弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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            主         文
1 本件訴えを却下する。
 2 訴訟費用は原告の負担とする。
            事実及び理由
第1 請求
  被告が,平成13年5月9日豊明市告示第38号をもって豊明市道沓掛北17
7号(路線番号1274)についてした市道区域変更処分が無効であることを確認
する。
第2 事案の概要
本件は,被告が前掲の市道区域変更処分をしたのに対し,その処分に係る道路
に接していた土地を競売によって取得した原告が,同処分は実体的,手続的要件を
欠く無効なものであると主張して,その確認を求めた抗告訴訟である。
 1 前提事実(当事者間に争いのない事実等)
(1) 別紙物件目録2記載の各土地(地目は境内地)は,宗教法人であるaの所有地
であり(甲3の1,2),従前,別紙図面1のとおり,被告によってその全体が豊
明市道沓掛北177号(路線番号1274。以下「本件市道」という。)に指定さ
れていた。
本件市道は,aの神社施設に通じる参拝用道路として使用されており(甲1),そ
の中央部分はアスファルト舗装がなされ,両側には桜並木が植えられている(乙1
の1ないし8,2の1ないし4)。
(2) 被告は,平成13年5月9日豊明市告示第38号をもって,本件市道の区域を
アスファルト舗装に合わせる変更処分を行い(以下「本件処分」という。),その
結果,本件市道の形態は,別紙図面2のとおり,その大部分において幅員が狭まる
こととなった。
(3) 別紙物件目録1記載の各土地(以下「本件土地」という。)は,従前は本件市
道に接していたが,本件処分によって本件市道の幅員が狭まったことから,その間
に,市道の区域から外されたaの所有に係る土地が介在することとなった。
(4) 名古屋地方裁判所は,平成11年5月21日,b信用金庫の申立てにより,本
件土地につき競売開始決定をなした。原告は,平成13年11月12日,本件土地
を競落し,代金を納付してその所有権を取得した(甲2の1,2)。
 2 本件の争点及び争点についての当事者の主張
(1) 本案前の争点その1-処分性の有無
(原告の主張)
処分性に関する判例の見解は,国民の権利救済に欠ける結果を生じさせる場合があ
るので,近時の行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)の改正論議において処
分性を拡大する方向で検討されているが,判例の見解に従ったとしても,本件処分
は行訴法3条にいう処分に該当する。
すなわち,道路の区域とは,道路を構成する敷地の幅及び長さによって示される平
面的区域であって,これにより道路法が適用される土地の範囲が画されることとな
る。したがって,道路区域の変更処分による道路の範囲の変更に伴って私権に対す
る制限の範囲も変更されるから,その処分は,直接国民の権利義務を形成し,その
範囲を確定する性質を有するというべきであり,本件処分は上記処分に該当する。
 (被告の主張)
行訴法3条にいう処分とは,公権力の主体たる国又は地方公共団体が行う行為のう
ち,これによって直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法
律上認められているものをいうところ,本件処分は,従来の道路区域の一部につ
き,その制限を解除するものにすぎない上,道路廃止処分と異なって,処分後も一
般公衆は従前と同様に利用できるから,国民の権利義務に影響するものとはいえな
い。
(2) 本案前の争点その2-原告適格の有無
 (原告の主張)
原告適格についても,近時の行訴法の改正論議においては,これを拡大する方向で
検討されているが,その点はさておくとしても,法36条にいう「法律上の利益を
有する者」とは,判例も示すように,「当該処分により自己の権利若しくは法律上
保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をい」い,
「当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中
に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを
保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,かかる利益も上記の法律上
保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害される
おそれのある者は,当該処分の取消訴訟・無効確認訴訟における原告適格を有す
る」というべきである(
いわゆる法律上保護された利益説)。
しかして,原告は,本件市道に接していた本件土地の所有者であり,以下のとお
り,本件処分によって,単に反射的利益にとどまらない個別具体的に保護された権
