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平成14年(ワ)第3393号 著作権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日 平成14年7月23日
 判        決
        原      告   社団法人日本音楽著作権協会
        訴訟代理人弁護士     北   本   修   二
        同            七   堂   眞   紀
        被      告     A
主        文
1 被告は、別紙店舗目録記載の店舗において、別添楽曲リスト記載の音楽著作物
を、次の方法により使用してはならない。
(1) カラオケ装置を操作し、又は従業員に操作させ、伴奏音楽に合わせて客又は
従業員に歌唱させ、若しくは自ら歌唱する方法。
(2) カラオケ装置を操作し、又は従業員に操作させて伴奏音楽及び歌詞の文字表
示を再生する方法。
2 被告は、別紙店舗目録記載の店舗から、別紙物件目録記載のカラオケ装置を撤
去せよ。
3 被告は、原告に対し、金83万1600円及び別紙遅延損害金目録記載の金員
を支払え。
4 訴訟費用は被告の負担とする。
5 この判決は、仮に執行することができる。
事        実
第1 当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨
主文同旨
2 請求の趣旨に対する答弁
原告の請求をいずれも棄却する。
第2 当事者の主張
1 請求原因
(1) 原告の著作権等
原告は、平成13年9月30日までは「著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル
法律」(昭和14年法律第67号)に基づく許可を受け、平成13年10月1日か
ら「著作権等管理事業法」(平成12年法律第131号)に基づく登録を受け、内
外国の音楽の著作物の著作権者からその著作権又は支分権(演奏権、録音権、上映
権等)の移転を受けるなどしてこれを管理し、国内のラジオ・テレビの放送事業者
をはじめ、レコード、映画、出版、興行、社交場及び有線放送等各種の分野におけ
る音楽の著作物の利用者に対して、音楽の著作物の利用を許諾し、許諾の対価とし
て利用者から著作物使用料を徴収し、これを内外国の著作権者に分配することを主
たる目的とする社団法人である。
原告は、社交場等においてカラオケの伴奏により歌唱されるほとんどすべ
ての音楽著作物について、内国の音楽の著作物については著作権者との著作権信託
契約を締結し、外国の音楽の著作物については我が国の締結した著作権条約に加盟
する諸外国の著作権仲介団体との相互管理契約を締結することによりその著作権又
は支分権の移転を受けるなどしてこれを管理している(以下、原告が管理している
音楽著作物を「管理著作物」という。)。
別添楽曲リスト記載の音楽著作物は、いずれも、管理著作物であり、カラ
オケ歌唱の使用実績を有する主要な曲目に当たり、今日、カラオケ装置を設置して
いる社交場において、日常的に反復使用されている楽曲である。
(2) 被告の行為
ア 被告は、平成10年8月1日から現在まで、別紙店舗目録記載の店舗
(以下「本件店舗」という。)を営業している。
イ 他人の音楽著作物を公に演奏、上映して利用する者は、法律に別段の除
外規定がない限り、その著作物の利用について、著作権者の許諾を受けるべき法律
上の義務を有する(著作権法22条、22条の2、63条)。これは、入場料を取
って演奏する場合に限らず、キャバレー、カフェ、バー、スナック等社交場、飲食
店の経営者が、音楽の演奏、上映により直接又は間接に営利を目的とする場合にも
すべてこれに著作権が及び、著作物使用者が許諾を得ないで著作物を演奏、上映す
れば、著作権の侵害となる。
ウ 被告は、本件店舗において、毎日の営業時間中、飲食を提供するかたわ
ら、カラオケ伴奏による歌唱により、店の雰囲気作りをし、客の来集を図って利益
