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平成22年8月31日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成21年(ワ)第1986号特許権侵害差止請求事件
口頭弁論終結日平成22年7月13日
判決
大韓民国<以下略>
原告三星電子株式会社
同訴訟代理人弁護士田中昌利
同小原淳見
同渡邉瑞
同高橋雄一郎
同大堀健太郎
同訴訟代理人弁理士望月尚子
東京都町田市<以下略>
被告更生会社SpansionJapan株式会社管財人

同訴訟代理人弁護士牧野利秋
同鈴木修
同矢部耕三
同岡本義則
同小野智博
同永島孝明
同安國忠彦
同浅村昌弘
同補佐人弁理士上田忠
同田中拓人
同磯田志郎
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1被告は,別紙被告製品目録記載1の製品(以下「被告製品1」という)を。
譲渡し,輸入し,譲渡の申出をしてはならない。
2被告は,別紙被告製品目録記載2の製品(以下「被告製品2」といい,被,
告製品1と被告製品2を総称して「被告製品」という)を製造してはならな。
い。
3被告は,その占有に係る被告製品1並びに被告製品2及びその半製品を廃棄
せよ。
第2事案の概要
本件は,フラッシュメモリ装置の特許権を有する原告が,更生会社であるS
pansionJapan株式会社(以下「訴外会社」という)による被。
告製品の譲渡,製造等が上記特許権を侵害する行為であるとして,訴外会社の
管財人である被告に対し,特許法100条1項に基づき被告製品1の譲渡,輸
入及び譲渡の申出並びに被告製品2の製造の差止めを求めるとともに,同条2
項に基づき被告製品の廃棄を求める事案である。
1前提事実(争いがない)。
(1)当事者
原告は,半導体装置の製造,販売等を業とする会社である。
訴外会社は,半導体集積回路の開発・製造及び販売等を業とする会社であ
り,本件訴えが提起された後である平成21年3月3日,東京地方裁判所に
,,,。おいて更生手続開始の決定を受け同日被告がその管財人に選任された
,,,。訴外会社は被告製品2を製造しておりまた被告製品1を譲渡している
(2)本件特許権
原告は,次の特許権(以下,その特許請求の範囲請求項1の発明を「本件
発明1,同請求項2の発明を「本件発明2」といい,本件発明1と本件発」
明2とを併せて「本件発明」ということがある。また,本件発明に係る特許
を「本件特許」といい,本件特許に係る明細書(別紙特許公報参照)を「本
件明細書」という)を有している。。
特許番号第3834189号
発明の名称フラッシュメモリ装置
出願日平成12年7月12日
登録日平成18年7月28日
優先日平成11年7月13日
特許請求の範囲
【請求項1】
「階層的なワードライン構造を有する不揮発性半導体メモリ装置におい
て,
各々がローカルワードラインに連結されたメモリセルを有する複数個のセ
クターと,
各々対応する前記セクターを通して配置された複数個のグローバルワード
ラインと,
奇数番グローバルワードラインの中の一つのワードラインを選択する第1
グローバルデコーダと,偶数番グローバルワードラインの中の一つのワード
ラインを選択する第2グローバルデコーダとを有するグローバルワードライ
ン選択回路と,
前記奇数番グローバルワードラインに各々対応し,各々が,対応する奇数
番グローバルワードラインが選択される時に,対応するローカルワードライ
ンの中の一つのワードラインをワードライン電圧に駆動する第1ローカルデ
コーダと,
前記偶数番グローバルワードラインに各々対応し,各々が,対応する偶数
番グローバルワードラインが選択される時に,対応するローカルワードライ
ンの中の一つのワードラインを前記ワードライン電圧に駆動する第2ローカ
ルデコーダとを含み,
前記第1及び第2ローカルデコーダの各々は,対応するローカルワードラ
インに各々連結された複数個のドライバを有し,
各ドライバは,対応するグローバルワードラインの信号に対応するローカ
ルワードラインを行パーシャルデコーダに連結するプルアップトランジスタ
ーと,
前記対応するグローバルワードラインの信号に従って前記対応するローカ
ルワードラインをブロックデコーダに連結するプルダウントランジスターで
構成し,
前記選択された奇数番/偶数番グローバルワードラインに対応するローカ
ルワードラインの中の二つのローカルワードラインが連続的に選択される
時,以前に選択されたローカルワードラインの電圧が,放電信号に応答して
対応するドライバのプルダウントランジスターを通じて放電されることを特
徴とするメモリ装置」。
【請求項2】
「前記行パーシャルデコーダは,読み出し及びプログラム動作に必要な前
記ワードライン電圧を出力し,
前記ブロックデコーダは,消去動作に必要な前記ワードライン電圧を出力
することを特徴とする請求項1に記載のメモリ装置」。
(3)構成要件の分説
ア本件発明1を構成要件に分説すると次のとおりである(以下,分説し
た構成要件をそれぞれ「構成要件1−A」などという。。)
1−A階層的なワードライン構造を有する不揮発性半導体メモリ
装置において,
1−B各々がローカルワードラインに連結されたメモリセルを有
する複数個のセクターと,
1−C各々対応する前記セクターを通して配置された複数個のグ
ローバルワードラインと,
1−D−1奇数番グローバルワードラインの中の一つのワードライン
を選択する第1グローバルデコーダと,
1−D−2偶数番グローバルワードラインの中の一つのワードライン
を選択する第2グローバルデコーダと
1−D−3を有するグローバルワードライン選択回路と,
,,1−E−1前記奇数番グローバルワードラインに各々対応し各々が
対応する奇数番グローバルワードラインが選択される時に,
対応するローカルワードラインの中の一つのワードライン
をワードライン電圧に駆動する第1ローカルデコーダと,
,,1−E−2前記偶数番グローバルワードラインに各々対応し各々が
対応する偶数番グローバルワードラインが選択される時に,
対応するローカルワードラインの中の一つのワードライン
を前記ワードライン電圧に駆動する第2ローカルデコーダ
とを含み,
1−F−1前記第1及び第2ローカルデコーダの各々は,対応するロ
ーカルワードラインに各々連結された複数個のドライバを
有し,各ドライバは,
1−F−2対応するグローバルワードラインの信号に対応するローカ
ルワードラインを行パーシャルデコーダに連結するプルア
ップトランジスターと,
1−F−3前記対応するグローバルワードラインの信号に従って前記
対応するローカルワードラインをブロックデコーダに連結
するプルダウントランジスターで構成し,
1−G前記選択された奇数番/偶数番グローバルワードラインに
対応するローカルワードラインの中の二つのローカルワー
ドラインが連続的に選択される時,以前に選択されたロー
カルワードラインの電圧が,放電信号に応答して対応する
ドライバのプルダウントランジスターを通じて放電される
1−Hことを特徴とするメモリ装置。
イ本件発明2を構成要件に分説すると次のとおりである(以下,分説し
た構成要件をそれぞれ「構成要件2−A」などという。。)
2−A前記行パーシャルデコーダは,読み出し及びプログラム動
作に必要な前記ワードライン電圧を出力し,
2−B前記ブロックデコーダは,消去動作に必要な前記ワードラ
イン電圧を出力する
2−Cことを特徴とする請求項1に記載のメモリ装置。
(4)当事者間に争いのない被告製品の構成
被告製品の構成について,当事者間に争いのない部分は,別紙被告製品説
明書に記載のとおりである。
また,被告製品の各々のセクターがワードラインに接続されたメモリセル
を有することも当事者間に争いがない。
(なお,別紙被告製品の構成についての当事者の主張のとおり,被告製品
の構成について争いのある部分がある)。
2争点
(1)被告製品は,本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)
(2)本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものか(争点2)
3当事者の主張
(1)被告製品は,本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)
(原告の主張)
ア被告製品は,下記(ア)ないし(ス)のとおり,本件発明1の構成要件をい
ずれも充足し,本件発明1の技術的範囲に属する。
(ア)構成要件1−Aについて
被告製品のうち半導体IC製品はフラッシュメモリ製品であり,被
告製品のうち半導体ウェーハにはこれらのフラッシュメモリ製品用チ
ップが多数作り込まれているしたがって被告製品はいずれも不。,,,「
揮発性半導体メモリ装置」に該当する。
また,被告製品の各セクター内には64対のドライバ選択ライン(W
LS[0]∼[63,/WLS[0]∼[63)と512本のワー]]
ドライン(WL[0]∼[511)があり,8本のワードライン(W]
L)には一対のドライバ選択ライン(WLS,/WLS)が対応する。
そして,64対のドライバ選択ライン(WLS[0]∼[63,/W]
[][]),([]LS0∼63が上位の層512本のワードラインWL0
∼[511)が下位の層に相当するから,被告製品は「階層的なワ],
ードライン構造」を有している。
したがって,被告製品は,構成要件1−Aを充足する。
(イ)構成要件1−Bについて
被告製品において,各々のセクターは,ワードラインに接続された
メモリセルを有するから,被告製品は,構成要件1−Bを充足する。
(ウ)構成要件1−Cについて
被告製品のドライバ選択ラインは「グローバルワードライン」に該
当する。また,被告製品のドライバ選択ラインは,一つのセクターに
ついてみれば「通して配置」されている。,
したがって,被告製品は,構成要件1−Cを充足する。
(エ)構成要件1−D−1について
a「奇数番グローバルワードライン(1−D−1)及び「偶数番グ」
ローバルワードライン(1−D−2)の解釈について」
(a)「奇数番「偶数番」が問題となるのは「グローバルワード」,,
ライン」についてであって「ローカルワードライン」についてで,
はなく,本件発明1では「ローカルワードライン」の並び順は問わ
ない。
(b)本件発明1においては「プルアップトランジスター」がPM,
OSであり「プルダウントランジスター」がNMOSであるとい,
,,う限定はないから二つのトランジスターが同時にオフ状態となり
それに起因してローカルワードラインがフローティング状態になる
という問題は前提にしていない。そして,本件明細書の段落【00
32】のフローティング状態のローカルワードラインに生じるカッ
プリングの問題とその解決についての記載は,本件明細書の特許請
求の範囲請求項12,13の発明に係る記載であり,本件発明1の
解釈に参酌されるべき記載ではない。
(c)本件明細書の特許請求の範囲請求項5には被告が主張する奇,「
数番ローカルワードラインと偶数番ローカルワードラインを交互に
配置する構成」や,PMOSトランジスターとNMOSトランジス
ターの組を一組用いることは何ら規定されていないから,同請求項
に係る被告の主張は失当である。
b被告製品が構成要件1−D−1を充足するか
複数のドライバ選択ラインの中の一つのドライバ選択ライン(WL
S[1]及び/WLS[1)を選択する回路Bは,NANDゲート]
1とこの出力が入力されるインバータ2(出力がAXA[1)と,]
AXA[1]とAXBが入力されるNANDゲート3と,このNAN
Dゲート3の出力が入力されるレベルシフタ回路4(出力がWLS
[1)と,このNANDゲート3の出力とR2信号が入力されるN]
ORゲート5と,このNORゲートの出力が入力されるインバータ6
(出力が/WLS[1)を有する。そして,ドライバ選択ラインW]
LS[1・/WLS[1]は「奇数番グローバルワードラインの中]
の一つのワードライン」に該当し,このドライバ選択ラインWLS
[1・/WLS[1]を選択する回路Bは「第1グローバルデコ],
ーダ」に該当する。
したがって,被告製品は,構成要件1−D−1を充足する。
(オ)構成要件1−D−2について
複数のドライバ選択ラインの中の一つのドライバ選択ライン(WL
S[0]及び/WLS[0)を選択する回路Aは,NANDゲート1]
とこの出力が入力されるインバータ2(出力がAXA[0)と,AX]
A[0]とAXBが入力されるNANDゲート3と,このNANDゲ
ート3の出力が入力されるレベルシフタ回路4(出力がWLS[0)]
