弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人A1を懲役十五年に、
     被告人A2を懲役八年に、
     被告人A3を懲役五年に、
     被告人A4を懲役十二年に、
     被告人A5を懲役十二年に、
     被告人A6を懲役十一年に、
     被告人A7を懲役十年に、
     被告人A8を懲役三年六月に、
     被告人A9を懲役三年六月に
     各処する。
     押収の火焔瓶三本(昭和二八年押第八七六号の一〇)麻縄三本(前回押
号の一九、二〇、二一)短刀一振(同押号の三〇)洋刀一振(同押号の三三)はこ
れを没収する。
     (検察官の本件各控訴を棄却する。)
     (訴訟費用の点省略。)
         理    由
 本件控訴の趣意は末尾に添付した検察官大久保重太郎名義の控訴趣意書、被告人
等九名の弁護人為成養之助、同佐藤義彌名義の控訴趣意書及び被告人九名の夫々提
出した控訴趣意書のとおりで、これに対し、当裁判所は次のとおり判断する。
 検察官の論旨第一点の一について。
 被告人A1、同A4に対する昭和二十七年十月二日附起訴状には所論指摘のとお
り、強盗未遂の訴因を記載してある。ところが原判決はこの強盗未遂の訴因に対し
「被告人A1、同A4はB1、C1隊員B2と共謀の上、右C1隊の将来の行動に
資するため、米国駐留軍軍人の乗車している進行中の自動車に石塊を投げつけて、
これを停止せしめ得るや否やを試さんとし、昭和二十七年七月三十日午後八時三十
分頃、所沢市大字a地内b街道において、各自手拳大の石塊を携え、その通行を待
機していた折柄、同所を通りかかつた米国駐留軍軍人D1、及び同人の知人D2
(満四十一年)の乗車していた自動車めがけて、それぞれ所携の石塊を投げつけ、
以て同人等に対し数人共同して暴行した」との事実を認定し、暴力行為等処罰に関
する法律第一条第一項を以て処断したものである。所論は右判示事実が被告人等に
金品強取の意図の存することを認定しなかつたのは事実の誤認であり、右所為は強
盗未遂罪として処断すべきものと主張する。しかし夜間高速度で進行中の自動車に
手拳大の石を投げつけても、反抗を抑圧する程度の暴行とは認め得ないところであ
り、この暴行だけで直ちに強盗罪の実行の着手があつたものと認められないから、
強盗未遂を主張する論旨は、すでにこの点において失当であるのみならず、原判決
がその引用する証拠の示すところによつて原判示のとおりの事実を認定したのも理
由のないわけではない。というのもC1隊が既に結成され、被告人A1、同A4が
その重要メンバーであつた事実から、同被告人等に権力者に対する反抗の意思を認
定するのはともかく、それだけの事実から直ちに強盗の意図があつたとは認められ
ないからである。而して同被告人等が右犯行前火焔瓶を製作し、その実験をしてい
ることや、前記自動車に対する投石の翌日強盗の目的で火焔瓶を進行中の自動車に
投げつけ、運転者D3を負傷させたことも認め得ないわけではないが、他方本件投
石の前日被告人A5等のc村助役E1方住宅に火焔瓶を投げ込んだ放火未遂事件
(原判決第一の事実)があり、これに引続く本件に於ても、その現場たるb街道に
行くまでは、被告人A1、同A4にしても、その外B2、B1にしてもただ地理地
形の調査をする意思があつたのみでC1隊の資金獲得のための自動車投石などは考
えてもみなかつたところ右現場で突然A1の提案により投石行為を敢行することと
なつたことはすべての証拠の一致するところである。してみれば本件投石行為は単
に権力者に対する反抗的意図の表現である点で前記c村助役方の放火未遂事件と類
似し、未だ強盗の意図まではなかつたが右行為により石を投げただけでは進行中の
自動車を止め得ないことが判つて、その次から石に代えて火焔瓶を投げつけ、よつ
て財物を強取せんとする意図に発展して行く一の動機となつていることが窺われる
のである。それ故本件投石行為後行われている火焔瓶投擲事件等がいずれも強盗の
目的であつたことから遡つて右投石行為も亦強盗の犯意にでたものとすることは失
当である。従つて原判決の事実認定は経験則に反するものではない。所論引用の証
人B2の供述中不確定的な強盗の犯意について証言する部分は原審の認めなかつた
ところであり、その他球根栽培法(昭和二十八年押第八七六号の三五)は原判決の
採用しなかつたものである。所論は結局これら原判決の採用しない証拠により原判
決に事実の誤認があることを主張するに過ぎないから理由がない。
 同第一点の二及び同第二点について。
 原判決が挙げている鑑定人F1作成の鑑定報告書、鑑定人F2作成の鑑定書及び
F3の昭和二十七年十月七日附鑑定書によつて、本件火焔瓶が、その原料、構造、
装置において、又その性能、作用においても原判決認定のとおりであると認められ
る。而して爆発物取締罰則にいわゆる爆発物とは、理化学上のいわゆる爆発現象を
惹起するような物質で、爆発作用そのものにより、公共の安全を撹乱し又は人の身
体、財産を傷害損壊するに足る破壊力を有するものと解するのが相当である。(最
高裁判所昭和二八年(あ)第二八七八号事件判決参照)然るに本件にあつては、判
示火焔瓶の投擲により瓶中の硫酸が流出し、瓶の外側の塩素酸加里と化学変化を起
して酸化塩素を発生し、紙又は糊に触れて爆発的に分解し高熱を発し、これがいわ
ばマツチの作用をなしそのためガソリンが引火して燃焼するに至ること原判示のと
おりであり、塩素酸加里と硫酸の化学変化による爆発をマツチの作用に比較しては
いるが、火焔瓶自体をマツチの燃焼と同一視しているわけではないし、その威力を
無視したわけでもない。ただ本件火焔瓶に装置された程度の少量の塩素酸加里を以
てしては、局部的小爆発を惹起すだけで、その爆発自体により公共の安全を攪乱
し、人の身体、財産を傷害損坏する力のないものであることを判示しただけであ
る。而してガソリンの燃焼作用は相当急激な燃焼といい得るが、理化学的には定常
燃焼に過ぎないから、非定常燃焼たる爆発現象とは本質的に相違することも原判決
説明のとおりである。してみれば本件火焔瓶は塩素酸加里の化学変化による小爆発
と、これと接着し、殆ど同時にガソリンの燃焼を惹起するよう装置されたものでは
あるが、未だ爆発物取締罰則にいわゆる爆発物に該当するものとは認められず、こ
れと見解を同じうする原判決は正当で、所論のような事実誤認もなく法律適用の誤
も存しない。それ故所論は理由がない。
 弁護人の論旨第一点について。
 原判決第二事実は先に引用したとおり、被告人A1、同A4等が駐留軍軍人の乗
車している進行中の自動車に石塊を投げつけ、これを停車せしめ得るや否やを試し
てみようとした旨判示しているのであり、進行中の自動車中の人も当然投石の対象
となるわけで、単に右自動車のみを対象としこれに投石する意図にでた旨判示して
いるわけではない。而して現に駐留軍軍人D1及びD2両名が乗車している自動車
めがけて手拳大の石塊を投げつけ命中させた(その結果右自動車の右前方運転手席
近くの窓ガラスが二ケ所も破壊されていること記録第二二四丁の写真及び原審証人
D2の供述(第一回)により明瞭になつている。)という所為が、乗車中の右両名
の身体に対する有形力の行使であり、刑法第二百八条の暴行に該当することもちろ
んである。論旨は理由がない。
 同第二点について。
 数人共同して刑法第二百八条の罪を犯した場合には暴力行為等処罰に関する法律
第一条第一項該当の犯罪が成立することはいうまでもない。従て後者の暴行が刑法
第二百八条の暴行と異ると解すべき何等の理由もない。原判決が被告人A1、同A
4に対し外二名即ちB2、B1と共同して、D1及びD2両名乗車進行中の自動車
めがけて投石した事実を認定し、これを暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項
に問擬しているのは正当で、論旨は独自の見解に過ぎないから理由がない。
 同第三点について。
 原判決は強盗未遂の訴因について、訴因罰条の変更を命ずることなしに原判示第
二として暴力行為等処罰に関する法律違反の事実を認定している。しかし強盗未遂
の訴因たる昭和二十七年十月二日附A1外三名に対する起訴状第一の(一)の事実
は「被告人A1及び同A4はC1隊員であるB2及びB1ことB1と共謀の上、右
C1隊の行動の一環として右C1隊の資金獲得等のため米国駐留軍の乗つている自
動車を要撃し暴行又は脅迫を以て金員を強取せんことを企て、昭和二十七年七月三
十日午後八時三十分頃所沢市大字a地区b街道において短刀一振及び各自手拳の二
倍大の石塊を携えてその機会を窺つていた折柄同所を通り蒐つた米駐留軍少尉D1
及び同人の知人D2の乗つていた自動車に対し、それぞれ所携の石塊を投げつけた
が、同人等にそのまま逃走せられたため所期の目的を遂げず」というのであり、原
判決認定の暴力行為等処罰に関する法律違反事実は冒頭検察官の論旨第一点の説明
に引用したとおりでこの両者を比較するに後者の事実(原判示第二事実)はすべて
訴因たる強盗未遂の訴因中に包含され、ただ則物強取の犯意がたかつたのみでいわ
ば強盗未遂の訴因を縮少された態様、限度において認定したに過ぎないというべ
く、しかもこのように縮少された態様、限度において事実を認定しても被告人A
