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平成26年3月14日判決言渡
平成24年(行ウ)第176号所得税更正処分取消等請求事件
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1茨木税務署長が平成23年2月25日付けでした平成19年分の所得税の更
正処分のうち,総所得金額376万8440円,納付すべき税額18万090
0円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定を取り消す。
2茨木税務署長が平成23年2月25日付けでした平成20年分の所得税の更
正処分のうち,総所得金額442万0627円,納付すべき税額11万730
0円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定を取り消す。
3茨木税務署長が平成23年2月25日付けでした平成21年分の所得税の更
正処分のうち,総所得金額446万7424円,納付すべき税額7万3100
円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定を取り消す。
第2事案の概要
本件は,相続によって取得した不動産を賃貸する原告が,平成19年分から
平成21年分までの所得税について,各年分の不動産所得の金額の計算上,減
価償却資産の耐用年数等に関する省令(以下「省令」という。)3条1項2号
ロ(ただし,同項は,平成19年分及び平成20年分については平成20年財
務省令第32号による改正前のものをいう。以下同じ。)の規定により算出し
た耐用年数を基礎として計算した償却費を必要経費に算入して確定申告をし
たところ,茨木税務署長から,減価償却資産を相続によって取得した場合には
上記の耐用年数を基礎として償却費を計算することができず,必要経費が過大
であるなどとして,所得税の各更正処分(以下,併せて「本件各更正処分」と
いう。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下,併せて「本件各賦課決
定処分」といい,本件各更正処分と併せて「本件各更正処分等」という。)を
受けたことから,被告に対し,本件各更正処分の一部及び本件各賦課決定処分
の各取消しを求める事案である。
1関係法令の定め
(1)不動産所得の金額の計算
ア不動産所得(不動産等の貸付けによる所得をいう。以下同じ。)の金額
は,その年中の不動産所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額
とする(所得税法(以下「法」という。)26条)。
イ不動産所得の金額の計算上,減価償却資産の償却費として必要経費に算
入する金額は,その取得をした日及びその種類の区分に応じ,償却費が毎
年同一となる償却の方法,償却費が毎年一定の割合で逓減する償却の方法
その他の政令で定める償却の方法の中からその者が当該資産について選定
した償却の方法に基づき政令で定めるところにより計算した金額とする
(法49条1項)。
ウ上記イの選定をすることができる償却の方法の特例,償却の方法の選定
の手続,償却費の計算の基礎となる減価償却資産の取得価額,減価償却資
産について支出する金額のうち使用可能期間を延長させる部分等に対応す
る金額を減価償却資産の取得価額とする特例その他減価償却資産の償却に
関し必要な事項は,政令で定める(同条2項)。
(2)償却方法
平成19年3月31日以前に取得された減価償却資産のうち,下記ア~ウ
に掲げるものについては,その償却費の金額の計算上選定をすることができ
る上記(1)イの政令で定める償却の方法は,下記ア~ウに記載のとおりとする
(所得税法施行令(以下「施行令」という。)120条1項)。
ア平成10年3月31日以前に取得された建物
当該減価償却資産の取得価額からその残存価額を控除した金額にその償
却費が毎年同一となるように当該資産の耐用年数に応じた償却率を乗じて
計算した金額を各年分の償却費として償却する方法(以下「旧定額法」と
いう。)又は,当該減価償却資産の取得価額(第2年目以後の償却の場合
にあっては未償却残高)にその償却費が毎年一定の割合で逓減するように
当該資産の耐用年数に応じた償却率を乗じて計算した金額を各年分の償却
費として償却する方法(以下「旧定率法」という。)(同項1号イ)
イアの建物以外の建物
旧定額法(同項1号ロ)
ウ建物の附属設備及び備品
旧定額法又は旧定率法(同項2号)
(3)取得価額
ア減価償却資産の上記(2)の取得価額は,原則として,資産の区分に応じ
た所定の金額とする(施行令126条1項)。
イ法60条1項各号に掲げる事由(贈与,相続(限定承認に係るものを除
く。以下同じ。),遺贈(包括贈与のうち限定承認に係るものを除く。)
等)により取得した減価償却資産の上記(2)の取得価額は,当該減価償却
資産を取得した者が引き続き所有していたものとみなした場合における
当該減価償却資産の取得価額に相当する金額とする(施行令126条2
項)。
(4)耐用年数
ア減価償却資産の上記(2)の耐用年数は,原則として,資産の区分に応じた
所定の年数(以下「法定耐用年数」という。)による(施行令129条,
省令1条1項)。
イ個人において使用された減価償却資産を取得して,個人の業務の用に供
した場合における当該資産の耐用年数は,一定の場合を除き,次に掲げる
年数によることができる(施行令129条,省令3条1項)。