と,このNANDゲート3の出力とR2信号が入力されるNORゲー
ト5と,このNORゲートの出力が入力されるインバータ6(出力が
/WLS[0)を有する。そして,ドライバ選択ラインWLS[0]]
・/WLS[0]は「偶数番グローバルワードラインの中の一つのワ
ードライン」に該当し,このドライバ選択ラインWLS[0・/WL]
[],「」。S0を選択する回路Aは第2グローバルデコーダに該当する
したがって,被告製品は,構成要件1−D−2を充足する。
(カ)構成要件1−D−3について
被告製品にはドライバ選択デコーダが存在し,これが「グローバル
ワードライン選択回路」に該当する。
したがって,被告製品は,構成要件1−D−3を充足する。
(キ)構成要件1−E−1について
,[][],[]被告製品のドライバD0∼D511のうちドライバD8
[],([][])∼D15はドライバ選択ラインWLS1及び/WLS1
に各々対応し,各々が,対応するドライバ選択ライン(WLS[1]及
[]),([]び/WLS1が選択される時に対応するワードラインWL8
∼WL[15)の中の一つのワードライン(WL[8)をワードライ]]
ン電圧に駆動する。そして,ドライバD[8]∼D[15]からなる回
路群は,いずれも「奇数番グローバルワードライン」に相当するドライ
バ選択ライン(WLS[1]及び/WLS[1)に対応し,ドライバ]
選択ライン(WLS[1]及び/WLS[1)が選択される時に,対]
応するワードライン(WL[8]∼WL[15)の中の一つのワード]
ライン(WL[8)をワードライン電圧に駆動する。よって,ドライ]
バD[8]∼D[15]からなる回路群は「第1ローカルデコーダ」に
該当する。
したがって,被告製品は,構成要件1−E−1を充足する。
(ク)構成要件1−E−2について
,[][],[]被告製品のドライバD0∼D511のうちドライバD0
[],([][])∼D7はドライバ選択ラインWLS0及び/WLS0
に各々対応し,各々が,対応するドライバ選択ライン(WLS[0]及
[]),([]び/WLS0が選択される時に対応するワードラインWL0
∼WL[7)の中の一つのワードライン(WL[0)をワードライン]]
電圧に駆動する。そして,ドライバD[0]∼D[7]からなる回路群
は,いずれも「偶数番グローバルワードライン」に相当するドライバ選
択ライン(WLS[0]及び/WLS[0)に対応し,ドライバ選択]
ライン(WLS[0]及び/WLS[0)が選択される時に,対応す]
るワードライン(WL[0]∼WL[7)の中の一つのワードライン]
([])。,[]WL0をワードライン電圧に駆動するよってドライバD0
∼D[7]からなる回路群は「第2ローカルデコーダ」に該当する。
したがって,被告製品は,構成要件1−E−2を充足する。
(ケ)構成要件1−F−1について
被告製品のドライバD[8]∼D[15]からなる回路群(上記(キ)
のとおり,この回路群が「第1ローカルデコーダ」に該当する)は,。
8個のドライバD[8]∼D[15]を含み,かつ,これらのドライバ
D[8]∼D[15]がそれぞれ対応するワードラインWL[8]∼W
L[15]に接続されている。また,被告製品のドライバD[0]∼D
[7]からなる回路群(上記(ク)のとおり,この回路群が「第2ローカ
ルデコーダ」に該当する)は,8個のドライバD[0]∼D[7]を。
含み,かつ,これらのドライバD[0]∼D[7]がそれぞれ対応する
ワードラインWL[0]∼WL[7]に接続されている。
したがって,被告製品は,構成要件1−F−1を充足する。
(コ)構成要件1−F−2について
被告製品の各ドライバは,当該ドライバに接続されたドライバ選択ラ
(,)(),インWLS/WLSの第1の信号WLSがHIGHのときに
対応するワードライン(WL)に,パーシャルデコーダに対応する回路
の出力電圧が現れるように,対応するワードライン(WL)をパーシャ
ルデコーダに対応する回路と電気的に結合するNMOSトランジスター
t0及びNMOSトランジスターt1の組を有する。その際,パーシャ
ルデコーダに対応する回路とワードライン(WL)とはNMOSトラン
ジスターt1が導通することによって接続されるから,NMOSトラン
ジスターt1は「プルアップトランジスター」に該当する。
したがって,被告製品は,構成要件1−F−2を充足する。
(サ)構成要件1−F−3について
被告製品の各ドライバは,ドライバ選択ライン(WLS,/WLS)
の第2の信号(/WLS)がHIGHのときに,対応するワードライン
(WL)をスイッチ回路と電気的に結合するNMOSトランジスターt
2を有する。上記スイッチ回路は,各セクターに一つずつ設けられ,ド
ライバ選択デコーダ,パーシャルデコーダに対応する部分に共通に入力
されるセクター選択信号の入力を受ける。さらに,被告製品は,入力さ
れたアドレス信号をデコードすることによってセクター選択信号を生成
するセクターアドレスデコーダ回路を有する。そして,セクターアドレ
スデコーダ回路及びスイッチ回路は「ブロックデコーダ」に,トランジ
スターt2は「プルダウントランジスター」にそれぞれ該当する。
したがって,被告製品は,構成要件1−F−3を充足する。
(シ)構成要件1−Gについて
被告製品においては,アドレス遷移がある場合,現在選択されてい
るワードラインにつき,アドレス遷移が起こる前に,①R1信号に応
,答してパーシャルデコーダに対応する回路の出力が0Vに切り替わり
ワードラインを0Vに戻し(処理1,同時に,②R2信号に応答し)
て,NMOSトランジスターt2を導通させ,スイッチ回路につなげ
(処理2。この処理2により,ワードラインの電圧が非選択電位(0
V)になる時間を短縮する,③アドレス遷移が起こる。。)
上記「アドレス遷移」は,例えば,ワードラインWL[0,ワード]
ラインWL[1]が連続的に選択される場合も含む。そして,二つの
ワードラインWL[0,WL[1(これらは「偶数番グローバルワ]],
ードライン」に相当するドライバ選択ライン(WLS[0]及び/W
LS[0)に対応する)は「二つのローカルワードライン」に該当]。,
する。
また,R2信号は,残留電位の放電のための信号であり,この信号
が生成されるタイミングについて,行アドレスが遷移する前後を問う
ものではないから,R2信号は「放電信号」に該当する。,
そして,R2信号が供給されると,ワードラインは一斉に0Vに接
地され,このタイミングにおいて選択されているローカルワードライ
ンは存在しないから,放電動作は「以前に選択されたローカルワード,
ライン」に対して行われているといえる。
以上によれば,被告製品は,構成要件1−Gを充足する。
(ス)構成要件1−Hについて
a被告製品は,フラッシュメモリ製品である半導体IC製品及びこ
の半導体IC製品用チップが多数作り込まれた半導体ウェーハであ
る。
そして,フラッシュメモリ製品は「メモリ装置」に該当する。ま,
た,半導体ウェーハも「メモリ装置」が多数搭載されているもので
あり,同様に「メモリ装置」といい得る。
したがって,被告製品は,構成要件1−Hを充足する。
b被告が,半導体ウェーハは「メモリ装置」ではないと主張するの
であれば,原告は,予備的に特許法101条1号の適用を主張する。
イ被告製品は,以下の(ア)ないし(ウ)のとおり,本件発明2の構成要件を
いずれも充足し,本件発明2の技術的範囲に属する。
(ア)構成要件2−Aについて
被告製品のパーシャルデコーダに対応する回路は,8本の出力線の
うち,書込み・読出しを行うワードラインに対応する出力の電圧を,
書込み・読出しに必要な電圧に切り替え出力し,その他の出力は0V
に維持され,これらがドライバを通してワードラインに供給される。
そして,上記の書込み・読出しに必要な電圧は「読み出し及びプログ,
ラム動作に必要な前記ワードライン電圧」に該当する。
したがって,被告製品は,構成要件2−Aを充足する。
(イ)構成要件2−Bについて
上記ア(サ)記載のとおり,セクターアドレスデコーダ回路及びスイ
ッチ回路は「ブロックデコーダ」に該当し,このうち,スイッチ回路
は「消去動作に必要な「電圧を出力」する。」
したがって,被告製品は,構成要件2−Bを充足する。
(ウ)構成要件2−Cについて
上記アのとおり,被告製品は,本件発明1の構成要件をいずれも充
足する。
したがって,被告製品は,構成要件2−Cを充足する。
(被告の主張)
ア被告製品は,下記(ア)ないし(コ)のとおり,本件発明1の構成要件を充
足しないから,本件発明1の技術的範囲に属しない。
(ア)構成要件1−Aについて
「階層的なワードライン構造」とは,一つのセクターを超えたメモリ
セルの全体的な構造を指し,グローバルワードラインとローカルワード
ラインでセクター間とセクター内が分割された階層構造を意味する。被
告製品のドライバ選択ライン及びワードラインはいずれも一つのセクタ
ー内にとどまるので「階層的なワードライン構造」を充足しない。,
また,被告製品2は,半導体ウェーハであり「不揮発性半導体メモ,
リ装置」ではない。
したがって,被告製品は,構成要件1−Aを充足しない。
(イ)構成要件1−Bについて
「」被告製品のワードラインが構成要件1−Bのローカルワードライン
に相当することは認める。
(ウ)構成要件1−Cについて
「各々対応する前記セクターを通して配置された複数個のグローバル
ワードライン」とは「グローバルワードライン」が複数のセクターを,
通して配置されることを意味する。
被告製品において,ドライバ選択ラインは,一つのセクター内にとど
まっており「グローバルワードライン」に当たらない。また,ドライ,
バ選択ラインは複数個のセクターを通して配置されていないから前,,「
記セクターを通して配置」を充足しない。
したがって,被告製品は,構成要件1−Cを充足しない。
(エ)構成要件1−D−1ないし1−D−3について
a「奇数番グローバルワードライン(1−D−1)及び「偶数番グ」
ローバルワードライン(1−D−2)の解釈について」
(a)そもそも,本件発明は,半導体集積回路ダイの占有面積を最小
化するために,PMOSトランジスターとNMOSトランジスター
の組を一組のみ用いることとしたため,①PMOSトランジスター
とNMOSトランジスターが共にオフの状態となってローカルワー
ドラインがフローティング状態となることから,誘起電圧(カップ
リング)の問題が生じ,また,②パーシャルデコーダからの出力が
0Vに戻ってもローカルワードラインが0Vにならないという残留
電位の問題が生じている。これら二つの問題を解決するため,本件
発明では,奇数番ローカルワードライン用グローバルワードライン
の制御経路と偶数番ローカルワードライン用グローバルワードライ
ンの制御経路を分け,奇数番ローカルワードラインと偶数番ローカ
ルワードラインを交互に配置するという構成(以下「制御経路分離
構成」という)を採用している。。
(b)本件明細書の発明の詳細な説明の記載では,奇数番グローバル
ワードラインOGWLiは,WL1,WL3,WL5,WL7と,
偶数番グローバルワードラインEGWLiは,WL0,WL2,W
L4,WL6とそれぞれ対応し,明確に奇数番と偶数番が分かれた
構成になっており(本件明細書段落【0023,図3等参照,】)
この構成は,フローティング状態になる偶数番(または奇数番)の
,()ローカルワードラインを接地電圧を有する奇数番または偶数番
のローカルワードラインによって遮蔽することにより,隣接したロ
ーカルワードラインの間のカップリングによる不要な電圧の誘起を
防止することを目的としている。
よって,本件発明の「奇数番グローバルワードライン(1−D」
−1)は,奇数番のローカルワードラインとのみ対応するグローバ
ルワードラインでなければならず,また「偶数番グローバルワー,
ドライン(1−D−2)は,偶数番のローカルワードラインとの」
み対応するグローバルワードラインでなければならない。
しかしながら,被告製品のドライバ選択ラインは,奇数番と偶数
番の双方を含むワードラインと対応し,被告製品には,奇数番との
み,あるいは偶数番とのみ対応するドライバ選択ラインは存在しな
い。
(c)上記(b)の解釈は,本件明細書の特許請求の範囲請求項1に従
属する同請求項5の記載からも裏付けられる。
,,,すなわち同請求項5記載の発明は制御経路分離構成を採用し
ローカルワードラインがフローティング状態となることによって生
じるカップリングによる誘起電圧を防止するため,一方のグローバ
ルワードラインが選択されるとき,他方を接地することによって遮
蔽を行うものであり,同項の「奇数番/偶数番グローバルワードラ
イン」とは,それぞれ独立して制御され,それぞれと対応するロー
