aに連絡をし,被告Cは今高松にいるが,
同人から,東京にいたときの打ち合わせ後の行動を,同人が帰ったら報告するよう
にとの連絡があったと言った。
 総務の社員から,被告Cが帰ったと聞いたため,原告Aは,夕方ころ被告Cのと
ころへ行った。すると,被告Cから,今回の出張中になぜ岡山本社に連絡を入れな
かったのか,今回の責任者は原告Aであるから,原告Aが岡山本社の方にも連絡を
入れるべきであるなどと言われたため,原告Aは連絡を入れなかったことを謝罪し
た。その後,被告Cは急に「君は本社のJマネージャーとつき合っているのか。」
と原告Aに対して質問をしたので,同人はこれを否定をした。すると,被告Cは
「それならいいんだ。前にも言ったけど,商品みたいで言い方は悪いが,僕にとっ
て君は芸術なんだよ。」と言った。また,被告Cは,同人と原告Aが恋愛関係にあ
ると疑われていると言い,原告Aは,悔しさのあまり涙が出たため,Rに化粧品を
借りて化粧直しをしてから岡山支店へ戻った。
(この点につき,被告Cは,同日には原告Aと会っていないと主張し,その旨供述
する。しかし,被告Cは,陳述書では,同日午後5時過ぎにQの面接が終わり,高
松発午後6時19分又は午後6時48分のマリンライナーで岡山へ帰り,岡山本社
へは午後8時前後に戻ったが,原告Aは午後7時ころ帰ったと述べているとこ
ろ,P2株式会社本社での聞き取り調査時には,Qの面接が終わって即帰り,高松か
ら帰ったのは午後5時から午後6時ころであり,原告Aは午後3時過ぎか午後4時
ころ東京から帰ってきて午後5時過ぎには退社していると供述し,主尋問では再び
陳述書(乙47)と同じ時間のマリンライナーで帰り,岡山本社へは午後7時半か
ら午後8時までの間くらいに戻ったが,岡山支店に電話をしたところ,原告Aは帰
った後だったと供述し,反対尋問では,午後5時半か午後5時過ぎころ高松を出
て,午後7時過ぎに岡山に帰ったと供述しており,時間についての供述が変遷し,
しかも,その変遷に合理的理由はない。そして,反対尋問で,P2株式会社の本社で
聞き取りが行われた時の答えと異なる旨を指摘されるや,同聞き取り調査の際の答
えは記憶違いであると述べたすぐ後に,同聞き取り調査のテープをおこした
書面(乙73)は自分の答えた言葉と異なっており,午後5時か午後6時に帰った
というのは,Pが午後5時か午後6時に疲れたので帰りますと言ったということで
あると供述する。しかし,被告Cは,主尋問において,同人が岡山本社に戻った
時,社員は全員おり,少なくともP,R,Sの女性3名がいたことは覚えていると
明言しているのであるから,被告Cのこの弁解は全く信用できない。そして,この
ような不合理な弁解や理由のない供述の変遷が認められる以上,被告Cの,同日,
原告Aに会わなかったとの供述は信用できず,被告Cのこの点についての主張は認
められない。)
 その後,被告Cは,Jに電話をし,「君とAが付き合っていると聞いたが本当
か。システム室から聞いているぞ。本当ならやめてくれ。」と言った。そして,原
告Aが岡山支店で仕事をしていた午後8時ころに,被告Cは,原告Aに対して電話
を入れ,「今,営業本部のJ君に連絡した。岡山のAと付き合っているのかと聞い
てやった。P2のシステム室からも言われている,いらないことしないでくれと言っ
てやった。」と言った。そこで,原告Aは,営業本部に電話を入れたところ,Jは
「心外です。」と言って怒りを感じていた。原告Aは,社内では被告Cが言うよう
な噂は立っていないことを述べて謝罪し,システム室へ電話をかけ,被告Cが変な
電話をかけてくるかもしれないが,そのような噂はないと述べておいた。
(13) 同月18日,原告Aは,被告Cから,岡山本社へ来るようにと言われたの
で,午前11時ころ岡山本社へ行くと,被告C1人が,入口から見て一番奥にある
同人の机のところにいた。原告Aが被告Cに近づくと,被告Cは,同人の机の右手
隣にあるY2への入口であるドアの鍵を閉め,原告Aに座るように言ったので,原告
Aは,被告Cの机の斜め向かい側の机の前に座った。すると,被告Cは,原告Aに
対し,「君を後継者として決めた。これから君のプライベートも仕事も拘束させて
もらう。」,「高松の支店長は信じるな。僕だけを信じろ。」,「東京のJと付き
合っているのか。」などと言った。原告Aは,岡山支店が立ち上がったばかりの時
期に,なぜ慌てて後継者を決める必要があるのか,なぜ原告Bのことを信じては行
けないのかを被告Cに尋ね,反論し,岡山本社を出てから,原告Bに電話をして被
告Cに言われたことを伝え,相談をした。原告Bは,原告Aからの電話を受け,被
告Cに対して電話をし,なぜ自分のことを信じてはいけないのか抗議したため,被
告Cは,原告Aが外出先で仕事をしている間に,同人のPHSに電話をかけ,なぜ
原告Bに相談するのか,後継者となるには機密も必要だと言い,とりあ
えず岡山本社に来るようにと言ったため,原告Aは,仕事が終わったら行く旨を伝
えて電話を切った。
 (被告Cは,原告Aが来たときには,被告C以外にも社員がおり,原告Aに東京
出張の時になぜ連絡をしてこなかったのかを聞き,原告Bから聞いていた原告Aと
Jとの関係を聞こうと考え,原告Aに対し,Jと付き合っていると聞いたが本当か
と聞いたところ,原告Aは否定したがひどく動揺して取り乱し,涙をぼろぼろ流し
て泣き始め,その後,Rに化粧品を借りて化粧直しをしてから岡山支店に戻ってい
った,この話しをしたのは簡易応接室であると供述するが,原告Aが泣いて化粧が
崩れたためにRに化粧品を借りて化粧を直したのは,同月17日の夜のことである
と認められることは前記(12)のとおりであるから,被告Cの供述は採用できな
い。)
(14) 同日午後3時ころ,原告Aは,岡山本社へ行き,岡山本社内にあるミーティ
ング室で被告Cと話をしようとしたところ,被告Cが,岡山本社の入っているa町
ビルの地下にあるZ2という喫茶店へ行こうと言ったため,同喫茶店へ行った。そし
て,そこで,原告Aは,被告Cに,再び,原告Bを信じるな,俺だけを信じろ,原
告Aと原告Bの関係を崩してやるなどと言われたため,原告Aは,自分と原告Bの
関係はそんな薄っぺらじゃないですよと反論をして同喫茶店を出た。
(15) 被告Cは,岡山発午後4時8分,高松着午後5時8分のマリンライナーで高
松へ向かい,高松へ向かう途中のマリンライナーの中から,高松支店へ電話を入
れ,原告B自身が被告Cを迎えに来るようにと命じた。
 原告Bは,午後5時まで仕事が入っていたことから,午後5時10分ころに被告
Cを迎えに高松駅へ車で行った。
 被告Cは,原告Bに対し,誰にも聞かれたくない話をするから,車をどこかに停
めてくれと頼んだため,原告Bは,高松駅の東側にある,フェリー乗り場からさら
に東に20から30メートルほど行った,緑地公園沿いの片側が2車線の道路の左
に車を寄せて停車した。すると,被告Cは,原告Bに対し,同人のやり方では社員
がついてこないので,やり方を変える必要があるという話をした後,原告Aは被告
Cに好意を持っており,被告Cがこれに応えてやる必要があること,原告Aのこと
はこれから被告Cが監視すると述べ,原告Bに対し,「専務のこと好きなんでし
ょ,抱かれれば。」と原告Aに話して決断を促して欲しいし,次の支店長会議が高
松であるので,その時に原告Aと関係が持てるようにはからって欲しいと依頼し
た。そして,被告Cは,原告Bに対し,被告Cの思惑通りになれば,原告Aを被告
Cの後継者とし,原告Bには原告Aよりも高い収入を得られるようにする,自分と
手を組もうと言って,握手を求めて手を差し伸べた。しかし,原告Bは握手をせず
にいたところ,午後7時ころ,Tから原告Bの携帯電話に,家の用事があるので帰
りたいとの連絡が入ったため,これをきっかけとして,原告Bは車を動か
し,午後7時10分ころに高松支店に到着した。被告Cは,高松支店の入っている
ビルの裏口の前で,原告Bに対し,まだ握手をしていないと言ったところ,原告B
が,握手をする必要はないと応えたことに対し,被告Cは「そうか,君は僕と手を
組んだんだな。」と言った。
 原告Bと被告Cが高松支店に到着した後,簡単なミーティングが行われたが,そ
の間に,原告Bは「専務はこわい。気をつけて。」との電子メールを原告Aに送っ
た。その後,被告Cは,高松支店の社員のUに車で高松駅へ送ってもらい,午後7
時53分ころ発車のマリンライナーに乗って,岡山へ帰った。
 被告Cが岡山へ帰った後,原告Bの様子がおかしいと感じたVは,原告Bを食事
に誘い,同人らは高松支店の近くの小料理屋A3へ食事に行った。そこで食事をしな
がら,原告Bは,Vに対し,自分の方が能力が上であるにもかかわらず,原告Aを
後継者にするのはおかしい,被告Cは原告Aのことが好きで,同人に対してセクハ
