弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1被告は,被告補助参加人改革ネット・自民に対し,658万9635円を支
払うよう請求せよ。
2被告は,被告補助参加人民主クラブ仙台に対し,221万6453円を支払
うよう請求せよ。
3被告は,被告補助参加人きぼうに対し,411万8950円を支払うよう請
求せよ。
4被告は,被告補助参加人公明党仙台市議団に対し,475万5227円を支
払うよう請求せよ。
5被告は,被告補助参加人社民党仙台市議団に対し,358万4388円を支
払うよう請求せよ。
6原告のその余の請求をいずれも棄却する。
7訴訟費用は,これを10分して,その3を原告の負担,その余を被告の負担
とし,被告補助参加人改革ネット・自民の補助参加によって生じた費用は,こ
れを5分して,その2を原告の負担,その余を同補助参加人の負担とし,被告
補助参加人民主クラブ仙台の補助参加によって生じた費用は,これを5分して,
その1を原告の負担,その余を同補助参加人の負担とし,被告補助参加人きぼ
うの補助参加によって生じた費用は,これを5分して,その1を原告の負担,
その余を同補助参加人の負担とし,被告補助参加人公明党仙台市議団の補助参
加によって生じた費用は,これを5分して,その1を原告の負担,その余を同
補助参加人の負担とし,被告補助参加人社民党仙台市議団の補助参加によって
生じた費用は,これを10分して,その1を原告の負担,その余を同補助参加
人の負担とする。
事実及び理由
【目次】
第1請求・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3頁
第2事案の概要等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3頁
1前提事実等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4頁
2関係法令等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5頁
3争点及び争点に関する当事者等の主張・・・・・・・・・・・・・・7頁
第3当裁判所の判断
1総論
(1)政務調査費の支出の違法性に係る主張立証責任等について・・12頁
(2)経費を按分して政務調査費から支出することについて・・・・14頁
(3)調査研究活動に要する旅費の支出について・・・・・・・・・15頁
2各論
(1)被告補助参加人改革ネット・自民・・・・・・・・・・・・・18頁
(2)被告補助参加人民主クラブ仙台・・・・・・・・・・・・・・63頁
(3)被告補助参加人きぼう・・・・・・・・・・・・・・・・・・79頁
(4)被告補助参加人公明党仙台市議団・・・・・・・・・・・・・94頁
(5)被告補助参加人社民党仙台市議団・・・・・・・・・・・・109頁
3各会派の不当利得の額・・・・・・・・・・・・・・・・・・・128頁
4附帯請求について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・129頁
第4結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・129頁
(別紙1)当事者目録・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・131頁
(別紙2)交付額等一覧表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・134頁
(別紙3)平成20年度仙台市議会政務調査費の支出一覧・・・・・・・135頁
(別紙4)関係法令等の定め・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・176頁
(別紙5)主張整理表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・183頁
(別紙6)A11議員の出張一覧・・・・・・・・・・・・・・・・・・201頁
第1請求
1被告は,被告補助参加人改革ネット・自民に対し,1131万6297円及
びこれに対する平成21年5月16日から支払済みまで年5分の割合による金
員を支払うよう請求せよ。
2被告は,被告補助参加人民主クラブ仙台に対し,272万4669円及びこ
れに対する平成21年5月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を
支払うよう請求せよ。
3被告は,被告補助参加人きぼうに対し,522万0526円及びこれに対す
る平成21年5月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよ
う請求せよ。
4被告は,被告補助参加人公明党仙台市議団に対し,567万1986円及び
これに対する平成21年5月16日から支払済みまで年5分の割合による金員
を支払うよう請求せよ。
5被告は,被告補助参加人社民党仙台市議団に対し,396万2102円及び
これに対する平成21年5月16日から支払済みまで年5分の割合による金員
を支払うよう請求せよ。
第2事案の概要等
本件は,地方行財政の不正を監視・是正すること等を目的として結成された
権利能力なき社団である原告が,仙台市議会の会派である被告補助参加人らに
おいて,仙台市から交付を受けた平成20年度分の政務調査費の一部を違法に
支出し,これを不当に利得したと主張して,地方自治法(平成24年法律第7
2号による改正前のもの。以下「法」という。)242条の2第1項4号に基
づき,仙台市長である被告に対し,被告補助参加人らに対して違法に支出した
政務調査費相当額の金員の返還及びこれに対する平成21年5月16日から支
払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求するよう求
める住民訴訟である。
1前提事実等(争いがない事実,当事者が争うことを明らかにしない事実及び
当裁判所に顕著な事実については特に根拠を明記しない。)
(1)当事者等
ア原告は,地方行財政の不正を監視・是正すること等を目的として結成さ
れた権利能力なき社団である。
イ被告は,仙台市の執行機関である。
ウ被告補助参加人らは,いずれも,仙台市議会議員によって構成された権
利能力なき社団である。
(2)平成20年度分政務調査費の支出等
ア被告補助参加人らは,法100条14項及び仙台市政務調査費の交付に
関する条例(平成13年仙台市条例第33号。平成22年仙台市条例4
4号による改正前のもの。以下「本件条例」という。)2条に基づき,
仙台市から,平成20年度分の政務調査費として,別紙2「交付額等一
覧表」の「交付額」記載の各金額の交付を受け,同別紙の「支出額」の
とおり支出した(自主返還分を除く。)。(以上につき甲2の1)
イ上記アの「支出額」には,別紙3「平成20年度仙台市議会政務調査費
の支出一覧」の「支払額」欄又は「金額」欄に記載された各支出(ただし,
同別紙の「3.きぼう」の「資料作成費内訳(会派)」の№5の支出額は,
8万2094円ではなく3万2094円であった。)が含まれており,原
告は,本件訴えにおいて,上記各支出(以下「本件政務調査費の支出」と
いう。)のうち同別紙の「違法支出額」欄記載の金額の各支出が違法であ
ると主張している。
(3)本件訴えに至る経緯
ア原告は,平成22年3月30日,仙台市監査委員(以下「監査委員」と
いう。)に対し,平成20年度における仙台市議会各会派の政務調査費か
らの支出に違法不当な点が多数存在するとして,別紙2「交付額等一覧
表」の「監査請求額」記載の金額について住民監査請求を行った。
監査委員は,平成22年5月26日,上記監査請求について一部を認め,
被告に対し,別紙2「交付額等一覧表」の「勧告額」記載の金額の返還を
求める措置を講じるよう勧告し,その余の請求を棄却した。(以上につき
甲1,2の1)
イ原告は,同年6月25日,上記監査請求を棄却された支出の一部につき,
その違法を主張して,被告に対する本件訴えを提起した。
2関係法令等
(1)仙台市における政務調査費の交付に関する規定等
ア法は,普通地方公共団体が,条例の定めるところにより,議員の調査研
究に資するため必要な経費の一部として,その議会における会派又は議員
に対し,政務調査費を交付することができる旨規定し,当該政務調査費の
交付の対象,額及び交付の方法については条例の定めに委ねている(10
0条14項)。
イ本件条例は,法100条14項を受けて制定され,政務調査費を市議会
における会派に対して交付する旨(2条)や収支状況報告書等の提出義務
(9条)などを定めており,具体的な使途基準については規則に委ね,会
派は政務調査費を必要経費以外に充ててはならない旨を定めている(5
条)。
ウ仙台市政務調査費の交付に関する条例施行規則(平成13年仙台市規則
第32号。平成23年8月改正前のもの。以下「本件規則」という。)は,
本件条例の施行に関し必要な事項を定めており,本件条例5条に基づき,
次のとおり,政務調査費の使途基準(以下「本件使途基準」という。)を
規定している(2条)。
(ア)調査研究費市政に関する調査研究活動及び調査委託等に要する経
費(1号)。
(イ)研修費研修会,講演会等の実施に要する経費及び各種団体が開催
する研修会,講演会等への所属議員等の参加に要する経費(2号)。
(ウ)資料作成費調査研究活動に必要な資料等の作成に要する経費(4
号)。
(エ)資料購入費調査研究活動のために必要な図書,資料等の購入に要
する経費(5号)。
(オ)広報広聴費議会活動及び市政に関する政策等の広報及び広聴活動
に要する経費(6号)。
(カ)人件費調査研究活動を補助する者の雇用に要する経費(7号)。
(キ)事務所費調査研究活動のための事務所の設置及び管理に要する経
費(8号)。
(ク)事務費調査研究活動に要する事務経費(9号)。
(ケ)その他の経費前各号に掲げるもののほか会派が必要と認めた調査
研究活動に要する経費(10号)。
エ仙台市政務調査費の交付に関する要綱(平成13年3月27日議長決裁。
平成23年8月改正前のもの。以下「本件要綱」という。)は,仙台市議
会議長により制定され,本件条例の施行に関し必要な事項を定め,政務調
査費の対象外となる経費(2条)や,調査研究活動に要する旅費の支出
(7条)等について規定している。
オ仙台市議会は,平成20年4月,全会派で構成する政務調査費に関する
条例等整備会議における全議員の申合せとして,政務調査費取扱い手引書
(仙台市議会平成20年4月。平成23年8月改訂前のもの。以下「本件
手引書」という。)を作成した。本件手引書には,政務調査費の対象とな
る経費例や,本件使途基準の運用指針等が記載されている。(以上につき
乙1)
(2)調査研究活動に要する旅費に関する規定
ア本件条例や本件規則には,調査研究活動に要する旅費につき直接言及し
た規定はなく,本件要綱において,特別職の職員の給与,旅費,費用弁償
の額並びにその支給方法に関する条例(昭和31年仙台市条例第35号。
以下「特別職給与条例」という。)に基づき支給する場合の旅費の額に相
当する額を超えて支出することはできないと規定され(7条),本件手引
書において,特別職給与条例に基づき支出することとする旨が記載されて
いる(3章5項)。
イ特別職給与条例は,市議会議員の内国旅行の旅費につき,職員等の旅費
に関する条例(昭和27年仙台市条例第32号。以下「旅費条例」とい
う。)の市長等の例によることとしている(2条1号,14条1項)。
ウ旅費条例は,出張の際の旅費につき,旅費の種類(費目)を,鉄道賃,
船賃,航空賃,車賃,日当,宿泊料等と定めた上(6条1項),鉄道賃は,
路程に応じ旅客運賃等により支給することとし(同条2項),日当や宿泊
料は旅行中の日数ないし夜数に応じた定額で支給することとする(同条6
項,7項)など,旅費の費目の一部について,一定の事由に該当する場合
に実際の支出額によらずにあらかじめ定めた額を支給する,いわゆる定額
方式を採用している。
(3)関係法令等の詳細は,別紙4「関係法令等の定め」に記載したとおりで
ある。
3争点及び争点に関する当事者等の主張
本件の争点は,本件政務調査費の支出に違法な支出が含まれるかであり,こ
の点に関する当事者等の主張は,以下のとおりである。
(1)総論
ア政務調査費の支出の違法性に係る主張立証責任等について
(ア)原告の主張
原告が,政務調査費を不当利得として返還することを請求するよう求
めるためには,当該支出が調査研究のために用いられる可能性がないこ
とをうかがわせる一般的・外形的事実(例えば,収支報告書の記載に表
れた,研修会・物品の名称,書籍の表題等や研修会の趣旨・目的,講演
者,講演の演題等),あるいは,一般的・外形的事実からは調査研究の
ために用いられる可能性があるとしても,当該支出が調査研究のための
必要性に欠けるものであったことをうかがわせる具体的事実を摘示すれ
ば足りる。これに対し,被告及び被告補助参加人ら(以下「被告側」と
いう。)において具体的な反証を行わなければ,当該政務調査費の支出
は違法な支出であると推認されるというべきである。
(イ)被告側の主張
政務調査費を不当利得として返還することを請求するよう求めるため
には,返還を請求する側において,具体的な政務調査費の支出が本来の
政務調査費の使途及び目的に違反した不適切な支出であることを推認さ
せる一般的・外形的事実を,客観的証拠に基づき主張立証する必要があ
る。
本件において原告が主張する違法事由は,会派ないし議員の説明が政
務調査費の支出を正当化するものとしては不十分であるなど抽象的なも
のにすぎず,具体的な政務調査費の支出が本来の使途及び目的に違反し
た不適切な支出であることを推認させる一般的・外形的事実の主張立証
がされているとは到底認められない。
このように,原告から具体的な主張がなされず,かすかな疑いが生じ
得るにすぎない場合であっても,被告補助参加人らが,常に証明書類を
提出してその支出状況を詳らかに説明しなければならないという反証責
任まで負っているということはできない。
イ経費を按分して政務調査費から支出することについて
(ア)原告の主張
本件要綱8条が,「政務調査費に係る経費と政務調査費以外の経費を
明確に区分しがたい場合には,従事割合その他の合理的な方法により按
分した額を支出額とすることができるものとし,当該方法により按分す
ることが困難である場合には,按分の割合を二分の一を上限として計算
した額を支出額とすることができる。」と規定していることからすれば,
政務調査に限らない用途での支出に関しては,合理的な按分割合に関し
て会派ないし議員が主張立証しない限り,2分の1で按分されなければ
ならない。
本件政務調査費の支出のうち,人件費,資料購入費,広報広聴費,事
務費等として支出されたものの大部分は,各論において主張するとおり,
その性質上,その用途・目的は政務調査に限られないのであるから,被
告側において,政務調査に用いたとの抽象的な主張をするだけではなく,
客観的資料に基づいて使用実態を明らかにし,「政務調査のみに用いた
こと」ないし「政務調査以外の用途に用いることがある場合の按分割
合」を主張立証しなければ,2分の1で按分されるべきであり,経費の
2分の1を超える部分を政務調査費から支出することは許されないとい
うべきである。
(イ)被告側の主張
被告補助参加人らは,別紙3「平成20年度仙台市議会政務調査費の
支出一覧」の「按分率」欄記載のとおり,本件政務調査費の支出のうち
按分すべき支出については,実態に即した按分割合を用いて実際の支出
額を按分した上で政務調査費の支出を行っているから,更なる按分の必
要はない。
個々の支出の按分の要否及び按分率については,各論において主張す
るとおりである。
ウ調査研究活動に要する旅費の支出について
(ア)原告の主張
被告補助参加人らは,調査研究活動に係る出張に要した旅費につき,
交通費や宿泊費等の実費ではなく,旅費条例による算出額を調査研究費
として政務調査費から支出している。
しかし,法100条14項は,議員の調査研究に資するため必要な経
費の一部としてのみ政務調査費を交付することを許容しており,実際に
支出していなければ調査研究活動に必要な経費とはいえないのであるか
ら,本件使途基準にいう調査研究費として支出可能な金額は,市政に関
する調査研究活動及び調査委託等に要する経費として実際に支出した額
のみであることが明らかである。
被告側は,本件手引書に調査研究活動に要する旅費の支出にあたって
は,旅費条例に基づき支出するものとする(本件要綱7条)旨が記載さ
れていることを根拠としているものと思われるが,本件手引書の上位規
範である本件要綱7条1項は,「『旅費条例』に基づき支給する場合の
旅費の額に相当する額を超えて支出することはできない。」と,支給の
上限を画するのみである。本件条例10条が,必要経費として支出した
額を控除して得た額に残余がある場合には清算して返還することを規定
していることに鑑みても,実費を超えて支給された部分を利得すること
は許されないというべきである。
したがって,旅費条例に基づき算出した額を政務調査費から支出する
ことを認める本件手引書の記載部分は,法や本件条例に違反する。
被告補助参加人らは,原告による求釈明にもかかわらず,本件で問題
とされている旅費の実費額を明らかにせず,各証人も支払った額や利用
した旅行会社名を隠す態度が明らかである。これは,旅費条例に基づい
て算出した旅費の額が,旅行会社に支払った実費を大きく超えているか
らである。社会常識に照らしても,旅行会社が各種割引等を利用して,
正規料金(すなわち旅費条例に基づく額)よりも低額な旅行代金に抑え
ていることは公知の事実である。そうすると,宿泊付きの出張につき,
少なくとも旅費条例に基づき算出された額の1割に相当する額が実費よ
り過大に政務調査費から支出されているというべきであり,当該1割に
相当する額は違法な支出である。
(イ)被告側の主張
旅費の支給については,いわゆる「定額方式」と「実額方式」という
2通りの支給方法が考えられるところ,政務調査活動に要する旅費の支
給にあたり,いずれの方式を採用するかについては,議会の裁量に委ね
られていると解される。
仙台市が旅費について旅費条例により定額方式を採用している取扱い
は,冗費・乱費の抑制と事務の簡素化という合理的な目的に基づくもの
であり,旅費条例で定められた金額についても標準的な実費の範囲を逸
脱するものとはいえないから,合理性がある。
そして,この趣旨は,会派及びその所属議員に対して旅費を支給する
場合にも妥当するということができるから,調査研究活動に要する旅費
について,合理的な制度である旅費条例の例により計算された金額を定
額支給することは,十分な合理性が認められ,議会の裁量権を逸脱・濫
用するものではないから,適法である。
(2)各論
個々の支出の適法性に関する当事者等の主張の骨子は,別紙5「主張整理
表」のとおりである。
第3当裁判所の判断
1総論
(1)政務調査費の支出の違法性に係る主張立証責任等について
ア法100条14項,15項の規定による政務調査費の制度は,地方分権
の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律の施行により,地方公
共団体の自己決定権や自己責任が拡大し,その議会の担う役割がますます
重要なものとなってきていることに鑑み,議会の審議能力を強化し,議員
の調査研究活動の基盤の充実を図るため,議会における会派又は議員に対
する調査研究の費用等の助成を制度化し,併せてその使途の透明性を確保
しようとしたものである。
そして,法100条14項は,政務調査費を「議員の調査研究に資する
ため必要な経費」の一部として交付する旨を規定するにとどまり,政務調
査費の交付の対象,額及び交付の方法は,条例で定めることとしているが,
これは,各地方自治体の実情に応じた運用を図るべく,条例等にその具体
化を委ねることとしたものと解される。
そうすると,政務調査費に係る支出の適否は,上記法の趣旨に反しない
限り,各地方公共団体における条例等の定めるところに従うべきであり,
条例等における使途に係る定めが上記法の趣旨に則って定められていると
きには,それらの定めに基づいて上記適否を判断するのが相当であるとい
うべきである。
イこの点,本件条例5条に基づき本件規則が定めている本件使途基準の内
容(前記2(1)ウ)は,法100条14項にいう「議員の調査研究に資す
るため必要な経費」を具体化したものであって,法の趣旨に反するもので
はないというべきであるから,本件政務調査費の支出の適否の判断は,各
支出が本件使途基準に合致するか否かを基準に判断するのが相当である。
そして,本件要綱及び本件手引書は,法規範性を有するものではないが,
本件要綱は,本件条例の施行に関し必要な事項を定めるものとされ,政務
調査費の対象外となる経費や,諸手続などを規定し,仙台市議会議長の決
裁を経て作成されたものであり,また,本件手引書は,仙台市議会の全会
派で構成する政務調査費に関する条例等整備会議において,本件使途基準
の解釈等について全議員の申合せとしてまとめられたものであるから,い
ずれも,本件使途基準の趣旨や具体的内容を推知させるものとして,具体
的支出の本件使途基準への適合性判断に当たって参考にされるべきもので
あると解される。
ウそして,本件使途基準は,調査研究費につき「市政に関する調査研究活
動及び調査委託等に要する経費」,人件費につき「調査研究活動を補助す
る者の雇用に要する経費」と定めるなど,調査研究のための必要性をその
要件としているから,調査研究のための必要性が認められない支出は,本
件使途基準に合致しないものとして違法になるというべきである。
議員の調査研究活動は市政全般に及び,その調査研究の対象,方法も広
範かつ多岐にわたるものであり,調査研究活動の手段方法及び内容の選択
に当たっては,議員の自主性及び自律性を尊重すべき要請も存在すること
から,いかなる手段方法によりいかなる調査研究活動を行うかは,議員の
広範な裁量的判断に委ねられている側面があることは否定できないが,そ
の裁量にはおのずから一定の限界があるというべきであり,当該支出に係
る個別の事実から調査研究活動と市政との関連性を慎重に検討した結果,
同支出に係る議員の判断に合理性があるということができない場合には,
同支出につき調査研究のための必要性を認めることができず,本件使途基
準に合致しないものとして違法になるものと解するのが相当である。
そして,議員の判断に合理性があるといえるかどうかについては,上記
のとおり当該支出に係る個別の事実に基づき上記関連性について慎重に検
討すべきであり,例えば,収支状況報告書の記載に表れた事実等(研修会
・物品の名称,書籍の表題等や研修会の趣旨・目的等)から調査研究のた
めに用いられる可能性がないことがうかがわれる場合,あるいは,その可
能性があるといい得ても,当該支出が調査研究のための必要性に欠けるも
のであったことをうかがわせる具体的事実が認められる場合にあっては,
議員の調査研究に資する意見交換等が現になされたり,市政に関する具体
的な調査研究が現にされたとか,それが予定されていたなどの特段の事情
について適切な立証が行われないときは,当該政務調査費の支出は本件使
途基準に合致しない違法な支出であると判断するのが相当である。
(2)経費を按分して政務調査費から支出することについて
本件要綱及び本件手引書は,本件使途基準に掲げる費用について,政務調
査費に係る経費と政務調査費以外の経費を明確に区分し難い場合には,従事
割合その他の合理的な方法により按分した額を支出額とすることができるも
のとし,当該方法により按分することが困難である場合には,按分割合を2
分の1を上限として計算した額を支出額とすることができる旨を規定してい
る(本件要綱8条,本件手引書3章4項)。
弁論の全趣旨によれば,会派及び議員の活動は,政務調査活動以外にも政
党活動,後援会活動等と広範かつ多岐にわたることに伴い,会派や議員が使
用する事務所,事務用品等につき,政務調査活動のための利用とそれ以外の
活動のための利用とが事実上混在し,明確に区分することが困難な場合があ
り得ることが認められる。このような場合について,経費の全額を政務調査
費から支出することを認めず,経費を按分して政務調査費から支出すること
とする上記の取扱いは,議員の調査研究に資するために必要な経費の一部と
して政務調査費の交付を認めた法の規定や調査研究のための必要性を要求す
る本件使途基準に沿ったものであるということができる。
そして,一般的,外形的事実から政務調査活動以外の活動にも利用されて
いることが推認される経費については,被告側において政務調査活動に利用
される割合とそれ以外の活動に利用される割合を客観的資料に基づいて立証
した場合には当該割合で按分した額を政務調査費から支出することが許され
るが,そのような立証がされない場合には,当該経費の2分の1を超えて政
務調査費から支出することは許されないというべきである。
(3)調査研究活動に要する旅費の支出について
ア原告は,被告補助参加人らが,調査研究活動に係る出張に要した旅費に
つき,いわゆる定額方式を採用している旅費条例に基づいて算出した額を
政務調査費から支出したことが,法や本件条例に違反する旨主張する。
法100条14項は,政務調査費の交付は「議員の調査研究に資するた
め必要な経費の一部として」することができる旨を規定しており,上記経
費は,本来的には,現実に要した費用,すなわち実費をいうものと解され
る。
もっとも,実費の経費の算定方法として,費用を要した都度その実費を
計算してこれを支給すること(実額方式)は,本来の建前には忠実である
ものの,経費の中には実費の算定が困難なものもあり,また,個々の支出
について証拠書類の確保を要求し,事務担当者にもその確認の手数の負担
を負わせることになって,当該費用の額や支出の頻度によってはいたずら
に手続を煩雑にし,そのための経費を増大させることになりかねない。上
記のような実額方式の問題点に鑑みると,政務調査費の支出について,あ
らかじめ一定の事由又は場合を定め,それに該当するときには,実際に費
消した額の多寡にかかわらず,標準的な実費である一定の額を経費として
認めることとする取扱い(定額方式)も,法100条14項にいう経費の
算定方法としてこれを採用することが許されると解すべきである。そして,
この場合,いかなる事由を政務調査費の支給事由として定めるか,また,
標準的な実費である一定の額をいくらとするかについては,政務調査費の
交付に関する条例を定める当該地方公共団体の議会の裁量判断に委ねられ
ていると解するのが相当である。
この点,本件条例9条2項は,政務調査費に係る支出額につき,実費に
よるものとしつつも,これにより難いときは,別に定める方法により算出
した額によることができる旨規定しているところ,法100条14項や,
これを受けた本件条例1条において,調査研究活動に資するため必要な経
費の一部として政務調査費を交付する旨が規定されていることに照らすと,
本件条例9条2項の上記の規定は,実費の経費の算定方法として,原則と
して実額方式によることを定めた上で,実額方式を採用することに上記の
ような問題が生ずる場合には,社会通念上,実費を対象としてこれを交付
するとの政務調査費制度の本来の建前を損なうものでない限り,標準的な
実費である一定の額を経費として認めることとする定額方式を採用するこ
とも許容する趣旨であると解される(なお,本件条例9条2項にいう「別
に定める方法」が,本件条例や本件規則で定められた方法以外の方法を排
除する趣旨とは解されない。)。
これに対し,原告は,定額方式によることは,必要経費として支出した
額を控除して得た額に残余がある場合には清算して返還することを規定し
た本件条例10条に違反すると主張するが,本件条例10条は,会派が交
付を受けた額(四半期ごとに,会派の所属議員数に35万円及び各四半期