を上げることを意図しており、原告の管理著作物の演奏を客に聞かせることを自己
の営業に利用し、利益を収めている。
被告は、本件店舗において、別紙物件目録記載のカラオケ装置を操作
し、又は従業員に操作させ、伴奏音楽及び歌詞の文字表示を再生し、伴奏音楽に合
わせて客、従業員に歌唱させ、若しくは自ら歌唱することにより、管理著作物を使
用している。
したがって、被告は、原告の利用許諾を受けないで、営利の目的で、来
集した不特定の客に聞かせるため、公に、原告の管理著作物に含まれる楽曲を、カ
ラオケ装置を用いて、伴奏音楽として又はカラオケ伴奏に伴う歌唱により演奏し、
また歌詞の文字表示を再生して上映し、もって、原告の著作権(演奏権、上映権)
を侵害している。
エ 以上によれば、原告は、被告に対し、著作権法112条1項に基づき、
本件店舗において、別添楽曲リスト記載の音楽著作物を、次の方法により使用する
ことの差止めを求める権利を有する。
(ア) カラオケ装置を操作し、又は従業員に操作させ、伴奏音楽に合わせ
て客又は従業員に歌唱させ、若しくは自ら歌唱する方法。
(イ) カラオケ装置を操作し、又は従業員に操作させて伴奏音楽及び歌詞
の文字表示を再生する方法。
また、別紙物件目録記載のカラオケ装置は、著作権法112条2項の
「もっぱら侵害の行為に供された機械若しくは器具」に該当するから、原告は、そ
の廃棄その他の侵害の停止又は予防に必要な措置として、被告に対し、別紙物件目
録記載のカラオケ装置を本件店舗から撤去することを求める権利を有する。
オ なお、原告は、被告に対し、本件店舗におけるカラオケ装置を用いた管
理著作物の使用差止め等を求める仮処分を申立て(当庁平成13年(ヨ)第2008
0号)、平成13年12月4日、申立てを認容する仮処分決定がされ、同月17
日、同仮処分は執行されたが、執行により施された封印は破棄され、被告は、カラ
オケ装置を用いた管理著作物の使用を止めることなく、現在まで管理著作物の使用
を継続している。
(3) 被告の損害賠償責任
被告は、本件店舗において、原告の管理著作物である楽曲をカラオケ装置
を用いて演奏、上映することが、原告の著作権を侵害することを知りながら、又は
過失により知らないで、原告の許諾を受けずに、原告の管理著作物を演奏、上映
し、原告の著作権を侵害したものであるから、これにより原告が被った損害を賠償
すべき義務がある。
(4) 損害
ア 原告は、「著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律」に基づき、「著作物
使用料規程」を定めて文化庁長官の認可を受け、「著作権等管理事業法」に基づ
き、「使用料規程」を定めて文化庁長官に届け出ている。
社交場(バー、スナックその他設備を設け客に飲食等させる営業を行う
施設)において、当該営業とともに著作物を演奏等する場合の使用料は、包括的利
用許諾契約を結ばない場合は、1曲1回の使用料をもとに算定される。原告の管理
著作物1曲1回使用時間5分までの使用料は、店舗の座席数(面積)と標準単位料
金(社交場において客1人当たりにつき通常支払うことを必要とされる税引き後の
料金相当額)とを要素として算定される。
本件店舗の座席数は40席まで、標準単位料金は5000円までに該当
し、これを使用料規程別表16の1に当てはめると、1曲1回使用時間5分までの
使用料は、90円である。そして、消費税が別途加算される。
イ 原告の客席面積5坪までの店舗からの使用料徴収業務は、平成9年8月
11日付けの著作物使用料規程変更認可に基づき、平成10年2月1日から開始さ
れている。
本件店舗の平成10年8月1日から平成14年3月31日までの1日当
たりの管理著作物の使用曲数は、10曲を下らない。
本件店舗の営業日数は、平均して1か月20日を下らない。
ウ これまで述べたところによれば、本件店舗における管理著作物の1か月
当たりの使用料は、1万8900円である(90円×10曲×20日×1.05=
1万8900円)。
前記(2)オのとおり、本件店舗について仮処分の執行がされたが、封印が