カルワードラインが交互に配置された偶数番ローカルワードライン
用グローバルワードラインと奇数番ローカルワードライン用グロー
バルワードラインを意味するものであることが明らかである。そし
て,同請求項1の「奇数番/偶数番グローバルワードライン」も同
請求項5と同じ意味に理解されるべきである。
(d)また,ドライバ選択ラインは,上記(ウ)のとおり「グローバ,
ルワードライン」に当たらない。
,,「」(e)以上によれば被告製品は奇数番グローバルワードライン
(1−D−1「偶数番グローバルワードライン(1−D−2)),」
のいずれも充足しない。
b(a)「第1グローバルデコーダ(1−D−1)は,上記aの「奇」
数番グローバルワードライン」だけを制御するものであり「第2,
グローバルデコーダ(1−D−2)は,上記aの「偶数番グロー」
バルワードライン」だけを制御するものである。しかしながら,被
告製品のドライバ選択デコーダは,64個の内部回路を有するのみ
で,奇数番用と偶数番用の二つのデコーダを設けていない。
また,被告製品のドライバ選択デコーダは,一つのセクター内の
もので,他のセクターのドライバを選択するものではなく「グロ,
ーバルデコーダ」ではない。
(b)また,被告製品の内部回路は,①アドレスの入力を受けて複数
のビットに変換するデコーダではなく,②一つのセクター内のごく
一部分に過ぎず,一つのセクターを超えて他のセクターを制御する
「」,,ものではないからグローバルなものではなく③各内部回路は
奇数番と偶数番の双方のワードラインと関係し,奇数番用と偶数番
用の二種類の内部回路があるわけではなく,以上のことは,原告が
主張する回路A,回路Bにも同様に当てはまる。
(c)以上によれば,被告製品は「第1グローバルデコーダ(1,」
−D−1「第2グローバルデコーダ(1−D−2)のいずれも),」
充足しない。
c被告製品の各内部回路は,一対のドライバ選択ラインとのみ接続さ
れ,複数のドライバ選択ライン中の一つを選択するものではない。
よって,被告製品は「中の一つのワードラインを選択する(1,」
−D−1,1−D−2)を充足しない。
d被告製品のドライバ選択デコーダは,上記b(a)のとおり一つのセ
クター内のドライバの選択を扱うものに過ぎないから「グローバル,
ワードライン選択回路(1−D−3)に当たらない。」
e「グローバルワードライン選択回路(1−D−3)は,奇数番用」
と偶数番用の二つの「グローバルデコーダ」を包括するものである。
しかしながら,被告製品のドライバ選択デコーダは,奇数番と偶数番
の双方のワードラインに関係し,①奇数番のみと関係する第1ドライ
バ選択デコーダと,②偶数番のみと関係する第2ドライバ選択デコー
ダと,③その両者を包括する選択回路という構成を有していない。
,,「」よって被告製品はを有するグローバルワードライン選択回路
(1−D−3)を充足しない。
f以上によれば,被告製品は,構成要件1−D−1ないし1−D−3
のいずれも充足しない。
(オ)構成要件1−E−1,1−E−2について
a「第1ローカルデコーダ(1−E−1)は「奇数番グローバル」,
ワードライン」に対応するものであり,上記(エ)aのとおり奇数番
ローカルワードライン用の回路でなければならないと解釈され,ま
た「第2ローカルデコーダ(1−E−2)は「偶数番グローバ,」,
ルワードライン」に対応するものであり,上記(エ)aのとおり偶数
。番ローカルワードライン用の回路でなければならないと解釈される
しかしながら,被告製品の中で一組を構成する8個のドライバは,
奇数番,偶数番双方のワードラインを駆動しており,奇数番用の回
路,偶数番用の回路に分かれていない。
さらに「第1ローカルデコーダ(奇数番用ローカルデコーダ),」
は,各々「奇数番グローバルワードライン」により「第グロー,,1
バルデコーダ(奇数番グローバルデコーダ)に接続されていると」
いう関係を必須とし,また「第2ローカルデコーダ(偶数番用ロ,」
ーカルデコーダ)は,各々「偶数番グローバルワードライン」に,
より「第2グローバルデコーダ(偶数番グローバルデコーダ)に,」
接続されているという関係を必須とする。すなわち,奇数番用の回
路同士が「奇数番グローバルワードライン」により接続されてお,
り,偶数番用の回路同士が「偶数番グローバルワードライン」に,
より接続されているという関係を必要とするが,被告製品は,奇数
番用回路と偶数番用回路に分かれておらず,このような関係を満た
さない。
よって被告製品は第1ローカルデコーダ1−E−1第,,「」(),「
2ローカルデコーダ(1−E−2)のいずれも充足しない。」
b本件発明1は,複数のセクターを縦貫する1本の「奇数番グロー
バルワードライン」に,複数の「第1ローカルデコーダ(奇数番」
用ローカルデコーダ)が「各々」対応すること(1−E−1,及,)
び,複数のセクターを縦貫する1本の「偶数番グローバルワードラ
イン」に,複数の「第2ローカルデコーダ(偶数番用ローカルデ」
コーダ)が「各々」対応すること(1−E−2)を必須としてい,
る。
しかしながら,被告製品においては,一組を構成する8個のドラ
イバが一対のドライバ選択ラインにしか対応しないため,上記「各
々」を充足しない。
c以上によれば,被告製品は,構成要件1−E−1,1−E−2の
いずれも充足しない。
(カ)構成要件1−F−1について
被告製品のドライバD[8]∼[15]は,奇数番用のデコーダす
「」,[][]なわち第1ローカルデコーダではなくドライバD0∼7
,「」。は偶数番用のデコーダすなわち第2ローカルデコーダではない
したがって,被告製品は,構成要件1−F−1を充足しない。
(キ)構成要件1−F−2について
a被告製品が「行パーシャルデコーダ」を充足することについては
認める。
b本件発明は,一つのローカルワードラインが一組のPMOSトラ
ンジスター及びNMOSトランジスターのみを利用して駆動される
ことにより,行デコーダ回路によって占有されるダイ面積を小さく
する発明であり「プルアップトランジスター」はPMOSトラン,
ジスターに限られる。
被告製品のトランジスターt1は,NMOSトランジスターであ
り「プルアップトランジスター」に該当しない。,
したがって,被告製品は,構成要件1−F−2を充足しない。
cなお,本件発明は,一つの「プルアップトランジスター」によっ
て「ワードライン電圧に駆動(1−E−1,1−E−2)するよ」
うに規定されているが,被告製品では,トランジスターt0とトラ
ンジスターt1が組になって働かないとワードラインに選択電位を
与えることができないから,被告製品は,構成要件1−E−1,1
−E−2のいずれも充足しない。
(ク)構成要件1−F−3について
a被告製品のスイッチ回路は「ブロックデコーダ」ではない。,
b本件発明は,上記(キ)bのとおり,各ドライバが一組のPMOS
トランジスター及びNMOSトランジスターのみを用いる発明であ
り,被告製品のドライバは,三つのNMOSトランジスターで構成
されているから,被告製品は「各ドライバは・・・構成し(1−,」
F−1ないし1−F−3)を充足しない。
cしたがって,被告製品は,構成要件1−F−3を充足しない。
(ケ)構成要件1−Gについて
a「前記選択された奇数番/偶数番グローバルワードラインに対応
するローカルワードラインの中の二つのローカルワードラインが連
続的に選択される」とは,奇数番グローバルワードラインに奇数番
ローカルワードラインが,偶数番グローバルワードラインに偶数番
ローカルワードラインが接続されて,奇数番用回路と偶数番用回路
の制御経路が分離されていることを前提とするものであり,奇数番
から奇数番又は偶数番から偶数番が連続的に選択される場合を指
す。
この点,原告は,WL[0]とWL[1]が連続的に選択され
る場合を主張するが,これは偶数番と奇数番が連続的に選択され
る場合であるから「前記選択された奇数番/偶数番グローバルワ,
ードラインに対応するローカルワードラインの中の二つのローカ
ルワードラインが連続的に選択される」を充足しない。
b「放電信号」は,残留電位の放電動作のための信号であり,行ア
ドレスが遷移する時に生成されるパルス信号である。
,,,この点被告製品ではそもそも残留電位の問題は生じないため
被告製品のR2信号は残留電位の放電動作のための信号ではない。
また,R2信号は,行アドレスが遷移する「前」に生成される信号
である。
よって,被告製品は「放電信号」を充足しない。,
c「以前に選択された」という文言は,行アドレス遷移後に,行ア
ドレス遷移前に選択していたローカルワードライン(以前に選択さ
れたローカルワードライン)の放電が行われることを要求している
と解される。
この点,被告製品は「現在」選択されている行アドレスについ,
てワードラインを0Vにする処理を行っており「以前に」選択さ,
れた行アドレスについて処理を行っていないから「以前に選択さ,
れた」を充足しない。
d「以前に選択されたローカルワードラインの電圧」とは,行アド
レスが遷移した後になっても,いまだフローティング状態で以前に
選択されたローカルワードラインに残っている残留電位のことであ
る。
他方,被告製品は,ワードラインにおいて残留電位の問題は生じ
ないから「以前に選択されたローカルワードラインの電圧」を充,
足しない。
e「ローカルワードラインの電圧が・・・プルダウントランジスタ
ーを通じて」とは,ローカルワードラインの電圧が,そのままプル
ダウントランジスターを通っていることを意味する。他方,被告製
品では,R1信号により,ワードラインの電圧が,パーシャルデコ
ーダに対応する回路からの処理1によって,0Vに戻る。よって,
被告製品は「ローカルワードラインの電圧が・・・プルダウント,
ランジスターを通じて」を充足しない。
f「前記選択された奇数番/偶数番グローバルワードライン」は,
上記(エ)a(c)のとおり,本件明細書の特許請求の範囲請求項5と
の関係で,制御経路分離構成を含むものを意味すると理解される。
しかし,被告製品は,上記構成を有しないので「前記選択された,
奇数番/偶数番グローバルワードライン」を充足しない。
g以上によれば,被告製品は,構成要件1−Gを充足しない。
(コ)構成要件1−Hについて
a被告製品のうち,半導体IC製品が「メモリ装置」に該当するこ
とは認める。
b被告製品のうち,半導体ウェーハは,シリコンの円盤状の板であ
り,半導体IC製品のチップが組み込まれているだけのものである
から「メモリ装置」に該当しない。,
c原告は,半導体ウェーハについて,予備的に特許法101条1号
,,の適用を主張するが被告製品の半導体ウェーハは海外に輸出され
最終的に海外で半導体IC製品が製造されるのであって,海外での
製造は,日本国特許法の問題にはならない。
イ被告製品は,下記(ア)ないし(ウ)のとおり,本件発明2の構成要件を
充足しないから,本件発明2の技術的範囲に属しない。
(ア)構成要件2−Aについて
上記ア(キ)aのとおり,被告製品が「行パーシャルデコーダ」を充
足することについては認める。なお,被告製品においては,パーシャ
ルデコーダに対応する回路が読出し及びプログラム動作に必要な電圧
を出力しても,トランジスターt0がなければ,それをワードライン
に伝えることはできない。
(イ)構成要件2−Bについて
,,「」上記ア(ク)aのとおりスイッチ回路は前記ブロックデコーダ
に該当しない。
したがって,被告製品は,構成要件2−Bを充足しない。
(ウ)構成要件2−Cについて
被告製品は,本件発明1の構成要件を充足しないので,構成要件2
−Cを充足しない。
(2)本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものか(争点2)
(被告の主張)
本件特許には,下記アないしウ記載の無効理由(無効理由1ないし5)が
あるから,特許無効審判により無効にされるべきものである。
ア無効理由1ないし3について
(ア)本件特許の発明の詳細な説明の記載は,当業者がその実施をするこ
とができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないため,平成
11年法律第160号による改正前の特許法36条4項に規定する要
件を満たしていない(無効理由1,実施可能要件違反。)
また,本件特許の特許請求の範囲の記載は,特許を受けようとする
発明が発明の詳細な説明に記載したものではないから,特許法36条
6項1号に規定する要件を満たしていない(無効理由2,サポート要
件違反。)
さらに,本件特許の特許請求の範囲の記載は,特許を受けようとす
る発明が不明確なものであるから,同項2号に規定する要件を満たし
