弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成19年12月4日決定
平成19年(む)第2137号
主文
本件請求を棄却する。
理由
第1申立ての趣旨及び理由の要旨
本件申立ての趣旨及び理由は,弁護人3名作成の証拠開示命令請求書記載のとおり
であるが,その要旨は,被告人の平成19年5月4日に覚せい剤を所持したとされる事
件についての不起訴裁定書(以下「不起訴裁定書」という。)が刑事訴訟法316条の
20第1項によって開示すべき証拠に該当するにもかかわらず,検察官がこれを開示し
ないので,決定でその開示を命ずることを求める,というものである。
第2当裁判所の判断
1本件は,被告人が覚せい剤を使用したとされる覚せい剤取締法違反の事案であ
る。争点は覚せい剤使用の有無であり,この点について検察官は間接事実の積み重
ねによる立証を予定している(平成19年8月15日付け証明予定事実記載書)。そのう
ちの一つの間接事実が,被告人が逮捕当日,覚せい剤0・001グラムを所持していた
との事実(以下「本件覚せい剤所持」という。)である。
この事実について弁護人は,上記覚せい剤所持の事実が公訴提起されていないこ
とを根拠として,この事実は,検察官が自己の判断においてあえて起訴外の事情と
したはずの類似事実であるから,本件公訴事実との関係では法的関連性を欠くとの
予定主張を一応明示している(平成19年10月12日付け予定主張記載書面)。
この主張には,なお整序の余地がありうるが,本件覚せい剤所持の事実について
公訴を提起しなかったにもかかわらず,別事件である本件の立証にこの事実を間接
事実として用いようとする訴訟行為が手続的正義に反するとの疑念が背景にあるも
のと解される。
そうすると,検察官が本件覚せい剤所持の事実を不起訴処分に付した理由を知る
ことによって,弁護人は,今後上記予定主張を更に具体化させ,より明確なものと
したり,場合によっては撤回することも十分ありうるのであるから,この点が記載
された不起訴裁定書が,公判前あるいは期日間整理手続における主張ないし争点整
理のために必要な証拠の速やかな開示を定めた刑事訴訟法316条の20の立法趣旨に
照らして,上記弁護人の予定主張に関連すること自体は否定しがたい。
2また,弁護人が検察官の起訴不起訴についての意思決定の妥当性を問題とする
主張をしている本件においては,不起訴裁定書も証拠開示の対象となりうる。
3そこで,被告人の防御の準備のために当該開示をすることの必要性の程度につ
いて検討するに,本件の主たる争点は,被告人が公訴事実記載の日時・場所におい
て覚せい剤を使用した事実の有無であるところ,この点についての検察官の立証の
主軸は,被告人の尿から覚せい剤が検出された事実であり,この立証が成功するか
否かは結局,鑑定書(甲4)の証拠能力いかんにほぼ尽きているのであって,本件覚
せい剤所持の事実は,前記争点との関係において,その結論を左右する重要性は持
たないと解される。
そうすると,本件覚せい剤所持の事実の法的関連性を争うとする弁護人の主張に
ついても,上記主たる争点の結論を左右するものではなく,この主張と本件争点と
の関係自体,希薄と言わざるを得ない。
以上によれば,上記弁護人の主張を明確化するなどのために前記不起訴裁定書の
開示をする必要性の程度は,被告人の防御の準備という観点から見て,著しく低い
ものと言わざるを得ない。
4他方,不起訴裁定書は,本来,公判廷に顕出されて立証の用に供されることが
想定されているものではなく,検察官の意思決定内容それ自体が記載されているこ
とからして,被告人本人についてのものであっても,これを弁護人及び被告人に開
示することには慎重さが求められるものと解される。
5そうすると,結局本件においては,開示の必要性の程度並びに開示によって生
じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し,開示を認めることが相当というこ
とはできない。
6よって,本件証拠開示命令の請求は理由がないから,これを棄却することとし,
主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官・伊藤敏孝,裁判官・白石篤史,裁判官・廣瀬裕亮)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