1、同A4の防禦権の行使に実質的不利益を蒙らしめるものでないこと明らかであ
る。このような場合、強盗未遂の訴因に対し訴因罰条の変更手続を経ずして、訴因
の縮少された態様たる暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項の事実を認定して
も違法と解すべきではない。(昭和二六年(あ)第七八号事件最高裁判所第二小法
廷言渡判決参照)なるほど強盗未遂罪は財産に関する犯罪であり、暴力行為等処罰
に関する法律違反(刑法第二百八条)は人の身体に対する犯罪であり、その罪質が
異ることは所論のとおりではあるがそれ故に訴因の変更手続を要するものとは解し
得られない。論旨は理由がない。
 同第四点について。
 所論は強盗行為が未遂である場合には強盗傷人罪にも未遂の規定を適用すべきも
のとする。しかし苟も強盗がその犯行の現場において人を死傷すれば、強取行為が
既遂たると未遂たるとを問わず、刑法第二百四十条の罪が成立するのであり、更に
未遂に関する同法第二百四十三条を適用すべきではない。原判決の法律適用は正当
で論旨は理由がない。
 同第五点について。
 所論は原判決の証拠となつている各被告人の供述調書は、いずれも任意性がな
く、証拠能力がないに拘らず、これを採用した原判決は刑事訴訟法第三百十九条第
一項、憲法第三十八条第二項に違反する違法があり、更に原審が被告人側申請の証
人を理由なく却下したのは審理不尽であり、その結果無罪たるべきものを有罪とす
る重大な事実の誤認を侵していると主張する。
 しかし被告人A3が逮捕されて、d地区警察署に連行されたとき、暴漢に殴打さ
れたとか、警察職員が同被告人の弁護人選任を阻んだというような事実は認められ
ない。却つて原審証人G1の証言によれば被告人A3が所論のような暴行を受けた
事実が存しないこと明らかであるし、昭和二十七年八月十九日附被告人A3の司法
警察員に対する供述調書には弁護人の選任ができることを告げられ、考えておきま
すと述べているし、当審証人H1の証言によれは、被告人A3はI1団に属する弁
護士を選任せんとする希望を洩していたので、直ちその選任用紙を同被告人に交付
したが、弁護人の合同事務所の所在が埼玉県警察本部で判らなかつたのと、被告人
A3が弁護人選任を用紙に記載しなかつたため、その選任が遅れたものと認められ
るのみで積極的にA3の申出を拒絶したり妨害したものでないことが認められる。
その他所論摘録の如き事実が一切存しないことは原審証人G2、同G3、同G4、
当審証人J1、K1、H1、L1の各証言によつて明白なところである。即ち被告
人A1、A3、A2、A4、A6、A8、A9(被告人A5と同A7とは終始供述
を拒否し、従つて同被告人の供述調書は存在しない)等はいずれも供述を拒否する
ことができることを告げられ、供述を録取して後これを読み聞けたところ相違ない
ことを承認したが故に被告人A2以外の者は素直に署名指印しているのであり、被
告人A2と雖も指印だけは任意にしている、而して右被告人等の取調には深夜に亘
ることは厳重に避け、遅くとも午後十時を超えて取調をしたことはなく、取調が長
時間に亘るときは中途で暫く休息させ、身体の屈伸等適宜の運動をやらせていたこ
と、被告人A1が、身体の不調を訴えたときは直ちに医師の診察を受けさせ、その
日は取調を中止して休養をとらせた事実こそあつても、病人を無理に取調べ医師の
診察を受けさせたかつたこと等ないし、被告人等の中にあつて、前記A1の僅かの
違和状態を除けば一人として疾患のため取調に堪えない者はいなかつたこと、A1
を取調べるに当つて盛夏の候にも拘らず出入口を閉鎖したことはあつたが、それは
新聞記者その他外部の者の探訪等を防ぐためで、出入口こそ閉鎖しても、窓はでき
るだけ開き、涼風を通すようにし、時々冷水で身体を拭わせ、シヤツの洗濯もさせ
る等保健上の注意もしており、決して取調を受ける側の者に苦痛を与えて供述を求
めようとしたものでないこと、況んや被告人等の食事を制限したり、睡眠を妨げた
り、ことさら長時間の取調を継続したり脅迫めいた取調をしたりして被告人等の肉
体的疲労や、精神的混乱に乗じて供述を求めたり、或は供述すれば釈放するなどと
甘言を以つて供述を迫つたというような、苟も供述の任意性を疑わしめる一切の行
為が存しないこと明白である。
 それにも拘らず被告人等は一齊に、その供述調書の任意性のないことを強調し、
任意性の存する証拠として前記G2等警察官の証言は不適格とする。司法警察職員
の証言といえともその取調を受けた者の供述の任意性を認定する資料とすることが
許されない理由がなく、右の如き主張は何等正当なものと認められないが、暫く司
法警察職員の証言を度外視して、被告人等の供述調書に任意性が存するか否かを検
討してみる。
 被告人A1の供述調書をみると、昭和二十七年八月二十二日附の司法警察員に対
する供述調書が最も日附の早いもので、同人が同月八日逮捕されて、それまで供述
を拒否してきたものと認められるが、右二十二日附供述調書と雖も同被告人がB2
外二名と共にM1方襲撃事件に参加した事のみを認め、その他の犯行内容に一切触
れていず、その動機や共犯者の氏名につき云いたくない、自己の経歴、生活状況に
ついても話したくはないとしているし、翌八月二十三日附検察官に対する供述調書
にも、日本刀を持つていたことやB3自転車屋(e村B3方)で会議があつたこと
及び八月七日M1方犯行のためd町に集合した事を認めている程度であり、共犯者
の氏名も既に逮捕されたB2の外被告人A3、同A2の両名だけをペンネームで挙
げているだけで、初めから凡てを包み隠さずに陳述していたわけではないが、警察
側の捜査が進展するにつれて、被告人に不利益な証拠が集められ、被告人が黙否し
ていても、その効を奏さなかつたことが判つて段々と犯行の内容を供述するに至つ
たもので、同被告人の供述調書をすべて検討すれば、この捜査に既に顕われた事実
は隠しても仕方がないとして供述するに至つた過程が極めてすなおに調書に現われ
でいるのであり、たとえば日本刀を預けた人を初めは知らない人が預つたとしてお
り、後に至つて名前は云えないがと前置きしてそれが、印刷屋をしている人(被告
人A8を指す)であることを認めているのであり、決して所論のように暑中二十日
間一回の運動もさせず入浴も取らせず連日連夜取調べたというような事ではなく、
同被告人は最後まで未だ発覚していないことは供述して他に迷惑を及ぼすようなこ
とはしないようにし、ただ既に発覚した事実だけを潔く供述しているだけであり、
その供述が任意に為されたものであること一点の疑も残さないところである。逮捕
後数日或は十数日間供述を拒否し来り、その後に為された供述なるが故に強制によ
る自白だとすることはできない。
 次に任意性を認めるに特色あるものとして被告人A2の供述調書を挙げることが
できる。同被告人の供述調書も昭和二十七年八月二十二日附のものを最初として司
法警察員に対するもの六通、検察官に対するもの五通が証拠として提出されている
が、これら供述調書をみると、同被告人はいずれも録取したところを読み聞けられ
て相違ないことを承認しながら、大部分は署名を拒み指印を押しているだけで、そ
の署名、指印ともに存するのは僅かに同月二十八日附検察官調書のみである。又同
被告人は最後までその本籍、住居、職業、年齢についても供述しないのであるか
ら、A2というのも果してその本名であるか否かを他の資料たとえば本籍照会等に
よつて確認できない現状であり、その供述内容も、慎重に配慮し、累を他の者に及
ぼさないようにし、殊に共犯者で逮捕されていない者については供述がそこえ触れ
るようになつても、その氏名、動静は云いたくないと述べているのである。このよ
うに本籍、住所、年齢等も語らず、調書には指印のみを為し、共犯者の氏名、行動
に触れないようにしている慎重な供述振りから見ても同被告人は一貫して取調官に
対して毅然たる態度をとり、任意な供述をしたこと明らかであつて、肉体的疲労か
ら虚脱状態に陥つて供述したとは認められない。他方同被告人の検察官に対する八
月二十二日附供述調書には同人が犯行に使用した兇器を自ら図示し、これに指印し
たものが添付せられてあるが、これによれば、右兇器の形が特徴のあるものと認め
られるのみならず、兇器を入れてある革製の鞘が手縫であり、殊に刀身が抜けない
ように止めておく金具などにも特色があることが判る。然るにこれとその実物たる
本件証拠品中の洋刀(昭和二十八年押第八七六号の三三)とを比較してみるにその
特徴が一致し、実物に酷似しているのである。しかもこの図面は検察官の強制によ
り、被告人A2の意思に反して作成されたものとは認められない。何となれば、被
告人A2は昭和二十七年八月八日埼玉県比企郡f村山林に於て逮捕されたものであ
るところ、前記洋刀は供述調書作成後約四ケ月を経過した同年十二月二十日になり
同被告人を逮捕した地点に程近いところから初めてN1によつて発見されたもの
で、この事はG5作成の昭和二十七年十二月二十日附領置調書並びに同人の原審第
十七回公判期日に於ける証言により明白であるからである。この事はひとり右兇器
を示す図面の作成が任意であることを明らかにするに止まらず、その他同被告人の
供述調書全般に亘り任意性の存することを示す有力な証左としなければならない。
