弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

判決
被告人A
被告人B
主文
被告人両名をそれぞれ懲役2年6月及び罰金250万円に処する。
被告人らにおいてその罰金を完納することができないときは,金1
万円をそれぞれ1日に換算した期間,その被告人を労役場に留置する。
被告人両名に対し,この裁判が確定した日から4年間,それぞれそ
の懲役刑の執行を猶予する。
訴訟費用は被告人両名の連帯負担とする。
理由
【罪となるべき事実】
被告人Aは,大阪市a区bc丁目d番e号に本店を置き,インターネット・ホ
ームページの企画,立案,制作並びにインターネットでのサーバの設置及びその
管理業務等を目的とし,アメリカ合衆国所在のC社(代表者D)と共にインター
ネットサイト「E」を管理・運営するF社の実質的相談役,被告人BはF社の代
表取締役であるが,被告人両名は,
第1前記D及びGらと共謀の上,平成25年6月19日午後10時15分頃,被
告人らがF社従業員らをしてC社と共に管理するE内の投稿サイト「E動画ア
ダルト」のサーバコンピュータに,前記Gが大阪市f区gh丁目i番j号kl同
人方からインターネットに接続した携帯電話機を使用して送信した男女の性器
を露骨に撮影したわいせつな動画データを記録・保存させるなどし,インター
ネットを利用する不特定多数の者が前記わいせつな動画を閲覧することができ
る状態を設定し,同月28日ないし平成26年12月8日,前記動画データに
アクセスしてきた不特定の者に対してこれを閲覧再生させ,もってわいせつな
電磁的記録に係る記録媒体を公然と陳列した。
第2前記D,Eに事業者としてエージェント登録していたH及びパフォーマー登
録していたIと共謀の上,平成25年12月25日午後1時50分頃から同日
午後2時8分頃までの間,京都市m区n町o番地pq同女方において,同女が
ウェブカメラで露骨に撮影した同女の性器の映像を,E内の配信サイト「Eラ
イブアダルト」の映像配信システムを利用して,同市r区s町t番地uv階等
へ電気通信回線を通じて無修正で即時配信し,不特定の視聴者らに観覧させ,
もって公然とわいせつな行為をした。
第3前記D及び前同様にエージェント登録していたJらと共謀の上,平成26年
6月3日午後10時6分頃から同日午後10時39分頃までの間,大阪市a区
wx丁目y番z号a1a2同人方において,同人らがウェブカメラで露骨に撮影し
た同人らの性器や性交場面等の映像を,前記「Eライブアダルト」の映像配信
システムを利用して,前記uv階等へ電気通信回線を通じて無修正で即時配信
し,不特定の視聴者らに観覧させ,もって公然とわいせつな行為をした。
【事実認定の補足説明】
1弁護人らは,いずれの犯行についても,被告人らは無修正わいせつ動画の投稿・
配信に関与しておらず実行行為を行っていないし,無修正わいせつ動画の投稿者・
配信者と共謀したこともないから,被告人らには実行共同正犯も共謀共同正犯も
成立しないと主張しているので,以下検討する。
2被告人らの地位及びEの概要等
⑴Dは,被告人Aの兄であり,C社の代表者の地位にある。
被告人Aは,平成20年1月にF社の代表取締役に就任し,平成21年8月
以降はF社の実質的相談役の地位にある。
被告人Bは,平成20年1月にF社の取締役に就任し,平成21年8月以降
はF社の代表取締役の地位にある。
⑵C社は,平成11年7月頃に設立されたアメリカ合衆国所在の会社であり,
インターネットサイトであるEを管理・運営しているところ,平成19年11
月以降にはE内の投稿サイト「E動画」のサービスを,平成22年8月以降に
はE内の配信サイト「Eライブ」のサービスをそれぞれ提供している。
3E動画やEライブ等の仕組み
E動画では,インターネットを通じて,C社が契約するサーバに動画データ
を投稿することができる。投稿された動画データは,無料会員用や有料会員用