に属する月数を乗じて得た額)から必要経費として支出した額を控除して
得た額に残余がある場合の返還手続を定めた規定であって,必要経費の算
出方法について定めた規定ではないから,原告の上記主張は採用すること
ができない。
イそこで,本件の旅費の支出についてみるに,調査研究活動に係る旅費の
支出について,本件要綱は,特別職給与条例に基づき支給する場合の旅費
の額に相当する額を超えて支出することはできないこととし,本件手引書
は,特別職給与条例に基づき支出することとし,特別職給与条例は,市議
会議員の内国旅行の旅費につき旅費条例の市長等の例によることとし,旅
費条例は,定額方式をも採用している。
そして,調査研究活動に係る旅費については,これを実額によるとした
場合には,移動に用いる交通手段や宿泊場所の選択いかんによってかえっ
て格差が生じかねず,制度を濫用する弊害が懸念されるところ,全ての移
動手段に係る料金,宿泊料等について,実際の証拠資料に基づき支出額を
確認した上で,その支出額が高額に過ぎないかや,これより低額の支払で
済んだ可能性がないかなどの支出額の妥当性を個別具体的に逐一検討し,
旅行中の一切の必要経費を算出しなければならないとすると,そのための
事務処理手続が煩雑化してその経費が増大しかねないというべきである。
そうすると,調査研究活動に係る旅費の支給にあたり,あらゆる費目につ
いて実額方式を採用することの問題点があることは否定できないから,一
定の旅費の費目につき標準的な実費の額をあらかじめ定めてこれに従う定
額方式を採用することは,それが社会通念上,実費を対象としてこれを交
付するとの政務調査費制度の本来の建前を損なうとはいい難いものである
限り,本件条例に反することはないというべきである。
これに対し,原告は,旅費条例に基づいて旅費の額を算出することは,
旅費条例に基づく額を支給の上限と規定する本件要綱7条1項に反すると
主張するが,その文理に照らして同項が定額方式を禁止しているというこ
とはできず,同項で上限とされた額(旅費条例に基づき支給する場合の
額)を支給する取扱いが,同項に違反するということはできない。
ウ被告においては,上記のとおり旅費条例に基づく取扱いをしているとこ
ろ,旅費条例は,国家公務員等の旅費に関する法律を踏襲して制定されて
いるものと認められ,最も経済的な通常の経路及び方法により旅行した場
合の旅費により計算することを前提に,鉄道賃については路程に応じ旅客
運賃,急行料金,特別車両料金,座席指定料金により支給し,市長等の出
張に係る日当については3300円,宿泊料については宿泊先の地方によ
り1万6500円又は1万4900円を支給するなどの内容を定めており
(旅費条例7条本文,19条1項,20条1項,附則9項,別表第1),
同条例において定額方式を採用している旅費の費目及び各費目に係る額の
定めは,いずれも,社会通念に照らして相当性を欠くとは認められず,標
準的な実費の範囲内であるというべきである。
そうすると,調査研究活動に要する旅費につき,定額方式を採用してい
る旅費条例に基づき算出した額を政務調査費からの支出額とするという取
扱いは,社会通念上,実費を対象としてこれを交付するとの政務調査費制
度の本来の建前を損なうとはいえず,本件条例に反しないと解するのが相
当である。
以上の検討を踏まえると,上記の取扱いをすることは,仙台市議会の裁
量権の範囲を超え又はそれを濫用したものであるともいえないから,法1
00条14項にも違反しないと解するのが相当である。
2各論(原告が問題としている各支出について)
(1)被告補助参加人改革ネット・自民(以下「補助参加人自民」という。)
ア会派全体
(ア)調査研究費
原告は,補助参加人自民の出張に係る旅費について政務調査費から支
出された額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基
づき算出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって
違法であるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張
は理由がない。
(イ)人件費
a原告は,補助参加人自民が政務調査費から会派控室の常勤職員2名
の人件費を支出したことにつき,その2分の1を超える部分は違法で
ある旨主張するところ,証拠(丙A3の1~丙A4の12,丙A15
0,丙D16,17の1~3,証人A11,証人A8)及び弁論の全
趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(a)補助参加人自民は,会派控室における常勤職員2名分の人件費
として,平成20年4月から平成21年3月までに合計275万5
880円を政務調査費から支出した。
(b)上記支出に係る領収書の名目は,いずれも「常勤調査研究補
助」である。
(c)補助参加人自民は,市議会各会派に対する職員雇用費交付規則
(昭和60年仙台市規則第5号。以下「職員雇用費交付規則」とい
う。)に基づき,控室業務に従事する常勤職員1名当たり毎月11
万0400円及び特別手当を仙台市より支給されている(以下,仙
台市が職員雇用費交付規則に基づき会派に支給する職員雇用費を
「会派職員雇用費補助」という。)。
b(a)本件使途基準によれば,人件費として政務調査費から支出する
ことが許されるのは,調査研究活動を補助する者の雇用に要する経
費であるから,当該職員の雇用に要する経費全額を政務調査費から
支出することが許されるというためには,雇用していた職員につき
調査研究活動の補助業務への専従性が認められなければならないと
いうべきである。
そして,会派や議員が行う活動は,調査研究活動以外にも政党活
動や選挙活動,後援会活動など極めて広範かつ多岐にわたるもので
あるところ,一般的,外形的には,会派控室は,各会議出席のため
の準備,待機・休憩が基本的な用途であること,そこに勤務する職
員もそれらの準備の補助や議員の世話をする業務に従事することが
推認され,そうすると,上記の職員の事務が調査研究活動の補助に
当たるか否かについては容易に峻別し難い面があるといわざるを得
ない。
補助参加人自民は,上記常勤職員2名につき,会派控室において
調査研究活動の補助業務に専従させていた旨主張するが,補助参加
人自民の会派控室が調査研究活動のみに利用されていたことを認め
るに足りる証拠はなく,会派控室の職員に専従させていたとする調
査研究活動の補助業務の具体的内容等も明らかではないといわざる
を得ず,かえって,証拠(丙A150,164,証人A11,証人
A8)及び弁論の全趣旨によれば,補助参加人自民は,会派控室に
配置された職員をして,郵便物の受領,市民からの陳情への対応,
電話・来客の対応,取次ぎ等の業務に従事させていることが認めら
れるのである。以上によれば,会派控室の職員が調査研究活動に利
用される割合とそれ以外の活動に利用される割合が立証されている
ということはできず,当該職員に係る人件費は,その2分の1を超
えて政務調査費から支出することは許されないというべきである。
(b)補助参加人自民は,常勤職員2名に対して支払っている毎月約
19万円のうち11万0400円は,会派がその控室業務に従事す
る職員を雇用した場合に職員雇用費交付規則に基づいて仙台市から
交付を受ける会派職員雇用費補助であり,政務調査費からの人件費
の支出は,その残額についてのみであって,調査研究活動の補助業
務のみに対して支給されているから,按分の必要はないと主張する。
しかし,証拠(丙D17の3)によれば,会派職員雇用費補助は,
控室業務に従事する職員を雇用する会派に対し,当該職員の業務内
容にかかわらず,定額で交付されるものである上,上記(a)のとお
り,控室業務を調査研究活動の補助業務とそれ以外の業務に明確に
区分することは困難であることからすれば,会派職員雇用費補助が
控室に配置された職員の業務のうち調査研究活動の補助業務以外の
業務に優先して交付されるものであると認めるに足りず,上記職員
の業務全体に対して交付されるものというべきである。
よって,会派控室に配置された常勤職員の人件費の一部が会派職
員雇用費補助によりまかなわれている事実は,残額について支払わ
れた政務調査費の按分に係る上記(a)の結論を左右するということ
はできない。
(c)したがって,補助参加人自民が人件費として政務調査費から支
出した額の2分の1に相当する137万7931円は違法な支出で
ある旨の原告の主張は理由がある。
(ウ)事務費その他の経費
a証拠(丙A150,164)及び弁論の全趣旨によれば,補助参加
人自民が,会派控室における事務用品やコピーに係る経費として,合
計28万4252円を支出したことが認められるところ,原告は,そ
のうち2分の1を超える部分は違法である旨主張する。
b会派控室は,上記(イ)で検討したとおり,各会議出席のための準備,
待機・休憩が基本的な用途であることや,そもそも会派や議員が行う
活動は極めて広範かつ多岐にわたるものであること,事務用品やコピ
ー機は,その性質上,適宜必要に応じて使用するものであり,いかな
る目的でどの程度使用したかを正確に把握することは困難であるとい
うべきであることを総合考慮すると,一般的,外形的事実からは,会
派控室における上記備品等は,調査研究活動以外の活動にも利用され
ていることが推認されるというべきである。
補助参加人自民は,同じ会派に所属する議員であっても,選挙にな
ればライバル同士となることがあり,そのような者同士が会派控室を
後援会活動や選挙活動,個人的業務に使用することはあり得ないから,
上記事務用品やコピー機は全て調査研究活動のみに使用されている旨
主張するが,会派や議員が行う活動は,後援会活動や選挙活動,個人
的業務にも調査研究活動にも属しない種類のものもあり得ると考えら
れ,上記主張をもってしても,会派控室における事務用品やコピー機
等が調査研究活動のみに利用されたと認めるには足りないというべき
であり,ほかにこれらが調査研究活動のみに利用された事実を認める
に足りる証拠はなく,調査研究活動に利用された割合とそれ以外の活
動に利用された割合が具体的に立証されているということもできない。
よって,会派控室における事務用品やコピーに係る経費は,その2
分の1を超えて政務調査費から支出することは許されないというべき
であり,補助参加人自民が支出した額の2分の1に相当する14万2
122円は違法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
イA1議員
(ア)調査研究費(旅費)
a原告は,A1議員が平成20年7月及び同年12月にした各出張に
ついて,調査研究としての実質を備えていないから,支出の全額が違
法である旨主張するところ,証拠(丙A5の1~丙A6の2,丙A1
34,157,証人A1)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が
認められる。
(a)A1議員は,平成20年7月22日から同月25日にかけて,
大地震後の復興と今後の課題,除融雪対策と費用と課題,特養ホー
ムの整備と課題,待機児童対策,横浜未来21の整備と課題,駅前
広場の整備と費用についての調査研究を目的として,新潟市,長岡
市,静岡市及び横浜市に出張し,出張に要した旅費が政務調査費か
ら支出された。
(b)A1議員は,平成20年12月24日から同月25日にかけて,
地下鉄運営及び課題,並びに地下鉄沿線まちづくりについての調査
研究を目的として,大阪市及び神戸市に出張し,出張に要した旅費
が政務調査費から支出された。
b上記各事実によれば,上記2回の出張の目的は市政に関する調査研
究活動であったということができるが,原告は,A1議員が各出張の
具体的な訪問先や成果を証言できなかったことなどからすれば,これ
らの出張は調査研究としての実質を備えていない旨主張する。
確かに,A1議員の証言には,具体的な訪問先や成果について不明
である部分が存するが,同議員は,新潟市には中越地震後の復興と課
題を調査するために行き,静岡市には,津波対策を調査し,待機児童
がゼロである点を参考にするために行き,横浜市には駅周辺の整備に
ついて調査するために行き,大阪市及び神戸市には地下鉄の運営に関
する課題等について調査するために行った旨を証言しており,その目
的や出張先に不合理な点はうかがえないこと,上記証言は上記各出張
から5年以上が経過した時点でのものであることを踏まえると,詳細
部分を証言できないからといって,直ちに政務調査の実質が否定され
るとはいい難く,ほかに上記2回の出張がその実態を欠くとまで認め
るに足りる証拠はないというべきである。
よって,上記2回の出張に要した旅費の支出が,本件使途基準に反
した違法な支出であったということはできない。
(イ)調査研究費(ガソリン代)
a証拠(甲A24の1,2)及び弁論の全趣旨によれば,A1議員が,
平成20年7月19日及び同月25日に購入したガソリンの代金合計
3万2554円のうち,約7割に相当する2万2788円が政務調査
費から支出されたことが認められるところ,原告は,この支出のうち
上記ガソリン代金の2分の1を超える部分は違法であると主張する。
b自動車は,その性質上,適宜必要に応じて使用するものであるから,
同一の自動車を調査研究活動とそれ以外の活動に用いている以上,こ
れをいかなる目的でどの程度使用したかを正確に把握することは困難
であるというべきである。
補助参加人自民は,上記の政務調査費の支出は,自動車の使用実態
を踏まえて政務調査活動業務の割合を7割として按分した上での支出
であるから,更なる按分の必要はないと主張するが,その使用実態を
裏付ける客観的資料は認められず,A1議員が使用した上記のガソリ
ンが調査研究活動に利用された割合とそれ以外の活動に利用された割
合が立証されているということはできないから,上記ガソリンに係る
代金は,その2分の1を超えて政務調査費から支出することは許され
ないというべきである。
よって,上記ガソリン代金に係る政務調査費の支出のうち6510
円は違法である旨の原告の主張は理由がある。
(ウ)調査研究費(大広間使用料及び茶菓子代)
a証拠(甲A6,7,丙A157,158,証人A1)及び弁論の全
趣旨によれば,A1議員は,平成20年4月27日に荒浜コミュニテ
ィ・センターの大広間において,同年5月31日に下荒井公会堂にお
いて,周辺住民を集め,東部地区治水対策整備事業の進捗状況につい
て報告するとともに,住民の要望を聴取したこと,上記コミュニティ
・センターでの集まりの際には,大広間の使用料として500円,参
集した住民156名分のコーヒーとおつまみ代として7万8000円
が政務調査費から支出され,下荒井公会堂での集まりの際には,公会
堂使用代金として1万円,参集した住民97名分のコーヒーとおつま
み代として4万8500円が政務調査費から支出されたことが認めら
れるところ,原告は,上記各支出の全額が違法であると主張する。
b(a)上記の各集まりは,市政に関する政策の広報又は広聴活動であ
るということができるから,上記の大広間及び公会堂の使用料は,
本件使途基準にいう広報広聴費に該当すると認められる。
原告は,上記大広間や公会堂は,その広さに照らして156名や
97名もの大人数を収容することは物理的に不可能であり,上記広
報広聴の機会の実態があったかどうか疑わしいと主張する。
確かに,証拠(甲A27)によれば,荒浜コミュニティ・センタ
ーの大広間の広さは約113平方メートルであり,156名もの住
民が一堂に会するには手狭であるといわざるを得ないが,当時の会
場の具体的な配置等は明らかではなく,上記の集まりが物理的に不
可能であったとは認めるに足りない。ほかに上記の各集まりがその
実態を欠くとまで認めるに足りる証拠はないというべきである。
よって,上記大広間及び公会堂の使用料に係る政務調査費の支出
が,本件使途基準に反した違法な支出であったということはできな
い。
(b)次に,上記各集まりにおいて参集した住民に振る舞ったとされ
るコーヒーやおつまみ等に係る支出について検討する。
証拠(乙1)によれば,本件要綱2条1項2号及び本件手引書3
章「8.対象外の経費」において,政務調査費を会議に伴う食事以
外の飲食に要する経費に充ててはならない旨が規定されていること
が認められるところ,原告は,実質的な広報広聴活動である上記各
集まりにおけるコーヒーやおつまみ等に係る支出を政務調査費から
支出することは,上記各規定に照らして許されないと主張する。
しかし,一般に,外部者を集める場合に社会通念上相当の範囲内
の軽食を提供することが広く行われていることからすれば,広報広
聴のために外部者を集める場合であっても,社会通念上相当と認め
られる範囲内の軽食の提供であれば,その費用を本件使途基準にい
う広報広聴費に当たるものとして政務調査費から支出することは許
されるというべきである。本件手引書(乙1)においても,例えば,
研修費として政務調査費からの支出が認められる経費例には会食経
費(茶菓代を含む)が記載されており(3章「7.項目別の政務調
査費支出」「研修費」)会議費名目以外でも飲食に要する経費を支
出することが許容されていることが認められるのであり,広報広聴
のために外部者を集める際に,社会通念上相当と認められる範囲内
の軽食を提供するために必要な経費を政務調査費から支出すること
を禁じているものと解することはできない。なお,証拠(乙3)及
び弁論の全趣旨によれば,本件手引書には,平成23年8月の改訂
により,広報広聴費の経費例として「広報広聴に伴う茶菓代(社会
通念上妥当な範囲内に限る。)」が加えられたことが認められるが,
これは,上記の趣旨を確認したにすぎないと解される。
証拠(丙A157,158,証人A1)及び弁論の全趣旨によれ
ば,上記の各集まりにおいて参集した住民に提供された軽食は,コ
ーヒー及び茶菓子にとどまり,その金額も一人当たり500円であ
って,社会通念上相当と認められる範囲内であるというべきである
から,これらの費用に係る参集した住民に振る舞ったとされるコー
ヒーやおつまみ等に係る政務調査費の支出が違法であったというこ
とはできない。
(エ)研修費(懇親会会費)
a証拠(甲A8,丙A159)及び弁論の全趣旨によれば,A1議員
は,平成20年11月30日,荒浜ビックウェーブ親の会の懇親会会
費として5000円を支払い,これが政務調査費から支出されたこと
が認められるところ,原告は,上記支出の全額が違法であると主張す
る。
b補助参加人自民は,荒浜ビックウェーブ親の会懇親会とは,少年野
球クラブの子どもとその保護者が集まる会合であり,政務調査活動の
一環であって懇親を主たる目的とする会合ではない旨主張する。
しかし,上記懇親会の名称や支出の名目からすると,市政との関連
性は希薄であることがうかがわれ,監査委員に提出した調査票(丙A
159)や陳述書(丙A157)等によっても,同懇親会の主たる目
的や具体的な内容は明らかではないから,本件使途基準に合致しない
支出であると推認され,上記5000円の支出の全額が違法である旨
の原告の主張は理由がある。
(オ)研修費(会場費及び茶菓子代等)
a証拠(甲2の1,甲A9,丙A157,159,証人A1)及び弁
論の全趣旨によれば,A1議員は,①平成20年10月22日に,仙
台市若林区所在の飲食店において周辺住民を集め,地下鉄東西線仮称
荒井駅建設予定地について関係住民から話を聞いたこと,②同年12
月21日に,荒浜コミュニティ・センターにおいて周辺住民を集め,
離岸堤,護岸堤の破損状況の調査結果を報告し,今後の対応等につい
て意見を聞いたこと,③上記①の集まりに係る会場費及び参集した住
民28名分のコーヒー代として1万5900円が,上記②の集まりに
係る大広間使用料として500円,参集した住民157名分のコーヒ
ーとおつまみ代として5万1810円が,政務調査費から支出された
ことが認められる。
b上記の各集まりは市政に関する政策の広報広聴活動であるというこ
とができ,振る舞った軽食も社会通念上相当の範囲内であるというこ
とができるから,上記(ウ)bのとおり,いずれの経費についても,本
件使途基準にいう広報広聴費に当たり,政務調査費から支出すること
が許されるというべきである。
よって,当該支出の違法をいう原告の主張は,理由がない。
(カ)資料購入費
a証拠(甲A10)及び弁論の全趣旨によれば,A1議員が,「憲法
と日本のあゆみ-昭和元年・終戦」と題する書籍及び「憲法と日本の
あゆみ-明治・大正」と題する書籍を合計7万円で購入し,その購入
費用が政務調査費から支出されたことが認められるところ,原告は,
上記支出のうち2分の1を超える部分は違法であると主張する。
b上記いずれの書籍についても,その題名や推認される内容に照らす
と,市政との関連性を認めることができ,A1議員は,これらを調査
研究活動の資料として利用したと認めるのが相当であるから,その購
入に係る支出が調査研究活動のための支出として合理性ないし必要性
を欠くとはいえず,その全額を政務調査費から支出することについて
違法であるということはできない。
(キ)広報広聴費
a原告は,A1議員が使用した街宣車等の経費に係る政務調査費の支
出につき,その2分の1を超える部分が違法であると主張するところ,
証拠(甲A34~39,42,丙A157,160,証人A1)及び
弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(a)A1議員は,平成20年4月20日に1回,同年5月から同年
12月までに4回,平成21年1月から3月までに1回,東部地区
治水対策整備事業の進捗及び今後の課題並びに都市計画道路等の進
捗及び今後の課題についての経過又は結果を報告するため,各回3
万円で運転手付きの街宣車を利用し,その費用合計18万円が政務
調査費から支出された。
(b)A1議員は,平成21年3月1日,離岸堤,護岸堤の破損状況
と復元の調査のため,砂浜を走行することができる軽トラック2台
を利用し,その費用2万4000円が政務調査費から支出された。
b原告は,A1議員が都市計画道路を調査した時期は平成21年1月
であるから,上記a(a)の街宣車の使用のうち平成20年に行われた
5回において都市計画道路の調査の結果等を報告することは不可能で
あると主張するところ,確かに,証拠(甲A40,丙A109の4,
証人A1)によれば,A1議員が都市計画道路等を調査したのは平成
21年1月以降であると認められるから,平成20年の5回の街宣車
の使用の際に都市計画道路等の報告が行われたとは認められない。し
かし,A1議員は,上記街宣車の使用の際には東部地区治水対策整備
事業の進捗と今後の課題についての報告も行った旨説明しており,こ
れを否定するに足りる証拠は存しない。
原告は,街宣車は選挙活動等にも利用できる旨主張するが,上記認
定事実のとおり,A1議員が街宣車を賃借したのは計6回という限ら
れた期間であり,街宣車が調査研究活動以外に利用されたことを推認
させる事実は存しないというべきである。
以上によれば,A1議員による上記の街宣車及び軽トラックの使用
は,市政に関連する調査研究活動に必要であったと認められるから,
その費用に係る支出が本件使途基準に反した違法な支出であったとい
うことはできない。
(ク)人件費
a証拠(甲A11,12,29,31~33,43,44,丙A10
9の1~7,丙A157,証人A1)及び弁論の全趣旨によれば,A
1議員は,次のとおり,雇用した職員に対する報酬を支払い,その費
用が政務調査費から支出されたことが認められるところ,原告は,こ
の支出のうち2分の1を超える部分は違法であると主張する。
(a)平成20年4月20日
支払名目車代共アルバイト代金
報酬額4万円
(b)平成20年8月18日
支払名目現地調査3日間車代共
報酬額4万5000円
(c)平成20年9月24日
支払名目封筒宛名書
報酬額8万8000円
(d)平成20年12月30日
支払名目大型封筒宛名書
報酬額9万7500円
(e)平成21年1月30日
仙台市東部道路下及び仙台南部道路下の用水路,排水路合計16
2か所の調査の補助業務に3日間にわたり従事した職員に対し,報
酬として4万5000円を支払った。
(f)平成21年2月10日
支払名目封筒書
報酬額8万円
(g)平成21年3月12日
支払名目封筒書
報酬額4万9000円
b(a)上記a(a)の平成20年4月20日の車代共アルバイト代金を名
目とする支出については,証拠(甲A34,証人A1)によれば,
A1議員は,同じ日に上記(キ)a(a)のとおり運転手付きの街宣車で
広報活動を行って上記の支出とは別に3万円を支出したこと,A1
議員はその日に上記街宣車の他に人を雇って車を出したことはない
旨証言したことが認められ,これらを踏まえると,上記の車代共ア
ルバイト代金を名目とする4万円の支出がどのような目的のために
支出されたものであるのか不明であるといわざるを得ず,これにつ
いての政務調査費の支出のうち少なくとも2分の1に相当する2万
円は違法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
(b)上記a(b)の平成20年8月18日の現地調査3日間車代共を名
目とする支出については,A1議員は,その都度発生する特定の業
務のため,臨時的にその業務を依頼し,業務内容や業務時間を考慮
して給与を支給した旨を説明するにとどまり(丙A157),具体
的な業務内容が明らかではない。よって,これについての政務調査
費の支出のうち少なくとも2分の1に相当する2万2500円は違
法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
(c)上記a(c)(d)(f)(g)の封筒の宛名書きは,前掲証拠によれば,
それぞれ1000枚前後の大量の封筒について行われたと認められ
ることに,そもそも議員が行う活動は極めて広範かつ多岐にわたる
ものであることや,封書にどのような書面が封入して送付されたか
ということを把握することは困難であることを併せ考慮すると,一
般的,外形的事実からは,上記各封筒は調査研究活動以外の活動に
も利用されていることが推認されるというべきである。
使用された封筒が具体的にどの地域ないし範囲の住民に送付され
たのかを認めるに足りる証拠はなく,A1議員は,例えば,都市計
画道路の進捗状況や東部地区治水対策整備事業の進捗状況等を内容
とする「関係皆様へご報告」と題する文書の送付のためのものであ
った旨説明するものの(丙A157),上記封筒全てが調査研究活
動のみに利用されたと認めるには足りないというべきであり,調査
研究活動に利用された割合とそれ以外の活動に利用された割合が具
体的に立証されているということもできないから,上記の封筒の宛
名書き業務に係る政務調査費の支出の2分の1に相当する15万7
250円は違法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
(d)上記a(e)の平成21年1月30日の調査に係る支出について,
A1議員は,仙台市東部道路下及び仙台南部道路下の用水路,排水
路合計162か所を調査した際の費用である旨説明しており(丙A
157,証人A1),3日間という限られた期間であることや調査
研究活動の内容が具体的であることに照らすと,調査研究活動の補
助業務への専従性が具体的・合理的に立証されているということが
できる。
したがって,上記支出は,その全額について違法ではない。
(e)以上によれば,原告の主張は合計19万9750円の支出の違
法をいう限度で理由がある。
(ケ)事務費その他の経費
証拠(甲A29,31~33)及び弁論の全趣旨によれば,A1議員
が上記(ク)a(c)(d)(f)(g)に係る切手代と封筒代について支出した金額
(合計54万5260円)の全てが政務調査費から支出されたことが認
められるところ,既に検討したとおり,上記封筒が調査研究活動のため