ラまがいの言動を繰り返しているなどと話した。
(原告Bの車の中でのやりとりにつき,被告Cは,原告Aと肉体関係を持つための
手助けをすることを原告Bに頼んだことはなく,同人のやり方では人がついてこな
いから,そのやり方はやめろという話と,原告AとJのことについてはなかったこ
とにするとの話をしたところ,突然,原告Bが自分の不倫の話を始め,これを被告
Cが聞いていたが,周囲が暗くなってきたので,もうええ加減にせえと言って原告
Bの話を切り上げさせたと供述する。
 しかし,Vは,同日,原告Bと2人でA3という小料理屋に食事に行った時,原告
Bが「C専務は,私より能力が劣るのにAを自分の後継者にする予定だというが,
おかしい。間違っている。」などと言っていたと供述しており,Vがこの点につい
て虚偽の事実を述べる理由が見当たらず,この同供述は信用できるところ,原告B
がVの述べるような不服を言っていたのであれば,同日の車の中で被告Cが原告A
を後継者にする旨の話を原告Bにしたと考えるのが自然であるし,後記(16)のとお
り,被告Cは,同日,岡山に帰ってから,原告Aを岡山本社に呼び,同人に対し,
同人を抱くと言ったと認められるのであるから,この点に関する原告ら主張の事実
を否定する被告Cの供述は採用できない。
 一方,原告Bは,同人の車の中で,被告Cが,一方的に,原告Bに対して被告C
自身の性生活のことを話したり,原告Bの性生活について質問をしたり,原告Bに
対して上着を脱ぐことを求めたり,「君は女としてとても魅力的だよ。僕の方を見
て。」,「僕のセックスはすごいよ,なんだったら試してみる。」,「君はご主人
のセックスには満足しているの。君のおじいさんのお葬式の時にご主人とお目にか
かったけど,あまりセックス強くなさそうだもんねえ。子供もできないみたいだ
し。」などと発言をしたと供述し,車を停めた所が海際であったため,このまま何
かされたら被告Cと一緒に車ごと海に落ちてしまうのではないかと思い,怖くて身
動きがとれなかったと供述する。
 なるほど,証拠(甲35,乙50)によれば,原告Bが,Wらに対し,被告Cが
原告Aを性の対象として見ている旨の話をしたことは認められる。
 しかし,原告Bは,平成11年4月5日に被告Dと,車の中で3時間位話をした
と述べていたが,その後,その時間を大幅に短縮するようになったこと,高松支店
へ戻った時間もばらばらである上,車を停めた場所についても,X法律事務所での
聞取りの際には四国フェリーの乗り場の入り口の所と供述していたが(乙65),
陳述書(甲28)や尋問ではフェリー乗り場から東へもう少し行った所ないし東へ
20から30メートル行ったところと供述するなど,供述が変遷していること,そ
の上,車を停めた場所は,海際であり,フェンスもなければ安全柵もないような岸
壁の際であり,低い車止めしかなかったため,サイドブレーキが落ちたら海に落ち
るという恐怖があったと供述しているが,地図(乙54)によれば,原告Bが指示
する停車位置から海までの間には歩道や公園等があり,停車位置から海までの距離
は6メートル程度であることからすると,原告Bは,被告Cからの被害を誇張して
述べているものと認められ,原告Bの前記供述は採用できない。)
(16) 原告Aは,業務が落ち着いたころに,O2に対して電話をし,平成11年3月
17日から18日にかけての被告Cとのやりとりを話し,その後業務をしていたと
ころ,原告Bから前記(15)のメールを受け取った。
 午後8時55分過ぎころ,被告Cが,岡山支店にいる原告Aに対し,これから岡
山本社に来るようにと電話で言ったので,原告Aは,電話ですむ用事であれば電話
ですませて欲しいと言ったが,被告Cは,自分はまだ会社にいるから来なさいと言
ったので,原告Aは,午後9時30分に行く旨を返答した。岡山支店の他の社員
は,なぜ原告Aが被告Cからこのように頻繁に呼び出されるのかいぶかしがったた
め,原告Aは,売り上げの件を問題にされていると言って社員を納得させようとし
た。
 午後9時30分ころ,原告Aは,岡山支店の他の社員に対し同支店には戻らない
旨を伝えて,W2のパーキングに停めてあった自分の車に乗って,a町ビルから少し
離れた100円パーキングに車を停め,午後9時35分にPHSから岡山本社へ連
絡をして,これから岡山本社へ行く旨を伝えた。a町ビルは,午後8時からは警備
のために外から入るためにはカードが必要であるところ,原告Aは,このカードを
岡山支店の自分の机の中に忘れてきたため,再度,岡山本店に電話をかけ,被告C
にa町ビルの施錠を中から開けてくれるように頼み,被告Cは,a町ビルの1階ま
で降りてきて,施錠を中から開け,原告Aを中に入れた。
 原告Aが岡山本社へ入ると,被告Cの机のある辺りの電気だけがついており,被
告Cは,自己の机の所に座っていた。そして,被告Cは,原告Aに対し,原告Bが
原告Aのことを被告Cの後継者として認めたこと,原告Aと原告Bが大人の関係に
なったことなどを述べた後,「もうひとつ,高松のBに言ってきたことがある。君
を抱くと言ってきた。」,「君は僕のことが好きだろう。後継者になるということ
イコール男女の関係があるのは当たり前だ。僕は家庭を捨てない。考えてくれ。」
と言った。原告Aは,被告Cから原告Aを抱くと言われ,恐怖のあまり身動きがと
れなくなったが,その後,「私は専務のことを男性として見たことはありませ
ん。」,「それ以上近寄らないでください。」と言って被告Cと肉体関係を持つこ
とを拒否し,岡山本社から飛び出した。
 岡山本社から出た原告Aは,原告BにPHSから電話をかけた。原告Bは,Vと
共にA3で食事中であったが,原告Aが取り乱している様子から,同日,被告Cが原
告Bの車の中で言っていたことを思い出し,原告Aに対し,「何があったん?専務
に抱かせろって言われたんじゃないの?」と訪ねた。原告Aは泣き崩れ,原告Bの
提案で,原告Aが高松へ行って話をすることになり,PHSを切った。原告Aは,
自宅へ電話をし,これから高松へ行くと両親に伝えたが,両親に怒られたため,一
度自宅へ戻ろうと思い,再度原告Bに電話し,ふらふらするし,両親に叱られたの
で,今日は高松に行けない,自宅に帰ってから電話をすると伝えた。その後,原告
Aは,自動車を運転して自宅へ向かったが,動揺していたため,自動車の運転がお
ぼつかず,帰宅途中に,岡山市bにあるCDレンタル店の駐車場に車を停め,友人
であるZの携帯電話に電話をし,被告Cとのやりとりを泣きながら話した。
(これら原告Aに対する一連の出来事につき,被告Cは,自分は午後8時15分発
のマリンライナーに乗って岡山に帰り,午後9時40分ころ岡山本社に着き,翌日
の税務調査の書類確認のみをして午後10時ころ自宅へ帰ったのであり,平成11
年3月18日の午後9時30分ころに原告Aに会った事実はないと一貫して供述す
る。
 しかし,午後8時以降に岡山本社に入るためには,通用門及び部屋の前で通行用
のカードが必要であり,被告Cはカードを持っていたところ,同日のカード使用に
よる入退室状況が打ち出された書面(甲45)によれば,「08:17FO」,
「20:34NO」,「20:55FO」,「22:04NO」となっており,
「FO」は入室,「NO」は退室を指すことから,同日には,午前8時17分に誰
かが入室し,一旦,午後8時34分に社員が全員岡山本社から退室し,午後8時5
5分に誰かが岡山本社に戻ってきて入室し,その後午後10時4分に退室したこと
がわかる。したがって,被告Cは,午後8時55分に岡山本社に着き,カードを利
用して入室し,午後10時4分に退室したと認められ,これに反する同人の供述は
信用できない。
 この点につき,被告Cは,午後8時55分にカードによる入室との記録があるの
は,他の社員が同時刻に岡山本社に帰ってきて,被告Cはその社員に中から鍵を開
けてもらったということになる旨の供述をするが,被告C自身,P2本社での聞取時
及び反対尋問で前記カード使用による入退室状況が打ち出された書面(甲45)を
示されるまでは,同人が岡山本社へ帰ったときには社員はいなかったと明言してお
り,主尋問においても,午後8時以降はカードがないと入れないが自分はカードを
持っていたと供述している。さらに,原告AのPHSの通話明細書から,同人が,
同日の午後9時35分及び午後9時37分45秒に岡山本社に電話をしていること
は明らかであるところ,被告Cは,反対尋問において,同時刻に自分が岡山本社に
いたことは認めるが,これらの電話を受けた覚えはないと述べ,その理由として,
社員がいなければ留守番電話になっているからと説明しており,同時刻に岡山本社
に社員がいたか否かについて,まさに場当たり的な供述をしている。その上,カー
ドを持っていたにもかかわらず,わざわざ社員に連絡を入れて中から鍵を開けても
