弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は,控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決の内,被控訴人東京入国管理局長がした出入国管理及び難民認定法4
9条1項に基づく控訴人の異議の申出は理由がない旨の裁決及び被控訴人東京
入国管理局主任審査官がした退去強制令書発付処分の取消請求を棄却する部分
を取り消す。
2被控訴人東京入国管理局長が平成16年4月22日付けで控訴人に対してし
た出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく控訴人の異議の申出は理由が
ない旨の裁決を取り消す。
3被控訴人東京入国管理局主任審査官が平成16年4月22日付けで控訴人に
対してした退去強制令書発付処分を取り消す。
第2事案の概要
1控訴人は,日本人であるaの子として昭和▲年▲月▲日に,一審原告b(以
下「b」という。)は,昭和▲年▲月▲日に,いずれも中華人民共和国(中国)にお
,(「」。)いて出生した中国国籍を有する外国人であり一審原告c以下cという
は,平成▲年▲月▲日,控訴人とbとの間の子として本邦で出生した中国国籍
を有する外国人である。
控訴人は,昭和55年5月13日,新東京国際空港に到着し,東京入国管理
局成田支局入国審査官から出入国管理令4条1項16号,特定の在留資格及び
その在留期間を定める省令1項3号所定の在留資格,在留期間180日とする
上陸許可を受けて,本邦に上陸し,在留資格の変更許可及び在留期間更新許可
を得て,本邦における在留を継続し,平成元年11月1日,永住許可申請をし
,,,,たが不許可となったため平成3年4月6日在留期間更新許可申請を行い
同日,出入国管理及び難民認定法(平成16年法律第73号による改正前のも
の。入管法)所定の在留資格「日本人の配偶者等,在留期間3年の在留期間」
更新許可を受け,その後,在留期間更新許可を得たが,平成8年4月23日に
,,。した在留期間更新許可申請に対しては同年8月19日不許可処分がされた
控訴人は,不法残留をした事実及び平成7年9月27日,仙台地方裁判所に
おいて詐欺,窃盗の罪名により懲役1年2月の刑の宣告を受け,これが確定し
た事実により,入管法24条4号ロ(不法残留)及びリ(刑罰法令違反者)の
該当者として退去強制手続がとられたが,平成9年7月2日,在留資格「日本
人の配偶者等,在留期間1年とする在留特別許可を受け,在留期間更新許可」
を受けて,本邦における在留を継続しており,平成10年4月8日,在留期限
を超えて本邦に不法残留していたbと婚姻の届出をし,両者の間に,平成▲年
▲月▲日,cが出生した。その後,控訴人が平成13年6月27日に,cが同
年11月20日にそれぞれ申請した在留期間更新許可申請に対し,平成14年
1月16日,いずれも不許可処分がされた。
,,東京入国管理局横浜支局入国審査官は平成14年10月3日及び同月9日
控訴人に係る違反審査をし,同月9日,控訴人が入管法24条4号ロに該当す
る旨の認定をし,控訴人が,特別審理官による口頭審理を請求したため,東京
,,,入国管理局特別審理官は平成15年5月22日控訴人に係る口頭審理をし
入国審査官の認定に誤りがない旨の判定をしたところ,控訴人が,法務大臣に
対する異議の申出をし,法務大臣から権限の委任を受けた被控訴人東京入国管
理局長(以下「東京入管局長」という)は,平成16年3月31日,控訴人。
の異議の申出について理由がない旨の裁決をし(以下「本件裁決」という,。)
被控訴人東京入国管理局主任審査官(以下「東京入管主任審査官」という)。
は,同年4月22日,控訴人に対して上記裁決を通知するとともに,控訴人に
対して退去強制令書発付処分をし(以下「本件退令処分」という,同日,。)
その旨控訴人に対して通知した。
b及びcについて,東京入国管理局入国審査官は,いずれも違反審査をした
上,bについては,平成12年11月6日,cについては,平成15年4月2
4日,それぞれ入管法24条4号ロに該当する旨の認定をし,東京入国管理局
特別審理官は,いずれも口頭審理の上,入国審査官の認定に誤りがない旨判定
したため,bが,自己及びcについては法定代理人として法務大臣に対する異
議の申出をし,東京入管局長が,平成16年3月31日,異議の申出には理由
がない旨の裁決を行い,東京入管主任審査官が,同年4月30日,b及びcに
対して退去強制令書発付処分をした。
2本件は,控訴人,b及びcが,東京入管局長による入管法49条1項に基づ
く異議の申出について理由がないとする旨の本件裁決を含む各裁決につき,在