に利用される割合とそれ以外の活動に利用される割合が立証されている
とはいえない以上,上記の切手代と封筒代についても2分の1を超えて
政務調査費から支出することは許されないというべきである。
よって,上記の金額の2分の1に相当する27万2630円は違法な
支出である旨の原告の主張は理由がある。
ウA2議員
(ア)調査研究費
原告は,A2議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出され
た額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき算
出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法で
あるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理由
がない。
(イ)人件費
a原告は,A2議員が使用した人件費に係る政務調査費の支出のうち
2分の1を超える部分は違法であると主張するところ,証拠(丙A1
10の1~12)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ
る。
(a)A2議員が平成20年4月から平成21年3月までに雇用して
いた職員に対して支払った報酬のうち合計102万円につき,政務
調査費から支出された。
(b)上記職員は,A2議員の政務調査活動のみならず,後援会活動
その他の活動に関する業務にも従事している。
b補助参加人自民は,上記の支出額は,上記職員の活動実態を踏まえ
て調査研究活動の補助業務の割合を約35%と見積もった上で,職員
に支払った報酬総額のうち上記按分割合に基づく額を政務調査費から
支出したものであると主張する。
しかし,A2議員が上記職員に支払った報酬の総額を認めるに足り
る証拠はなく,また,上記職員がA2議員の調査研究活動の補助業務
に従事した割合とそれ以外の活動の補助業務に従事した割合が立証さ
れているということもできないから,上記の政務調査費の支出のうち
2分の1に相当する51万円は違法である旨の原告の主張は理由があ
る。
エA3議員
(ア)調査研究費
原告は,A3議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出され
た額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき算
出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法で
あるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理由
がない。
(イ)資料作成費
弁論の全趣旨によれば,A3議員が平成20年10月3日に購入した
住宅地図1万5750円の代金全額が政務調査費から支出されたことが
認められるところ,原告は,この支出のうち2分の1を超える部分は違
法であると主張する。
弁論の全趣旨によれば,住宅地図は,予算配分の確認作業等,市政に
関する調査研究に必要な資料であると認められ,A3議員が住宅地図を
調査研究活動以外の活動にも利用しているというべき事情も見当たらな
いから,上記住宅地図の購入代金に係る政務調査費の支出をもって,本
件使途基準に違反した違法な支出であったということはできず,原告の
主張は理由がない。
(ウ)資料購入費
証拠(丙A112の1~3)及び弁論の全趣旨によれば,A3議員が
購入した書籍代金合計2万0451円が政務調査費から支出されたこと
が認められるところ,原告は,この支出のうち2分の1を超える部分は
違法であると主張する。
上記書籍の題名や内容等は明らかではなく,市政との関連性は不明で
あるといわざるを得ない。
よって,上記支出額のうち2分の1に相当する1万0225円は違法
な支出である旨の原告の主張は理由がある。
(エ)人件費
a原告は,A3議員が使用した人件費に係る政務調査費の支出のうち
2分の1を超える部分は違法であると主張するところ,証拠(丙A1
11の1~30)及び弁論の全趣旨によれば,A3議員が平成20年
4月から平成21年3月までに雇用していた職員に支払った報酬(合
計72万円)の全額が政務調査費から支出されたことが認められる。
b補助参加人自民は,上記支出は調査研究活動の補助業務に特定して
雇用している者に対する支出であると主張し,A3議員は,特定の課
題についての政務調査が必要となった場合に補助員に業務を依頼して
いること,ふだんから依頼している補助員は3名であること,特定の
課題とは,例えば,商業活性化対策のための商店街視察や意見聴取,
東二番丁幼稚園の存続に関する調査,保育所民営化に関する調査等が
挙げられること,給与はその時々の業務量に応じ,1か月当たり1万
円から3万円を支給していることなどを説明する(丙A152)。
しかし,A3議員の上記説明を勘案しても,A3議員が長期間にわ
たって雇用していた者が従事していた業務の具体的内容は明らかでな
いといわざるを得ず,A3議員が支払った上記の人件費は,調査研究
活動の補助業務のみに利用されたと認めるに足りず,また,調査研究
活動に利用された割合とそれ以外の活動に利用された割合が立証され
ているということもできないから,その2分の1を超えて政務調査費
から支出することは許されないというべきである。
よって,上記支出額のうち2分の1に相当する36万円は違法な支
出である旨の原告の主張は理由がある。
オA4議員
原告は,A4議員のウェブサーバー使用料に係る政務調査費の支出3万
1500円のうち2分の1に相当する1万5750円が違法であると主張
するが,証拠(丙A123)及び弁論の全趣旨によれば,原告が違法であ
ると主張する上記1万5750円については既に自主返納がされたことが
認められるから,上記支出に係る原告の請求は理由がない。
カA5議員
原告は,A5議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出された
額全額の返還を求めているが,第6回口頭弁論期日において,上記出張は
政務調査を目的として行われたものであることが明らかになったとして全
額が違法である旨の主張を撤回している。
原告は,上記支出額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費
条例に基づき算出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いを
もって違法であるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の
主張は理由がない。
キA6議員
(ア)調査研究費
原告は,A6議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出され
た額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき算
出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法で
あるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理由
がない。
(イ)資料購入費
a証拠(甲A13~15)及び弁論の全趣旨によれば,A6議員が
「地方自治情報誌」,「正論」,「Will」,「SAPIO」と題
する書籍を購入した代金合計3万9028円が政務調査費から支出さ
れたことが認められるところ,原告は,この支出のうち2分の1を超
える部分は違法であると主張する。
b「地方自治情報誌」については,その性質上,市政との関連性が一
般的に認められるというべきであり,上記各書籍のうちその余のもの
については,前掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,いずれも政治問
題や社会問題を主なテーマとして掲載する雑誌であることが認められ
るから,調査研究活動への必要性が認められ,調査研究活動以外の活
動にも利用されていることをうかがわせるべき事情も見当たらない。
原告は,上記各書籍のうち特に「Will」や「SAPIO」は大
衆雑誌であると指摘するが,上記各書籍が対象としているテーマに照
らすと,記事の書き方が大衆的な興味を満たすようなものであるから
といって,調査研究活動以外の活動にも利用されたと評価するには足
りないというべきであり,上記各書籍の代金を按分することなく全額
につき政務調査費から支出されたことが違法であるということはでき
ない。
(ウ)事務費その他の経費
a証拠(丙A135)及び弁論の全趣旨によれば,A6議員が購入し
たテレビ及びメモリーカードの代金のうち2分の1(合計8万716
1円),デジタルカメラの代金の全額(8万3790円)並びに住宅
地図の代金の全額(1万4700円)が政務調査費から支出されたこ
とが認められるところ,原告は,テレビ,メモリーカード及びデジタ
ルカメラについては支出の全額が,住宅地図については支出の2分の
1を超える部分が違法であると主張する。
b(a)テレビ,メモリーカード及びデジタルカメラについて,調査研
究活動のための必要性を欠くとまで認めるに足りる証拠はないから,
それらの支出の全額が違法であるとの原告の主張は理由がない。
もっとも,上記各備品については,その性質上,適宜必要に応じ
て使用することができるものである以上,一般的,外形的事実から
は,調査研究活動以外の活動にも利用されていることが推認される
というべきである。
補助参加人自民は,上記各備品を調査研究活動のみに使用してお
り,その目的以外に使用することはないと主張するが,その使用実
態を裏付ける客観的資料は認められず,A6議員が使用した上記各
備品が調査研究活動に利用された割合とそれ以外の活動に利用され
た割合が立証されているということはできず,上記代金は,その2
分の1を超えて政務調査費から支出することは許されないというべ
きである。
そうすると,テレビ及びメモリーカードに係る政務調査費の支出
については,そもそも代金の2分の1が政務調査費から支出されて
いるにとどまるから,その違法をいう原告の主張は理由がないが,
デジタルカメラに係る政務調査費の支出については,代金の2分の
1である4万1895円が違法な支出であるという限度で原告の主
張は理由がある。
(b)住宅地図については,既に検討したのと同様に,その購入に係
る支出が議員の行う調査研究活動のための支出として合理性ないし
必要性を欠くとはいえず,その全額を政務調査費から支出すること
について違法とはいえず,原告の主張は理由がない。
クA7議員
(ア)調査研究費
原告は,A7議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出され
た額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき算
出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法で
あるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理由
がない。
(イ)人件費
a原告は,A7議員が使用した人件費に係る政務調査費のうち2分の
1を超える部分は違法であると主張するところ,証拠(丙A113の
1~12)及び弁論の全趣旨によれば,A7議員が平成20年4月か
ら平成21年3月までに雇用していた職員に支払った報酬(合計70
万5000円)の全額が政務調査費から支出されたことが認められる。
b補助参加人自民は,上記支出は調査研究活動の補助業務に特定して
雇用している者に対する支出であると主張し,A7議員は,特定の課
題についての政務調査が必要となった場合に補助職員に業務を依頼し
ていること,ふだんから依頼している補助職員は1名であること,特
定の課題についての政務調査とは,例えば,地域課題の吸収,各種団
体及び住民からの陳情や相談等の聞き取り業務,現地調査等が挙げら
れること,調査の結果については,補助職員からの報告を受けている
ことなどを説明する(丙A154)。
しかし,A7議員の上記説明を勘案しても,A7議員が長期間にわ
たって雇用していた者が従事していた業務の具体的内容は明らかでな
いといわざるを得ず,A7議員が支払った上記の人件費は,調査研究
活動の補助業務のみに利用されたと認めるに足りず,また,調査研究
活動に利用された割合とそれ以外の活動に利用された割合が立証され
ているということもできないから,その2分の1を超えて政務調査費
から支出することは許されないというべきである。
よって,上記支出額のうち2分の1に相当する35万2500円は
違法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
(ウ)事務費その他の経費
a原告は,A7議員が電話代行サービスを利用した料金について政務
調査費から支出された額の2分の1を超える部分が違法である旨主張
するところ,証拠(丙A154)及び弁論の全趣旨によれば,以下の
事実が認められる。
(a)A7議員は,電話代行サービスを利用し,平成20年4月から
平成21年3月までの使用料金として合計24万5700円を支払
い,その全額が政務調査費から支出された。
(b)上記電話代行サービスは,専用回線に電話すると,電話代行シ
ステムに転送され,オペレーターにおいて内容を聴取してA7議員
の携帯電話又はEメールへ連絡を入れるという仕組みになっている。
b上記の電話代行サービスは,その仕組みに照らすと,調査研究活動
に係る電話以外にも,私用のみならず,調査研究活動以外の議員活動,
選挙活動,政党活動,後援会活動等に係る電話でも日常的に頻繁,か
つ容易に使用され得るから,一般的には,調査研究以外の活動にも利
用されていることが推認されるというべきである。
補助参加人自民は,上記電話代行サービスを利用している電話回線
を政務調査以外に使用することはないと主張するが,その利用実態を
裏付ける客観的資料は認められず,A7議員が利用した上記電話代行
サービスが調査研究活動に利用された割合とそれ以外の活動に利用さ
れた割合が立証されているということはできず,上記料金は,その2
分の1を超えて政務調査費から支出することは許されないというべき
である。
よって,上記料金の2分の1に相当する12万2850円は違法な
支出である旨の原告の主張は理由がある。
ケA8議員
(ア)調査研究費
原告は,A8議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出され
た額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき算
出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法で
あるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理由
がない。
(イ)資料購入費
a証拠(甲A17,丙A125)及び弁論の全趣旨によれば,A8議
員が,「繁盛商店街の仕掛け人」と題する書籍,住宅地図及び地図用
DVDを購入した代金合計2万4780円が政務調査費から支出され
たことが認められるところ,原告は,この支出のうち2分の1を超え
る部分は違法であると主張する。
b証拠(丙A125)及び弁論の全趣旨によれば,「繁盛商店街の仕
掛け人」は,全国における中心市街地活性化の取組みに関する成功事
例集であることが認められ,市政との関連性を認めることができ,A
8議員は,これを調査研究活動の資料として利用したと認めるのが相
当であるから,その購入に係る支出が調査研究活動のための支出とし
て合理性ないし必要性を欠くとはいえず,その全額を政務調査費から
支出することについて違法とはいえない。
住宅地図及び地図用DVDについては,既に検討したのと同様に,
その購入に係る支出が議員の行う調査研究活動のための支出として合
理性ないし必要性を欠くとはいえず,その全額を政務調査費から支出
することについて違法とはいえず,原告の主張は理由がない。
(ウ)人件費
a原告は,A8議員が使用した人件費に係る政務調査費のうち2分の
1を超える部分は違法であると主張するところ,証拠(丙A114の
1~12)及び弁論の全趣旨によれば,A8議員が平成20年4月か
ら平成21年3月までに雇用していた職員に支払った報酬(合計36
万円)の全額が政務調査費から支出されたことが認められる。
b補助参加人自民は,上記支出は調査研究活動の補助業務に特定して
雇用している者に対する支出であると主張し,A8議員は,同議員が
調査研究したい課題についての業務を行わせることを目的に職員を雇
用していること,勤務日は週1~2日程度であることなどを説明する
(丙A155)。
しかし,A8議員の上記説明を勘案しても,A8議員が長期間にわ
たって雇用していた者が従事していた業務の具体的内容は明らかでな
いといわざるを得ず,A8議員が支払った上記の人件費は,調査研究
活動の補助業務のみに利用されたと認めるに足りず,また,調査研究
活動に利用された割合とそれ以外の活動に利用された割合が立証され
ているということもできないから,その2分の1を超えて政務調査費
から支出することは許されないというべきである。
よって,上記支出額のうち2分の1に相当する18万円は違法な
支出である旨の原告の主張は理由がある。
(エ)事務所費
a弁論の全趣旨によれば,A8議員が支払った事務所の賃料について
合計72万8000円が政務調査費から支出されたことが認められる
ところ,原告は,この支出のうち2分の1を超える部分は違法である
と主張する。
b議員の活動が極めて広範かつ多岐にわたることに照らすと,その活
動の拠点となる事務所においては,一般的,外形的には,調査研究活
動以外の活動も行われることが推認される。
上記賃料に係る政務調査費の支出額及び弁論の全趣旨によれば,政
務調査費から支出されたのはA8議員が支払った賃料のうち8割であ
ることが認められるところ,補助参加人自民は,上記事務所は調査研
究活動以外にも使用する可能性があることから,調査研究活動業務の
割合を8割として按分した旨主張するが,上記事務所の利用実態を裏
付ける客観的資料は認められず,上記事務所が調査研究活動に利用さ
れた割合とそれ以外の活動に利用された割合が立証されているという
ことはできないから,上記事務所の賃料は,その2分の1を超えて政
務調査費から支出することは許されないというべきである。
よって,上記賃料に係る政務調査費の支出のうち27万3000円
は違法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
(オ)事務費その他の経費
a証拠(甲2の1)及び弁論の全趣旨によれば,A8議員が支払った
携帯電話料金のうち3分の2,灯油代のうち5分の4,紙代,トナー
代,デジタルカメラ等の購入代金の全額が,政務調査費から支出され
たこと,上記支出額のうちデジタルカメラ購入代金の3分の1に当た
る1万0800円が既に返還されたことが認められる。
b上記備品等は,調査研究活動に用いるほかにも,私用のみならず,
調査研究活動以外の議員活動,選挙活動,政党活動,後援会活動等の
目的でも日常的に頻繁,かつ容易に使用され得るから,一般的には,
調査研究以外の活動にも利用されていることが推認されるというべき
である。
補助参加人自民は,上記備品等は,それぞれの使用実態を踏まえて,
按分の必要があるものは既に按分をした上で政務調査費を支出してい
る旨主張するが,上記各備品の利用実態を裏付ける客観的資料は認め
られないから,A8議員が利用した上記備品等が調査研究活動に利用
された割合とそれ以外の活動に利用された割合が立証されているとい
うことはできず,上記料金等は,その2分の1を超えて政務調査費か
ら支出することは許されないというべきである。
よって,上記備品等に係る政務調査費の支出のうち7万1748円
の支出は違法である旨の原告の主張は理由がある。
コA9議員
(ア)調査研究費
原告は,A9議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出され
た額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき算
出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法で
あるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理由
がない。
(イ)広報広聴費
a証拠(甲A3)及び弁論の全趣旨によれば,A9議員のホームペー
ジに係る経費のうち9割に当たる9000円が政務調査費から支出さ
れたことが認められるところ,原告は,この支出のうち上記経費の2
分の1を超える部分は違法であると主張する。
b証拠(甲A3)及び弁論の全趣旨によれば,上記ホームページには,
A9議員が掲げる政策や,市議会における同議員の質問項目等が掲載
されていることが認められるが,議員のホームページは,一般的に,
当該議員に関する様々な情報が掲載されるのが通常であるというべき
であり,その全てが議員の調査研究に資するものとは考え難く,他方,
ホームページに掲載された情報を,調査研究に資するものとそれ以外
のものとに峻別することも現実的には困難である。
そうすると,議員のホームページに係る経費については,その2分
の1を超えて政務調査費から支出することは許されないと解するのが
相当である。
よって,上記支出額のうち4000円は違法な支出である旨の原告
の主張は理由がある。
サA10議員
(ア)研修費
a原告は,A10議員が支払った仙台市障害者スポーツ協会の年会費
5万円に係る政務調査費の支出のうち2分の1を超える部分と21世
紀宮城野会の懇談会費6000円に係る政務調査費の支出全額が違法
であると主張するところ,証拠(丙A126,127)及び弁論の全
趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(a)A10議員が平成20年12月19日に仙台市障害者スポーツ
協会に支払った年会費5万円が政務調査費から支出された。
(b)上記協会は,障害者にスポーツを体験してもらうためのきっか
けと環境づくりを行い,障害者スポーツの普及及び振興を図るとと
もに障害者スポーツの可能性を研究・開発することを目的とし,障
害者スポーツの宣伝活動や研究,大会の実施等を事業とする団体で
ある。
(c)A10議員が同月22日に支払った21世紀宮城野会の懇談会
費6000円が政務調査費から支出されたが,その後,同額が自主
返納された。
b仙台市障害者スポーツ協会の年会費については,上記認定事実によ
れば,同協会の目的や事業内容は市政に関連するものと認められ,同
議員が支出した年会費が社会通念上不相当に高額であるともいえない
から,その支出が違法であるということはできない。
21世紀宮城野会の懇談会費については,上記認定事実のとおり,
全額自主返納済みであるから,原告の請求は理由がない。
(イ)資料購入費
証拠(丙A116の1,2)及び弁論の全趣旨によれば,A10議員
が購入した書籍の代金合計1万3235円が政務調査費から支出された
ことが認められるところ,原告は,上記支出のうち2分の1を超える部
分は違法であると主張する。
上記書籍について,その題名や内容を認めるに足りる証拠はないから,
上記書籍と政務調査との関連性は不明といわざるを得ない。
したがって,上記書籍の購入費用の2分の1に相当する6617円は
違法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
(ウ)広報広聴費
a証拠(甲A4)及び弁論の全趣旨によれば,A10議員のホームペ
ージに係る経費合計15万3300円が政務調査費から支出されたこ
とが認められるところ,原告は,この支出のうち2分の1を超える部
分は違法であると主張する。
b証拠(甲A4)及び弁論の全趣旨によれば,上記ホームページには,
A10議員のプロフィールやA10議員が掲げる政策,議会レポート
等が掲載されていることが認められるが,既に検討したとおり,議員
のホームページに係る経費については,その2分の1を超えて政務調
査費から支出することは許されないと解するのが相当である。
よって,上記支出額のうち7万6650円は違法な支出である旨の
原告の主張は理由がある。
(エ)人件費
a証拠(丙A117の1~10)及び弁論の全趣旨によれば,A10
議員が平成20年6月から平成21年3月までに雇用していた職員に
支払った報酬(合計50万円)の全額が政務調査費から支出されたこ
とが認められるところ,原告は,この支出のうち2分の1を超える部
分は違法であると主張する。
b補助参加人自民は,上記支出は調査研究活動の補助業務に特定し
て雇用している者に対する支出であると主張し,A10議員は,政
令指定都市や自治体が発信する情報や資料の整理及び視察先で収集
した資料の分類整理などの業務を行わせることを目的に職員を雇用
していること,勤務日は週3日程度であることなどを説明する(丙
A156)。
しかし,A10議員の上記説明を勘案しても,A10議員が長期
間にわたって雇用していた者が従事していた業務の具体的内容は明
らかでないといわざるを得ず,A10議員が支払った上記の人件費
は,調査研究活動の補助業務のみに利用されたと認めるに足りず,
また,調査研究活動に利用された割合とそれ以外の活動に利用され
た割合が立証されているということもできないから,その2分の1
を超えて政務調査費から支出することは許されないというべきであ
る。
よって,上記支出額のうち2分の1に相当する25万円は違法な支
出である旨の原告の主張は理由がある。
(オ)事務所費
a弁論の全趣旨によれば,A10議員が支払った事務所の賃料(合計
78万円)の全額が政務調査費から支出されたことが認められるとこ
ろ,原告は,この支出のうち2分の1を超える部分は違法であると主
張する。
b補助参加人自民は,上記事務所は調査研究活動以外には使用してい
ないと主張するが,上記事務所の利用実態を裏付ける客観的資料は認
められず,上記事務所が調査研究活動に利用された割合とそれ以外の
活動に利用された割合が立証されているということはできないから,
上記事務所の賃料は,その2分の1を超えて政務調査費から支出する
ことは許されないというべきである。
よって,上記賃料に係る政務調査費の支出のうち2分の1を超える
額である39万円は違法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
(カ)事務費その他の経費
a証拠(甲2の1)及び弁論の全趣旨によれば,A10議員が支払っ
た携帯電話料金(合計13万0752円)及び固定電話料金(合計3
万2602円)の全額が政務調査費から支出されたこと,その後,上
記携帯電話料金に係る支出のうち2万6151円が返還されたことが
認められる。
b携帯電話料金及び固定電話料金は,調査研究活動に用いるほかにも,
私用のみならず,調査研究活動以外の議員活動,選挙活動,政党活動,
後援会活動等の目的でも日常的に頻繁,かつ容易に使用され得るから,
一般的には,調査研究以外の活動にも利用されていることが推認され
るというべきである。
補助参加人自民は,携帯電話料金は,調査研究活動業務の割合を8
割として既に残り2割は返還済みである,固定電話料金は調査研究活
動に限定して契約した事務所において使用するものであるから調査研
究活動以外に使用することはないと主張するが,上記各電話料金の使
用実態を裏付ける客観的資料は認められないから,A10議員が使用
した上記各電話料金が調査研究活動に利用された割合とそれ以外の活
動に利用された割合が立証されているということはできず,上記各電
話料金は,その2分の1を超えて政務調査費から支出することは許さ