ていない(無効理由3,明確性要件違反。)
以下,これらの無効理由について説明する。
(イ)a原告は,本件発明においては,ドライバを構成する二つのトラン
ジスターが,NMOSとNMOS,PMOSとPMOS,NMOS
とPMOS,PMOSとNMOSのいずれのトランジスターの組合
せであっても構わないと主張する。この原告の主張に従えば,本件
発明にフローティング状態が生じない構成をも含むことになり,本
件発明の技術的な意義が不明となるから,本件特許の記載は不明確
なものとなる(無効理由3,明確性要件違反。)
bまた,原告は,本件発明には,PMOSとNMOSだけではなく,
NMOSとNMOS,PMOSとPMOS,NMOSとPMOSの
すべてのトランジスターの組合せが含まれると主張する。
しかし,本件明細書には,一つのローカルワードラインにつき,
プルアップトランジスターにPMOSトランジスター,プルダウン
トランジスターにNMOSトランジスターを用いる発明しか開示さ
れていない。
よって,仮に原告の主張に従えば,本件特許の発明の詳細な説明
の記載が,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十
分に記載されたものであるとはいえず(無効理由1,実施可能要件
違反,また,本件特許の特許請求の範囲の記載は,特許を受けよう)
とする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない
(無効理由2,サポート要件違反。)
(),(ウ)a平成18年3月1日付け意見書甲3で原告が主張したように
本件発明1が「二つのローカルワードラインが連続的に選択される,
時の不要な電圧の誘起を防止すること」を目的とするものであると
すると,不要な電圧の誘起を防止するためには,奇数番のローカル
ワードラインと偶数番のローカルワードラインの制御経路を分離し,
フローティング状態になる偶数番(又は奇数番)のローカルワード
ラインを,接地電圧を有する奇数番(又は偶数番)のローカルワー
ドラインによって遮蔽することが必須の要件となる。
これに対し,原告は「奇数番グローバルワードライン「偶数番,」,
グローバルワードライン」は,単にそれぞれ奇数番目のグローバル
ワードライン,偶数番目のグローバルワードラインを意味すると主
張するが,そのような構成の技術的な意義は不明であるから,特許
を受けようとする発明が不明確であるといわざるを得ない(無効理
由3,明確性要件違反。)
bまた,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明に係る唯一
の実施例として,奇数番と偶数番の制御経路を分離し,フローティ
ング状態の偶数番(又は奇数番)のローカルワードラインを,接地
電圧を有する奇数番(又は偶数番)のローカルワードラインで遮蔽
する発明が開示されているだけであり,カップリングによる不要な
電圧の誘起の問題を解決する他の発明の開示はない。
よって,原告の主張に従えば,本件特許の発明の詳細な説明の記
載が,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に
(,),記載されたものであるとはいえず無効理由1実施可能要件違反
また,本件特許の特許請求の範囲の記載は,特許を受けようとする
発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない(無効
理由2,サポート要件違反。)
イ無効理由4(新規性の欠如)について
本件発明について,仮に原告が主張するとおりに解釈するとすれば,下
記のとおり,本件発明は,本件特許の優先日である平成11年7月13日
(。よりも前に頒布された刊行物である特開平7−169282号公報乙2
「」。)(「」。)以下乙2公報というに記載された発明以下乙2発明という
と同一であるから,特許法29条1項の規定により特許を受けることがで
きないものである。
以下,本件発明の構成要件ごとに,対応する乙2公報の記載について検
討する。
(ア)構成要件1−Aについて
原告は,構成要件1−Aの「階層的」について,一つのセクター内
において,1本のグローバルワードラインに対して多数のローカルワ
ードラインが対応していることを意味すると主張する。
この点,乙2発明では,一つのゲート選択アドレス信号G1に対し
て,多数のワード線(W11∼Wi1)が対応しており(乙2公報段
落【0018】ないし【0020,これは原告主張の階層的なワー】)
ドライン構造に当たる。
したがって,乙2公報には,
1−a階層的なワードライン構造を有する不揮発性半導体記憶装
置において,
という構成が記載されており,これは構成要件1−Aに相当する。
(イ)構成要件1−Bについて
乙2公報段落【0034【0036】には,】,
1−b各々がワード線に連結されたメモリセルを有する複数個の
セクターと,
という構成が記載されており,これは構成要件1−Bに相当する。
(ウ)構成要件1−Cについて
一つのセクター内にとどまる信号線も「グローバルワードライン」
であるという原告の主張によれば,乙2発明のゲート選択アドレス信
号G1,G2・・・に対応する信号線(以下「ゲート選択アドレス信,
号線」といい,この信号線を示す記号としてもG1,G2等を用いる
ことがある)は「グローバルワードライン」に相当する。そして,。,
乙2公報には,
1−c各々対応するセクターを通して配置された複数個のゲート
選択アドレス信号線と,
という構成が記載されており,これは構成要件1−Cに相当する。
(エ)構成要件1−D−1ないし1−D−3について
原告の主張によれば,奇数番目のグローバルワードラインの中の1
本のワードラインと偶数番目のグローバルワードラインの中の1本の
ワードラインとが,それぞれデコーダの中の異なる部分に結合されて
いれば,構成要件1−D−1ないし1−D−3を充足することとなる。
この点,乙2公報の段落【0020【0057】には,アドレス】,
信号AXGに基づいて,ゲート選択アドレス信号線の中の一つのアド
レス信号線を選択するワードデコーダ回路の一部分(以下「ワードデ,
コーダ部分」という)が記載されている。そして,ゲート選択アドレ。
ス信号線ごとにかかるワードデコーダ部分が存在するので,奇数番の
ゲート選択アドレス信号線の中の1本のゲート選択アドレス信号線(例
えばG1)と,偶数番のゲート選択アドレス信号線の中の1本のゲー
ト選択アドレス信号線(例えばG0)は,それぞれ異なるワードデコ
ーダ部分に接続されている。
よって,乙2公報には,
1−d−1奇数番ゲート選択アドレス信号線の中の一つのゲート
選択アドレス信号線を選択する第1のワードデコーダ部
分と,
1−d−2偶数番ゲート選択アドレス信号線の中の一つのゲート
選択アドレス信号線を選択する第2のワードデコーダ部
分と
1−d−3を有するワードデコーダと,
という構成が記載されており「ゲート選択アドレス信号線」は「グロ,
ーバルワードライン」に「ワードデコーダ部分」は「グローバルデコ,
ーダ」に「ワードデコーダ」は「グローバルワードライン選択回路」,
にそれぞれ相当するから,上記1−d−1ないし1−d−3の構成は,
それぞれ構成要件1−D−1ないし1−D−3に相当する。
(オ)構成要件1−E−1,1−E−2,1−F−1について
原告の主張によれば,グローバルワードラインの奇数番,偶数番は
並び順の意味しかないから,構成要件1−E−1,1−E−2は「グ,
ローバルワードラインに各々対応し,各々が,対応するグローバルワ
ードラインが選択される時に,対応するローカルワードラインの中の
一つのワードラインをワードライン電圧に駆動するローカルデコーダ」
という構成が二つ以上あることを意味するに過ぎない。
乙2公報の段落【0042】ないし【0044】には,ゲート選択
アドレス信号線G1,G2に各々対応し,各々が,対応するゲート選
択アドレス信号線(例えば,G1)が選択される時に,対応するワー
ド線W11,W21・・・の中の一つのワード線(例えば,W11)
をVccに駆動するサブワードデコーダ回路が記載されている。
よって,乙2公報には,
1−e−1奇数番ゲート選択アドレス信号線に各々対応し,各々
が,対応する奇数番ゲート選択アドレス信号線が選択さ
れる時に,対応するワード線の中の一つのワード線を読
出しに必要な電圧Vccに駆動する第1のサブワードデ
コーダ回路の集合体と,
1−e−2偶数番ゲート選択アドレス信号線に各々対応し,各々
が,対応する偶数番ゲート選択アドレス信号線が選択さ
れる時に,対応するワード線の中の一つのワード線を読
出しに必要な電圧Vccに駆動する第2のサブワードデ
コーダ回路の集合体とを含み,
1−f−1第1及び第2のサブワードデコーダ回路の集合体の各
々は,対応するワード線に各々連結された複数個のサブ
ワードデコーダ回路を有し,各サブワードデコーダ回路
は,
との構成が記載されており「ゲート選択アドレス信号線」は「グロー,
バルワードライン」に「ワード線」は「ローカルワードライン」に,,
「読出しに必要な電圧Vcc」は「ワードライン電圧」に「サブワー,
ドデコーダ回路の集合体」は「ローカルデコーダ」に「サブワードデ,
コーダ回路」は「ドライバ」にそれぞれ相当するから,上記1−e−
1,1−e−2,1−f−1の構成は,それぞれ構成要件1−E−1,
1−E−2,1−F−1に相当する。
(カ)構成要件1−F−2について
乙2公報の段落【0043【0044【0057】には,アド】,】,
レス信号AXBに基づいて,ゲート選択アドレス信号線Gjに対応す
るワード線Wijをワードデコーダ部分に連結するpチャンネルトラ
ンジスターが記載されている。
よって,乙2公報には,
1−f−2対応するゲート選択アドレス信号線に対応するワード
線をワードデコーダ部分に連結するpチャンネルトラン
ジスターと,
という構成が記載されており「ゲート選択アドレス信号線」は「グロ,
」,「」「」,ーバルワードラインにワード線はローカルワードラインに
「ワードデコーダ部分」は「行パーシャルデコーダ」に「pチャンネ,
ルトランジスター」は「プルアップトランジスター」にそれぞれ相当
するから,上記1−f−2の構成は,構成要件1−F−2に相当する。
(キ)構成要件1−F−3について
乙2公報の段落【0043【0050【0057】には,アド】,】,
レス信号AXBに基づいて,ゲート選択アドレス信号線Gjに対応す
るワード線Wijをワードデコーダ部分に連結するnチャンネルトラ
ンジスターが記載されている。
よって,乙2公報には,
1−f−3対応するゲート選択アドレス信号線の信号に従って対
応するワード線をワードデコーダ部分に連結するnチャ
ンネルトランジスターとで構成し,
という構成が記載されており「ワードデコーダ部分」は,ゲート選択,
アドレス信号線Gjの信号に応答して,選択されたワード線に消去動
作に必要なワードライン電圧を印加する回路であることから「ブロッ
クデコーダ」に相当し「ゲート選択アドレス信号線」は「グローバル,
ワードライン」に「ワード線」は「ローカルワードライン」に「n,,
チャンネルトランジスター」は「プルダウントランジスター」にそれ
ぞれ相当する。したがって,上記1−f−3の構成は,構成要件1−
F−3に相当する。
(ク)構成要件1−Gについて
原告は,構成要件1−Gについて,次のローカルワードラインを選
択する前に,従前に選択されたローカルワードラインに印加された電
圧を,放電信号に応答して,対応するドライバのプルダウントランジ
スターを通じて放電する構成であると主張する。
そして,乙2公報の段落【0045【0061】ないし【006】,
3】には,
1−g選択された奇数番/偶数番ゲート選択アドレス信号線に対
応するワード線の中の二つのワード線が連続的に選択される
時,以前に選択されたワード線の電圧が,内部信号REVに
応答して対応するサブワードデコーダ回路のnチャンネルト
ランジスターを通じて放電される
という構成が記載されており,内部信号REVによる放電動作は,以
前に選択されたワードラインの電圧を放電させることを目的とするか
ら「内部信号REV」は「放電信号」に相当し「ゲート選択アドレ,,
ス信号線」は「グローバルワードライン」に「ワード線」は「ローカ,
ルワードライン」に「サブワードデコーダ回路」は「ドライバ」に,,
「nチャンネルトランジスター」は「プルダウントランジスター」に
それぞれ相当する。したがって,上記1−gの構成は,構成要件1−
Gに相当する。
(ケ)構成要件1−Hについて
乙2公報の段落【0018】には,
1−hことを特徴とする記憶装置
という構成が記載されており「記憶装置」は「メモリ装置」に相当す,
