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平成15年4月25日判決言渡平成13年(ワ)第23558号損害賠償請求事件
主文
1 被告らは,原告に対し,連帯して金5252万1173円及びこれに対する平
成12年9月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,これを10分し,その3を原告の負担とし,その余を被告らの負
担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
  被告らは,原告に対し,連帯して金7392万0414円及びこれに対する平
成12年9月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
原告の夫の亡Cは,被告A大学の開設するA病院(以下「被告病院」という。)に
おいて,平成12年9月5日,左耳前部及び頸部の腫脹のCT検査のため,同病院
放射線科の医師である被告Bによって,造影剤を注入されたところ,造影剤による
アナフィラキシー様ショックを起こし,同月6日死亡した。本件は,原告が,Cの
死亡について,被告Bに,①検査前に問診を怠った過失,②検査前に造影剤の予備
注入を怠った過失,③造影剤の注入方法についての過失,④ショック発現に備えた
十分な準備を怠った過失,⑤ショック発現後の処置についての過失があったとし
て,被告Bに対し,不法行為に基づき,被告A大学に対し,診療契約の債務不履行
又は使用者責任に基づき,連帯して金7392万0414円及びこれに対する不法
行為の日の後である平
成12年9月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支
払を求めるのに対し,被告らが,過失がないとして争っている事案である。
1 争いのない事実等
(1)ア 原告は,C(昭和36年7月28日生)の妻である(争いのない事実)。
 イ 被告A大学は,被告病院を開設するものである。被告Bは,被告病院放射線
科に勤務する医師である(争いのない事実)。
(2) Cの被告病院における診療経過は,別紙診療経過一覧表の診療経過及び検査・
処置欄の下線部を除く記載部分(当事者間に争いがない。)のとおりであり,その
要旨は以下のとおりである。
 ア Cは,平成12年5月1日,のどの痛みを訴え,被告病院耳鼻咽喉科を受診
し,同月6日まで毎日被告病院耳鼻咽喉科を外来受診した後,同年8月22日から
左耳前部が腫れてきて口を開けられなくなったという症状で,同年9月1日に,D
大学附属病院内科からの紹介で被告病院耳鼻咽喉科を,精査,治療目的で外来受診
し,蜂窩織炎等の疑いがあるとして,CT検査を実施することとなった。
 イ 被告Bは,Cに対し,同月5日に,被告病院放射線科において,単純CT検
査を実施し,引き続いて非イオン性ヨード造影剤オプチレイ320(以下「本件造
影剤」という。)を用いたCT検査(以下「本件検査」という。)を実施しよう
と,本件造影剤をCに注入したところ,Cは,その後間もなく,本件造影剤の副作
用であるアナフィラキシー様ショック症状を起こし,その後,被告Bらの処置を受
けたが,同月6日午前1時5分に死亡した。
2 争点
 (1) 被告Bが,Cに対し,本件検査の前に問診を怠った過失の有無
 (2) 被告Bが,Cに対し,本件造影剤投与を避けるべき事情の有無
 (3) 被告Bが,Cに対し,本件造影剤の予備注入を怠った過失の有無
 (判断の必要がなかった。)
 (4) 本件造影剤の注入方法(注入量及び注入速度)についての過失の有無
 (判断の必要がなかった。)
 (5) 重篤なショックに備えた管理及び準備態勢の不備とCのショック発現後の対
処方法,特に,エピネフリンの投与等の処置が遅れた過失の有無
 (判断の必要がなかった。)
 (6) 損害額
3 争点についての当事者の主張
別紙争点整理表記載のとおりである。
第3 争点に対する判断
1 争点(1)(被告Bが,Cに対し,本件検査の前に問診を怠った過失の有無)につ
いて
(1) 問診義務について
ア 証拠(甲B3,5,乙A6,B4ないし8)及び弁論の全趣旨によれば,本件
造影剤は,いわゆる非イオン性ヨード造影剤であって,ショック等の重篤な副作用
が現れる場合もあること,副作用の発生機序が明らかではなく,副作用の確実な予
知,予防法は確立されていないこと,他方で,ある素因を有する患者では副作用が
発現しやすいことがある程度分かっており,問診によって,患者のリスクファクタ
ーの有無を事前に把握することは,副作用発現を事前に回避し,又は副作用発現に
対応するために非常に重要な意味を有すること,本件造影剤のリスクファクターと
して,造影剤の副作用の既往歴,アレルギー体質等が挙げられていることなどが認
められる。
これらの事実によれば,被告Bは,Cに対し,本件造影剤を使用するに当たって,
事前に,慎重に問診を行い,本件造影剤使用を回避すべきリスクファクターの存在
について的確に把握すべき注意義務を負っていたということができる。
イ そして,上記に認定した問診の重要性に加えて,患者はかかる問診の重要性を