れないというべきである。
よって,上記携帯電話料金の2分の1から上記返還額2万6151
円を控除した額である3万9225円と,上記固定電話料金の2分の
1に相当する1万6300円とを合計した額である5万5525円の
支出の違法をいう限度で,原告の主張は理由がある。
シA11議員
(ア)調査研究費(旅費)
a原告は,A11議員の出張に係る旅費についてされた政務調査費の
支出全額が違法である旨主張するところ,証拠(甲A19,丙A53
の1~丙A85,136~147,150,証人A11)及び弁論の
全趣旨によれば,A11議員は,①平成20年4月7日に,水族館や
経済活性化と資金調達,国際経済状況について調査するために東京都
へ,②同年4月15日から同月16日にかけて,スポーツ振興やスポ
ーツ施設等について調査するために長野市へ,③同月22日から同月
23日にかけて,経済活性化と街づくり,世界経済と地域の関わりに
ついて調査するために東京都へ出張するなど,別紙6「A11議員の
出張一覧」のとおり,「出張期間」記載の期間に,「調査研究項目」
記載の目的に基づき,「出張先」記載の場所を訪問する合計33回の
出張をしたこと,上記各出張に係る旅費が政務調査費から支出された
ことが認められる。
b原告は,上記各出張について,政務調査とは異なる目的での出張で
あることや,出張の具体的内容や成果が明らかではないことなどを理
由に,政務調査費から支出した旅費の全額が違法である旨主張する。
(a)まず,証拠(丙A53の1,2,丙A54の1,2,丙A76,
138,150)及び弁論の全趣旨によれば,別紙6「A11議員
の出張一覧」の②③⑩の出張について,出張前に提出された届出書
記載の用務先やA11議員の陳述書に記載された用務先と,出張後
に提出された政務調査費支払証明書記載の行程との間に,一部齟齬
があることが認められる(例えば,②の出張について,出張前に提
出する届出書には用務先が「東京・長野」と記載されているが,政
務調査費支払証明書には東京が記載されていない。)。
しかし,上記のいずれの齟齬も,事前の届出書に記載された複数
の目的地の一部のみが,政務調査費支払証明書に記載されているに
とどまり,同証明書に記載された行程に基づいて計算された金額が
政務調査費から支出されているのであって,上記届出書に記載され
ていない目的地に出張したとして旅費を政務調査費から支出したと
か,実際には訪問していないにもかかわらず,旅費を政務調査費か
ら支出したと認めるには足りない。予定されていた目的地の範囲を
縮小して出張したとしても,直ちに調査研究目的が失われることに
はならないというべきであるから,上記の齟齬を理由に支出が違法
であるということはできない。
(b)証拠(丙A150,証人A11)によれば,A11議員は,複
数の出張先で国会議員や法人役員等と面会したことが認められると
ころ(例えば,別紙6「A11議員の出張一覧」の⑩の出張は,目
的先が参議院議員会館であり,参議院議員と面会したことが認めら
れる。),原告は,政務調査活動ではなくA11議員自らの政治活
動のための出張であった旨主張する。
しかし,議員や法人役員と面会して上記別紙記載の調査研究項目
について意見交換を行い,レクチャーを受けた旨の説明が不合理で
あるとまでいうことはできず,出張において議員や会社役員と面会
したことを理由に政務調査費の支出が違法であったということはで
きない。
(c)別紙6「A11議員の出張一覧」の出張先には,博物館や水族
館などの観光施設が含まれるが,観光政策に係る調査研究のために
観光施設を訪問し,視察することにも調査研究活動としての必要性
や合理性を認め得るというべきであり,当時,仙台市において水族
館を建設するという話があったなどのA11議員の証言をも併せ考
慮すると,観光施設を訪問したことのみを理由に当該出張と政務調
査との関連性を否定することはできないというべきである。
(d)原告は,A11議員が調査研究活動の具体的な内容や成果等を
挙げられていないことを理由に上記政務調査費の支出が違法である
旨主張する。
確かに,A11議員の証言には,具体的な訪問先や成果について
不明である部分が存するが,同議員は,別紙6「A11議員の出張
一覧」記載の「調査研究項目」に関連する人物と面会したこと,仙
台市における水族館の設置や地下鉄事業,スポーツ施設や文化施設
の効果的な運営方法等に係る調査をするために出張したことなどを
証言しており,その目的や出張先に不合理な点はうかがえないこと,
上記証言は,上記各出張から5年以上が経過した時点のものである
ことを踏まえると,詳細部分を証言できないからといって,直ちに
政務調査の実質が否定されるとはいい難く,ほかに上記各出張がそ
の実態を欠くとまで認めるに足りる証拠はないというべきである。
(e)また,旅費条例に基づき算出した額を政務調査費からの支出額
とするという取扱いをもって違法であるとはいえないことも,既に
検討したとおりであり,上記各出張に要した旅費の支出が,本件使
途基準に反した違法な出張であったということはできない。
(イ)調査研究費(ガソリン代)
a証拠(丙A150)及び弁論の全趣旨によれば,A11議員が購入
したガソリン代のうち7割(合計25万8552円)が政務調査費か
ら支出されたことが認められるところ,原告は,この支出のうちガソ
リン代金の2分の1を超える部分は違法であると主張する。
b自動車は,その性質上,適宜必要に応じて使用するものであるから,
同一の自動車を調査研究活動とそれ以外の活動に用いている以上,こ
れをいかなる目的でどの程度使用したかを正確に把握することは困難
であるというべきである。
補助参加人自民は,上記の政務調査費の支出は,自動車の使用実態
を踏まえて政務調査活動業務の割合を7割として按分した上での支出
であるから,更なる按分の必要はないと主張するが,その使用実態を
裏付ける客観的資料は認められず,A11議員が使用した上記のガソ
リンが調査研究活動に利用された割合とそれ以外の活動に利用された
割合が立証されているということはできないから,上記ガソリンに係
る代金は,その2分の1を超えて政務調査費から支出することは許さ
れないというべきである。
よって,上記ガソリン代金に係る政務調査費の支出のうち7万38
70円は違法である旨の原告の主張は理由がある。
(ウ)事務費その他の経費
原告は,A11議員が利用した電話料金やデジタルカメラの購入代金
についての政務調査費の支出のうち各料金等の2分の1を超えて支出さ
れた部分が違法である旨主張するところ,弁論の全趣旨によれば,A1
1議員が支払った携帯電話料金の7割並びに固定電話料金及びデジタル
カメラの購入代金等の全額(合計29万2503円)が政務調査費から
支出されたことが認められる。
上記備品等は,調査研究活動に用いるほかにも,私用のみならず,調
査研究活動以外の議員活動,選挙活動,政党活動,後援会活動等の目的
でも日常的に頻繁,かつ容易に使用され得るから,一般的には,調査研
究以外の活動にも利用されていることが推認されるというべきである。
補助参加人自民は,上記備品等は,それぞれの使用実態を踏まえて,
按分の必要があるものは既に按分をした上で政務調査費を支出している
旨主張するが,上記各備品の利用実態を裏付ける客観的資料は認められ
ないから,A11議員が利用した上記備品等が調査研究活動に利用され
た割合とそれ以外の活動に利用された割合が立証されているということ
はできず,上記料金等は,その2分の1を超えて政務調査費から支出す
ることは許されないというべきである。
よって,上記備品等に係る政務調査費の支出のうち9万5271円の
支出は違法である旨の原告の主張は理由がある。
スA12議員
(ア)調査研究費
原告は,A12議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出さ
れた額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき
算出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法
であるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理
由がない。
(イ)人件費
a証拠(丙A118の1~12)及び弁論の全趣旨によれば,A12
議員が平成20年4月から平成21年3月までに雇用していた職員に
支払った報酬のうち8分の5(合計60万円)が政務調査費から支出
されたことが認められるところ,原告は,この支出のうち報酬額の2
分の1を超える部分は違法であると主張する。
b補助参加人自民は,上記の支出額は,上記職員の活動実態を踏まえ
て調査研究活動の補助業務の割合を8分の5として按分した上での支
出であるから,更なる按分の必要はないと主張し,A12議員は,市
政に対する問い合わせや苦情等の対応,特定の課題に対する情報収集
・調査,調査資料の整理,現地調査,広報誌の発送などの業務を職員
に行わせていること,突発的に生じた政務調査以外の業務も行わせて
いるため,実態に照らして8分の5を政務調査費として計上した旨を
説明する(丙A161)。
しかし,A12議員の上記説明を勘案しても,A12議員が長期間
にわたって雇用していた者が従事していた業務の具体的内容は明らか
でないといわざるを得ず,A12議員が支払った上記の人件費は,調
査研究活動に利用された割合とそれ以外の活動に利用された割合が立
証されているということができないから,その2分の1を超えて政務
調査費から支出することは許されないというべきである。
よって,上記支出額のうち12万円は違法な支出である旨の原告の
主張は理由がある。
(ウ)事務費その他の経費
a弁論の全趣旨によれば,A12議員が購入した中古パソコン,デジ
タルカメラ及びプリンターの代金の3分の2(合計22万4840
円)が政務調査費から支出されたことが認められるところ,原告は,
上記支出のうち2分の1を超える部分が違法である旨主張する。
b上記備品等は,調査研究活動に用いるほかにも,私用のみならず,
調査研究活動以外の議員活動,選挙活動,政党活動,後援会活動等の
目的でも日常的に頻繁,かつ容易に使用され得るから,一般的には,
調査研究以外の活動にも利用されていることが推認されるというべき
である。
補助参加人自民は,上記備品等は,使用実態を踏まえて,調査研究
活動業務の割合を3分の2として按分した上での支出であるから,更
なる按分の必要はないと主張するが,その使用実態を裏付ける客観的
資料は認められず,A12議員が利用した上記備品等が調査研究活動
に利用された割合とそれ以外の活動に利用された割合が立証されてい
るということはできないから,上記各代金は,その2分の1を超えて
政務調査費から支出することは許されないというべきである。
よって,上記備品等に係る政務調査費の支出のうち5万6210円
の支出は違法である旨の原告の主張は理由がある。
セA13議員
(ア)調査研究費
原告は,A13議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出さ
れた額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき
算出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法
であるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理
由がない。
(イ)事務費その他の経費
a弁論の全趣旨によれば,A13議員が支払った携帯電話料金の7割
(合計9万9451円)が政務調査費から支出されたことが認められ
るところ,上記支出のうち携帯電話料金の2分の1を超える部分が違
法である旨主張する。
b携帯電話料金は,調査研究活動に用いるほかにも,私用のみならず,
調査研究活動以外の議員活動,選挙活動,政党活動,後援会活動等の
目的でも日常的に頻繁,かつ容易に使用され得るから,一般的には,
調査研究以外の活動にも利用されていることが推認されるというべき
である。
補助参加人自民は,上記の政務調査費の支出は,携帯電話の使用実
態を踏まえて調査研究活動業務の割合を7割として按分した上での支
出であるから,更なる按分の必要はないと主張するが,その使用実態
を裏付ける客観的資料は認められず,A13議員が使用した上記電話
料金が調査研究活動に利用された割合とそれ以外の活動に利用された
割合が立証されているということはできないから,上記電話料金は,
その2分の1を超えて政務調査費から支出することは許されないとい
うべきである。
よって,上記電話料金に係る政務調査費の支出のうち2万8412
円は違法である旨の原告の主張は理由がある。
ソA14議員
原告は,A14議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出され
た額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき算出
した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法である
とはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理由がない。
タA15議員
(ア)資料購入費
弁論の全趣旨によれば,A15議員が購入した住宅地図の代金(2万
0370円)が政務調査費から支出されたことが認められるところ,原
告は,上記支出のうち2分の1を超える部分が違法であると主張する
(なお,A15議員のその余の資料購入費については,原告は第6回口
頭弁論期日において,支出の2分の1を超える部分が違法である旨の主
張を撤回している。)。
住宅地図については,既に検討したのと同様に,その購入に係る支出
が議員の行う調査研究活動のための支出として合理性ないし必要性を欠
くとはいえず,その全額を政務調査費から支出することについて違法と
はいえず,原告の主張は理由がない。
(イ)広報広聴費
a弁論の全趣旨によれば,A15議員のホームページに係る経費(合
計15万7500円)が政務調査費から支出されたことが認められる
ところ,原告は,この支出のうち2分の1を超える部分は違法である
と主張する。
b証拠(甲A5)及び弁論の全趣旨によれば,上記ホームページには,
A15議員のプロフィールや同議員が掲げる政策,議会報告等が掲載
されていることが認められるが,既に検討したとおり,議員のホーム
ページに係る経費については,その2分の1を超えて政務調査費から
支出することは許されないと解するのが相当であるから,上記支出額
のうち7万8750円は違法な支出である旨の原告の主張は理由があ
る。
チA16議員
(ア)調査研究費
原告は,A16議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出さ
れた額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき
算出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法
であるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理
由がない。
(イ)資料購入費
a証拠(甲A18,丙A128)及び弁論の全趣旨によれば,A16
議員が「仙台市制施行120周年記念写真集保存版ふるさと仙
台」と題する書籍を購入した代金1万2600円が政務調査費から支
出されたことが認められるところ,原告は,この支出のうち2分の1
を超える部分は違法であると主張する。
b前掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,上記書籍は,仙台市の文
化や歴史を写真と文章で解説する郷土資料であるから,市政との関
連性を認めることができ,A16議員は,これを調査研究活動の資
料として利用したと認めるのが相当であるから,その購入に係る支
出が調査研究活動のための支出として合理性ないし必要性を欠くと
はいえず,その全額を政務調査費から支出することについて違法と
はいえない。
(ウ)人件費
a原告は,A16議員が使用した人件費に係る政務調査費のうち2分
の1を超える部分は違法であると主張するところ,証拠(丙A119
の1~18)及び弁論の全趣旨によれば,A16議員が平成20年4
月から平成21年3月までに雇用していた職員に支払った報酬(少な
くとも合計72万円)の全額が政務調査費から支出されたことが認め
られる。
b補助参加人自民は,上記支出は調査研究活動の補助業務に特定して
雇用している者に対する支出であると主張し,A16議員は,平成2
0年4月から同年9月までは2名の補助職員を,同年10月以降は1
名の補助職員を雇用したこと,補助職員の業務内容は,有害鳥獣対策,
地域防犯活動,幼児保育などに関する調査・情報収集などであり,い
ずれも市政全般に関する調査業務であること,週1日程度勤務してい
た補助職員に対しては毎月2万円を支給し,週3日程度勤務していた
補助職員に対しては毎月5万円を支給していたことなどを説明する
(丙A162)。
しかし,A16議員の上記説明を勘案しても,A16議員が長期間
にわたって雇用していた者が従事していた業務の具体的内容は明らか
でないといわざるを得ず,A16議員が支払った上記の人件費は,調
査研究活動の補助業務のみに利用されたと認めるに足りず,また,調
査研究活動に利用された割合とそれ以外の活動に利用された割合が立
証されているということもできないから,その2分の1を超えて政務
調査費から支出することは許されないというべきである。
よって,上記支出額のうち2分の1に相当する36万円は違法な支
出である旨の原告の主張は理由がある。
(エ)事務所費
a証拠(丙A129)及び弁論の全趣旨によれば,A16議員が支払
った事務所の賃料の全額(合計48万円)が政務調査費から支出され
たことが認められるところ,原告は,この支出のうち2分の1を超え
る部分は違法であると主張する。
b補助参加人自民は,上記事務所は調査研究活動以外には使用してい
ないと主張するが,上記事務所の利用実態を裏付ける客観的資料は認
められず,上記事務所が調査研究活動に利用された割合とそれ以外の
活動に利用された割合が立証されているということはできないから,
上記事務所の賃料は,その2分の1を超えて政務調査費から支出する
ことは許されないというべきである。
よって,上記賃料に係る政務調査費の支出のうち2分の1を超える
額である24万円は違法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
(オ)事務費その他の経費
a証拠(甲2の1)及び弁論の全趣旨によれば,A16議員が支払っ
た電話料金及び資料代(パソコン代)合計11万2320円の全額が
政務調査費から支出されたことが認められるところ,原告は,この支
出のうち2分の1を超える部分は違法であると主張する。
b上記備品等は,調査研究活動に用いるほかにも,私用のみならず,
調査研究活動以外の議員活動,選挙活動,政党活動,後援会活動等の
目的でも日常的に頻繁,かつ容易に使用され得るから,一般的には,
調査研究以外の活動にも利用されていることが推認されるというべき
である。
補助参加人自民は,上記備品等は全て調査研究活動に使用している
と主張するが,上記備品等の使用実態を裏付ける客観的資料は認めら
れないから,A16議員が使用した上記備品等が調査研究活動に利用
された割合とそれ以外の活動に利用された割合が立証されているとい
うことはできず,上記備品等の代金については,その2分の1を超え
て政務調査費から支出することは許されないというべきである。
よって,上記支出のうち2分の1を超える額である5万6160円
は違法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
ツA17議員
(ア)調査研究費
原告は,A17議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出さ
れた額全額の返還を求めているが,第6回口頭弁論期日において,上記
出張は政務調査を目的として行われたものであることが明らかになった
として全額が違法である旨の主張を撤回している。
原告は,A17議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出さ
れた額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき
算出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法
であるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理
由がない。
(イ)人件費
a証拠(丙A120の1~36)及び弁論の全趣旨によれば,A17
議員が平成20年4月から平成21年3月までに雇用していた職員に
支払った報酬の全額(合計119万4000円)が政務調査費から支
出されたことが認められるところ,原告は,この支出のうち2分の1
を超える部分は違法であると主張する。
b補助参加人自民は,上記支出は調査研究活動の補助業務に特定し
て雇用している者に対する支出であると主張し,A17議員は,住
民からの相談や陳情の聞き取り,現地調査,情報収集を目的に補助
職員を雇用していること,ふだんから業務を依頼している補助職員
は3名であり,補助職員は,調査業務の多寡に応じて一か月当たり
4日から8日程度勤務していたことなどを説明する(丙A163)。
しかし,A17議員の上記説明を勘案しても,A17議員が長期間
にわたって雇用していた者が従事していた業務の具体的内容は明らか
でないといわざるを得ず,A17議員が支払った上記の人件費は,調
査研究活動の補助業務のみに利用されたと認めるに足りず,また,調
査研究活動に利用された割合とそれ以外の活動に利用された割合が立
証されているということもできないから,その2分の1を超えて政務
調査費から支出することは許されないというべきである。
よって,上記支出額のうち2分の1に相当する59万7000円は
違法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
(ウ)事務費その他の経費
a証拠(甲2の1)及び弁論の全趣旨によれば,A17議員が支払っ
たノートパソコン代,レーザープリンタ代等の全額(合計34万54
08円)が政務調査費から支出されたことが認められるところ,原告
は,上記支出のうち2分の1を超える部分が違法である旨主張する。
b上記各備品は,調査研究活動に用いるほかにも,私用のみならず,
調査研究活動以外の議員活動,選挙活動,政党活動,後援会活動等の
目的でも日常的に頻繁,かつ容易に使用され得るから,一般的には,
調査研究以外の活動にも利用されていることが推認されるというべき
である。
補助参加人自民は,上記各備品は全て調査研究活動に使用している
と主張するが,上記各備品の使用実態を裏付ける客観的資料は認めら
れないから,A17議員が使用した上記各備品が調査研究活動に利用
された割合とそれ以外の活動に利用された割合が立証されているとい
うことはできず,上記各備品の代金については,その2分の1を超え
て政務調査費から支出することは許されないというべきである。
よって,上記支出のうち2分の1を超える額である17万2704
円は違法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
テA18議員
(ア)調査研究費
原告は,A18議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出さ
れた額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき
算出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法
であるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理
由がない。
(イ)資料購入費
証拠(甲A18)及び弁論の全趣旨によれば,A18議員が「仙台市
制施行120周年記念写真集保存版ふるさと仙台」(1万2600
円)と題する書籍等を購入した代金合計1万7210円が政務調査費か
ら支出されたことが認められるところ,原告は,この支出のうち2分の
1を超える部分は違法であると主張する。
しかし,「仙台市制施行120周年記念写真集保存版ふるさと仙
台」と題する書籍については,既に検討したとおり,代金を按分するこ
となく全額につき政務調査費から支出されたことが違法であるというこ
とはできない。
もっとも,上記書籍以外の書籍(上記合計額1万7210円からふる
さと仙台の代金1万2600円を控除した4610円分の書籍)につい
ては,題名や内容等が明らかではなく,市政との関連性は不明であると
いわざるを得ない。
よって,題名等が明らかではない書籍の購入費用の2分の1に相当す
る2305円は違法な支出であるという限度で原告の主張は理由がある。
ト小括
以上によれば,補助参加人自民に係る違法な支出の合計額は,658万
9635円である。
(2)被告補助参加人民主クラブ仙台(以下「補助参加人民主」という。)
ア会派全体
(ア)調査研究費
原告は,補助参加人民主の出張に係る旅費について政務調査費から支
出された額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基
づき算出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって
違法であるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張
は理由がない。
(イ)研修費
a原告は,補助参加人民主による研修費の支出の全額が違法であると
主張するところ,証拠(丙B2~4,31,証人F)及び弁論の全趣
旨によれば,以下の事実が認められる。
(a)補助参加人民主は,平成20年5月22日から同月23日にか
けて,仙台市所在のホテルにおいて,会派基本政策の確認及び平成
20年度調査活動をテーマとした会派研修会を実施し,会派の基本
方針と今後の会派の調査研究活動の方針の確認や,仙台市当局の職
員らと行政改革の進捗状況及び財政状況等についての議論などを行
った。
(b)補助参加人民主は,同月22日の昼食代として単価2310円
の幕の内弁当12個の代金を,同月23日の昼食代として合計1万
2100円を上記ホテルに支払った。
(c)補助参加人民主は,上記ホテルに支払った(b)の各昼食代,コー
ヒー代,コピー代及び会場料の合計11万0778円を,研修費と
して政務調査費から支出した。
b原告は,研修内容に会派基本政策の確認,会派総会等が含まれてい
ることからして,もっぱら会派内での親睦を深めるための会合であっ
たことをうかがわせるから,支出の全額が違法であると主張するが,
上記研修会は,そのテーマや行われた内容に照らすと,調査研究活動
と関連する研修会であったと認めることができ,原告の上記主張は採
用することができない。
原告は,仮に上記研修会を調査研究活動とみる余地があるとしても,
1食1000円を超える昼食代の支出は社会通念上相当な範囲を超え
て違法であると主張するが,研修会の際に単価2310円の幕の内弁
当を昼食とすること(上記a(b))をもって,会派に与えられた政務
調査費の支出に係る裁量の範囲を逸脱・濫用したとまでは認められず,
原告の上記主張も採用することができない。
原告は,上記ホテルが発行した請求領収書(丙B4)記載の合計額
は9万8678円であり政務調査費から支出した11万0778円と
