弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人島野武、同渡邊喜八の上告趣意第一点について。
 所論刑法三四条ノ二に「刑ノ言渡ハ其効力ヲ失フ」とあるのは、刑の言渡に基く
法的効果が将来に向つて消滅するという趣旨であつて、刑の言渡を受けたという既
往の事実そのもの(例えば、刑法四五条にいわゆる、或罪ニ付キ確定裁判アリタル
トキ)まで全くなくなるという意味ではない。そして、被告人が、所論の罰金刑に
処せられたという事実その他被告人の経歴、性格、年令及び境遇並びに犯罪の情状
及び犯罪後の情況等を考察、参酌して、各犯罪、各犯人毎に適切妥当な刑罰を量定
するのは当然であつて、憲法一三条、一四条に違反しないことは、当裁判所大法廷
屡次の判例の趣旨とするところである。(判例集二巻一一号一二七五頁以下、同四
巻三号三六六頁以下判決参照。)それ故、所論は、採用できない。
 同第二点乃至第四点について。
 同第二点は、單なる訴訟法違反の主張であり(所論身上調書の証據能力を否定す
べきでないことは、論旨第一点に對する説明によつて明らかである。)、同第三点
は、違憲をいうが、その実質は、原審で主張も判断もない第一審における單なる訴
訟法違反の主張であり(所論訴訟費用は、すべて有罪部分に関するものであること
記録上明白であつて、所論の訴訟法違反も認められない。)、同第四点は、量刑の
非難で、すべて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また、記録を調べても、同
四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて、同四〇八条に従い、裁判官全員一致で(但し論旨第一点に對する眞野裁
判官の反對意見を除く)、主文のとおり判決する。
 論旨第一点に関する裁判官眞野毅の意見は左のとおりである。「刑法三四条ノ二
において、「刑ノ言渡ハ其効カヲ失フ」とあるのは、刑の言渡に基く不利益な法的
効果が将来に向つて消滅し、従つて被告人はその後においては不利益な法律的待遇
を受けないという趣旨と解すべきである。刑の言渡があつたという事実は、すでに
存在する客観的な過去の社会的出来事であるから、後になつてこれを消滅せしめる
ことは事物の本質上不可能であることは当然である。だがしかし、將来に向つては、
過去に刑の言渡がなかつたと同様な法律的待遇を、被告人に對して與えることは法
律的価値判断の問題として可能である。前記法条の意義は、まさにこの可能なこと
を表明したものと解すべきである。それ故、刑の言渡が失効した後において、過去
に刑の言渡を受けた事実の存在を前提として、この前科を累犯に算入して刑を加重
したり、または刑の量定において被告人を法律上不利益に取扱うことは、前記法条
に違反するものと言わなければならない。原判決は、「被告人がさきに食糧管理法
違反罪により罰金刑に処せられた」事実をも考慮に入れて、第一審の量刑を重きに
失するとは認めるに足りないと判示している。しかるに、所論のごとく記録中の被
告人の身上調書によると被告人が新潟区裁判所の略式命令により食糧管理法違反罪
により罰金五十円に処せられたのは、昭和一八年一二月三〇日であるから、前記刑
法三四条の二の規定によれば、「……罰金以下ノ刑ノ執行ヲ終リ……タル者罰金以
上ノ刑ニ処セラルルコトナクシテ五年ヲ経過シタルトキ」は、刑の言渡はその効力
を失うわけである。それ故、原審判決が被告人が過去において「食糧管理法違反罪
により罰金刑に処せられた」事実をも考慮に入れて第一審判決(昭和二六年五月七
日言渡)の量刑を重きに失せずと判断したのは、すでに失効した前科の故に量刑に
おいて被告人に對し不利益な法律的待遇を與えたものと認められるから、原判決に
は刑法三四条の二の規定に反する違法があると言わなければならぬ。しかし、その
考慮せられた過去の罰金刑は略式命令による僅か五十円に過ぎないものであつて、
原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとは認められないから、違法ではある
が破棄する必要はない。
  昭和二九年三月一一日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    眞   野       毅
            裁判官    齋   藤   悠   輔
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    入   江   俊   郎

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