などの用途に合わせて変換された後,C社が管理する配信サーバへ送られると
ころ,不特定多数の視聴者は,そのサーバにアクセスすることで,その動画の
内容を視聴できるが,日本で視聴する場合には,アメリカ合衆国にある配信サ
ーバから長距離通信をせざるを得ず,視聴までに時間がかかるため,有料会員
については,動画データを日本にあるキャッシュサーバに一時的に保存し,そ
こから配信することで通信の高速化が図られている。
E動画において有料会員になると,無料会員では視聴できない動画について
も視聴でき,1日当たりの視聴制限が無制限となり,高画質に変換された動画
データの配信を受けられ,キャッシュサーバを利用した通信の高速化が図られ
るなどの特典があり,視聴者に有料会員登録を促す措置が講じられている。
また,E動画では,視聴者が投稿動画を介して新規に有料会員登録をした場
合には,投稿者は登録料の一定割合に相当するポイントを報酬として受け取る
ことができ,それを現金化できるなどの仕組み(動画アフィリエイト制度)や,
投稿された動画を視聴者に評価させる仕組み(動画評価システム)など,投稿
者により多くの動画を配信するよう促す措置が講じられている。
E動画では,平成26年11月現在で,Eライブを除くアップロード動画数
は約170万件(一般動画約90万件,アダルト動画約80万件)を超えてい
る。多数の者がこれらの動画にアクセスしているが(平成25年9月時点で月
間アクセス数は9500万件以上である。),その大半が日本からのアクセス
となっている。
E動画の総売上は増加傾向にあり,平成25年12月時点でのE動画の総売
上は約4億2588万円,同粗利は約4億0569万円であり,当時の粗利合
計約4億8891万円の相当程度を占めている。
⑶E動画アダルトへの投稿動画には,男女の性器等を露骨に表した無修正わい
せつ動画が含まれており,E動画アダルトのサイト上には,「注目ワード」内
に「無修正」(無修正わいせつ動画の意味)とのキーワードが表示されたり,
「おすすめ動画」内には無修正わいせつ動画のサムネイルが多数表示されてい
る。また,E動画アダルトにおいて「無修正」で検索したところ,動画タイト
ルやタグに「無修正」「無」(いずれも無修正わいせつ動画の意味)を含む動
画が4万9417件も表示されている。さらに,F社従業員がE動画アダルト
への投稿動画を無作為に抽出した100件のうち,33件が無修正わいせつ動
画であった旨の報告書もある。
さらに,C社では,E動画等の配信者が,その動画等を「コンテンツマーケ
ット」という場で販売することもできるサービスを提供しており,それにより
C社は決済手数料を得ているところ,平成27年9月時点のE動画のサイト上
で,コンテンツマーケットにアップロードされたE動画(一般)のサンプル数
が約560件であったのに対し,E動画アダルトのサンプル数は約10万件で
あった。そして,平成27年7月時点のE動画アダルトのサイト上で,Eコン
テンツマーケットにもアップロードされたE動画アダルトのサンプルのうち,
動画のサムネイルや冒頭5秒間の映像で無修正わいせつ動画であると判断でき
るものや動画タイトル等に「無修正」「無」が含まれているものは,再生した
動画の約2割程度もあった。
これらの事情からすれば,E動画アダルトには本件各犯行以前から相当数の
無修正わいせつ動画が投稿されていたと認められる。
⑷次に,Eライブについてみると,Eライブでは,ウェブカメラ等で撮影した
動画データを,生中継で,インターネットを通じてC社管理のサーバ等に配信
することができ,不特定多数の視聴者が,当該サーバにアクセスすることで,
その動画データをリアルタイムで視聴できる仕組みになっている。
Eライブでは,無料配信形態と有料配信形態とがあり,視聴者が視聴料を支
払って有料配信形態の動画を視聴した場合には,その動画の配信者は,視聴料
の一定割合に相当するポイントを報酬として受け取ることができ,それを現金
