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判決言渡平成20年7月30日
平成20年(ネ)第10022号損害賠償請求控訴事件(原審・東京地裁平成1
9年(ワ)第27342号)
口頭弁論終結日平成20年6月18日
判決
控訴人X
被控訴人株式会社オンワード樫山
訴訟代理人弁護士森田健二
同山田明文
同田子陽子
同今枝陽子
同小池信人
同寺本昌晋
同加藤絢子
同柳岡茂
訴訟代理人弁理士三中英治
同三中菊枝
主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人は,控訴人に対し,300万円を支払え。
3被控訴人は,ストレッチできるポリウレタン繊維若しくはポリウレタン布地
を使用し,それらから繊維製品を製造し,又はストレッチできるポリウレタン
,。繊維ポリウレタン布地若しくは上記製造した繊維製品を販売してはならない
第2当事者の主張
1当事者双方の主張は,次に付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄の第
2「当事者の主張」のとおりであるから,これを引用する。
2控訴人
控訴人の当審における主張は,別紙(一)の控訴理由書記載のとおりである。
3被控訴人
(1)控訴の理由1に対し
すべて否認ないし争う。
控訴人は,米国特許出願08/433047号に基づく優先権主張をして
特願平8−59205号の特許出願を行ったところ,これが拒絶査定された
ことを「虚偽削除をして暗殺した」として,被控訴人に上記特許権の取得を
妨害された旨主張するが,そのような事実はない。
すなわち,控訴人が文言を「虚偽削除」されたと主張する書面(甲61の
,),,一部乙2の1は日本特許庁が作成した公報用の要約書英訳版にすぎず
優先権証明書ではない。また,そもそも,被控訴人が上記書面の作成に関与
した事実はない。
加えて,特願平8−59205号は,単に特許庁における審査において,
進歩性の欠如等の理由で拒絶査定されたにすぎない。
(2)控訴の理由2に対し
すべて否認ないし争う。
控訴人は「刊行物等提出書(甲64)について主張するが,被控訴人は」
同書面の作成,提出に関わっておらず,法的責任を負うことはない。また,
そもそも,同書面の作成,提出により,作成提出者が法的責任を負うことも
ない。
加えて,被控訴人が控訴人と秘密保持契約を締結した事実はなく,義務違
反はない。
なお,控訴人は,特願平8−59205号及び特願2000−40012
0号(乙12)が拒絶されたことがパリ条約4条の4に違反すると主張する
が,これらは,単に特許要件を具備しないことを理由として拒絶されたもの
であり「特許の対象である物の販売又は特許の対象である方法によって生,
産される物の販売が国内法令上の制限を受けることを理由として(パリ条」
約4条の4)特許を拒絶し又は無効としたものではないから,同条に違反す
るものではない。
(3)控訴の理由3に対し
控訴人が「日本秘密警察」と「日産社員」らに暴行されたとする点及びそ
の経緯については不知,その余は否認ないし争う。
特願2000−400120号は,特許要件を具備していなかったため,
特許庁における審査で拒絶されたものであり,その後上告が棄却され,又は
上告受理申立てが却下されており,確定済みである。
,(),なお各国における特許は独立したものでありパリ条約4条の2第1項
第一国で特許が成立しても,第二国においてはそれと独立して特許性が判断
されることになる。
(4)控訴の理由4に対し
すべて否認ないし争う。
(5)控訴の理由5に対し
本件と無関係な主張であり,認否の限りではないが,敢えて認否すれば,
不知である。
第3当裁判所の判断
1Aに対する控訴提起の有無
本件記録によれば,原審における被告は株式会社オンワード樫山とAの両名
であり,原判決も上記両名を被告としてなされているところ,控訴人が原審裁
判所に提出した控訴状は別紙(二)の1のとおりであり,また,当裁判所が控訴
人に対し「お尋ね」として被控訴人が誰であるかを釈明したことに対する回答
は別紙(二)の2及び3であった。しかるに控訴人は,平成20年6月18日の
当審第1回口頭弁論期日において,本件の被控訴人は株式会社オンワード樫山
だけでなくA個人も含まれる旨主張している。
よって検討するに,民事訴訟法286条は控訴提起の方式について規定し,
「控訴の提起は,控訴状を第一審裁判所に提出してしなければならない(1」
項「控訴状には,次に掲げる事項を記載しなければならない。①当事者及び),