の差額である1万2100円については,政務調査費として支出した
という説明が何らされていないから違法である旨主張するが,上記認
定事実に証拠(丙B4)及び弁論の全趣旨を併せると,上記の差額は,
上記請求領収書に昼食代1万2100円(上記認定事実a(b))が記
載されていないことにより生じたものにすぎないことが認められるか
ら,原告の指摘によっても上記支出の違法を認めることはできない。
したがって,上記研修費に係る政務調査費の支出が,本件使途基準
に反した違法な支出であったということはできない。
(ウ)資料作成費
a証拠(丙B31)及び弁論の全趣旨によれば,補助参加人民主が,
会派控室に設置しているパソコンのサポート代金や消耗品,コピー機
に係る経費(合計49万0096円)を,政務調査費から支出したこ
とが認められるところ,原告は,この支出のうち2分の1を超える部
分は違法であると主張する。
b会派控室は,既に検討したとおり,各会議出席のための準備,待機
・休憩が基本的な用途であることや,そもそも会派や議員が行う活動
は極めて広範かつ多岐にわたるものであること,パソコンやコピー機
等は,その性質上,適宜必要に応じて使用するものであり,いかなる
目的でどの程度使用したかを正確に把握することは困難であるという
べきであることを総合考慮すると,一般的,外形的事実からは,会派
控室における上記備品等は,調査研究活動以外の活動にも利用されて
いることが推認されるというべきである。
補助参加人民主は,所属議員全員の申合せにより,後援会活動や政
党活動,選挙活動等への使用を禁止しており,実際にこれらの活動に
使用されることは全くない上,政務調査活動と議会活動は密接不可分
の関係にあるから議会活動に関連した活動がなされることを理由とし
て按分する必要はない旨主張し,証拠(丙B5,31)及び弁論の全
趣旨によれば,補助参加人民主は,平成19年5月16日,所属議員
全員の合意によって,会派控室を,各議員の後援会活動や選挙活動,
政党活動,その他会派が不適切と認めた活動に使用することは禁止す
る旨の申合せをしたことが認められる。
しかし,会派や議員が行う活動は,上記申合せで禁止された活動以
外にも,調査研究活動に属しない種類のものがあり得ると考えられ,
上記申合せの存在をもってしても,会派控室におけるパソコンやコピ
ー機等が調査研究活動のみに利用されたと認めるには足りないという
べきであり,ほかにこれらが調査研究活動のみに利用された事実を認
めるに足りる証拠はなく,調査研究活動に利用された割合とそれ以外
の活動に利用された割合が具体的に立証されているということもでき
ない。
よって,会派控室におけるパソコンやコピー機等に係る経費は,そ
の2分の1を超えて政務調査費から支出することは許されないという
べきであり,補助参加人民主が支出した額の2分の1に相当する24
万5044円は違法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
(エ)資料購入費
弁論の全趣旨によれば,補助参加人民主が「仙台市制施行120周年
記念写真集保存版ふるさと仙台」と題する書籍を購入した代金1万
2600円が政務調査費から支出されたことが認められるところ,原告
は,この支出のうち2分の1を超える部分は違法であると主張する。
しかし,既に検討したとおり,上記書籍の代金を按分することなく全
額につき政務調査費から支出されたことが違法であるということはでき
ないから,原告の主張は理由がない。
(オ)人件費
a原告は,補助参加人民主が政務調査費から会派控室の常勤職員及び
臨時職員の人件費を支出したことにつき,その2分の1を超える部分
は違法である旨主張するところ,証拠(丙B8~13の4,丙B3
1)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(a)補助参加人民主は,以下の条件で,会派控室における常勤職員
を雇用した。
業務内容会派の事務全般及び政務調査活動の補助
雇用期間平成20年4月1日から平成21年3月31日
賃金月額15万6400円(専ら政務調査活動の補助に従
事する分としての4万6000円を含む。)
ただし,6月には8万6400円,9月には4万10
00円,12月には11万0400円,3月には5万7
000円を上乗せして支給する。
(b)補助参加人民主は,上記常勤職員の人件費につき,平成20年
4月から同年8月,及び同年10月から平成21年2月については
毎月4万6000円を,平成20年9月については8万7000円
を,平成21年3月については10万3000円を政務調査費から
支出した。
(c)補助参加人民主は,職員雇用費交付規則に基づき,上記常勤職
員1名当たり毎月11万0400円及び特別手当を仙台市から支給
されている(会派職員雇用費補助)。
(d)補助参加人民主は,平成20年12月8日,4名の臨時職員に
対し,補助参加人民主の広報誌であり,会派の基本政策,市政への
取組に係る基本認識,会派や所属議員の紹介等が掲載されている
「民主クラブ仙台ニュース11月号」の発送作業のアルバイト代と
して,それぞれ1万2400円,1万9200円,1万4800円,
2万2800円を支給し,当該経費を政務調査費から支出した。
b(a)まず,常勤職員に係る人件費について検討するに,会派控室に
勤務する常勤職員の事務が調査研究活動の補助に当たるか否かにつ
いては容易に峻別し難い面があるといわざるを得ないことは,既に
検討したとおりであり,上記常勤職員が調査研究活動に利用される
割合とそれ以外の活動に利用される割合が立証されているというこ
とはできないから,当該職員に係る人件費は,その2分の1を超え
て政務調査費から支出することは許されないというべきである。
補助参加人民主は,上記常勤職員には会派職員雇用費補助が充て
られ,政務調査費から支出しているのは給与の2分の1を下回る旨
主張するが,既に検討したとおり,会派職員雇用費補助は当該職員
の業務全体に対して交付されると考えるべきであるから,会派控室
に配置された常勤職員の人件費の一部が会派職員雇用費補助により
まかなわれている事実は,残額について支払われた政務調査費の按
分に係る上記の結論を左右するということはできない。
したがって,補助参加人民主が会派控室の常勤職員の人件費とし
て政務調査費から支出した額の2分の1に相当する32万5000
円は違法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
(b)次に,臨時職員に係る人件費について検討する。
上記臨時職員らが従事した業務は,補助参加人民主の広報誌の発
送作業であるところ,上記広報誌には,会派の基本政策及び会派や
所属議員の紹介等が掲載されており,掲載されている情報の全てが
議員の調査研究に資するものとは考え難く,また,それらの情報を
調査研究に資するものとそれ以外のものとに峻別することも現実的
には困難である。
そうすると,上記広報誌の発送に係る経費については,その2分
の1を超えて政務調査費から支出することは許されないと解するの
が相当である。
よって,上記支出額のうち3万4600円は違法な支出である旨
の原告の主張は理由がある。
(カ)事務費その他の経費
a証拠(丙B31)及び弁論の全趣旨によれば,補助参加人民主が,
会派控室におけるパソコンやシュレッダー,USBメモリー,テレビ
等の事務機器等に係る経費として,合計92万8075円を政務調査
費から支出したことが認められるところ,原告は,そのうち2分の1
を超える部分は違法である旨主張する。
b一般的,外形的事実からは,会派控室における上記事務機器等は,
調査研究活動以外の活動にも利用されていることが推認されるという
べきであるところ,補助参加人民主は,これらは全て調査研究活動の
みに使用されている旨主張する。
しかし,既に検討したところによれば,補助参加人民主の会派控室
におけるパソコン関連用品,シュレッダー等が調査研究活動のみに利
用された事実を認めるに足りる証拠はなく,調査研究活動に利用され
た割合とそれ以外の活動に利用された割合が具体的に立証されている
ということもできないから,これらに係る経費は,その2分の1を超
えて政務調査費から支出することは許されないというべきであり,補
助参加人民主が支出した額の2分の1に相当する46万4037円は
違法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
イB1議員
(ア)調査研究費
原告は,B1議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出され
た額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき算
出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法で
あるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理由
がない。
(イ)広報広聴費
a証拠(甲B2)及び弁論の全趣旨によれば,B1議員のホームペー
ジに係る経費(合計63万円)が政務調査費から支出されたことが認
められるところ,原告は,この支出のうち2分の1を超える部分は違
法であると主張する。
b証拠(甲B2)及び弁論の全趣旨によれば,上記ホームページには,
B1議員のプロフィールや同議員が掲げる政策等が掲載されているこ
とが認められるが,既に検討したとおり,議員のホームページに係る
経費については,その2分の1を超えて政務調査費から支出すること
は許されないと解するのが相当であるから,上記支出額のうち2分の
1に相当する31万5000円は違法な支出である旨の原告の主張は
理由がある。
(ウ)事務費その他の経費
a弁論の全趣旨によれば,B1議員が支払った会派控室用のパソコン
に係る代金11万4240円の全額が政務調査費から支出されたこと
が認められるところ,原告は,この支出のうち2分の1を超える部分
は違法であると主張する。
b既に検討したところによれば,会派控室で用いるためのパソコンで
あっても,一般的,外形的事実からは,調査研究活動以外の活動にも
利用されていることが推認されるというべきであるところ,補助参加
人民主は,これは調査研究活動のみに使用されている旨主張する。
しかし,上記パソコンが調査研究活動のみに利用された事実を認め
るに足りる証拠はなく,調査研究活動に利用された割合とそれ以外の
活動に利用された割合が具体的に立証されているということもできな
いから,これに係る経費は,その2分の1を超えて政務調査費から支
出することは許されないというべきである。
よって,上記支出額のうち2分の1に相当する5万7120円は違
法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
ウB2議員
(ア)調査研究費
原告は,B2議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出され
た額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき算
出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法で
あるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理由
がない。
(イ)資料作成費
a証拠(甲B3)及び弁論の全趣旨によれば,B2議員のホームペー
ジの新規作成に係る経費(21万円)が政務調査費から支出されたこ
とが認められるところ,原告は,この支出のうち2分の1を超える部
分は違法であると主張する。
b証拠(甲B3)及び弁論の全趣旨によれば,上記ホームページには,
B2議員のプロフィールや同議員が掲げる政策等が掲載されているこ
とが認められるが,既に検討したとおり,議員のホームページに係る
経費については,その2分の1を超えて政務調査費から支出すること
は許されないと解するのが相当であるから,上記支出額のうち2分の
1に相当する10万5000円は違法な支出である旨の原告の主張は
理由がある。
(ウ)資料購入費
a弁論の全趣旨によれば,B2議員が住宅地図を購入した代金1万5
120円が政務調査費から支出されたことが認められるところ,原告
は,この支出のうち2分の1を超える部分は違法であると主張する。
b住宅地図については,既に検討したのと同様に,その購入に係る支
出が議員の行う調査研究活動のための支出として合理性ないし必要性
を欠くとはいえず,その全額を政務調査費から支出することについて
違法とはいえず,原告の主張は理由がない。
(エ)広報広聴費
上記(イ)における認定事実及び弁論の全趣旨によれば,B2議員の上
記ホームページの運営等に係る経費(合計52万5000円)が政務調
査費から支出されたことが認められるところ,原告は,この支出のうち
2分の1を超える部分は違法であると主張する。
既に検討したとおり,上記ホームページに係る経費は,その2分の1
を超えて政務調査費から支出することは許されないと解するのが相当で
あるから,上記支出額のうち26万2500円は違法な支出である旨の
原告の主張は理由がある。
(オ)事務費その他の経費
a弁論の全趣旨によれば,B2議員が会派控室用に購入したパソコン
及び2万枚の封筒の印刷の代金合計21万4270円が政務調査費か
ら支出されていることが認められるところ,原告は,この支出のうち
2分の1を超える部分は違法であると主張する。
b上記パソコンについて,既に検討したところによれば,会派控室で
用いるためのパソコンであっても,一般的,外形的事実からは,調査
研究活動以外の活動にも利用されていることが推認されるというべき
である。補助参加人民主は,これは調査研究活動のみに使用されてい
る旨主張するが,上記パソコンが調査研究活動のみに利用された事実
を認めるに足りる証拠はなく,調査研究活動に利用された割合とそれ
以外の活動に利用された割合が具体的に立証されているということも
できない。
上記封筒について,封筒は,その性質上,適宜必要に応じて使用す
ることができるものであるから,一般的,外形的事実からは,調査研
究活動以外の活動にも利用されていることが推認されるというべきで
ある。補助参加人民主は,封筒について,民主クラブ仙台ニュース及
び仙台市議会民主クラブ仙台調査活動報告の発送にしか利用していな
い旨主張するが,2万枚もの封筒の使途を客観的に裏付ける証拠はな
い上,既に検討したとおり,民主クラブ仙台ニュースに掲載されてい
る情報の全てが調査研究に資するものとは考え難く,また,それらの
情報を調査研究に資するものとそれ以外のものとに峻別することも現
実的には困難である。
よって,上記各代金について,その2分の1を超えて政務調査費か
ら支出することは許されないというべきであり,上記支出額のうち2
分の1に相当する10万7135円は違法な支出である旨の原告の主
張は理由がある。
エB3議員
(ア)調査研究費
原告は,B3議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出され
た額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき算
出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法で
あるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理由
がない。
(イ)資料購入費
a証拠(丙B15)及び弁論の全趣旨によれば,B3議員が河北新報
データベース「KD」を購入した代金2万1000円が政務調査費か
ら支出されたことが認められるところ,原告は,この支出のうち2分
の1を超える部分は違法であると主張する。
b証拠(丙B15)及び弁論の全趣旨によれば,上記データベースは
平成3年8月以降の河北新報の記事を収録したものであるから,市政
との関連性を認めることができ,B3議員は,これを調査研究活動の
資料として利用したと認めるのが相当であるから,その購入に係る支
出が調査研究活動のための支出として合理性ないし必要性を欠くとは
いえず,その全額を政務調査費から支出することについて違法とはい
えない。
オB4議員
(ア)調査研究費
原告は,B4議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出され
た額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき算
出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法で
あるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理由
がない。
(イ)事務費その他の経費
a弁論の全趣旨によれば,B4議員が支払った会派控室用のパソコン
のOSの代金3万2934円の全額が政務調査費から支出されたこと
が認められるところ,原告は,この支出のうち2分の1を超える部分
は違法であると主張する。
b既に検討したところによれば,会派控室で用いるためのパソコンで
あっても,一般的,外形的事実からは,調査研究活動以外の活動にも
利用されていることが推認されるというべきであるところ,補助参加
人民主は,これらは全て調査研究活動のみに使用されている旨主張す
る。
しかし,上記パソコンが調査研究活動のみに利用された事実を認め
るに足りる証拠はなく,調査研究活動に利用された割合とそれ以外の
活動に利用された割合が具体的に立証されているということもできな
いから,これに係る経費は,その2分の1を超えて政務調査費から支
出することは許されないというべきである。
よって,上記支出額のうち2分の1に相当する1万6467円は違
法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
カB5議員
原告は,B5議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出された
額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき算出し
た額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法であると
はいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理由がない。
キB6議員
(ア)調査研究費
原告は,B6議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出され
た額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき算
出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法で
あるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理由
がない。
(イ)資料購入費
a弁論の全趣旨によれば,B6議員が住宅地図を購入した代金1万7
955円が政務調査費から支出されたことが認められるところ,原告
は,この支出のうち2分の1を超える部分は違法であると主張する。
b住宅地図については,既に検討したのと同様に,その購入に係る支
出が議員の行う調査研究活動のための支出として合理性ないし必要性
を欠くとはいえず,その全額を政務調査費から支出することについて
違法とはいえず,原告の主張は理由がない。
クB7議員
(ア)調査研究費
原告は,B7議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出され
た額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき算
出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法で
あるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理由
がない。
(イ)資料購入費
a弁論の全趣旨によれば,B7議員がボイスレコーダーを購入した代
金2万1300円が政務調査費から支出されたことが認められるとこ
ろ,原告は,この支出のうち2分の1を超える部分は違法であると主
張する(なお,B7議員のその余の資料購入費については,原告は第
7回口頭弁論期日において,支出の2分の1を超える部分が違法な支
出である旨の主張を撤回している。)。
bボイスレコーダーについては,その性質上,適宜必要に応じて使用
することができるものであるから,一般的,外形的事実からは,調査
研究活動以外の活動にも利用されていることが推認されるというべき
である。
補助参加人民主は,上記ボイスレコーダーは調査研究活動のみに使
用しており,その目的以外に使用することはないと主張するが,その
使用実態を裏付ける客観的資料は認められず,B7議員が購入した上
記ボイスレコーダーが調査研究活動に利用された割合とそれ以外の活
動に利用された割合が立証されているということはできないから,上
記代金は,その2分の1を超えて政務調査費から支出することは許さ
れないというべきである。
よって,上記支出のうち2分の1に相当する1万0650円は違法
な支出である旨の原告の主張は理由がある。
ケB8議員
(ア)資料購入費
a証拠(丙B16)及び弁論の全趣旨によれば,B8議員が購入した
月刊誌「フォーサイト」の代金1万2000円が政務調査費から支出
されたことが認められるところ,原告は,この支出のうち2分の1を
超える部分は違法であると主張する。
b原告は,上記月刊誌は,調査研究活動のみに必要な情報を与える類
の資料ではないと主張するが,証拠(丙B16)及び弁論の全趣旨に
よれば,上記月刊誌は,主に国内外の政治問題や社会問題を掲載する
雑誌であることが認められるから,市政との関連性を認めることがで
き,B8議員は,これを調査研究活動の資料として利用したと認める
のが相当であるから,その購入に係る支出が調査研究活動のための支
出として合理性ないし必要性を欠くとはいえず,その全額を政務調査
費から支出することについて違法とはいえない。
(イ)事務費その他の経費
a弁論の全趣旨によれば,B8議員が購入した電子辞書の代金3万2
800円が政務調査費から支出されたことが認められるところ,原告
は,上記支出のうち2分の1を超える部分が違法である旨主張する。
b電子辞書は,その性質上,適宜必要に応じて使用するものであり,
いかなる目的でどの程度使用したかを正確に把握することは困難であ
るというべきであるから,一般的,外形的事実からは,上記電子辞書
は,調査研究活動以外の活動にも利用されていることが推認されると
いうべきである。
上記電子辞書の使用実態を裏付ける客観的資料は認められず,これ
が調査研究活動のみに利用されたと認めるに足りる証拠はなく,調査
研究活動に利用された割合とそれ以外の活動に利用された割合が具体
的に立証されているということもできない。
したがって,上記電子辞書に係る政務調査費の支出のうち2分の1
に相当する1万6400円は違法な支出である旨の原告の主張は理由
がある。
コB9議員
原告は,B9議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出された
額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき算出し
た額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法であると
はいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理由がない。
サB10議員
(ア)証拠(甲B4,7)及び弁論の全趣旨によれば,B10議員が支払
った会派控室用のパソコン及びソフトセットに係る代金並びにホームペ
ージの製作費(合計51万5000円)の全額が政務調査費から支出さ
れたことが認められるところ,原告は,この支出のうち2分の1を超え
る部分は違法であると主張する。
(イ)既に検討したところによれば,会派控室で用いるためのパソコンで
あっても,一般的,外形的事実からは,調査研究活動以外の活動にも利
用されていることが推認されるというべきであるところ,補助参加人民
主は,上記パソコン及びソフトセットは調査研究活動のみに使用されて
いる旨主張する。
しかし,上記パソコン及びソフトセットが調査研究活動のみに利用さ
れた事実を認めるに足りる証拠はなく,調査研究活動に利用された割合
とそれ以外の活動に利用された割合が具体的に立証されているというこ
ともできないから,これらに係る経費は,その2分の1を超えて政務調
査費から支出することは許されないというべきである。
上記ホームページについては,証拠(甲B4,7)及び弁論の全趣旨
によれば,補助参加人民主が掲げる政策やB10議員の活動レポート,
同議員が飼育している犬の紹介等が掲載されていることが認められるが,
既に検討したとおり,議員のホームページに係る経費については,その
2分の1を超えて政務調査費から支出することは許されないと解するの
が相当である。
よって,上記支出額のうち2分の1に相当する25万7500円は違
法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
シ小括
以上によれば,補助参加人民主に係る違法な支出の合計額は,221万
6453円である。
(3)被告補助参加人きぼう(以下「補助参加人きぼう」という。)
ア会派全体
(ア)調査研究費
原告は,補助参加人きぼうの出張に係る旅費について政務調査費から
支出された額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に
基づき算出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもっ
て違法であるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主
張は理由がない。
(イ)資料作成費
a証拠(丙C41)及び弁論の全趣旨によれば,補助参加人きぼうが
会派控室で使用するISDNやADSLの使用料,プロバイダ契約料,
コピーカウント料の全額(合計24万6440円)を政務調査費から
支出したことが認められるところ,原告は,この支出のうち2分の1
を超える部分は違法であると主張する。
b会派控室は,既に検討したとおり,各会議出席のための準備,待機
・休憩が基本的な用途であることや,そもそも会派や議員が行う活動
は極めて広範かつ多岐にわたるものであること,パソコンやコピー機
等は,その性質上,適宜必要に応じて使用するものであり,いかなる
目的でどの程度使用したかを正確に把握することは困難であるという
べきであることを総合考慮すると,一般的,外形的事実からは,会派
控室における上記備品等は,調査研究活動以外の活動にも利用されて
いることが推認されるというべきである。
補助参加人きぼうは,会派控室における上記備品等については,会
派の取り決めにより,後援会活動及び個人使用を禁止していることか
ら,按分の必要はない旨主張し,証拠(丙C3の1,2)及び弁論の
全趣旨によれば,補助参加人きぼうは,会派確認事項として,会派に
備えてある電話,テレビ,パソコン,インターネット等の備品は控室
で利用し,政治活動や後援会活動での利用はできないこと,会派に備
えてあるビデオカメラ,カメラ等の持出し可能な機器類についての使
用は,政務調査用のものであり,その他の用途には使用できないこと,
会派控室において後援会活動及び選挙活動の一切を禁ずること,会派
内において個人的業務の依頼を一切禁ずることなどの申合せをしてい