破棄され、カラオケ装置を用いた管理著作物の使用が継続されており、使用料相当
損害金は、仮処分の前後を通じて継続して算定される。
そうすると、平成10年8月1日から平成14年3月31日までの使用
料相当損害金は、83万1600円(1万8900円×44か月=83万1600
円)となる。
エ 被告の使用料相当損害金の支払義務は、毎月の管理著作物の無許諾使用
により発生するから、原告は、各月の使用料相当損害金に対し、翌月1日を各起算
日として、各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求権
を有し、その額は、別紙遅延損害金目録のとおりとなる。
(5) 結論
よって、原告は、被告に対し、次のとおり請求する。
ア 著作権法112条1項に基づき、本件店舗において、別添楽曲リスト記
載の音楽著作物を、次の方法により使用することの差止め。
(ア) カラオケ装置を操作し、又は従業員に操作させ、伴奏音楽に合わせ
て客又は従業員に歌唱させ、若しくは自ら歌唱する方法。
(イ) カラオケ装置を操作し、又は従業員に操作させて伴奏音楽及び歌詞
の文字表示を再生する方法。
イ 著作権法112条2項に基づき、本件店舗からの別紙物件目録記載のカ
ラオケ装置の撤去。
ウ 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として、使用料相当損害金83
万1600円及び別紙遅延損害金目録記載の金員の支払。
2 請求原因に対する認否
(1) 請求原因(1)(原告の著作権等)の事実は不知。
(2)ア 請求原因(2)(被告の行為)アの事実のうち、被告が、平成11年7月
27日から現在まで、本件店舗を営業していることは認め、本件店舗の開店時期が
平成10年8月1日であることは否認する。本件店舗の開店時期は、平成11年7
月27日である。
イ 請求原因(2)イの事実は認める。
ウ 請求原因(2)ウの事実は否認し、主張は争う。カラオケ代として客から金
は取っていない。
エ 請求原因(2)エの主張は争う。
オ 請求原因(2)オの事実は認める。ただし、封印を破棄したのは客である。
(3) 請求原因(3)(被告の損害賠償責任)の事実は否認し、主張は争う。
(4)ア 請求原因(4)(損害)アの事実は不知であり、主張は争う。本件店舗に
は、椅子が5席あるカウンターと、3、4人掛けのテーブルが3つある。
イ 請求原因(4)イの事実のうち、本件店舗の営業日数が平均して1か月20
日を下らないことは認め、本件店舗の1日当たりの管理著作物の使用曲数が10曲
を下らないことは否認し、その余の事実は不知。
ウ 請求原因(4)ウの事実は否認し、主張は争う。
エ 請求原因(4)エの事実は否認し、主張は争う。
 理        由
1 甲第1ないし第3号証、第9号証によれば、請求原因(1)(原告の著作権等)の
事実が認められる。
2(1)ア 請求原因(2)(被告の行為)アの事実のうち、被告が、遅くとも平成11
年7月27日から現在まで、本件店舗を営業していることは、当事者間に争いがな
い。
イ 各証拠によれば、次の事実が認められる。
(ア) 本件店舗は、開店当初から被告が営業していたものであり、被告が他
の者から営業を引き継いだものではない(被告本人尋問の結果)。平成10年8月
18日、被告名義で本件店舗に設置されている電話について権利取得がされた(甲
第10号証の1、2)。原告は、同年10月ころ、NTTの電話情報により、本件
店舗の存在を知った(甲第4号証)。原告は、同年12月22日、本件店舗宛に、
カラオケ利用について調査のアンケートを送付したが、回答がなかった(甲第6号
証)。
(イ) 平成11年6月9日、原告の職員が本件店舗に出向き、被告と推認さ
れる20代の女性経営者と面談し、カラオケを利用している事実を確認し、開店が
1年前であることを聴取し、著作物利用許諾契約の締結の必要性を説明した(甲第
4号証)。原告は、同月24日、本件店舗宛に、著作物利用許諾契約の締結を催促
する旨の文書を、音楽著作物利用許諾契約申込書などとともに送付した(甲第4、
第7号証)。