,」()法定代理人②第一審判決の表示及びその判決に対して控訴をする旨2項
としていることからすると,一審被告であったAに対し控訴人から控訴提起が
あったかどうかは,手続安定の見地から,専ら控訴状ないしこれを補完する書
面の記載のみによって判断すべきものであるところ,前記別紙(二)の1,2,
3のとおり被控訴人は株式会社オンワード樫山代表者代表取締役A別,「」(
紙(二)の1「株式会社オンワード樫山代表取締役A(別紙(二)の2「株),」),
式会社オンワード樫山(代表者代表取締役A(別紙(二)の3)と記載してい)」
るのであって,そのほかに「A」と記載はしていないのであるから,被控訴人
とされたのは株式会社オンワード樫山のみであり,A個人は被控訴人とされて
いないと認めるのが相当である。したがって,A個人も被控訴人であるとする
控訴人の上記主張は理由がない。
2本件における基礎的事実関係
(1)証拠(乙1∼13〔枝番を含む)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事〕
実を認めることができる。
ア控訴人は,1995年(平成7年)5月3日の優先権(米国,優先権主
張番号08/433047を主張して平成8年3月15日名称を布),,「
地の縫製方法」とする発明について日本国特許庁に特許出願をした(特願
平8−59205号,以下「本願」という。公開日は平成8年11月19
日,公開特許公報は特開平8−299627〔乙2の2。〕)
イ一方,控訴人出願に係る上記米国特許出願第08/433047号は,
1996年〔平成8年〕12月3日,米国特許第5579709号(以下
「本件米国特許」という。乙5)として特許権が付与された。
ウ(ア)さて,日本国特許庁が,技術情報として,本願に係る特開平8−29
9627号公報に基づき作成した同公報要約書(PATENTABSTRACTSOF
JAPAN)の英訳版の内容は,次のようなものである(乙2の1。なお,
同文書の左上には特許庁の公印と「JAPANESEPATENTOFFICE」との表示
がある。。)
「PATENTABSTRUCTSOFJAPAN
(11)Publicationnumber:08299627A
(43)Dateofpublicationofapplication:19.11.96
(51)Int.ClD05B1/20
D06H5/00
(21)Applicationnumber.08059205(71)Applicant:X
(22)Dateoffiling:15.03.96(72)Inventor:X
(30)Priority:03.05.95US95433047
(54)SEWINGMETHODFORFABRIC
(57)Abstruct:
PURPOSE:Toprovideasewingmethodcausingnopuckeringataseam
partandcapableofsewingexpansionfabricswhilemaintaining
theexpansionproperty,
CONSTITUTION:Twofabrics10,11areoverlappedsothatthefirst
faces(facesonthebacksidewhensewingiscompleted)are
locatedontheoutsideandthesecondfaces(facesonthesurface
sidewhensewingiscompleted)arefacedtoeachother.Thefirst
stitches12areformedalongouteredges10a,11a,freeends10b,
11bareformedbetweenthefirststitches12andtheouteredges
10a,11arespectively,andmajorsections10c,11careformedon
theinsideofthefirststitches12.Thefabrics10,11arefolded
backatthefirststitches12tocoverthefreeends10b,11b,and
thesecondstitches(holdingstitches)areformedonthe
folded-backfabricsandontheoutsideofthecoveredfreeends
10b,11batthelocationskeptinnocontactwiththem.