ることが認められる。
しかし,会派や議員が行う活動は,上記申合せで禁止された活動以
外にも,調査研究活動に属しない種類のものがあり得ると考えられ,
上記申合せの存在をもってしても,会派控室におけるパソコンやコピ
ー機等が調査研究活動のみに利用されたと認めるには足りないという
べきであり,ほかにこれらが調査研究活動のみに利用された事実を認
めるに足りる証拠はなく,調査研究活動に利用された割合とそれ以外
の活動に利用された割合が具体的に立証されているということもでき
ない。
よって,会派控室におけるパソコンやコピー機等に係る経費は,そ
の2分の1を超えて政務調査費から支出することは許されないという
べきであり,補助参加人きぼうが支出した額の2分の1に相当する1
2万3216円は違法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
(ウ)人件費
a原告は,補助参加人きぼうが政務調査費から会派控室の常勤職員及
び非常勤職員の人件費を支出したことにつき,その2分の1を超える
部分は違法である旨主張するところ,証拠(丙C5の1,2,丙C2
1の1~丙C22の12,丙C34)及び弁論の全趣旨によれば,以
下の事実が認められる。
(a)補助参加人きぼうは,以下の条件で,常勤職員1名を雇用した。
業務内容会派控室内整理,来客電話対応,調査研究補助,経理,
その他
就業場所会派控室,自宅,その他
雇用期間平成20年4月1日から平成21年3月31日
賃金基本給11万0400円,その他政務調査補助費5万

(b)補助参加人きぼうは,上記常勤職員の人件費につき,平成20
年4月から平成21年3月まで,毎月8万円(政務調査補助費名目
5万円,超過勤務手当名目3万円)を政務調査費から支出した(合
計96万円)。
(c)補助参加人きぼうは,上記常勤職員について,職員雇用費交付
規則に基づき,毎月11万0400円及び特別手当を仙台市から支
給されている(会派職員雇用費補助)。
(d)補助参加人きぼうは,以下の条件で非常勤職員1名を雇用した。
業務内容政務調査費経理・整理補助
就業場所会派控室,その他
雇用期間平成20年4月1日から平成21年3月31日
賃金月額4万円その他時間外手当あり
(e)補助参加人きぼうは,上記非常勤職員につき,平成20年4月
から平成21年3月までの人件費の全額(合計69万円)を政務調
査費から支出した。
b(a)まず,常勤職員に係る人件費について検討するに,会派控室に
勤務する常勤職員の事務が調査研究活動の補助に当たるか否かにつ
いては容易に峻別し難い面があるといわざるを得ないことは,既に
検討したとおりであり,上記常勤職員が調査研究活動に利用される
割合とそれ以外の活動に利用される割合が立証されているというこ
とはできないから,当該職員に係る人件費は,その2分の1を超え
て政務調査費から支出することは許されないというべきである。
補助参加人きぼうは,上記常勤職員について,会派職員雇用費補
助を受けているが,既に検討したとおり,会派職員雇用費補助は当
該職員の業務全体に対して交付されると考えるべきであるから,会
派控室に配置された常勤職員の人件費の一部が会派職員雇用費補助
によりまかなわれている事実は,残額について支払われた政務調査
費の按分に係る上記の結論を左右するということはできない。
したがって,補助参加人きぼうが会派控室の常勤職員の人件費と
して政務調査費から支出した額の2分の1に相当する48万円は違
法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
(b)次に,非常勤職員に係る人件費について検討する。
補助参加人きぼうは,上記非常勤職員の業務内容につき,政務調
査に関する書類作成や計算,整理など,特定した業務に従事した分
の支給である旨主張し,上記職員が,①会派業務,②政務調査補助,
③政務調査業務(計算,資料整理,その他)の業務のうち,もっぱ
ら③の業務に従事していた旨の勤務割合表(丙C6の1~12)を
提出する。
しかし,補助参加人きぼうの上記の主張及び勤務割合表の記載内
容は,具体性に乏しく,具体的な業務内容が明らかではないといわ
ざるを得ない。よって,これについての政務調査費の支出のうち少
なくとも2分の1に相当する34万5000円は違法な支出である
旨の原告の主張は理由がある。
(エ)事務費その他の経費
a弁論の全趣旨によれば,補助参加人きぼうが,会派控室で使用する
シュレッダーやビデオカメラ,スキャナー,DVDライター,デジタ
ルカメラ等に係る費用の全額(28万9000円)を政務調査費から
支出したことが認められるところ,原告は,そのうち2分の1を超え
る部分は違法である旨主張する。
b一般的,外形的事実からは,会派控室における上記備品等は,調査
研究活動以外の活動にも利用されていることが推認されるというべき
であるところ,補助参加人きぼうは,これらは全て調査研究活動のみ
に使用されている旨主張する。
しかし,既に検討したところによれば,補助参加人きぼうの会派控
室における上記備品等が調査研究活動のみに利用された事実を認める
に足りる証拠はなく,調査研究活動に利用された割合とそれ以外の活
動に利用された割合が具体的に立証されているということもできない
から,これらに係る経費は,その2分の1を超えて政務調査費から支
出することは許されないというべきであり,補助参加人きぼうが支出
した額の2分の1に相当する14万4500円は違法な支出である旨
の原告の主張は理由がある。
イC1議員
(ア)人件費
a弁論の全趣旨によれば,C1議員が平成20年4月から平成21年
3月までに雇用していた職員に支払った報酬のうち3分の2(合計1
20万円)が政務調査費から支出されたことが認められるところ,原
告は,この支出のうち報酬額の2分の1を超える部分は違法であると
主張する。
b補助参加人きぼうは,上記の支出額は,上記職員の活動実態を踏ま
えて調査研究活動以外の業務の割合を多めに見積もって3分の1とし
て按分した上での支出であるから,更なる按分の必要はないと主張し,
C1議員は,臨時調査補助員を,経理報告の作成,政務調査活動の代
行,広報広聴活動,現地調査等に従事させていること,同補助員は後
援会活動の事務担当を兼ねていることもあり,その割合を3分の1と
して,その余を調査研究活動に必要な人件費として計上したことなど
を説明する(丙C28,35)。
しかし,C1議員の上記説明を勘案しても,C1議員が長期間にわ
たって雇用していた者が従事していた業務の具体的内容は明らかでな
いといわざるを得ず,C1議員が支払った上記の人件費は,調査研究
活動に利用された割合とそれ以外の活動に利用された割合が立証され
ているということができないから,その2分の1を超えて政務調査費
から支出することは許されないというべきである。
よって,上記支出額のうち30万円は違法な支出である旨の原告の
主張は理由がある。
(イ)事務所費
a証拠(丙C29)及び弁論の全趣旨によれば,C1議員が支払った
事務所の賃料のうち3分の2(合計24万円)が政務調査費から支出
されたことが認められるところ,原告は,この支出のうち賃料額の2
分の1を超える部分は違法であると主張する。
b補助参加人きぼうは,上記の支出額は,上記事務所の利用実態を踏
まえて調査研究活動以外の割合を多めに見積もって3分の1として按
分した上での支出であるから,更なる按分の必要はないと主張するが,
上記事務所の利用実態を裏付ける客観的資料は認められず,上記事務
所が調査研究活動に利用された割合とそれ以外の活動に利用された割
合が立証されているということはできないから,上記事務所の賃料は,
その2分の1を超えて政務調査費から支出することは許されないとい
うべきである。
よって,上記賃料に係る政務調査費の支出のうち6万円は違法な支
出である旨の原告の主張は理由がある。
ウC2議員
(ア)調査研究費
原告は,C2議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出され
た額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき算
出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法で
あるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理由
がない。
(イ)資料購入費
a証拠(甲C2)及び弁論の全趣旨によれば,C2議員が購入した
「仙台藩ものがたり」,「現代用語表記辞典」,「ポケット辞典漢
字」,「盛岡の先人」,「2009年の日本はこうなる」,「東北学
院卒業生職業別名簿」の代金合計1万1340円が政務調査費から支
出されたことが認められるところ,原告は,上記支出のうち2分の1
を超える部分は違法であると主張する。
b上記いずれの資料についても,その題名や推認される内容に照らす
と,市政との関連性を認めることができ,C2議員は,これらを調査
研究活動の資料として利用したと認めるのが相当であるから,その購
入に係る支出が調査研究活動のための支出として合理性ないし必要性
を欠くとはいえず,その全額を政務調査費から支出することについて
違法であるということはできない。
(ウ)人件費
a証拠(丙C11,23の1~12,丙C36)及び弁論の全趣旨に
よれば,C2議員が平成20年4月から平成21年3月までに雇用し
ていた職員に支払った報酬のうち3分の2(合計120万円)が政務
調査費から支出されたことが認められるところ,原告は,この支出の
うち報酬額の2分の1を超える部分は違法であると主張する。
b補助参加人きぼうは,上記の支出額は,上記職員の業務実態を踏ま
えて政務調査業務の割合を3分の2として按分した上での支出である
から,更なる按分の必要はないと主張し,C2議員は,上記職員を,
専ら調査研究活動の補助業務に従事させたが,調査研究活動以外の業
務に従事させたこともあったため,調査研究活動の補助業務の割合を
3分の2として政務調査費に計上した旨を説明する(丙C36)。
しかし,C2議員の上記説明等を勘案しても,C2議員が長期間に
わたって雇用していた者が従事していた業務の具体的内容は明らかで
ないといわざるを得ず,C2議員が支払った人件費は,調査研究活動
に利用された割合とそれ以外の活動に利用された割合が立証されてい
るということができないから(補助参加人きぼうが提出した政務調査
業務従事記録(丙C23の1~12)は,誰が,いつ,いかなる根拠
に基づいて作成したものであるのかが明らかではなく,補助参加人き
ぼう主張の上記按分割合を裏付けるには足りないというべきであ
る。),その2分の1を超えて政務調査費から支出することは許され
ないというべきである。
よって,上記支出額のうち30万円は違法な支出である旨の原告の
主張は理由がある。
(エ)事務費その他の経費
a弁論の全趣旨によれば,C2議員が購入したパソコン周辺機器等の
代金合計3万7780円が政務調査費から支出されたことが認められ
るところ,原告は,上記支出のうち2分の1を超える部分が違法であ
る旨主張する。
b上記備品等は,調査研究活動に用いるほかにも,私用のみならず,
調査研究活動以外の議員活動,選挙活動,政党活動,後援会活動等の
目的でも日常的に頻繁,かつ容易に使用され得るから,一般的には,
調査研究活動以外の活動にも利用されていることが推認されるという
べきである。
補助参加人きぼうは,備品等は全て調査研究活動に使用していると
主張するが,上記備品等の使用実態を裏付ける客観的資料は認められ
ないから,C2議員が使用した上記備品等が調査研究活動に利用され
た割合とそれ以外の活動に利用された割合が立証されているというこ
とはできず,上記備品等の代金については,その2分の1を超えて政
務調査費から支出することは許されないというべきである。
よって,上記支出のうち2分の1を超える額である1万8890円
は違法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
エC3議員
(ア)証拠(丙C12の1,2,丙C24の1~12,丙C25の1~1
2)及び弁論の全趣旨によれば,C3議員が平成20年4月から平成2
1年3月までに雇用していた職員2名に支払った報酬につき,合計18
0万4000円が政務調査費から支出されたことが認められるところ,
原告は,この支出のうち2分の1を超える部分は違法であると主張する。
(イ)補助参加人きぼうは,上記支出は調査研究活動の補助業務に従事し
た時間に対して支給した分であって,調査研究活動以外の業務に従事し
た時間に対する報酬は別途支給しているのであるから,按分の必要はな
いと主張する。
しかし,C3議員作成の陳述書(丙C37)や補助参加人きぼうが提
出した勤務割合表(丙C13の1~24)によっても,C3議員が長期
間にわたって雇用していた者らが従事していた業務の具体的内容は明ら
かでないといわざるを得ず,C3議員が支払った上記の人件費は,調査
研究活動の補助業務のみに利用されたと認めるに足りない。また,C3
議員が上記職員らに対して政務調査費の支出額とは別に支給したという
金員の有無ないし額も明らかでなく,上記政務調査費が調査研究活動に
利用された割合とそれ以外の活動に利用された割合が立証されていると
いうこともできない。
よって,上記支出のうち2分の1を超える部分に相当する90万20
00円は違法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
オC4議員
(ア)証拠(丙C30の1~丙C32の32,丙C38)及び弁論の全趣
旨によれば,C4議員が平成20年4月から平成21年3月までに雇用
していた職員2名に支払った報酬の全額(合計110万7800円)が
政務調査費から支出されたことが認められるところ,原告は,この支出
のうち2分の1を超える部分は違法であると主張する。
(イ)補助参加人きぼうは,上記支出は調査研究活動の補助業務に特定し
て臨時に雇用している者に対する支出であると主張し,C4議員は,上
記2名の職員を,専ら会議,事務処理,現地調査,相談業務,資料作成,
議員同行等の業務に従事させた旨を説明する(丙C38)。
しかし,C4議員の上記説明や上記職員らに係る活動報告日報(丙C
31の1~丙C32の32)を勘案しても,同議員が長期間にわたって
雇用していた者が従事していた業務の具体的内容は明らかでないといわ
ざるを得ず,同議員が支払った上記の人件費は,調査研究活動の補助業
務のみに利用されたと認めるに足りず,また,調査研究活動に利用され
た割合とそれ以外の活動に利用された割合が立証されているということ
もできないから,その2分の1を超えて政務調査費から支出することは
許されないというべきである。
よって,上記支出額のうち2分の1に相当する55万3900円は違
法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
カC5議員
原告は,C5議員の資料購入費について政務調査費から支出された額の
2分の1を超える部分の返還を求めているが,第4回口頭弁論期日におい
て,政務調査費から支出することは妥当であるとして2分の1を超える部
分が違法である旨の主張を撤回している。
キC6議員
(ア)広報広聴費
a弁論の全趣旨によれば,C6議員が支払った平成20年度の朋友会
の会費(合計4万6000円)が政務調査費から支出されたことが認
められるところ,原告は,この支出の全額が違法であると主張する。
b証拠(甲C4,丙C14,証人C6)及び弁論の全趣旨によれば,
朋友会は,会員相互の協力により,住みよい郷土づくりのため,連絡
提携を密にして交流し合い,親睦を図ることを目的とする団体であり,
住みよい郷土づくりと親睦の趣旨に賛同する者,具体的には文化人や
中小企業の経営者,設計会社の社員,建設会社の社員等で組織され,
会員相互の情報交換や公明選挙,防犯,交通安全,火災予防等,社会
福祉,道徳心の向上への積極的な参加・啓蒙などを行っていること,
同会の活動として,市政や県政,建設関係等をテーマに,各会員又は
外部専門家による講演会や勉強会等が行われたことが認められる。
原告は,朋友会におけるC6議員の活動は,政治活動そのものであ
り,政務調査活動に該当しない旨主張するが,市政や県政,建設関係
等をテーマに,各会員又は外部専門家による講演会や勉強会等を行う
という上記認定の朋友会の活動内容等によれば,同会の活動への参加
について市政に関する調査研究のための必要性を欠くというべき事情
は見当たらないから,その経費を政務調査費から支出することの違法
をいう原告の主張は理由がない。
(イ)人件費
a証拠(丙C15,34)及び弁論の全趣旨によれば,C6議員が平
成20年4月から平成21年3月までに雇用していた職員1名に支払
った報酬のうち3分の2(合計144万円)が政務調査費から支出さ
れたことが認められるところ,原告は,この支出のうち報酬額の2分
の1を超える部分は違法であると主張する。
b補助参加人きぼうは,上記の政務調査費の支出は,上記職員の業務
実態(政務調査補助業務以外の就労時間が15.7%であること)を
踏まえて政務調査業務の割合を3分の2として按分した上での支出で
あるから,更なる按分の必要はないと主張し,C6議員は,上記職員
を,専ら調査研究活動の補助業務に従事させているが,突発的に調査
研究活動の補助業務以外の業務が生ずることもあるから,調査研究活
動の補助業務の割合を3分の2として,政務調査費に計上した旨を説
明する(丙C34)。
しかし,C6議員の上記説明や上記職員らに係る活動報告日報(丙
C16の1~245)を勘案しても,C6議員が長期間にわたって雇
用していた者が従事していた業務の具体的内容は明らかでないといわ
ざるを得ず,C6議員が支払った上記の人件費は,調査研究活動の補
助業務のみに利用されたと認めるに足りず,また,調査研究活動に利
用された割合とそれ以外の活動に利用された割合が立証されていると
いうこともできないから,その2分の1を超えて政務調査費から支出
することは許されないというべきである。
よって,上記支出額のうち36万円は違法な支出である旨の原告の
主張は理由がある。
(ウ)事務所費
a証拠(丙C33の1,2)及び弁論の全趣旨によれば,C6議員が
支払った事務所の地代のうち8割(合計48万円)が政務調査費から
支出されたことが認められるところ,原告は,この支出のうち上記地
代の2分の1を超える部分は違法であると主張する。
b補助参加人きぼうは,上記の支出額は,上記事務所の利用実態を踏
まえ,調査研究活動業務以外の割合を2割として按分計上した上での
支出であるから,更なる按分の必要はないと主張し,C6議員は,上
記事務所の建物のうち約8㎡を後援会備品などの収納部分としている
ことや,年間10回近隣町内会及びスポーツ団体が上記事務所を使用
したことを含め,上記事務所のうち調査研究活動に利用された割合を
低く見積もって8割とした旨説明する(丙C33の1,丙C34)。
しかし,C6議員の上記説明等を勘案しても,上記事務所が調査研
究活動に利用された割合とそれ以外の活動に利用された割合が立証さ
れているということはできないから,上記事務所の地代は,その2分
の1を超えて政務調査費から支出することは許されないというべきで
ある。
よって,上記地代に係る政務調査費の支出のうち18万円は違法な
支出である旨の原告の主張は理由がある。
(エ)事務費その他の経費
a弁論の全趣旨によれば,C6議員が事務所に設置したパソコンのリ
ース料等の3分の2(合計20万5800円)が政務調査費から支出
されたことが認められるところ,原告は,上記支出のうちリース料等
の2分の1を超える部分が違法である旨主張する。
b補助参加人きぼうは,上記パソコンは政務調査専用として使用して
いるが,本来であれば按分計上の必要はなかったものの,按分割合を
3分の2として計上したのであるから,更なる按分の必要はないと主
張するが,上記パソコンの使用実態を裏付ける客観的資料は認められ
ず,上記パソコンが調査研究活動に利用された割合とそれ以外の活動
に利用された割合が立証されているということはできないから,上記
パソコンに係る経費は,その2分の1を超えて政務調査費から支出す
ることは許されないというべきである。
よって,上記政務調査費の支出のうち5万1444円は違法である
旨の原告の主張は理由がある。
クC7議員
(ア)調査研究費
原告は,C7議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出され
た額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき算
出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法で
あるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理由
がない。
(イ)人件費
原告は,C7議員の人件費について政務調査費から支出された額の2
分の1を超える部分の返還を求めているが,第26回口頭弁論期日にお
いて,既に2分の1で按分された額が計上されていることが確認できた
として2分の1を超える部分が違法である旨の主張を撤回している。
(ウ)事務所費
a弁論の全趣旨によれば,C7議員が支払った事務所の賃料60万円
の全額が政務調査費から支出されたことが認められるところ,原告は,
この支出の全額が違法であると主張する。
b原告は,C7議員が,上記事務所の賃貸人である仙台螺子株式会社
の代表取締役であり,同会社の株式の約7割を保有していることから,
いわゆるお手盛りの危険があり,上記事務所をC7議員の自己所有物
件と同様に評価すべきであると主張するところ,証拠(丙C19,2
0の1,2,丙C26,27,39,証人C7)及び弁論の全趣旨に
よれば,以下の事実が認められる。
(a)上記事務所の賃貸人は仙台螺子株式会社であるところ,C7議
員は,同会社の代表取締役であり,その株式の7割を保有してい
る。
(b)上記事務所の床面積は約30坪であり,当時の賃料は,毎月5
万円(オフィス分4万円,駐車場代1万円)であった。
(c)当時,上記事務所の近隣には,23.68坪の広さで賃料月額
11万円の,約100坪の広さで賃料月額45万円の貸事務所があ
った。
c確かに,C7議員と上記事務所の賃貸人との関係に照らすと,一般
的・外形的には,お手盛りの危険があることは原告主張のとおりであ
る。
しかし,上記認定事実によれば,C7議員が支払った上記事務所の
賃料は,近隣の貸事務所の賃料と比較して不当に高いものであったと
認めるに足りず,現実にお手盛りがされた事実を認めるに足りる証拠
はないから,上記事務所をC7議員の自己所有物件と同様に評価すべ
き旨の原告の主張を採用することはできない。
ただし,上記事務所の利用実態を裏付ける客観的資料は認められず,
調査研究活動に利用された割合とそれ以外の活動に利用された割合が
立証されているということはできないから,上記事務所の賃料は,そ
の2分の1を超えて政務調査費から支出することは許されないという
べきである。
よって,上記賃料に係る政務調査費の支出については,2分の1に
相当する30万円が違法な支出であるという限度で原告の主張は理由
がある。
ケ小括
以上によれば,補助参加人きぼうに係る違法な支出の合計額は,411
万8950円である。
(4)被告補助参加人公明党仙台市議団(以下「補助参加人公明党」とい
う。)
ア会派全体
(ア)調査研究費(平成21年1月29日出発の出張について)
a原告は,平成21年1月29日から同月30日までの出張に係る旅
費について,出張の必要性が認められないから政務調査費の支出の全
額が違法である旨主張するところ,証拠(丙D9の1,2,丙D55,
57,59)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(a)補助参加人公明党に所属する議員3名が,平成21年1月29
日から同月30日にかけて高知県に出張し,同県に設置されている
アンパンマンミュージアム(香美市立やなせたかし記念館)及び横
山隆一記念まんが館を,両館の建設経緯や施設概要,入場者数等に
ついて調査し,仙台市にアンパンマンミュージアムを設置する際の
参考とするため,視察した。
(b)補助参加人公明党は,上記出張に係る旅費を政務調査費から支
出した。
(c)アンパンマンミュージアムは,やなせたかし原案の同キャラク
ターを題材とした,ミュージアムや商業施設などからなる総合施設
であり,全国数か所に設置されている。仙台市においても,平成2
3年7月に開業した。
横山隆一記念まんが館は,漫画家横山隆一原作の漫画に係る資料
等が展示されている施設である。
b原告は,視察態様が観光旅行の域を出ず,他の議員が既に横浜市の
アンパンマンミュージアムを視察していたから,上記議員3名が重ね
て高知県のアンパンマンミュージアムを視察する必要性がない旨を主
張する。
しかし,仙台市において平成23年7月にアンパンマンミュージア
ムが開業したことに照らすと,これに先立ち高知県のアンパンマンミ
ュージアム(香美市立やなせたかし記念館)を視察することは市政に
関連する調査研究活動であったと認められ,上記の原告の指摘は,上
記の視察が調査研究活動であることやその必要性を否定するには足り
ないというべきである。
また,横山隆一記念まんが館は,漫画等に係る資料を展示して集客
する施設という点でアンパンマンミュージアムと共通しており,仙台
市におけるアンパンマンミュージアム設置構想のために,同まんが館
を視察することが市政に関する調査研究のため必要性を欠くというこ
とはできない。
よって,上記出張に係る旅費についての政務調査費の支出の全額が
違法である旨の原告の主張は理由がない。
(イ)調査研究費(政務調査費の支出のうち少なくとも1割が違法である
との主張について)
原告は,補助参加人公明党の出張(上記(ア)で検討した出張を含
む。)に係る旅費について,少なくとも政務調査費から支出された額の
うち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき算出した
額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法であると
はいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理由がない。
(ウ)調査研究費(人件費について)
a原告は,補助参加人公明党が平成20年4月から平成21年3月ま
での常勤職員及び臨時職員の人件費の全額を政務調査費から支出した
ことにつき,その2分の1を超える部分は違法である旨主張するとこ
ろ(補助参加人公明党は,職員の雇用に係る経費を,調査研究費名目,
資料作成費名目,広報広聴費名目,人件費名目で政務調査費から支出
しているため,併せて検討する。),証拠(丙D11の1~丙D14
の12,丙D57,証人D1)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事
実が認められる。
(a)補助参加人公明党は,常勤職員1名と臨時職員1名を雇用した。
(b)常勤職員については,会派控室における業務に従事させ,月額
21万0400円を支給し,うち11万0400円を仙台市から支
給される会派職員雇用費補助から支出し,その余の10万円を資料
作成費,広報広聴費,又は人件費名目で政務調査費から支出した。
(c)臨時職員については,日当合計227万円を調査研究費名目で
政務調査費から支出した。
b(a)まず,臨時職員に係る人件費について検討するに,補助参加人
公明党は,上記臨時職員は会派控室における調査研究活動の補助業
務に限定して採用した職員の人件費である旨主張し,証人D1も同
趣旨の証言をしたが,上記主張及び証言は具体性に欠ける上,当該