十分認識していないのが通常であると考えられ,本件全証拠によってもCがかかる
問診の重要性について特に認識していたと認められないことからすれば,被告B
は,Cに対し,問診を行うに当たって,問診の重要性を患者に十分に理解させた上
で,必要な事項について具体的に,かつ的確な応答を可能にするように適切な質問
をする義務を負っていたというべきである。
(2) 問診の事実の有無について
ア 被告らは,被告Bにおいて,Cに対する問診義務を尽くしたと主張し,被告B
本人は,Cに対しては,被告病院放射線科に本件検査を依頼した被告病院耳鼻咽喉
科において,まず,問診を行い,Cが本件検査の適応があることを確認し,さら
に,被告Bが,単純CT撮影後,本件検査実施前に,CT検査室内において,造影
剤を使う検査を行うことを伝え,食事を抜いてきたか否か,造影剤検査の経験の有
無,食物や薬剤で蕁麻疹等のアレルギーが出たり,気分が悪くなったことがあるか
否か,花粉症の有無,喘息と言われたことの有無について問診を行い,Cからいず
れにも当たらないことを確かめたと陳述(乙A6)及び供述をする。
イ しかしながら,上記(1)判示のとおり,本件検査を行うに当たって,問診を行っ
てリスクファクターの存在を的確に把握することは,副作用発現を事前に回避し,
又は副作用発現に対応するために非常に重要な意味を有するものであるが,証拠
(乙A1,2,6,被告B本人)によれば,被告病院の外来カルテには,被告病院
耳鼻咽喉科において,Cに対し,問診を行い,Cが本件検査の適応があることを確
認した旨の記載は一切なく,被告病院耳鼻咽喉科の同病院放射線科に対する放射線
診断依頼票にもその旨の記載はなく,また,被告Bが行った問診の有無,その結果
等についても,全く記録にとどめていないことが認められる。
ウ ところで,被告B本人は,被告病院放射線科には依頼を行った診療科のカルテ
は送付されず,放射線診断依頼票だけが送付されるところ,問診を行った結果,検
査を行わない場合には,放射線診断依頼票にその旨を記載して,依頼をした診療科
の主治医に連絡すること,Cの検査には,単純CT検査と本件検査を含めて約20
分が予定されていたところ,被告Bは,約10分程度かけて単純CT検査を実施
し,その後,放射線技師に対して撮像範囲,造影剤の注入速度,撮像のタイミング
等を指示し,同人がCT検査室内で本件造影剤を自動注入器にセットしてから,操
作室に戻りこれらの準備を行っているときに,CT検査室内において,3,4分程
度で,Cに対する問診と本件造影剤の注射を実施したことを供述する。
  被告B本人の上記供述によれば,Cに対する問診実施の事実及び問診の結果に
ついて,被告Bが当時所持していた放射線診断依頼票に記載することは,問診を行
いながらであっても極めて容易にかつ短時間に行うことができるのであって,問診
の重要性にかんがみると,これをあえて記載しない合理的理由は認められないし,
他方,被告Bが,単純CT検査と本件検査の合間の本件造影剤の注射を実施する直
前に,わずかな時間で,放射線技師に対しては既に本件造影剤の自動注入器へのセ
ットをさせておきながら,Cに対し,問診の重要性を理解させ,必要な事項につい
て具体的にかつ的確な応答を可能にする十分な問診を実施したのかは大いに疑問で
あるといわざるを得ない。
エ 以上によると,本件検査前にCに対し問診を実施したとの被告Bの陳述及び供
述には疑問があることに加えて,被告病院の耳鼻咽喉科及び放射線科のカルテ等に
は一切,Cに対し,問診を実施したという記載がない以上,被告B及び被告病院耳
鼻咽喉科の医師において,Cに対し,本件検査を実施するに当たって問診を実施し
なかったものと認められる。
(3) 以上によれば,被告Bを始めとする被告病院の医師は,Cに対し,本件検査前
に,問診を全く行っていないという重大な過失が認められる。
2 争点(2)(被告Bが,Cに対し,本件造影剤投与を避けるべき事情の有無)につ
いて
  原告は,Cには,花粉症,金属アレルギー,好酸球増多の所見及びCの父が造
影剤による副作用で死亡したという事情があり,被告Bが,Cに対する問診を的確
に行っていれば,上記事情が明らかになり,本件造影剤投与を避けるべきであった
から,Cの死亡は避けられたと主張するので,この点について検討する。
(1) 花粉症について
ア 原告本人は,Cが花粉症であったと陳述(甲A6,9,10)及び供述する
が,Cが花粉症に罹患していた客観的証拠はなく,原告本人の上記陳述及び供述に
よって,Cが花粉症であったとはいまだ認められない。
  しかしながら,証拠(甲A11,原告本人,被告B本人)によれば,Cは,G
内科において,アレルギー鼻炎と診断をされ,平成11年8月25日,これに対す
る薬を処方されていることが認められ,この事実によると,Cには,アレルギー性
鼻炎の既往があったことが認められる。 なお,証拠(乙A7)によれば,Cは,
H歯科クリニックに診療を申し込む際の問診票に,自ら特異体質,アレルギーがな
いと記載したことが認められるが,かかる事実は,上記認定を左右するものではな
い。
イ 証拠(甲B3,5,乙B4ないし7,被告B本人)によれば,本件造影剤は,