COPYRIGHT:(C)1996,JPO」
(イ)そして,本願に係る特開平8−299627号公報において上記(ア)の
英訳版に対応する部分は,次のようなものである(乙2の2。)
「(54)【発明の名称】布地の縫製方法
(57)【要約】
【課題】縫い合わせ部にパッカリングが起こることがなく,また,
伸縮性を有する布地を伸縮性を維持したまま縫い合わせることができ
る縫製方法を提供する。
【解決手段】2枚の布地10,11は,1番目の面(縫製が完了し
たときに裏側になる面)が外側に,2番目の面(縫製が完了したとき
表側になる面)が互いに対面するように重ね合わされ,1番目のステ
ッチ12は外縁10a,11aに沿って形成され、自由端10b,1
1bは、1番目のステッチ12と外縁10a,11aの間にそれぞれ
形成され、主要部10c,11cは1番目のスッテッチ12の内側に
形成され、布地は10,11は1番目のステッチ12で折り返され、
自由端10b,11bを被覆し、折り返された布上で且つ被覆された
自由端の外側で自由端に接しない位置に2番目のステッチ(保持ステ
ッチ)を形成する」。
(ウ)これに対し,控訴人が特許権者である本件米国特許の明細書における
,()。上記(ア)の英訳版に対応する部分は概ね次のようなものである乙5
「UnitedStatesPatent[11]PatentNumber:5,579,709
X[45]DateofPatent:Dec.3,1996
[54]METHODOFSEWINGTWOSTRETCHABLECLOTHS
[76]Inventor:X,…《以下略》
[21]Appl.No.:433,047
[22]Filed:May3,1995
《中略》
[57]ABSTRUCT
Twoclothsstrechableinallthedirectionscanbesewedtogether
beautifully.Eachstrechableclothincludesanouteredge,afirst
sewinglinesituatedawayfromtheouteredgetotherebyforma
freeendbetweentheouteredgeandthefirstsewingline,anda
mainportion.Theclothsarelaminatedandsewedalongthefirst
sewinglinestoformanouterstitch.Then,atleastoneofthetwo
stretchableclothsisturned,sothatthefreeendsofthe
stretchableclothsarecoveredbyatleastoneofthemain
portions.Thereafter,thestretchableclothsaresewedalonga
secondsewinglineoutsidethefreeendswhilethefreeendsare
stretchedinadirectionawayfromthesecondsewinglineto
therebyformaholdingstitch.Accordingly,thetwostretchable
clothsaresewedbeautifullyandstretchably.」
ウ日本国特許庁に対する前記本願に対する審査手続中である平成12年2
,,(,月4日同庁に対し要旨次の内容の刊行物等提出書が提出された乙3
なお,提出者の氏名は省略とされており,不明である。。)
「1.理由の要約
特開平8−299627に係る発明(以下,本願発明という)は,刊
行物1における5枚目10603と刊行物2の3枚目の2.(..).[
3]の図面から,進歩性なきものとして拒絶されるべきと考える。
2.具体的理由
2−1:提出刊行物の説明
(1)刊行物1.BS3870:Part2:1991(ISO4916:1991)について
刊行物1.は,BritishStandardの1991年版である。このスタン
ダードは”Stitchesandseams”に関するものであり,刊行物1.は,,
このうちシームタイプの分類と技術を示す第2編の一部コピーである。
またこのBS3870はISO規格にも対応しており1991年版のISO,,
4916になっている。
刊行物1.の5枚目(1.06.03)と6枚目(3.03.07)
には,本願発明における特徴部分が開示されている。
(2)刊行物2.MilanoItma75について
刊行物2.は,MilanoItoma75の一部コピーであり,その2枚目に示
すように1975年に発行されたものである刊行物2の3枚目2,。.[
3]には『ロックミシン縫い』又は『インターロックミシン縫い』に,
よる縁止めが示されている」。
エ特許庁審査官は,平成14年1月23日付けで①本願は特許請求の範囲