利・利益を奪われているから,処分により権利が侵害又は必然的に侵害されるおそ
れのある者として,本件訴えにつき原告適格を有するといわねばならない。
ア 給排水工事,ガス管埋設工事,雨水排水工事(側溝開設工事)等に関する不利

本件処分前のように本件土地が本件市道に接しておれば,原告は,所有者であるa
の同意を得なくとも,その管理者である被告の承認を受けて,給排水工事,ガス管
埋設工事,雨水排水工事(側溝開設工事)等の工事を行うことが可能であり(ある
いは,被告によって工事を行ってもらえる。),かつ,この工事の承認は,一定の
基準を満たすことによって当然に得られるものであった。これは,道路法の適用対
象とされた土地については,その所有者の私権が制限を受け(道路法4条),道路
管理者がその管理を行うとされていることによるものである。
しかるに,本件処分により,本件土地と本件市道との間にa所有の土地が介在する
ことになったため,原告が本件土地について上記工事を行うためにはaの同意が必
要となり,その結果,住宅を建て替えることが著しく困難となった。
イ 車両乗入れに関する不利益
本件処分前は,本件土地が本件市道に接していたため,原告は,本件土地のどの場
所に駐車場を設置して本件市道に乗り入れるかを自由に決定することができた。と
ころが,本件処分により,本件土地と本件市道との間にa所有の土地が介在するこ
とになったため,原告は,aの同意がなければ本件市道に車両を乗り入れることが
できなくなった。現に,aは,本件土地の南側4メートルの範囲でしか車両の通行
を認めない旨明言している。現代において,所有地に自由に車両を乗り入れること
ができないことが,著しい権利の制限に当たることはいうまでもない。
ウ 道路管理がなされないことによる不利益
本件処分前は,被告が道路管理者として本件市道の両側に存在する桜並木に対して
管理権を有していたところ,本件処分によって,その敷地部分が被告による管理の
対象から外されたことから,桜の木の管理が不十分となり,その枝が本件土地に大
きく侵入したり,多数の落葉が本件土地上の建物の上に落下するなどの弊害が生じ
ている。
エ 建替え,売却に関する不利益
被告は,本件処分によって本件市道から外された土地についても建築基準法42条
1項3号の既存道路として扱われる旨主張するが,同号は,基準時当時自然発生的
に形成され,道路法の適用されない私道を対象とし,かつ現に道路法上の道路部分
だけで幅員4メートル以上ある道を同法上の道路として扱う趣旨であるところ,本
件処分によって,本件市道がこの要件を充足しなくなったことにより,本件土地が
同法43条規定の接道義務を満たしていないと評価される可能性が高くなったとい
えるから,本件土地における建物の新築及び増築が著しく困難となり,かつ本件土
地を売却することにも著しい支障が生じているというべきである。
 (被告の主張)
処分の無効確認の訴えは,当該処分の無効確認を求めるにつき法律上の利益を有す
る者でなければ提起することができない(法36条)ところ,道路の使用によって
享受する利益は,一般公衆に権利としてその使用権が与えられていないことや,そ
の使用が法律上保護されているものでないことに照らすと,いわゆる反射的利益に
すぎないというべきであるから,例えば,当該道路によって個別的具体的な利益を
受けていて,その廃止処分によって生活に著しい支障が生じるというような特段の
事情を有する者でない限り,当該処分の無効確認を求めるにつき法律上の利益を有
する者には当たらず,無効確認処分の原告適格を有しないというべきである。
しかして,原告は,本件処分時には本件土地の所有者ですらなく,本件処分後に,
それが有効であることを前提として行われた競売手続によって本件道路を競落した
ものにすぎないから,そもそも当該道路によって個別具体的な利益を受けていたも
のでない上,以下のとおり,本件処分によって,その生活に著しい支障が生じると
いう特段の事情を有する者でもない。
ア 給排水工事,ガス管埋設工事,雨水排水工事(側溝開設工事)等に関する不利
益について
原告は,本件処分によって,上記工事を行うためにaの承諾を得ることが必要とな
った旨主張するが,本件市道はもともとaの所有地であるから,本件処分前といえ
ども,上記工事を行うためにはaの同意が必要であることに変わりはない。むし
ろ,本件処分前においては,所有者であるaと管理者である被告の両者の承諾が必
要であったところ,本件処分によって,被告の承諾が不要となったにすぎない。
イ 車両乗入れに関する不利益について
もともと,本件市道の両側には,a所有に係る桜並木が存在し,これを除去しなけ
れば,原告が主張するような本件土地への自由な出入りは不可能であったものであ
る。そして,本件処分前も現在も,桜並木の間に3か所の出入口が設置され,通常
の出入りには全く支障がなかった。原告は,それにもかかわらず,本件土地を2分
割して分譲するとの計画の下に,新たに2か所の出入口と駐車場を設置すべく,桜
並木を除去することをaに申し入れたところ,これを拒否されたにすぎない。