 これを被告人A3の供述調書についてみれば、更に一層明白なものを認められ
る。即ち同被告人は判示第五の犯行に関しM1方門前の電話線切断の役割を担当し
たこととなつているが、同人はこの事実について「最初二本の電話線の中一本だけ
を鋏で切断し通話は不可能となつたと考えていた、然るに電柱を下りてM1方の塀
に近よると、家内で女の人が電話を使用し、通話中らしい声を聞き、驚いてその通
話が終つてから更に他の一本を切断した」と述べている。原審証人B2、同M2の
供述によれば当時M1方女中のM2がd町の某薬局にペニシリンを註文していた最
中であつたと認められるのであつて、この点A3の供述調書は真実に合致するのみ
ならず、司法警察員の実況見聞書によれば、M1方門前電柱に於て電話線は正しく
A3の供述どおり、二本とも切断されているのである。いかほど想像力に富む取調
官と雖も、二本の電話線が切断されている事実から、その二本が同時に切断された
か、或はA3が供述するように時を異にして切断されたかを知ることは不可能であ
り、まして一本の電話線が切断されてなおM1方家人が電話を使用して他と話をし
ていた旨の事実を知つていたとはいえない。而して右A3の供述しているように二
本の中の一本の電話線が切断されて、しかも通話が可能であるという事実は一見不
合理のように見えながら、十分合理的根拠の存するところであり(この占点につき
更に後記第十点の論旨に対する説明参照)この事実に徴しても被告人A3は連日の
取調に茫然として馬鹿のようになつていたわけではなく、事の真相を任意取調官に
供述したものと認めざるを得ず、かつ爾余の供述調書もすべて任意に為された供述
といわなければならない。
 被告人A4、同A6両名の供述調書に関しては、A4が昭和二十七年九月十三
日、A6が同年十一月三十日逮捕されたもので既に本件第五の犯行後相当の日時を
経過していることでもあるし、捜査も進展して事件の略全貌が判明していたことで
あるから、同人等の取調は順調に行われ、A4は同年九月十七日より、A6は同年
十二月三日より即ちいずれも逮捕されて後夫々四日目位から供述し初めているが、
その内容も自然で他の証拠と矛盾する点は少しもないし、しかも未だ捜査が行き屑
かなかつた点につき供述を拒否し、何々の点いえないと述べた点が各所に存してい
ることを見れば、A6が精神混乱の状態で調書を作成されたとか、A4が下痢や睡
眠不能、身体衰弱で取調中三度も卒倒するような状態で調書を作成されたというが
如きは到底認められず、同人等の供述調書がすべて任意に為された供述を録取した
ものと認めるに妨げないところである。又被告人A8の供述調書には、同人が事実
を曲げ、昭和二十七年八月六日B3方に於ける被告人等会合の事実を連絡しに来た
人物が本当は被告人A9であるに拘らず、同人をかばつてその名を捜査官に告げ
ず、それが被告人A5であるという虚偽の事実を述べ、後日その虚偽なる事を告白
しているところ、この虚偽の陳述を撤回したのは極めて自然でしかも直相に合致
し、その他同人の供述するところが他の証拠と矛盾しない点からしても同人が発熱
しているのに医者の診察をも受けさせず、同人が自白しなければその姉妹が教職を
追われる等として自由を強制されたとはいえず、その供述が任意に為されたものと
認められる。被告人A9に至つては、同人は原審公判廷に於て本件第五の犯行当夜
比企郡d町から入間郡g村の同被告人自宅に帰つた旨述べているに拘らず、同人の
叔母G6は証人として明白に被告人の供述を否定し、同夜はG6方に宿泊した事実
を証言しているし、この事実が被告人の供述調書の内容と合致することを思えば、
同被告人の公判廷の供述に信を措き難く、従つてその供述するような睡眼妨害や長
時間の取調或は警察官の供述すれば執行猶予になる旨の甘言に乗ぜられた如き事実
を認められず、法廷の供述に反する供述調書に任意性ありとすべきである。してみ
れば、被告人等に対する取調官の態度処遇に些かも失当な点がないことは前段説明
のとおりで、かつ被告人等の供述調書の内容自体その任意性を示すに十分なものと
認められる以上は、原審がこれら供述調書を採用したことは少しも違法ではない。
なるほど証人G7は原審公判廷で、所論摘録のような証言をしていることは認めら
れるし、当審証人B1は同人の取調に当つて、入浴や食事等について異例の厚遇を
受け、時には警察官から金員を贈られた事実をさえ述べているのである。しかしG
7証人の証言はまことにあいまいな内容で「A5自供の新聞記事」に言及していて
も、そのような新聞記事が存した事実が本件では証明されていない、「警察官から
一回だけ特別に優遇された」というが、どういう待遇を受けたことをいうのか具体
的には不明であり、「A9を遅くまで取調をした」というのも、その時間は判らな
いのである。又G7証人のいつているG5という取調官は本件被告人等の供述調書
を作成した司法警察員中にその名を発見し得ないところである。してみれば同証人
の証言によつて被告人等に対する取調が所論のように不当な点が多かつたとの推測
すらも許すものではない。証人B1の証言と雖も、これを証人O1、P1、L1の
各証言と比べてみれば判るとおり、B1を取調べるに当つては、時には煙草を与え
て喫煙を許すこともあつた事実やP1警視一行が取調官の労をねぎろうために携え
てきた菓子を取調を受けるためその場にあつたB1にも分け与えたような事実は認
められるが、大量の煙草、菓子、果物を自由に与えられたというような大袈裟なも
のではなかつたし、入浴の問題にしても、偶々h地区警察署の風呂が壊れて使用に
堪えなかつたので、やむなく近くの銭湯までL1警部補と同行し、その帰途支那そ
ばを注文し、警察署に帰つてからこの支那そばを貰つた事実があるのみで、B1の
正言は著るしく誇張に過ぎること明白である。もちろん以上の事実だけでも望まし
い事ではないが、その数量も僅かでしかもこれを被疑者に与えたのは警察官として
の温情の一片を示すだけで、相手方を誘惑して自白させようとする態度ではなかつ
たことからみて取調を受けた者の供述の任意性を害う事由とは認められない。又B
1の警察の取調が完了した後程経てから同人が他人に貸与してある全員の取立を希
望し警察職員にその旨申出た事実を聞知した警部O1が、独断で金三千円をB1に
与えた事実はたしかに存するのである。而してこのような処遇は不当であり、警察
職員として巌に慎まなければならぬことであるはいうまでもない。しかしこれもB
1の取調を完了した後の事である(この事はB1自身もこれを認めているのであ
る。)ことを以てすれば、その以前に作成された同人の供述調書の任意性に影響を
及ぼす事由とは認められない(B1の供述調書の任意性に関しては更に後に説明の
部分を参照のこと)のみならず、これを以て被告人等の供述調書に任意性がない事
を示す資料と主張する論旨は当らざるも甚しきものであり、従つて原審が弁護人の
証人B1の申請を却下したのも十分理由のあることと認めなければならない。
 以上のとおりであるから、原判決には毫も任意性のない供述調書を証拠に採用し
た違法がなく、任意の供述である被告人等の供述調書により認定された事実も他の
証拠と相まち正当な事実認定という外はなく誤認と認められる点がないから論旨は
すべて理由がない。
 同第六点について。
 原判示第一の放火未遂の事実の証拠として原判決は被告人A6の検察官に対する
供述調書を挙げているし、それもその供述内容を刻明に判決に引用し、単に証拠の
標目を示しているだけに止らないのであるが、この引用された供述中に被告人A6
が「A5からA5、B4、A7、B1の四人でG7方へ火焔瓶を投げつけてきたと
いう話を聞いた」旨の供述記載があることは所論のとおりである。そこで所論は検
察官に対する伝聞事項の供述は、公判期日に於ける供述中の伝聞について刑事訴訟
法第三百二十四条の規定が存するのとは違い直接証拠能力を認めた規定がないか
ら、前記A6の供述調書中同被告人がA5から聞知した内容は証拠能力がなく(刑
訴第三二〇条)これを証拠としている原判決は違法であると主張するのである。な
るほど刑事訴訟法第三百二十四条は被告人以外の者の公判準備又は公判期日に於け
る供述で、被告人又は被告人以外の者の供述を内容とするものの証拠能力について
規定するが、検察官に対する供述調書中に現われている伝聞事項の証拠能力につき
直接規定はない。しかし供述者本人が死亡とか行方不明その他刑事訴訟法第三百二
十一条第一項各号所定の事由があるとき、その供述調書に証拠能力を認めたのは、
公判準備又は公判期日に於ける供述にかえて書類を証拠とすることを許したものに
外ならないから、刑事訴訟法第三百二十一条第一項第二号により証拠能力を認むべ
き供述調書中の伝聞に亘る供述は公判準備又は公判期日における供述と同等の証拠
能力を有するもの<要旨>と解するのが相当である。換言すれば、検察官供述調書中
の伝聞でない供述は刑事訴訟法第三百二十一条第一</要旨>項第二号のみによつて
その証拠能力が決められるに反し、伝聞の部分については同条の外同法第三百二十
四条が類推適用され、従つて同条により更に同法第三百二十二条又は第三百二十一
条第一項第三号が準用されて証拠能力の有無を判断すべきであり、伝聞を内容とす
る供述はそうでない供述よりも証拠能力が一層厳重な制約を受けるわけであるが、