(ア)当該資産をその用に供した時以後の使用可能期間(個人が当該資産
を取得した後直ちにこれをその業務の用に供しなかった場合には,当該
資産を取得した時から引き続き業務の用に供したものとして見込まれる
当該取得の時以後の使用可能期間)の年数(同項1号)
(イ)次に掲げる資産(上記(ア)の年数を見積もることが困難なものに限
る。)の区分に応じそれぞれ次に定める年数(その年数が2年に満たな
いときは,これを2年とする。)(同項2号。以下,これらの年数の算
定方法を「簡便法」という。)
a法定耐用年数の全部を経過した資産
当該資産の法定耐用年数の2割に相当する年数(同号イ)
b法定耐用年数の一部を経過した資産
当該資産の法定耐用年数から経過年数を控除した年数に,経過年数
の2割に相当する年数を加算した年数(同号ロ)
2前提となる事実
以下の事実は,当事者間に争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によ
り容易に認めることができる。
(1)原告が本件各減価償却資産を取得した経緯等
ア原告の配偶者であるAは,昭和58年8月頃,別紙1記載の建物(以下
「本件マンション」という。)を新築により取得し,その後これを賃貸の
用に供し,その賃料収入について,自己の不動産所得として確定申告をし
ていた(乙2)。
イAは,平成4年頃から平成14年頃までの間に,本件マンションにつき,
塗装工事,防水工事,改造工事及び大規模修繕工事をそれぞれ施工すると
ともに(以下,これらの工事を施工した後の本件マンションを「本件各工
事後マンション」という。),附属設備として,水道設備及びドア設備(以
下,併せて「本件各附属設備」という。)の工事を施工し,掲示板(以下
「本件備品」という。)を取得した(以下,本件各工事後マンション,本
件各附属設備及び本件備品を併せて「本件各減価償却資産」という。)。
ウAは,本件マンションに係る不動産所得の金額の計算上,本件各減価償
却資産の耐用年数を,法定耐用年数(本件マンションにつき47年,上記
イの工事等のうち,塗装工事に係る資本的支出及び水道設備につき15年,
ドア設備につき18年,本件備品につき5年,その余の工事に係る資本的
支出につき47年)として償却費の計算を行った。
エ平成14年12月19日,原告は,Aが死亡したことから,本件各減価
償却資産を相続(以下「本件相続」という。)により取得し,引き続き,
本件各減価償却資産を賃貸の用に供し,賃料収入を得ていた。なお,原告
は,本件相続に当たって,限定承認を行わなかった。
(2)原告による確定申告
ア原告は,平成19年分から平成21年分までの所得税に係る確定申告に
ついて,別表1の「確定申告」欄記載の年月日(いずれも法定申告期限内
である。)に,茨木税務署長に対し,同欄記載の内容の各確定申告書(い
ずれも青色申告書である。)をそれぞれ提出した(甲1の1~3)。
イ原告は,上記アの各確定申告書における各不動産所得の金額の計算上,
本件各減価償却資産について,省令3条1項2号ロに規定する方法(簡便
法)により算定した耐用年数に基づいて算出した償却費を必要経費に算入
した。
(3)本件各更正処分等
茨木税務署長は,平成23年2月25日,相続により取得した本件各減価
償却資産には簡便法を適用できないにもかかわらず,これが適用された結果,
償却費が過大に計上されているなどとして,別表1の「更正処分等」欄記載
の内容のとおり,本件各更正処分等を行った(甲2の1~3)。
(4)本件審査請求及び訴訟提起
ア原告は,平成23年4月12日,本件各更正処分等を不服として,国税
通則法75条4項1号に基づき,国税不服審判所長に対し,本件各更正処
分等の全部の取消しを求めて審査請求(以下「本件審査請求」という。)
をした(乙1)。
イ国税不服審判所長は,平成24年3月1日,本件審査請求をいずれも棄
却する旨の裁決をした(乙1)。
ウ原告は,同年8月29日,本件訴訟を提起した(顕著な事実)。
3本件各更正処分等の根拠及び適法性に関する被告の主張
本件各更正処分等の根拠及び適法性に関する被告の主張は,後記4に記載す
るほか,別紙2に記載のとおりである。
4争点及び当事者の主張
本件の争点は,本件各更正処分等の適法性,具体的には,①原告が相続によ
り取得した本件各減価償却資産に係る償却費の計算において,簡便法に基づき
算出した耐用年数を用いることができないか(争点1),及び②本件各更正処
分等に,理由附記の不備がないか(争点2)であり,これに関する当事者の主
張は次のとおりである。
(1)争点1(本件各減価償却資産の耐用年数)について
(被告の主張)
ア(ア)減価償却とは,数会計期間にわたり消耗する費用総額を予定される
耐用期間に割り当てることによって,その各会計期間の費用として配分
し,もって期間費用を把握しようとするための会計技術であり,減価償
却資産の償却費を算定するためには,取得価額,残存価額及び耐用年数
の三つの要素が必要である。そして,ある時点で減価償却資産が取得さ
れると,減価償却資産の取得価額(費用の総額,投下資本)が決まると
同時に,当該取得価額を費用配分する期間である耐用年数が予定される
こととなるのであり,このような会計技術としての減価償却の意義を踏
まえ,法令においては,減価償却資産について,資産の種類等によって,
あらかじめ耐用年数が定められているのである。
(イ)ところで,施行令126条2項は,法60条1項所定の相続等によ
り減価償却資産を取得した場合の当該資産の取得価額を,取得者が当該
資産を引き続き所有していたものとみなした場合における取得価額に