らうとは考えがたく,被告Cの弁解は信用できない。
 また,被告Cは,平成11年3月19日に電子メール(甲4)及び手紙(甲5の
2)を,同月20日に手紙(甲5の1,3)をそれぞれ原告に出しており,これら
の内容,特に電子メールには,被告Cが,原告AとJが付き合っており,原告Aが
被告CではなくJのものになってしまうと考え,嫉妬心から,原告Aの気持ちを考
えずに同人や原告Bに対して様々な言動をとって原告Aを自分の愛人にするために
奔走したことを詫びたいとの内容が書かれており,その後に書かれた2通の手紙
も,電子メールの内容を受けて読めば,結局,原告Aに対して被告Cが男女関係を
持ちたいと言ったことに対する謝罪が書かれているとしか読めず,このような電子
メールや手紙があることからすれば,同月18日に,原告Aとは会っていないとす
る被告Cの供述は信用できない。
 被告Cは,これらの電子メールや手紙は,平成11年3月18日午前11時ころ
に原告AにJとの関係を聞いたところ,同人が激しく動揺し,仕事ができないほど
の状態になったため,同人を平常の状態に戻すために送ったものであると主張す
る。
 そして,被告Cは,電子メールの文面につき,次のとおり弁解する。すなわち,
この電子メールの「今回のこと」とは,原告AとJとの不倫に関する件を指し,
「全く初めての経験で」とは,自分の部下が男性によって潰れてしまうことを惜し
む気持ちを持ったことが初めてであったことを述べており,「自分では感情を自由
にコントロールできると確信していた」とは,自分の部下に他社の男性社員が手を
出すことによって潰れてしまうことを冷静に受け止められると思っていたとの意味
であり,「感情モードに替わって」とは,社員のプライベートには一切関与しない
方針だったのに,日頃の冷静さを失っていたことを意味し,「昨日行ったことはき
みに信頼してついて来てくれと言いながら,きみを苦しめることをしてしまいまし
た」とは,原告AはJと不倫関係にはないと言っているにもかかわらず,これを問
いつめてしまったことを言っており,「きみを誰かにとられるのでは」とは,入社
以来のパートナーとして仕事を教え,指導してきた原告Aが,男性関係で駄目にさ
れ,仕事ができなくなることを指し,「自分にも嫉妬の感情があって」とは,Jや
他の男性に対し,自分の仕事上のパートナーである原告Aをもてあそん
で潰す気かという怒りの感情があるとの意味であり,「2日間一睡もしていない」
は,税務調査の準備や原告AからJを通じて被告会社の情報が漏れていることに対
してどう対応するかということに悩んだ為に2日間ほとんど寝ていなかったため,
「君にデンワした後しばらくたおれていたようです」は,睡眠不足で気分が悪くな
ったので横になっていたためにそれぞれ書いたものであり,原告Aを平静な状態に
戻そうとして下手に出たためにこのような表現になっていること,「君に謝りた
い」とは,Jとの関係について疑いを持ったことを謝りたいとの意味で書いたもの
である。
 しかし,これらの弁解の内容は,余りにも不合理であり,電子メールに書かれて
いる日本語の意味からして到底解釈不可能な内容であり,仮に被告Cの言うとお
り,原告Aが動揺していたため同人を平静な状態に戻すために書かれたという事情
があったとし,この事情を加味したとしても,やはり,被告Cが主張するような内
容を表現するための文面であるとは到底考えられず,被告Cの弁解は信用できな
い。
 また,被告Cは,手紙にも「ジェラシーの感情」,「今回うわさを信じて私がド
タバタしたわけですが」,「なぜ今回のような行動に出たのか,今なら冷静に考え
ることができるようになっております」,「私なりにあなたへのケジメがつけた
く」,「決して君と宿泊を伴う出張も,夜2人で食事をすることも避けてきた。」
等の文章を書いており,これらについても原告AとJとの不倫の件や高知の件を問
題にして問いつめたことについて,原告Aを平静に戻すために書いた旨弁解をする
が,これも,日本語の意味からして被告Cが言うような内容に解釈することは困難
であり,同人の弁解は信用できない。)
(17)ア 平成11年3月19日,原告Aが,津山へオフィスマナーの研修の講師を
送っている途中,午前7時ころに被告Cは岡山本社の電話から原告AのPHSに電
話をした。しかし,原告Aは,同電話が被告Cからの電話であると察したため,こ
の電話に出なかった。
 そこで,被告Cは,午前7時10分ころ,原告Aの自宅に電話をかけ,この電話
に出た原告Aの母親は,会社で原告Aに何かあったのか心配になり,原告AのPH
Sに電話したが,原告Aは今は話ができないと言って電話を切り,PHSの電源を
切った。
 原告Aが,講師を津山まで送り届けて帰ってくる間にPHSの留守番電話メッセ
ージを確認すると,被告Cから「昨日は軽率なことをした。しかし,Jマネージャ
ーが許せない。君に昨日,近寄らないで欲しいと言われてショックを受けた。この
伝言を聞いたら連絡が欲しい。」との留守番電話メッセージが入っていたが,原告
Aは恐怖心からこのメッセージをその場で消去した。
 原告Aが岡山支店に戻るまでに,被告Cから原告Aに対して何度も電話があり,
原告Aが岡山支店に戻ると,原告Aの机の上には被告Cからの電話のメモが何枚も
残っていた。原告Aが岡山支店に戻ってからも,同人に対して被告Cから電話が入
ったので,原告Aが居留守を使っていると,被告Cは,通常であれば給料日である
毎月25日ぎりぎりにならないと提出されない社員の給与明細と雑誌を持って岡山
支店へ来た。そして,被告Cは,原告Aに対し「話がある。少し時間をくれ。」と
言ったが,原告Aがこれを拒否すると「10分でも5分でもいいんだ。」と言った
が,原告Aは,被告Cに言いたいことはメールで送ると答えた。すると,被告Cは
「メールなんて一方的じゃないか。」と原告Aを非難したが,原告Aはかたくなに
話し合いを拒否し,その後,被告Cを上司としてしか思っていないこと,男女関係
とは考えていないこと,17日の件につき恐怖を感じたこと,被告Cに抱くと言わ
れて動揺している自分の気持ちを察して欲しいことや,Jマネージャーとの件につ
いての抗議などを記載した電子メールを被告Cに送り,同人に電子メールを送った
というだけで気持ちが悪かったために,当該送信メールをその場で削
除した。
 その後,原告Aは,Wに電話をし,W2ビルの裏の日本料理屋で落ち合った。その
店で,原告Aは,被告Cが,原告Bに対し,原告Aを抱けるようにし向けたら金と
地位を保証してやるというようなことを言ったこと,原告Aが岡山本社を訪れたと
きに,Y2と岡山本社との間のドアの鍵を閉められ,被告Cに抱かれれば後継者とし
て迎え入れるというような話をされたことをWに話し,泣き崩れた。Wは,被告C
と被告Dは仲がいいので,被告Dに言っても解決できないが,P2株式会社の社長で
あり,被告会社の取締役でもあったE2社長ならば原告Aの気持ちを判ってくれるの
ではないかと助言した。また,これらの話し合いの間に,原告Aのことを心配した
原告Bから原告AのPHSに電話が入り,原告Bは,Wに電話を変わってもらい,
原告Aのことを頼むと言った。
イ 原告Bは,頭痛のため午後4時まで休むとVに伝え,携帯電話の電源を切って
いたが,午後3時30分ころ,携帯電話の電源を入れると,被告Cから電話がかか
ってきて,昨夜,原告Aと電話で話をしたのか,どこまで話をしたのかと聞かれ
た。そこで,原告Bが全部ですと答えたところ,被告Cは「今まで,僕は一人っ子
で金持ちだったから自分の欲しい物は全部手に入ってきた。手に入らない物などな
かった。だけど,今回初めて手に入らなかったんだ。」,「僕は感情のコントロー
ルができると思っていたけど今回は違っていた。」などと言い,原告Aが何か言っ
ていたかを原告Bに尋ねた。そこで,原告Bが相当のショックを受けていたと答え
たところ,被告Cは「ああそう。でも僕の方がショックだよ。あんなに拒絶される
とは思わなかった。彼女は僕のこと好きなはずなのに。心を開かないんだ。」と言
った。そこで,原告Bは「心を開くってどういうことですか。専務に抱かれるとい
うことですか。抱かれないと心を閉ざしたということですか。」と被告Cに尋ねる
と,同人は「そうだよ。だから君にも協力を頼んだんだろう。」と答えたので,原
告Bは「でもまさか本当にされるとは思いませんでした。しかも早々に
されるなんて。」と言った。
 その後,原告Bは,クライアント方へ行き,夕方に高松支店へ帰ってきた。原告
Bがクライアント方へ行っている間,被告Cから原告Bあてに高松支店に何度も電
話があり,原告Bが高松支店に戻ると,帰り次第電話をするようにとの伝言があっ
たため,被告Cに電話をした。すると,被告Cは,電話で,原告Aが心を開かない
といった話を繰り返した。