(ウ) 平成13年5月26日、原告の委託を受けた調査員が本件店舗の実態
調査を行った際、被告は、調査員に対し、開店日は平成10年8月であると述べた
(甲第8号証)。
(エ) 平成13年8月23日、原告の職員は、本件店舗の店頭に「3周年記
念デー8/23、24、25 飲み放題6000円」という掲示がされているのを
確認した(甲第4号証)。
(オ) 被告は、平成14年2月21日、原告訴訟代理人の事務所で同代理人
と交渉した際、同代理人から、賃貸借契約書その他開店時期についての資料を探し
て提示するように求められ、速やかに提示する旨述べたが、その後、被告からその
ような資料の提示はなかった(弁論の全趣旨)。
以上の事実が認められる。
以上の認定事実によれば、本件店舗の開店時期は、平成10年8月1日で
あったと推認される。
ウ 被告は、本件店舗の開店時期が平成11年7月27日である旨主張し、被
告本人尋問においても、開店時期が平成11年である旨供述する。しかし、開店時
期が平成11年であることの根拠は、被告本人尋問の結果によっても明らかではな
く、前記イ(エ)に認定した「平成13年8月の『開店3周年』の掲示」について、
そのような掲示をした事実は認めながら、3年目に入るから3周年であるというよ
うな不合理な弁解をしており、その他、被告本人の供述を裏付けるに足りる証拠は
ない。したがって、被告本人尋問における被告の上記供述は、信用することができ
ず、本件店舗の開店時期が平成11年7月27日である旨の被告の主張は、採用す
ることができない。
エ 前記アの当事者間に争いのない事実と前記イの認定事実によれば、被告
は、平成10年8月1日から現在まで、本件店舗を営業しているものと認められ
る。
(2) 請求原因(2)イの事実は、当事者間に争いがない。
(3) 請求原因(2)ウの事実について検討する。
甲第4号証、第8、第9号証、被告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれ
ば、被告が、本件店舗において、毎日の営業時間中、飲食を提供するかたわら、カ
ラオケ伴奏による歌唱により、店の雰囲気作りをし、客の来集を図って利益を上げ
ることを意図しており、原告の管理著作物の演奏を客に聞かせることを自己の営業
に利用し、利益を収めていること、被告が、本件店舗において、別紙物件目録記載
のカラオケ装置を操作し、又は従業員に操作させ、伴奏音楽及び歌詞の文字表示を
再生し、伴奏音楽に合わせて客、従業員に歌唱させ、若しくは自ら歌唱することに
より、管理著作物を使用していることが認められる。
したがって、被告は、原告の利用許諾を受けないで、営利の目的で、来集し
た不特定の客に聞かせるため、公に、原告の管理著作物に含まれる楽曲を、カラオ
ケ装置を用いて、伴奏音楽として又はカラオケ伴奏に伴う歌唱により演奏し、また
歌詞の文字表示を再生して上映し、もって、原告の著作権(演奏権、上映権)を侵
害しているものと認められる。
(4) 請求原因(2)エについて検討する。
これまで述べたところによれば、原告は、被告に対し、著作権法112条1
項に基づき、本件店舗において、別添楽曲リスト記載の音楽著作物を、次の方法に
より使用することの差止めを求めることができる。
(ア) カラオケ装置を操作し、又は従業員に操作させ、伴奏音楽に合わせて客
又は従業員に歌唱させ、若しくは自ら歌唱する方法。
(イ) カラオケ装置を操作し、又は従業員に操作させて伴奏音楽及び歌詞の文
字表示を再生する方法。
また、別紙物件目録記載のカラオケ装置は、著作権法112条2項の「もっ
ぱら侵害の行為に供された機械若しくは器具」に該当するから、原告は、その廃棄
その他の侵害の停止又は予防に必要な措置として、被告に対し、別紙物件目録記載
のカラオケ装置を本件店舗から撤去することを求めることができる。
(5) 請求原因(2)オの事実、すなわち、原告が、被告に対し、本件店舗における
カラオケ装置を用いた管理著作物の使用差止め等を求める仮処分を申立て(当庁平
成13年(ヨ)第20080号)、平成13年12月4日、申立てを認容する仮処分