相当する金額とすると規定している。これは,法60条1項が,同項所
定の相続等の場合にはその時点で資産の増加益が顕在化しないため,譲
渡所得の金額の計算上,同項所定の相続等による取得者は当該資産を前
所有者が取得した時から所有していたものとみなして,取得価額の引継
ぎにより課税時期を繰り延べることとしており,この場合には,前所有
者が当該資産を取得するのに要した費用が取得者に引き継がれ,資産の
保有期間についても前所有者と取得者の保有期間が通算されると解さ
れるので,当該資産が減価償却資産である場合には,取得費の計算にお
いて,償却費の累積額等(法49条1項の方法を基礎として計算され
る。)の控除(法38条2項)をするに当たっても,取得者が引き続き
当該資産を所有していたものとして取り扱うことが整合的であること
から,法60条1項所定の相続等により減価償却資産を取得した場合に
は前所有者の取得価額を取得者に引き継がせることとしたものである。
このような施行令126条2項の趣旨や上記の減価償却の意義等に照
らすと,同項は,取得価額のみならず,償却費の計算に当たり必要とな
る耐用年数及び残存価額も前所有者から取得者に引き継がれることを
予定していると解される。
(ウ)また,省令1条は,新品の減価償却資産の取得価額(費用の総額,
投下資本)に対応する耐用年数として,法定耐用年数を定めた規定であ
ると解されるのに対し,省令3条1項は,中古資産を取得した場合は新
品と同じ耐用年数を用いることは不合理であるし,中古資産によって経
過年数も様々であり一律の年数を設定するのも無理があるため,中古資
産に対応した耐用年数の算定方法を特に示した規定であると解される
から,新品の減価償却資産について,省令3条1項により耐用年数を計
算することは予定されていないと解される。
(エ)以上によれば,法60条1項所定の相続等によって減価償却資産を
取得した場合には,取得者が引き続き当該資産を所有していたとみなさ
れる結果,取得価額のみならず,耐用年数についても前所有者の耐用年
数を引き継ぐこととなり,前所有者が新品の減価償却資産を取得し省令
1条に基づく法定耐用年数を適用して減価償却費を算出していたので
あれば,前所有者から当該財産を取得した者が,独自に中古資産の減価
償却資産に関する省令3条1項に基づいて算定した耐用年数を適用す
ることはできないというべきである。
そうであるところ,原告は,相続により本件各減価償却資産を取得し
ているのであるから,本件各減価償却資産の取得価額について,被相続
人であるAの新品としての取得価額を引き継ぐことになり,耐用年数に
ついても,Aが適用していた新品としての法定耐用年数が引き継がれる
のであって,省令3条1項2号の簡便法に基づき算出した耐用年数を用
いることはできない。
イ租税法の解釈であっても,必ずしも法文上の文言のみにとらわれるべき
ものではなく,当該法条の実質的意義を考察し,その意義に照らして合理
的な解釈をすべきである。実際,租税法においても,同じ文言が用いられ
ている場合であっても使用される場面によって意義が異なるとされる場合
がある。
ウまた,相続による取得について,簡便法を適用することが認められるこ
とになれば,同じ減価償却資産の取得であるにもかかわらず,相続により
取得した者と購入により取得した者との間で不均衡が生じ,不合理な結果
を招来することになる。すなわち,建物について旧定額法により減価償却
を行う場合,簡便法により算定した耐用年数によると,同一の建物であっ
ても,相続により取得した場合の方が,購入により取得した場合よりも,
1年当たりの償却費が高額となり,その分,必要経費が高額となるので,
収入金額が同じであれば,所得金額及び納付すべき税額が低額になる。そ
うすると,最終的な償却費の累積額は両者で同じであるものの,相続によ
り取得した者は,一定の年数までは,納付すべき所得税額が購入により取
得した者と比べて低額となる結果,当該期間,その差額分を他に活用でき
るという利益(金銭の時間的価値)を得ることになる。しかし,このよう
な差異が生じることにつき合理的理由はない。また,上記のとおり減価償
却を行うと,相続により取得した者は,自ら算定した耐用年数の途中の早
い時期に償却を終えることになり,投下資本を耐用年数にわたって費用配
分するという減価償却の意義にも反する。
(原告の主張)
ア法49条2項は,減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法の定
めを政令に委ねているところ,これを受けた施行令129条は,償却費の
計算の基礎となる耐用年数について,財務省令で定める旨を規定している。
そして,これを受けた省令3条1項は,個人において使用された減価償却
資産を取得してこれを個人の業務の用に供する場合,その減価償却資産の
耐用年数については,取得後の使用可能期間を見積もる方法又は簡便法に
より算出した耐用年数によることができると規定している。そうであると
ころ,原告は,Aが使用していた本件各減価償却資産を相続により取得し,
これを賃貸業務の用に供しているから,本件各減価償却資産の耐用年数に
ついては,省令3条1項2号ロが定める簡便法に基づいて算出することが
できる。ところが,本件各更正処分等は,本件各減価償却資産について,
簡便法は適用されないとしたものであって,違法である。
イ租税法律主義の下において,租税法令の解釈が文理解釈を基本として行
われなければならないのは当然であり,みだりに規定の文言を離れた解釈
がされてはならない。省令3条1項の「取得」という文言の文理解釈とし