化できるなどの仕組み,Eライブの出演者(パフォーマー)を管理する会社又
は個人(エージェント)が,出演者等を管理して,需要に応じた視聴料を設定
することができ,それにより多くの視聴料を獲得できれば,その視聴料の一定
割合に相当するポイントを報酬として受け取ることができる仕組み,Eライブ
の画面上に売上上位者の名前や金額を表示する仕組み,及び,配信された動画
に視聴者のコメントを表示するチャット機能など,配信者により多くの動画を
配信するよう促す措置が講じられている。
Eライブには,「一般」と「アダルト」があるが,平成26年8月頃の1日
当たりの配信数は,全体で6000から7000件程度であり,そのうちEラ
イブアダルトは4000件程度であった。
Eライブの全体取引高は増加傾向にあり,平成25年12月時点での全体取
引高(2億2162万円)に対し,エージェント取引高は1億4903万円,
Eの利益は4508万円であり,HやJのように多額の利益を得ているエージ
ェントは相当数いて,Eの利益に結びついていると認められる。
Eライブアダルトで配信された動画には,男女の性器等を露骨に表した無修
正わいせつ動画が含まれており,Eライブアダルトのサイトには,無修正わい
せつ動画が配信されていることが容易にわかるサムネイルが多数あり,平成2
3年頃から利用者から無修正わいせつ動画が配信されていることに対する苦情
が数多く寄せられている。また,判示第2及び第3の犯行で動画を配信したH
やJは,本件までにも多数の無修正わいせつ動画を配信しており,Hについて
は平成25年1月頃から平成26年6月頃までの間に合計約1285万円を超
える利益を得て,C社には約550万円の利益が入り,Jは平成26年1月頃
から同年6月頃までの間に合計約3037万円を超える利益を得て,C社には
約530万円の利益が入る計算となる。
これらの事情からすれば,Eライブアダルトについても本件各犯行以前から
相当数の無修正わいせつ動画が配信されており,Eライブの取引高に寄与して
いたと推認できる。
4F社の業務内容とEとの関係
F社におけるEに関する業務について検討すると,F社は,平成24年12月
にC社との間で業務委託契約を締結しているものの,平成18年6月頃の,F社
の前身である有限会社Fの時代から,Eの商標登録を保有している上,F社従業
員が仕事で使うメールアドレスのドメインは,平成25年4月30日頃まで「(E
社の社名).us」や「(E社の社名)co.jp」を使用し,取引先に対しても
C社の従業員を名乗るよう指示され,F社従業員がC社の代表者であるDを「社
長」と呼び,C社への入社に応募してきた者に対し,C社の従業員として対応し
ていた等の事情がうかがえる。
本件が問題となる平成25年から平成26年にかけても,F社はE関連のWe
bサービスを事業の核とし,Eのブログ・無料ホームページ・動画・ライブのシ
ステム開発,サーバの保守・管理,ユーザーサポート,その他広告枠の販売業務
を行っていたことが認められる。
F社のサポートチームにおいては,E動画について,児童ポルノ・獣姦コンテ
ンツは管理画面を用いて削除するなどしていた。さらに,捜査機関からC社宛て
に,Eに投稿された無修正わいせつ動画の投稿者等に関する照会があったことに
対しても,F社の従業員がこれを受け付け,E事務局を名乗ってこれに回答する
ほか,F社の従業員が被告人Bの指示により,弁護士や捜査機関からのE事務局
宛のメールや照会を扱い,対応することもあった。
加えて,F社従業員が,E利用者が取得したポイントの換金業務を行うととも
に,Eの運営による売上げ等を集計し,月次報告書等にまとめるなどしていた。
以上のことからすれば,Eの業務の大半は,F社で行っていたものであり,F
社は,C社と共にE動画やEライブを含むEの業務全般を管理・運営していたと
考えるのが相当である。
5D及び被告人らがEに関する業務内容を把握していたこと
