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平成25年3月26日判決言渡
平成23年(ワ)第40982号損害賠償請求事件
主文
1被告は,原告に対し,39万8040円及びこれに対する平成21年7月1
日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2訴訟費用は被告の負担とする。
3この判決は,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
主文同旨
第2事案の概要
普通地方公共団体である原告の住民は,原告が住民基本台帳ネットワークシ
ステムに接続していないことは住民基本台帳法に違反するものであって,この
不接続に伴って年金受給権者現況届の郵送費等を支出したことは財務会計上の
違法行為に該当するなどと主張して,地方自治法242条の2第1項4号に基
づく住民訴訟を提起したところ,当時国立市長であった被告に対して上記郵送
費等相当額の損害賠償請求をすること等を命じる判決が確定したが,被告は上
記損害賠償金の支払をしなかった。
本件は,原告が,被告に対し,地方自治法242条の3第2項に基づき,不
法行為に基づく上記郵送費等相当額の損害賠償金39万8040円及びこれに
対する不法行為後の日である平成21年7月1日から支払済みまで民法所定の
年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案であり,地方自治法242
条の2第1項4号に基づく上記確定判決(いわゆる第1段目の訴訟の判決)に
よって認定された損害賠償債務の履行を求めるいわゆる第2段目の訴訟である。
なお,上記のいわゆる第1段目の訴訟の審理において,当該訴訟の被告であ
った国立市長側に,本件訴訟の被告が補助参加をしていたが,控訴した国立市
長が,本件訴訟の被告の意思に反して控訴を取り下げたため,いわゆる第1段
目の訴訟についての参加的効力(民事訴訟法46条,地方自治法242条の3
第4項)が本件訴訟の被告に対して及ばないこととなり,確定したいわゆる第
1段目の訴訟と同じ争点について,再度審理をすることになったものである。
1関係法令の定め
別紙「関係法令の定め」記載のとおり(同別紙中の略称は本文においても同
様に用いる。)。
2争いのない事実等(証拠等により容易に認められる事実は,証拠等を掲記し
た。)
(1)当事者
原告である国立市は,普通地方公共団体であり,被告は,平成▲年▲月か
ら平成▲年▲月まで国立市長であった。
(2)住民基本台帳ネットワークシステム(以下「住基ネット」という。)の
概要等(甲1,弁論の全趣旨)
ア住民基本台帳制度
市町村は,地方自治法13条の2及び住基法に基づき,住民基本台帳を
整備しており,住民基本台帳には,氏名,生年月日,性別及び住所等が記
載され,市町村の住民に関する事務の処理は全て住民基本台帳に基づいて
行われることが予定されている(住基法2条,7条)。
イ住基ネットの目的等
従前,各市町村の保有する住民基本台帳の情報は当該市町村内において
のみ利用されていたところ,住基ネットは,市町村長に住民票コードを記
載事項とする住民票を編成した住民基本台帳の作成を義務付け,住民基本
台帳に記録された個人情報のうち,特定の本人確認情報(氏名,生年月日,
性別,住所,住民票コード及び変更情報(転入転出等の異動情報等)に限
る。以下同じ。)を市町村,都道府県及び国の機関等で共有してその確認
ができる仕組みを構築することにより,住民基本台帳のネットワーク化を
図り,住民基本台帳に関する事務の広域化による住民サービスの向上と行
政事務の効率化を図ることを目的として(住基法6条,7条13号,30
条の5から30条の8まで等),住民基本台帳法の一部を改正する法律
(平成11年法律第133号)により導入されたものである。
ウ住基ネットの仕組み
住基ネットの基本的な仕組みは,以下のとおりであり,平成14年8月