ウ 同日午後6時30分ころ,被告Cから,原告Aに,前日の夜に同人がとった行
動を弁解する内容の電子メール(甲4)が届き,これを読んだ原告Aは,吐き気を
もよおし,恐怖を感じた。原告Aは,この電子メールを削除しようと考えたが,W
から,これから何があるかわからないので,絶対残しておかないとだめですよと助
言されたため,削除せずに残しておくこととした。そして,原告Aは,この電子メ
ールを原告Bに対して送った。
 その後,原告Aが岡山支店で仕事をしていると,同日午後8時ころ,被告Cが原
告Aのところへ来て,電子メール(甲4)の内容を補うための手紙(甲5の2)を
置いていった。
(被告Cは,午前7時ころから原告Aが岡山支店に帰ってくるまで電話をかけてい
たのは,原告Aが,Jとの関係を聞かれたときに激しく動揺していたことや,当日
雨が降っていたために心配したためであると供述する。しかし,前記認定のとお
り,平成11年3月18日の夜,被告Cは原告Aに対して原告Aを抱く,後継者に
なるということイコール男女の関係があるのは当たり前だなどと述べており,被告
Cが原告Aに対して電話をかけたのは,同日夜の弁解のためと考えるのが自然であ
る。また,被告Cが供述するような理由で原告Aに電話するのであれば,原告Aが
講師を津山へ送っていったことがわかれば電話を続ける必要はないはずであり,原
告Aの自宅へ電話をして,家から原告Aが出かけたことがわかれば充分であり,少
なくとも,原告Aが岡山支店に帰ってくるまでの間,何度も岡山支店に電話をかけ
る必要はないはずであるから,被告Cの供述は不自然であり採用できない。
 また,被告Cは,原告Bに午後3時30分ころに電話をしたことについては記憶
がなく,帰り次第連絡を入れるようにとの伝言を高松支店の社員にしたことは認め
るが,原告Bに対して,同人が供述するような内容の発言をしたことはないと主張
する。しかし,被告Cが,原告Bに対して,原告Aと肉体関係を持つための協力を
依頼していたことは前記(16)のとおりであり,被告Cが原告Aと原告Bが連絡を密
にとっていたことを知っていることも加味すると,被告Cが,原告Aから男女関係
を拒絶され,原告Aとの連絡がとれないために,原告Bに対して,原告Aの様子等
を尋ねようとして連絡を入れることは自然であり,原告Bの供述は信用できる。
 そして,被告Cは電子メール(甲4)及び手紙(甲5の2)について,前記(16)
のような弁解をしているが,その弁解が不合理であり到底採用できないことは同所
に指摘したとおりである。)
(18)ア 平成11年3月20日,原告Aの自宅に被告Cの手紙(甲5の1,3)が
届き,原告Aは,精神的に追いつめられたため,この時点で自己の両親に被告Cと
の間で起こった事情を打ち明けた。
イ 一方,原告Bの自宅には被告Cから電話があり,原告Aが心を開かないがどう
したらいいと思うか,自分に送られてきた電子メールの3分の1以上もJのことが
書いてあるのはおかしい,Dグループの再編があれば被告Cの居場所はなくなる
が,そうすれば原告Bも今までのような高収入は得られなくなるので,誰について
いれば一番良いかわかっているだろうなどと言った。この電話には,最初原告Bの
夫が出たが,同人が休日に自宅にまで被告Cから電話がかかってきたことを不審に
思ったため,原告Bは事のいきさつを話した。
 その後,原告Bは,原告Aに電話を入れ,被告Cから自宅に電話があり,原告A
から送られてきた電子メールの3分の1以上にJのことが書いてあると言われたと
伝えた。
 その後,原告Aは,Jに対し,相談にのって欲しい旨の電子メールを送り,その
旨を原告Bに伝えた。
(19) 同月23日に,Jから原告Bに電話があり,原告Bは,相談したいことがあ
るので,とりあえず時間をとって欲しいと要請した。Jは,同年4月2日ならば空
いていると言ったため,原告A及び原告Bは,同日東京のP2株式会社本社へ行くこ
ととした。
(20) 同年3月23日から同月24日まで,被告Cは,F2と共に東京へ出張した。
そして,被告Cは,同月24日にP2株式会社本社を訪れ,Jに対し,「この間の電
話は失礼した。Aは,ゆくゆく会社の幹部にしたい人材で僕の後継者として考えて
いるんだよ。ただ,他にも変な噂があり,過敏になっていたんだ。申し訳なかっ
た。」と言って,同月17日にかけた電話について謝罪をした。
(被告Cは,この点につき,Jに原告Aとの関係を問うと,Jは,肉体関係は否定
したが一緒に食事に行ったり飲みに行ったりしたことはあり,その際,肩を抱いた
ことくらいはあると認めたので,誤解を招くような行動は慎んで欲しいと申し入
れ,こんな噂がE2社長にしれたら札幌支店あたりにとばされるよと言ったところ,
Jは「間違いなくクビになります。」と言ったと供述する。
 しかし,被告Cが,原告Aに対し,電子メール(甲4)でJに謝罪するつもりで
あると言っているにもかかわらず,Jを詰問するという全く反対の行動に出ること
は考えにくいし,被告Cの供述するとおり,原告AとJとの関係はなかったことと
すると被告Cが考えていたのであれば,なおさら被告Cが上記のような行動に出る
ことは不合理であり,同人の供述は矛盾しており採用できない。)
(21) 同年3月下旬ころ,被告Cは,岡山支店の社員を1人1人呼んで,君たちは
原告Aをどう思うかと聞いた。そして,被告Cは,Wに対し「Aはああやって体で
仕事を取ってくるんだよ。君もJとの仲は知っているだろう。」と言い,Wは余り
にも嫌な言葉であったために聞き返した。また,このころ,被告Cは,F2に,原告
Aをリコールしろと言った。
(22) 同年3月26日に,支店長会議があり,同会議後,被告Cは,原告Bのみを
残らせ,原告Aは支店の社員から信頼されていないから支店長から降格すると言
い,原告Bを夕食に誘ったが,原告Bはこれを断った。
 支店長会議後,原告A及び原告Bは,今後のことを話し合い,原告Bは,被告C
を避けていては何も解決できないから,一度被告Cと話をする機会をもった方が良
いと提案した。そこで,原告Aは,その場で,被告Cの携帯電話に電話をしたがつ
ながらなかったため,被告Cの自宅に電話をし,同月27日に岡山支店に来てくれ
るよう伝えた。
(23) 同年3月27日は土曜日であったため,原告Aは,W2ビルの中まで両親及び
娘に来てもらい,1時間経っても原告Aから電話連絡がなかったら岡山支店まで来
てくれるように頼んで,岡山支店へ行った。
 原告Aが,被告Cに対し,同人が今回このような言動に至った理由を尋ねたとこ
ろ,同人は「高松の支店長(原告Bのこと。)はご主人がいるので性的欲求は解消
されているが,君は独身だから性的欲求は解消されていないと思ったからだ。」と
述べた。原告Aは,被告Cが反省しているのであれば,今回のことにこだわって仕
事に差し障りが出ることを避けるため,被告Cを許そうと考えていたが,被告Cが
上記のような発言をしたため,腹が立ち,被告Cに帰ってくれるように言った。す
ると,被告Cは,「最後にお願いがあるんだ。もう気持ちを表に現さない。だから
最後にキスさせてくれ。」と言ったため,原告Aはこれを拒否した。
 被告Cが岡山本社へ帰っていった後,同人から原告AのPHSに電話が入った
が,原告Aが応答しないでいたところ,被告Cは再び岡山支店へ戻り,「これあげ
るよ。」と言って,真っ赤なバスタオルの入った袋を原告Aに差し出して置いてい
った。
 その後,原告Aは,何かに備えて自宅待機をしていてくれた原告B及び会社で待
機していてくれたO2に連絡をし,被告Cが全く反省をしていないことから,再度,
東京へ行く決意を固めた旨を伝えた。
(24) 同年4月2日,原告Aは大阪で友人の結婚式があるので出席するとの理由
で,原告Bは交通事故に遭った叔父の手術があるとの理由で有給休暇を取り,東京
のP2株式会社を訪問した。
 E2社長が不在であったため,原告A及び原告Bは,J及び営業本部長G2に,被告
Cのセクハラについて話をした。初めはJ及びG2は半信半疑で原告らの話を聞いて
いたが,原告らが被告Cから原告Aに宛てられた電子メールが印字された紙や手紙
を見せると真剣に話を聞くようになった。その後,G2が,被告Dに話をすれば何と
かしてくれると思う,この問題は会社としても大切なことなのて,他の社員も一緒
に行って職場の環境を変えなければいけないと言った。そこで,原告らは,被告D
に被告Cのセクハラ行為について訴えることとし,P2株式会社を後にすることとし
た。その途中で,E2社長に会い,同人は,原告らに対し,頑張りなさいねと言っ
た。
(25) 同年4月4日,原告A,原告B及びO2は,相談の上,原告Bが被告Dに連絡
をし,時間を作ってもらうこととした。原告Bは,日曜日に自宅に電話をしたこと
を謝罪した上で,被告Dに対し,明日午後1時に被告C抜きで相談したいことがあ
