弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人Aの弁護人中島忠三郎の上告趣意第一点について。
 原判決が証拠として引用した同被告人の原審公判廷の供述については、たとい、
それが同被告人の警察における供述とその内容が同じであり、且つ又後者が仮りに
警察官の脅迫、強問に基く取調の結果に由来するものであるとしても、前者は何等
強制を加えられないで任意になされたものであるから、該供述が間接の強制に基く
ものとはいえない。故にこの点に関する論旨は理由がない。(昭和二三年(れ)第
六一号同年一一月五日大法廷判決参照)
 次に第一審共同被告人Bの供述を証拠として採用すると否とは事実審たる原審の
専権に任せられたところであつて、同人について、たとい所論のような事情があつ
たとしても、その一事によつて、その供述の証拠能力が否定されるものではないこ
と論を俟たない。尚同被告人は原審公判廷において所論の事情のため十分の陳述を
する機会を与えられなかつたというが、同被告人に対する判決の基礎となつた原審
第七回公判は爾余の被告人等の審理と分離されて同被告人単独で審理されたもので
あり、而も同人は原審裁判長の最終陳述の有無の訊問に対し弁解することはありま
せんと答えているのであるから、この点の論旨も理由がない。
 同第二点について。
 所論は原判決の量刑不当を主張するものであつて、適法な上告理由とならない。
 被告人Aの上告趣意について。
 論旨は同被告人に対する警察の取調が誘導強問によつてなされたと主張している
けれども、仮りに被告人に対する警察の取調に所論のような事情があつたとしても、
その取調の結果を記載した書類は、原判決において証拠として採用されていないの
であるから、この点を攻撃する論旨は理由がない。尚同被告人の原審公判廷の供述
が警察における供述とその内容が同じであつて、間接の強制によるものであるとの
主張については前記中島弁護人上告趣意第一点について説明したとおりであつて、
理由がない。
 次に、所論の第一審証人C、同Dの各訊問調書についていえば、右各訊問調書は
被告人に対する原審第七回公判廷において読聞けられ適法な証拠調の手続がなされ
て居り、裁判長は被告人に対し意見弁解の有無を問い且つ同証人等に対し反対訊問
の請求ができることを告げたのに対し同被告人は右各訊問調書については異議ない
と答えているのであるから、この点に関する論旨も理由がない。(尚論旨は、右証
人の外その他数名の証人の証言にも異議ありというがその証人の氏名を明記しない)
 尚その余の論旨は結局原審の事実認定を攻撃するに帰し適法な上告理由とならな
い。
 被告人Eの弁護人鈴木多人の上告趣意第一点について。
 記録を調べてみると、(イ)所論第三回公判調書の前文に、弁護人「鈴木多聞」
出頭とあるのは同「鈴木多人」の誤記であり同調書に裁判長は被告人Iに対し問う
たとあるのは被告人Eの誤記であること、(ロ)第五回公判調書前文に弁護人「鈴
木多門」出頭とあるのは前同様弁護人「鈴木多人」の誤記であること、それぞれ明
白である。又、(ハ)右第五回公判調書の前文には、被告人J外九名の各頭書被告
事件について、昭和二四年八月一九日公判を開廷した旨の記載がある丈けで本件被
告人Eに対する賍物故買被告事件について公判を開廷する旨の記載はないが同調書
にはそれに続いて、裁判長は被告人J事Aに対する窃盗財物収受被告人Eに対する
賍物故買各被告事件を本件に併合する旨告げたとあり、そうして被告人A、同Eは
公判廷において身体の拘束を受けないとの記載がある(記録一九冊三八九丁)ので
あるから、右第五回公判は被告人Eに対する、賍物故買被告事件についても亦適法
に開廷されたことが明らかである。公判調書の記載の誤記を誤記と断ずることは、
所論のように旧刑訴第六〇条及第六四条に違反することではない。又右のような誤
記のために公判の手続そのものが違法又は無効となるのでもない。従つて、所論の
第三回公判調書における瑕疵を誤記とするならば、右の公判に於ては弁護人鈴木多
人出頭の上、被告人Eに対し適法な審理が為されたことが明らかである。それ故に
右の手続が違法又は無効であることを前提として、原判決を攻撃する論旨は凡て理
由がない。
 同第二点について。
 記録を調べてみると、原審第二回公判調書には、鈴木弁護人は被告人Eの為めに
証人としてL、Mを申請し各立証の趣旨を陳述したとの記載はあるが、所論Nにつ
いては証人申請がなされた旨の記載はない。なるほど同弁護人提出の昭和二四年五
月九日附証拠申請に付ての上申書には所論の通りの記載はあるが、右の記載のみを
以て、前記第二回公判において同弁護人からNの証人申請があつたに拘らず同公判
調書に、その記載を遺脱したものとは認め難い。次に第三回公判調書には、鈴木弁
護人の弁論としては、被告人に対し執行猶予の判決を仰ぐ旨の弁論をしたという記
載がある丈けであること所論の通りである。しかし公判調書には弁論の要旨を記載
すれば足りる。たとえ同弁護人において同公判廷において所論の通りの弁論をした