5日に第1次稼働(住民票コードの住民票への記載,市町村長から都道府
県知事への本人確認情報の通知,国及び地方公共団体等への本人確認情報
の提供等に係る部分の導入)が開始し,平成15年8月25日に第2次稼
働(住民票の写しの広域交付,転入転出の特例処理,住民基本台帳カード
の交付等に係る部分の導入)が開始した。
(ア)市町村には,既存の住民基本台帳電算処理システム(以下「既存住
基システム」という。)のほか,既存住基システムと住基ネットを接続
し,その市町村の住民の本人確認情報を記録,管理するシステムである
コミュニケーションサーバが設置され,本人確認情報は,既存住基シス
テムから上記サーバに伝達されて保存される。都道府県には,区域内の
市町村のコミュニケーションサーバから送信された本人確認情報を記録,
管理するシステムである都道府県サーバが設置されている。都道府県知
事は,総務大臣の指定する者(以下「指定情報処理機関」という。)に
本人確認情報処理事務を行わせることができ(住基法30条の10第1
項柱書き),指定情報処理機関には,全都道府県の都道府県サーバから
送信された本人確認情報を記録し,管理する全国サーバが設置されてい
る。都道府県知事から指定情報処理機関に送信された本人確認情報は,
全国サーバに保存される(住基法30条の11)。
(イ)市町村長は,住民票の記載,消除,又は本人確認情報の記載の修正
を行った場合には,当該住民票の記載等に係る本人確認情報を都道府県
知事に通知する(住基法30条の5第1項)。都道府県知事は,通知さ
れた本人確認情報を磁気ディスクに記録し,これを原則として5年間保
存しなければならない(住基法30条の5第3項,住民基本台帳法施行
令30条の6)。
(ウ)市町村長は,条例で定めるところにより,他の市町村の市町村長そ
の他の執行機関から事務処理に関し求めがあったときは,本人確認情報
を提供する(住基法30条の6)。
都道府県知事は,住基法別表に掲げる国の機関等,区域内の市町村の
市町村長その他の執行機関又は他の都道府県の執行機関等から,法令又
は条例によって規定された一定の事務の処理に関し求めがあったときは,
政令又は条例で定めるところにより,本人確認情報を提供する(住基法
30条の7第3項から6項まで)。また,都道府県知事は,統計資料の
作成など法令に規定する一定の事務を遂行する場合には,本人確認情報
を利用することができる(住基法30条の8第1項)。
(3)原告の住基ネット接続及び不接続に関する経緯等
ア(ア)住基ネットは平成14年8月5日に第1次稼働を開始し,当時国立
市長であったA(以下「A元市長」という。)は,原告の既存住基シス
テムと住基ネットを電気通信回線で接続した(以下,「住基ネットとの
接続」というような表現で,既存住基システムと住基ネットを電気通信
回線で接続することを表わす。)。
A元市長は,平成14年12月26日,原告の既存住基システムと住
基ネットを接続していた電気通信回線を切断した(以下「本件切断」と
いい,「住基ネットとの切断」というような表現で,既存住基システム
と住基ネットを接続していた電気通信回線を切断することを表す。)。
(イ)被告は,平成▲年▲月に国立市長に就任し,原告の既存住基システ
ムと住基ネットを電気通信回線で接続しない状態(以下,この状態を
「本件不接続」という。)を継続することとした。
イ(ア)東京都杉並区(以下「杉並区」という。)は,住基ネットには個人
情報の流出等の危険が存在するとして,住基ネットの安全性が確認され
るまでの間,通知を希望した者に係る本人確認情報のみを通知し,通知
を希望しない者に係る本人確認情報を通知しない方式によって住基ネッ
トへ参加することを東京都に対して申し入れたところ,東京都がこれを
拒否したため,杉並区民のうちの通知希望者に係る本人確認情報を住基
ネットを通じて送信する場合に東京都はこれを受信する義務があると主
張して,東京都に対しその受信義務の確認を求め,また,東京都は上記