の記載が特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない,②本願
発明は実願平4−54300号(実開平6−16428号)のCD−RO
M等から容易想到であった等とする拒絶理由通知(乙11の1)を発した
,(),上平成14年6月21日付けで本願について拒絶査定をし乙11の2
同拒絶査定は確定した。
(2)以上によれば,①本願発明の公開公報における発明の名称「布地の縫製方
法は本件米国特許の明細書においてはMETHODOFSEWINGTWOSTRETCHABLE」,「
CLOTHS」と英訳されているのに対し,特許庁の作成に係る公開公報の英訳版
においては「SEWINGMETHODFORFABRIC」と英訳されていること,また,②
同公開公報の【要約】部分における「課題】縫い合わせ部にパッカリング【
が起こることがなく,また,伸縮性を有する布地を伸縮性を維持したまま縫
い合わせることができる縫製方法を提供する」との記載部分は,本件米国。
特許には直接対応する記載はなく,その代わり,要約(ABSTRUCT)部分の冒
頭に「Twoclothsstrechableinallthedirectionscanbesewedtogether,
beautifully.」との記載があるのに対し,特許庁の作成に係る公開公報の英
訳版においては「PURPOSE:Toprovideasewingmethodcausingno,
puckeringataseampartandcapableofsewingexpansionfabricwhile
maintainingtheexpansionproperty.」と英訳されていること,さらに,③
本願発明に係る審査手続の係属中,本願発明は進歩性がなく拒絶される旨の
意見を付した刊行物等提出書が提出されたこと,④本願発明は最終的に拒絶
査定を受け,これが確定したこと,が認められる。
3控訴の理由1について
控訴人の控訴の理由1に係る主張は,被控訴人が,東レ株式会社,YKK株
式会社と共謀して,経済産業省(特許庁)に依頼し,控訴人の出願に係る公開
特許公報(特開平8−299627号)の英訳を偽造・ねつ造させ,これを暗
殺(特許権の取得を阻止)したものであり,これがパリ条約4条の4に違反す
る旨主張するものと理解することができるので,この点について検討する。
控訴人の上記主張は,控訴人が取得した本件米国特許の明細書(乙5)と特
許庁作成の公開公報英訳版(乙2の2)とで発明の名称及び要約の英訳が異な
ることについて,後者の英訳は被控訴人らの依頼に基づき特許庁が捏造したも
,,,のであるとしその上でこの捏造により本願特許が拒絶査定を受けたとして
控訴人の特許が被控訴人により「暗殺」されたと主張するもののようである。
しかし,上記乙2の1,2及び弁論の全趣旨によれば,当該英訳版は特許庁
が職務上作成すべき技術情報であることは明らかであり,その作成が被控訴人
の依頼に基づくものであるとは認められず,そのような事情があることを認め
るに足りる証拠もない。
この点,控訴人は,刊行物等提出書が提出されたことをもって,上記英訳版
の作成が被控訴人の依頼に基づくものであることの根拠となると主張するよう
であるが,同刊行物等提出書が被控訴人の作成,提出したものであることを認
めるに足りる証拠はない(前記のとおり,刊行物等提出書〔乙3〕における提
出者の記載は省略されており,不明である。。)
そうすると,本願発明に係る公開公報の英訳の当否や,その作成がパリ条約
に違反するか否かを検討するまでもなく,控訴人の上記主張は採用することが
できない。
なお控訴人は,原審における被控訴人の答弁書において,本願に係る優先権
主張番号である「433047号」を「043307号」と誤記したこと等を
もって,被控訴人の「捏造」行為である旨主張するが,このような誤記の存在
を考慮に入れたとしても,上記判示したところが左右されるものではない。
4控訴人のその余の主張について
控訴人のその余の主張は,前記控訴の理由2∼5も含め,いずれも控訴の理
由1に係る主張を前提とするものであり,これを採用することができないこと
は前記のとおりである。
したがって,控訴人のその余の主張はいずれも採用することができない。
5結論
以上のとおりであるから,控訴人の被控訴人に対する本訴請求はいずれも理
由がない。
よって,これと同旨の原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから棄
却することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官中野哲弘
裁判官今井弘晃
裁判官澁谷勝海
以下別紙省略

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