DはC社の代表者であり,被告人Aは,F社の上位に位置する株式会社Kの代
表取締役であるとともに,F社に実質的相談役として出社し,Eのデザインやサ
イトのユーザー側の使い勝手についてのアドバイスをしていた。被告人Bは,F
社の代表取締役である。
そして,被告人Aは,平成20年まで勤務していたF社従業員に対外的にはC
社従業員を名乗るよう指示し,当時の従業員は,被告人らだけでなく,Dにも業
務内容を直接報告しており,平成21年にDと被告人AがEライブやチャットな
ど新機能の開発を打ち出して指示し,平成23年にかけてもD及び被告人AがF
社従業員らにEライブの不具合を修正するよう指示するほか,視聴制限数の変更,
サーバの変更などEの管理・運営に関わる重要事項等の業務についてF社従業員
らから逐一報告を受け,助言・承認するなどしていた。また,Dと被告人らは,
平成24年1月,E動画アップロードページの警告文から「無修正ポルノ」を削
除する内容についての報告を受けており,実際,警告文から削除されている。そ
して,Eライブアダルトの動画投稿者「L」に関する公然わいせつでの照会依頼
を受けたF社従業員が,弁護士に質問した内容を被告人Bにも送信し,これを被
告人Aにも転送するなどして周知しているし,前記「L」の逮捕を受け,平成2
4年2月,Dや被告人らの間で,無修正わいせつ動画の投稿者・配信者の情報を
今後も捜査機関に回答するか否かや,「放送画面に法律守りましょうって位は出
した方がよさそう」などと警告文を表示するか否かなどEの運営に関わる事項を
協議していたこと,平成25年にもF社従業員からD及び被告人らに対して警察
からの捜査関係事項照会依頼についての報告が続いていたことなどを踏まえれば,
D及び被告人らは,F社従業員らを介してEの業務全般を管理・運営していたと
認められる(なお,被告人Aは,平成24年6月に株式会社Kの代表取締役に就
任しているが,これは,F社とC社が実質的に同一であると裁判所に認定されな
いよう,F社からDの弟である被告人Aの名前を排除するために行われたものに
すぎないし,株式会社Kの代表取締役となった後もEの業務全般について報告を
受けるなどしていたのであるから,上記認定のとおり,F社従業員らを介してE
の業務全般を管理・運営していたと認められる。)。
6被告人らの方針により,E動画アダルト及びEライブアダルトが無修正わいせ
つ動画の投稿・配信を許容し,これを利用する仕組みとなったこと
E動画アダルトは,被告人AとDの方針で設けられ,利用規約についても被告
人Aの指示で作成・手直しがされた。Eライブ開発時にも同様にアダルトカテゴ
リが設けられ,Dの方針で,ユーザーが稼げる仕組みを強調し,ブログ・動画に
続く収益の柱に据えるように開発され,従量課金制度等が導入された。また,D
の指示で,売上上位者のランキングを表示させ,ライブ配信により収益が得られ
ることを配信者に動機付ける仕組みを作り,これらの過程は被告人らへ報告され
ていた。そして,売上上位者の名前や金額等のランキング,配信者数等は月次ミ
ーティングでD及び被告人らにも報告されており,Eライブの売上の90パーセ
ント以上をアダルトカテゴリが占めるようになった。また,動画,ライブ,ブロ
グなどの内訳を示した総売上・粗利・決済種別等についてC社の売上は被告人B
に報告されていたし,D及び被告人らは,判示第2及び第3のHやJのように無
修正わいせつ動画を繰り返し配信していたエージェントも含め,多額の利益を上
げていたエージェントを「優良エージェント」「セックス配信中心」などと称し
て把握していた。
そして,被告人Bは,平成21年8月,メールで弁護士に対し,Eでは「アメ
リカの法律で問題がない動画の表示を許可しております。その中には無修正のア
ダルト動画があります。」として,無修正わいせつ動画の投稿を「許可」してい
る旨記載した上,F社は無修正わいせつ画像を見るための課金は行っていないが,