受信義務を怠り,国は東京都に対して適切な指導を行わないばかりか杉
並区に対し横浜市に対する対応と異なった対応をしたため,それぞれ杉
並区に損害を与えたなどと主張して,東京都及び国に対し,国家賠償法
1条に基づく損害賠償金の支払を求める訴訟を提起したところ,東京高
等裁判所は,平成19年11月29日,下記のとおり判示するなどして,
上記請求を却下及び棄却した原判決に対する杉並区の控訴を棄却する旨
の判決(以下「平成19年東京高裁判決」という。)をし,杉並区は上
告及び上告受理申立てをしたが,最高裁判所は,平成20年7月8日,
上告を棄却し,上告審として受理しない旨の決定をした(当裁判所に顕
著な事実)。

住基法30条の5第1項及び第2項が,都道府県知事に対して本人確
認情報を送信するか否かについて,市町村長に裁量権を付与していると
は到底考えられない。・・・(略)・・・市町村長は,住民が通知を希望して
いるか否かを問わず,都道府県知事に対し,漏れなく当該住民に係る本
人確認情報を送信する義務があるといわなければならず,通知するかし
ないかにつき裁量の余地は全くないから,これを怠った市町村長の行為
は違法といわざるを得ない。そして,控訴人(注:杉並区)が求めてい
るのは,杉並区民のうちの通知希望者に係る本人確認情報のみの通知
(送信)という住基法30条の5第1項及び第2項の定める要件に適合
しない違法な通知(送信)の受信であるから,被控訴人東京都は,同条
第3項の規定に従い,送信された本人確認情報を磁気ディスクに記録す
る義務(受信義務)を負わないと解すべきである。
(イ)最高裁判所は,大阪府守口市の住民が,住基ネットにより行政機関
が住民の個人情報を同意なく収集,管理又は利用することは,憲法13
条により保障されたプライバシー権その他の人格権を違法に侵害するも
のであるなどと主張して,同市に対し,人格権に基づく妨害排除請求と
して,住民基本台帳からの住民票コードの削除を求めた事案について,
平成20年3月6日,下記のとおり判示するなどして,住基ネットによ
り行政機関が住民の本人確認情報を収集,管理又は利用する行為は,当
該住民がこれに同意していないとしても,憲法13条の保障する個人に
関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を侵害するも
のではない旨の判決(最高裁判所平成20年3月6日第一小法廷判決・
民集62巻3号665頁。以下「平成20年最高裁判決」という。)を
した(当裁判所に顕著な事実)。

住基ネットによって管理,利用等される本人確認情報は,氏名,生年
月日,性別及び住所から成る4情報に,住民票コード及び変更情報を加
えたものにすぎない。このうち4情報は,人が社会生活を営む上で一定
の範囲の他者には当然開示されることが予定されている個人識別情報で
あり,変更情報も,転入,転出等の異動事由,異動年月日及び異動前の
本人確認情報にとどまるもので,これらはいずれも,個人の内面に関わ
るような秘匿性の高い情報とはいえない。これらの情報は,住基ネット
が導入される以前から,住民票の記載事項として,住民基本台帳を保管
する各市町村において管理,利用等されるとともに,法令に基づき必要
に応じて他の行政機関等に提供され,その事務処理に利用されてきたも
のである。そして,住民票コードは,住基ネットによる本人確認情報の
管理,利用等を目的として,都道府県知事が無作為に指定した数列の中
から市町村長が一を選んで各人に割り当てたものであるから,上記目的
に利用される限りにおいては,その秘匿性の程度は本人確認情報と異な
るものではない。また,・・・(略)・・・住基ネットによる本人確認情報の
管理,利用等は,法令等の根拠に基づき,住民サービスの向上及び行政
事務の効率化という正当な行政目的の範囲内で行われているものという
ことができる。住基ネットのシステム上の欠陥等により外部から不当に
アクセスされるなどして本人確認情報が容易に漏えいする具体的な危険