留特別許可を付与しなかったことが,憲法14条等の趣旨に反し,また,比例
,,原則に違反する裁量権の逸脱・濫用があるとして各取消しを求めるとともに
上記各裁決に引き続きなされた本件退令処分を含む各退去強制令書発付処分の
各取消しを求めた(東京地方裁判所平成16年(行ウ)第315号事件。A事
件)外,各退去強制令書の執行を受けない地位にあることの確認を求めるとと
もに,控訴人,b及びcに定住者の在留資格を付与することの義務付けを求め
(同庁平成17年(行ウ)第230号事件。B事件,各退去強制令書の執行)
の差止めを求めた(同庁平成18年(行ウ)第106号事件。C事件)事案で
ある。
3原審は,控訴人,b及びcはいずれも,入管法24条4号ロの退去強制事由
に該当し,入管法50条1項3号に基づき在留特別許可を付与するか否かの判
,()断は法務大臣ないしその権限の委任を受けた地方入国管理局長法務大臣等
の極めて広範な裁量にゆだねられており,同号に係る法務大臣等の判断が違法
となるのは,その判断が全く事実の基礎を欠き,又は社会通念上著しく妥当性
を欠くことが明らかであるなど,法務大臣等に与えられた裁量権を逸脱し又は
それを濫用した場合に限られるものとし,控訴人が中国残留邦人の子であるこ
とは在留特別許可を付与すべき有力な事情の一つであるとしても,特別永住者
と同様の取扱をしなければならないというものではないし,控訴人の在留状況
は極めて悪質であること,控訴人,b及びcが,中国に帰国した場合,その生
活に特段の支障が生じるとはいえないことなどから,控訴人らに在留特別許可
を付与しないとの東京入管局長の判断が与えられた裁量権の範囲を逸脱又は濫
用したものであるとは認められず,本件各裁決は適法であるとし,定住者の在
留資格を付与することの義務付けを求める訴え及び退去強制令書の執行差止め
を求める訴えはいずれも不適法であるとしてこれを却下し,本件裁決を含む各
裁決及び本件退令処分を含む各退去強制令書の発付処分の各取消請求並びに上
記各退去強制令書の執行を受けない地位にあることの確認請求はいずれも理由
がないものとして棄却した。
これを不服として,控訴人のみが控訴したものであり,控訴人は,当審にお
いて,本件裁決及び本件退令処分の取消のみを求めているから,退去強制令書
の執行を受けない地位にあることの確認と定住者の在留資格の付与を求める訴
(),()えB事件に係る請求退去強制令書の執行の差止めを求める訴えC事件
に係る請求はいずれも当審における審理の対象ではない。
4前提事実,争点は,以下のとおり改めるほか,原判決の「事実及び理由」欄
「」,,。の第2事案の概要12()記載のとおりであるからこれを引用する1
「」「」,()原判決5頁4行目の入管法から同6行目の2条3号所定までを1
「出入国管理令4条1項16号,特定の在留資格及びその在留期間を定める
省令1項3号所定」と改める。
()原判決10行目入管法から12行目2条1号までを入管法た2「」「」「(
だし,平成元年法律第79号による改正前のもの)4条1項16号,出入国
管理及び難民認定法施行規則(ただし,平成2年法務省令15号による改正
前のもの)2条1号」と改める。
第3当裁判所の判断
,,1当裁判所も本件裁決における東京入管局長の判断が裁量権の範囲を逸脱し
又は濫用したものとはいえず,適法であると判断するが,その理由は,以下の
,「」「」とおり改めるほか原判決の事実及び理由欄の第3争点に対する判断
1(),(),()アからウ,オ(但し,原判決20頁末行から同21頁6行目123
までを除く)記載のとおりであるから,これを引用する。。
原判決10頁23行目「各該当し」から24行目「認められる」までを,。
「各該当する外国人であると認められる」と改める。。
2控訴人の主張に鑑み,付言する。
()控訴人は,中国残留邦人の子であり,日本政府は,中国残留邦人問題を1
解決すべき責務があり,退去強制の運用,執行にあたり,中国残留邦人の子
孫については,在日長期定住外国人よりも厳格な著しい制限を設けるべき義
務を負っており,比例原則を厳格に適用すべきであると主張している。
控訴人が,中国残留邦人の子であることは,法務大臣等が在留特別許可を
与えるか否かを判断するにつき,控訴人に有利な事情として考慮すべき事情
の一つであるといえるが,入管法は,法務大臣等が在留特別許可を付与すべ
きか否かの判断について,その要件や基準等に関する定めを何等おいておら
ず,出入国管理について,法務大臣等の裁量権の範囲が広範なものと解され
ることに照らせば,控訴人が中国残留邦人の子であることから,直ちに,在
留特別許可を付与すべきであるとはいえない。また,日本国との平和条約に