ては,「資産の所有権の移転」をいうものと解するのが自然であり,民法上,
相続もまた「資産の所有権の移転」が生ずる場合の一つであるから,同項
の「取得」には「相続による取得」も当然に含まれる。
また,施行令120条1項1号にいう「取得」については,「相続による
取得」も含まれるとする判決が確定しているのであり,省令3条1項の「取
得」に「相続による取得」が含まれないとすることは,法49条2項を受
けて規定された施行令120条以下の一連の規定における「取得」の文言
を不統一に解釈する結果をもたらすことになり,租税法の解釈の在り方と
して認められるものではない。
法においても,「相続,遺贈又は個人からの贈与により取得するもの」と
いうように「取得」の文言が使用されており(法9条1項16号),「取得」
が「資産の所有権の移転」を意味するものとして用いられていることは明
らかであるから,法の委任を受けた省令においても同様に解されるべきで
ある。
ウ法60条1項は,その所定の相続等にあっては資産の増加益が顕在化し
ないため,増加益に対する課税をその後の譲渡時まで繰り延べることをそ
の本旨とするものであるが,不動産所得を対象としておらず,本来,償却
資産の取得後の減価償却とは関係がないものである。そうすると,相続に
より取得した減価償却資産につき減価償却を行うに当たっては,その計算
の基礎となる取得価額は相続時の時価となるはずであるが(施行令126
条1項5号),それでは上記の法60条の規定の趣旨と整合しないため,
特に施行令126条2項を設けて,被相続人が適法に減価償却をしてきた
場合の相続時における未償却残高を引き継いで減価償却を始めることが
できるようにしたものである。そして,償却期間と償却方法については,
そのような特例はないから,相続人は,原則どおり,その選択した期間に
より減価償却を行うことができるというべきである。
エ被告は,相続による取得の場合に簡便法の適用が認められることになれ
ば,当該減価償却資産を相続により取得した者と購入により取得した者と
の間で不均衡が生じ不合理であると主張する。しかし,簡便法によるか否
かで最終的な償却費の累積額に差異は生じないのであり,最終的に負担す
る納税額にも差異はない。被告がいう不合理性とは,結局のところ,簡便
法によると相続後しばらくの間は償却費が高くなり,納付すべき税額が低
くなることにより生ずる「金銭の時間的価値」を得られるということにす
ぎない。なお,相続による取得の場合に簡便法を適用すると,算定される
耐用年数の途中で償却が終了してしまうが,耐用年数は,言わば償却率を
算出するための基準でしかなく,耐用年数と実際に償却が終了する年数は
必ず一致しなければならないものではないから,上記の結果を不合理とい
うことはできない。
(2)争点2(理由附記の不備)について
(被告の主張)
法が,青色申告書に係る更正をする場合に理由の附記を求めたのは,課税
庁の判断の慎重・合理性を担保して,その恣意を抑制し,また処分理由を相
手方に知らせて不服の申立てに便宜を与えるためであるが,帳簿書類の記載
自体を否認することなしに更正をする場合には,その更正は,納税者による
帳簿の記載を覆すものではないから,更正の根拠を更正処分庁の恣意抑制及
び不服申立ての便宜という理由附記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的
に明示するものである限り,法の要求する理由の附記として欠けるところは
ないと解するのが相当である。本件では,帳簿書類の記載を否認するもので
はないところ,本件各更正処分は,その通知書において,処分理由として,
更正の対象となる資産を特定し,その減価償却費の一部を否認することにつ
き,具体的な金額及びその具体的な理由を法令に則して明示してされたもの
であるから,上記理由附記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示す
るものであるといえる。
(原告の主張)
青色申告書に係る更正処分においては,その理由が書面により示されなけ
ればならないところ,これは,課税庁の判断の慎重・合理性を担保して,そ
の恣意を抑制し,また処分理由を相手方に知らせて不服の申立てに便宜を与
えるためである。そうすると,理由附記の程度としては,その記載自体から
更正処分の根拠を知り,不服申立てをすべきか否かを判断し得る程度のもの
である必要がある。しかし,本件各更正処分に係る更正通知書中の,簡便法
によって求めた耐用年数を適用することができない旨が記載された部分に
は,いずれも結論のみが示され,耐用年数を引き継ぐ理由については一切記
載がなく,理由附記の不備の違法がある。
第3当裁判所の判断
1争点1(本件各減価償却資産の耐用年数)について
(1)前記関係法令の定めのとおり,減価償却資産の償却費の計算の基礎となる
取得価額については,法49条2項の委任を受けた施行令126条1項が,
原則として資産の種類に応じた所定の金額とするものとしているが,同条2
項は,法60条1項各号に掲げる事由(相続等)により取得した減価償却資
産の上記取得価額について,当該減価償却資産を取得した者が引き続き所有
していたものとみなした場合における当該減価償却資産の取得価額に相当
する金額とするものとしている。
ところで,法60条1項は,同項1号所定の相続等によって取得した資産
を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算については,その者が引き続