るから,上記構成は,構成要件1−Hに相当する。
(コ)構成要件2−Aについて
乙2公報の段落【0022【0042】ないし【0044【0】,】,
046】には
2−aワードデコーダ部分は,読出し及びメモリセルのしきい値
を上げる動作に必要な電圧Vcc及び12Vを出力し,
という構成が記載されており「メモリセルのしきい値を上げる動作」,
は,メモリセルにデータを書き込む「プログラム動作」に相当し,ま
た,乙2発明では,読出し動作に必要な電圧がVcc,プログラム動
作に必要な電圧が12Vであるから「読出し及びメモリセルのしきい,
値を上げる動作に必要な電圧Vcc及び12V」は「読み出し及びプ,
ログラム動作に必要な前記ワードライン電圧」に相当する。よって,
上記構成は,構成要件2−Aに相当する。
(サ)構成要件2−Bについて
乙2公報の段落【0023【0050】には,】,
2−bワードデコーダ部分は,メモリセルのしきい値を下げる動
作に必要な電圧−8Vを出力する
という構成が記載されており「メモリセルのしきい値を下げる動作」,
は「消去動作」に相当し,乙2発明では,消去動作に必要な電圧が−
8Vであることから「メモリセルのしきい値を下げる動作に必要な電,
圧−8V」は「消去動作に必要な前記ワードライン電圧」に相当する。
よって,上記構成は,構成要件2−Bに相当する。
(シ)構成要件2−Cについて
上記(ケ)のとおり乙2公報には「記憶装置」の発明が記載されてお
り,以上の検討によれば,乙2公報には,
2−cことを特徴とする1−aないし1−hの構成を有する記憶装

という構成が記載されており,この構成は,構成要件2−Cに相当す
る。
ウ無効理由5(進歩性の欠如)について
上記イのとおり本件発明と乙2発明とは同一のものである。しかしなが
ら,仮に本件発明の構成要件1−Cの「セクターを通して」が「セクター
を縦に貫くこと」を意味すると解するならば,乙2公報にはセクターを縦
に貫くようにゲート選択アドレス信号線を配設することについて明確な記
載がなく,この点が本件発明と乙2発明の相違点となる。
他方,本件特許の優先日よりも前の平成11年5月21日に頒布された
特開平11−134887号公報(乙3。以下「乙3公報」という)に。
は,グローバルワードラインが複数のセクターを縦に貫くように配置され
る構成(以下「乙3発明」という)が記載されている。。
よって,仮に構成要件1−Cの「セクターを通して」を「セクターを縦
に貫くこと」と解釈するとしても,当該構成は,同一の技術分野に属する
乙3発明によって埋められるものであり,上記イ(ウ)の1−cの構成にお
いて,各々対応する前記セクターに配置された複数個のゲート選択アドレ
ス信号線をセクターを縦貫するように配置することは,本件特許の優先日
以前において,当業者にとって容易になし得ることである。
以上のとおり,本件発明は,乙2発明及び乙3発明に基づいて当業者が
容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定
により特許を受けることができないものである。
(原告の主張)
ア無効理由1ないし3について
被告が主張する無効理由1ないし3は,要するに,本件発明の特許請
求の範囲の文言が,①トランジスターの極性を限定しない点,及び②グロ
ーバルワードラインの奇数・偶数がそれぞれローカルワードラインの奇数
・偶数と対応することを限定していない点において不当であるというもの
である。しかしながら,本件発明の特許請求の範囲の文言は,下記(ア),
(イ)のとおり,いずれも不当ではない。
(ア)トランジスターの極性を限定しない点について
本件発明1は,同じグローバルワードラインに対応する二つのロー
カルワードラインが連続的に選択される際に,放電信号を用いてプル
ダウントランジスターを介してブロックデコーダへと放電するところ
にその特徴があり,この点に不要な電圧の誘起を防止することが可能
となるという効果があるから,ドライバについてみれば,プルアップ
トランジスターとプルダウントランジスターの両者から構成されてい
れば足り,これらのトランジスターの極性を問うものではない。
(イ)グローバルワードラインの奇数・偶数がそれぞれローカルワードラ
インの奇数・偶数と対応することを限定していない点について
本件発明1は,上記(ア)のとおり,同じグローバルワードラインに
対応する二つのローカルワードラインが連続的に選択される際に,放
電信号を用いてプルダウントランジスターを介してブロックデコーダ
へと放電するところにその特徴があるのであって,グローバルワード
ラインの奇数・偶数と,ローカルワードラインの奇数・偶数とが対応
することに特徴があるのではない。
イ無効理由4(新規性の欠如)について
乙2発明と本件発明とでは,以下のとおり,グローバルワードライン,
ローカルワードライン,ドライバ及びパーシャルデコーダの配置が全く異
なり,また,乙2発明には,ブロックデコーダが存在せず,さらに,同じ
グローバルワードラインに対応する二つのローカルワードラインが連続的
に選択される際に放電信号を用いてプルダウントランジスターを介して放
電するという点も開示されていないから,本件発明と乙2発明は,同一で
はない。
,,,(ア)乙2発明と本件発明とでは次のとおりグローバルワードライン
ローカルワードライン,ドライバ及びパーシャルデコーダに係る基本
的な構成が根本的に異なり,乙2発明には,構成要件1−C以降の構
成が存在しない。
a被告は,ゲート選択アドレス信号線G1,G2をグローバルワー
ドラインに当てはめている。しかし,この当てはめでは,①ローカ
ルワードラインとグローバルワードラインが直交することになり,
その結果,グローバルワードラインがビット線と平行して配置され
ることとなるため,技術常識に反し,また,②グローバルワードラ
インG1,G2がセクターを貫通せず,失当である。
b乙2発明を本件発明に適切に当てはめると,W11,W12がロ
ーカルワードラインに,B1p及びB1nの組がグローバルワード
ラインにそれぞれ対応し,B1p及びB1nの組が「選択ブロック」
を選択し「選択ブロック」の中でさらにいずれかのワードラインを,
選択するのがゲート選択アドレス信号G1,G2を駆動する乙2公
報の図13の下半分に示された回路であるから,この回路が「パー
シャルデコーダ」に対応する。そうすると,トランジスターWDp
11はW11をB1pに連結しており「パーシャルデコーダ」には,
連結しておらず,また,トランジスターWDn11はW11をB1
nに連結しており「ブロックデコーダ」には連結していないことに,
なる。
(イ)乙2発明には,次のとおり,本件発明のブロックデコーダが存在せ
ず,構成要件1−F−3に相当する構成は記載されていない。
a被告は,乙2発明のアドレス信号AXBをデコードするNAND
ゲートを本件発明の「行パーシャルデコーダ」と「ブロックデコー
ダ」の双方に当てはめているが,これは一つのデコーダ回路を分解
することとなるため,失当である。
b上記(ア)bのとおりに乙2発明を本件発明に当てはめると,乙2
公報の図13の上半分の回路は「グローバルデコーダ」に対応し,,
また,乙2公報には「ブロックデコーダ」は存在しない。
(ウ)被告の主張によれば,ゲート選択アドレス信号線G1,G2がグロ
ーバルワードラインに相当することとなるが,乙2公報の図15では,
上記グローバルワードラインが切り替わった際(W11からW12に,
W12からW21に,W21からW22に切り替わる際,いずれの場
合においても,グローバルワードラインはそれぞれ,G1からG2に,
G2からG1に,G1からG2に切り替わる)にREV信号が活性化。
されることが示されており,同じグローバルワードラインに対応する
二つのローカルワードラインが連続的に選択される際(例えば,W1
1からW21が選択される場合)にどうなるかについては記載がなく,
同様に,乙2公報の図14,16にも記載がない。
よって,被告の主張によれば,乙2公報には,構成要件1−Gに相
当する記載がない。
ウ無効理由5(進歩性の欠如)について
乙3公報には,被告が主張するとおり,複数のセクターを貫くグローバ
ルワードラインが記載されている。
しかし,乙2発明においては,一つのデコーダによって選択・駆動され
る相補的なB1n線,B1p線によって電源が供給されるドライバ回路が
用いられており,パーシャルデコーダとブロックデコーダの区別が存在し
ておらず,乙2発明と乙3発明とは,グローバルワードライン等の基本的
な構成において相違するから,両者を組み合わせることは困難である。
さらに,被告主張のとおり,組合せが可能であると仮定してみても,本
件発明の構成要件1−Gに対応する構成は,乙2公報及び乙3公報には記
載されていない。
加えて,同じグローバルワードラインに対応する二つのローカルワード
ラインが連続的に選択される際に,放電信号を用いてプルダウントランジ
スターを介して,パーシャルデコーダではなくブロックデコーダへと放電
するという本件発明の作用及び効果については,乙2公報及び乙3公報に
は記載されていないし,示唆もされていない。
以上によれば,本件発明は,当業者が乙2発明及び乙3発明に基づいて
容易に発明をすることができたものとはいえない。
第3争点に対する判断
1争点1(被告製品は,本件発明の技術的範囲に属するか)について
(1)構成要件1−A(階層的なワードライン構造を有する不揮発性半導体メ
モリ装置)について
被告製品1はフラッシュメモリ製品であること,被告製品2の半導体ウェ
ーハには被告製品1のフラッシュメモリ製品のチップが多数作り込まれてい
ることは当事者間に争いがないから,被告製品は,いずれも「不揮発性半導
体メモリ装置」に該当する。
「階層」とは「一般に,段階的に層をなすものの各層」を意味する(広,
辞苑第6版。)
前記の本件特許の特許請求の範囲請求項1の記載によれば,本件発明1に
おいては,複数のグローバルワードラインのうちの一つを選択し,次いで,
選択したグローバルワードラインに対応する複数のローカルワードラインの
うちの一つを選択するという,段階的にワードラインを選択する構成が採ら
れていることが認められ,これが,構成要件1−Aの「階層的なワードライ
ン構造」に当たるということができる。
当事者間に争いのない被告製品の構成によれば,被告製品においては,一
,,つのセクター内の複数のドライバ選択ラインのうちの一対を選択し次いで
選択したドライバ選択ラインに対応する複数のワードラインのうちの一つを
選択する構成が採られていることが認められるから,被告製品は,構成要件
1−Aの「階層的なワードライン構造」を有しているということができる。
被告は「階層的なワードライン構造」とは,セクター内のみならず複数,
のセクター間においても階層的な構造を有することが必要である旨主張する
,,もののそのように限定して解釈すべき根拠を見いだすことはできないから
被告の主張は採用することができない。
したがって,被告製品は,構成要件1−Aを充足する。
(2)構成要件1−B(各々がローカルワードラインに連結されたメモリセル
を有する複数個のセクター)について
当事者間に争いのない被告製品の構成によれば,被告製品は,複数個のセ
クターを有し,各々のセクターがワードラインに接続されたメモリセルを有
すると認められる。被告製品の「ワードライン」が構成要件1−Bの「ロー
カルワードライン」に相当することは争いがない。
したがって,被告製品は,構成要件1−Bを充足する。
(3)構成要件1−C(各々対応する前記セクターを通して配置された複数個
のグローバルワードライン)について
前記(1)で説示したところによれば,構成要件1−Cの「グローバルワー
ドライン」とは「ローカルワードライン」に対して,より上位のワードラ,
インを意味するものということができる。当事者間に争いのない被告製品の
構成によれば,被告製品のドライバ選択ラインは,ローカルワードラインに
相当する「ワードライン」に対して,より上位のワードラインであると認め
,「」,られるからグローバルワードラインに相当するものということができ
また,一つのセクターを貫いているものと認められるから「セクターを通,
して配置された」ものであるということができる。
被告は,本件発明におけるグローバルワードラインとは,複数のセクター
を通して配置されたものでなければならないと主張するものの,そのように
限定して解釈すべき根拠を見いだすことはできないから,被告の主張は採用
することができない。
したがって,被告製品は,構成要件1−Cを充足する。
(4)構成要件1−D−1,1−E−1,1−G(奇数番グローバルワードラ