アレルギー体質のある者には慎重投与とされていること,花粉症についてもアレル
ギー体質を示すものとして,慎重投与とされるべきこと,アレルギー性鼻炎につい
ても,花粉症と同様に扱うべきこと,本件造影剤等の非イオン性ヨード造影剤の即
時性副作用発現の可能性が,アレルギー素因ないしアレルギー歴があることによっ
て有意に高まるか否かについては,様々な統計及びそれらに基づく見解があり,中
には問診等による花粉症を含めたアレルギー歴の事前確認の必要性を示唆する見解
もあることが認められるが,本件全証拠によっても,患者が花粉症ないしアレルギ
ー性鼻炎であるからといって,本件造影剤投与を避けるべきであるとは認められな
い。
ウ したがって,Cにアレルギー性鼻炎の症状があったことは認められるが,これ
は,Cに本件造影剤投与を避けるべき事情にはあたらないし,仮に,Cが花粉症で
あったとしても,これもCに本件造影剤投与を避けるべき事情にはあたらないので
あって,これらの点について,Cに本件造影剤投与を避けるべき事情があったとは
認められない。
(2) 金属アレルギーについて
  原告本人は,Cが金属アレルギーであったと陳述(甲A6,9)及び供述をす
るが,証拠(乙A7)によれば,Cは,H歯科クリニックの問診票に,アレルギー
がないと記載したこと,歯の詰め物に,金,銀,パラジウム合金及びアマルガムを
使用していたことが認められ,本件全証拠によっても,Cが金属アレルギーであっ
たことを示す医療機関のカルテ等客観的証拠がないこと等を考え併せると,Cが金
属アレルギーであったとは認められない。
 (3) 好酸球増多について
ア 証拠(甲A2,乙A1)及び別紙診療経過一覧表記載の事実によれば,Cの好
酸球数は,平成12年5月1日には1.3パーセントであったものが,同年9月1
日の検査においては,16.7パーセントへと上昇しており,好酸球数の基準値が
0ないし5パーセントまたは0.2ないし6.8パーセントとされている(乙B1
5,16)ことからして,本件検査当時,Cには好酸球増多があったものと認めら
れる。
イ 証拠(甲B3,5,乙B4,14,15)によれば,好酸球増多は,気管支喘
息,蕁麻疹,アレルギー性鼻炎等のアレルギー性疾患によって生じる場合もある
が,他方で,寄生虫疾患,皮膚疾患等においても生じ得るものであること,本件造
影剤の禁忌,原則禁忌,慎重投与等のいずれの注意事項にも挙げられていないこと
が認められる。
ウ したがって,かかる好酸球増多をもって,Cに本件造影剤の使用を避けるべき
事情があったとはいえない。
 (4) Cの父であるFの死因について
  ア 原告は,Fが造影剤の副作用で死亡したと主張し,原告本人は,C及びC
の母らは,原告に対し,Fは造影剤の検査の後に死亡したと説明していたと供述す
る。
しかしながら,証拠(甲A8の1)によれば,Fは,平成3年6月12日,E大学
病院外科外来において検査施行中,造影剤注入前に,急変を生じ,その後心停止を
繰り返し,同月15日に死亡したことが同病院の診療録に記載されていることが認
められ,その他に,Fが造影剤注入後にその副作用で死亡したと認めるに足りる証
拠もないから,Fが,造影剤を使用する検査の際に急変を生じ,3日後に死亡した
こと自体は認められるものの,Fが造影剤の副作用で死亡したとまでは認められな
い。
イ もっとも,証拠(原告本人)及び弁論の全趣旨(本件訴訟経過)によれば,原
告がFのE大学病院の上記診療録を取り寄せたのは,本件訴訟が提起されてからの
ことであると認められること,本件全証拠によっても,Cは,医療の専門的知識を
有していたとは認められないこと,上記ア認定のとおり,Fは造影剤を使用する検
査の際に急変を生じて3日後に死亡したこと自体は認められることなどからする
と,C及びCの母らにおいて,Fが造影剤を使用する検査によって死亡したと認識
し,原告に対し,その旨を説明していたことは何ら不自然ではなく,原告の上記供
述によれば,Cは,Fが造影剤の検査の際に急変を起こして死亡したという程度の
認識を持っていたものと認めるのが相当である。
ウ 証拠(甲B3,5,乙B4)によれば,本件造影剤の禁忌として,(1)ヨード又
はヨード造影剤に過敏症の既往歴のある患者,(2)重篤な甲状腺疾患のある患者が挙
げられ,原則禁忌として,(1)気管支喘息のある患者,(2)重篤な心障害,肝障害,
腎障害のある患者等が挙げられ,慎重投与として,本人又は両親,兄弟に気管支喘
息,発疹,蕁麻疹等のアレルギーを起こしやすい体質を有する患者,(2)薬物過敏症
の既往歴のある患者等が挙げられていることが認められ,患者の両親が造影剤の検
査の際に死亡したことは,本件造影剤の禁忌,慎重投与等の注意事項には挙げられ
ていない。
  しかし,証拠(原告本人,被告B本人)によれば,被告Bは,本件事故後に,
原告に対し,Cの父が造影剤を使用して死亡したのであれば,Cに対し,本件検査
をしなかった旨説明したこと,被告B自身,患者の親が造影剤の検査で死亡した可
能性がある場合には,本件造影剤を使用する本件検査を実施しなかったであろうと
供述していることが認められること,本件造影剤の上記禁忌等の記載によれば,慎