検察官に対する供述調書中の伝聞に亘る供述なるが故に証拠能力が絶無とはいえな
い。これを本件についてみるに被告人A6は原審において公訴事実に対して陳述し
たくはないと述べたのみで爾来極力その無罪を主張して来たものであり、その検察
官の供述調書は同被告人に対しては刑事訴訟法第三百二十二条により証拠調が為さ
れると共に放火未遂の共犯関係にある被告人A1、同A5同A7に対しては同法第
三百二十一条第一項第二号により証拠として採用されたものである。この事は本件
記録上明白で正当な処置と認められるのみならず弁護人の論旨もこの証拠能力を否
定する趣旨とは認められない。然るにこのA6の検察官に対する供述調書中の被告
人A5の供述を内容とする部分は被告人A5にしてみれば被告人以外の者(A6)
の供述で被告人(A5)の供述を内容とするものというに該当するから、刑事訴訟
法第三百二十四条第一項によつて同法第三百二十二条が準用されて証拠能力の有無
を判断すべきものである。而してそれは被告人A5に不利益な事実の承認を内容と
することは自明であり、しかもG7方放火未遂の共犯の一員である被告人A5が、
同じくその共犯で所用のため実行行為に参加しなかつた被告人A6に対する放火行
為の結果の報告であるから、その供述が任意に為されたものと認めるのが当然であ
る。それ故前記被告人A6の供述中A5からの伝聞に関する部分は被告人A5に対
する関係に於ては刑事訴訟法第三百二十一条第一項第二号、第三百二十四条第一
項、第三百二十二条に則つて証拠能力があるというべきである。所論はこの伝聞部
分にも証拠能力を認めるのは、反対尋問権を保障した憲法第三十七条第二項に反す
ると主張するが、既に刑事訴訟法第三百二十一条によつて証拠能力があると認めら
れた供述調書の一部分たる伝聞事項のみについて反対尋問をすることは実質的に殆
んど無意味であり、又被告人A5やその弁護人が反対尋問をしようとさえすれば、
被告人A6は原審公判廷に常に出頭していたのであるから、いつでも適当な時期に
反対尋問をする機会は十分にあつたわけで、反対尋問権の確保を保障し得ないこと
を憂うる必要はない。それ故原判決が前記A6の検察官に対する供述調書をA5か
ら聞知した事項についての供述を含めその全部を証拠に引用したことは、被告人A
5に関する限りに於ては正当で論旨は理由がない。しかしそれが、他の共犯者たる
被告人A7、同A1に対する関係に於ても証拠能力を有するかというに、前記被告
人A6の伝聞の供述は被告人A5以外の被告人A7、同A1にとつては、被告人以
外の者(A6)の供述で被告人以外の者(A5)の供述を内容とするから刑事訴訟
法第三百二十四条第二項により、同法第三百二十一条第一項第三号の規定が準用さ
れるのみである。従つてそれが「犯罪事実の存否を証明するにつき欠くことができ
ないときに限り」証拠能力ありとされるに過ぎない。然るに本件第一事実の放火未
遂に関し原判決は被告人A6の検察官に対する供述調書以外にB1の裁判官に対す
る第一回調書及び同人の検察官に対する供述調書を採用しており、しかもこれによ
つて「判示日時場所に於てB1、A5、A7、B4の四名が一列に並んで一斉に雨
戸めがけて火焔瓶を一本宛投げた」事実を認めることができ、前記A6の供述調書
を引用しなくても、放火未遂の実行者が何人であるかの点を確認する資料に欠けた
点をみないのである。してみれば、前記A6の供述調書中A5から聞知した事実を
供述する部分は「犯罪事実の存否を証明するにつき欠くことができない」証拠とは
いえないから、原判決がこれを被告人A1、同A7に対しても証拠として引用した
ことは、結局証拠に関する刑事訴訟法の規定に反し、証拠能力のないものを証拠と
した違法が存するとしなければならない。しかしながらかかる違法が存するにも拘
らず、この証拠能力の認められない伝聞の部分を被告人A7、同A1の関係に於て
証拠から除外し、爾余の証拠のみによつても原判示第一の放火未遂の事実を十分認
定できるから、前記の如き証拠能力に関する違法は判決に影響を及ぼすこと明らか
なものとはいえないから、論旨は結局その理由がない。
 同第七点について。
 所論は原判示第一の放火未遂に関する事実誤認を主張する。しかし原判決挙示の
証拠(但し前記第六点説明のとおり、被告人A7、同A1に対する関係では被告人
A6の供述調書の一部に存する伝聞の部分は証拠能力がないと認めるからこれを除
く)により原判示第一事実を認めるに十分である。而して被告人A6の検察官に対
する供述調書とB1の検察官に対する供述調書とを比較してみても所論の如き理由
のくいちがいが存するとは認められず但し原審は火焔瓶の個数につきA6の供述中
同人の記憶の不正確な部分を証拠として採用しなかつただけである。同人等が作つ
た火焔瓶の個数も正に原判決認定のとおりであると認められる。而して、原審証人
G8、同Q1の供述によれば、被告人A7は右犯行当時下痢症状で、昭和二十七年
七月十日、十二日、二十五日、三十日の四回に医師G8の診察を受けたことは認め
得ないわけではないが、その症状が同月二十九日の犯行時に於てそれに参加するこ
とを許さない程重篤なものであつたとは認められない。現にB1はその翌三十日午
前中被告人A7とバスの車中で会つているのであり、医師G8は所沢市に於て診療
に従事していて、同医師の診察を受けた被告人A7の症状がどの程度のものであつ
たかを正確には比企郡i村に居住する実兄Q1が知つているわけがない。仮りに被
告人A7が医師の診療を受けた当日の同被告人の症状をi村に居て知つていたとす
れば、それは同被告人が、その後所沢市からi村に帰つたからであり、同被告人は
その程度の小旅行に十分堪えられたのであるというべきである。他面R1は本件第
五の犯罪の前日即ち同年八月六日より翌七日にかけて被告人A7が兄R1方に滞在
し七夕の飾り付の準備し同夜兄方て泊つた旨証言するけれども、同事実認定の証拠
に引用されている各証拠によれば、被告人A7は同月六日午後四時過より、e村な
るB3方に於ける会議に出席し、(B3が被告人A7に気がつかなかつたとしても
右認定を覆す資料とすることはできない。)会議が終つた後はd町に出て被告人A
5と共にB5方に宿泊した事実を認められ、従つて前記R1の供述は措信し難く採
用できないこと明白であることからしても、原判決が原判示のとおり認定したこと
に誤認があると判断することは許されない。所論はそれ故理由がない。 同第八点
について。
 原判示第五の(二)の事実について引用せられた証拠が被告人A6の検察官に対
する第二回、同第三回供述調書のみであること所論のとおりである。而して所論は
これを捉えて刑事訴訟法第三百十九条第二項、憲法第三十八条第三項違反と主張す
る。しかし原判決の第五の(二)の事実というのは、第五のM1に対する強盗殺人
未遂事竹に関し、その実行行為前の段階として、被告人等に於ける謀議の成立した
事実を判示するに止まるから、第五の(二)のみで一個の犯罪事実としているわけ
ではない。然るに刑事訴訟法第三百十九条第二項や憲法第三十八条第二項はいうま
でもなく一個の犯罪行為を基準として、これに関し自白以外に何等の補強証拠が存
しない場合のことを規定しているのであつて、一個の犯罪事実の一部分、即ち犯意
の形成、謀議、予備から進んでは実行行為の着手、終了、結果の発生等すべての段
階毎にそれぞれ補強証拠を必要とする趣旨ではない。而して原判決は謀議の段階た
る第五の(二)の事実については所論のとおり被告人A6の供述調書以外に何も援
用してはいないけれど、第五事実即ちM1に対する強盗殺人未遂の行為全般にわた
る判示事実については被告人等の供述調書の外に証人B3、G7の証言の外多数の
証拠を示している故、訴訟手続の法令違反を主張する論旨は理由がない。
 同第九点について。
 原判決引用の被告人等供述調書に証拠能力を認むべきことは論旨第五点説明のと
おりである。
 原審証人B2の証言が所論のようにでたらめな証言ではなく、真実性に富むもの
であることは記録を通じて明白に看取できるところであり、数多くの裏づけ証拠に
よつてもその真実性が十分保障されているのである。従つてこれを所論のように証
拠能力のないものとするを許されない。たとえば、
 (一) 同証人は被告人A1、同A4等とともに火焔瓶を作つて実験した旨証言
するが、B2証人の指示に従へば、所沢市下富部落内山林中に確に右証言のとおり
の実験跡と覚しき樹木の焼痕と多数の瓶の破片の散在することが確認し得られた
し、現にその瓶の破片を集めて本件の証拠物となつているのである。(昭和二十八
年押第八七六号の一、二)、又同証人証言どおりの日時場所で同証人の云うとおり
の投石事件や火焔瓶投擲事件が発生しており、(判示第二、第三の事実に関する証
拠参照)、判示第四の強盗予備事件のため用意せられた火焔瓶がB2の証言どお
り、被告人A1の実姉S1方から別の揮発油瓶と共に発見押収され(同押号の一
一、一二)右S1は証人として、右瓶はその頃A1から預つたものとしている。も
しこれらの証拠の裏づけにも拘らず、B2の証言の真実性を否定するならば、被告
人A1は何の目的を以つて火焔瓶を作つたかの疑問を解くべき合理的説明がなけれ
ばならない筋合と考えるが、そのような合理性ある説明を聞くことを得ないのであ
る。
 (二) 原判決第五、六事実に関するB2の証言も亦同様である。昭和二十七年