イン)及び構成要件1−D−2,1−E−2,1−G(偶数番グローバルワ
ードライン)について
ア原告は「奇数番「偶数番」が問題となるのは「グローバルワード,」,,
ライン」についてであって「ローカルワードライン」の並び順は問わな,
いと主張する(前記第2の3(1)(原告の主張)ア(エ)a(a)。これに)
対し,被告は「奇数番グローバルワードライン」は,奇数番のローカル,
ワードラインとのみ対応するグローバルワードラインであり「偶数番グ,
ローバルワードライン」は,偶数番のローカルワードラインとのみ対応す
るグローバルワードラインである旨主張する(前記第2の3(1)(被告の
主張)ア(エ)a(b)。)
本件発明の特許請求の範囲に記載された「奇数番グローバルワードライ
ン「偶数番グローバルワードライン」の各用語は,一般的な技術用語」,
ではなく,その意義は,本件発明の特許請求の範囲の記載から一義的に明
らかであるとはいえないから,これらの用語は,本件明細書の記載及び図
面を考慮して解釈されなければならない(特許法70条2項。)
そこで,以下,本件明細書の記載及び図面を参酌し,上記各用語の意義
について検討することとする。
イ本件明細書中には「奇数番グローバルワードライン「偶数番グロー,」,
バルワードライン」のいずれの用語についても,その意義を直接的に定義
,,。付ける記載はなくまた各用語の意義について直接説明する記載もない
ウ本件明細書には,本件発明の唯一の実施例として,図3(本発明の好「
適な実施の形態による行デコーダ回路を示す回路図)と共に次の各記載」
がある。
(ア)「図3は,本発明の好適な実施の形態による行デコーダ回路を示す
回路図である図3の行デコーダ回路は階層的なワードライン構造中。,(
略)又はワードライン分割構造(中略)を有する図1のフラッシュメモ
リ装置に組み込まれ得る。なお,図面には示されていないが,複数のグ
ローバルワードラインは同一の方向に配列されたセクターを通して配置
され,各セクターはグローバルワードラインと階層的に配列されたロー
カルワードラインとを有する(6頁47行∼7頁3行,段落【00。」
20)】
「,(),(イ)図3の行デコーダ回路は偶数番行グローバルデコーダ100
(),(),奇数番行グローバルデコーダ120行ローカルデコーダ140
行パーシャル(partial)デコーダ(160,及びブロックデ)
コーダ(180)を含む。図3の行デコーダ回路は,2本のグローバル
ワードライン(EGWLi)及び(OGWLi)と8個のローカルワー
ドライン(WL0)∼(WL7)に対応するが,残りのグローバルワー
ドラインEGWL1∼EGWLi−1及びOGWL1∼O()()()(
GWLi−1)に各々対応する偶数番及び奇数番行グローバルデコーダ
(100)及び(120)は,図示されてないが,各セクターに対応し
て設けられている(7頁5行∼12行,段落【0021)。」】
(ウ)「偶数番行グローバルデコーダ(100)は,図3に示されたよう
に連結されたNANDゲート(102,NORゲート(104)及び)
レベルシフター(106)で構成され,行アドレス(AddI)に応答
して対応する偶数番グローバルワードライン(EGWLi)を電圧(V
H又はVLに駆動する同様に奇数番行グローバルデコーダ1)()。,(
),(),20は図3に示されたように連結されたNANDゲート122
NORゲート(124)及びレベルシフター(126)で構成され,行
アドレス(AddI)に応答して対応する奇数番グローバルワードライ
ン(OGWLi)を電圧(VH)又は(VL)に駆動する。偶数番及び
奇数番行グローバルデコーダ(100)及び(120)は,グローバル
ワードライン選択回路を構成する(7頁14行∼22行,段落【0。」
022)】
(エ)「行ローカルデコーダ(140)は,偶数番グローバルワードライ
ン(EGWLi)に対応する4個のローカルワードライン(WL0,)
(WL2(WL4)及び(WL6)に各々連結された4個のドライ),
バと,奇数番グローバルワードライン(OGWLi)に対応する4個の
ローカルワードライン(WL1(WL3(WL5)及び(WL7)),),
に各々連結された4個のドライバとで構成される。各ドライバは,PM
OSトランジスターとNMOSトランジスターで構成され,偶数番グロ
ーバルワードラインEGWLiに対応するローカルワードラインW()(
L0(WL2(WL4)及び(WL6)は,奇数番グローバルワ),),
()(),ードラインOGWLiに対応するローカルワードラインWL1
(WL3(WL5)及び(WL7)と交互に配列される(7頁2),。」
4行∼32行,段落【0023)】
(オ)「ローカルワードライン(WL0(WL2(WL4)及び(W),),
)(),L6に各々連結されたドライバのPMOSトランジスターP10
(P12(P14)及び(P16)は,行パーシャルデコーダ(1),
60)のワードライン選択信号(PWL0(PWL2(PWL4)),),
及び(PWL6)に各々連結されたソース電極,偶数番グローバルワー
ドライン(EGWLi)に共通に連結されたゲート電極及び対応するロ
ーカルワードライン(WL0(WL2(WL4)及び(WL6)),),
に各々連結されたドレーン電極を有する。ローカルワードライン(WL
0(WL2(WL4)及び(WL6)に各々連結されたドライバ),),
のNMOSトランジスター(N10(N12(N14)及び(N),),
16)は,対応するローカルワードライン(WL0(WL2(W),),
L4)及び(WL6)に各々連結されたドレーン電極,偶数番グローバ
ルワードライン(EGWLi)に共通に連結されたゲート電極及びブロ
ックデコーダ(180)に共通連結されたソース電極を有する(7。」
頁34行∼45行,段落【0024)】
(カ)「ローカルワードライン(WL1(WL3(WL5)及び(W),),
)(),L7に各々連結されたドライバのPMOSトランジスターP18
(P20(P22)及び(P24)は,行パーシャルデコーダ(1),
60)のワードライン選択信号(PWL1(PWL3(PWL5)),),
及び(PWL7)に各々連結されたソース電極,奇数番グローバルワー
ドライン(OGWLi)に共通に連結されたゲート電極及び対応するロ
ーカルワードライン(WL1(WL3(WL5)及び(WL7)),),
に各々連結されたドレーン電極を有する。ローカルワードライン(WL
1(WL3(WL5)及び(WL7)に各々連結されたドライバ),),
のNMOSトランジスター(N18(N20(N22)及び(N),),
24)は,対応するローカルワードライン(WL1(WL3(W),),
L5)及び(WL7)に各々連結されたドレーン電極,奇数番グローバ
ルワードライン(OGWLi)に共通に連結されたゲート電極及びブロ
ックデコーダ(180)に共通連結されたソース電極を有する(7。」
頁47行∼8頁8行,段落【0025)】
(キ)「以下,本発明の好適な実施の形態によるプログラム,読み出し及
び消去動作を説明する。なお,ここでは,説明の便宜のために,ローカ
ルワードライン(WL2)が選択されるものとしてプログラム及び読み
出し動作を説明する(8頁35行∼37行,段落【0029)。」】
(ク)「上記の表に示すように,プログラム及び読み出し動作の間,図3
の偶数番行グローバルデコーダ(100)は,行アドレス(AddI)
に応答して偶数番グローバルワードライン(EGWLi)を0Vの電圧
VLに駆動しその結果PMOSトランジスターP10∼P(),,()(
),()()16はターンオンしNMOSトランジスターN10∼N16
。,(),はターンオフするこの時奇数番行グローバルデコーダ120は
行アドレスAddIに応答して奇数番グローバルワードラインO(),(
GWLi)を読み出し動作時は5Vの電圧(VH)に駆動し,プログラ
ム動作時は10Vの電圧(VH)に駆動し,その結果,PMOSトラン
ジスター(P18)∼(P24)はターンオンし,NMOSトランジス
ター(N18)∼(N24)はターンオフする。行パーシャルデコーダ
(160)は,行アドレス(AddII)に応答して,ワードライン選択
()(),信号PWL2を読み出し動作時は約5Vの電圧Vw1に駆動し
プログラム動作時は約10Vの電圧(Vw1)に駆動し,残りのワード
ライン選択信号(PWL0(PWL1(PWL3)∼(PWL7)),),
を各々接地電圧(GND)に駆動する。そして,ブロックデコーダ(1
80)は,行アドレス(AddIII)に応答して,読み出し及びプログ
ラム動作の間,0Vの電圧(VL)を出力する(8頁39行∼9頁。」
3行,段落【0030)】
(ケ)「結果的に,ローカルワードライン(WL2)は,PMOSトラン
ジスター(P12)を通じて,読み出し動作時は5V,プログラム動作
時は10Vのワードライン選択信号ライン(PWL2)に連結され,ロ
ーカルワードライン(WL0(WL4)及び(WL6)は,PMO),
Sトランジスター(P10(P14)及び(P16)を通じて,読),
み出し及びプログラム動作時に0Vのワードライン選択信号ライン(P
WL0(PWL4)及び(PWL6)に各々連結される。そして,),
奇数番グローバルワードライン(OGWLi)に対応するローカルワー
ドライン(WL1(WL3(WL5)及び(WL7)は,対応す),),
るNMOSトランジスター(N18(N20(N22)及び(N),),
24)を通じてブロックデコーダ(180)の出力(VL,即ち,0)
Vに連結される。このようなバイアス条件下で,読み出し及びプログラ
ム動作が実行される(9頁5行∼14行,段落【0031)。」】
(コ)「ここで,非選択されたローカルワードライン(WL0(WL),
4)及び(WL6)は,読み出し及びプログラム動作の間,PMOSト
ランジスター(P10(P14)及び(P16)の各々のゲート電),
極が0Vの偶数番グローバルワードライン(EGWLi)に連結され,
ソース電極が0Vの対応するワードライン選択信号ラインに連結されて
いるのでフローティング状態(floatingstate)になる。
しかしながら,フローティング状態にされたローカルワードライン(W
L0(WL4)及び(WL6)が接地電圧を有する奇数番グローバ),
ルワードライン(OGWLi)に対応するローカルワードライン(WL
1(WL3(WL5)及び(WL7)によって遮蔽(shiel),),
ding)されているので,ローカルワードライン(WL2)がワード
ライン電圧(Vw1)に駆動される時に,隣接したワードラインの間の
カップリングは生じない。即ち,ローカルワードライン(WL2)がワ
ードライン電圧(Vw1)に駆動される時,フローティング状態のロー
カルワードラインには電圧が誘起されない9頁16行∼27行0。」(,【
032)】
「(,)(サ)任意の選択されたグローバルワードライン例えばEGWLi
に対応するローカルワードライン(例えば,WL0,WL2,WL4及
びWL6)のうちの任意のローカルワードライン(例えば,WL2及び
),。WL4が連続的に選択される場合次のような放電動作が実行される
選択されたグローバルワードライン(EGWLi)に対応する行グロー
バルデコーダ(100)が,放電信号(WLDIS)に応答して当該選
択されたグローバルワードライン(EGWLi)を電圧(VH)に駆動
することによって,以前に選択されたローカルワードライン(例えば,
WL2)の電圧(Vw1)はローカルワードライン(WL2)に対応す
るドライバのNMOSトランジスター(例えば,N12)を通じて放電
される。ここで,放電信号(WLDIS)は,行アドレスが遷移する時
に生成されるパルス(pulse)信号であり,このパルス信号は数n
sのパルス幅を有する。したがって,読み出し動作及びプログラム動作
の速度はそのような放電動作によって低下することがない(9頁2。」
9行∼40行,段落【0033)】
エ上記の本件明細書の記載及び図3によれば,本件発明の唯一の実施例に
おいては(WL0)ないし(WL7)の番号が付された8本のローカル,
ワードラインが番号順に配列されており,奇数番グローバルワードライン
は,4個のドライバを介して奇数番の付された(WL1(WL3(W),),
L5)及び(WL7)の4本のローカルワードラインに連結され,偶数番
グローバルワードラインは4個のドライバを介して偶数番の付されたW,(
L0(WL2(WL4)及び(WL6)の4本のローカルワードラ),),
インに連結された構成が開示されていることが認められる。そして,実施
例においては,この構成を採用することにより,例えば偶数番グローバル
ワードラインに対応するローカルワードラインの一つ(WL2)が選択さ