はないこと,受領者による本人確認情報の目的外利用又は本人確認情報
に関する秘密の漏えい等は,懲戒処分又は刑罰をもって禁止されている
こと,住基法は,都道府県に本人確認情報の保護に関する審議会を,指
定情報処理機関に本人確認情報保護委員会を設置することとして,本人
確認情報の適切な取扱いを担保するための制度的措置を講じていること
などに照らせば,住基ネットにシステム技術上又は法制度上の不備があ
り,そのために本人確認情報が法令等の根拠に基づかずに又は正当な行
政目的の範囲を逸脱して第三者に開示又は公表される具体的な危険が生
じているということもできない。・・・(略)・・・そうすると,行政機関が
住基ネットにより住民である被上告人らの本人確認情報を管理,利用等
する行為は,個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表するも
のということはできず,当該個人がこれに同意していないとしても,憲
法13条により保障された上記の自由を侵害するものではないと解する
のが相当である。
(ウ)原告は,平成▲年▲月▲日発行の市報において,平成20年最高裁
判決の内容を報じ,同年▲月▲日発行の市報において,平成19年東京
高裁判決及びその上告審決定の内容を報じた(乙1の18及び19)。
なお,被告は,国立市長として,市報の発行前にその内容を確認して
決裁していた(弁論の全趣旨)。
ウ東京都知事は,平成▲年▲月▲日付けで,国立市長であった被告に対し,
住基法30条の5第1項に規定する事務を速やかに執行するよう,地方自
治法245条の6に基づく是正の勧告をした(甲16)。
また,東京都知事は,総務大臣から,地方自治法245条の5第2項の
規定に基づき原告に対し住基法違反を是正するため必要な措置を講ずべき
ことを求めるよう指示があったことから,平成▲年▲月▲日付けで,国立
市長であった被告に対し,住基法に規定する事務を速やかに執行するよう,
地方自治法245条の5第3項に基づく是正の要求をした(甲17)。
エ被告は,平成▲年▲月に国立市長を退任するまでの間,本件不接続を継
続した。
なお,被告が国立市長を退任した後,現在の国立市長であるBは,原告
の既存住基システムと住基ネットを電気通信回線で再接続した(弁論の全
趣旨)。
(4)原告による郵送費等の支出等
ア年金受給権者現況届の郵送費
(ア)社会保険庁(平成22年1月以降は日本年金機構。以下同じ。)は,
毎年,年金受給権者の誕生日月にその現況を確認しているところ,従前
は,年金受給権者から年金受給権者現況届(以下「現況届」という。)
の提出を受けることによりその確認をしていたが,住基ネット導入によ
り,住基ネットを利用して現況確認をすることとなったため,住基ネッ
トに接続している地方公共団体の住民である年金受給権者は,現況届を
提出する必要がなくなった。しかし,原告が住基ネットに接続していな
かったため,引き続き,原告の住民は現況届を提出する必要があった。
そこで,原告は,平成18年12月以降,住民が国立市役所又はその
出先機関に現況届を持参した場合には,これを社会保険庁に郵送するこ
ととしたが,この郵送事務は,原告が住基ネットに接続していれば不要
な事務であった。
(イ)原告が平成▲年▲月▲日から平成▲年▲月▲日までの間に上記郵送
事務のために支出した現況届郵送費(以下「本件郵送費」という。)は,
合計2万1720円である(甲1,弁論の全趣旨)。
イ住基ネットサポート委託料
原告は,本件切断の後,住基ネットに再接続する場合に備え,住民異動
データのバックアップ事務を民間業者に有償で委託した(以下,この委託
に係る住基ネットサポート委託契約を「本件委託契約」という。)。上記
バックアップ事務は,住民異動データをホストコンピュータに蓄積し,毎
月1回,国立市役所庁内電算室において,蓄積された1か月分の住民異動
データを電磁的記録媒体に記録しておくというものである。なお,原告が
住基ネットに接続していれば,日々発生する住民異動データは電気通信回