(),基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法特例法は
入管法の特例として,特例法に定める特別永住者に対し,退去強制ができる
場合を限定するものであるところ,控訴人はその適用を受ける者としての要
件を満たしておらず,また,中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰
国後の自立の支援に関する法律等の関係諸規定には,中国残留邦人の子孫に
ついて,入管法の特例を定めた部分は見当たらないから,控訴人に対し,退
去強制をするにつき,特別永住者と同等あるいはさらに厳格な要件によるべ
きであるとする控訴人の主張は理由がない。
()また,控訴人は,国籍法改正に際し,届出により日本国籍を取得しうる2
者を出生の時点により限定したのは,憲法14条に反する不合理な差別であ
るから,上記基準時以前に出生した控訴人に退去強制するについては,その
運用,執行が著しく制限されるべきであると主張している。
しかし,国籍法の昭和59年法律第45号による改正附則5条1項に定め
る国籍取得の特例が,昭和40年1月1日より前に出生した者には認められ
ていないことが,不合理な差別といえないことは上記引用に係る原判決記載
のとおりであり,上記の事情は,在留特別許可を付与するか否かの判断に際
して,考慮すべき事情の一つとなりうるとしても,これにより,上記基準時
以前に出生した者に対する退去強制を著しく制限すべきであるとはいえな
い。
()さらに,控訴人は,我が国が,市民的及び政治的権利に関する国際規約3
(),,,国際人権B規約を批准しているから退去強制の運用執行においても
家族の結合を重要な要素として考慮すべきであり,控訴人と母親を同じくす
る兄弟姉妹や日本人である前々妻とその子は日本国内にいることから,控訴
人に対して,退去強制をすることは国際人権B規約に反して違法であると主
張している。
しかし,在留特別許可の付与に係る判断は,広範な法務大臣等の裁量に委
ねられているものと解すべきことは上記引用に係る原判決記載のとおりであ
るところ,上記規約は,国家が外国人の受入れに関する事項について自由に
決定しうるとする国際慣習法上の原則を排斥するものではないし,適法な手
続により家族が分離されることがあることを前提としていることに照らせ
ば,上記規約が法務大臣等が在留特別許可の付与に係る判断をする場合にお
ける裁量権を直接制約するものとはいえない。
()以上のとおりであるから,控訴人に対する退去強制について,著しい制4
限をし,厳格な運用をすべきであるとする控訴人の主張はいずれも理由がな
い。
そして,控訴人に対する在留特別許可の付与を検討する場合に考慮すべき
事情として,控訴人が中国残留邦人の子であることや国籍法附則の適用を受
けられないことのほか,来日後25年以上本邦において生活していること,
母親を同じくする兄弟や前々妻との間の子も日本にいることが挙げられると
しても,他方で,控訴人が犯罪を繰り返しており,その結果,在留期間更新
許可申請が不許可となって,退去強制手続が執られるに至ったが,在留特別
許可が付与されて在留の継続が認められたにもかかわらず,その後わずか3
年余りで再度恐喝未遂事件に及んだことも上記引用に係る原判決記載のとお
りであって,在留状況は極めて劣悪であると言わざるを得ないし,証拠(乙
110,111)によると,妻bと未成年の子であるcは既に中国に帰国し
ていることが認められるから,これらの事情を総合すると,控訴人に在留特
別許可を付与せず,本件裁決をした東京入管局長の判断が,社会通念上著し
く妥当性を欠くことが明らかであるなど与えられた裁量権の範囲を逸脱又は
濫用したものであるとはいえない。
控訴人は,その他の事情をるる主張するが,上記結論を左右するに足りる
ものとは認められない。
3以上のとおり,本件裁決は適法になされたものといえるところ,東京入管局
長から,本件裁決の通知を受けた東京入管主任審査官は,入管法の定めにより
退去強制令書を発付するほかなく,本件退令処分が入管法の定めに従って行わ
れたことは上記引用に係る原判決記載のとおりであるから,本件退令処分もま
た適法である。
4以上のとおり,控訴人の請求はいずれも理由がなく,これらを棄却した原判
決は相当であって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主
文のとおり判決する。
東京高等裁判所第2民事部
裁判長裁判官太田幸夫
裁判官辻次郎
裁判官石栗正子

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