法的に問題がないか質問したのに対し,弁護士から,わいせつ図画公然陳列罪の
幇助が成立する可能性を指摘され,このメールを,Dや被告人Aにも送信してい
る。平成21年12月,F社従業員が,D及び被告人Aに対し,「方針のとおり
無修正動画も基本的には放置し」て削除せず,児童ポルノ・獣姦・グロテスク(死
体写真等),ひどい暴力のコンテンツのみ,多数の通報があった場合ブログやH
Pと同様の基準で凍結する,ユーザーアカウントを削除するという処置は行わな
い,との「方針」を記載したメールを送信している。平成23年7月,前記「L」
につき,公然わいせつで捜査照会があったことを受け,F社従業員が,弁護士に
対して,アダルト映像配信の対象を会員ユーザーに限定すれば公然わいせつに当
たらなくなるのか等を質問したが,弁護士から公然わいせつ罪が成立する可能性
があると指摘された旨の記載があるメールを,被告人らは受信している。さらに,
平成24年7月,米国法に関する相談をした弁護士から,「Eが掲載を許可して
いるコンテンツは,ポルノ要素を含むものがあるので(児童ポルノに限らず),
猥褻なコンテンツであると判断され,刑事上違法と評価を受ける危険性がある」
「刑事訴追される可能性を低減させる方法としては,ポルノ要素が含まれると判
断する動画に関しては,その閲覧を有料会員に限定するといった方法が考えられ
る」等の指摘を受けたのに,Dが被告人Bや被告人Aに対し「こんなこと全部や
ってたらサイト自体終了するねぇ」などとのメールを送信している。これらのこ
とからすれば,D及び被告人らは,E動画やEライブにおいて,無修正わいせつ
動画が相当数配信されていることを当然に認識しながらも,これを許容する方針
をとっていたといえる。
そして,上記のとおり複数の弁護士から国内において刑事責任を負う可能性を
何度も指摘されたにもかかわらず,被告人らは,①平成24年1月,E動画のア
ップロード画面の警告文から「無修正ポルノ」の文言を削除し,その後,前記「L」
の逮捕を受け,平成24年2月,被告人らの間で,警告文を表示するか否かなど
Eの運営に関わる事項を協議したものの,②他の動画投稿サイトでは削除等がさ
れている無修正わいせつ動画を放置し,無修正わいせつ動画を監視する担当者す
ら置かず,③Eライブの利用規約には「アダルトコンテンツ以外で,性器の露出
及び性器の露出を強制する行為」は禁止されているが,Eライブアダルトでその
ような規制はなく,利用者からの「Eは無修正で配信できると聞いていた」「無
修正で配信しても日本の法律や警察には捕まらないでしょうか」といった問合せ
に対する対応マニュアルにも「無修正の配信内容であってもアダルトカテゴリで
配信している限り,弊社では現状ペナルティは取っておりません」などと記載し,
無修正わいせつ動画の配信を許容する方針を変更することなく,徹底していたと
いえる。
そうすると,D及び被告人らは,E動画アダルトやEライブアダルトにおいて
相当数の無修正わいせつ動画が配信されることを認識した上で,C社やサーバが
米国にあるとの理由から許容し,それらを利用してサイト利用者や有料会員を維
持・増加させようとして,E動画アダルトやEライブアダルトを管理・運営して
いたと認められる。そして,このことは,平成26年9月に警察と関わりのある
インターネットホットラインセンターより無修正の画像の削除要請を受けたF社
取締役のMが「無修正の画像を消したという前例をつくって,Eは国内法に従っ
たという前例は絶対に作りたく有りません」「Eとしては違法性があるとは思え
ないので対応はしない」とのメールを送信していることや,F社の平成26年の
取組み資料の中に,「メーカーが無修正動画を合法的に流せる仕掛けをメーカー
に自発的に用意させ」る旨の記載があることからも裏付けられている。
7D及び被告人らと本件の各投稿者及び配信者との間で黙示の意思連絡及び相互
利用補充関係があったこと
