弁護士法人ITJ法律事務所

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○ 主文
1 本件訴えのうち選定者Aを除くその余の選定者らの請求に係る部分をいずれも
却下する。
2 原告らの請求のうち選定者Aの請求に係る部分をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は原告らの負担とする。
○ 事実
第一 当事者の求めた裁判
一 原告ら
1 被告東村山市長は、東村山市が埼玉県競輪施行者協議会より受領した別表記載
の金員合計金二四二一万五三〇〇円を西武園競輪による道路破損等その管理する公
共施設の具体的損害に対する対策費以外に支出してはならない。
2 被告Bは、東村山市に対して金二四二一万五三〇〇円及びこれに対する昭和五
一年一一月二八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は被告らの負担とする。
との判決及び仮執行宣言
二 被告東村山市長
1 (本案前の申立て)
原告らの被告東村山市長に対する訴えのうち、選定者Aを除くその余の選定者らの
請求に係る部分を却下する。
2 (本案についての申立て)
原告らの被告東村山市長に対する請求を棄却する。
3 訴訟費用は原告らの負担とする。
との判決
三 被告B
1 (本案前の申立て)
原告らの被告Bに対する訴えを却下する。
2 (本案についての申立て)
原告らの被告Bに対する請求を棄却する。
3 訴訟費用は原告らの負担とする。
との判決
第二 原告らの請求原因
一 別紙選定者目録記載の選定者らは、埼玉県、所沢市、川越市、行田市及び秩父
市が施行している西武園競輪の隣接地域である東村山市の住民であり、「競輪問題
を考える市民の集い」に参集する者である。
二 東村山市は、埼玉県競輪施行者協議会(以下「協議会」という。)より西武園
競輪に関する迷惑料等として別表記載のとおり合計金二四二一万五三〇〇円の金員
を受領した。
三 被告東村山市長は、二記載の金員を一般会計に歳入し、その受領目的である西
武園競輪による道路破損等その管理する公共施設の具体的損害に対する対策費とし
て支出しておらず、東村山市長である被告Bは、右金員を右目的外に流用した。
右流用は、東村山市長としての裁量権の範囲を著しく逸脱した違法行為であり、職
権濫用、背任、業務上横領に当たり、東村山市は、これにより金二四二一万五三〇
〇円相当の損害を被つた。
四 選定者らは、昭和五〇年一二月一日本件について東村山市監査委員に対して監
査請求をしたが、すべて理由なしとされた。右監査請求に際し、監査請求の主体と
して「『競輪問題を考える市民の集い』事務局代表A」と表示したが、その趣旨は
「競輪問題を考える市民の集い」に参集する住民、特にその世話人及び事務局を構
成する住民すなわち選定者らを指称するものであり、このことは東村山市監査委員
も認めていたところである。
五 選定者らは、右監査の結果に不服であるので、その選定当事者である原告ら
は、地方自治法(以下「法」という。)第二四二条の二第一項第一号の規定に基づ
き被告東村山市長に対して、違法な公金の支出の差止めの請求として東村山市が協
議会より受領した前記金員のその受領目的外への支出の差止めを求め、同項第四号
の規定に基づき被告Bに対して、損害賠償の請求として東村山市に対する損害賠償
金二四二一万五三〇〇円及びこれに対する弁済期の経過した後である昭和五一年一
一月二八日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを
求める。
第三 被告らの答弁
一 被告東村山市長の本案前の主張
選定者Aを除くその余の選定者らは、被告東村山市長に対する本件訴えにつき、法
第二四二条第一項の規定による監査請求を経由していないから、右訴えのうち右選
定者らの請求に係る部分は不適法である。
二 被告Bの本案前の主張
選定者らは、いずれも被告Bに対する本件訴えにつき法第二四二条第一項の規定に
よる監査請求を経由していないから、右訴えは不適法である。
三 請求原因に対する被告らの認否
1 請求原因一の事実は認める。
2 請求原因二のうち第二六回日本選手権開催に伴う迷惑料の金額が三〇〇万円で
あることを除きその余の事実は認める。右金額は二〇〇万円である。
3 請求原因三のうち被告東村山市長が同二記載の金員(ただし、合計金二三二一
万五三〇〇円である。)を一般会計に歳入したことは認めるが、その余の事実は否
認し、その主張は争う。