線を通じて東京都サーバに順次送信されるので,上記バックアップ事務は
不要であった。
原告が平成▲年▲月▲日から平成▲年▲月▲日までの間に上記バックア
ップ事務のために支出した住基ネットサポート委託料(以下「本件委託
料」といい,本件郵送費と併せて「本件各費用」という。)は,合計37
万6320円である(甲1,弁論の全趣旨)。
(5)本件各費用の支出に係る財務会計行為の手続等
ア本件郵送費
国立市支出負担行為手続規則(以下「支出負担行為規則」という。)7
条及び別表第1は,「運搬費」について,支出負担行為として整理する時
期を「請求のあったとき」,支出負担行為の範囲を「請求のあった額」と
規定している。
本件郵送費は,毎月請求されるものであり,毎月の請求額が30万円未
満であったため,支出負担行為規則7条及び別表第1並びに専決規程11
条9号に基づき,担当課長である当時の保険年金課長(以下,単に「保険
年金課長」という。)が支出負担行為及び支出命令(以下,これらの財務
会計行為を併せて「本件郵送費支出」という。)を専決した(弁論の全趣
旨)。
イ本件委託料
支出負担行為規則7条及び別表第1は,「委託料」について,支出負担
行為として整理する時期を「契約を締結するとき」,支出負担行為の範囲
を「契約金額」と規定している。
本件委託料は,年度当初に本件委託契約(年間の契約金額56万448
0円)を締結し,毎月の委託料(月額4万7040円)を支出するもので
あったため,支出負担行為規則7条及び別表第1並びに専決規程10条7
号に基づき,担当部長である当時の総務部長(以下,単に「総務部長」と
いう。)が支出負担行為(本件委託契約の締結)を専決し,専決規程11
条9号に基づき,担当課長である当時の市民課長(以下,単に「市民課
長」という。)が支出命令(以下,これらの財務会計行為を併せて「本件
委託料支出」といい,本件郵送費支出と併せて「本件各支出」という。)
を専決した(弁論の全趣旨)。
(6)住民訴訟の提起等
ア原告の住民5名は,原告が住基ネットに接続していないことは住基法に
違反するものであり,この不接続に伴って本件各費用を支出したことは財
務会計法規上の義務に違反する違法なものであると主張して,平成21年
12月22日,東京地方裁判所に対し,地方自治法242条の2第1項4
号に基づき,国立市長が被告に対して本件各費用相当額の損害賠償金の支
払請求をすることなどを求める住民訴訟(当庁平成○年(行ウ)第○号公
金支出差止等(住民訴訟)請求事件)を提起した。
東京地方裁判所は,平成▲年▲月▲日,原告が住基ネットに接続してい
ないことは住基法上の義務に違反する違法なものであって,その違法は重
大かつ明白であるから,これを前提としてされた本件各支出には財務会計
上の違法があるところ,国立市長であった被告は,本件各支出を阻止すべ
き指揮監督上の義務を怠るという財務会計上の違法行為を行ったものであ
ると判断し,国立市長に対し,被告に対して本件各費用の合計39万80
40円及びこれに対する平成21年7月1日から支払済みまで年5分の割
合による金員を原告に支払うよう請求することを命じる判決(以下「本件
住民訴訟判決」という。)をした。なお,本件住民訴訟判決においては,
平成20年9月28日以前に支出された現況届郵送費及び住基ネットサポ
ート委託料に係る損害賠償の請求を求める部分は,適法な監査請求を経て
いない不適法なものであるとして訴えが却下されている(甲1)。
イ国立市長は,平成23年2月16日,本件住民訴訟判決に対して控訴
(東京高等裁判所平成○年(行コ)第○号公金支出差止等(住民訴訟)請
求控訴事件)をし,被告は,同年4月28日,同控訴事件について補助参
加の申出をした。
被告の国立市長としての任期は平成▲年▲月に終了し,現在の国立市長
であるBが同年5月24日に上記控訴を取り下げたことにより,本件住民
訴訟判決は確定した。
なお,上記控訴の取下げは被告の意思に反して行われたものであり,本