八月六日e付のB3方に十数名の会合があつたこと及びその席上M1方の見取図を
持参した者がある旨のB2の証言は原審証人B3、同G7の証言により裏付けら
れ、M1が昭和二十七年八月七日自宅で暴漢に襲はれ日本刀その他の兇器を以て瀕
死の重傷を受けた事実の証拠と並んでB3方会合が山村工作隊の平穏な会合である
ことを否定すると共に、M1方縁側に被告人A1の下駄(昭和二十八年押第八七六
号の二四)被告人A2のズツク靴(同押号の二六)と極めて類似した痕跡が存する
こと、被告人A1がその逮捕直前まで所持していたと認められる日本刀(同押号の
二八)が発見されたが、右日本刀にM1の血液と一致するA型の血痕の附着してい
ること等B2証言の真実性を断定するに足りる証拠は一々これを列挙する煩に耐え
ないほどである。
 (三) B2に対する反対尋問は略三開廷の長きに亘つて行われたに拘らずその
間同証人は終始理路整然と一貫した応答を以て酬いているのである。C1隊の綱領
の細部につき解らないと答えており、「C1隊の本質は何か」との問によく判らな
いと述べ「革命とは何か」との問に具体的に明確な答弁ができない旨答えている
が、それだけでB2の証言を一切でたらめだと一蹴し得る理由がない。よしんばB
2が右の如き尋問に述べたとおり革命の本質や、その戦術について知識がなく、正
確な証言を為し得なかつたとしても、被告人等の犯行についての証言の証明力は減
殺されるわけがないからである。又B2が被告人等からみれば嘗ての同志を裏切
り、法廷で被告人等に不利益な証言をするような人物としか考えられないとして
も、その証言は被告人が責に任ずべき事実のみを供述したものであり、決して被告
人等に無実の罪を負はしめたものではないからである。
 以上のとおりであるから、被告人の原審公判廷における供述と相反するからとい
つて、被告人等の右法廷の供述が真相で、B2の証言が権力に媚びた作為の証言と
いうが如きは全く失当である。
 原審証人B3、同G7の証言をとつてみても同様で、右証言の証拠価値を否定す
るのは正当ではない。右証言に爾余の原判決引用の証拠を綜合すれば、被告人A5
が昭和二十七年八月六日午後四時頃誰も集らない中にまつさきにB3方に赴いて、
部屋を掃除してA1その他の集合を待つており、途中から帰つてしまつたことはな
く、終始B3方会合に列席しその会議の内容が何であるかを熟知していたこと、そ
の前々日八月四日に被告人A5、同A7、同A4の三名でG7を訪ね、M1の事を
聞き合せ、M1方見取図を書いてB3方に持参するよう依頼しておいたところ、G
7がその約束に従つてM1方の見取図を作つてB3方へ赴き、A5、A7、A4の
三名の中の一人に渡したこと、同所には約十名余りの青年がいて、G7やその他二
名(被告人A8及び被告人A9)を別室に移らせ、何事か密談に耽つていたこと及
び被告人A5ば同会合を終つて同夜はd町のB5方に宿泊し、翌七日M1方襲撃事
件に本隊として参加したこと明白で、これと反対の趣旨の証人T1、同U1、同V
1の各証言は信を措くに値しない。原審証人B5が被告人A5を知らないと証言し
ているが、この証言も措信できない。又G7が警察署でどんな取調を受けたにせ
よ、同人の法廷に於ける証言が証明力のないものとする理由にならないのみなら
ず、被告人A5もA7も、B3方会談に出席していなかつたと主張するに拘らず、
G7に対し、その主張に副うような反対尋問をしてはいないのである。してみれば
原判決が右B3、G7の証言を採用したことは当然である。
 又押収のKノート(同押号の一二)に対する所論の非難も当らない。右Kノート
は被告人A1の実母W1方で発見押収されたもので、それ自体では同被告人のB3
方の計画謀議に参加した事実を証明するものとはいえないが、その中にはM1に関
する記載が散見され、M1に対し被告人等がどんな評価をしていたかを推認させる
資料というべきであり、従つて、B3方会議の席上M1方の見取図の必要がありG
7をして作成させた事実と相まち、右会議に於てM1の事に関していかなる事が議
題となり、その結果原判示の如き襲撃事件の謀議が成立した事実を示す証拠として
挙げるに足るのである。
 要するに原判決には、所論のような採証法則違反は存せず、従つて事実の誤認も
ないから、論旨は理由がない。
 論旨第第十点について。
 所論は原判決中第五の(四)に於ける「被告人A3が所携の鋏を以てM1方南方
の電線一本を切断した後、先発隊の被告人A6及びB2は邸に入り」と判示した点
について理由のくいちがいがあるとする。しかし原判決挙示の証拠によつて右判示
事実を容易に認定し得る。もつとも被告人A6とB2が、A3の右電線切断後M1
方邸内に入り、M1に面会を求めた際、同家女中M2が、電話で薬局に薬を注文し
ていたこと所論のとおりであり、従つて二本の電話線の一方を切断してもなお通話
可能であつたというに帰するから、この事実は一見不合理な観がある。しかし記録
を精査し明らかなとおり、原審証人G9はこれを必ずしも不可能ではないと証言し
ているのみならず、当審鑑定人F4、同F5共同作成の鑑定書によれば、
 (一) 電話線の一本を切断すれば、その後新しく通話を開始することは不可能
である
 (二) しかし本件A3のやつたように通話中に電話線の一方が切断された場合
には通話不可能な場合と可能な場合とあり即ち
 (イ) その切断ケ所が、電柱より電話局側の部分で起つたときは通話不能に陥
るが
 (ロ) 反対側即ち電柱より電話加入者側の部分が切断されたときは必ずしも通
話不能ではなく、電線切断による電気抵抗がさほど高くならなければ、多少話声が
低くなる程度の支障を来すことがあるけれど通話は可能で、電気抵抗が高くなるに
つれて、次第に声が低く聴き取れなくなり、遂には通話不能となる。
 と認められるところ、G5作成の実況見聞書並びに同添付の電話線切断を示す写
真(記録第六二四丁)によれば、本件A3の切断したのはM1門前の電柱からM1
方に向つて数糎の箇所であること明白であり、従つてその切断ケ所から云えば前示
鑑定人の示す(一)の(ロ)の場合に該当すると認められるところ、切断された電
線はM1家の塀の南北に相当の長さに亘り、大地に接するか、或は地上の植物に触
れていたから、地表又は植物の水分が影響して電気抵抗がそれほど高くならなかつ
たことと容易に推察し得られるわけである。従つてM2がその通話中に起つた電話
切断の影響をそれほど感じなかつたとしても、又同人が相手方と完全に通話できた
としても決して不合理なわけがないのである。論旨前段はA3のいうが如くに電話
線を切断すれば、通話不能になるか少くとも通話が著るしく困難になることを前提
とし、かかる事実の認められない限りは被告人A3やA6の供述調書を証拠とする
ことはできないとするもので理由がない、のみならず寧ろこの点被告人A3の供述
に任意性ありとすべき理由の一に挙げ得るものであること既に弁護人の論旨第五点
に対し説明したとおりである。
 なおM1方附近で電話線の切断されたのは原判示の一本のみではないことは所論
のとおりであるが、門前の分はA3が切断した後に於て家人の通話中の声を聞いて
更に他の一本を切断したことは既に説明のとおりであり、M1家邸内における切断
はその位置からすると当然空中にあつたものを切断したとは認め難く、A3が門前
の電柱に昇つて切断したために垂れ下つた電線を何人かが切断したものというべ
く、それが何人により何時どうして切断されたのかは原判決の関知するところでは
ない。而して電話切断の用具に関しては原審証人G9は刃先の薄いペンチ式のもの
とし、原審鑑定人F6はぺンチ、ニツパー、ブライヤー、くいきりの類を挙げてい
るがその中のどれとも断じ得ないとしている。而して、これら証拠は必ずしも原判
示のように鋏を用いたとは断しる資料ではないが、鋏を用いたことを否定するもの
ではないしその用具が正確に何であるかを鑑定のみで断定しなければならない理由
も認められない。原判決が被告人A3の供述調書により、前記証拠と相まつて鋏を
用いて電線切断の事実を認定したのは正当である。
 更に右F6の鑑定書中には鑑定物件たる電線の両端が異種の器具で切断されたと
している記載が存する。しかし電線の一方はA3が切断した箇所であるが、他の断
端はA3が切断したため地上に垂れ下つた電線を鑑定資料とするため警察官が切断
したものと認められ、この両端が異種の切断器具によつて切断されたと推認される
のも当然なのである。従つて原判示には所論の如き審理不尽も事実の誤認もなく、
論旨後段もその理由がない。
 同第十一点について。
 証人M1は暴漢に襲はれ、百万円云々の書状を示されたのは蔵前の間であると証
言しているが、原審はこの点を措信せず証言中他の証拠と矛盾する部分を排斥して
いることは原判文上明白である。而して瀕死の重傷を受けたM1が、当時の惨状を
正確に記憶していなかつたことがあつても、それは寧ろ当然視してよく、右M1証
言の矛盾から、すべて本件の証拠は捜査官の誘導により作り出されたとする所論は
失当も甚しく、論旨は理由がない。
 同第十二点について。
 所論は原判決第五の(四)中の「被告人A1は日本刀、被告人A2は登山用ナイ
フ、その他の被告人は所携の兇器を以て同人(M1)に逼りその肩外数ケ所に斬り
つけ、逃げる同人を捕えんとして追跡探索し、或は金員を奪はんとしてその所在を