支出に係る領収証にも「調査研究のための補助員」と記載されてい
るにすぎず,上記臨時職員が調査研究活動に利用される割合とそれ
以外の活動に利用される割合が立証されているということはできな
いから,当該職員に係る人件費は,その2分の1を超えて政務調査
費から支出することは許されないというべきである。
よって,臨時職員に係る人件費についての政務調査費の支出のう
ち113万5000円が違法な支出である旨の原告の主張は理由が
ある。
(b)次に,常勤職員に係る人件費について検討するに,会派控室に勤
務する常勤職員の事務が調査研究活動の補助に当たるか否かについ
ては容易に峻別し難い面があるといわざるを得ないことは,既に検
討したとおりであり,証人D1の証言等によっても上記常勤職員が
調査研究活動に利用される割合とそれ以外の活動に利用される割合
が立証されているということはできないから,当該職員に係る人件
費は,その2分の1を超えて政務調査費から支出することは許され
ないというべきである。
補助参加人公明党は,上記常勤職員について,会派職員雇用費補
助を受けているが,既に検討したとおり,会派職員雇用費補助は当
該職員の業務全体に対して交付されると考えるべきであるから,会
派控室に配置された常勤職員の人件費の一部が会派職員雇用費補助
によりまかなわれている事実は,残額について支払われた政務調査
費の按分に係る上記の結論を左右するということはできない。
したがって,補助参加人公明党が会派控室の常勤職員の人件費と
して政務調査費から支出した額の2分の1は違法な支出である旨の
原告の主張は理由がある。
(エ)資料作成費
a弁論の全趣旨によれば,補助参加人公明党が,コピー使用料や資料
作成に係る人件費の全額(合計114万8367円)を,資料作成費
として政務調査費から支出したことが認められるところ,原告は,こ
の支出のうち2分の1を超える部分は違法であると主張する。
b(a)会派控室は,既に検討したとおり,各会議出席のための準備,
待機・休憩が基本的な用途であることや,そもそも会派や議員が行
う活動は極めて広範かつ多岐にわたるものであること,コピー機は,
その性質上,適宜必要に応じて使用するものであり,いかなる目的
でどの程度使用したかを正確に把握することは困難であるというべ
きであることを総合考慮すると,一般的,外形的事実からは,会派
控室における上記備品等は,調査研究活動以外の活動にも利用され
ていることが推認されるというべきであるところ,補助参加人公明
党は,会派控室に設置されているコピー機は全て調査研究活動のた
めに使用されている旨主張する。
しかし,補助参加人公明党の会派控室におけるコピー機が調査研
究活動のみに利用された事実を認めるに足りる証拠はなく,調査研
究活動に利用された割合とそれ以外の活動に利用された割合が具体
的に立証されているということもできないから,これらに係る経費
は,その2分の1を超えて政務調査費から支出することは許されな
いというべきである。
(b)また,資料作成費名目で支出した人件費については,上記(ウ)b
(b)で検討したとおり,政務調査費の支出のうち2分の1が違法な
支出である。
(c)したがって,上記支出のうち57万4180円が違法な支出で
ある旨の原告の主張は理由がある。
(オ)広報広聴費
a証拠(丙D18)及び弁論の全趣旨によれば,補助参加人公明党の
会派のホームページに係る経費(インターネット利用料,更新料,人
件費等の合計111万0050円)が政務調査費から支出されたこと
が認められるところ,原告は,この支出のうち2分の1を超える部分
は違法であると主張する。
b証拠(丙D18)及び弁論の全趣旨によれば,上記ホームページに
は,所属議員のプロフィールや補助参加人公明党の政策提言・要望等
が掲載されていることが認められるが,既に検討したとおり,議員な
いし会派のホームページに係る経費については,その2分の1を超え
て政務調査費から支出することは許されないと解するのが相当である。
また,広報広聴費名目で支出した人件費については,上記(ウ)b(b)
で検討したとおり,政務調査費の支出のうち2分の1が違法な支出で
ある。
したがって,上記政務調査費の支出のうち55万5019円が違法
な支出である旨の原告の主張は理由がある。
(カ)人件費
証拠(丙14の1~12)及び弁論の全趣旨によれば,補助参加人公
明党が,人件費名目で合計48万円を政務調査費から支出したことが認
められるところ,上記(ウ)b(b)における検討によれば,上記支出のうち
2分の1を超える部分である24万円の支出は違法である旨の原告の主
張は理由がある。
(キ)事務費その他の経費
a証拠(甲D6,丙D57,58)及び弁論の全趣旨によれば,補助
参加人公明党が支払った会派控室のプリンターやパソコンのリース代,
インターネット通信費等の全額(合計340万2777円)が政務調
査費から支出されたことが認められるところ,原告は,この支出のう
ち2分の1を超える部分は違法であると主張する。
b既に検討したところによれば,一般的,外形的事実からは,会派控
室における上記備品等は,調査研究活動以外の活動にも利用されてい
ることが推認されるというべきであるところ,補助参加人公明党は,
会派控室に設置されているプリンターやパソコン等は全て調査研究活
動のために使用されている旨主張する。。
しかし,補助参加人公明党の会派控室における上記備品等が調査研
究活動のみに利用された事実を認めるに足りる証拠はなく,調査研究
活動に利用された割合とそれ以外の活動に利用された割合が具体的に
立証されているということもできないから,これらに係る経費は,そ
の2分の1を超えて政務調査費から支出することは許されないという
べきである。
したがって,上記支出のうち170万1372円が違法な支出であ
る旨の原告の主張は理由がある。
イD1議員
原告は,D1議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出された
額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき算出し
た額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法であると
はいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理由がない。
ウD2議員
(ア)調査研究費
原告は,D2議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出され
た額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき算
出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法で
あるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理由
がない。
(イ)資料購入費
a証拠(甲D9)及び弁論の全趣旨によれば,D2議員が住宅地図を
購入した代金1万1000円が政務調査費から支出されたことが認め
られるところ,原告は,この支出のうち2分の1を超える部分は違法
であると主張する。
b住宅地図については,既に検討したのと同様に,その購入に係る支
出が議員の行う調査研究活動のための支出として合理性ないし必要性
を欠くとはいえず,その全額を政務調査費から支出することについて
違法とはいえず,原告の主張は理由がない。
(ウ)広報広聴費
a弁論の全趣旨によれば,D2議員のホームページの更新料及びリニ
ューアル代の全額(29万円),4000枚の封筒代のうち9割(7
万8660円),メガホン代,デジタルカメラ代,プロジェクター代
等のうち8割(13万5018円)が政務調査費から支出されたこと
(合計50万3678円)が認められるところ,原告は,この支出の
うち各代金等の2分の1を超える部分は違法であると主張する。
b証拠(丙D30)及び弁論の全趣旨によれば,上記ホームページに
は,D2議員のプロフィールや議会報告,D2議員が掲げる政策等が
掲載されていることが認められるが,既に検討したとおり,議員のホ
ームページに係る経費については,その2分の1を超えて政務調査費
から支出することは許されないと解するのが相当であるから,ホーム
ページに係る上記支出のうち14万5000円は違法な支出である旨
の原告の主張は理由がある。
cその余の支出について,補助参加人公明党は,各備品等の利用実態
等を踏まえて調査研究活動に利用した割合につき必要な按分をした上
での支出であるから,更なる按分の必要はないと主張し,D2議員は,
監査委員に対し,封筒については稀に私的利用があるため9割の按分
としたこと,メガホン,デジタルカメラ,プロジェクターについては,
政務調査と直接結びつかない使用がないとはいえないため8割の按分
としたことなどを記載した調査票を提出した(甲D10)。
しかし,D2議員の上記説明内容を勘案しても,上記備品等の利用
実態は明らかでないといわざるを得ず,上記備品等が調査研究活動に
利用された割合とそれ以外の活動に利用された割合が立証されている
ということはできないから,上記備品等の代金等は,その2分の1を
超えて政務調査費から支出することは許されないというべきである。
よって,上記支出のうち8万5592円が違法な支出であるという
限度で原告の主張は理由がある。
(エ)事務費その他の経費
a証拠(甲D11)及び弁論の全趣旨によれば,D2議員が支払った
PHS料金の8割(合計3万3497円)が政務調査費から支出され
たことが認められるところ,原告は,この支出のうちPHS料金の2
分の1を超える部分は違法であると主張する。
bPHS料金は,調査研究活動に用いるほかにも,私用のみならず,
調査研究活動以外の議員活動,選挙活動,政党活動,後援会活動等の
目的でも日常的に頻繁,かつ容易に使用され得るから,一般的には,
調査研究以外の活動にも利用されていることが推認されるというべき
である。
補助参加人公明党は,上記PHSは,ほとんど市民相談,調査活動
等の政務調査活動に使用されているが,会派内規に基づいて政務調査
活動の割合を8割として按分した上での支出であるから,更なる按分
の必要はないと主張するところ,証拠(丙D31)及び弁論の全趣旨
によれば,補助参加人公明党の政務調査費会派内規には,通信費につ
いて,本人の携帯電話の場合は8割,固定電話の場合は5割に按分し
た額を政務調査費から支出できる旨が定められていることが認められ
る。
しかし,上記のような会派内規の定めをもって直ちに議員個人の使
用実態を根拠付けるということはできないのであって,上記PHSの
使用実態を裏付ける客観的資料は認められず,D2議員が使用した上
記PHS料金が調査研究活動に利用された割合とそれ以外の活動に利
用された割合が立証されているということはできないから,上記PH
S料金は,その2分の1を超えて政務調査費から支出することは許さ
れないというべきである。
よって,上記PHS料金に係る政務調査費の支出のうち1万256
0円は違法である旨の原告の主張は理由がある。
エD3議員
(ア)調査研究費
原告は,D3議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出され
た額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき算
出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法で
あるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理由
がない。
(イ)広報広聴費
a証拠(甲D13)及び弁論の全趣旨によれば,D3議員のホームペ
ージの更新料の全額(合計24万円)が政務調査費から支出されたこ
とが認められるところ,原告は,この支出のうち2分の1を超える部
分は違法であると主張する。
b証拠(丙D36)及び弁論の全趣旨によれば,上記ホームページに
は,D3議員のプロフィールや活動レポート,議会報告,同議員が掲
げる政策等が掲載されていることが認められるが,既に検討したとお
り,議員のホームページに係る経費については,その2分の1を超え
て政務調査費から支出することは許されないと解するのが相当である
から,上記支出額のうち2分の1に相当する12万円は違法な支出で
ある旨の原告の主張は理由がある。
(ウ)事務費その他の経費
a証拠(甲D14,丙D31)及び弁論の全趣旨によれば,D3議員
が支払ったデジタルカメラの代金全額(3万6300円)と携帯電話
料金の8割(1万0030円)が政務調査費から支出されたことが認
められるところ(合計4万6330円),原告は,この支出のうち各
代金等の2分の1を超える部分は違法であると主張する。
b上記備品等については,その性質上,適宜必要に応じて使用するこ
とができるものであるから,一般的,外形的事実からは,調査研究活
動以外の活動にも利用されていることが推認されるというべきである。
補助参加人公明党は,上記デジタルカメラは調査研究活動のみに使
用されており,携帯電話は,そのほとんどが調査研究活動に使用され
ているが,会派内規により8割の按分にしており,更なる按分の必要
はないと主張するが,上記備品等の使用実態を裏付ける客観的資料は
認められず,これらが調査研究活動に利用された割合とそれ以外の活
動に利用された割合が立証されているということはできないから,上
記各代金等は,その2分の1を超えて政務調査費から支出することは
許されないというべきである。
よって,上記支出のうち2万1911円は違法な支出である旨の原
告の主張は理由がある。
オD4議員
原告は,D4議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出された
額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき算出し
た額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法であると
はいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理由がない。
カD5議員
(ア)調査研究費
原告は,D5議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出され
た額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき算
出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法で
あるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理由
がない。
(イ)広報広聴費
a証拠(甲D20)及び弁論の全趣旨によれば,D5議員が支払った
同議員のホームページの更新料及び携帯電話料金の各8割(合計6万
9496円)が政務調査費から支出されたことが認められるところ,
原告は,この支出のうち各料金の2分の1を超える部分は違法である
と主張する。
b上記ホームページについては,証拠(丙D44)及び弁論の全趣旨
によれば,D5議員のプロフィールや議会報告,実績等が掲載されて
いることが認められるが,既に検討したとおり,議員のホームページ
に係る経費については,その2分の1を超えて政務調査費から支出す
ることは許されないと解するのが相当である。
また,携帯電話については,その性質上,適宜必要に応じて使用す
ることができるものであるから,これらをいかなる目的でどの程度使
用したかを正確に把握することは困難であるというべきである。補助
参加人公明党は,そのほとんどが調査研究活動に使用されているが,
会派内規により8割の按分にしており,更なる按分の必要はないと主
張するが,上記携帯電話の使用実態を裏付ける客観的資料は認められ
ず,これらが調査研究活動に利用された割合とそれ以外の活動に利用
された割合が立証されているということはできないから,上記料金は,
その2分の1を超えて政務調査費から支出することは許されないとい
うべきである。
したがって,上記支出のうち2万6060円は違法な支出である旨
の原告の主張は理由がある。
キD6議員
(ア)調査研究費
原告は,D6議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出され
た額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき算
出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法で
あるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理由
がない。
(イ)資料購入費
a証拠(甲D22)及び弁論の全趣旨によれば,D6議員が住宅地図
を購入した代金1万6800円が政務調査費から支出されたことが認
められるところ,原告は,この支出のうち2分の1を超える部分は違
法であると主張する。
b住宅地図については,既に検討したのと同様に,その購入に係る支
出が議員の行う調査研究活動のための支出として合理性ないし必要性
を欠くとはいえず,その全額を政務調査費から支出することについて
違法とはいえず,原告の主張は理由がない。
クD7議員
(ア)調査研究費
原告は,D7議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出され
た額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき算
出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法で
あるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理由
がない。
(イ)広報広聴費
a証拠(甲D24)及び弁論の全趣旨によれば,D7議員のホームペ
ージの更新料の全額(合計24万円)が政務調査費から支出されたこ
とが認められるところ,原告は,この支出のうち2分の1を超える部
分は違法であると主張する。
b証拠(丙D49)及び弁論の全趣旨によれば,上記ホームページに
は,D7議員のプロフィールや活動ブログ,同議員が掲げる政策等が
掲載されていることが認められるが,既に検討したとおり,議員のホ
ームページに係る経費については,その2分の1を超えて政務調査費
から支出することは許されないと解するのが相当であるから,上記支
出額のうち2分の1に相当する12万円は違法な支出である旨の原告
の主張は理由がある。
(ウ)事務費その他の経費
a証拠(甲D25,丙D58,証人D7)及び弁論の全趣旨によれば,
D7議員が自宅に設置しているコピー機のリース料金の全額(1万3
734円)が政務調査費から支出されたことが認められるところ,原
告は,この支出のうち上記料金の2分の1を超える部分は違法である
と主張する。
bコピー機については,その性質上,適宜必要に応じて使用すること
ができるものであるから,一般的,外形的事実からは,調査研究活動
以外の活動にも利用されていることが推認されるというべきである。
補助参加人公明党は,上記コピー機は調査研究活動に専用使用され
ている旨主張し,D7議員は,同議員の自宅にはコピー機が2台設置
されており,政務調査費からリース料金を支出したコピー機を同議員
の家族が使用することはない旨説明するが(前掲各証拠),上記説明
を裏付けるべき客観的な資料は認められず,上記コピー機が調査研究
活動に利用された割合とそれ以外の活動に利用された割合が立証され
ているということはできないから,上記リース料金は,その2分の1
を超えて政務調査費から支出することは許されないというべきである。
よって,上記支出のうち6867円は違法な支出である旨の原告の
主張は理由がある。
ケD8議員
(ア)調査研究費
原告は,D8議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出され
た額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき算
出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法で
あるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理由
がない。
(イ)資料作成費
a証拠(甲D28)及び弁論の全趣旨によれば,D8議員が購入した
デジタルカメラの代金の全額(2万3333円)が政務調査費から支
出されたことが認められるところ,原告は,この支出のうち2分の1
を超える部分は違法であると主張する。
bデジタルカメラについては,その性質上,適宜必要に応じて使用す
ることができるものであるから,一般的,外形的事実からは,調査研
究活動以外の活動にも利用されていることが推認されるというべきで
ある。
補助参加人公明党は,上記デジタルカメラは,調査研究活動に使用
しており,その目的以外に使用することはないと主張するが,その使
用実態を裏付ける客観的資料は認められず,これが調査研究活動に利
用された割合とそれ以外の活動に利用された割合が立証されていると
いうことはできないから,上記代金は,その2分の1を超えて政務調
査費から支出することは許されないというべきである。
したがって,上記支出のうち1万1666円は違法な支出である旨
の原告の主張は理由がある。
コ小括
以上によれば,補助参加人公明党に係る違法な支出の合計額は,475
万5227円である。
(5)被告補助参加人社民党仙台市議団(以下「補助参加人社民党」とい
う。)
ア会派全体
(ア)調査研究費
原告は,補助参加人社民党の出張に係る旅費について政務調査費から
支出された額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に
基づき算出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもっ
て違法であるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主
張は理由がない。
(イ)資料購入費
a原告は,補助参加人社民党が支払った書籍や資料等の代金に係る政
務調査費の支出につき,その2分の1を超える部分が違法であると主
張するところ,証拠(甲E1)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事
実が認められる。
(a)補助参加人社民党は,次の題名の書籍や資料等を購入した。
(新聞類)
河北新報,毎日新聞,読売新聞,朝日新聞,日経新聞,公明新聞,
日本教育新聞,日中友好新聞,産経新聞
(図書類)
その手は命づな,時刻表,ふるさと仙台外3冊
(その他)
月刊誌「日本の進路」,週刊「金曜日」,月刊「Dファイル」,
法律図書の加除,広範な国民連合「会報」,住宅地図
(b)補助参加人社民党は,上記資料等の購入費の全額(合計4万9
882円)を政務調査費から支出した。
b上記新聞類並びに「その手は命づな」と題する書籍,時刻表,「ふ
るさと仙台」と題する書籍,及び上記(a)の「その他」の各資料につ
いては,題名や推認される内容等の一般的・外形的事実から市政との
関連性を認めることができ,補助参加人社民党は,これを調査研究活
動の資料として利用したと認めるのが相当であるから,その購入に係
る支出が調査研究活動のための支出として合理性ないし必要性を欠く
とはいえず,その全額を政務調査費から支出することについて違法と
はいえない。よって,これらの書籍や資料等に係る政務調査費の支出
の違法をいう原告の主張は理由がない。
他方,上記(a)の「外3冊」については,題名や内容等が明らかで
はなく,市政との関連が不明であるといわざるを得ないから,これら
の購入費の2分の1に当たる支出が違法な支出である旨の原告の主張
は理由があるというべきである。
補助参加人社民党が支出した上記資料等の購入費の具体的な内訳が
明らかでなく,「外3冊」の購入費用を特定するに足りる証拠がない
から,上記資料等の数量等を勘案し,購入費合計額の1割(4988
円)がそれらの書籍の購入費であると推認する。よって,その2分の
1である2494円の支出が違法であるという限度で原告の主張は理
由がある。
(ウ)人件費
a原告は,補助参加人社民党が平成20年4月から平成21年3月ま
での常勤職員及び臨時職員の人件費の全額を政務調査費から支出した
ことにつき,その2分の1を超える部分は違法である旨主張するとこ
ろ,証拠(丙E5~13,35,証人E5,証人E3)及び弁論の全
趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(a)補助参加人社民党は,以下の条件で会派控室における常勤職員
1名を雇用した。
業務内容事務全般,調査研究補助,資料収集,資料整理,控室
管理
雇用期間平成20年4月1日から
基本給時給800円(ただし,月23日計算とし,月額払い
とする。)
(b)補助参加人社民党は,上記常勤職員の人件費につき,平成20
年4月から平成21年3月まで,毎月,基本給に超過勤務手当及び
通勤手当を加えた額から,仙台市から支給される会派職員雇用費補
助11万0400円を控除した額を政務調査費から支出した。
上記常勤職員について,政務調査費からの支出額は,例えば,平
成20年4月が4万4930円,同年5月が4万7930円であり,
平成20年度に支出した額を合計すると少なくとも72万1760
円である。
(c)補助参加人社民党は,平成20年10月,臨時に雇用した職員
に対し,5日間の平成21年度会派要望等作成業務に対する賃金と
して2万5300円を支払い,同額を政務調査費から支出した。
(d)補助参加人社民党は,平成21年1月及び同年2月に非常勤職
員を雇用し,合計12万8700円を支払い,同額を政務調査費か
ら支出した。
b(a)まず,常勤職員に係る人件費について検討するに,会派控室に
勤務する常勤職員の事務が調査研究活動の補助に当たるか否かにつ
いては容易に峻別し難い面があるといわざるを得ないことは,既に
検討したとおりであり,上記常勤職員が調査研究活動に利用される
割合とそれ以外の活動に利用される割合が立証されているというこ
とはできないから,当該職員に係る人件費は,その2分の1を超え
て政務調査費から支出することは許されないというべきである。
補助参加人社民党は,上記常勤職員について,毎月11万040
0円の会派職員雇用費補助を受けているが,既に検討したとおり,
会派職員雇用費補助は当該職員の業務全体に対して交付されると考
えるべきであるから,会派控室に配置された常勤職員の人件費の一
部が会派職員雇用費補助によりまかなわれている事実は,残額につ
いて支払われた政務調査費の按分に係る上記の結論を左右するとい
うことはできない。
したがって,補助参加人社民党が会派控室の常勤職員の人件費と
して政務調査費から支出した額の2分の1である36万0880円
が違法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
(b)次に,補助参加人社民党が平成20年10月に臨時に雇用した
職員については,5日間という短期間の雇用であったとはいえ,上
記職員が従事した「平成21年度会派要望等作成業務」の具体的な
内容が明らかではなく,上記常勤職員が調査研究活動に利用される
割合とそれ以外の活動に利用される割合が立証されているというこ
とはできないから,当該職員に係る人件費は,その2分の1を超え
て政務調査費から支出することは許されないというべきであり,上
記職員に支払った賃金に係る政務調査費の支出の2分の1である1
万2650円の支出が違法である旨の原告の主張は理由がある。