重投与の事由である気管支喘息,発疹,蕁麻疹等のアレルギーを起こしやすい体質
については,本人のみならず,両親及び兄弟の体質をも問題とされていることから
すると,禁忌の事由であるヨード又はヨード造影剤に過敏症の既往歴についても,
本人のみならず,両親及び兄弟にそのような事由があることも含まれるものと理解
されるのであり,そ
うすると,患者の両親が造影剤の検査の際に死亡したことは,少なくとも,本件造
影剤を使用するか否かを慎重に検討すべき事由に当たると認められることは明らか
である。
   エ ウの事情に加えて,前記1(1)アに判示したとおり,問診を行うに当たっ
ては,患者に対し,問診の重要性を十分に理解させた上で,必要な事項について具
体的に,かつ的確な応答を可能にするように適切な質問をすることが求められてお
り,そして,上記ウのとおり,本件造影剤の禁忌及び慎重投与の事由として,造影
剤による副作用の既往歴やアレルギー体質等が挙げられ,しかも,アレルギー体質
等については,本人のみならず,両親,兄弟の体質をも問題とされていることから
すると,被告Bが,本件検査実施前に,Cに,問診の目的を理解させた上で,本件
造影剤の禁忌及び慎重投与の各事由に従って慎重な問診を行っていれば,上記イ認
定のとおり,Cにおいて,Fの死因について,造影剤の検査の際に急変を起こして
死亡したとの認識を
有していたのであるから,Cが,被告Bに対し,父であるFが造影剤の検査の際に
急変を起こして死亡したことを答えていたであろうことは容易に推認できるといわ
なければならない。
オ ウに判示したとおり,被告Bは,本件事故後に,原告に対し,Cの父が造影剤
を使用して死亡したのであれば,Cに対し,本件検査をしなかった旨説明している
こと,被告B自身,患者の親が造影剤の検査で死亡した可能性がある場合には,本
件造影剤を使用する本件検査を実施しなかったであろうと供述していること,別紙
診療経過一覧表記載の事実及び証拠(乙A1,原告本人,被告B本人)によれば,
Cに主として疑われていたのは蜂窩織炎であって,直ちに生命の危険を生ずるよう
な疾患ではなく,その症状も改善傾向にあり,本件検査の必要性は必ずしも高かっ
たとは認め難いことからすれば,被告Bは,上記エ記載のとおり,Cがしたであろ
うと推認される回答を聞いていれば,本件検査の実施を中止していたと認められ
る。
カ したがって,Cについて,被告Bが十分な問診をしていれば,本件検査が中止
されたことが認められるのであって,被告Bの問診義務違反と,Cの死亡との間に
は,相当因果関係があるというべきである。
(5) 以上によれば,被告Bには,Cに対し,問診を怠った過失があり,かかる過失
によって,Cは死亡したものと認めることができ,被告Bは,不法行為に基づき,
被告A大学は,使用者責任に基づき,それぞれ原告に対し損害賠償義務を負う。
3 争点(6)(損害額)について
(1) 逸失利益
証拠(甲A3,C1,原告本人)によれば,Cは,死亡当時39歳であったこと,
平成11年に給与所得として年間520万円の収入を得ていたこと,被扶養者が1
名いたことが認められるところ,生活費を40パーセント控除し,28年のライプ
ニッツ係数により中間利息を控除すると,Cの逸失利益の額は,4648万176
0円となる。なお,証拠(原告本人)によれば,Cは,平成12年中に勤務会社を
退職し,独立する計画であったことが認められるが,独立後の収入については,全
く不明であるから,上記のとおり平成11年における給与所得額を基準として逸失
利益を算定するのが相当である。
(計算式)
 520万円×0.6×14.898 = 4648万1760円
(2) 死亡慰謝料
  上記認定にかかる過失の態様等諸般の事情を総合すると,Cの死亡慰謝料とし
て2600万円を相当と認める。
(3) 相続
証拠(甲A3,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,Cの相続人は,妻である原
告及び母であると認められるところ,原告は,上記(1)(2)につきその3分の2であ
る4832万1173円を相続したと認められる。
(4) 葬儀費用
  葬儀費用のうち原告に生じた損害とすべきものは,80万円を相当と認める。
(5) 弁護士費用
  本件訴訟提起追行のために原告が要した弁護士費用のうち,340万円につ
き,本件不法行為と相当因果関係あるものとして被告らに負担させることを相当と
認める。
(6) 以上によれば,原告に生じた損害額は,5252万1173円となる。
4 以上によれば,原告の本訴請求は,被告Bに対し,不法行為に基づき,被告A
大学に対し,使用者責任に基づき,連帯して金5252万1173円及びこれに対
する不法行為の日の後である平成12年9月6日から支払済みまで民法所定の年5
分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,そ
の余は理由がないからいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第34部
裁判長裁判官 前 田 順 司
裁判官 浅 井   憲
裁判官 増 尾   崇・
【診療経過一覧表】
年月日(日
時)