物色し」たとの判示部分が具体性を欠くものとし、理由のくいちがい、又は証拠に
よらないで事実を認定したものと主張する。しかしその他の被告人とはその前段に
「被告人A1、A2、A5、A7は屋内に押し寄せ」た事実を判示していることと
相俟つて被告人A5、同A7を指すこと文理上明白なところであるのみならず、原
判決は所論のようこ単に謀議に従つた行動をしたと判示しているのでなく、第六
(一)(二)のA8被告人、A9被告人を除く爾余の各被告人等のM1家に於ける
行為を各被告人毎に明示していること原判丈上明らかである。しかし、原判決がA
5、A7の所持していた兇器が何であるかを判示せず、又「M1の肩外数ケ所を斬
りつけた者」「同人を追跡探索した者」「金品を物色した者」が何人であつたかを
具体的に判示しなかつたことは所論のとおりである。而して事実を判示をするにつ
いて凡ての部分に亘り明確に判示することは望ましいことに違いないが、本件被告
人の中或は供述を拒否している者があり、或はその供述に他の被告人の供述とくい
ちがいがあることもあり、原判決認定以上に明確な判示を要求することが不可能で
あるばかりでなく、原判決が一応被告人等のB3方に於ける会議により、M1に対
する強盗殺人未遂の罪につき謀議の存することを認定し、かつ、M1方に於ける行
動についても夫々判示している以上所論の点のみについて判示し得ない部分があつ
たにしても理由不備といえず、又理由のくいちがいがあるとも認められないから論
旨は理由がない。
 同第十三点について。
 所論は被告人A8に関係する原判示第六の(一)事実の誤認を主張する。しかし
原判決の右関係部分引用の各証拠に証拠能力の存するはもちろんのことでその内容
も特に信用すべき状況にあるものと認められ、これら証拠によつて認定された原判
示事実には誤認の認められる点が少しもない。証人G10の証言は他の日の記憶を
八月六日のものと混同しているに過ぎず、証人G11の証言は原判示事実と矛盾す
るものではない。証人G12の証言に至つてはその証言が時間的に必ずしも正確た
供述とは認められず、当審検証の結果に徴しj橋よりA8方えは百五十米に過ぎ
ず、更に自転車で約六百五十米隔たるk小学校まで往復した後再びj橋まで戻るた
めにそれほど時間を要したとは認められず、同証人のいうが如く、被告人A8の原
判示所為が時間的に不可能とはいえないから同証人の証言こそ信用する価値がな
い。従つて右措信できない証言に依拠し原判決を論難する論旨もその理由がない。
 同第十四点について。
 所論は被告人A9に関係した原判示第六の(二)の事実誤認を主張するのであ
る。しかし原判決挙示の各証拠により右第六の(二)の事実を認定するに十分であ
る。被告人は当日自宅え帰つたと主張するが被告人A9の伯母G6が証人としてこ
れを判然否定しているのであり、同被告人が自宅え帰つたということこそ真実に反
するものであり、従つて所論G13の証言は信用できない。論旨は徒らにG6の証
言を初め、その他の各証拠、特に証人B2の証言を非難するのみで理由はない。
 被告人A1その他各被告人の論旨について。
 所論は重復した部分が多く、かつ極めて乱雑であるが、その主張するところは次
の諸点であると認められる。
 (一) 本件は国際及国内の諸情勢からみて、X1党弾圧のためのデツチ上げと
する論旨。
 (二) 原審の訴訟手続に法令違反があるとの論旨。
 (三) 被告人等の供述調書の任意性に関する論旨。
 (四) B2の証言に関する論旨。
 (五) B1の供述調書に関する論旨。
 (六) その他の原判決挙示の証拠に関する採証法則違反、事実誤認の論旨。
 と分類し以下順次項を追い判断を与える。(但し弁護人の論旨と同一で既に判断
を与えた点には再度説明しない。)
 (一) 国際国内の情勢により本件はX1党弾圧の起訴であり、従つて「デツチ
上げ」であり、被告人等は無罪であるとの論旨について。
 「デツチ上げ」とは恐らく証拠の伴わない空虚な事件という意味であろうが、そ
れならば被告人等が無罪であること当然である。しかるに本件ではその「デツチ上
げ」であるか否かがまさに問題であり、所論のように「デツチ上げ」だと決めてか
かり、無罪を主張するほど容易な事はない。事実の認定はいうまでもなく証拠によ
るべきものである。而して本件の証拠は内外の「諸情勢の分析」とは何のかかわり
もない。本件は一の刑事事件で、何等の政治的色彩を帯びたものではない。それ故
いかほど情勢を分析したとて本件が所論のようにX1党弾圧のための起訴であると
は証明することはできないし、況んやその「デツチ上げ」であることを証明するも
のでもない。当裁判所はかかる論旨につき判断を与える必要はない。原判決が被告
人はX1党員ないしはその同調者たることを冒頭に判示したのもX1党員又は同調
者の犯行である事実を判示したのみで、X1党に対する偏見に左右された事実は毫
も存せず又X1党員なるが故に有罪とし、或は刑を重くしているわけでないこと勿
論である。
 (二) 原審訴訟手続の法令違反を主張する論旨について。
 法廷に於て被告人や傍聴人が騒いだりして審理が円滑に進行しないと予想される
事件に於て、裁判所周辺を警官が警戒し、法廷内部に警備員を配置する要があるこ
とは当然である。本件に於て右の如き措置に出たとしてもそれが不必要であつたと
はいえず、特に不当な目的に出たとは認められない。法廷の窓に金網をつけたり、
傍聴人に一応の身体検査を施行したとの点も同様である。而して叙上の措置が必要
已むを得ないものと認められる以上、それが被告人に心理的に何等かの影響を及ぼ
したとしても、被告人の身体を拘束したものといえないのはもちろん、これを以て
原審裁判官に不公正なものがあつたと認めることはできない。盗聴器ということを
所論はしきりに主張するのであるが、それが果してどう云うものであるのか当裁判
所には正確なことは判うない。強いて考えれば法廷が万一混乱に陥るような場合を
予想し、迅速な警備態勢をとるため、法廷にマイクロフオンを設置したのかもしれ
ないが、仮にそうだとすれば、それも法廷の秩序稚持のための合目的なものと認め
られると同時に、それが原審裁判官によつて設置されたものとは断定し得られな
い。従つてその設置が原審裁判官の不公正な意図に出たことを認めるに足る証左は
ない。
 被告人A7等は検察官がB2の公判分離を請求し之が許されるや、右B2を本件
被告事件の証人として申請し、右証人申請の書類が公判分離決定前から作成せられ
ていた事を以て原裁判所と検察官が公判の分離を打合せていた事実を示すものの如
く主張するが、検察官が分離決定が為されることを予想し、書類を行成準備してい
たからといつてこれ亦原審裁判の不公正を示すとはいえない。被告人A5等は法廷
に武装警官を導き入れたというが、記録上かかる事実は認められない。その他傍聴
人中に私服の警察官がいたとか、被告人の法廷への護送問題まで取り上げて裁判所
の不当を主張しているが、これらは原裁判所の関知しないところであり、所論の如
き主張を理由ありとすべき何の根拠もない。
 又所論はB2の公判を分離したことを不当とする。しかし同人の公判を分離し、
B2を証人として取調べることが被告人等に不利な手続とは認められず、却つて同
人を証人として反対尋問にさらし、同人の証言の信憑力を打ち破る好機を与えられ
たわけであつて、この意味に於ては公判手続を分離しないでB2が被告人として本
件被告人等と同一法廷に出頭していて、被告人としての右B2に質問するよりも寧
ろ有利な立場にあつたといい得るところである。所論はB2が証人として被告人等
に不利益な陳述を為したことから、公判を分離しなければ、証人としての陳述を阻
止し得て被告人に不利な証拠の取調を免れると誤解しているのかも判らないが、た
といB2の事件を分離しなくても、同人が強盗殺人未遂被告事件について分離前の
昭和二十七年九月十八日の公判廷で起訴状のとおでり相違ないと述べ、次いで同年
十月九日の公判廷に於て、強盗未遂、強盗傷人、強盗予備等の訴因に関しても前同
様自己の有罪であることを認めていたのであり、共犯者であり共同被告人である同
人の原審公判廷における供述が被告人等に対しても証拠能力を有するは当然で事件
の分離によつて被告人等が不利益を受けたことは少しもない。またB2に対する反
対尋問の如きは昭和二十八年三月十二日、同月十七日及び同月二十四日の三開廷を
費していること記録上明白で、原審裁判所がこの反対尋問を制限したことを認める
証左はない。
 その他証人M1を初め各証人にはいずれも現に被告人等からも反対尋問が為され
ていること明瞭であるに反しそれを制限したようなことは記録上少しも認められな
い。
 原審検証に被告人等が立会つていないことは所論のとおりであるが、被告人等は
当時いずれも勾留中で身体の拘束を受けていたものであり、刑事訴訟法第百四十二
条により検証に準用される同法第百十三条第一項本文は被告人の立会権を認めてい
るに拘らず同項但書によれば身体の拘束を受けている被告人にはこの限りに非ずと
規定して身体拘束を受けている被告人に検証立会権を認めなかつたものであるか
ら、原審が被告人等を立会わせないで検証を施行したことは少しも違法ではない。
 被告人A1は右検証に際し、警官が被告人A9に対し暴行したかのようこ云う
が、何かの誤解に過ぎない。