(c)補助参加人社民党が平成21年1月及び同年2月に雇用した非
常勤職員についても,その具体的な業務内容は明らかではないから,
これらについて支出された政務調査費の2分の1である6万435
0円の支出が違法である旨の原告の主張は理由がある。
(エ)事務費その他の経費
a証拠(甲E14,丙35,40)及び弁論の全趣旨によれば,補助
参加人社民党が,会派控室におけるコピー機の使用料や事務用品,パ
ソコンの経費等の全額(合計66万3696円)を,政務調査費から
支出したことが認められるところ,原告は,この支出のうち2分の1
を超える部分は違法であると主張する。
b会派控室は,既に検討したとおり,各会議出席のための準備,待機
・休憩が基本的な用途であることや,そもそも会派や議員が行う活動
は極めて広範かつ多岐にわたるものであること,コピー機等の上記備
品等は,その性質上,適宜必要に応じて使用するものであり,いかな
る目的でどの程度使用したかを正確に把握することは困難であるとい
うべきであることを総合考慮すると,一般的,外形的事実からは,会
派控室における上記備品等は,調査研究活動以外の活動にも利用され
ていることが推認されるというべきであるところ,補助参加人社民党
は,会派控室に設置されている上記備品等は全て調査研究活動のため
に使用されている旨主張する。
しかし,補助参加人社民党の会派控室における上記備品等が調査研
究活動のみに利用された事実を認めるに足りる証拠はなく,調査研究
活動に利用された割合とそれ以外の活動に利用された割合が具体的に
立証されているということもできないから,これら係る経費は,その
2分の1を超えて政務調査費から支出することは許されないというべ
きである。
したがって,上記支出のうち33万1842円が違法な支出である
旨の原告の主張は理由がある。
イE1議員
(ア)資料購入費
a原告は,E1議員が支払った書籍の代金に係る政務調査費の支出に
つき,その2分の1を超える部分が違法であると主張するところ,証
拠(甲E2,丙E14の1~3)及び弁論の全趣旨によれば,以下の
事実が認められる。
(a)E1議員は,「こんなニッポンに誰がした」(1470円),
「琉球王国のグスク」(1575円),「仙台市制施行120周年
記念写真集保存版ふるさと仙台」(1万2600円)を購入し,
その代金合計1万5645円が政務調査費から支出された。
(b)E1議員の資料購入費として政務調査費から支出された金額は,
上記の1万5645円に3087円を加えた1万8732円であっ
たが,上記3087円に係る書籍の題名は不明である。
b(a)上記各書籍のうち,「こんなニッポンに誰がした」及び「仙台
市制施行120周年記念写真集保存版ふるさと仙台」について
は,その題名等に照らして市政との関連性が認められるというべき
であり,これらの書籍に係る政務調査費の支出の違法をいう原告の
主張は理由がない。
(b)他方で,「琉球王国のグスク」(1575円)は,その題名か
らすると市政との直接的な関連性は希薄であることが推認されるか
ら,その購入費の2分の1に相当する政務調査費の支出が違法であ
る旨の原告の主張は理由がある。
(c)3087円に相当する書籍については,いかなる書籍であるか
明らかではなく,政務調査との関連性は不明であるといわざるを得
ないから,その購入費の2分の1に相当する政務調査費の支出が違
法である旨の原告の主張は理由がある。
(d)したがって,上記のうち2330円の支出が違法であるという
限度で原告の主張は理由がある。
(イ)人件費
a証拠(甲E3,4,丙E15の1~丙E16の12,丙E36)及
び弁論の全趣旨によれば,E1議員が,平成20年4月から平成21
年3月までに雇用した非常勤職員に係る経費の全額(合計20万16
00円)が政務調査費から支出されたことが認められるところ,原告
は,この支出のうち2分の1を超える部分は違法であると主張する。
b補助参加人社民党は,同会派では,個々の事務所では常勤職員は
雇用せず,調査研究活動に必要な補助業務を行う非常勤職員で対応
する旨の申合せをしており,上記の支出はこれに従ったものである
から適法である旨主張し,E1議員は,上記申合せに基づいて,必
要に応じて非常勤職員を調査研究活動の補助業務にのみ従事させて
いる旨説明する(丙E36)。
しかし,E1議員の上記説明を勘案しても,E1議員が雇用した者
が従事していた業務の具体的内容は明らかでないといわざるを得ず,
E1議員が支払った上記の人件費は,調査研究活動の補助業務のみに
利用されたと認めるに足りず,また,調査研究活動に利用された割合
とそれ以外の活動に利用された割合が立証されているということもで
きないから,その2分の1を超えて政務調査費から支出することは許
されないというべきである。
よって,上記支出額のうち2分の1に相当する10万0800円は
違法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
(ウ)事務所費
a証拠(甲E5)及び弁論の全趣旨によれば,E1議員が支払った事
務所の賃料の全額(合計63万6000円)が政務調査費から支出さ
れたことが認められるところ,原告は,この支出のうち2分の1を超
える部分は違法であると主張する。
b議員の活動が極めて広範かつ多岐にわたることに照らすと,その活
動の拠点となる事務所においては,一般的,外形的には,調査研究活
動以外の活動も行われることが推認される。
補助参加人社民党は,E1議員は,後援会や政治活動については上
記事務所とは別の場所を利用しており,上記事務所は調査研究活動に
関して使用している旨主張し,E1議員は同旨の説明をする(丙E3
6)。
しかし,上記事務所の使用実態を裏付ける客観的資料は認められず,
上記事務所が調査研究活動に使用された割合とそれ以外の活動に使用
された割合が立証されているということはできないから,上記事務所
の賃料は,その2分の1を超えて政務調査費から支出することは許さ
れないというべきである。
よって,上記賃料に係る政務調査費の支出のうち31万8000円
は違法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
(エ)事務費その他の経費
a証拠(甲E15)及び弁論の全趣旨によれば,E1議員が支払った
コピー機のリースやインク,フラッシュメモリーやICレコーダーに
係る費用の全額(14万5938円)と,インターネットに係る費用
の6割(1万3419円)が,政務調査費から支出されたことが認め
られる(合計15万9357円)。
b上記備品等は,その性質上,適宜必要に応じて使用することができ
るものであり,一般的,外形的事実からは,調査研究活動以外の活動
にも利用されていることが推認されるというべきである。
補助参加人社民党は,上記の費用は,調査研究活動のために必要な
事務用品等に関する経費である旨主張するが,その使用実態を裏付け
る客観的資料は認められず,上記備品等が調査研究活動に利用された
割合とそれ以外の活動に利用された割合が立証されているということ
はできないから,上記費用は,その2分の1を超えて政務調査費から
支出することは許されないというべきである。
よって,上記支出のうち7万5204円は違法な支出である旨の原
告の主張は理由がある。
ウE2議員
(ア)人件費
a証拠(甲E6,丙E18の1~12,丙E37)及び弁論の全趣旨
によれば,E2議員が平成20年4月から平成21年3月分までに
雇用していた非常勤職員に係る経費の全額(合計45万8000
円)が政務調査費から支出されたことが認められるところ,原告は,
この支出のうち2分の1を超える部分は違法であると主張する。
bE2議員は,会派における申合せに基づき常勤職員を雇用せず,必
要に応じて非常勤職員を調査研究活動の補助業務にのみ従事させてい
る旨説明するが(丙E37),上記説明やE2議員が作成した非常勤
職員管理簿(丙E17の1~12)等を勘案しても,E2議員が雇用
した者が従事していた業務の具体的内容は明らかでないといわざるを
得ず,E2議員が支払った上記の人件費は,調査研究活動の補助業務
のみに利用されたと認めるに足りず,また,調査研究活動に利用され
た割合とそれ以外の活動に利用された割合が立証されているというこ
ともできないから,その2分の1を超えて政務調査費から支出するこ
とは許されないというべきである。
よって,上記支出額のうち2分の1に相当する22万9000円は
違法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
(イ)事務所費
a証拠(甲E7)及び弁論の全趣旨によれば,E2議員が支払った事
務所の賃料の全額(合計84万円)が政務調査費から支出されたこと
が認められるところ,原告は,この支出のうち2分の1を超える部分
は違法であると主張する。
b議員の活動が極めて広範かつ多岐にわたることに照らすと,その活
動の拠点となる事務所においては,一般的,外形的には,調査研究活
動以外の活動も行われることが推認される。
補助参加人社民党は,E2議員は,後援会活動等は自宅で行ってお
り,上記事務所は調査研究活動に関して使用している旨主張し,E2
議員は同旨の説明をする(丙E37)。
しかし,上記事務所の使用実態を裏付ける客観的資料は認められず,
上記事務所が調査研究活動に使用された割合とそれ以外の活動に使用
された割合が立証されているということはできないから,上記事務所
の賃料は,その2分の1を超えて政務調査費から支出することは許さ
れないというべきである。
よって,上記賃料に係る政務調査費の支出のうち42万円は違法な
支出である旨の原告の主張は理由がある。
(ウ)事務費その他の経費
a証拠(甲E16)及び弁論の全趣旨によれば,E2議員が支払った
プリンター複合機のリースやシュレッダー,名刺整理機,封筒の印刷
等に係る費用の全額(合計22万6185円)が,政務調査費から支
出されたことが認められるところ,原告は,この支出のうち2分の1
を超える部分は違法であると主張する。
b上記備品等は,その性質上,適宜必要に応じて使用することができ
るものであり,一般的,外形的事実からは,調査研究活動以外の活動
にも利用されていることが推認されるというべきである。
補助参加人社民党は,上記の費用は,調査研究活動のための事務所
における事務費用を計上したものである旨主張するが,その使用実態
を裏付ける客観的資料は認められず,上記備品等が調査研究活動に利
用された割合とそれ以外の活動に利用された割合が立証されていると
いうことはできないから,上記費用は,その2分の1を超えて政務調
査費から支出することは許されないというべきである。
よって,上記支出のうち11万3092円は違法な支出である旨の
原告の主張は理由がある。
エE3議員
(ア)資料購入費
a弁論の全趣旨によれば,E3議員が購入した住宅地図の代金(2万
1000円)が政務調査費から支出されたことが認められるところ,
原告は,上記支出のうち2分の1を超える部分が違法であると主張す
る。
b住宅地図については,既に検討したのと同様に,その購入に係る支
出が議員の行う調査研究活動のための支出として合理性ないし必要性
を欠くとはいえず,その全額を政務調査費から支出することについて
違法とはいえず,原告の主張は理由がない。
(イ)人件費
a証拠(甲E8,丙E21の1~12,丙E38)及び弁論の全趣旨
によれば,E3議員が平成20年4月から平成21年3月までに雇用
していた非常勤職員2名に支払った報酬の全額(合計47万7600
円)及びホームページ更新料として支払った合計5000円の全額が,
人件費として政務調査費から支出されたことが認められるところ,原
告は,この支出のうち報酬額及び更新料の2分の1を超える部分は違
法であると主張する。
bE3議員は,会派における申合せに基づき常勤職員を雇用せず,必
要に応じて非常勤職員を調査研究活動の補助業務にのみ従事させてい
る旨説明するが(甲E8,丙E38),上記説明やE3議員が作成し
た非常勤職員管理簿(丙E19の1~丙E20の3)等を勘案しても,
E3議員が雇用した者が従事していた業務の具体的内容は明らかでな
いといわざるを得ず,E3議員が支払った上記の人件費は,調査研究
活動の補助業務のみに利用されたと認めるに足りず,また,調査研究
活動に利用された割合とそれ以外の活動に利用された割合が立証され
ているということもできないから,その2分の1を超えて政務調査費
から支出することは許されないというべきである。
また,既に検討したとおり,議員のホームページに係る経費につい
ては,その2分の1を超えて政務調査費から支出することは許されな
いと解するのが相当である。
よって,上記支出のうち2分の1に相当する24万1300円は違
法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
(ウ)事務費その他の経費
a証拠(甲2の1,甲E17)及び弁論の全趣旨によれば,E3議員
が支払った事務所の固定電話及び携帯電話の電話料金とコピー機カウ
ント料,トナー代等の全額(合計3万2230円)が政務調査費から
支出され,このうち携帯電話料金について1813円が返還されたこ
とが認められるところ,原告は,上記支出額(返還された額を差し引
いた額)のうち上記料金等の2分の1を超える部分は違法であると主
張する。
b上記備品等は,その性質上,適宜必要に応じて使用することができ
るものであり,一般的,外形的事実からは,調査研究活動以外の活動
にも利用されていることが推認されるというべきである。
補助参加人社民党は,上記備品等のうちコピー機カウント料及びト
ナー代,固定電話料については,調査研究活動のための事務費に係る
ものであると主張するが,上記備品等の使用実態を裏付ける客観的資
料は認められず,上記備品等が調査研究活動に利用された割合とそれ
以外の活動に利用された割合が立証されているということはできない
から,上記費用は,その2分の1を超えて政務調査費から支出するこ
とは許されないというべきである。
よって,上記支出のうち1万4302円は違法な支出である旨の原
告の主張は理由がある。
オE4議員
(ア)資料作成費
a弁論の全趣旨によれば,E4議員のホームページ作成費の全額(2
万円)が政務調査費から支出されたことが認められるところ,原告は,
この支出のうち2分の1を超える部分は違法であると主張する。
b証拠(丙E22)及び弁論の全趣旨によれば,上記ホームページに
は,E4議員の経歴や議会における質問の映像等が掲載されている
ことが認められるが,既に検討したとおり,議員のホームページに
係る経費については,その2分の1を超えて政務調査費から支出す
ることは許されないと解するのが相当であるから,上記支出のうち
1万円は違法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
(イ)人件費
a証拠(甲E9,丙E24の1~21,丙E39)及び弁論の全趣旨
によれば,E4議員が平成20年4月から平成21年3月までに雇用
した非常勤職員2名に係る経費の全額(合計71万6000円)が政
務調査費から支出されたことが認められるところ,原告は,この支出
のうち2分の1を超える部分は違法であると主張する。
bE4議員は,会派における申合せに基づき常勤職員を雇用せず,必
要に応じて非常勤職員を調査研究活動の補助業務にのみ従事させてい
る旨説明するが(丙E39),上記説明やE4議員が作成した政務調
査費・人件費記録票(丙E23の1~21)等を勘案しても,E4議
員が雇用した者が従事していた業務の具体的内容は明らかでないとい
わざるを得ず,E4議員が支払った上記の人件費は,調査研究活動の
補助業務のみに利用されたと認めるに足りず,また,調査研究活動に
利用された割合とそれ以外の活動に利用された割合が立証されている
ということもできないから,その2分の1を超えて政務調査費から支
出することは許されないというべきである。
よって,上記支出額のうち2分の1に相当する35万8000円
は違法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
カE5議員
(ア)調査研究費
原告は,E5議員の出張に係る旅費について政務調査費から支出され
た額のうち1割が違法な支出であると主張するが,旅費条例に基づき算
出した額を政務調査費からの支出額とするという取扱いをもって違法で
あるとはいえないことは既に検討したとおりであり,原告の主張は理由
がない。
(イ)資料作成費
a弁論の全趣旨によれば,E5議員のホームページの作成費の全額
(2万円)が政務調査費から支出されたことが認められるところ,原
告は,この支出のうち2分の1を超える部分は違法であると主張する。
b証拠(丙E31)及び弁論の全趣旨によれば,上記ホームページに
は,E5議員のプロフィールや同議員が掲げる政策,後援会組織の案
内等が掲載されていることが認められるが,既に検討したとおり,議
員のホームページに係る経費については,その2分の1を超えて政務
調査費から支出することは許されないと解するのが相当であるから,
上記支出額のうち1万円は違法な支出である旨の原告の主張は理由が
ある。
(ウ)人件費
a証拠(甲E10,丙E32の1~14,丙E35)及び弁論の全趣
旨によれば,E5議員が平成20年4月から平成21年3月までに雇
用した非常勤職員に係る経費の全額(合計40万6000円)が政務
調査費から支出されたことが認められるところ,原告は,この支出の
うち2分の1を超える部分は違法であると主張する。
bE5議員は,会派における申合せに基づき常勤職員を雇用せず,必
要に応じて非常勤職員を調査研究活動の補助業務にのみ従事させてい
る旨説明するが(丙E35),上記説明や領収証の記載(丙E32の
1~14)等を勘案しても,E5議員が雇用した者が従事していた業
務の具体的内容は明らかでないといわざるを得ず,E5議員が支払っ
た上記の人件費は,調査研究活動の補助業務のみに利用されたと認め
るに足りず,また,調査研究活動に利用された割合とそれ以外の活動
に利用された割合が立証されているということもできないから,その
2分の1を超えて政務調査費から支出することは許されないというべ
きである。
よって,上記支出額のうち2分の1に相当する20万3000円は
違法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
(エ)事務所費
a証拠(甲E11,丙E33)及び弁論の全趣旨によれば,E5議員
が支払った事務所に係る経費(賃料,電気,電話,水道,ガス等)か
ら,後援会により補填されている毎月3万円を控除した残額(12か
月分の合計67万1856円)が政務調査費から支出されたことが認
められるところ,原告は,この支出のうち上記経費の合計額の2分の
1を超える部分は違法であると主張する。
b議員の活動が極めて広範かつ多岐にわたることに照らすと,その活
動の拠点となる事務所においては,一般的,外形的には,調査研究活
動以外の活動も行われることが推認される。
E5議員は,上記事務所は9割以上調査研究活動に使用しているが,
後援活動や政党活動的な使用も一部あることから,社民党とE5議員
の後援会で月額3万円を補填していると説明する(甲E11,丙E3
3)。
しかし,上記事務所の使用実態を裏付ける客観的資料は認められず,
上記事務所が調査研究活動に使用された割合とそれ以外の活動に使用
された割合が立証されているということはできないから,上記事務所
の賃料は,その2分の1を超えて政務調査費から支出することは許さ
れないというべきである。
よって,上記賃料に係る政務調査費の支出のうち15万5924円
は違法な支出であるという限度で(原告は,違法支出額の合計を15
万5928円として請求しているが,正しくは15万5924円であ
る。),原告の主張は理由がある。
(オ)事務費その他の経費
a証拠(甲E11)及び弁論の全趣旨によれば,E5議員が支払った
事務所のコピー機のトナー代やファックス用紙代,インク代等の全額
(合計4万6440円)が政務調査費から支出されたことが認められ
るところ,原告は,この支出のうち2分の1を超える部分は違法であ
ると主張する。
b上記備品等は,その性質上,適宜必要に応じて使用することができ
るものであり,一般的,外形的事実からは,調査研究活動以外の活動
にも利用されていることが推認されるというべきであるところ,上記
備品等が調査研究活動に利用された割合とそれ以外の活動に利用され
た割合が立証されているということはできないから,上記費用は,そ
の2分の1を超えて政務調査費から支出することは許されないという
べきである。
よって,上記支出のうち2万3220円は違法な支出である旨の原
告の主張は理由がある。
キE6議員
(ア)研修費
a証拠(丙E35)及び弁論の全趣旨によれば,E6議員が支払った
「仙台青葉倫理法人会」及び「白石七日会」の年会費の全額(合計9
万8000円)が政務調査費から支出されたことが認められるところ,
原告は,この支出全額が違法であると主張する。
b(a)仙台青葉倫理法人会については,同会の名称に照らして市政と
の関連性に疑問があるといわざるを得ないところ,病気療養中のE
6議員に代わってE5議員がした「仙台青葉倫理法人会は,企業経
営者を中心に経済活動のあるべき姿などのテーマで週1回研修会を
行う団体である。」旨の証言等によっても,同会の活動内容及び実
態を明らかにするには足りず,同会の年会費についての政務調査費
の支出は本件使途基準に合致しない違法な支出であると推認せざる
を得ない。
(b)白石七日会については,証拠(証人E5)及び弁論の全趣旨に
よれば,宮城県白石高校出身者を中心とする者で構成されているこ
とが認められ,専ら構成員相互の親睦を深めることを目的とした団
体であるとの疑いがあるといわざるを得ないところ,E5議員がし
た「白石七日会は,宮城県白石高校出身者で経済界や大学関係者・
医療関係者等を中心に構成され,年2,3回研修会を行う団体であ
る。」旨の証言等によっても,同会の活動内容及び実態を明らかに
するには足りず,同会の年会費についての政務調査費の支出は本件
使途基準に合致しない違法な支出であると推認せざるを得ない。
(c)したがって,上記支出の全額が違法な支出である旨の原告の主
張は理由がある。
(イ)人件費
a証拠(甲E12,丙E34の1~5,丙E35)及び弁論の全趣旨
によれば,E6議員が平成20年4月から平成21年3月分までに雇
用していた非常勤職員に係る経費の全額(合計41万円)が政務調査
費から支出されたことが認められるところ,原告は,この支出のうち
2分の1を超える部分は違法であると主張する。
bE6議員は,上記非常勤職員の業務内容は,調査活動の補助(原稿
等入力作業,資料の整理等),議会活動報告の封入作業である旨を説
明し(甲E12),E6議員に代わって証言等をしたE5議員は,会
派における申合せに基づき常勤職員を雇用せず,必要に応じて非常勤
職員を調査研究活動の補助業務にのみ従事させている旨説明する(丙
E35)。
しかし,上記説明等を勘案しても,E6議員が雇用した者が従事し
ていた業務の具体的内容は明らかでないといわざるを得ず,E6議員
が支払った上記の人件費は,調査研究活動の補助業務のみに利用され
たと認めるに足りず,また,調査研究活動に利用された割合とそれ以
外の活動に利用された割合が立証されているということもできないか
ら,その2分の1を超えて政務調査費から支出することは許されない
というべきである。
よって,上記支出額のうち2分の1に相当する20万5000円は
違法な支出である旨の原告の主張は理由がある。
(ウ)事務所費
a証拠(甲E13)及び弁論の全趣旨によれば,E6議員が支払っ
た平成20年5月から同年9月分の事務所に係る経費の全額(合計
12万円)が政務調査費から支出されたことが認められるところ,
原告は,この支出のうち2分の1を超える部分は違法であると主張
する。
b議員の活動が極めて広範かつ多岐にわたることに照らすと,その活
動の拠点となる事務所においては,一般的,外形的には,調査研究活
動以外の活動も行われることが推認される。
補助参加人社民党は,E6議員は上記事務所を調査研究活動のため
に月数回ほど使用していた旨主張し,E6議員及びE5議員は同旨の
説明をする(甲E13,丙E35,証人E5)。
しかし,上記事務所の使用実態を裏付ける客観的資料は認められず,
上記事務所が調査研究活動に使用された割合とそれ以外の活動に使用
された割合が立証されているということはできないから,上記事務所
の賃料は,その2分の1を超えて政務調査費から支出することは許さ
れないというべきである。
よって,上記賃料に係る政務調査費の支出のうち6万円は違法な支
出である旨の原告の主張は理由がある。
(エ)事務費その他の経費
a証拠(丙E35)及び弁論の全趣旨によれば,E6議員が支払った
切手代の全額(35万円)が政務調査費から支出されたことが認めら
れるところ,原告は,この支出の全額が違法であると主張する。
b切手について,調査研究活動のための必要性を欠くとまで認めるに
足りる証拠はないから,その支出の全額が違法であるとの原告の主張
は理由がない。
もっとも,切手は,その性質上,適宜必要に応じて使用することが
できるものであり,一般的,外形的事実からは,調査研究活動以外の
活動にも利用されていることが推認されるというべきであるところ,
補助参加人社民党は,上記切手は,政務調査活動の成果である議会活
動報告紙の発送費用であると主張するが,これを裏付ける客観的資料
は認められず,上記切手が調査研究活動に利用された割合とそれ以外
の活動に利用された割合が立証されているということはできないから,
上記切手代は,その2分の1を超えて政務調査費から支出することは
許されないというべきである。
よって,上記支出のうち17万5000円は違法な支出であるとい
う限度で原告の主張は理由がある。
ク小括
以上によれば,補助参加人社民党に係る違法な支出の合計額は,358
万4388円である。
3各会派の不当利得の額
以上の検討によれば,本件政務調査費の支出について,補助参加人自民は6
58万9635円,補助参加人民主は221万6453円,補助参加人きぼう
は411万8950円,補助参加人公明党は475万5227円,補助参加人
社民党は358万4388円の不当利得返還義務を負っていることが認められ
る。
4附帯請求について
原告は,平成21年5月16日を起算日とする遅延損害金を請求するよう求
めているところ,その根拠は,本件条例10条1項が,前年度に政務調査費の
交付を受けた会派は,当該政務調査費に残余がある場合には,当該年度の5月
15日までに返還すべき旨を定めているところにあると解される。
しかし,本件条例10条1項が定める返還義務は,会派が適正な支出である
として収支状況報告書に記載した金額を交付額から控除した残余額についての
返還義務であって,目的外支出があった場合に会派が負う上記の不当利得の返
還義務とは性格を異にするというべきである。
したがって,上記規定から本件請求に係る各会派の上記不当利得返還義務に
ついても平成21年5月15日が弁済期であったと解することはできないとこ
ろ,ほかに各会派の上記不当利得返還義務の弁済期が既に到来したことの主張
立証はない。
よって,本件請求に係る各会派の不当利得返還義務が遅滞に陥っているとは
認められないので,原告が被告に対して各会派に遅延損害金の支払を請求する
ことを求めることはできないというべきである。
第4結論
以上によれば,原告の請求は,各会派に対して第3の3記載の各金額の返還
を請求するよう被告に求める限度で理由があるから,これを一部認容すること
として,主文のとおり判決する。
仙台地方裁判所第3民事部
裁判長裁判官市川多美子
裁判官工藤哲郎
裁判官志田智之

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