診療経過(入通院状況・主訴・所見・診
断)
検 査・処 

証  

原 告 の 反 論

平成12年5月
1日
 







 
-初診-
主 訴:喉の痛み
現病歴:2日前から喉の痛みあり。発熱な
し。
前日、休日診療所受診し、抗生剤(ケフラ
ール)処方される。
本日、I内科受診し、扁桃周囲膿瘍を指摘
され、紹介受診となる。
経口摂取は減退。
所 見:咽頭部発赤。口蓋扁桃は,白苔,
腫脹あり。頸部リンパ節触知。
診 断:急性扁桃炎
主な血液検査結果:
WBC10010,RBC529万,Hb15.1g,Ht47.5
CRP8.3,好中球70.3(%),リンパ球18.8,単
球6.0,好
酸球1.3,好塩基球0.9,LUC2.6%,総蛋白
8.8g/dl
IgG1650㎎/dl,IgA320,IgM70
 
①輸液
②抗生剤(フ
ルマリン)の点
滴静注
③内服処方2
日分
(抗生剤バナ
ン,消炎鎮痛
剤ロキソニ
ン,胃炎・胃
潰瘍剤ムコス
タ)
④消炎鎮痛
剤頓用(坐剤・
ボルタレン3
コ)
⑤血液検査,
尿検査,咽頭
部細菌培養
 
乙A1号

①~④
⑯・⑰
乙A1号

⑧~⑬
 
 
同月2日
 

  
①輸液
②抗生剤(フ
ルマリン,ダラ
シンS)の点
滴静注
③内服処方4
日分(抗生剤
フロモックス,
ロキソニン,ム
コスタ)
乙A1号
証⑤
乙A3号
証①
 
 
同月3日
 

  
①輸液
②抗生剤(フ
ルマリン,ダラ
シンS)の点
滴静注
乙A1号
証⑤
 
 
同月4日
 

  
①輸液
②抗生剤(フ
ルマリン,ダラ
シンS)の点
滴静注

  
同月5日
 

  
①輸液
②抗生剤(フ
ルマリン,ダラ
シンS)の点
滴静注

  
同月6日〃①内服処方5
日分(抗生剤
ファロム,ムコ
スタ)
乙A1号
証⑥
乙A3号
証②
   ②消炎鎮痛
剤頓用(ロキ
ソニン5錠)
 
 
 
年月日(日
時)



診療経過(入通院状況・主訴・所見・診
断)
検 査・処 

証  

原 告 の 反 論
同年9月1日
 

 
8月22日から左耳前部が腫れてきて口が
開けられなくなった、ということで、D大学
付属病院内科から精査・治療目的で紹介
受診。
所 見:発熱なし。鼻腔・口腔内に異常所
見なし。左耳前部皮下組織全体が腫脹し
ているが、明らかな腫瘤はなし。
薬剤アレルギーがないことを確認
9月5日のCT検査(単純・造影)予約
診 断:蜂窩繊炎疑い。
他に膿瘍,腫瘍も疑われる。
主な血液検査結果:
WBC9320,RBC441万,Hb13.3g,Ht39.1
Plt42.5万,CRP0.3以下,総蛋白
7.4,GOT16
GPT29,Na141,K4.9,Cl106,好中球45.1
リンパ球29.0,単球45.8,好酸球16.7
好塩基球1.4,LUC1.8,血沈14㎜/60分
 