れた場合に,選択されなかった同一のグローバルワードラインに対応する
他のローカルワードライン(WL0,WL4及びWL6)はフローティン
グ状態となるものの,交互に配置された接地電圧を有する奇数番グローバ
ルワードラインに対応するローカルワードライン(WL1,WL3,WL
5及びWL7)によって遮蔽されているため,選択されたローカルワード
ライン(WL2)がワードライン電圧に駆動されるときに,フローティン
グ状態のローカルワードライン(WL0,WL4及びWL6)には電圧が
誘起されず,いわゆるカップリングの発生が防止されている。
,,「」そうすると上記実施例においては偶数番グローバルワードライン
とは,順に並んだローカルワードライン(順にWL0,WL1,WL2,
WL3,WL4,WL5,WL6,WL7と番号が付されている)のう。
ち偶数番が付されたローカルワードライン(WL0,WL2,WL4,W
L6)に対応するグローバルワードラインであり「奇数番グローバルワ,
ードライン」とは,上記順に並んだローカルワードラインのうち奇数番が
付されたローカルワードライン(WL1,WL3,WL5,WL7)に対
応するグローバルワードラインであるということができる。
オ原告は,本件発明は上記実施例に記載された構成に限定されるものでは
なく,偶数番グローバルワードライン及び奇数番グローバルワードライン
に対応するローカルワードラインの並び順は問わないのであって,本件発
明におけるグローバルワードラインの「奇数番「偶数番」とは,複数」,
のグローバルワードラインの並び順をいう旨主張する。
本件発明の特許請求の範囲の記載中には,偶数番グローバルワードライ
ンに対応する複数のローカルワードラインと奇数番グローバルワードライ
ンに対応する複数のローカルワードラインとを交互に配置する旨の文言は
なく,また,一般論として,特許発明の技術的範囲は,実施例に記載され
た構成に必ずしも限定されるものではない。
しかしながら,原告が主張するようにグローバルワードラインに対応す
るローカルワードラインの並び順は問わないと解すると,本件発明には,
例えば,前記ウの本件発明の実施の形態において,偶数番グローバルワー
ドライン(EGWLi)に,順に並んだローカルワードライン(WL0な
いしWL7)のうちWL0,WL1,WL2,WL3を対応させる構成も
含まれることになる。このような構成の下で,仮にWL2が選択される場
合について考えると,前記ウ(コ)記載のとおり,選択されなかったローカ
ルワードラインWL0,WL1及びWL3は,フローティング状態となる
から,ローカルワードラインWL2の電位が選択電位に上昇すると,カッ
プリング効果により,同じ偶数番グローバルワードラインに属する他のロ
ーカルワードラインWL0,WL1及びWL3の電位も一斉に上昇するこ
とになり,メモリ装置として正常に動作しない状態になってしまうことは
明らかである。このような場合に生じるカップリングの問題を解決するた
めの具体的な手段は,本件明細書中には一切開示されておらず,その解決
手段が自明であると認めるに足りる証拠もない。
原告は,本件発明においてはローカルワードラインがフローティング状
態になるという問題は前提にしておらず,段落【0032】のフローティ
ング状態のローカルワードラインに生じるカップリングの問題とその解決
についての記載は,請求項12,13の発明に係る記載であり,本件発明
の解釈に参酌されるべき記載ではないと主張する。
しかしながら「奇数番グローバルワードライン」及び「偶数番グロー,
バルワードライン」についての原告の前記解釈を前提とするならば,本件
発明にはカップリングの問題があるにもかかわらず,その解決手段を講じ
ないままの正常に動作しない状態のメモリ装置を含むことになってしまう
ことになる。このような原告の解釈は不合理であるといわざるを得ない。
カ前記ウの実施例に関する記載以外には,本件明細書中に「奇数番グロー
バルワードライン「偶数番グローバルワードライン」の用語の意義を」,
把握する手掛かりとなる記載は存在しない。
キ上記の本件明細書の記載及び図面を参酌するならば,本件発明の唯一の
実施例に示されているとおり「奇数番グローバルワードライン」とは,,
順に並んだローカルワードラインのうち奇数番が付されたローカルワード
ラインのみに対応するグローバルワードラインのことを意味し「偶数番,
グローバルワードライン」とは,順に並んだローカルワードラインのうち
偶数番が付されたローカルワードラインのみに対応するグローバルワード
ラインのことを意味すると解するのが相当であり,原告の「奇数番グロー
バルワードライン「偶数番グローバルワードライン」の各用語の意義」,
についての主張は,採用することができない。
ク上記キの「奇数番グローバルワードライン「偶数番グローバルワー」,
ドライン」の文言の解釈に基づいて,被告製品が,構成要件1−D−1,
1−E−1,1−Gの「奇数番グローバルワードライン」と構成要件1−
D−2,1−E−2,1−Gの「偶数番グローバルワードライン」を充足
するかについて,以下,検討する。
(ア)原告は,被告製品のドライバ選択ライン(WLS[1,/WLS]
[1)が「奇数番グローバルワードライン」に,ドライバ選択ライン]
(WLS[0,/WLS[0)が「偶数番グローバルワードライン」]]
に該当すると主張する(前記第2の3(1)(原告の主張)ア(エ)b,同
(オ),(キ),(ク),(シ)。)
被告製品においては,被告製品説明書1−a,b,c記載のとおり,
([][],各セクター内に64対のドライバ選択ラインWLS0∼63
/WLS[0]∼[63)と512本のワードライン(WL[0]∼]
[511)があり,一対のドライバ選択ライン(WLS,/WLS)]
には8本のワードラインが対応している。
しかしながら,被告製品においては,一対のドライバ選択ラインと対
応する8本のワードラインとの関係において,順に並んだワードライン
のうち奇数番が付されたワードラインのみに対応するドライバ選択ライ
ン,偶数番が付されたワードラインのみに対応するドライバ選択ライン
といった構成は採用されていない。
(イ)よって,被告製品のドライバ選択ラインは,いずれも順に並んだワ
ードラインのうち,奇数番が付されたワードラインのみに対応するもの
ではなく,また,偶数番が付されたワードラインのみに対応するもので
もないから,上記キの「奇数番グローバルワードライン「偶数番グ」,
ローバルワードライン」のいずれにも該当しない。
したがって,被告製品は,構成要件1−D−1,1−D−2,1−E
−1,1−E−2,1−Gを充足しない(1−D−1及び1−D−2を
前提とする1−D−3も充足せず,さらに,1−E−1及び1−E−2
を前提とする1−F−1も充足しないこととなる。。)
(5)被告製品が請求項1の構成要件を充足しない以上,その従属項である請
求項2も充足しないことは明らかである。
,,。以上のとおりであるから被告製品は本件発明の技術的範囲に属しない
2上記1で説示したところによれば,その余の争点について判断するまでもな
く,原告の請求はいずれも理由がないこととなる。
第4結論
以上によれば,原告の請求は,いずれも理由がないから棄却することとし,
主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官阿部正幸
裁判官柵木澄子
裁判官小川卓逸
被告製品目録
1型式番号が,S29WS128N,S29WS256Nで特定される半導体
IC製品
2上記1の半導体IC製品のチップが作り込まれた半導体ウェーハ
被告製品説明書
被告製品のうち半導体IC製品はフラッシュメモリ製品である。半導体ウェー
ハは,シリコンの円盤状の板であって,その上に半導体IC製品用チップが多数
作り込まれている。
被告製品の半導体IC製品は,S29WS256N,S29WS128Nの型
番を有する。半導体ウェーハ上に作り込まれたチップは切り出され,これと端子
とを配線した上でモールドしたものが半導体IC製品となる。
S29WS256N用チップは,8列ずつ2段に配置された16個のバンクが
存在する構成である。各々のバンクは,複数個(16個ないし17個)のセクタ
ーを含んでいる。S29WS128Nについては,バンクの数と配置はS29W
S256Nと同じであるが,各バンク当たりのセクターの数が異なる(8個ない
し9個。)
セクターごとに設けられているドライバ選択デコーダには,行アドレスのうち
6ビットが供給されてデコードされ,1セクターに64対あるドライバ選択ライ
ンの中から一つが選択され,8個のドライバに所定の電圧が供給される。このド
ライバ選択ラインはセクターごとに存在しており,一つのセクターから他のセク
ターに延びるものではない。すなわち,ドライバ選択ラインは,複数個のセクタ
ーを縦貫して配置されていない。
行アドレスのうち3ビットがパーシャルデコーダに対応する回路に供給されて
デコードされ,パーシャルデコーダに対応する回路は,8本の出力線のうち,書
込み・読出しを行うワードラインに対応する出力の電圧を,書込み・読出しに必
要な電圧に切り替え出力し,その他の出力は0Vに維持され,これらがドライバ
。,,,を通してワードラインに供給されるなお消去動作はセクター単位で行われ
スイッチ回路は消去に必要な電圧を出力し,これがドライバを通してワードライ
ンに供給される。各セクターの構成は次のとおりである。
1−a,b,cS29WS256N,S29WS128N用チップには,フ
ラッシュメモリセルを含む256ないし128個のセクターが存在す
る。各セクター内には64対のドライバ選択ライン(WLS[0]∼
[63,/WLS[0]∼[63)と512本のワードライン(W]]
L[0]∼[511)があり,8本のワードライン(WL)に対応]
した一対のドライバ選択ライン(WLS,/WLS)は,一つのセク
ター内にとどまっている。
1−d与えられるアドレスデータから64対のドライバ選択ラインのうち一
対を選択し,所定の電圧を八つのドライバに同時に与えるドライバ選
択デコーダが,各セクターに設けられる。
ドライバ選択デコーダの内部構成とワードラインを駆動するドライバへの接続関
係を示す模式図は,以下のとおりである。
模式図に示すとおり,ドライバ選択デコーダには,内部回路が64個ある。各内
部回路は,特定の一対のドライバ選択ラインとのみ接続され,他のドライバ選択ラ
インとは接続されていない。
被告製品は,1セクター当たり512本のワードラインを有し,このワードライ
ンごとに一つのドライバがある。模式図のとおり,8個のドライバは同時に選択さ
れる。
アドレス信号をデコードする部分は6ビットのアドレス信号を受け,このアドレ
ス信号に対応する一つの内部回路を64個の内部回路の中から特定する。
アドレス信号をデコードする部分の内部構成の模式図は以下のとおりである。な
お,被告製品における実際のアドレス信号は24ビット(行アドレス19ビット,
列アドレス7ビット)であり,ドライバ選択デコーダに入力されるのは行アドレス
19ビットのうち,下位から4∼9番目の6ビット(全体のアドレスからすると,
ビット10∼15)であるが,説明の便宜のため,ドライバ選択デコーダに入力さ
れるアドレス信号の6ビットの各ビットを上位ビットから順番にビット5,ビット
4,ビット3,ビット2,ビット1,ビット0と呼ぶことにする。
模式図アドレス信号をデコードする部分の内部構成
NAND2-1NOT2-1
NAND2-2NOT2-2
NAND2-3NOT2-3
NAN2-4NOT2-4
NAND2-5NOT2-5
NAND2-6NOT2-6
NAND2-7NOT2-7
NAND2-8NOT2-8
NAND1-1NOT1-1
NAND1-2NOT1-2
NAND1-3NOT1-3
NAND1-4NOT1-4
NAND1-5NOT1-5
NAND1-6NOT1-6
NAND1-7NOT1-7
NAND1-8NOT1-8
NAND3-2
NAND3-1
NAND3-4
NAND3-3
NAND3-63
NAND3-62
NAND3-61
NAND3-64
アドレス信号(6bit)
反転信号作成部1
反転信号作成部2
上位
3bit
下位
3bit
NAND回路
以下,上記模式図を説明する。
(1)アドレス信号の上位3ビットが入力される部分
・反転信号作成部1
反転信号作成部1は,三つのNOTゲートを有しており,上位3ビットの信
号の各ビットを反転させることで,非反転信号(3ビット)と反転信号(3
ビット)の計六つの信号を出力する。反転とは,ビットの0と1を逆転させ
る(0を1にし,1を0にする)ことであり,電気的には,HIGHとLO