ウ 道路管理がなされないことによる不利益について
桜並木はaの所有物であり,本件処分前であっても,被告の管理権が及ばないもの
であった。したがって,その枝が本件土地上に張り出しているとしても,相隣関係
の規定等に従って,原告とaとの間で解決すべき問題にすぎない。
エ 建替え,売却に関する不利益について
本件処分によって市道の範囲から外れたa所有の土地も,建築基準法42条1項3
号の既存道路として扱われるから,本件土地は同法43条の接道義務を満たしてい
る。したがって,原告が建替えを行うについて著しい支障はない。そもそも,原告
は,これらの事情を承知の上で本件土地を取得したものであるから,その生活に著
しい支障が生ずることはあり得ない。
また,本件処分は,本件土地の売却に何らの規制を及ぼすものではなく,仮に本件
処分前と比較して売却代金が高価に設定できないとしても,原告は,そのような評
価の下に行われた競売手続において本件土地を競落したのであるから,かかる結果
を甘受すべきは当然である。
(3) 本案の争点その1-道路区域変更上の実体的要件具備の有無
 (原告の主張)
  道路区域の変更は,行政庁の自由な裁量によってなされるものではなく,原則
として,「道路を構成する敷地の幅及び長さなど平面的区域に変更が生じる場合又
は生じたとき」に行われるべきものであるところ,本件では,本件市道の平面的区
域に何らの変更が生じておらず,また本件市道を一般の交通の用に供する必要がな
くなったわけでもないにもかかわらず,「本件土地にて不動産開発を計画している
業者が来て迷惑である。従来は本件道路を使用してもらってかまわないと考えてい
たが,今後は市の方で対応して欲しい。」とのaの一方的な申入れを受けて道路の
区域変更がなされたものである。よって,本件処分は,その実体的要件を欠くもの
として,明白かつ重大な違法事由が存し,無効である。
 (被告の主張)
道路区域の変更処分は行政庁の裁量的行為であって,道路の平面的区域に物理的・
客観的な現況の変化が生じた場合のみに許されるものではなく,諸般の事情を考慮
の上,行政上の判断によって行うことができる。このことは,道路区域変更処分を
定めた道路法18条1項に,その実体的要件が定められていないことからも明らか
である。
(4) 本案の争点その2-道路区域変更上の手続的要件具備の有無
 (原告の主張)
本件処分に際しては,あらかじめ市議会の議決を経なければならないところ(道路
法10条3項,8条1項,2項),被告は,本件処分に当たり豊明市議会の議決を
経ておらず,道路区域変更の手続的要件を欠いており,違法である。
また,道路区域の変更処分は,これに接している土地の所有者はもちろんのこと,
これを利用している関係人等の権利に多大な影響を与えるため,道路管理者は,明
確な基準を設け,これに従って運用するとともに,当該関係人の意見聴取等の機会
を設けるのが通常である。ところが,本件処分は,被告が道路認定をする際の基準
である「幅員4メートル以上であること」を満たさないものである上,隣地所有者
や関係者との協議を行い又はその同意を得るなどの手続を踏むことなく,aからの
一方的な申入れを受けてなされたものである。
さらに,本件処分は,道路区域とそれ以外の部分とを分筆することなくなされてお
り,変更後の道路区域の範囲は不明確というほかない。
このように,本件処分は,手続上の違法も著しいので,無効というべきである。
 (被告の主張)
本件処分は,道路法18条1項に基づくものであり,市議会の議決を要しない。ま
た,道路管理者がこれに関する基準を設けていたとしても,内部的なものにすぎ
ず,法的規範性を有するものではない。
第3 当裁判所の判断
1 処分性の有無について
本件処分が抗告訴訟の対象となるか否かについて判断するに,行訴法3条2項は,
処分の取消しの訴えの対象を「処分」すなわち「行政庁の処分その他公権力の行使
に当たる行為」と規定し,同条4項はこれを無効確認の訴えの対象としても規定し
ているところ,ここでいう「公権力の行使」とは,公権力の主体たる国又は地方公
共団体が行う行為のうち,優越的な意思の発動として,直接国民の権利義務を形成
し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものを指すと解される
(最高裁判所昭和30年2月24日第一小法廷判決・民集9巻2号217頁,同裁
判所昭和39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照)。
ところで,道路法上の道路においては,その敷地,支壁その他の物件について私権
を行使することが許されず(同法4条),その管理権は道路管理者に属する(13
条,15ないし17条)こととなって,所有権を有する者であっても,これを占用
するについては道路管理者の許可を要し(32条),道路の効用を害する行為は禁
止され(43条),道路管理者の判断によって通行を禁止又は制限されることがあ