としても、その要旨は結局被告人Eに対し執行猶予の判決を求めるというに帰着す
るのであるから、前記公判調書の記載を以て旧刑訴第六〇条に違反するものとする
ことはできない。なお所論の昭和二四年六月二五目附弁論要旨と題する書面は、本
件記録を調べてみても、記録に編綴されてもいないし、又裁判所に提出された旨の
記載もないのであるから、それが適法に原審に提出されたものとは認め難い。のみ
ならず右書面を記録に編綴しなかつたとの一事を以て、所論のように原審が不当に
同弁護人の弁護権の行使を制限したものということはできない、更らに又右第三回
公判調書によれば、同弁護人が証人として喚問を受けた被告人の妻Mに対し被告人
方の家庭の状況等について補充訊問したことの記載はあるが(前同記録二一一丁以
下)それ以外に弁護人が補充訊問をしたと認め得べき資料はない。それ故にこの点
に関する論旨も亦理由がない。
 以上要するに被告人Eに対する原審公判手続には所論のような違法はなく論旨は
凡て理由がない。
 同第三点について。
 原審は昭和二四年六月一日被告人Eに対する審理を終結し(第三回公判)、同年
八月一九日判決を言渡し(第五回公判)、この間七九日の期間を経過し乍ら所謂審
理更新の手続をとらなかつたこと所論の通りである。然し乍ら旧刑訴第三五三条は
公判続行中に関する規定であつて、弁論終結後にはその適用がないものである。な
んとなれば同条の規定は多数の日子を隔てて継続審理をなすときは事実の真相を発
見するの妨となる惧れがあるので、当該判事の遺忘を来たさない間に審理を継続し
て真実発見の実を挙げようとする精神に出でたものであるから既に弁論を終結した
ときは弁論を再開しない限りはその必要なく、且つ又判決の宣告は審理の結果得ら
れた事件の真相について評議決定したところに基いて判決書を作成しこれを公表す
る手続に止まるのみであるから、弁論終結後一五日以内に判決の宣告をするように
制限を設ける必要もないからである。原審が審理更新の手続をとらなかつたのは以
上のような理由に基くのであつて、刑事訴訟規則施行規則第三条第三号の規定を適
用したためではないから、右の規定に関する所論に対して判断を下す迄もなく論旨
は理由なきことが明らかである。
 同第四点について。
 所論の被告人及び同人妻Mから鈴木弁護人宛の手紙その他の書面は、本件記録に
徴し適式な証拠書類として原審裁判所に提出されたものとは認め難く、且つ右各書
面は原審第一回公判前に提出されたものでもないから、これについて必ず証拠調べ
をしなければならないというものでない。従つて原判決には所論のような違法はな
く、論旨は理由がない。
 同第五点について。
 論旨には原判決に引用された被告人Eの第一審公判廷の自白は不当に長期の勾留
後の自白であつて任意性を欠くものであるとの主張がある。記録を調べてみると、
同被告人は昭和二三年五月二四口逮捕状を発付せられ、同月三〇日勾留状により京
橋警察署に勾留せられ同年八月二〇日の第一回公判廷において所論の自白をしたも
の(そうして右自白は同年同月二六日の同第五回公判においても維持されている)
である。しかし同被告人は同年五月二七日、三〇日、並に同年六月四日の司法警察
官の各取調、並に同年五月三〇日の判事の勾留訊問(但し同被告人に対する原判決
書第一一ノ一、同書添附第一表6事実のみ)及び同年六月七日八日の検事の各取調
に際しても、終始本件犯罪事実について自白していることが認められる。してみれ
ば前記被告人の第一審公判廷の自白は、同被告人の勾留後八三日目になされたもの
ではあるが、その勾留と右自白との間には因果関係のないことが明白である。従つ
て原判決が右自白を証拠に採用したことには、何等の違法もない。(昭和二二年(
れ)第二七一号同二三年六月三〇日た法廷判決参照)。
 次に又刑訴応急措置法第一三条第二項が合憲有効なものであることは、既に当裁
判所の判例(昭和二二年(れ)第四三号同二三年三月一〇日大法廷判決参照判例集
二巻三号一七五頁)に示されている通りであつて、原審の事実誤認量刑不当を攻撃
するの論点は適法な上告理由とならない。要するに第五点の論旨は何れも採用する
ことができない。
 同第六点について。
 以上第一乃至第五点の理由のないこと既に説明を与えたとおりであるが所論は結
局原審が被告人Eに対し執行猶予の言渡をしなかつたことを非難攻撃するに帰着し
適法な上告理由とならない。
 以上の理由により旧刑訴第四四六条に従い主文のとおり判決する。
 この判決は、裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 橋本乾三関与
  昭和二五年二月一四日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    河   村   父   介
            裁判官    穂   積   重   遠

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