判示第1の動画投稿者のGは,無料会員となって以降,「愛・飢え男」のペ
ージに約30件,「愛・飢え男②」に約20件,「愛・飢え女③」に約60件
もの無修正わいせつ動画を投稿しており,「愛・飢え女③」のページ上で閲覧
可能な投稿動画数は平成25年6月28日時点で49件,平成26年12月8
日時点で61件であり,判示第1の投稿動画の再生数は9954回であった。
そして,Gは,過去に何度も投稿した動画が削除されることはなく,視聴者
の反応を楽しむ,自己の行為を自慢したいなどの欲求を満たすために,無修正
わいせつ動画の投稿を行い,またGの相手役の女性も動画が投稿されると公開
され誰でも見ることができるものとして本件の行為に及んでいると認められる。
投稿動画の中には,再生数が1万回を超えるものも多く,無料会員が投稿し
た動画であっても,有料会員専用の高画質動画データと無料会員及び非会員用
の画質の粗いデータに変換してサーバに管理され,非会員については1日当た
りの視聴回数制限がかけられ,会員登録の画面に切り替わり,同画面では有料
会員が優遇されており,案内画面が表示されるなど,有料会員登録を促す仕組
みとなっており,前記認定のE動画の売上に結びついていたと考えられる。
判示第2の動画配信者のHは,Eライブアダルトにおいて,視聴者がコンス
タントに入り稼ぎやすいこと,無料視聴か有料視聴か,その料金設定をエージ
ェント等が設定できることなどを理由にエージェント登録し,パフォーマー登
録していたIとの間で報酬の割合を決めた上,利益獲得のため互いに共謀の上,
有料設定で,無修正わいせつ動画を繰り返し配信した。そして前記のとおり,
Hは平成25年1月頃から平成26年6月頃までの間に合計約1285万円を
超える利益を得て,この間C社は約550万円の利益を得ていた。
判示第3の動画配信者のJについても,他のサイトでは縛りがある無修正わ
いせつ動画を配信しているEライブアダルトの存在を知り,Jがエージェント
登録し,利益獲得のためパフォーマーと互いに共謀の上,,有料設定を
して,パフォーマーと性交等する無修正わいせつ動画を配信し,前記のとおり,
Jは平成26年1月頃から同年6月頃までの間に合計約3037万円を超える
利益を得て,この間C社は約530万円の利益を得ていたと認められる。
このように,E動画アダルトやEライブアダルトにおいては,これらの仕組
みに動機づけられて,他のサイトで削除された動画も含め,無修正わいせつ動
画が許容されるものとして相当数投稿・配信されており,Gも同様に動機づけ
られてE動画アダルトへ無修正わいせつ動画の投稿に及び,さらにEライブア
ダルトではエージェント登録により高額な利益を上げる仕組みであることに動
機づけられて,H及びI並びにJらもEライブアダルトへ無修正わいせつ動画
の配信に及んだものと認められる。
そして,D及び被告人らはEが不特定多数の者により,無修正わいせつ動画
が相当の割合で投稿・配信されることを認識し,許容するだけでなく,これを
利用して利益を上げる目的でE動画アダルト,Eライブアダルトを管理・運営
していたのであり,各投稿者及び配信者の具体的な投稿・配信行為を認識しな
くても,概括的にこれを認識・認容していたといえる。
そうすると,D及び被告人らと,G,H及びI並びにJらとの間には,無修
正わいせつ動画の投稿・配信の各行為の時点で,それぞれわいせつ電磁的記録
記録媒体陳列ないし公然わいせつを共同して行う旨の黙示の意思連絡及び相互
利用補充関係があったものと認めるのが相当である。
8なお,本件では,判示第1の犯行につき,被告人らがDとともにE動画アダル
トのサーバを管理・運営し,動画をサーバに記憶・保存させた行為がわいせつ電
磁的記録記録媒体の実行行為の一部に該当するか否かも争われているが,仮にこ
れが実行行為に該当しないとしても,被告人らがサーバを管理・運営しなければ,
投稿された無修正わいせつ動画を不特定多数の者が閲覧できる状態に置くことは