4 請求原因四のうち原告ら主張の日に監査請求があつたこと、監査請求は理由な
しとされたこと、監査請求の主体として「『競輪問題を考える市民の集い』事務局
代表A」と表示されていたことは認めるが、その主張は争う。
5 請求原因五の主張は争う。
四 被告らの主張
東村山市は、合計金二三二一万五三〇〇円の金員を一般財源として受領したもので
あるから、同市長が右金員を雑人として一般会計に歳入し、一般財源として支出す
ることは何ら違法ではない。
仮に右金員が特定財源であつた場合でも、右金員を一般財源として支出しても東村
山市に何ら損害はない。
第四 証拠関係(省略)
○ 理由
一 まず、被告らの本案前の主張について判断する。
1 選定者Aを除くその余の選定者らに係る訴えについて
本件について東村山市監査委員に対してされた監査請求が請求者として「『競輪問
題を考える市民の集い』事務局代表A」と表示してされたことは当事者間に争いが
なく、原本の存在及び成立に争いのない甲第一号証の一によれば、右請求について
の監査の結果も同名義宛に通知されたことが認められる。
ところで、原告らは本訴第三回口頭弁論期日において昭和五一年九月一〇日付「釈
明申立書」なる書面に基づき「競輪問題を考える市民の集い」は会則及び代表者が
明確に定められた組織ではない旨を釈明しており、右がいわゆる権利能力のない社
団としての実体を備えていたと認めるに足る証拠はないから、「競輪問題を考える
市民の集い」が請求者であつたと判断することはできない。また原告らは、右表示
は「競輪問題を考える市民の集い」に参集する住民を指称すると主張するが、前掲
甲第一号証の一によつて明らかな如く監査請求の請求者としてA以外には個人の氏
名の表示がないのであるから、そのように解する余地はない。そうすると、請求者
は「『競輪問題を考える市民の集い』事務局代表」なる肩書の下に個人名が表示さ
れているA個人と判断するのほかなく、原本の存在及び成立に争いのない甲第三号
証の一、二によれば、右請求を受けた東村山市監査委員は、請求人を東村山市民で
ある「A」と判断して監査請求事案の処理に当たつたことが認められることからし
ても、右判断が相当であることが裏付けられる。なお、前掲甲第三号証の一、二に
よれば、同監査委員は、右請求について「A」のほか「競輪問題を考える市民の集
い」のメンバー数名に意見陳述を行なうことを許可したことが認められるが、右意
見陳述を行なつた者が当然に請求人になるものではないから、右事実をもつて
「A」以外の「競輪問題を考える市民の集い」に参集する者が請求人であると認め
ることはできない。
そうすると、選定者Aを除くその余の選定者らは、いずれも本件訴えにつき監査請
求を経由していないから、本件訴えのうち右選定者らの請求に係る部分はいずれも
不適法である。
2 選定者Aに係る被告Bに対する訴えについて
被告Bは、選定者Aについても同被告に対する本件訴えにつき監査請求を経由して
いないと主張するので、この点について判断する。
前掲甲第一号証の一及び原本の存在及び成立に争いのない同号証の二によれば、A
がした監査請求の内容には、東村山市が協議会より昭和四四年度分から同四九年度
分までの西武園競輪に関する迷惑料として受領した金員が西武園競輪により東村山
市が被つた具体的損害の対策費として執行されておらず、他に流用された疑いがあ
るので、不当な公金の支出の差止めを請求する趣旨が含まれているものと認められ
る。
そして、法第二四二条の二第一項は「・・・前条第一項の規定による請求をした場
合において、同条第三項の規定による監査委員の監査の結果・・・に不服があると
き・・・は、・・・・・・同条第一項の請求に係る違法な行為・・・・・・につ
き、訴えをもつて次の各号に掲げる請求をすることができる。」と規定しているか
ら、普通地方公共団体の住民が特定の公金の支出を違法な行為としてとらえ、その
差止めを求めて監査請求をした以上、請求者は、右監査請求において当該違法な行
為たる公金の支出により普通地方公共団体が被つた損害を補填するために必要な措
置を講ずべきことを請求していなくとも、当該公金の支出を違法な行為としてとら
え、法第二四二条の二第一項第四号の訴えを提起することを妨げないというべきで
ある。
したがつて、選定者Aが特定の公金の支出を違法な行為としてとらえ、その差止め
を求めて監査請求をしたこと右認定のとおりである以上、同人が同一の公金の支出
をとらえて法第二四二条の二第一項第四号の請求をするところの選定者Aに係る被
告Bに対する本訴請求につき、監査請求不経由の違法はないものといわねばならな
い。