Wを逆転させることをいう。
・3入力NANDゲート1−1∼1−8
上記六つの信号のうち三つの信号(3本の線)が入力される3入力のNAN
Dゲートである。なお,NANDゲートは,全ての入力が1の場合のみ0を
出力し,入力の一つでも0の場合に1を出力する。
・NOTゲート1−1∼1−8
3入力NANDゲート1−1∼1−8の出力がそれぞれ入力されるNOTゲ
ートである。
(2)アドレス信号の下位3ビットが入力される部分
・反転信号作成部2
反転信号作成部2は,三つのNOTゲートを有しており,下位3ビットの信
号の各ビットを反転させることで,非反転信号(3ビット)と反転信号(3
ビット)の計六つの信号を出力する。
・3入力NANDゲート2−1∼2−8
上記の六つの信号のうち三つ(3本の線)が入力される3入力のNANDゲ
ートである。
・NOTゲート2−1∼2−8
3入力NANDゲート2−1∼2−8の出力がそれぞれ入力されるNOTゲ
ートである。
(3(1)と(2)の出力が入力される部分)
・2入力NANDゲート3−1∼3−64
NOTゲート1−1∼1−8のうち一つの出力と,NOTゲート2−1∼2
−8のうち一つの出力が,それぞれ入力される2入力のNANDゲートであ
る。
アドレス信号をデコードする部分が64個の内部回路から一つを特定する方法
は,64個の内部回路を八つずつの8グループに分け,6ビットの中の上位3ビッ
トを使って八つのグループから一つのグループを特定し,下位3ビットを使って,
一つのグループの中で何番目の内部回路かを特定する。
具体的には,以下のとおりである。
反転信号作成部1は,上位3ビット(ビット3∼5)のアドレス信号からそれぞ
れのビットを反転した信号を生成し,反転・非反転の六つの信号を出力する。
NANDゲート1−1∼1−8のそれぞれには,上記六つの信号のうちの
(ビット3の反転信号,ビット4の反転信号,ビット5の反転信号)
(ビット3の非反転信号,ビット4の反転信号,ビット5の反転信号)
(ビット3の反転信号,ビット4の非反転信号,ビット5の反転信号)
(ビット3の非反転信号,ビット4の非反転信号,ビット5の反転信号)
(ビット3の反転信号,ビット4の反転信号,ビット5の非反転信号)
(ビット3の非反転信号,ビット4の反転信号,ビット5の非反転信号)
(ビット3の反転信号,ビット4の非反転信号,ビット5の非反転信号)
(ビット3の非反転信号,ビット4の非反転信号,ビット5の非反転信号)
の八つの組合せの信号がそれぞれ入力され,上位3ビット(ビット3∼5)のアド
レス信号に対応する一つの組合せが入力されたNANDゲートの出力がLOWとな
り,他の七つの組合せが入力されたNANDゲートの出力がHIGHとなる。
NANDゲート1−1∼1−8の出力を,NOTゲート1−1∼1−8に入力す
る。NOTゲート1−1∼1−8のうち一つの出力がHIGHとなり,他の七つの
出力がLOWとなる。
また,反転信号作成部2は,下位3ビット(ビット0∼2)のアドレス信号から
,。それぞれのビットを反転した信号を生成し反転・非反転の六つの信号を出力する
NANDゲート2−1∼2−8のそれぞれには,上記六つの信号のうち
(ビット0の反転信号,ビット1の反転信号,ビット2の反転信号)
(ビット0の非反転信号,ビット1の反転信号,ビット2の反転信号)
(ビット0の反転信号,ビット1の非反転信号,ビット2の反転信号)
(ビット0の非反転信号,ビット1の非反転信号,ビット2の反転信号)
(ビット0の反転信号,ビット1の反転信号,ビット2の非反転信号)
(ビット0の非反転信号,ビット1の反転信号,ビット2の非反転信号)
(ビット0の反転信号,ビット1の非反転信号,ビット2の非反転信号)
(ビット0の非反転信号,ビット1の非反転信号,ビット2の非反転信号)
の八つの組合せの信号がそれぞれ入力され,下位3ビット(ビット0∼2)のアド
レス信号に対応する一つの組合せが入力されたNANDゲートの出力がLOWとな
り,他の七つの組合せが入力されたNANDゲートの出力がHIGHとなる。
NANDゲート2−1∼2−8の出力を,NOTゲート2−1∼2−8に入力す
る。NOTゲート2−1∼2−8のうち一つの出力がHIGHとなり,他の七つの
出力がLOWとなる。
そして,NOTゲート1−1∼1−8の出力と,NOTゲート2−1∼2−8の
出力の組(64組,各2配線)を,それぞれ,64個の2入力のNANDゲート3
−1∼3−64に入力する。NANDゲート3−1∼3−64のうち一つの出力が
LOWとなり,他の63個の出力がHIGHとなる。NANDゲート3−1∼3−
64は,それぞれ内部回路1∼64に接続される。
このようにして,アドレス信号をデコードする部分は,全体として6ビットのア
ドレスをデコードして,64個の内部回路から一つを特定する。
1−e一対のドライバ選択ラインに対応して各8個ずつのドライバを有し
(したがって,1セクター内には合計512個のドライバ(D[0]
∼D[511)を有する,各8個のドライバは選択された一対のド]。)
ライバ選択ラインにより所定の電圧を受け,パーシャルデコーダに対
応する回路の出力電圧をワードラインに供給し,各ドライバが各一つ
のワードラインを所望の電圧に駆動する。
1−f−1512個の各ドライバ(D[0]∼D[511)は,三つのN]
MOSトランジスター(t0,t1,t2)を有し(各ドライバ内部の
回路図は次の図のとおり。図中のP信号は,パーシャルデコーダに対
応する回路の選択電位・非選択電位の出力信号である,。)
図各ドライバ内部の回路
X信号P信号
トランジスタ(t2)
S信号
トランジスタ(t1)
トランジスタ(t0)
1−f−2各ドライバは当該ドライバに接続されたドライバ選択ラインW,(
LS,/WLS)の第1の信号(WLS)がHIGHのときに,対応
するワードライン(WL)に,パーシャルデコーダに対応する回路の
出力電圧が現れるように,対応するワードライン(WL)をパーシャ
ルデコーダに対応する回路と電気的に結合するNMOSトランジスタ
ーt0及びNMOSトランジスターt1の組(ここで,NMOSトラ
ンジスターt0とt1は組になって働き,パーシャルデコーダに対応
する回路の出力電圧をワードライン(WL)に与える。その際,パー
シャルデコーダに対応する回路とワードライン(WL)とはNMOS
トランジスターt1が導通することによって接続される)と,。
1−f−3当該ドライバに接続されたドライバ選択ライン(WLS,/WL
S)の第2の信号(/WLS)がHIGHのときに,対応するワード
ライン(WL)をスイッチ回路と電気的に結合するNMOSトランジ
スターt2で構成し(ここで,上記スイッチ回路は,各セクターに一
つずつ設けられ,ドライバ選択デコーダ,パーシャルデコーダに対応
する部分に共通に入力されるセクター選択信号の入力を受ける,。)
1−g(1)次のアドレス遷移がある場合,現在選択されているワードライ
ンにつき,アドレス遷移が起こる前に,①R1信号に応答してパーシ
ャルデコーダに対応する回路の出力が0Vに切り替わり,ワードライ
ンを0Vに戻し(処理1,同時に,②R2信号に応答して,NMOS)
トランジスターt2を導通させ,スイッチ回路につなげ(処理2。こ
の処理2により,ワードラインの電圧が非選択電位(0V)になる時
間を短縮する,③アドレス遷移が起こる。。)
図示すると以下のとおりとなる。
(2)次のアドレス遷移がない場合,現在選択されているワードライン
につき,①R1信号に応答してパーシャルデコーダに対応する回路の出
,(),,力が0Vに切り替わりワードラインを0Vに戻し処理1同時に
②R2信号に応答して,NMOSトランジスターt2を導通させ,スイ
ッチ回路につなげる(処理2。)
図示すると以下のとおりとなる。
以上
被告製品の構成についての当事者の主張
(原告の主張)
被告製品の構成としては,被告製品説明書に加え,次の各説明(1−d−
1’ないし1−d−3,1−e−1,1−e−2,1−f−3)が加’’’’
えられるべきである。
アドライバ選択デコーダの内部構成について
被告製品には,
1−d−1’複数のドライバ選択ラインの中の一つのドライバ選択ライ
ンWLS1及び/WLS1を選択する回路Bこ([][])(
の回路Bは,NANDゲート1とこの出力が入力されるイ
ンバータ2(出力がAXA[1)と,AXA[1]とAX]
Bが入力されるNANDゲート3と,このNANDゲート
3の出力が入力されるレベルシフタ回路4(出力がWLS
[1)と,このNANDゲート3の出力とR2信号が入力]
されるNORゲート5と,このNORゲートの出力が入力
されるインバータ6(出力が/WLS[1)とを有する)]。
と,
1−d−2’複数のドライバ選択ラインの中の一つのドライバ選択ライ
ンWLS0及び/WLS0を選択する回路Aこ([][])(
の回路Aは,NANDゲート1とこの出力が入力されるイ
ンバータ2(出力がAXA[0)と,AXA[0]とAX]
Bが入力されるNANDゲート3と,このNANDゲート
3の出力が入力されるレベルシフタ回路4(出力がWLS
[0)と,このNANDゲート3の出力とR2信号が入力]
されるNORゲート5と,このNORゲートの出力が入力
されるインバータ6(出力が/WLS[0)とを有する)]。

1−d−3’を有するドライバ選択デコーダが存在する(1−d−1’
ないし1−d−3’につき,下記図1を参照。。)
図1ドライバ選択デコーダの一部
イドライバとワードラインの対応関係について
NANDゲート1
レベルシフタ回路4インバータ6
回路B(GD1)
NANDゲート3
インバータ2
NORゲート5
回路A(GD0)
被告製品の合計512個のドライバ(D[0]∼D[511)は,]
1−e−1’ドライバ選択ライン(WLS[1]及び/WLS[1)]
に各々対応し,各々が,対応するドライバ選択ライン(W
LS[1]及び/WLS[1)が選択される時に,対応す]
るワードライン(WL[8]∼WL[15)の中の一つの]
ワードライン(WL[8)をワードライン電圧に駆動する]
ドライバD[8]∼D[15]と,
1−e−2’ドライバ選択ライン(WLS[0]及び/WLS[0)]
に各々対応し,各々が,対応するドライバ選択ライン(W
LS[0]及び/WLS[0)が選択される時に,対応す]
るワードライン(WL[0]∼WL[7)の中の一つのワ]
ードライン(WL[0)をワードライン電圧に駆動するド]
ライバD[0]∼D[7]とを含む(1−e−1,1−e’
−2’につき,下記図2,3を参照。)
図2ドライバD[0]∼D[15]
ドライバD[0]∼D[7]
ドライバD[8]∼D[15]
図3ドライバD[0]∼D[7]
ウセクターアドレスデコーダの存在について
(ア)被告製品は,
1−f−3’入力されたアドレス信号をデコードすることによって
D[0]


D[1]
D[2]
D[3]
D[4]
D[5]
D[6]
D[7]
セクター選択信号を生成するセクターアドレスデコーダ
回路を有する。
(イ)被告製品の消去動作は,セクター単位で行われ,スイッチ回路は,
消去に必要な電圧を出力し,これがドライバを通してワードラインに
供給される。そして,スイッチ回路は,各セクターに一つずつ設けら
れ,ドライバ選択デコーダ,パーシャルデコーダに対応する部分に共
通に入力されるセクター選択信号の入力を受ける。このセクター選択
信号は,入力されたアドレス信号をデコードすることによって生成さ
れるから,このアドレス信号をデコードするためのセクターアドレス
デコーダ回路が必然的に伴うことになる。スイッチ回路はセクターア
ドレスデコーダ回路と接続されており,入力されたアドレス信号がセ
クターアドレスデコーダ回路によってデコードされてセクター選択信
号が生成され,そのセクター選択信号に応じてスイッチ回路はS信号
を供給する。
(被告の主張)
ア上記(原告の主張)アの1−d−1’ないし1−d−3’について
否認する。被告製品において,偶数番用回路と奇数番用回路の区別はな
い。
なお,ドライバ選択デコーダの内部に上記図1で示されるような回路が
存在することは認めるが,これはドライバ選択デコーダの一部分に過ぎな
い。
イ上記(原告の主張)イの1−e−1,1−e−2’について’
否認する。被告製品において,偶数番用回路と奇数番用回路の区別はな
いなお上記図2のブロックを上記図3と別紙被告製品説明書の図各。,,(
ドライバ内部の回路)の回路図で展開した回路が被告製品に存在すること
は認める。
ウ上記(原告の主張)ウ(ア)の1−f−3’について
否認する。
(別紙特許公報省略)

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