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平成15年4月8日判決言渡
平成14年(ハ)第13095号 敷金返還請求事件
           主      文
  1 被告は,原告に対し,金40万円及びこれに対する平成13年12月27
日から支払済みまで年6パーセントの割合によ   る金員を支払え。
  2 訴訟費用は被告の負担とする。
  3 この判決は,第1項に限り仮に執行することができる。
           事実及び理由
第1 請   求
   主文と同旨
第2 請求の原因
   (主位的主張)
    別紙「請求の原因」記載のとおり
   (予備的主張)
    訴外A株式会社は,原告に本件の240万円の敷金返還請求債権を譲渡
し,被告はこの譲渡について,平成11年7月3   1日異議を留めない承諾を
した。従って,被告は,敷金として受領した累計額が200万円であって240万
円ではないと   の事由をもって原告に対抗することはできない。
第3 詰求の原因に対する被告の主張,抗弁
 (1) 寄託された敷金の額は240万円ではなく200万円である。A社が平
成2年4月ころ被告に金40万円を敷金として   追加寄託したとする事実はな
い。被告は,敷金を受託したときは,常に「預り証」を発行しているから,被告は
原告に対    し,「預り証」と引き換えの支払いを要求したが,原告からこの
提示がない。
 (2) 原告主張の地位承継契約書等に敷金240万円の記載があるが,これら
は追加敷金40万円が預託されたものと勘違い   して作成されたものであり,
40万円が入金されていないと知っていたならば当然債権譲渡につき異議を留めて
いたもので   あり,被告のかかる承諾は錯誤によるものである。
 (3) A社と原告は,法人格は違えども商号も類似しており,A社の代表者代
表取締役は原告の取締役を兼任している。かか   る実体に着目すれば両者は一
体と見ることができ両者間に債権の譲渡があったとしても民法468条1項本文の
適用を受け   る債権譲渡とはいえない。
 (4) 原告は本件敷金のうち40万円について被告に入金していないことを,
本件債権譲渡のときに知っていた悪意の譲受人   である。
第4 抗弁に対する原告の主張,再抗弁
 (1) 被告主張の入金のないのに債権譲渡の承諾をしたのは錯誤によると主張
するが,被告はその経理帳簿に入金記録がない   ことを容易に
    調査して承認行為をしないことができたはずであり,これを怠ってなした
被告の異議なき承認行為をした被告には民法9   5条ただし書の重大な過失が
あり,錯誤無効の主張をすることはできない。
 (2) 原告は,平成11.年7月31日付けで本件の敷金返還請求権を    
A社より譲り受けるに際して,A社より被告   を貸主とし,A社を借主とする
本件建物の賃貸契約書を見せられて,本件敷金は240万円であると信じた。
第5 理   由
    請求の原因1,2,3(イ),4,5(ただし敷金の額を除く),6及び7の2
00万円を返還した事実については当事者間   に争いはない。
    証拠及び弁論の全趣旨によれば,A社が平成2年4月に金40万円を被告
に敷金の追加として預託した事実を認めるに足   る証拠はない。従って,A社
が被告に預託した金額200万円は既に被告が返還してあるから原告の主位的主張
は理由がな   い。
    次に,原告の予備的主張につき検討する。
    請求の原因4の事実については,当事者間に争いがなく,敷金返還請求権
の債権譲渡につき,なんらの留保なしに敷金額   240万円の記載のある地位
承継契約書(甲1)に署名押印したことにより,被告は異議なく承諾した事実が認
められる。
    被告は,上記の異議なく承諾したのは,被告の担当者が,預託された金額は
200万円であったところ240万円である   と勘違いして承諾したものであ
り,まさに錯誤によりなされたものであるから承諾は無効であると主張するが,上記
承諾が   錯誤によるものであるとしても,証拠によれば,被告には上記第4
(1)の重大な過失が認められるから,被告のこの主張   は理由がない。従っ
て,被告が本件敷金返還請求権の譲渡につき,異議を留めないでなした承諾は有効
であると解するのが   相当である。してみれば,本件敷金返還請求権の内容で
ある敷金の額は地位承継契約書(甲1)記載の金240万円である   ことを被
告は争えないことになると解されるから,被告は原告に対し,返還分を除く金40
万円について返還義務を負うも   のと解される。
    被告は,A社と原告は実体上一体であり,本件敷金返還請求権の譲渡はな
いと主張するが,商号の類似性及び会社役員の   兼任の存在のみで本件敷金債
権の譲渡が民法468条1項本文の適用を受ける債権譲渡とは言えないと認めるこ
とは相当で   ないと解され,また,A社が追加敷金40万円の入金がないこと
につき,悪意であったことを認めるに足る証拠はない。
    以上のとおり,原告の予備的主張は理由がある。よって,主文のと
   おり判決する。 
     東京簡易裁判所民事第5室
           裁 判 官   山  崎  松  三
(別紙)
 請求の原因
 1 原告は建築資材の販売を業とする株式会社であり,A社は建築資材の販売を
業とする株式会社であった。被告は貸倉庫を業  とする合資会社である。
 2 A社は、昭和53年8月,被告より別紙物件目録記載の建物(本件建物)を
次の約定等で借受けて引渡を受け,そのころ,  敷金80万円を被告に寄託し
た。
   敷金の返還時期被告はA社より本件建物の返還を受けた後,速やかにA社に
敷金を返還する。
   賃料の額不詳
   賃貸借の期間契約日から2年間
 3 A社は、本件建物の賃料の増額に伴って、被告に対し次のとおり敷金を追加
して寄託し、その敷金としての寄託金の合計額  は前項記載の80万円と合わせ
て金240万円である(甲3の「その他」の欄)。
     (イ)昭和63年6月に120万円
     (口)平成2年4月に40万円
 4 原告は,平成11年7月31日,被告の承諾のもとにA社より本件建物の借
主たる地位を承継し,もって被告に対する敷金  返還請求権の債権者たる地位も
承継した((甲1の第3条)。
 5 原告は,平成12年5月ころ,被告との間で本件建物の賃貸借契約を次の内
容等で更新して契約した(甲2)。
  賃料       月額82万円
  賃貸借の期間   平成12年6月1日より平成14年5月31日まで
  敷金       240万円を寄証済み
  敷金の返還時期  被告は原告より本件建物の返還を受けた後,速やかに原告
に敷金を返還する。
   原告と被告は、平成13年11月20日,本件建物の賃貸借契約を同月30
日付で解約する旨合意し,原告は,同月30   日,被告に対し本件  建物を
明渡した。
   しかるに,被告は,本件建物の賃貸借契約の敷金240万円のうち,
  金200万円を平成13年12月27日に返還したのみで残金40万円を返還
しない。
   よって,原告は被告に対し,敷金の返還請求権にもとづく金40万円及びこ
れに対する本件建物明渡日より相当な期間を経  過した日である平成13年12
月27日より支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求
める。
 
         物 件 目 録
   所在地    海老名市b番地
   構造     鉄骨造り,スレート葺,角波鉄板張,平屋建倉庫
   床面積    200坪
   付帯設備   事務所 25坪 木造中2階 37坪 鉄骨造り
                             以上

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