弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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平成20年11月19日決定
平成20年(む)第2092号
主文
検察官は,弁護人に対し,別紙1記載の各証拠を開示せよ。
その余の請求を棄却する。
理由
第1請求の趣旨及び理由の要旨
本件請求の趣旨及び理由は,別紙2の弁護人作成の裁定請求書
(3)(以下,単に「裁定請求書」という。)に記載されたとお
りであるから,これを引用する。
第2当裁判所の判断
1弁護人の主張
弁護人は,被告人とA及びBとの共謀を否認し,また被告人の
供述調書の任意性を争っており,本件の争点は,共謀の有無及び
被告人の供述調書の任意性の有無であるところ,弁護人は,予定
主張記載書面(2)等において,被告人がAから消費税の不正還
付について説明を受けたことはなかったとし,これを裏付ける事
実として,①平成16年7月ころ,被告人が父であるCの口座か
ら910万円を払い戻した上,Aに1000万円を貸し付けたこ
と,②平成18年7月ころ,被告人が,母であるDの口座から2
00万円を払い戻した上,これをAに貸し付けたこと,③被告人
は,Aから有限会社Eの預金口座に振り込まれた国税還付金の中
から合計200万円を上記貸付金の返済として受け取ったことを
主張し,予定主張記載書面(3)において,検察官が被告人の取
調べにおいて家族のことを持ち出すなどして脅迫や不当な利益誘
導をしたことなどを主張する。
2裁定請求書第1記載の証拠について
(1)弁護人は,前記1①ないし③の主張に関連する証拠とし
て,裁定請求書第1記載の証拠の開示を請求する。
(2)しかしながら,裁定請求書第1の証拠は,被告人の収入
状況,稼働状況,家計状況,借金状況についての捜査報告書等
というものであって,それ自体他の証拠との識別性が明らかで
あるとはいえない。また,上記証拠は,性質上前記①ないし③
の事実を直接証明するものではないところ,弁護人の主張にお
いても,前記①ないし③の事実がいかなる間接事実から推認さ
れるのかは明らかでないし,当該間接事実と上記証拠との関係
も明らかでない。したがって,上記証拠については,関連性を
認めるに足りる弁護人の主張がないといわざるを得ず,結局,
開示の必要性が認められない。
3裁定請求書第2記載の証拠について
(1)弁護人は,被告人の供述調書の任意性に関する主張,及
び,前記1①ないし③の主張に関連する証拠として裁定請求書
第2の証拠の開示を請求する。
(2)弁護人は,被告人が取調べにおいて検察官から脅迫や不
当な利益誘導を受けたと主張するところ,被告人の取調べにお
ける検察官の言動は,被告人の供述と検察官の供述を比較対照
することにより明らかにされるものであって,裁定請求書第2
記載の証拠により直接証明されるものではない。また,上記証
拠によって,検察官が被告人の家族及びFを取り調べたこと自
体が明らかになったとしても,この事実から被告人の取調べに
おける検察官の言動が明らかになるわけでもない。したがって,
弁護人の上記主張と上記証拠との関連性は明らかではなく,任
意性に関する主張との関連では,上記証拠の開示の必要性は認
められない。
(3)次に,前記1①ないし③の主張との関連では,裁定請求
書第2記載の証拠のうち,被告人の父であるC並びに母である
Dの供述書及び供述録取書(同人らの署名・押印がないものも
含む。)については,これらの主張に関する供述が記載されて
いる限り,弁護人の主張と密接に関連するものであり,その開
示の必要性も高く,開示による弊害のおそれも低いと認められ
る。
これに対し,その余の裁定請求書第2記載の証拠については,
弁護人の上記主張との関連性が認められない。
したがって,上記主張との関連では,上記の限度で証拠が開
示されるべきである。
4裁定請求書第3記載の証拠について
(1)弁護人は,前記1①ないし③の主張に関連する証拠とし
て,裁定請求書第3記載の証拠の開示を請求する。
(2)被告人がAに1000万円及び200万円を貸し付けた
とされる平成16年7月及び平成18年7月からそれぞれ相当
期間が経過するまで(本件では各7月1日から翌月末日までが
相当な期間と考えられる。)の貸付金のAの銀行口座等への入
金状況等は,弁護人の主張を裏付ける可能性のある事実であり,
弁護人の上記主張との関連性が認められる。したがって,上記
証拠のうち,A名義又は利用に係る預貯金口座に関する通帳,
取引履歴の捜査照会に対する回答等の証拠のうち,上記期間に
係るものについては,開示の必要性が認められる。また,これ
による弊害の程度もそれほど高くはない。
(3)これに対し,裁定請求書第3記載の証拠のうち,上記期
間以外の部分は,弁護人の上記主張との関連性が乏しいから,
開示の必要性は認められない。また,上記証拠のうち,クレジ
ットカード利用明細書は,弁護人の上記主張との関連性が認め
られないから,開示の必要性も認められない。
5裁定請求書第4記載の証拠について
弁護人は,被告人がA等と共に香港へ渡航したことなどの主張
に関連する証拠として,裁定請求書第4記載の証拠の開示を請求
する。
しかしながら,香港への渡航の事実は,本件における争点及び
弁護人の主張の根幹部分とは,およそ無関係であるから,開示の
必要性は認められない。
6結論
以上によれば,別紙1の証拠に関する限度で弁護人の請求は理
由があるが,その余の請求は理由がない。よって,主文のとおり
決定する。
(裁判長裁判官・朝山芳史,裁判官・佐藤卓生,裁判官・櫻庭広樹)
別紙1
1C並びにDの供述書及び供述録取書(同人らの署名・押印がな
いものも含む。)であって,下記(1)から(3)のいずれかの
事実の有無に関する供述が記載されたもの

(1)平成16年7月ころ,被告人がCの預貯金口座から91
0万円を払い戻して,1000万円をAに対し貸し付けた事実
(2)平成18年7月上旬ころ,被告人がDの預貯金口座から
200万円を払い戻して,これをAに対し貸し付けた事実
(3)Aから被告人に対し合計200万円が返済された事実
2A名義又は利用に係る預貯金口座に関する通帳,取引履歴の捜
査照会に対する回答等の証拠のうち,下記期間の部分の写し

(1)平成16年7月1日から同年8月31日までの間
(2)平成18年7月1日から同年8月31日までの間

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