るのでとにかく時間を作ってくれ,被告Cには言わないでくれと言った。被告D
は,被告Cに言わないでくれというのはどういうことかと尋ねたが,原告Bは強引
に被告Dだけと会う約束をした。しかし,被告Dは,納得がいかなかったため,被
告Cに電話をし,原告Bが被告C抜きで話があると言ってきたが用件をはっきり言
わない,一体何があったのかと尋ねた。被告Cは,わからないと答えたが,同日午
後9時に原告Bの自宅に電話をした。原告Bは,夫に電話に出てもらい,居留守を
使ったが,その後すぐにまた電話の音がしたので,留守番電話に切り替えたとこ
ろ,被告Cは「社長に会ったら岡山の支店長クビになります。」と留守番電話にメ
ッセージを残した。
(被告Cは,このメッセージにつき,原告Bが原告Aの不倫について被告Dに報告
をすると考え,馬鹿なまねはやめろと言いたかったのでこのようなメッセージを残
したと供述するが,同日までの被告Cの言動や,同人が原告Aと原告Bが非常に親
しい関係にあることを知っていたことを考えると,被告Cの供述は採用できな
い。)
(26) 同年4月5日,原告Bは,午後1時に被告Dに会いに行く前に,高松支店
で,社員に対し,原告Bが,被告Cから,原告Aを抱けるように後押しして欲しい
と言われたこと及び原告AがY2と岡山本社との間のドアの鍵をかけられた話をし,
みんなで被告Dに会いに行こうと述べた。
 午後1時に被告Dが岡山支店へ行くと,原告A,原告Bの外,高松支店から
V,H2,I2が,徳島支店からJ2が,米子支店からO2,K2が,岡山支店からF2,W,
Kが来ていた。被告Dは,人数が多いことから,W2ビルの14階にある会議室を借
りるように原告Aに指示し,原告Aは同会議室の使用申し込みをし,同会議室で被
告Dに事情を説明することとなった。被告Dは,まずI2に対し,新入社員のくせに
社長に意見を言おうなんて生意気だ,時期が早すぎるんだなどと言ったが,原告B
がこれを制止した。そして,被告Dが一体何の用事だと聞いたため,原告Bはセク
ハラがありましたと答え,主に原告Bが,原告Aが,Pと一緒に行った東京出張か
ら帰ってきた後に,被告Cからセクハラを受けたこと,原告Bが,被告Cから午後
5時くらいに車で迎えに来いと言われ,海の見える場所で,君は5年経ったら会社
を興せ,自分の後継者は原告Aだと言われたこと,原告Aが同月18日に,被告C
から,同人に抱かれれば地位と金は保証すると言われたこと,これらのセクハラ行
為をP2株式会社に相談に行ったことなどを,被告Cから原告Aに対して出された電
子メール(甲4)を印字した紙や手紙(甲5の1ないし3)を被告Dに対
して示しつつ述べた。そして,原告Bは,社長である被告Dの責任を問い,被告C
は被告Dを裏切り,被告会社を乗っ取ろうとしている,被告Cを辞めさせてくれな
ければ告訴すると言った。しかし,被告Dは「Cに限って信じられない。」,「な
んてことをしてくれたんだ。」と繰り返していた。
 その後,被告Dは支店長だけ残るようにと言い,支店長だけが残ったところで,
被告Cは被告会社のために担保を入れているので被告Cが辞めると大変である旨を
述べた。
 そして,被告Dはさらに原告Aのみを呼び,原告AらがしたことはP2株式会社に
被告会社を吸収する機会を与えたことだ,役職者として内々にするのが役目である
のに,なぜ自分一人で心に抑えておかなかったのかと言った。
 結局,被告Dは,明日にでも役員会議を開くが,同会議に被告会社の取締役であ
るがP2株式会社の社長であるE2は呼ばないと伝えた。
(27) 同月7日の朝,被告Dは原告A,原告B,O2及びJ2に,同日役員会議を開く
こと,同日午後3時に岡山本社に来てもらうかもしれないことを連絡した。
 その後,原告Aは,原告Bに対し,被告Cが,原告Aは解雇になると社員に言い
回っているらしいと電話で話したため,原告Bは,Vに電話をし,原告Aの解雇は
不当解雇であるから,このような解雇がなされた場合には自分達も辞めるといった
内容の不当解雇反対の嘆願書を作成するよう要請した。その後,H2が,原告Bに対
し,どういうことかと尋ねる電話を入れたが,原告Bは,高速道路に入る直前であ
ったため,もういいと言って電話を切った。
 原告A,原告B,O2及びJ2は,午後3時に岡山本社に呼び出され,個別に事情聴
取を受けた。この事情聴取には,被告D,E取締役,G取締役,H監査役が立ち会
った。
 この事情聴取には,まず原告Aが呼ばれ,約1時間半にわたって,被告Cに対し
て隙はなかったのか,あなたは完全な人間か,被告Cに対して本当に好意をもって
いなかったのか,原告Aが挑発したのではないか,Jと話した話の内容を全部述べ
なさい,経営の話をしたか,クライアントと付き合っていると被告Cから聞いた
が,クライアントへ迷惑はかけていないか,被告Cからあなたが中絶をしたと聞い
たが,いつ中絶をしたのかなどという質問がなされた。
 その後,事情聴取を受けた原告Bは,車の中で被告Cに3時間くらい話をされ,
怖かったことを話したところ,H監査役は,3月の6時や7時といえば暗いという
わけでもないのに,怖いというほうがどうかしていると言った。また,原告Bは,
被告D及びH監査役から,原告Aは「女」を使って仕事をしているというが本当か
と尋ねられたため,「女」を使うというのはどういうことか,そもそも女性らしさ
や女性らしい細やかな配慮というのは大事ではないかと答えたところ,H監査役
は,「あなたのようにさわやかな色気ならいいのよ。」と言った。
 また,J2は数分程度の事情聴取を受け,被告Cがいないと困るだろう,被告Cの
指示を仰いで今後も頑張って欲しいとH監査役に言われた。
 被告Cも,同じく事情聴取を受けたが,原告A及び原告Bに対するセクハラ行為
については身に覚えがないと言って否定した。そして,被告Dらから,被告Cから
原告Aに宛てて送られた電子メールを印字した紙(甲4)や手紙(甲5の1ないし
3)につき,非常に幼稚であり,誤解を招くところもあり,軽率であると叱責され
た。
 同日の事情聴取を終えた後,被告Dら被告会社の取締役及び監査役は,被告Cに
よる原告A及び原告Bに対するセクハラ行為は確認できないこと,かえって原告A
及び原告Bが,被告会社の社員を扇動し,策謀をめぐらせているとうかがわれ,原
告A及び原告Bの言動には強い不信感を抱かざるを得ないとの結論に全員一致で達
した。そして,午後8時から緊急役員会議を開催し,原告A,原告B及び被告Cの
処分を検討し,被告Cについては,セクハラ行為は認められないものの,原告A及
び原告Bへの対応に誤解を招きかねない不適切なものがあったとして専務職を解い
て単なる取締役に,原告A及び原告Bについては,支店長という監督者の地位にあ
りながら,組織ルールを逸脱した行動に出て,社内全体を混乱させた責任を問うこ
ととして支店長職を解任して役職のない社員にそれぞれ降格することとし,原告
A,原告B及び被告Cにつき,報酬給与の3割を減給するとの決定をした。
(被告Dは,平成11年4月7日に,原告Aに対し,Jとの関係については質問し
ていないと述べている(乙74)。しかし,前記のとおり,被告会社は,原告A及
び原告Bについて処分を決するに際し,策謀をめぐらせているとうかがわれること
を理由としており,Jの件を質問していないのであれば,このような理由が処分の
理由として挙げられることは考えがたいことからすると,被告Dは原告Aに対し,
Jとの関係についても質問をしたと認められる。)
(28)ア 同年4月8日,原告Aは,米子支店に新システム導入のために出張をして
いたところ,米子支店の社員から,ファックスで人事命令が届いたと聞き,ファッ
クスを見ると,原告A及び原告Bに対しては,弁解のための機会もなしに前記(27)
の決定がなされていた。
 原告Bは,高松支店の1階にあるY2で,前日に嘆願書の作成を要請したことにつ
いて,H2の誤解を解くために説明をしていた時に,人事命令のファックスをTから
受け取った。
 被告Cは,被告Dから,セクハラの事実は確認できなかったし,被告Cの言い分
が正しいと思うが,このような混乱を招いたことは被告Cに落ち度があるので,専
務取締役から取締役営業部長に降格し,報酬も3割減らすので了承してもらいたい
と言われ,これを了承した。
 これらの人事命令は,形式的には,原告A,原告B及び被告C全員について報酬
を3割減らし,降格をするものであるが,実質的には,原告A及び原告Bについて
は支店長から支店内で部下がいない立場への降格であるものの,被告Cの業務には
何らの変化もないものであった。
イ 原告A及び原告Bは,この人事命令が出たことをP2株式会社に報告し,被告D
に相談しても変わらなかったこと及びP2株式会社がきちんとした解決を図ってくれ
ないのであれば,被告会社らを訴える旨を告げた。