き当該資産を所有していたものとみなすとしているが,これは,当該相続等
の時点では資産の増加益が具体的に顕在化せず,その時点における譲渡所得
課税について納税者の納得を得難いことから,これを留保し,その後取得者
が資産を譲渡することによってその増加益が具体的に顕在化した時点におい
て,これを清算して課税することとしたものであり,同項の規定により,取
得者の譲渡所得の金額の計算においては,前所有者が当該資産を取得するの
に要した費用が引き継がれ,課税を繰り延べられた前所有者の資産の保有期
間に係る増加益も含めて取得者に課税されるとともに,前所有者の資産の取
得の時期も引き継がれる結果,資産の保有期間についても前所有者と取得者
の保有期間が通算されることになる(最高裁平成17年2月1日第三小法廷
判決・裁判集民事216号279頁)。
そして,当該資産が減価償却資産である場合には,上記の取得費の計算に
おいて,償却費の累積額等(これは,法49条1項の規定による方法を基礎
として計算される。)の控除(法38条2項)をすることになるところ,この
控除に当たっても,取得者が引き続き当該資産を所有していたものと取り扱
うことが整合的であるといえるのであり,施行令126条2項は,このよう
な整合性を確保するための規定であると解される。ところで,減価償却は,
長期間にわたって収益を生み出す源泉である減価償却資産の取得に要した費
用の総額(取得価額)を,費用収益対応の原則により,予定された期間(耐
用年数)に配分する会計技術であり,このような減価償却の意義や,上記の
ような法60条1項及び施行令126条2項の趣旨等を併せ考慮すれば,施
行令126条2項は,取得価額のみならず,耐用年数,経過年数及び未償却
残高についても,前所有者から取得者に引き継がれることを予定していると
解するのが相当である。
また,資産の区分に応じて一律の法定耐用年数を定める省令1条は,新品
の減価償却資産に対応する耐用年数に関する規定であると解されるのに対し,
個人において使用された減価償却資産を取得した場合等における当該資産の
耐用年数について定める省令3条1項は,中古資産に対応した耐用年数の算
定方法を示した規定であると解される。ところで,省令3条1項の趣旨は,
既に使用や時間の経過によって価値が減少している中古資産を取得した場合
に新品と同じ耐用年数を用いることは不合理であり,また,中古資産の場合
は経過年数も様々であるため一律の耐用年数を設定することには無理がある
ことから,中古資産に対応する短縮された耐用年数の算定方法を特に規定す
ることにあると考えられるから,同項を新品の減価償却資産に適用すること
は予定されていないというべきである。また,新品の取得価額が取得者に引
き継がれる場合に,取得者が中古資産に対応する短縮された耐用年数を用い
ることができるとすれば,償却率が高くなるため,当該資産については施行
令130条の規定によることなく法定耐用年数よりも短い年数で償却が終わ
ることになり,資産の区分に応じて一律の法定耐用年数を定めた省令1条の
趣旨に反する結果が生ずることになる。そうすると,新品の取得価額が取得
者に引き継がれる減価償却資産については,取得者が省令3条1項の規定に
より耐用年数を算定することは予定されておらず,このような観点からも,
前所有者の取得価額が引き継がれる場合には,耐用年数も取得者に引き継が
れることが前提とされているというべきである。
以上によれば,法60条1項所定の相続等により取得した減価償却資産に
ついては,前所有者の取得価額のみならず耐用年数も取得者に引き継がれ,
省令3条1項の規定は適用されないと解するのが相当である。
(2)これを本件について見ると,前記前提となる事実のとおり,原告は,相
続によって本件各減価償却資産を取得したところ,前所有者であるAは,本
件各減価償却資産をいずれも新品として取得し,それぞれ法定耐用年数を適
用していることが明らかである。そうすると,原告による本件各減価償却資
産の取得については,上記の法定耐用年数が原告に引き継がれ,省令3条1
項の規定は適用されないというべきである。よって,原告が,これらの償却
費の計算において,簡便法に基づいて算出した耐用年数を用いることはでき
ない。
(3)なお,原告は,省令3条1項の「取得」の文理解釈としては,「資産の所
有権の移転」をいうものと解するのが自然であり,相続による取得も当然に
含まれると解すべきであるし,施行令120条1項1号の「取得」について
は,相続による取得が含まれるとする判決が確定しているのであり,省令3
条1項の「取得」に相続による取得が含まれないとすることは,施行令12
0条1項以下の一連の規定における「取得」の文言を不統一に解釈する結果
をもたらすことになり,租税法の解釈の在り方として認められないなどと主
張する。
しかしながら,法60条1項,施行令126条2項,省令1条,3条1項
の趣旨等に照らせば,法60条1項1号所定の相続等により取得した減価償
却資産については,前所有者の取得価額のみならず耐用年数も取得者に引き
継がれ,省令3条1項の「取得」に相続等による取得が含まれるか否かを問
題とするまでもなく,同項の規定自体が適用されないと解すべきことは,前
記のとおりであり,原告の上記主張は採用することができない(なお,施行
令120条1項1号の「取得」に相続等による取得が含まれ,前所有者の選
択した当該減価償却資産の償却方法が相続等による取得者に引き継がれない
(同号所定の償却方法によることになる)としても,前所有者の取得価額が
前所有者の耐用年数に費用として配分される以上は,譲渡所得課税に係る課
