弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人山田二郎、同去来川重二、同松下胤次の上告理由について。
 原判決の確定するところによれば、上告公社(被控訴人)は、昭和二九年一一月
頃兵庫県西宮市に上告公社近畿電気通信局勤務の職員のための宿舎(F宿舎)を設
置し、訴外Gに対し、右宿舎構内において宿舎の施設を利用し、宿舎居住者のため
の生活物資廉売機構を開設運営することを委嘱した。右生活物資廉売機構はGの個
人資格でその名と計算において業務を運営するものであるが、当時上告公社近畿電
通局においては、右のような業務は財団法人電気通信共済会に委嘱するのが例であ
つたため、Gに委嘱した右業務も将来右財団法人の組織に吸収してその一部局とし
て運営することを予定し、Gが取引上当初から財団法人電気通信共済会近畿地方生
活必需品販売所の名義を使用することを上告公社において黙認する旨の諒解が成立
した。Gは昭和二九年一一月八日から右物資販売業務を開始し、G主宰の下に訴外
Jらが現実の事務処理に当つたが、開始後約六ヶ月を経過した時期になつて、前記
財団法人の組織内に吸収されるとの当初の見通しは確定的に消滅するに至つた。し
かし、Gらは、引続き従前と全く同一の方式と機構の下に前同様の生活物資供給業
務を継続し、上告公社においてあえてこれに対し格別の措置を講ずることをせず放
任していた。そして、昭和三〇年一一月一日上告公社近畿電気通信局長とGとの間
にF職員集会所施設運営請負契約と称する契約が締結されたが、右契約の締結によ
つても前記物資販売業務の運営に関する上告公社とGらとの間の基本的関係に何ら
か新たな変化がもたらされたわけではない、というのである。
 原判決は、上告公社は、Gらが前記業務の運営につき、前記財団法人との関連が
解消した後も、少なくとも「近畿地方生活必需品販売部」もしくはこれと類似の名
称を引き続き使用していることを知りながらこれを放任していたものと推認するこ
とができるが、右「近畿地方生活必需品販売部」または「近畿地方生活物資販売所」
という名称は、上告公社近畿電通局の一部局としての表示力を有するから、上告公
社は、自ら外部に対し、右生活物資販売業務が直接同公社もしくはその地方機関た
る近畿電通局に帰属する事務であると解せしめるような外形を作り出したものと認
めるに足りると判示する。
 しかしながら、前記原判決確定の事実関係、ことに上告公社は、戦中戦後の物資
窮乏時代(当時は電信電話事業が逓信省ついでは電気通信省により所管され、上告
公社は未だ発足していなかつた。)は別として、職員の福利厚生施設としての右の
ような事業を公社の職員を使用し公社の計算と名において行なうことがなく、組織
外の第三者と契約を締結して第三者をしてその名と計算において行なわしめていた
のであり、上告公社近畿電通局においては、右にいう部外の第三者として財団法人
電気通信共済会を相手方として契約を締結するのを例とし、従つてまた、Gとの契
約締結に当り、Gが右財団法人の名称を使用することを黙認する旨の諒解をしたも
のにすぎないのであり、上告公社の一部局であることを示す「日本電信電話公社」
という名称の使用を特に許したとの事実を確定していない点に徴すれば、特段の事
情がない限り、この場合における前記「近畿地方生活必需品販売部」等の名称は、
上告公社またはその近畿電気通信局を表示するものとは認め難く、むしろ前記財団
法人の一部局を表示するものというべきである。原判決が判示するように、Lが昭
和三〇年七、八月頃より被上告組合(控訴人)ら商品の卸売人との交渉に当り、信
用上の便宜を得るため、ほしいままに「日本電信電話公社近畿電気通信局・近畿地
方生活必需品販売部」という名称を用いたとしても、上告公社としては何らこれに
関知しないところである。当時、上告公社近畿電通局厚生課に対し、部外の商人か
ら両三度右生活物資販売部と上告公社との関係如何につき商取引に関する信用調査
と推察されるような問い合せがあつたとしても、その一事をもつて直ちに上告公社
がその一部局としての近畿地方生活必需品販売部の名称の使用を黙認したものと断
定することはできない。原判決は、Gらがその営業所に上告公社の名称を冠した看
板を掲げ、上告公社においてこれを容認していたなど被上告人が原審において主張
した上告公社の一部局としての名称使用黙認を認めるに足る特段の事由につき判示
することなく、前記認定事実から直ちに上告公社がGらに対し上告公社の名称の使
用を許したものとして商法二三条を適用し、また、上告公社がGらに対しGらの業
務遂行を組成する一切の行為につき上告公社の代理権を授与したものであることを
一般世人に表示したものであると判示したのは、理由不備の違法があり、論旨はこ
の点において理由があるといわなければならない。本件は、この点において破棄を
免れず、前記特段の事情の有無についてなお審理判断を要するから、原審大阪高等
裁判所に差し戻すべきである。
 よつて、その余の論旨についての判断を省略し、民訴四〇七条に従い、裁判官全
員一致の意見で主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

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