る(46条)などの規制を受けることが定められている。そして,これらの規制の
及ぶ具体的範囲は,一般には,路線指定又は路線認定若しくはその変更の処分(い
わば道路の縦の範囲を定める処分)と,道路区域の決定処分(いわば道路の横の範
囲を定める処分)の両者によって定められる(18条1項)から,本件処分のよう
な道路区域変更処分
は,上記の具体的範囲を変更するものである。したがって,直接国民の権利義務を
形成し,又はその範囲を確定するとの性質を有することが明らかであるから,処分
性を肯定するのが相当である。
この点につき,被告は,本件処分は,従来の道路区域の一部につき,その制限を解
除するものにすぎない上,処分後も一般公衆は従前と同様に利用できるから,国民
の権利義務に影響するものとはいえない旨主張するが,前記処分性を有するか否か
は,当該処分の一般的,客観的性格を定型的に把握して判断すべきものであり,具
体的事例において有利な法的効果をもたらすからといって,処分性を否定すべきも
のではないから,上記主張を採用することはできない。
2 原告適格の有無について
(1) 行訴法36条は,無効確認の訴えを提起するのは,これを求めるにつき「法律
上の利益を有する者」に限って認められる旨規定している。ところで,本件処分の
ように,ある行政処分によって,不特定多数者に影響を及ぼすことが考えられる場
合に,これらの者が上記の法律上の利益を有する者に当たるか否かの判断は,その
処分の根拠となった行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中
に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを
保護すべきものとする趣旨を含むか否かにかかっていると解すべきであり,かつ当
該行政法規が,不特定多数者の具体的利益をそれが帰属する個々人の個別的利益と
しても保護すべきものとする趣旨を含むか否かは,当該行政法規の趣旨・目的,当
該行政法規が当該処
分を通して保護しようとしている利益の内容・性質等を考慮して決すべきものであ
る(最高裁判所昭和53年3月14日第三小法廷判決・民集32巻2号211頁,
同裁判所昭和57年9月9日第一小法廷判決・民集36巻9号1679頁,同裁判
所平成元年2月17日第二小法廷判決・民集43巻2号56頁,同裁判所平成4年
9月22日第三小法廷判決・民集46巻6号571頁等参照)。
(2) しかるところ,道路のような公共用物は,一般に管理者がこれを公共の用に供
していることの反射的利益として,一般公衆においてこれを利用する自由を享有す
るにすぎないと考えられるところ,現に,本件処分の根拠法令である道路法1条
は,「この法律は,道路網の整備を図るため,・・・に関する事項を定め,もって
交通の発達に寄与し,公共の福祉を増進することを目的とする。」と規定し,同法
の主たる目的が,道路網の整備を図ることによって,交通の発達に寄与するという
一般的公益の実現にあることを宣言していると考えられる。
また,本件処分の直接の根拠条文である同法18条1項は,「・・・道路を管理す
る者は,・・・遅滞なく,道路の区域を決定して,・・・これを公示し,かつ,こ
れを表示した図面を・・・一般の縦覧に供しなければならない。道路の区域を変更
した場合においても,同様とする。」と規定し,道路法所定の他の処分と同様,公
示や一般の縦覧という手続を要求している。これは,道路は不特定多数者が利用し
得るものであり,道路を対象とする処分によって,これらの者に影響を与えること
があり得るため,その内容を公に明らかにしようとする趣旨によるものと考えられ
るが,同法には,それ以外に,近隣居住者や利用者に対する意見聴取や,その同意
を要件とするといったような,不特定多数者の利益に直接配慮する趣旨の規定は何
ら存しない。
もっとも,同法96条2項は,「道路管理者が・・・した処分に不服がある者」
は,不服審査の申立てができる旨規定し,特にこれをなし得る資格を限定する表現
は採られていないが,これらの制度が「簡易迅速な手続による国民の権利利益の救
済を図るとともに,行政の適正な運営を確保することを目的とする(行政不服審査
法1条1項参照)」以上,上記不服審査の申立てをなし得る者は,当該処分につき
原告適格を有する者に限られるのは当然である。道路法96条2項は,同条1項所
定の処分以外の処分に限って審査請求と異議申立てができること,審査請求の相手
方は,都道府県がした処分については国土交通大臣,市町村がした処分については
都道府県知事であることを明らかにしたにすぎないと解されるので,これをもっ
て,処分に不服がある者
すべてが原告適格を有すると解する根拠とすることはできない。
そうすると,上記の各規定は,道路の敷地所有者のように道路の区域変更処分によ
って直接その権利・利益に影響を受けることが明らかな者であればともかく,単な
る道路の利用者等の不特定多数者の原告適格を基礎づけるものではないというべき
である。
(3) もっとも,上記のとおり,道路法が,敷地所有者以外の不特定多数者の権利・
