弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人長谷川勉、同沢荘一、同音喜多賢次の上告趣意第一点について。
 論旨は違憲を主張するけれども、その実質は原判決のした刑法七条、一九七条の
解釈を争う単なる法令違反の主張に過ぎず適法な上告理由とならない。
 なお、所論法令違反の主張について判断するに、
 (一)刑法七条にいわゆる公務員とは、官制職制によつてその職務権限が定まつ
ているものに限らず、すべて法令によつて
 公務に従事する職員を指称するものであつて、その法令中には単に行政内部の組
織作用を定めた訓令といえども抽象的の通則を規定しているものはこれを包含する
と解すべきこと所論引用の当裁判所の判例とするところである。そして被告人が本
件行為当時、建設省関東地方建設局の人夫名義の職員であつたことの根拠は、国家
公務員法五五条二項にもとづく建設省訓令第五号「国家公務員法第五五条第二項の
規定により任命権の委任に関する訓令」に存することは原判示のとおりであるから、
前記判例に徴すれば、右訓令もまた刑法七条にいう法令のうちに含まれると解すべ
きこと自から明らかである。
 (二)被告人が本件行為当時人夫名義の職員であつたことは所論のとおりである
けれども、当時被告人は、上司の命により、前記建設局工務部電気通信課に勤務し、
企画係として物品購入、電力設備の設計、施行、監督等の事務及び同局管下江戸川
工事事務所篠崎出張所管内行徳変電所の建設工事に際し、工事監督の事務をも担当
していたことは、原判決の確定するところである。そして、かゝる事務は、所論の
いわゆる単なる機械的肉体的労務に属するに過ぎないものとは認めることができな
い。元来、人夫名義で採用された被告人に対し、上司の命により、前記事務を担任
させる措置は、国家公務員法附則一三条にもとづく昭和二四年五月三一日人事院規
則八―七、同年六月一日人事院細則二号に違反して人事院の承認を得ないで被告人
を技術補佐員(右細則二項(1)ケ参照)に採用したことに外ならないのであるが、
本件任命権者たる地方建設局長において右技術補佐員の任命権を有する以上は(前
記建設省訓令第五号によれば、右局長は右権限を委任せられているものと解せられ
る)、右のような人事院の承認を得ていない一事は、いまだ被告人の現実に担当し
た事務をもつて所論のように単なる事実上のものに過ぎず、刑法七条にいわゆる法
令に基くものではないと解することはできない。
 同第二点について。
 所論は量刑不当の主張であつて刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和三二年八月三〇日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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