 逮捕状に関しては被告人A4につき昭和二十七年八月二十一日附逮捕状、被告人
A2につき同月八日附逮捕状が存すること記録に徴し明白で、同人等の逮捕が令状
に基かない不法のものとはいえない。もつとも被告人A2は刑事訴訟上第二百十条
の緊急逮捕を受けたものであるから逮捕状の発布が逮捕の後であつたのは当然であ
る。
 最終陳述に関しても原審手続は違法ではない。なるほど原審記録をみるに昭和二
十八年六月十三日までには既に被告人A2、A3、A8、A9の最終陳述を終つ
て、同月十七日に続行となつたところ、同期日には弁護人の申請により証人G14
を取調べてから新しく最終陳述の段階に入り被告人A1以下A2、A3、A8、A
9の外に被告人A5も最終陳述を終つて被告人A7の最終陳述の中途で次回に続行
となつたところ、同年七月七日の原審第三十六回公判に於て突如弁護人から証人B
1の申請があり、却下されたこ拘らずこれに絡んで被告人A7は裁判長に促されて
も、B1を調べないなら最終陳述をしたいと述べ爾余の被告人も最終陳述を為す意
思がない旨を表明したので結審の運びとなつたことを認められる。併し最終陳述は
被告人等が現実に為すことを必要とせず、その機会を与えれば足りるものと解する
を相当とし、前認定のとおり原審裁判長から陳述を促されながらこれを拒むが如き
場合には最終陳述の機会は十分与えられたものというべく、従つて被告人等の最終
陳述を完了しないで公判を終結するも違法ではない。
 なお所論は原審が被告人等申請の証人を不当に却下したと主張するけれど、証人
尋問はすべて裁判所が適当と認める限度に一任されているものであり、申請に係る
所論証人を取調べなければ違法とは到底解し難い。
 又原判示中に某所とあるだけでその場所がはつきりしないところがあるけれど犯
罪の場所は裁判所の管轄権等に関し重要な事項ではあるが、これを明示し得なけれ
ば理由不備とはいえない。それ故所論はいずれもその理由がない。
 (三) 被告人の供述調書の任意性に関する論旨について。
 この論旨は既に判断を与えた弁護人の論旨第五点と同一であり、その説明を参照
すべきである。原審証人G14の証言によつてもその任意性を否定できないことを
一言するに止めそれ以上の判断をしない。
 (四) B2の証言に関する論旨について。
 これも又弁護人の論旨第九点と同一で、当裁判所の判断も又同一であるから、更
にここに繰り返さない。
 (五) B1の供述調書に関する論旨について。
 B1は昭和二十八年三月二十五日の原審法廷に証人として尋問を受け、「被告人
A1は全然見知らぬ人である」「被告人A7も知らぬ、ペンネームでも知らぬ」と
述べてはいるがそれとともにE1方放火未遂事件に関し自己が有罪の判決を受ける
虞がある故を以て証言を拒否している。更に被告人A1や被告人A7、同A6の問
に対し、B1が夜遅くまで取調を受けるような場合はこれを拒絶したこと、取調中
精神的に疲労したことや昼食も食わずに取調を受けたこともなく記憶の薄れたこと
を述べたこともないと証言している。しかし前記のように証人が自己に有罪判決を
受ける虞がある故を以て証言を拒んだ場合には刑事訴訟法第三百二十一条第一項第
二号の「供述者の死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるた
め公判期日において供述することができなかつたとき」と区別すべき理由が認めら
れないから同条によつてB1の検察官に対する供述調書の証拠能力を認めるべきは
当然の事理である。たとい同人がその後更に供述を変え、自己の犯行を全面的に否
定しているからといつて、証人として再度これを取調べなければならない理由は毫
も認められず、前記公判廷における被告人A1、A6、A7に対する応答やB1の
供述調書を検討することによつてもB1の検察官に対する供述調書の任意性は認め
られる。而して当審においてはB1を取り調べたけれど同人の証言は誇張されたも
ので真実性に乏しいものと認められるから右調書の証拠能力を否定する根拠となり
得ないことは先に弁護人の論旨第五点にも説明したとおりである。それ故原審がB
1の証人申請を却下したのは理由があると共にB1の検察官に対する供述調書を証
拠能力あるものとし之を証拠に採用したことは違法ではなく論旨は理由がない。
 (六) その他の原判決の証拠に関する採証法則違反、事実誤認の論旨につい
て。
 (1) ズツク靴と下駄(昭和二八年押第八七六号の二六、二四)に関する原審
証人F7の証言は所論のように検察官に迎合した根拠薄弱なものとはいえない。こ
れとF7作成の鑑定書(昭和二十七年八月二十五日附)その他原判決挙示の証拠に
より、昭和二十七年八月八日朝M1方縁側に残つていたズツク靴及び下駄の痕跡
は、被告人A2の履いていたズツク靴と、被告人A1の履いていた下駄によつて印
せられたもので、被告人等はこれを否定するが、被告人A2、A1がその前夜M1
方へ行つた事実を明示している。なるほどF7の鑑定書や証言だけでは、下駄或は
ズツク靴とその痕跡との同一性の存することを断定することを差し控えていると認
められるがそれでもなおズツク靴の方は「一般検査、肉眼検査、印象検査の結果全
く符合し」「同一と断定することが許される程高度の酷似性」があり下駄の方も
「木の節を頂天とする不正三角形に顕出される歯型の部位が同一類型」であるとし
ているのである。それ故これら各証拠と爾余の証拠と相まつて、これを同一のもの
と断定して一点疑をも残さないのである。又前記ズツク靴や下駄が八月二十日に押
収され八月二十五日に鑑定された事即ち被告人A1、同A2の逮捕後相当の日時を
経過したことや、下駄が鼻緒と別になつて証拠物として提出されていることは所論
のとおりであるが、このような事実によつて前叙認定を妨げるものではない。原判
決には採証法則違反はない。
 (2) 洋刀(同押号の三三)には血痕を証明できないし、被告人A2がM1に
斬りつけた事実を立証するものでもない。原判決認定も結局これと同趣旨で被告人
A2が洋刀を以てM1にせまつた事実を認定し、その証拠として前示洋刀を挙げて
いるに過ぎない。ただ原判決はこの点表現が不正確で誤解を生じ易いが、論旨のい
う如くA2がM1に斬りつけた事実をも認定しているわけではない。論旨は原判文
を誤解したに過ぎないと共に、右洋刀に血痕が認められないからといつて、原判決
の事実誤認とはいえない。
 (3) 湯呑茶碗(同押号の四五)に存する掌紋はB2の掌紋であることはF7
の鑑定書の示すとおりである。B2が指紋の発見を恐れて右茶碗を拭いながら、却
つてそのため自己の掌紋を残すに至つたことは皮肉ではあるが、不自然な現象では
ない。而してこの事実も他の証拠と共に被告人B2が昭和二十七年八月で日M1方
に行つた事実を確定し得るし、B2の証言の真実なることを裏書すると共に被告人
等の弁解を打ち破る力をもつている。なるほど本件で他に指紋や掌紋の証拠は存し
ないが、その事は犯行現場に一切指紋が発見されなかつたということではなく、何
人の指紋なりや確然としない指紋が沢山存在してはいるが、本件に於て証拠として
提出し得る証拠にはならないだけである。M1家の家人の指紋を発見したとて、そ
れが本件の立証に供せられるわけがない。以上の事はF7の原審第二十九回公判の
証言から自ら推察し得る。又八月十五日に前記掌紋のある茶碗を一且M1方から押
収し、B2の掌紋の存することを確認しながら、(F7のこの点の鑑定は八月十五
日付となつている)茶碗をM1方へ仮還付しその後同月二十一日更に之を押収した
ことは所論のとおりで捜査官として重大な失熊といえる。しかしこの事から茶碗の
掌紋によりB2がM1方へ客を装つて訪れた事実を認定するについてその証明力を
減ずるものとはいえない。
 (4) 麻縄(同押号の一九)に血痕が証明されても不思議ではない。証人B2
の供述によれば、同人はM1方であちらこちらと動き廻つている中、腰につけた右
麻縄を落したといつている。而してM1方に於ては各所に血痕が流れ落ちていたこ
とは警察官の実況見聞書に明らかである。麻縄の血痕はその際附着したと認められ
る。従つて右血痕附着の麻縄を証拠としても採証の誤はなく、却つて爾余の証拠と
共にA2が犯行当日d町内で新しい麻縄を買い、M1方家人を縛るため、各人に分
配した事実やこれを以て現に家人を縛つた事実をも証明するものである。
 (5) 紙片三片(同押号の三四)も本件の重要な証拠物である。なるほど現在
僅少部分が残つているのみで、それに現われている文字も判読し得るのは少ない。
しかし欠損部を推理により補えば、「命」とか「世な」という文字が存することを
認められ、原判示の如き書状の存在を立証する資料たるに十分である。而してその
紙質も一部変色が認められる外は同一と認められるし、それが三片に分かれている
こしてもこの事実を以つて証拠について何等かの作為を施したものとま認められ
ず、原判決がこれを証拠としているのは当然である。
 (6) 証拠の示すところでは被告人A6は八月七日鉛筆売を装いM1方に赴い
た事実があり、同夜同被告人は先発隊としてB2と共にM1方へその在宅を確める
ために行つた事実は原判決もこれを認定しているとおりである。それ故M1家女中
M3は二度、M1三男M4は一度被告人A6と顔を合せ会話も交しているわけであ
るが、右M3もM4も、原審証人として被告人A6の顔貌を記憶している旨の証言