①内服処方5
日分(抗菌剤
スパラ)
血液検査
 
乙A1号

⑥・⑦・
⑲・⑳
乙A1号

⑭・⑮
 
 
同月5日
14:20ころ
 




 
CT検査室入室
被告B:左耳前部の診察
検査台に仰臥位で横になる
J技師:検査内容説明
被告B,J技師:操作室に退出   
14:23
14:30ころ
  
単純CT撮影
被告B:単純CTのモニターで左側頭部~
下顎部皮下に索状の高吸収域所見を認
める。
炎症や腫瘍も否定できないと診断し、J技
師に造影のタイミングを指示。
J技師:単純CT終了後、CT検査室入室。
オプチレイ320の100mlシリンジをインジエ
クター(自動注入器)にセット。
造影部位,注入量100ml,注入速
度(0.8ml/秒)の確認のため操作室に退
室。
被告B:CT検査室入室。『大変情報量の
多い検査となります。
造影剤を使うにあたって、いくつかお尋ね
します。』
亡C:「はい、わかりました。」
『今日は食事を抜いてきましたか?』
単純CT撮影
 
乙A5号

①~③
乙A2号

③~⑥
 
被告菊竹は問診
を実施しなかっ
た。
 
年月日(日診診療経過(入通院状況・主訴・所見・診検 査・処 証  原 告 の 反 論
時)療

断)置拠
  
亡C:「抜いてきました。」
『今まで造影剤を使う(注射をする)検査を
したことありますか?』亡C:「ありません。」
『今まで食べ物や薬でじん麻疹などのアレ
ルギーが出たり、気分が悪くなったりしたこ
とありますか?じん麻疹が出やすいという
ことはないですか?花粉症があったり、喘
息といわれたことはないですか?』
亡C:「ありません。」
左腕の前腕から注射針を入れ、逆流を確
認。
造影剤のシリンジに延長チューブで接
続。
インジエクターのスイッチを操作し、ヨード
テストもかねて少量の造影剤を注入し、血
管外漏出が無いこと,何ら変化が無いこと
を確認。
この間、亡Cに「これで特に症状の変化が
なかったら、今度は連続してお薬を入れて
いきます。お薬を入れていくと、体の中が
ぽーっと熱くなってきます。これはお薬が
全身にまわっている証拠で、誰でもそうな
りますので心配ありません。もし、熱くなる
以外に気持ち悪くなったり、胸が苦しくな
ったり、咳が出たり、鼻がムズムズしたりす
るようなことがあったら、すぐに言って下さ
い。マイクが付いていて、外に聞こえるよう
になっています。」と説明。亡Cの症状の
変化がないことから、J技師に造影剤注入
開始を指示。
 
  
         
 
14:40ころ
  
造影剤注入開始。
被告B:50cc位注入するまで(約1分間)は
傍についており、「特に変わりないです
か?」と問いかける。亡Cより「変わりな
い。」との返事があり、症状の変化がないこ
とを確認し、操作室に退室。
モニターを確認していると、70cc注入した
ところ(10~20秒)亡Cが「頭が痛い」と訴え
たので、直ちにCT検査室に入り造影剤の
注入を中止。
左橈骨動脈の脈拍しっかり触知。
「気持ち悪い」と訴えあり。安心するよう伝
え、他に息が苦しくないか、痒くないか、な
どを問いかけ
造影CT検査
 
乙A4号

 
 
年月日(日
時)



診療経過(入通院状況・主訴・所見・診
断)
検 査・処 

証  

原 告 の 反 論
るも「ない。」という返事。そして、容態の変
化がないか観察をしつつ、放射線科医
師・看護婦の応援を要請。
  
直後に放射線科K医師がかけつけ、誤嚥
を防ぐため、亡Cを左側臥位とする。
被告Bは点滴とソルコーテフを準備し開始
する。
看護婦が来る。
呼び掛けても嘔吐を繰り返し返答が鈍くな
る。
麻酔科医に連絡
 
フルクトラクト
点滴開始
ソルコーテフ
1000㎎静

 
麻酔医への連絡
がこの時点に行わ
れたかは非常に
疑問である。
14:45
14:57
15:09
15:15頃
15:45
  
自発呼吸が低下したため、アンビュー、気
管内挿管セットの準備を指示し、再度の
呼びかけ。下顎挙上で呼吸が回復した直
後麻酔科医2名到着。
顔面冷汗著明、呼吸あるが右大腿動脈触
知せず、橈骨動脈を微かに触知。
気管内挿管(咽頭はやや蒼白で浮腫があ
り、声門は閉じていた。)。
スボンを下ろし、失禁を確認。
右大腿静脈に16ゲージの留置針で確保。
瞳孔は正常
心臓マッサージ継続
除細動200j、1~2分後に300jのバージョ
ンをかけたが、自己心拍は反応せず。
瞳孔散大
 
心電図装着,
心臓マッサー
ジ,気管内挿

ボスミン2A
(合計4A)気
管内投与
ボスミンなど
の治療薬を経
静脈的に投
与を開始
右鎖骨下静
脈より中心静
脈を確保
除細動
左大腿動脈
確保(IABP
挿入)
 