利益を個別的利益として保護する趣旨と解し得る明文の規定を置いていないとして
も,当該道路が,特定個人の日常生活に個別性の強い具体的利益をもたらしてい
て,当該処分によって日常生活上の著しい支障が生ずるという特段の事情が存する
場合には,そのような者に救済の途を開かないことが公共の福祉に反することは明
らかであるから,例外的に原告適格を肯定するのが相当である(最高裁判所昭和6
2年11月24日第三小法廷判決・集民152号247頁参照)。
この点,原告は,前記のとおり,本件処分による著しい支障として,①給排水工
事,ガス管埋設工事,雨水排水工事(側溝開設工事)等に関する不利益,②車両乗
入れに関する不利益,③道路管理がなされないことによる不利益,④建替え,売却
に関する不利益を主張しているから,これらが日常生活上の著しい支障といい得る
か否かという点について判断するに,まず,①の不利益については,本件処分前の
ように,本件土地が本件市道に接していたとしても,本件市道がaの所有地である
以上,原告が上記工事等を行うためには,その承諾を得る必要があることに変わり
はない(原告は,道路法4条を根拠に,あたかもaの承諾が必要でないかのように
主張するが,同条によって私権の行使に制約を受けるのは,当該土地が道路として
の機能を保持すべく,
その管理者の管理の対象となるからであって,これを超えて,隣接地の所有者が上
記工事等のために自由に利用できるものでないことは自明のことである。)から,
本件処分によって,原告に日常生活上の著しい支障が生じたと認めることはできな
い。
次に,②の不利益について検討するに,なるほど,本件処分によって,本件土地と
本件市道との間に市道に含まれないa所有の土地が介在することになったことか
ら,原告が本件土地から本件市道に出入りすることが当然に許されるものではなく
なったといわねばならない。しかしながら,本件処分によって本件土地が袋地とな
った以上,原告は,上記a所有地につき,囲繞地通行権を有するというべきである
(民法210条)上,現にa自身,本件土地の南側3ないし4メートルの範囲で無
償で車両の通行を認める意思を表明していることが認められる(乙4の2)から,
これをもって日常生活上の著しい支障を生じたものと認めることは困難である。
続いて③の不利益について検討するに,a所有に係る桜並木の枝が,原告主張のよ
うに本件土地上に越境し,落葉が本件土地上の建物上に落下するなどの事態となっ
ているとしても,これによってどの程度の日常生活上の支障が生じているのか,甚
だ疑わしい上,仮に軽視すべからざる事態であるとしても,原告はaにその剪除を
請求することができる(民法233条1項)から,これをもって上記の特段の事情
と評価すべき日常生活上の著しい支障とすることは到底認め難い。
最後に,④の不利益について判断するに,建築基準法42条1項は,同法上の道路
について規定し,その3号は,「この章の規定が適用されるに至った際現に存在す
る道」,いわゆる既存道路を挙げているところ,弁論の全趣旨によれば,本件処分
によって市道の範囲から外れたa所有の土地がこれに該当することが認められる
(原告は,同号を適用するためには,基準時当時自然発生的に形成された,道路法
上の道路ではない私道であること及び現に道路法上の道路部分だけで幅員4メート
ル以上あることが必要である旨主張するが,同号は,基準時において現実に道路と
しての実体を備え,かつその幅員が4メートル以上あれば,公道,私道の別を問わ
ず,適用されるべきものである。)ので,本件土地は,同法43条の接道義務を満
たしているというべき
である。したがって,この点についても,本件処分によって原告に日常生活上の著
しい支障が生ずると認めることはできない。
なお,原告が主張するとおり,本件処分が本件土地の客観的交換価値に減価要因と
して影響する可能性は否定できないが,このような経済的要因は,基本的には上記
の日常生活上の著しい支障に当たらないというべきであるし,そもそも原告は,本
件処分の存在を承知の上で,かつそれを斟酌して設定された最低売却価格の下で,
本件土地を競落,取得したものと認められる(甲4及び弁論の全趣旨)から,この
点をもって上記の特段の事情を肯定することは相当でない。
(4) 以上のとおり,本件処分によって被ると原告が主張する不利益は,いずれも上
記の特段の事情と評価すべき日常生活上の著しい支障に当たらないものであるか
ら,原告は,本件訴えを提起するにつき原告適格を有しないといわざるを得ない。
3 結論
よって,本件訴えは不適法であるから,これを却下することとし,訴訟費用
の負担につき行訴法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。
名古屋地方裁判所民事第9部
裁判長裁判官    加   藤    幸   雄
裁判官舟   橋    恭   子
裁判官小   嶋    宏   幸

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