(29) 同年4月9日,被告Cは,被告Dの指示で東京のP2株式会社へ行き,G2に対
し,今回のことは原告A及び原告Bによるクーデターであり,同人らが被告Cを逆
恨みして追い落とそうとしていたと説明し,被告Cが原告Aに対して出した電子メ
ール(甲4)や手紙(甲5の1ないし3)については,これは原告A及び原告Bが
本当にクーデターを起こすかどうか確かめるために被告Cが罠を仕掛けたものであ
ると説明した。
(30) 同年4月12日,原告Aは,岡山本社へ出社したが,業務がなかったため,
自分のクライアントであったB3及びC3に挨拶に行き,派遣スタッフ雇用保険手続を
するために職業安定所に寄って帰宅した。
(31) 同日,被告Dは,自ら今回の人事上の処分結果について報告をするために東
京のP2株式会社へ行った。しかし,P2株式会社は,被告Cのセクハラ行為があった
のではないかとの疑問を抱いていたこと及び原告A及び原告Bが「P2」の商号のつ
いていた被告会社を相手に訴訟を提起することによって,自己の会社に対するイメ
ージが著しく低下し,ひいては業績低下につながることをおそれ,被告会社の人事
上の処分結果を納得できないとして,被告会社の株式の51パーセントをP2株式会
社に譲渡するか,フランチャイズ契約を解除するかの選択を求め,同日付けで株式
譲渡をするかフランチャイズ契約を解除するかの通知を被告Dに渡した。
 被告会社は,同月20日付けで,P2株式会社の上記要望には応じられない旨の通
知を同社に対してした。
(32) 同年4月19日ころから,被告Cは,今回の件は原告Bに図られてこのよう
なことになった,自分はセクハラはやっていないと社員に言い回るようになった。
(33) 同年4月21日,原告Bが高松支店に出社すると,被告Cから席替えをする
ように指示があり,原告Bの席は,支店長席から新人社員の隣の末席に移された。
また,原告Bの名前は,高松支店の名簿でも末尾に記載され,朝礼の時の発言も,
新に同月1日に入社した新入社員よりも後にすることとなった。
 そして,原告Bは,不眠,頭痛,めまい,下痢及び吐き気などの症状を訴えて,
同月22日から26日まで会社を休んだ。
(34) 原告Aは,降格処分後,岡山本社にて勤務をすることとなったが,被告Cが
近寄ってくるだけでも吐き気をもよおしていたところ,同年4月22日ころ,被告
Cと同じ部屋にいるだけでも嘔吐するようになり,1週間の休みをもらうこととし
た。
 原告Aが,同月27日に,自宅の近所のL2内科へ行ったところ,脱水症状である
と診断され,点滴の処置を受けた。また,同医院で,原告Aは心身症の可能性があ
るので,D3病院の精神科で診察を受けた方が良いと言われた。そこで,原告Aは,
同月28日,L2内科の紹介で,D3病院精神科へ受診しに行ったところ,ストレス障
害であると診断され,睡眠薬と安定剤を処方された。
 その後も,原告Aは,ストレス障害の診断を受け続け,現在に至る。
(35) そのころ,被告Cは,被告会社の社員に対し,原告A及び原告Bを解雇して
やると言ったり,高松支店のH2に対して,原告Bの売り上げをゼロにしろ,既存の
クライアントも持たすなとの指示をしたりしていた。また,被告Cは,原告Aのこ
とを淫乱であると言ったり,原告Bのことを乗っ取り屋と呼んだりした上,岡山支
店の営業ミーティングの時には,同支店の社員に対し,原告A及び原告Bが,P2株
式会社の組んで被告会社を乗っ取ろうとしているという話をしていた。
(36) 被告会社は,同年5月2日付けで,原告Aに対し業務職一般社員として給与
の総支給額を30万円とする旨の通知を,原告Bに対し営業職一般社員として給与
の総支給額を32万円とする旨の通知をそれぞれ行った。
(37) 原告Aは,同年5月6日に会社へ出勤したが,原告Aには仕事が与えられ
ず,Pが入力の仕事を少し与えてくれたのでこれを手伝った。
(38) 同年5月7日,5月からの給与を,同月2日付けの通知どおり減額する旨の
給与金額決定を,原告Aは被告Dから給与金額決定文書を郵送でもらい,原告Bは
通知書をH2から渡された。そこで,原告A及び原告Bは,評価査定基準等を明確に
するように書面で要求したが,被告Dからは何らの返事もなかった。
(39) 被告Cは,原告A及び原告Bの電子メールを同人らの了承なしに閲覧し,原
告Bの電子メールについては,被告Cが原告Bに無断で全て削除をしたため,同人
と仕事上のつながりのある人々の電子メールアドレスが全て消えてしまった。ま
た,原告Aは,被告Cが無断で電子メールを閲覧することを嫌悪し,自分の電子メ
ールアドレスを抹消してくれるように,Y2のメール管理者に願い出た。
(40) 同年5月12日,被告Cは,米子支店へ行き,O2に対し,E2社長が今回の反
逆者を辞めさせろと言っている,O2も原告A及び原告Bにつけば反逆者として解雇
になると言った。
 同日,原告Bは,慢性胃炎及び自律神経失調症の診断を医者から受け,その後も
同内容の診断を受け続けて現在に至る。
(41) その後も,被告Cは,被告会社の社員に対し,今回のことは原告Bが仕組ん
だことだ,同人は不倫をして仕事を取ってきている,あいつは淫乱だ,原告A及び
原告Bが訴訟を起こすと言っているが,訴訟を起こして困るのはあいつらだ,なぜ
なら淫乱だと全部話してやる,原告A及び原告Bは解雇だなどと言い,また,原告
Aが自殺未遂をした,子供を中絶したなどと言い回っていた。
(42) 同年5月28日,原告A及び原告Bは被告訴訟代理人X弁護士の事務所にて
事情聴取を受けた。その際,被告Dから,「君は,中絶をして,そして手首を切っ
たとC部長から聞いているが何でそんなことをしたんだ。」と問われたため,原告
Aは「前もお話しましたとおりすぐにでも調べて下さい。なんなら見て下さいよ。
この両手にどこに傷がありますか。見て下さい。」と言って,被告Dらに両手首を
見せた。
(43) P2株式会社は,同年6月16日付けで,原告A及び原告Bが受けたセクハラ
の問題について,1週間で解決をしなければフランチャイズ契約を解約するとの通
知を行った。
 しかし,被告会社は被告Cのセクハラ行為はなかったとして原告A及び原告Bに
対する処分を維持したため,同年7月12日,P2株式会社のE2は,被告Dに直接会
って解決を要請せざるを得ないと判断し,G2と共に岡山を訪ね,ホテルニューオカ
ヤマにて被告D,E,G及び被告訴訟代理人X弁護士が同席して話し合いがもたれ
た。
 また,同年9月4日には原告A,原告B及び被告Cが,同月9日には被告Dがそ
れぞれP2株式会社本社に呼ばれ,事情の聴取が行われた。
 そして,同年10月15日には,被告DとE2が東京駅八重洲口にある東京国際ホ
テルで話し合いをし,E2は,被告Dに対し,これ以上争って訴訟沙汰にしたくない
のでセクハラ問題は棚に上げてフランチャイズ契約の解約に応じてもらいたいと提
案し,同月22日に,東京弁護士会の弁護士会館にてE2,P2株式会社の代理人であ
るM2弁護士,被告D,被告訴訟代理人X弁護士で会談した際にも,M2弁護士から,
セクハラの事実の有無はともかく,フランチャイズ契約の合意解約に応じて欲しい
との提案があったたが,被告Dはこれを断った。
 そこで,P2株式会社は,同月29日に,被告会社を相手方として,商号等使用差
止仮処分命令の申立てをなしたが,同申立ては,セクハラの事実の有無はともか
く,P2株式会社及び被告会社間で締結されたフランチャイズ契約の解約事由のいず
れにも該当しないとの理由で却下された。その後,P2株式会社と被告会社との間で
和解が成立し,両者間のフランチャイズ契約は解約され,被告会社は会社名を変更
した。
(44) 同年10月13日,原告A及び原告Bは,給与が全く入金されなくなり,セ
クハラ問題の解決の見込みもなく,他の社員と円満に仕事をすることが不可能な状
態になったと判断し,被告会社に対し,退職届を提出し,被告会社はこれを受理し
た。
(45) 原告A及び原告Bは,同年10月29日に本件訴えを提起した。
(46) 原告Aは,上記のような経過において,ストレス障害との診断を受け,数か
月の休養加療を必要とし,また,原告Bも自律神経失調症等の診断を受け,数か月
の通院加療を必要とした。
2 主たる争点(1)ア(被告Cの原告Aに対する不法行為の成否)について
 前記1のとおり,被告Cは,原告Aが平成11年3月14日に高知へ男性と行っ
たことや,東京出張の際にJと会っていることなどから,原告が自分以外の男性と
付き合っているのではないかと考え,上司としての立場を利用して,原告Aに対
し,原告Aの異性関係を問いただしたり,Jに対して電話をする等の行動に出,さ
らには,同月18日に,高松支店から岡山本社に帰った後,原告Aに電話をして呼
び出し,他の社員のいない所で,後継者の地位をちらつかせつつ,原告Aに対して