件住民訴訟判決のいわゆる参加的効力(民事訴訟法46条,地方自治法2
42条の3第4項)は,被告に対して及ばない(甲4,弁論の全趣旨)。
ウ国立市長は,平成23年6月15日に到達した書面により,被告に対し,
地方自治法242条の3第1項に基づき,同年7月23日までに,39万
8040円及びこれに対する平成21年7月1日から支払済みまで年5分
の割合による金員を支払うよう請求したが,被告はこの支払を拒否した。
エ原告は,平成23年12月21日,地方自治法242条の3第2項に基
づき,本件訴訟を提起した。
3争点
(1)被告による本件不接続の継続が住基法に違反する違法なものか否か。
(2)被告が本件各支出について損害賠償責任を負うか否か。
4争点に関する当事者の主張
(1)争点(1)(被告による本件不接続の継続が住基法に違反する違法なものか
否か。)について
(原告の主張)
ア市町村長は,都道府県知事に対して住民票の記載等に係る本人確認情報
を電気通信回線を通じて送信するため住基ネットに接続する住基法上の義
務を負うものであり,本件不接続の継続は,この住基法上の義務に違反す
るもので違法である。
そして,本件不接続の継続は,住基法の目的達成を妨害するものであり,
また,東京都知事から是正の要求まで受けているものであるから,その違
法は重大かつ明白である。
イ住基ネットを含む住民基本台帳事務は,市町村の自治事務(地方自治法
2条8項)であるところ,自治事務においては,地方公共団体の自主的判
断が尊重されるべきとされている。しかし,統一性,適法性等の確保のた
めに,国等が関与を行う必要性を否定することができないため,地方自治
法は,自治事務に対する「是正の要求」(同法245条の5)及び「是正
の勧告」(同法245条の6)を定めている。
そして,一部の市町村が住基ネットに参加しないと,本人確認情報を国
の機関等,都道府県及び市町村で共有することにより行政コストの削減を
図るという住基ネットの目的は達せられないことになり,その影響は,当
該地方公共団体のみならず全国の地方公共団体に及ぶことになるため,本
件不接続については,東京都知事による是正の勧告(地方自治法245条
の6)及び総務大臣による是正の要求の指示(同法245条の5第2項)
までされたものである。それにもかかわらず,国立市長であった被告は本
件不接続を継続したものであり,これは地方自治法245条の5第5項に
も違反するものであって,地方公共団体の自主的判断の許容限度を超える
違法なものというべきである。
なお,地方公共団体の中には,住基ネットとの切断に関する条例を制定
しているものも存在するが,これらは,いずれも住基ネットへの接続を前
提として,例えば,情報管理の遺漏等により住民の基本的人権が侵害され
る危険性が生じたような場合に住基ネットの運用を停止することなどを規
定したものであって,住基ネット不接続自体を定めたものではない。
ウしたがって,被告による本件不接続の継続は,住基法に違反する違法な
ものであり,その違法は重大かつ明白である。
(被告の主張)
ア(ア)住基ネットを含む住民基本台帳事務は,市町村の自治事務(地方自
治法2条8項)であり,同事務に関する責任は,市町村長が負うべきも
のとされている(住基法1条,3条1項及び2項,5条,6条等)。住
民票(住基法7条)には,選挙人名簿に関する記載(同条9号)のほか,
国民健康保険の被保険者の資格(同条10号),後期高齢者医療の被保
険者の資格(同条10号の2),介護保険の被保険者の資格(同条10
号の3),国民年金の被保険者の資格(同条11号),児童手当の受給
資格(同条11号の2)など,選挙権の行使や,住民の日々の生活にお
ける行政サービスに関する基本情報が記録されており,このように住民
の生活に密着した情報であるために,市町村長が責任を持って管理すべ
きものとされている。
そうすると,住民基本台帳事務の適正な運用(住基法3条1項)のた
めに,市町村長が住基法の条項の解釈について独自の判断をすることは,
