弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中の有罪部分を破棄する。
     被告人を罰金三千円に処する。
     右罰金を完納することができないときは金三百円を一日に換算した期間
被告人を労役場に留置する。
     押取にかかる日本刀二口はこれを没収する。
     臨時物資需給調整法違反、労働基準法違反の事実について被告人を免訴
する。
         理    由
 弁護人野田底司の上告趣意(後記)第三点は、刑訴四〇五条に当らない(第一点
及び第二点は、免訴にかかる事実に関するものであるから、これに対して判断しな
い。)
 職権で調査するに、被告人が第一、昭和二二年八月上旬頃法定の除外事由なく肩
書居宅に於て、繊維製品配給消費統制規則別表甲号若は乙号に掲げる者以外の者で
あるAに対し、自己製造の指定繊維製品である金巾一号(巾三十吋もの)三十碼半
を、所定の衣料切符と引換えることなく、代金三千五百七円五十銭で販売譲渡し(
原判示第一の事実)、第二、法定の除外事由なく肩書居宅工場内に於て、配給割当
公文書と引換えることなく、かつ、衣料品の卸売業者でないBに対し、(一)、昭
和二三年四月三〇日頃自己製造の衣料品たる木綿織物(三十番手金巾二号品、巾三
十吋のもの)三十碼を代金五千百円で、(二)、同年五月一五日頃前同様の木綿織
物二百四十碼を代金四万八百円で夫々販売譲渡し(原判示第二の事実)、第三、労
働者C外二九名を使用する使用者として織布業を営んでいる中、正当の事由なく右
工場に於て、(一)、C外二九名(年少者を含む)の労働者に対し、夫々(イ)昭
和二三年三月一月から同年七月一四日までの間、法定労働時間を超えて労働させ、
(ロ)同年三月一日から同年六月九日までの間、法定休憩時間を与えないで労働さ
せ、(二)、同年三月一日から同月三一日までの間、D外五名の労働者に対し法定
休日を与えないで労働させ(原判示第三の事実)たとの各公訴事実については、昭
和二七年政令第一一七号一条一〇号、八八号により大赦があつたので、刑訴施行法
二条、三条の二、刑訴四一一条五号、旧刑訴四四八条、三六三条三号により原判決
の有罪部分を破棄し、被告人に対し右各公訴事実について免訴の言渡をなすべきも
のとする。
 よつて、原判決が証拠により確定した右免訴にかからない事実、すなわち原判示
第四の事実に法令を適用すると、被告人の所為は銃砲刀剣類等所持禁止令附則三項、
銃砲等所持禁止令一条、二条、同令施行規則一条、罰金等臨時措置法二条、刑法六
条、一〇条に該当するところ所定刑中罰金刑を選択し、その金額の範囲内で被告人
を罰金三千円に処し、右罰金を完納することができないときは刑法一八条に従い金
三百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、主文第四項掲記
の押取物件は同法一九条によりこれを没収すべきものとする。
 この判決は、裁判官全員一致の意見である。
 検察官 松本武裕関与
  昭和二七年一一月一一日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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