弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役一年に処する。
     この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
     原審の訴訟費用は全部被告人の負担とする。
         理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人千葉律之作成名義の控訴趣意書記載のとおりであるか
ら、これをここに引用し、これに対して次のとおり判断する。
 論旨第二点について。
 <要旨>案ずるに、一個の行為により、同時に数人を恐喝して財物を交付させよう
として遂げなかつた所為が、一所為数法にあたる場合において、その罪が、
右数人の各告訴を待つて論ずべきときは、該所為を起訴した被告事件につき、裁判
所は、右数人のうち告訴をしない者に対する部分については、事件の実体について
審判することができないものと解すべきところ、記録を調査するに、原判決がその
判示犯罪事実(二)に引用する昭和二十九年三月四日附起訴状記載の公訴事実第三
の恐喝未遂の事実が、A及びその娘Bの両名を恐喝の相手方としたものであつて、
一個の行為で二個の恐喝未遂罪に触れる場合にあたるものと認められること、及
び、該恐喝未遂の事実が、被告人と同居していない親族に対する犯罪であつて、右
A及びB両名の各告訴を待つてその罪を論ずべき場合にあたること、並びに該犯罪
事実について、右Aより告訴のあつた事実は認められるけれども、前記Bから告訴
のあつた事実が記録上認めえられないことは、いずれも所論指摘のとおりであるか
ら、該恐喝未遂の事実について検察官のした本件起訴はもとより適法であるけれど
も、原裁判所としては、右起訴にかかる前示恐喝未遂の事実中、告訴のなかつた前
掲Bに対する恐喝未遂の部分については、訴訟条件を欠くため、事件の実体につき
審判することができないものといわなければならない。しかるに原判決書及びこれ
に引用する前示昭和二十九年三月四日附起訴状の各記載並びに原審公判調書の記載
に徴するときは、原裁判所においては、被告人の右恐喝未遂の事実につき、告訴の
あつたAに対する犯罪事実の部分のみに止まらすず、告訴のなかつたBに対する部
分についてまでも、事件の実体につき審理した結果、有罪の判決をしたものである
ことが認められるのであるから、原判決には、この点につき審判することのできな
い事件の実体について審判をした違法があるものといわなければならない。しかし
て右の違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであると認められるから、原判決
は、この点において到底破棄を免れないものというべく、論旨は結局理由があるこ
とに帰する。
 (論旨第一点に対する判断は省略する。)
 よつて、刑事訴訟法第三百九十七条第一項に則り、原判決を破棄した上、同法第
四百条但書を適用して、更に次のとおり自ら判決する。
 (罪となるべき事実)
 被告人は、
 第二、 被告人のあつ旋によつて、前示Cの取り扱つた右D、E両名よりの無尽
加入申込が不成立に終つたことに関し、右Cの養母にあたるAを恐喝して金員を交
付させようと企て、同年十月十七日ごろ、実父Fと同道して、当時熊谷市a町G病
院に入院中の同女の娘Bの病室に至り、その看護をしていた右Aに対し、かねてよ
り前示Cとの間に紛争のあつた右無尽加入申込成立の問題について話した上、「こ
の前三万円をCにやつたことはないといつたのはらそだ。やつたのが事実た。五万
円給付を受けるときDさんの印を盗用したのはCであるから、CがDさんの印を盗
用している。三万円はDさん達に給付がなかつたから返えせ。返えさなければ印鑑
盗用で告訴する。」旨申し向けて脅迫し、同女を畏怖させたが、その後、同女が右
Cより事情を聞いた結果右金員を交付しなかつたため、その目的を遂げず、
 (第一及び第三事実は省略する。)
 (証拠の標目は省略する。)
 (法令の適用)
 法律に照らすと、被告人の右判示所為中、判示第一の各横領の点は、刑法第二百
五十二条第一項に、判示第二の恐喝未遂の点は、同法第二百五十条、第二百四十九
条第一項に、判示第三の業務上横領の点は、同法第二百五十三条に各該当するとこ
ろ、以上は、同法第四十五条前段の併合罪であるから、同法第四十七条本文、第十
条に則り、重い恐喝未遂及び業務上横領の罪のうち、犯情の重いと認める業務上横
領罪につき定めた刑に併合罪の加重をした刑期範囲内において、被告人を懲役一年
に処し、なお、その情状により、同法第二十五条第一項を適用して、この裁判確定
の日から三年間右刑の執行を猶予し、原審の訴訟費用は、刑事訴訟法第百八十一条
第一項本文に従い、全部これを被告人に負担させることとする。
 なお、本件公訴事実中、「被告人は、CがD、Eよりの無尽加入の申込を不成立
にしたのを奇貨として、同人の妻Bを畏怖させて金円を喝取せんと企て、昭和二十
七年十月十七日頃、父F同道の上、熊谷市a町G病院入院中の同女の病室に至り、
同女に対し「この前三万円をCにやつたことはないといつたのはうそだ、やつたの
が事実だ五万円給付を受けるときDさんの印を盗用したのはCであるからCがDさ
んの印を盗用している。三万円のプリミヤはDさん達に給付がなかつたから返え
せ。返さなければ印鑑盗用で告訴する」旨申し向けて脅迫し、同女を畏怖させた
が、その後向女がCに事実を聞いた結果事実の相違を知り右金円の交付をしなかつ
たので、その目的を遂げなかつたものである。」との旨の部分については、既に弁
護人の論旨第二点に対する判断において説示したとおり、右は親告罪につき告訴の
なかつたものであつて、訴訟条件を欠くため、事件の実体について有罪無罪の判決
をすることができない場合にあたるのであるが、右は判示第二のAに対する恐喝未
遂の罪と一所為数法にあたるものとして起訴されたものと認められるから、特に主
文において公訴棄却の言渡をしない。
 よつて主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 中西要一 判事 山田要治 判事 石井謹書)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