税時期の繰延べの趣旨を害するものとはいえないから,このような同号の解
釈が,前記のとおり前所有者の耐用年数が取得者に引き継がれると解するこ
とと矛盾するということはできない。)。
2争点2(理由附記の不備)について
(1)法155条2項が,青色申告書に係る所得税について更正をする場合には
更正通知書に更正の理由を附記すべきものとしているのは,法が,青色申告
書に係る所得の金額の計算については,それが法定の帳簿組織による正当な
記載に基づくものである以上,その帳簿の記載を無視して更正されることが
ないことを納税者に保障した趣旨に鑑み,更正処分庁の判断の慎重,合理性
を担保してその恣意を抑制するとともに,更正の理由を相手方に知らせて不
服申立ての便宜を与える趣旨に出たものと解されるところ,帳簿書類の記載
自体を否認することなしに更正をする場合においては,当該更正は納税者に
よる帳簿の記載を覆すものではないから,更正通知書記載の更正の理由が当
該更正の根拠を上記の理由附記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明
示するものである限り,法の要求する更正理由の附記として欠けるところは
ないと解するのが相当である(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判
決・民集39巻3号850頁参照)。
(2)これを本件についてみると,証拠(甲2の1~3)によれば,本件各更正
処分に係る各更正通知書には,いずれも,「処分の理由」として,①必要経
費に算入できない減価償却費(平成19年分は139万5532円,平成2
0年分は141万7891円,平成21年分は139万7649円)がある
旨及び不動産所得を特定の金額(平成19年分は515万9772円,平成
20年分は583万8518円,平成21年分は586万5073円)に更
正する旨が明示され,②施行令126条2項によれば,相続により本件各減
価償却資産を取得した場合にはその取得価額及び取得時期をAからそのまま
引き継ぐことになるから,本件各減価償却資産については,省令3条1項に
規定する簡便法により算定した耐用年数を使用して減価償却費の計算を行う
ことができず,本来の法定耐用年数を適用して減価償却費の計算をすべきで
ある旨及び③本件マンションに係る一定の工事に基づく支出が施行令181
条の「資本的支出」に該当し,本件マンションの取得価額に加算される旨が
記載され,④具体的な減価償却費(平成19年分は623万3720円,平
成20年分は418万4930円,平成21年分は374万9499円)及
びこれと青色申告決算書に記載された減価償却費との差額は必要経費に算入
することができない旨が示されていることが認められる。そして,このよう
な更正の理由は,帳簿書類の記載自体を否認するものではなく,かつ,上記
の記載は,必要経費(減価償却費)の一部が認められない理由及び認められ
ない額を具体的な法令の規定に即して示したものということができる。そう
すると,本件各更正処分に係る各更正通知書に附記された理由は,更正の根
拠を前記の理由附記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するもの
といえ,法155条2項の要求する更正理由の附記として欠けるところはな
いものというべきである。
(3)この点,原告は,本件各更正処分に係る更正通知書には耐用年数が引き継
がれる理由について一切記載がないから,理由附記の不備があると主張する。
しかしながら,上記各更正通知書においては,上記のとおり,本件各減価
償却資産の耐用年数について,具体的な法令の規定が示され,その解釈とし
て簡便法の適用がない旨が記載されているのであるから,その記載が上記の
理由附記制度の趣旨・目的を損なうものということはできない。よって,原
告の上記主張は,採用することができない。
3本件各更正処分等の適法性について
以上に判示したところ及び弁論の全趣旨によれば,本件各更正処分等の根拠
及び適法性については別紙2に記載のとおり認めることができる。
4結論
以上の次第で,原告の請求にはいずれも理由がないからこれらを棄却するこ
ととし,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第2民事部
裁判長裁判官西田隆裕
裁判官山本拓
裁判官佐藤しほり
別紙2
本件各更正処分等の根拠及び適法性
1本件各更正処分の根拠について(なお,後出の省令4条1項は,平成19年分
及び平成20年分については平成20年財務省令第32号による改正前のものを
いう。)
(1)平成19年分
ア課税総所得金額
(ア)不動産所得の金額515万9772円
上記金額は,次のaの金額から,b及びcの各金額の合計額を控除した
金額である。
a総収入金額1964万3050円
上記金額は,原告が,平成19年分の所得税の確定申告書(甲1の1。
以下「平成19年分確定申告書」という。)及び所得税青色申告決算書
(不動産所得用)(甲1の1。以下「平成19年分青色申告決算書」と
いう。)に記載した金額である。
b必要経費の金額1383万3278円
上記金額は,次の(a)及び(b)の各金額の合計額である。
(a)減価償却費623万3720円
上記金額は,本件各減価償却資産の償却費の金額(本件マンショ
ンのAの取得価額に本件マンションに係る塗装工事,防水工事,改
造工事及び大規模修繕工事に関して支出された金額のうちの資本的
支出相当額を加算(施行令127条)した金額(1億6130万1