この時点で自発
呼吸が回復したと
は到底考えられな
い。
 
16:05
 
IC

 
ICUへ搬送
その後、諸々の治療を行う。 
乙A2号
証・
 
 
同月6日
1:05
 

 
死亡確認
  
乙A2号
証<28> 
   
 ※ 下線部は,争いがある事実である。
争点整理表
1 争点(1)(被告Bが,Cに対し,本件検査の前に問診を怠った過失の有無)につ
いて
(原告の主張)
  問診は,本件検査の適応の有無を判断するための情報を得る重要な手段である
が,被告BがCに対する問診を怠ったことにより,本件検査の適応に関する必要な
情報を得られず,その結果,被告Bは,Cに適応のない本件検査を行い,Cを死亡
させた。
(被告らの主張)
 被告Bは,Cに対し,本件検査前に,造影剤の使用経験がないこと,アレルギー
を疑わせる既往歴がないことを問診で確認した。
2 争点(2)(被告Bが,Cに対し,本件造影剤投与を避けるべき事情の有無)につ
いて
(原告の主張)
(1) Cのアレルギー等及びこれがあったとする根拠
 ア 花粉症について
Cは,花粉症に罹患していた(甲A6,10,11)。
イ 金属アレルギーについて
  Cは,金属アレルギーの体質を有していた(甲A6)。
ウ 好酸球増多について
  Cには,好酸球増多の所見があった(甲A2)。
エ Cの父Fの死因について
Cの父Fは,造影剤による副作用で死亡した(甲A6,8の1,8の2)。診療録
には,造影剤注入の事実が記載されていないが,注入直前の状態であったことが明
記されており,その段階での突然の意識喪失の記載は,不自然であり,造影剤の副
作用による事故があったと考えられ,原告もCから生前その旨聞かされていた。
オ 本来行われなければならない問診が行われていない以上,Cの急激な症状の悪
化及び死亡の経過から見て,Cにはその他にも本件造影剤の使用が禁忌・原則禁忌
ないし慎重投与に該当する兆候があった可能性が十分にある。
(2) 本件造影剤投与を避けるべきこと及びその根拠
ア 花粉症について
  花粉症がある場合,本件造影剤は慎重投与とされている(甲B3)。
イ 金属アレルギーについて
  金属アレルギーがある場合,本件造影剤は慎重投与である(甲B3)。
ウ 好酸球増多について
  薬物アレルギーの患者には,一般に好酸球増多が見られ(甲B1),アレルギ
ーを起こしやすい体質を有する患者については,本件造影剤が慎重投与とされてお
り(甲B3),緊急性のない本件においては,造影剤投与を避けるべきであった。
エ Cの父Fの死因について
  Fが造影剤の副作用で死亡した以上,同人は,ヨード造影剤に過敏症であった
と考えられ,その実子で遺伝子を受け継いだCについてもヨード造影剤に過敏症が
あったというべきであり,本件造影剤投与を避けるべきであった。被告らも,原告
に対し,Cの父親が造影剤の副作用で死亡したと知っていれば,本件検査を行わな
かったと述べていた。
(被告らの主張)
 (1) Cにアレルギー等がなかったこと
 Cには,花粉症及び金属アレルギーはなかった。Cには,好酸球増多の所見が認
められているが,それによって,Cがアレルギー疾患であったとはいえない。
 Cの父Fの死因は,造影剤によるアレルギー(アナフィラキシー)ではない。
(2) 原告主張の各事実があった場合にも,本件造影剤の投与を避ける必要はないこ
と及びその根拠
ア 花粉症について
花粉症は,造影剤の能書の慎重投与の項目にも具体的に挙げられていない。そし
て,一般臨床の場では,仮に,Cが花粉症であったとしても,それ自体を理由に造
影剤の投与を避けなければならないとはされていない。
Cの症状及び所見からすれば,本件検査は,必要な検査であり,しかも,被告B
は,本件造影剤の副作用が出現した場合には,迅速かつ必要な処置ができる体制の
下,本件検査を行った。
イ 金属アレルギーについて
Cが金属アレルギーであったとしても,そのアレルギーは,Ⅳ型であり,本件造影
剤のアレルギーのⅠ型と異なる。
しかも,本件造影剤の能書上,金属アレルギーは,慎重投与の項目にも具体的には
挙げられておらず,一般臨床の場ではそれ自体を理由に造影剤の投与を避けなけれ
ばならないとされていない。
ウ 好酸球増多について
好酸球増多は,本件造影剤の能書上慎重投与の項目にも具体的に挙げられていな
い。
エ Cの父Fの死因について
検査を受ける患者の父が造影剤のアレルギーがあることは,本件造影剤の能書上,
慎重投与の項目に具体的に挙げられていない。しかも,一般臨床の場ではそれ自体
を理由に,造影剤の投与を避けなければならないとはされていない。
3 争点(3)(被告Bが,Cに対し,造影剤の予備注入を怠った過失の有無)につい