被告Cと肉体関係を持つよう求めたものである。その上,原告Aが同月27日,被
告Cに対し,同人が18日にとった言動の理由を尋ねると,これを謝罪するどころ
か,原告Aは独身であるから性的欲求が解消されていないと思ったなどと答え,も
う感情を表に出さないから最後にキスをさせてくれと言って原告Aに対して接吻を
迫った。そして,原告Aが被告Cを拒否し,原告AらがP2株式会社や被告Dに対し
て,被告Cのセクハラ行為を訴えるや,自己の保身のために,セクハラ行為を否定
し,他の社員に対し,原告Aらは淫乱である等と繰り返し述べて原告らと他の社員
との関係を壊し,原告Aの職場復帰を不可能にした。
 これら被告Cの行為は,上司としての立場を利用して原告Aと肉体関係を持つた
めになされたものであり,原告Aがこれを拒否し,P2株式会社や被告Dに対してセ
クハラ行為を訴えるや,上司としての立場を利用して原告Aの風評を流し,職場環
境を悪化させ,原告Aの職場復帰を不可能ならしめたのであるから,不法行為に当
たる。
3 主たる争点(1)イ(被告Cの原告Bに対する不法行為の成否)について
 前記1のとおり,被告Cは,原告Aと肉体関係を持つために,同人と親しい原告
Bに対して,上司としての立場を利用し,平成11年3月18日に,車で迎えに来
るように命じた上で,車の中で原告Aと肉体関係を持てるように協力するよう要請
し,その後,原告Bがこれに加担することを拒否し,P2株式会社や被告Dに対して
セクハラ行為を訴えるや,上司としての立場を利用して原告Bの風評を流し,職場
環境を悪化させ,原告Bの職場復帰を不可能ならしめたのであるから,不法行為に
当たる。
4 主たる争点(2)ア(被告Dの原告Aに対する不法行為の成否)について
(1) 前記1のとおり,被告Dが,原告Aに対し,別紙主張整理表1の①,
②,<43>,<58>記載の各行為を行ったことは認められる。そのうち,①及び②の行
為については,原告Aにとっては被告Dに言われる筋合いの事柄ではなく,不快に
感じる行為であるとは認められるものの,反復継続して執拗に行われた等の事情は
なく,これらの行為のみでは不法行為における違法性を有するとまでは言えない。
したがって,別紙主張整理表1の①,②の行為については不法行為は成立しない。
(2) 被告Dの行った行為のうち,別紙主張整理表1の<43>及び<58>は,被告Cがセ
クハラ行為を行ったと主張する原告Aらの主張の真偽を判断するための事情聴取の
場で行われている。このような事情聴取の場では,問題となっている事柄の性質
上,被質問者のプライバシーに踏み込んだ質問をせざるを得ない場合があると認め
られるところ,被告Dが原告Aに対して尋ねたことは,原告Aが子供を中絶し,手
首を切ったと聞いたが,いつそのようなことをしたのか,なぜそのようなことをし
たのかということであり,被告Cの原告A及び原告Bに対するセクハラ行為の有無
とは直接関係がある事項とはいい難い。しかし,この質問は,上記のような弁護士
事務所を使用した事情聴取の場で行われたこと,その場にいた者は,限られた者で
あったことなどを考慮すると,これらの被告Dの行為は,不法行為における違法性
を有するとまではいい難い。したがって,別紙主張整理表1の<43>,<58>の行為に
ついても不法行為は成立しない。
5 主たる争点(2)イ(被告Dの原告Bに対する不法行為の成否)について
 前記1のとおり,被告Dが原告Bに対し,子供はまだかという話を度々していた
こと及び服装について注意をしていたことは認められる。しかし,子供がまだかと
いう話を度々したことにより,その話を聞かされる者がそのことによって不快感を
持ったとしても,その話をする者が相手方の気持ちを理解し得る立場にあり,執拗
に尋ねるなどした場合は格別,そうでなければ,このような発言のみをとらえて違
法行為であると解することはできない。そして,本件においては上記のような違法
性を認めるべき事情があると認めるに足る証拠はない。また,服装に対する注意を
したことが違法行為に該当しないことは明らかである。
6 主たる争点(3)(被告会社の責任)について
 被告Cの上記行為は,被告会社の内部で,被告会社の専務取締役としての立場を
利用してなされたものであり,被告Dの上記行為は,被告会社で生じたセクハラ問
題についての事情聴取中になされたものであるから業務の執行についてなされたも
のであることが明白であり,被告会社はこれらの行為について使用者責任を負う。
 また,被告会社は,原告A及び原告Bが被告Cのセクハラについて真剣に訴え,
被告Cが原告Aに宛てた電子メールを印字した書面(甲4)や手紙(甲5の1ない
し3)を原告Aらから見せられたにもかかわらず,前記1のように,原告Aに対
し,反対に,役職者として内々にするべきであった,なんで自分の心に抑えておか
なかったのかなどと述べた上,電子メール等についての被告Cの不合理としか思え
ない弁解を盲信することとし,平成11年4月7日に事情聴取の機会は設けたもの
の,被告Cの主張の裏付けをとるための聴取に終始し,原告A及び原告Bが主張す
るセクハラ行為の有無については事実確認を十分にしないまま,翌日には原告A,
原告B及び被告Cに対する降格及び減給の処分を行った。この点については,被告
Dも事実確認を最終的にしたのは5月29日に弁護士の事務所で聞き取りを行った
時であると供述しており(乙54),平成11年4月8日の時点では,最終的な事
実確認が終了していないことを被告D自身が認めている。その後,被告Dは,同
日,被告Dにも他の役員にもセクハラ行為がないということを確認していると述べ
るに至っているが,被告Dも他の役員も,同月7日の事情聴取以降,新た
な事実調査をしたことは認められないし,被告Dの供述どおり,同日の聞き取り調
査のみでセクハラ行為がなかったと確信したのであれば,被告Cに対しても降格及
び減給の処分を行うことは不自然であり,結局,被告Dら被告会社の役員は,原告
A及び原告Bの訴えについてその真偽を公平な立場で聞くという姿勢に欠け,セク
ハラ行為について十分な事実調査をせずに処分を下したものと認められる。
 しかも,被告会社は,原告A,原告B及び被告Cに対する処分をするに当たっ
て,被告Cに対しては,処分内容を事前に伝え,これを了承して欲しい旨を伝えて
いるにもかかわらず,原告A及び原告Bに対しては何らの弁明の機会も与えず,フ
ァックスで人事命令を送付したにすぎない上,同処分は,原告A,原告B及び被告
Cの3名全員につき3割の減給を行い,被告Cについては,専務取締役から単なる
取締役営業部長へ降格してはいるものの,被告Cの業務内容は従前と変わらないも
のであるのに対し,原告らについては,支店長から一気に部下のいない一番下の地
位に降格し,その業務内容も従前とは全く異なるものであって,実質的には被告C
への処分よりも原告らへの処分の方がはるかに重いものとなっている。
 この原告らの降格及び減給処分の理由につき,被告Dは,原告らが支店長の立場
にありながら社員にセクハラ行為について話をし,業務時間内に社員を連れて被告
Dに訴えに来たことであると供述する(乙54)が,少数の者の訴えでは上司に聞
き入れてもらえない危惧感がある場合に,自己がセクハラを受けたことを他の社員
にうち明け,多人数で上司にセクハラの事実を訴え,職場環境の改善を図ることを
要求することは,同セクハラの事実が被害者と称する者のねつ造であれば格別,被
用者として当然許されるべき行為であって,これを降格及び減給処分の理由とする
ことは許されないと解すべきである。
 そして,被告会社は,前述のように,原告らの訴える被告Cによるセクハラ行為
の有無について十分な事実調査をせずに前記の処分を行っているのであるから,被
告会社が原告らを降格及び減給処分に付した理由が被告Dの供述どおりであったと
しても,被告会社の同処分は違法である。
 さらには,原告A及び原告Bの行為は,被告会社の就業規則に設けられている制
裁規定に列挙されているいずれの非違行為にも当たらず,被告会社の行った2回に
わたる減給は,就業規則で定められた範囲を逸脱し,労働基準法にも違反する違法
なものである。
 その上,被告会社は,被告Cが,原告A及び原告Bの仕事を取り上げ,同人らを
淫乱であると言ったり,同人らが体で仕事を取ってきていると言ったりすることを
放置し,同人らが職場に復帰することができなくなるまでに職場環境が悪化するこ
とを放置した。
 これら被告会社の行為は,不法行為における違法性を有し,また,被告会社には
少なくとも過失があると認められるから,全体として1個の不法行為を構成する。
7 ところで,被告らは,原告らが,被告会社を排斥し,P2株式会社が被告会社の
市場シェアを乗っ取るためにP2株式会社に加担していたと主張し,本件は,そのた