をしていないことは所論のとおりである。(M3、M4の当審証言は、同人等の記
憶以外の要素が混入しているかも判らないから、今これを考慮に入れないこととす
る。)しかし来客が日頃から多いと認められるM1方にあつて、さして重要な客と
認められない被告人A6の容貌がM1家家人の記憶に止まり得なかつたとしても、
不自然ではない。まして被告人A6の再度の来訪にも拘らず昼間の鉛筆売の事を想
起し得なかつた証人M3の記憶力の程度を考えれば、同証人等の証言が、被告人等
の犯行を否定する資料たる価値は認められない。
 (7) 証人M1の証言中の書状を突きつけられた場所が蔵前の部屋だとの点が
他の証拠とくいちがうこと、及び電話線の切口が鋏を用いたと断定するに足る鑑定
の為されていないことは所論のとおりであるが、この点に関しても原審に採証法則
の違反はないこと既に弁護人の論旨に答えたとおりである。(弁護人の論旨第十一
及十二点参照)
 (8) 原審証人G15が一度すれ違つただけの被告人A1及同人の所持してい
た物件につき正確な言を為し得なかつたことは、同人の証言を無価値ならしめるも
のではない。原審がこれを証拠としたことは採証法則に反しない。
 (9) M1着用の浴衣(前回押号の一三)に血痕の附着していないことは所論
のとおりである。しかし原判決はこれを証拠に採用していないのであるから、これ
を以ては原判決の事実誤認、採証法則違反の理由にならないこと自明であるが所論
はそれが証人の証言に影響あるもののように主張するから敢て説明を加える。当審
証人M3の証言により、浴衣は血にまみれてM1方の庭に落ちており、兇行後捜査
が一段落してこれを押収しないことに決つてから(浴衣が押収されたのは八月十三
日であること記録上明白である。)M3がこれを洗濯した事実を認めることができ
る。犯行後直ちに右浴衣を押収しなかつた手落は存するにしても、証人の証言に影
響を来すものとは認められず、現に右浴衣の肩口にM1の傷に相当する痕跡が存す
るのである。なるほど同人の右腹部の傷に相当する痕跡が浴衣にはないが、本件犯
行により同人の帯が解けるし、浴衣の前もハダケて遂に庭にズリ落ちてしまつた事
実(M1の証言参照)を考えれば、M1自身右腹部の傷を受けていても、浴衣にそ
の痕跡が残つていない理由を推察するに難くはない。
 (10) 押収のステツキ(同押号の二二)の尖端が割れており、それが何時何
人の手で為されたか不明であるが、その事実は原判示に何の影響もない。原判決は
右ステツキを証拠にしていないからである。その他所論はA3の上衣(同押号の二
七)球根栽培法(同押号の三五)について論及するけれど、右はいずれも原判決が
証拠としなかつたものであるから、いずれも原判決の事実誤認を主張し得る資料で
はない。
 (11) 被告人A4は押収のシヤツ(同押号の九)についてそれが作為された
証拠であるかの如くいう。なるほど右シヤツは鋏の跡が所々に認められるのである
が、それはF6がシヤツの穴がどうしてできたかを鑑定するため、その部分を細切
し、シヤツの穴の部分に硫酸の附着していることを証明しているのである。(記録
第二三四丁以下参照)従つて右鋏の跡はF6が鑑定の必要上細切したため生じたも
のであつて、ことさら作為を施したものではないこと明白である。
 (12) 所論はG7の証言、日本刀に指紋の存しないこと等その他について論
難するが、要するに原審が適法に為した証拠の取捨選択を非難するに過ぎない。
 それ故論旨はいずれも理由がない。
 弁護人の論旨第十五点について。
 所論は量刑の不当を主張する。よつて記録を精査し、被告人等の経歴、環境、本
件犯行の動機、態様、罪質その他諸般の情状を考えてみると、被告人の中最年長者
たる被告人A6が大正十三年生である外は昭和の生れで、その人生経験は浅く資質
環境も必ずしも恵まれたものとはいえない。それに拘らず被告人等は自己の狭い視
野だけで不正と判断される事に対する憎悪の感情からその真否を確めることもせず
この不正を急激に排除しなければならないという信念にまで高められ、それが現在
の社会秩序に対する反逆となつて本件のような犯罪が発生するに至つたと認められ
る。而して世の思潮の一部にはこのような考え方も存在しているのであり、被告人
等が個人的な動機のみで本件が発生したわけではないという点は、普通の強盗殺人
や放火等の犯行と類を異にすることは明らかであるが、それだけではその犯行の兇
悪さを減じるものではなく、被告人等の責任も従て軽いものとはいえないのであ
る。しかし本件と略同一の罪で処罰されたB2が懲役八年に止まることを以てすれ
ば、それが同人の現在悔悛の情顕著なるものあることを酌んだ科刑とは認められる
が、それでもたお本件被告人等に対する処刑が一段と重きに過ぎる感を伴わざるを
得ない。量刑の不当を主張する論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。
 よつて検察官の本件各控訴は理由はないが被告人等の本件各控訴は結局理由があ
るから、刑事訴訟法第三百九十七条に則つて原判決を破棄することとし、本件は当
裁判所の自判に適当と認め、同法第四百条但書により更に次のとおり判決する。
 原判決の認定した事実(但し原判示第二の事実中「所携の石塊を投げつけ」とあ
るのを「所携の石塊を投げつけ命中させ、自動車の窓ガラス二枚を破損するに至ら
せ」と訂正する)に法律を適用すると被告人A1の判示所為中判示第一の点は刑法
第百八条第百十二条第六十条に、判示第二の点は暴力行為等処罰に関する法律第一
条第一項に、判示第三の点は刑法第二百四十条前段第六十条に、判示第四の点は刑
法第二百三十七条第六十条に、判示第五の点は刑法第二百四十条後段第二百四十三
条第六十条に該当するから、第一第三には有期懲役刑を、第二は懲役刑を、第五に
は無期懲役刑を夫々選択し、なお判示第五は未遂罪であるから同法第四十三条本文
第六十八条第二号により未遂の減軽をし、以上は同法第四十五条前段の併合罪であ
るから、同法第四十七条第十条に則つて最も重いと認める判示第五の強盗殺人未遂
罪の刑に刑法第十四条の制限内において法定の加重をした刑期範囲内において被告
人A1を懲役十五年に処し、
 被告人A2、同A3の判示第五の所為は刑法第二百四十条後段第二百四十三条第
六十条に該当するから所定刑中無期懲役刑を選択し、未遂罪であるから同法第四十
三条本文第六十八条第二号により未遂減軽をし、なお被告人A3については情状憫
量すべきものがあるから同法第六十六条第六十八条第三号により酌量減軽した刑期
範囲内において被告人A2を懲役八年に、同A3を懲役五年に処し、被告人A4の
判示所為中第二の点は暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項に該当するので懲
役刑を選択し、第三の点刑法第二百四十条前段第六十条に該当するので有期懲役刑
を選択し、第四の点刑法第二百三十七条第六十条に、第五の点は刑法第二百四十条
後段第二百四十三条第六十条に各該当し後者については無期懲役刑を選択し未遂罪
であるから同法第四十三条本文第六十八条第二号に則つて未遂減軽をし、以上は刑
法第四十五条前段の併合罪であるから同法第四十七条第十条に則り最も重いと認め
る強盗殺人未遂罪の刑に同法第十四条の制限内において法定の加重をした刑期範囲
内において被告人A4を懲役十二年に処し、
 被告人A5、同A6、同A7の各判示所為中第一の点は刑法第百八条第百十二条
第六十条に、第五の点は同法第二百四十条後段第二百四十三条第六十条に各該当す
るから所定刑中前者については有期懲役刑、後者については無期懲役刑を夫々選択
しなお後者は未遂罪であるから同法第四十三条本文第六十八条第二号によつて未遂
減軽をし、以上は刑法第四十五条前段の併合罪であるから、同法第四十七条第十条
によつて重い後者の刑に刑法第十四条の制限内において法定の加重をした刑期範囲
内において被告人A5を懲役十二年に、被告人A6を懲役十一年に、被告人A7を
懲役十年に各処し、
 被告人A8、同A9の判示第六の所為は、いずれも刑法第六十二条第一項第二百
四十条後段第二百四十三条に該当すべきものであるが、被告人A8、同A9はいず
れも被告人A1等がM1を殺害する意図に出でた事を知らなかつたものであるから
刑法第三十八条第二項を適用し刑法第六十二条第一項第二百四十条前段を以て処断
することとし、所定刑中有期懲役刑を選択し、従犯であるから、同法第六十三条第
六十八条第三号に則つて減軽した刑期範囲内において、被告人A8、同A9を夫々
懲い役三年六月に処し押収の火焔瓶三本(昭和二十八年押第八七六号の一〇)麻縄
三本(同押号の一九、二〇、二一)短刀一本(同押号の三〇)洋刀一本(同押号の
三三)は本件第四の犯行又は第五の犯行の各供用物件で被告人等以外の者の所有に
属しないから刑法第十九条第一項第二号第二項によつて没収し、訴訟費用の負担に
ついては刑事訴訟法第百八十一条第一項第百八十二条を適用して主文末項のとおり
夫々負担させるべきである。
 よつて主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 近藤隆蔵 判事 吉田作穂 判事 山岸薫一)

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