843円)を基礎として,本件マンションの法定耐用年数47年に
応じた償却率0.022(省令4条1項)を用いて算定した金額と,
本件各附属設備及び本件備品のそれぞれのAの取得価額を基礎とし
て,それぞれの法定耐用年数に応じたそれぞれの償却率(省令4条
1項)を用いて算定した金額の合計額)及びその他の減価償却資産
の償却費の金額(原告が平成19年分青色申告決算書に記載した金
額)の合計額(別表2参照)である。
(b)その他の経費759万9558円
上記金額は,原告が,平成19年分青色申告決算書の「必要経費」
欄のうち「減価償却費」欄以外の欄に記載した金額の合計額である。
c青色申告特別控除(租税特別措置法25条の2第3項)65万円
上記金額は,原告が,平成19年分確定申告書及び平成19年分青色
申告決算書に記載した金額である。
(イ)雑所得の金額4200円
上記金額は,原告が,平成19年分確定申告書に雑所得の金額として記
載した金額である。
(ウ)総所得金額516万3972円
上記金額は,上記(ア)及び(イ)の各金額の合計額である。
(エ)所得控除の合計額71万3921円
上記金額は,原告が,平成19年分確定申告書に「所得から差し引かれ
る金額」の合計として記載した98万3921円から,「寡婦・寡夫控除」
の金額27万円を除いた金額である(原告には扶養親族はなく,かつ,上
記(ウ)のとおり,総所得金額が500万円を超えるため,原告は寡婦(法
2条1項30号)に該当せず,寡婦控除(法81条)の適用はない。)。
(オ)課税総所得金額445万円
上記金額は,上記(ウ)の金額から上記(エ)の金額を控除した金額(ただ
し,国税通則法118条1項の規定により1000円未満を切り捨てたも
の。)である。
イ差引納付すべき税額
(ア)課税総所得金額に対する税額46万2500円
上記金額は,法89条の規定を適用して算出した金額である。
(イ)予定納税額0円
上記金額は,原告が平成19年分所得税確定申告書に予定納税額として
記載した金額である。
(ウ)納付すべき税額46万2500円
上記金額は,上記(ア)の金額から上記(イ)の金額を控除した金額である。
(エ)差引納付すべき税額28万1600円
上記金額は,上記(ウ)の金額から既に納付の確定した本税額18万09
00円を控除した金額である(なお,原告に税額控除及び源泉徴収税額は
ない。)。
(2)平成20年分
ア課税総所得金額
(ア)不動産所得の金額583万8518円
上記金額は,次のaの金額から,b及びcの各金額の合計額を控除した
金額である。
a総収入金額1994万7078円
上記金額は,原告が,平成20年分の所得税の確定申告書(甲1の2。
以下「平成20年分確定申告書」という。)及び所得税青色申告決算書
(不動産所得用)(甲1の2。以下「平成20年分青色申告決算書」と
いう。)に記載した金額である。
b必要経費の金額1345万8560円
上記金額は,次の(a)及び(b)の各金額の合計額である。
(a)減価償却費418万4930円
上記金額は,本件各減価償却資産の償却費の金額(本件マンショ
ンのAの取得価額に本件マンションに係る塗装工事,防水工事,改
造工事及び大規模修繕工事に関して支出された金額のうちの資本的
支出相当額を加算(施行令127条)した金額(1億6130万1
843円)を基礎として,本件マンションの法定耐用年数47年に
応じた償却率0.022(省令4条1項)を用いて算定した金額と,
本件各附属設備及び本件備品のそれぞれのAの取得価額を基礎とし
て,それぞれの法定耐用年数に応じたそれぞれの償却率(省令4条
1項)を用いて算定した金額の合計額)及びその他の減価償却資産
の償却費の金額(原告が平成20年分青色申告決算書に記載した金
額)の合計額(別表2参照)である。
(b)その他の経費927万3630円
上記金額は,原告が,平成20年分青色申告決算書の「必要経費」
欄のうち「減価償却費」欄以外の欄に記載した金額の合計額である。
c青色申告特別控除(租税特別措置法25条の2第3項)65万円
上記金額は,原告が,平成20年分確定申告書及び平成20年分青色
申告決算書に記載した金額である。
(イ)雑所得の金額0円
上記金額は,原告が,平成20年分確定申告書に雑所得の金額として記
載した金額である。
(ウ)総所得金額583万8518円
上記金額は,上記(ア)及び(イ)の各金額の合計額である。
(エ)所得控除の合計額82万5102円
上記金額は,原告が,平成20年分確定申告書に「所得から差し引かれ
る金額」の合計として記載した109万5102円から,「寡婦・寡夫控
除」の金額27万円を除いた金額である(原告には扶養親族はなく,かつ,
上記(ウ)のとおり,総所得金額が500万円を超えるため,原告は寡婦(法
2条1項30号)に該当せず,寡婦控除(法81条)の適用はない。)。
(オ)課税総所得金額501万3000円
上記金額は,上記(ウ)の金額から上記(エ)の金額を控除した金額(ただ
し,国税通則法118条1項の規定により1000円未満を切り捨てたも
の。)である。
イ差引納付すべき税額
(ア)課税総所得金額に対する税額57万5100円
上記金額は,法89条の規定を適用して算出した金額である。
(イ)予定納税額12万0200円
上記金額は,原告が平成20年分所得税確定申告書に予定納税額として
記載した金額である。
(ウ)納付すべき税額45万4900円
上記金額は,上記(ア)の金額から上記(イ)の金額を控除した金額である。
(エ)差引納付すべき税額33万7600円
上記金額は,上記(ウ)の金額から既に納付の確定した本税額11万73