できないから,被告人らがサーバを管理・運営した行為は,Gらによる実行行為
の不可欠の前提を成すものであり,被告人らは正犯者といえる程度に重要な役割
を果たしたといえるので,少なくとも共謀共同正犯が成立すると認められる。
9よって,いずれの犯行についても,被告人らには少なくとも共謀共同正犯が成
立すると認められる。
10弁護人の主張に対する判断
これに対し,弁護人らは,被告人らは,Gが判示第1の無修正わいせつ動画
を投稿した事実も,H及びIが判示第2の無修正わいせつ動画を配信した事実
も,Jらが判示第3の無修正わいせつ動画を配信した事実も,いずれも具体的
に認識していなかった上,そもそもG,H及びI並びにJらの存在すら具体的
に認識していなかったのであるから,個別の犯罪について特定された共謀者と
の間で共謀があったとはいえず,共謀共同正犯は成立しないと主張する。
しかしながら,被告人らがG,H及びI並びにJらの無修正わいせつ動画の
投稿・配信行為を具体的に認識しておらず,また,同人らの存在を具体的に認
識していなかったとしても,わいせつ電磁的記録記録媒体陳列ないし公然わい
せつを共同して行う旨の黙示の意思連絡及び相互利用補充関係があったことは
上記のとおりであり,必ずしも具体的な投稿者・配信者や個別具体的な実行行
為まで認識することを要するものではないから,弁護人の当該主張は採用でき
ない。
また,弁護人は,本件各犯行により経済的利益があったとしても,その利益
は動画の投稿者・配信者やC社に帰属するものであり,F社には帰属しないか
ら,被告人らは本件各犯行により何らの利益を得ておらず,共同正犯は成立し
ないとも主張する。
しかし,仮にEの売上げが直接的にはC社に帰属し,F社の利益とは連動し
ておらず,業務委託契約に基づく額が支払われていたとしても,そこから利益
を得ていることは明らかであるし,F社の業務の大半はEに関連するものであ
るため,Eの業務が維持・拡大することは,F社の実質的相談役ないし代表取
締役である被告人らにとっても重要であり,被告人らが本件各犯行において利
益を得ていないとは到底いえない。
そうすると,被告人らが本件各犯行において果たした役割等に鑑みても,共
同正犯の成立を否定する根拠とはならないから,弁護人の当該主張は採用でき
ない。
11弁護人の違法収集証拠の主張について
弁護人らは,検察官請求証拠のうちメール等の電磁的記録に関する証拠には,
その収集過程に令状主義の精神を没却するような重大な違法があり,将来におけ
る違法な捜査の抑制の見地からも相当でないから,違法収集証拠として証拠排除
されるべきであるとも主張している。
しかしながら,平成29年1月20日付け決定書で詳述するとおり,本件各関
係証拠によれば,弁護人が証拠排除を求める証拠(その範囲は同決定書の別紙記
載のとおり)は,いずれも,適法に発付された捜索差押許可状に基づいて差し押
さえたパソコン等の解析結果や,F社の役員や従業員らの任意の承諾に基づきリ
モートアクセスしてメールサーバ等からメール等の電磁的記録をダウンロードし
て収集したもの,任意の承諾に基づき電磁的記録をダウンロードしたパソコン自
体の提出を受けて収集したもの,任意の承諾を得て管理画面等を表示するなどし
てその画面上の表示を検証許可状に基づき検証して写真撮影したものであって,
その収集過程に令状主義の精神を没却するような重大な違法は認められない。
また,弁護人は,サーバ設置国の主権を侵害し,かつ,サーバ管理者の権利・
利益を侵害する重大な違法があるなどとも主張するが,同決定書のとおり,本件
の事実関係においては,サーバ設置国の主権を侵害する重大な違法があるとも,
サーバ管理者の権利・利益を侵害する重大な違法があるとも認められない。
その他の弁護人の主張を踏まえても,違法収集証拠として証拠排除する理由は
ないから,いずれの証拠についても証拠排除しない。
【法令の適用】