決定がされ、同月17日、同仮処分が執行されたが、執行により施された封印は破
棄されたこと、被告が、カラオケ装置を用いた管理著作物の使用を止めることな
く、現在まで管理著作物の使用を継続していることは、当事者間に争いがない。し
たがって、被告は、著作権侵害行為を継続しているものというべきである。
3 請求原因(3)について検討する。
著作物を公に演奏する権利及び公に上映する権利を著作者が専有すること並び
に著作権の保護期間は著作権法の定めるところであり、昭和63年3月15日、最
高裁判所が「スナック等の経営者が、カラオケ装置と音楽著作物たる楽曲の録音さ
れたカラオケテープとを備え置き、客に歌唱を勧め、客の選択した曲目のカラオケ
テープの再生による伴奏により他の客の面前で歌唱させるなどし、もって店の雰囲
気作りをし、客の来集を図って利益をあげることを意図しているときは、同経営者
は、当該音楽著作物の著作権者の許諾を得ない限り、客による歌唱につき、その歌
唱の主体として演奏権侵害による不法行為責任を免れない」旨の判決を言い渡し
(最高裁判所昭和59年(オ)第1204号同63年3月15日第3小法廷判決・民
集42巻3号199頁)、同判決が当時マスコミ等により広く報道されたことは当
裁判所に顕著である。したがって、仮に被告が、本件店舗開店時に、カラオケ装置
により他人が著作権を有する音楽著作物を無断で演奏、上映することが著作権侵害
に当たることを知らなかったとしても、法を知らなかったことを理由に過失を免れ
るものではない。さらに、弁論の全趣旨によれば、本件店舗のような店でカラオケ
伴奏による歌唱により演奏される曲の多くは、近年一般の人気を博している曲であ
り、これらは、著作権の保護期間内のものである蓋然性が高く、かつこのことは一
般に周知のことであると推認されるから、仮に演奏された個々の音楽著作物が保護
期間内のものか否かを被告が知らなかったとしても、知らなかったことにつき過失
があったものといわざるを得ない。
したがって、被告は、本件店舗において、原告の著作権を侵害することを知り
ながら、又は少なくとも過失により知らないで、原告の許諾を受けずに、原告の管
理著作物を演奏、上映したことにより、原告の著作権を侵害したものであるから、
これにより原告が被った損害を賠償すべき義務があるというべきである。
4(1) 請求原因(4)アについて検討する。
ア 甲第3号証、第9号証及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められ
る。
原告は、「著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律」に基づき、「著作物使
用料規程」を定めて文化庁長官の認可を受け、「著作権等管理事業法」に基づき、
「使用料規程」を定めて文化庁長官に届け出ている。
それによれば、社交場(バー、スナックその他設備を設け客に飲食等させ
る営業を行う施設)において、当該営業とともに著作物を演奏等する場合の使用料
は、包括的利用許諾契約を結ばない場合は、1曲1回の使用料をもとに算定され
る。原告の管理著作物1曲1回使用時間5分までの使用料は、店舗の座席数(面
積)と標準単位料金(社交場において客1人当たりにつき通常支払うことを必要と
される税引き後の料金相当額)とを要素として算定される。
バー、クラブなど酒類の提供を主たる目的とするものであって、ホステス
等の社交員の接待が通常伴うもの(業種2)については、著作物使用料規程及び使
用料規程の別表16の1により、カラオケ伴奏による歌唱1曲1回利用時間5分ま
での使用料は、標準単位料金が最低の5000円まで、座席数が40席(面積が6
0㎡)までにつき、90円とされている。
以上の事実が認められる。
イ 甲第4、第5号証、第8、第9号証によれば、本件店舗は、バー、クラブ
など酒類の提供を主たる目的とするものであって、ホステス等の社交員の接待が通
常伴うもの(業種2)に該当し、本件店舗の座席数は約22席、客室面積は約5
坪、標準単位料金は5000円までであることが認められる。したがって、上記ア