(原告の主張)
  造影剤の予備注入により,副作用の発生が予知できた可能性があるから,被告
Bは,Cに対し,本件造影剤の予備注入を実施すべき義務があったが,本件造影剤
の予備注入を行わずに本件検査を行い,Cを死亡させた。
(被告らの主張)
予備注入によってアレルギーがないとされても,本検査でアナフィラキシー様ショ
ックを起こす場合があり,また,逆のこともあるから,造影剤の予備注入によるテ
ストは,一般臨床の場では信頼性がないとされているし,本件造影剤の製造メーカ
ーも,平成12年には造影剤にテストアンプルの添付を廃止しており,被告Bに予
備注入を実施すべき義務があったとはいえない。また,仮に,本件造影剤の予備注
入を行ったとしても,本件検査によるCのアナフィラキシー様ショックを回避でき
たとはいえない。
4 争点(4)(造影剤の注入方法(注入量及び注入速度)についての過失の有無)に
ついて
(原告の主張)
(1) 本件造影剤の注入量及び注入速度
  本件造影剤の注入量は,50ないし100mlであるところ,適正な注入速度
は,4ml/分であるが,Cの本件造影剤注入後の急激な容態の変化から見て,被
告Bは,適正な注入速度を大幅に上回る速度で造影剤を注入したというべきであ
る。
(2) 結論(注入速度の速さがCの死をもたらしたこと)
  被告Bが,適正な速度を超える速度で急速に本件造影剤を注入したことによ
り,Cが重篤なショック状態に陥り,死亡した。
(被告らの主張)
(1) 本件造影剤についての適正な注入量及び注入速度
  本件造影剤の適正な注入量は100mlであり,注入速度は,一般臨床の場で
は2~3ml/秒,速い場合には4.5ml/秒である。
(2) 本件検査における本件造影剤の注入量及び注入速度
本件検査における造影剤の予定注入量は100mlであり,注入速度は0.8ml/
秒である。
(3) 結論
上記のとおり,Cに対する本件造影剤の注入速度が速かったことはないし,予定注
入量も多量ではなかった。そもそもCに対する造影剤の注入速度及び注入量がアナ
フィラキシー様ショックを起こした原因であるとはいえない。
5 争点(5)(重篤なショックに備えた管理及び準備態勢の不備とCのショック発現
後の対処方法,特に,エピネフリンの投与等の処置が遅れた過失の有無)について
(原告の主張)
(1) 被告Bは,本件造影剤の副作用による重篤なショックに備えて十分な管理体制
の下で,本件検査を実施すべきであったところ,事前にエピネフリン等の薬剤の準
備が行われず,放射線医や麻酔医,看護婦などに直ちに応援を求めることができる
連絡体制も不十分なまま本件検査を行った。
(2) Cに対し行われた処置で不適切な点,特にエピネフリンの投与が遅れたこと
  本件造影剤による副作用の兆候が現われた段階で,直ちに本件造影剤の注入を
中止し,顔面浮腫,嘔吐等のショック症状が見られた時点で直ちに唯一即効性のあ
るエピネフリンを投与し,気道確保も行うべきところ,被告Bは,これらの対応を
直ちに行わなかった。
(3) 結論
  被告BのCに対する処置が遅れたために,Cが重篤なショック状態に陥り死亡
した。
(被告らの主張)
被告Bは,本件造影剤が50ml位注入されるまでCのそばにいて副作用の出現が
ないことを確認しており,また,「頭が痛い」という訴えがCからあって,すぐにC
のそばに行き,本件造影剤による副作用を疑ってその注入を止めている。この段階
では,Cの意識は清明で,動脈の拍動もしっかりしていた。その後,応援医師,看
護婦も駆けつけ,嘔吐による気管内誤嚥を防ぐための体位をとり,輸液,ソル・コー
テフ1,000mgの静注を行った。その後,自発呼吸の低下,動脈の拍動が弱まっ
てきたため,気管内挿管及びエピネフィリンの気管内投与などを行っている。造影
剤による副作用の多くは軽いもので,エピネフィリンの投与をしないで回復するこ
と,エピネフィリンの副作用からその安易な投与は避ける必要があることなどか
ら,Cに対する
エピネフィリンの投与の時期が遅かったということはない。
6 争点(6)(損害額)について
(原告の主張)
7392万0414円及びこれに対する不法行為の後である平成12年9月6日か
ら支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金
内訳
(1) 死亡による慰謝料3000万円
(2) 死亡による逸失利益5840万0552円
死亡時の年収560万円,就労可能年数28年,生活費控除率30%,ライプニッ
ツ係数14.8981
560万円×(1-0.3)×14.8981=5840万0552円
(3) 葬儀費用120万円
(4) 弁護士費用672万円
(5) 上記(1)+(2)+(3)=8960万0552円
(6) (5)のうち原告の相続分(5)÷4×3=6720万0414円
(7) (4)+(6)=7392円0414円
(被告らの主張)
  争う。

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◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

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残り応募人数(2019年5月1日現在)
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独立支援は3名

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