被告人両名の判示第1の所為はいずれも刑法60条,175条1項前段に,判示
第2及び第3の各所為はいずれも同法60条,174条にそれぞれ該当するところ,
各所定刑中判示第1の罪については懲役刑及び罰金刑を,判示第2及び第3の各罪
についてはいずれも懲役刑をそれぞれ選択し,以上は同法45条前段の併合罪であ
るから,懲役刑については同法47条本文,10条により最も重い判示第1の罪の
刑に法定の加重をし,その刑期及び所定金額の範囲内で被告人両名をいずれも懲役
2年6月及び罰金250万円に処し,被告人らにおいてその罰金を完納することが
できないときは,同法18条により金1万円を1日に換算した期間その被告人を労
役場に留置することとし,被告人両名に対し,情状により同法25条1項を適用し
てこの裁判が確定した日から4年間それぞれその懲役刑の執行を猶予することとし,
訴訟費用については,刑訴法181条1項本文,182条により被告人両名に連帯
して負担させることとする。
【量刑の理由】
本件は,インターネット上の投稿サイトや配信サイト等をC社と共に管理・運営
するF社の実質的相談役ないし代表取締役を務める被告人らが,C社の代表者と共
に,①投稿者らと共謀して,被告人らがC社と共に管理するサーバコンピュータに,
投稿者が送信した無修正わいせつ動画のデータを記録・保存させるなどし,インタ
ーネット利用者が無修正わいせつ動画を閲覧できる状態を設定したわいせつ電磁的
記録記録媒体陳列1件(判示第1),及び,②各配信者らと共謀して,各配信者ら
が配信サイトの映像配信システムを利用して無修正わいせつ動画を即時配信し,不
特定の視聴者らに観覧させた公然わいせつ2件(判示第2及び第3)からなる事案
である。
わいせつ電磁的記録記録媒体陳列1件において無修正わいせつ動画が投稿された
インターネットサイト(E動画アダルト)や,公然わいせつ2件において無修正わ
いせつ動画が配信されたインターネットサイト(Eライブアダルト)には,相当数
の無修正わいせつ動画を含む投稿・配信がされており,本件各犯行時にも多数の者
が閲覧・観覧していたと認められるところ,被告人らは,共犯者らと共謀して,こ
のように多数の者が閲覧・観覧するインターネット上の投稿サイトや配信サイトに
性交等の場面を撮影した無修正わいせつ動画を投稿・配信し,これらを社会に拡散
させたのであり,本件各犯行により我が国の健全な性的秩序を害した程度は大きい
というほかない。被告人らは,F社の実質的相談役ないし代表取締役として,その
従業員らを指揮・監督し,投稿サイトや配信サイトを管理・運営してきたところ,
これらの投稿サイトや配信サイトにおいて無修正わいせつ動画が相当数投稿・配信
されていることを認識しながら,これに対する措置を講じることなく許容し,むし
ろサイト利用者を増加させ,一部は増収の手段として無修正わいせつ動画を利用し,
本件各犯行に及んだのであるから,その動機に酌量の余地はない。また,本件各犯
行は,投稿サイトや配信サイトを不可欠の前提とするものであり,それを管理・運
営していたF社の実質的相談役ないし代表取締役である被告人らが果たした役割は
大きいというほかなく,強い非難に値する。
そうすると,被告人らの刑事責任は重いというべきであるし,この種事犯が経済
的に引き合わないことを実感させる必要がある。
もっとも,被告人らには前科前歴がないことなど,被告人らのために酌むべき事
情も認められるので,被告人らに対しては,主文の懲役刑及び罰金刑を科した上,
その懲役刑についてはその執行を猶予し,社会内で更生する機会を与えるのが相当
であると判断した。
(求刑被告人両名につきそれぞれ懲役2年6月及び罰金250万円)
平成29年3月24日
京都地方裁判所第3刑事部
裁判長裁判官中川綾子
裁判官御山真理子
裁判官和田崇寛

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