二 そこで、本訴請求のうち選定者Aの請求に係る部分の当否について判断する。
1 請求原因一の事実及び同二のうち第二六回日本選手権開催に伴う迷惑料の金額
が三〇〇万円であることを除くその余の事実は、当事者間に争いがない。
第二六回日本選手権開催に伴う迷惑料の金額について、原告らは三〇〇万円である
と主張するのに対して、被告らは二〇〇万円であると主張するので、まずこの点に
ついて判断する。
証人Cの証言により成立の真正を認められる乙第一号証の二、成立に争いのない乙
第三号証の七、八及び証人Cの証言によれば、第二六回日本選手権開催に伴う迷惑
料の金額は二〇〇万円であることが認められる。もつとも成立に争いのない甲第五
号証の四によれば、昭和五〇年第二回東村山市議会において同市D助役が右金額に
ついて三〇〇万円である旨の答弁をしたことが認められ、また成立に争いのない甲
第一〇号証の一、証人Cの証言及び原告E本人尋問の結果によれば、昭和五〇年一
〇月一日東村山市当局は右金額が三〇〇万円である旨の記載のあるメモを「競輪問
題を考える市民の集い」に参集した住民らに交付したことが認められるが、成立に
争いのない乙第五号証及び証人Cの証言によれば、右答弁及び資料の記載はいずれ
も誤りであり、右誤りは昭和四六年度分迷惑料一〇〇万円が翌会計年度である昭和
四七年六月一三日に至り東村山市に歳入されていたことから、昭和四七年度分の第
二六回日本選手権開催に伴う迷惑料二〇〇万円に誤つて右一〇〇万円が加算された
ために生じたものであることが認められるので、右答弁及びメモ記載はいずれも前
記認定を左右するに足らず、他に右金額の認定を左右するに足りる証拠はない。
したがつて、第二六回日本選手権開催に伴う迷惑料の金額は二〇〇万円であり、東
村山市が協議会より昭和四四年度分から同四九年度分までの西武園競輪に関する迷
惑料として受領した金員は合計金二三二一万五三〇〇円(以下「本件金員」とい
う。)と認められる。
2 被告東村山市長に対する請求について
前掲乙第一号証の二、第三号証の七、八、成立に争いのない乙第三号証の一、二、
九ないし一五、証人Cの証言により成立の真正を認められる乙第三号証の三ないし
六及び証人Cの証言によれば、本件金員の交付の趣旨は、西武園競輪の開催に伴う
周辺地域の交通混雑及び車券、空缶等の投棄による環境汚染その他種々の迷惑に対
する関係施行者の拠出による交付金であり、特に使途は指定していないこと、及び
被告東村山市長は、本件金員をすべて一般会計中の雑入として歳入していたことが
認められる。
原告A本人尋問の結果中、本件金員は西武園競輪場周辺の住民に交付されるべき趣
旨の金員であり、使途が競輪公害対策に支出すべきものとして事実上特定されてい
る旨の供述部分は採用し難く、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。
したがつて、右認定の本件金員の交付の趣旨から考えて、被告東村山市長が本件金
員を一般会計中の雑入として歳入したことに何ら違法は認められず、本件金員をも
つて原告ら主張のような特定の歳出に充てられるべき性質のものと解することはで
きず、被告東村山市長が本件金員を西武園競輪による東村山市の公共施設の具体的
損害に対する対策費として支出しているかどうかを判断するまでもなく、被告東村
山市長に対する本訴請求は理由がない。
3 被告Bに対する請求について
原告は、被告Bは本件金員をその受領目的外に流用し、右流用は東村山市長として
の裁量権の範囲を著しく逸脱した違法行為であり、職権濫用、背任、業務上横領に
当たると主張する。
しかしながら、本件金員をもつて原告ら主張のような目的にのみ支出されるべきも
のと解することのできないこと前記のとおりであり、本件金員を雑入として東村山
市の一般会計に歳入したことが違法といえないことも前記のとおりであるから、そ
の余の点につき判断するまでもなく、被告Bに対する本訴請求も理由がない。
三 よつて、本件訴えのうち選定者Aを除くその余の選定者らの請求に係る部分を
いずれも却下し、原告らの請求のうち選定者Aの請求に係る部分をいずれも棄却す
ることとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九
条、第九三条第一項本文を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 三好 達 菅原晴郎 成瀬正巳)
(別表省略)

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