弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人倉田哲治、同森谷和馬、同石田省三郎の上告理由について
 所論の点に関する原審の事実認定は、原判決拳示の証拠関係に照らし、正当とし
て是認することができる。
 ところで、検察官は、事件について証拠調が終つた後、論告すなわち事実及び法
律の適用についての意見の陳述をしなければならないのであるが、論告をすること
は、裁判所の適正な認定判断及び刑の量定に資することを目的として検察官に与え
られた訴訟上の権利であり、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全う
しつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現すべき刑事
訴訟手続において、論告が右の目的を達成するためには、検察官に対し、必要な範
囲において、自由に陳述する機会が保障されなければならないものというべきであ
る。もとより、この訴訟上の権利は、誠実に行使されなければならないが、論告に
おいて第三者の名誉又は信用を害するような陳述に及ぶことがあつたとしても、そ
の陳述が、もつぱら誹謗を目的としたり、事件と全く関係がなかつたり、あるいは
明らかに自己の主観や単なる見込みに基づくものにすぎないなど論告の目的、範囲
を著しく逸脱するとき、又は陳述の方法が甚しく不当であるときなど、当該陳述が
訴訟上の権利の濫用にあたる特段の事情のない限り、右陳述は、正当な職務行為と
して違法性を阻却され、公権力の違法な行使ということはできないものと解するの
が相当である。
 これを本件についてみると、原審の適法に確定した事実関係によれば、本件論告
において、検察官は、上告人の兄Dが上告人の逮捕をおそれ、上告人をかばうため
虚偽の自白をした旨弁解しており、Dの具体的詳細な供述内容や、同人が否認に転
ずるにあたり上告人のアリバイが成立するかどうかを特に気にしていることなどか
らみて、Dが虚偽の自白をしたのは、やはり本当に上告人の犯行を隠ぺいし、上告
人をかばう必要があつたからであるとの趣旨の陳述をしたが、右陳述は、Dが爆発
物等の搬送者の一人である点についてはアリバイを覆すことができないものの、同
人の供述のうち右の点を除く部分が裁判所によつて受けいれられることが、事案の
真相を明らかにするために必要不可欠であるとの立場から、同人の右供述部分につ
いて信用性がある旨を述べる目的のもとに、同人の供述の信用性を検討する過程で、
同人の弁解に基づき虚偽供述の動機について一つの見解を述べたものであり、その
意見表明の方法も上告人の行為そのものを直接的に表現し、又は具体的事実を特定
して明確にしたものではなく、抽象的な表現を用いて、Dの供述の信用性に言及す
るうえで、派生的かつ付随的に述べられたものであつて、当該被告事件における論
告の目的と密接な関連を有し、又はその合理的な範囲に包含され、しかも表現方法
に穏当を欠くところもなく、訴訟上の権利の濫用にあたる特段の事情があるとはい
えないから、右論告部分の陳述は、検察官の正当な訴訟上の権利の行使として違法
性が阻却され、公権力の違法な行使にはあたらないものというべきである。以上と
同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。
 原判決に所論の違法はなく、右違法のあることを前提とする所論違憲の主張は、
前提を欠くものといわなければならない。論旨は、独自の見解に立つて原判決を論
難するか、又は原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものに
すぎず、いずれも採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    牧       圭   次
            裁判官    木   下   忠   良
            裁判官    鹽   野   宜   慶
            裁判官    大   橋       進
            裁判官    島   谷   六   郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