弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人増岡正三郎同村瀬憲之助同瀬尾蔵治の上告趣意は末尾に添附した別紙書面
記載の通りである。
 弁護人増岡正三郎の上告趣意第一点について。
 按ずるに、原判決書中「Aは抜身の日本刀(同号の一)を以てその後を追うて表
に飛び出し」とある部分は、「日本刀を持つて」とあるのでいかにも表に飛び出し
たBを攻撃する意図があつたようにも解されるのであるが、しかし、これはただA
が表に飛び出した当時の状況を写実的に表現したにすぎないものである、後を追う
てという言葉は、後につづいてという意味にも用いられるのであるから、原判決に
後を追うてと記載されているのも、後につづいてという意味に用いたに過ぎないと
解すべきである、従つて、原判決はA並に被告人の原審公判における供述の趣旨に
一致するので所論の如き違法はない。論旨は理由がない。
 同第二点について。
 原判決書中本件第一の犯行の日時を昭和二二年八月一三日午前一〇時三〇分頃と
記載されていることは所論の通りであるが、原判決挙示の証拠を調べて見れば、午
後一〇時三〇分頃とあつて午前一〇時三〇分と記載されているところは無い点に鑑
み、右午前一〇時三〇分頃とあるは午後一〇時三〇分頃の誤りであることは明らか
である。次に被告人の日本刀不法所持の日時について、原判決は被告人は昭和二二
年八月一六日自宅において刃渡九寸五分の日本刀一振を所持した旨を判示している
ことは所論の通りであるが、被告人の日本刀不法所持の日時については、原判決挙
示の原審公判における被告人の供述及び第一審公判における相被告人Aの供述によ
るも被告人が日本刀を所持したのは同年同月一三日における本件犯行当日だけであ
つて、其後においては原審相被告人Aが所持していた事が明らかである、しかのみ
ならずAは右日本刀を同年同月一五日所有者に返還したものであることもまた明ら
かであるから、原判決中一六日とあるは一三日の誤記であることを窺い知ることが
できる。以上の如く原判決は犯行の日時を判示するに当つて二つの誤りを犯してい
ることは明らかであるが、犯行の日時は罪となるべき事実ではなく、且つ誤記であ
ることが明瞭であるから破毀の理由とはならない。論旨は理由がない。
 弁護人村瀬憲之助同瀬尾蔵治の上告趣意第一点について。
 しかし、原審相被告人Aが被害者Cの三男Dに傷害を与えたのは、財物強取の手
段として暴行を加えた為ではなく、家人にさわがれた為驚いて逃げ出す途中の出来
事であることは原判決挙示の証拠により明らかであるが、強盗傷人罪は財物強取の
手段としてなされた暴行に基いて傷害を与えた場合でなくとも、強盗の機会におい
て傷害を与えれば足るのであるから、原審相被告人Aが強盗傷人として処断せらる
べきは当然である。そして強盗傷人罪は所謂結果犯であつて、傷害に対する故意又
は過失の有無にかかはらず、常に結果に対して責を負はなければならないばかりで
なく、強盗行為が未遂の場合でも強盗傷人罪の成立をさまたげるものではない、従
つて所論の如く被告人はAのなした傷害行為については何等の認識なく、また傷害
について共謀もないとしても、いやしくもAと本件強盗を共謀した以上、強盗の機
会において共犯者たるAかなしたる傷害行為に対し強盗の共同正犯たる被告人は、
其責をまぬかれることはできないといはなければならない、次に論旨は被告人はA
の傷害行為以前に自主的に犯行を中止したものであるから、傷害の点については責
を負はないと主張するのであるが、原審の認定した事実によれば、泥棒、泥棒と家
人にさわがれた為Aが驚いて逃げ出したので、被告人もまたAの後につづいて逃げ
出したのであつて、財物強取が未遂に終つたのは意外の出来事の為であつて所謂障
碍未遂であり、被告人の自主的な任意の中止未遂とはいい得ない、従つて原審にお
いて被告人の行為を中止犯と認定しないことについて何等法則違背は認められない。
論旨は被告人は本犯行を自主的に中止したものであると主張し其前提のもとに被告
人の行為は強盗傷人罪を構成しないことを主張するのであるが、右論旨は結局原審
の事実認定を非難することに帰着するし論旨後段の酌量減軽をしないことの非難は
量刑不当の攻撃にすぎないから採用できないものである。
 同第二点について。
 刑事訴訟法第一一〇条は、検事は裁判所の同意を得て勾留された被告人を他の刑
務所に移すことができる旨を規定しているが、右同意については別段様式を定めて
いないから、同意の書面がないというだけで本件の勾留は違法であるとはいい得な
い、そして、仮りに勾留手続の違法があつても其手続の違法は、判決に影響を及ぼ
さないから、これを上告の理由とすることはできないことは当裁判所の屡々判例と
するところである、論旨は理由がない。
 同第三点について。
 本件各公判調書に公判を公開した旨の記載なきことは所論の通りである、しかし
公判調書に公開を禁じた旨の記載がない限り、公判を公開して行はれたものと認め
るのが相当であつて、裁判を公開したことを公判調書に記載しなくとも憲法に違反
しないことは、当裁判所の判例とするところであるから、論旨は理由がない。(昭
和二三年(れ)一〇七号事件同二三年六月二日大法廷判決言渡、同二二年(れ)第
二一九号事件同二三年六月一四日大法廷判決言渡参照)
 よつて刑事訴訟法施行法第二条、旧刑事訴訟法第四四六条、当裁判所裁判事務処
理規則第九条第四項により主文の通り判決する。
 以上は裁判官全員一致の意見である。
 検察官 長谷川瀏関与
  昭和二四年三月一日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介

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