弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件抗告を棄却する。
     抗告費用は抗告人らの負担とする。
         理    由
 本件抗告の趣旨及び理由は、別紙のとおりである。
 為替手形金債務の履行遅滞による引受人の商事法定利率による遅延損害金債務
が、手形法四八条一項二号二<要旨>八条二項の規定による引受人の法定利息債務と
理論上競合して存在しうるとしても、およそ為替手形債務について、引受人
に遅延損害金支払の義務があるとするにはまず手形権利者が手形を呈示して支払を
求めねばならないことはいうまでもなく、ことに支払呈示期間後における引受人に
対する為替手形の支払のための呈示は、たとえその手形に支払地や第三者方払の記
載があつても、引受人の現時の営業所、もし営業所がないときはその住所でなされ
ねばならない(商法五一六条二項五一七条)。それゆえ為替手形金に対する支払呈
示期間後の呈示にかかる遅延損害金債務の義務履行地は、支払呈示期間後の為替手
形債務のそれと同じく、手形債務者の営業所、もし営業所がないときはその住所で
ある。手形は裏書の方法によつてこれを譲渡し得ることはもちろん、債権譲渡の方
法によつてもこれに譲渡することができるが、支払呈示以後の遅延損害金債権もま
た、裏書あるいは債権譲渡のいずれの方法によつても、これを移転することができ
るのである。また債権譲渡の方法によつて譲渡した場合、それが手形自体であつて
もあるいは遅延損害金であつても、民法の規定による債務者に対する対抗要件をみ
たすほか手形の交付が必要であるのは、有価証券の性質上当然である。したがつて
債権譲渡の方法による遅延損害金債権の譲受人がその支払を受けるにはその所持に
かかる手形を呈示しかつこれを引換にすることを必要とすることは、裏書の方法に
よる遅延損害金債権の譲受人の場合と異らない。そうすると支払呈示以後の遅延損
害金債務は持参債務ではなく、取立債務であると解するのが相当である。
 本件訴訟の被告らの被相続人Aの本訴提起の時の営業所(住所)は、岩手県宮古
市であることは記録上明白であるから、本件訴訟は盛岡地方裁判所の管轄(盛岡地
方裁判所の事務の一部を取り扱う同地方裁判所宮古支部もまた、盛岡地方裁判所の
管轄に属する本件訴訟を取り扱い得るのであるが、右Aの承継人五名のうち被告B
のみが現在宮古市に住所を有しその他はすべて盛岡市に住所を有し、他方原告らは
大阪市に事務所を有することが記録上明らかであるから、当事者双方のため著しい
損害又は遅滞を避けるため、盛岡地方裁判所が本件訴訟を取り扱うのが相当である
と認められる。)に属し、大阪地方裁判所の管轄に属しないというほかはない。
 他に記録を調べてみても、原決定にはこれを取り消すべき違法の点はなく、本件
抗告は理由がないから民訴法四一四条三八四条九五条八九条九三条を適用し主文の
とおり決定する。
 (裁判長裁判官 熊野啓五郎 裁判官 岡野幸之助 裁判官 山内敏彦)

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