の規程によれば、本件店舗における管理著作物の使用料は、1曲1回90円に消費
税を加算した額であると認められる。
(2) 請求原因(4)イの事実のうち、本件店舗の営業日数が平均して1か月20日
を下らないことは、当事者間に争いがない。
甲第9号証及び弁論の全趣旨によれば、原告の客席面積5坪までの店舗から
の使用料徴収業務は、平成9年8月11日付けの著作物使用料規程変更認可に基づ
き、平成10年2月1日から開始されたことが認められる。
甲第4号証、第8、第9号証及び弁論の全趣旨によれば、本件店舗は、定休
日が月曜日で、営業時間は午後8時から午前2時30分ごろまでの約6時間30分
(ただし、金曜日と土曜日は午後8時から午前4時ごろまでの約8時間)であるこ
と、本件店舗において、平成13年5月26日の実態調査の際、午後10時40分
から翌日の午前1時20分までの2時間40分の間に、11曲の管理著作物である
楽曲がカラオケ伴奏により歌唱され演奏されたこと、本件店舗において、従業員に
より、カラオケ装置の操作、歌唱、歌唱の誘引、カラオケの早見目次集の配布が行
われていること、本件店舗のカラオケ装置はリースによるものであるところ、リー
ス料は、通常、1か月当たり数万円であることが認められる。これらの認定事実に
よれば、本件店舗の平成10年8月1日から平成14年3月31日までの1日当た
りの管理著作物の使用曲数は、10曲を下らないものと推認される。
(3) 請求原因(4)ウについて検討する。
以上によれば、本件店舗における管理著作物の1か月当たりの使用料は、1
万8900円であるものと認められる(90円×10曲×20日×1.05=1万
8900円)。
そうすると、平成10年8月1日から平成14年3月31日までの使用料相
当損害金の合計は、83万1600円(1万8900円×44か月=83万160
0円)となるものと認められる。なお、前記2(5)記載の平成13年12月17日の
仮処分執行による封印が破棄された時期は、必ずしも明確でないものの、少なくと
も平成14年1月29日の時点で既に破棄されていたことが認められるほか(甲第
4号証の同年月日欄参照)、被告本人尋問の結果及び従前の交渉経緯における被告
の対応等にも照らすと、上記封印破棄は仮処分執行の直後に行われ、被告の著作権
侵害行為が上記封印により妨げられていた期間は極めて短期間であったものと推認
される。したがって、被告による著作権侵害行為は、仮処分執行の前後を通じてほ
ぼ途切れることなく継続されたものというべきであり、仮に多少の侵害中断期間が
あったとしても、被告による著作権侵害行為の期間を全体としてみれば、比較的長
期に及んでおり、本件店舗の平均営業日数や1日当たりの管理著作物の使用曲数
も、前記(2)認定のとおり、もともと控え目に算定されたものであることも考慮すれ
ば、原告主張の全期間を通算して使用料相当損害金を算定するのが相当である。
(4) 以上によれば、原告は、被告に対し、著作権侵害による不法行為に基づき、
使用料相当損害金の合計83万1600円及び各月の使用料相当損害金に対し翌月
1日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金として別紙遅延
損害金目録記載の金員の支払を請求することができる。
5 よって、本訴請求はいずれも理由があるから、これを認容し、訴訟費用の負担
につき民事訴訟法61条を、仮執行の宣言につき同法259条1項を、それぞれ適
用して、主文のとおり判決する。
 大阪地方裁判所第21民事部
 裁判長裁判官   小    松    一    雄
 裁判官   中    平         健
裁判官   田    中秀    幸
(別紙)
店舗目録
 物   件   目   録
 別紙店舗目録記載の店舗内に設置されたアンプ、コマンダー、マイク、スピーカ
ー、モニターテレビ等の組合せからなるカラオケ関連機器一式
遅延損害金目録

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