00円を控除した金額である(なお,原告に税額控除及び源泉徴収税額は
ない。)。
(3)平成21年分
ア課税総所得金額
(ア)不動産所得の金額586万5073円
上記金額は,次のaの金額から,b及びcの各金額の合計額を控除した
金額である。
a総収入金額1941万3482円
上記金額は,原告が,平成21年分の所得税の確定申告書(甲1の3。
以下「平成21年分確定申告書」という。)及び所得税青色申告決算書
(不動産所得用)(甲1の3。以下「平成21年分青色申告決算書」と
いう。)に記載した金額である。
b必要経費の金額1289万8409円
上記金額は,次の(a)及び(b)の各金額の合計額である。
(a)減価償却費374万9499円
上記金額は,本件各減価償却資産の償却費の金額(本件マンショ
ンのAの取得価額に本件マンションに係る塗装工事,防水工事,改
造工事及び大規模修繕工事に関して支出された金額のうちの資本的
支出相当額を加算(施行令127条)した金額(1億6130万1
843円)を基礎として,本件マンションの法定耐用年数47年に
応じた償却率0.022(省令4条1項)を用いて算定した金額と,
本件各附属設備及び本件備品のそれぞれのAの取得価額を基礎とし
て,それぞれの法定耐用年数に応じたそれぞれの償却率(省令4条
1項)を用いて算定した金額の合計額)及びその他の減価償却資産
の償却費の金額(原告が平成21年分青色申告決算書に記載した金
額)の合計額(別表2参照)である。
(b)その他の経費914万8910円
上記金額は,原告が,平成21年分青色申告決算書の「必要経費」
欄のうち「減価償却費」欄以外の欄に記載した額の合計額である。
c青色申告特別控除(租税特別措置法25条の2第3項)65万円
上記金額は,原告が,平成21年分確定申告書及び平成21年分青色
申告決算書に記載した金額である。
(イ)雑所得の金額0円
上記金額は,原告が,平成21年分確定申告書に雑所得の金額として記
載した金額である。
(ウ)総所得金額586万5073円
上記金額は,上記(ア)及び(イ)の各金額の合計額である。
(エ)所得控除の合計額90万9170円
上記金額は,原告が,平成21年分確定申告書に「所得から差し引かれ
る金額」の合計として記載した117万9170円から,「寡婦・寡夫控
除」の金額27万円を除いた金額である(原告には扶養親族はなく,かつ,
上記(ウ)のとおり,総所得金額が500万円を超えるため,原告は寡婦(法
2条1項30号)に該当せず,寡婦控除(法81条)の適用はない。)。
(オ)課税総所得金額495万5000円
上記金額は,上記(ウ)の金額から上記(エ)の金額を控除した金額(ただ
し,国税通則法118条1項の規定により1000円未満を切り捨てたも
の。)である。
イ差引納付すべき税額
(ア)課税総所得金額に対する税額56万3500円
上記金額は,法89条の規定を適用して算出した金額である。
(イ)予定納税額15万8200円
上記金額は,原告が平成21年分所得税確定申告書に予定納税額として
記載した金額である。
(ウ)納付すべき税額40万5300円
上記金額は,上記(ア)の金額から上記(イ)の金額を控除した金額である。
(エ)差引納付すべき税額33万2200円
上記金額は,上記(ウ)の金額から既に納付の確定した本税額7万310
0円を控除した金額である(なお,原告に税額控除及び源泉徴収税額はな
い。)。
2本件各更正処分の適法性
平成19年分から平成21年分までの所得税の納付すべき税額は上記1(1)~
(3)の各イ(ウ)のとおりであるところ,これらはいずれも本件各更正処分に係る
納付すべき税額(別表1の「更正処分等」欄記載の納付すべき税額)と同額であ
るから,本件各更正処分は適法である。
3本件各賦課決定処分の根拠
前記2のとおり,本件各更正処分は適法であるところ,本件各更正処分により
新たに納付すべき税額の計算の基礎とされた事実のうちに,更正前の税額の計算
の基礎とされていなかったことについて,国税通則法65条4項に規定する正当
な理由があるといえる事実があるとは認められない。
よって,本件各更正処分に伴って賦課される過少申告加算税の額は,次のとお
りとなる。
(1)平成19年分2万8000円
上記金額は,更正処分により新たに納付すべきこととなった税額28万円(国
税通則法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てたもの。以下
同じ。)に国税通則法65条1項の規定により100分の10を乗じた金額で
ある(同条2項の規定により加重される過少申告加算税はない。)。
(2)平成20年分3万3000円
上記金額は,更正処分により新たに納付すべきこととなった税額33万円に
国税通則法65条1項の規定により100分の10を乗じた金額である(同条
2項の規定により加重される過少申告加算税はない。)。
(3)平成21年分3万3000円
上記金額は,更正処分により新たに納付すべきこととなった税額33万円に
国税通則法65条1項の規定により100分の10を乗じた金額である(同条
2項の規定により加重される過少申告加算税はない。)。
4本件各賦課決定処分の適法性
本件各更正処分に伴って原告に賦課される過少申告加算税の額は上記3のと
おりであるところ,これらはいずれも本件各賦課決定処分の過少申告加算税の額
(別表1「更正処分等」欄記載の過少申告加算税の額)と同額であるから,本件
各賦課決定処分は適法である。
以上

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