めに原告らがねつ造したセクハラであると主張する。
 しかし,P2株式会社は,平成10年度の総売上が約712億円の業界第2位の労
働者の派遣を業とする株式会社であるところ,平成11年3月における登録スタッ
フ約23万人のうち98パーセントは女性であり(甲22の1),P2株式会社が,
働く女性に広く雇用の場を提供する会社であると認められる。また,労働者派遣会
社は,契約先企業の需要と登録スタッフの要望とを照らし合わせて,契約先企業に
登録スタッフを派遣することを事業内容としており,労働者派遣会社では登録スタ
ッフの確保が非常に重要となる。このような背景から,P2株式会社は,同社内部な
いし「P2」の名称がついているフランチャイザーの内部においてセクハラ行為が行
われれば,そのニュース価値は高く,これが広く報道されることによってP2株式会
社の企業イメージを低下させ,ひいては同社の経営に多大な悪影響を及ぼすと当然
考えると推認でき,年間の経常利益が500万円程の被告会社の市場を得るために
このような危険を冒すとは考えがたく,例えP2株式会社が被告会社を排斥ないし直
営店化しようと考えていたとしても,数ある手段の中でセクハラ事件のねつ造とい
う手段に出るとは到底考えられない。しかも,原告らは本件訴訟を提
起し,被告会社においてセクハラ行為があったことを公にしているのであって,原
告らが,P2株式会社の指示でセクハラの事実をねつ造したのであれば,このよう
な,P2株式会社のいわば自殺行為のような行動に出るとは到底考えられない。
 被告らは,原告A及び原告Bの訴え提起とP2株式会社の仮処分命令申立てとが同
じ日になされていることや,原告A及び原告Bが被告会社を退職した後にP2株式会
社の社員となったことなどを自己の主張の裏付けとして主張する。しかし,P2株式
会社が,原告A及び原告Bが訴えを提起すれば,P2株式会社のフランチャイザー内
部でセクハラ問題があることが報道され,自社の商号に傷がつくと考えていた反
面,原告A及び原告Bが訴えを提起することが確定しない間は,被告会社に対して
商号の使用の差止めを請求する理由に欠けると考えるのが自然であって,本件訴え
提起の日とP2株式会社の仮処分命令申立日とが同じ日であるからといって,被告ら
の主張が裏付けられるわけではない。また,原告A及び原告Bは,就職情報誌を見
てP2株式会社が岡山等で社員を募集していることを知り,一般募集の手続にしたが
って採用試験を受け,P2株式会社の社員となったものであり,その地位も,人材派
遣会社での勤務経験があることが多少考慮されているものの,同じく採用試験を受
けて入社した他の社員と比べて特に優遇されているわけではないから,この点も被
告らの主張を裏付ける事情ではない。
 したがって,この点に関する被告らの主張は認められない。
8 主たる争点(4)(損害)について
(1) 慰謝料
ア 被告Cの不法行為による慰謝料
 原告Aは,被告Cから後継者の地位をちらつかされ,肉体関係を迫られ,これを
拒否するや仕事を取り上げられ,虚偽の性的内容の風評を流布され,平成7年から
行っていた被告会社での仕事をあきらめ,退職せざるを得ない状況に追い込まれた
ものであり,これにより原告Aが受けた精神的苦痛を慰謝するには200万円をも
って相当とする。
 原告Bは,被告Cから,原告Aを抱くための協力を依頼され,性的対象とならな
ければ被告会社での出世は望めないとの絶望感を持たされた上,被告Cの協力を拒
否するや仕事を取り上げられ,虚偽の性的内容の風評を流布され,平成8年から行
っていた被告会社での仕事をあきらめ,退職せざるを得ない状況に追い込まれたも
のであり,これにより原告Bが受けた精神的苦痛を慰謝するには30万円をもって
相当とする。
イ 被告会社の固有の不法行為による慰謝料
 前記1認定の事実等本件に顕れた一切の事情を考慮すると,原告A及び原告Bに
ついて各50万円とするのが相当である。
(2) 未払給料相当損害金
ア 原告Aについて      合計339万円
 原告Aは,平成10年2月の時点で月額70万円の給料を得ていたところ,同年
3月16日から同年4月15日までは月額49万円の(差額は21万円),同月1
6日から同年7月15日までは月額30万円の(差額は月額40万円の合計120
万円),同月16日から同年8月15日までは月額12万円の(差額は58万円)
給料を得たにすぎず,同月16日から同年10月15日までは全く給料の支給はな
かった(差額は月額70万円の合計140万円)から,その差額合計は339万円
である(甲10の1)。
イ 原告Bについて                合計356万円
 原告Bは,平成10年2月の時点で月額80万円の給料を得ていたところ,同年
3月16日から同年4月15日までは月額56万円の(差額は24万円),同月1
6日から同年6月15日までは月額32万円の(差額は月額48万円の合計96万
円),同年7月16日から同年8月15日までは4万円の(差額は76万円)給料
を得たにすぎず,同月16日から同年10月15日までは全く給料の支給はなかっ
た(差額は月額80万円の合計160万円)から,その差額合計は356万円であ
る(甲10の2)。
(3) 逸失利益
 原告らは,被告らの違法な行為がなければ,少なくとももう1年間は被告会社に
勤務し,降格される前に支給されていた給与を得ていたものと認められる。
ア 原告Aについて               799万9320円
 降格前,原告Aは月額70万円の給料を得ていたものであるから,1年間の中間
利息をライプニッツ係数を用いて控除すると,799万9320円となる。
イ 原告Bについて              914万2080円
 降格前,原告Bは月額80万円の給料を得ていたものであるから,1年間の中間
利息をライプニッツ係数を用いて控除すると,914万2080円となる。
(4) 弁護士費用
ア 原告Aについて
  被告会社は,原告Aに対し,被用者である被告Cの行為による前記(1)アの慰謝
料200万円,同イの被告会社の固有の行為による慰謝料50万円,同(2)アの未払
給料相当損害金339万円,同(3)アの逸失利益799万9320円の合計1388
万9320円の支払義務がある。
  また,被告Cは,原告Aに対し,前記(1)イの慰謝料200万円の支払義務があ
る。
  そして,本件事案の内容,審理の経過及び上記認容額等を考慮すると,本件と
相当因果関係にある弁護士費用は,被告会社につき140万円,被告Cにつき20
万円とするのが相当である。
イ 原告Bについて
  被告会社は,原告Bに対し,被用者である被告Cの行為による前記(1)アの慰謝
料30万円,同イの被告会社の固有の行為による慰謝料50万円,同(2)イの未払給
料相当損害金356万円,同(3)イの逸失利益914万2080円の合計1350万
2080円の支払義務がある。
  また,被告Cは,原告Bに対し,前記(1)イの慰謝料30万円の支払義務があ
る。
  そして,本件事案の内容,審理の経過及び認容額等を考慮すると,本件と相当
因果関係にある弁護士費用は,被告Cにつき3万円,被告会社につき130万円と
するのが相当である。
9 結論
 したがって,被告会社は,不法行為に基づく損害賠償として,原告Aに対し,1
528万9320円(内220万円については被告Cと連帯),原告Bに対し,1
480万2080円(内33万円については被告Cと連帯)及びこれらに対する各
訴状送達の日の翌日である平成11年11月10日から支払済みまで民法所定年5
分の割合による遅延損害金を支払う義務があり,被告Cは,同じく不法行為に基づ
く損害賠償として,原告Aに対し,220万円(被告会社と連帯),原告Bに対
し,33万円(被告会社と連帯)及びこれらに対する各訴状送達の日の翌日である
平成11年11月10日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金
を支払う義務がある。
よって,原告の本件各請求は,上記の限度で理由があるから,その限度で認容し,
その余は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法61条,
64条,65条1項を,仮執行宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,
主文のとおり判決する。
岡山地方裁判所第2民事部
裁判長裁判官   小野木        等
裁判官   政岡   克俊
裁判官内山真理子は,差し支えにつき署名押印することができない。
裁判長裁判官   小野木        等
(別紙添付省略)

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