最大限尊重されるべきである(地方自治法2条12項前段)。
(イ)現在,多くの地方公共団体(東京都新宿区,同中野区,同板橋区,
同杉並区等)において,住民基本台帳事務が自治事務であることを踏ま
えて,住民の個人情報の安全確保の観点から,住基ネットとの切断に関
する独自の条例を制定している。そして,原告においても,被告が退任
した後に,住基ネットとの切断に関する条例(「国立市住民基本台帳ネ
ットワークシステムに係る個人情報の保護に関する条例」)を制定して
いる。
これらの条例は,住基法36条の2を根拠として,市町村長に,住基
ネットの安全性について,国,他の地方公共団体,指定情報処理機関に
対する報告要求・調査権限を与え,報告・調査の結果,必要と認めると
きに,本人確認情報の送信停止や住基ネットとの切断をする権限を与え
ているところ,国は,これらの条例を違法とはしていない。
このような権限は,市町村長が住民の個人情報等の保護に関する責務
を有することや,各市町村が直面する危険の状況は千差万別であって,
各市町村長が,各市町村の事情に応じて住基ネットとの切断という判断
をせざるを得ないことから,当然に市町村長に対して与えられなければ
ならないものである。実際に,例えば,平成15年8月にブラスターウ
ィルス感染問題が発生した際,東京都世田谷区,長野県長野市及び同県
松本市等では,独自の判断で住基ネットと一定期間切断したが,国はこ
れらの対応を違法としていない。
(ウ)本件切断は,被告の前任のA元市長が総務省等に対する質問調査や
住基ネットのセキュリティやプライバシーの保護状況等の調査結果等を
踏まえて行ったものであるところ,被告は,住基ネットに再接続するに
足りる状況に至っていないという判断の下に,本件不接続を継続したも
のであって,その判断は十分尊重されなければならない。
イ以下のような情報セキュリティ等の実態に鑑みれば,被告が国立市長に
在任していた当時,住基ネットの制度や運用は,積極的に本件不接続の方
針を変更しなければならないほど明白に安全であると評価し得る水準には
達していなかった。そのため,被告は,国立市民の個人情報や生命・身体
等を保護する責務を全うするために,住基法3条1項及び36条の2に基
づき,住基ネット再接続を留保するという判断をしたものであり,その判
断は十分に尊重されるべきであるから,被告が本件不接続を継続したこと
が違法であるとはいえないし,少なくともその判断に重大かつ明白な違法
があるとはいえない。
(ア)住基ネットには構造的欠陥があること
aセキュリティレベルの安全性は時々刻々と変化するものであるから,
平成20年最高裁判決の原審段階の事実関係を基にするのではなく,
現在の最新の知見と事実関係を基に住基ネットのセキュリティレベル
を判断しなければ,プライバシー侵害の危険性の実態を判断すること
はできない。そして,情報セキュリティについては,事故が生じるこ
とを前提に対策を考えなければならず(「事故前提社会」の考え方),
侵入されたり漏えいしたりすることを前提として,より安全なシステ
ム,すなわち許容することができる程度にリスクを抑えられるシステ
ムに修正し続けていかなければならない。
b上記のように,十分な事前対策を行ったとしても事故が起こり得る
場合があることを前提に,より安全なシステムとなっているかという
観点からみた場合,住基ネットには,次のような構造的欠陥がある。
(a)第1に,住基ネットは,行政事務における個人識別・本人確認
のためのシステムであり,国の全ての行政事務及び地方公共団体が
条例で定めた行政事務において住民票コード(住基法7条13号)
を使用しているため,一旦どこかの事務分野で住民票コードが漏え
いした場合,他の行政分野においても,その番号が誰の住民票コー
ドであるかが明らかになってしまう。
その対策として,住民票コードを変更することができることにな
っているが,本人の申請によることになっているため(住基法30
条の3),住民票コードが大量に漏えいしたとしても,各個人が住
民票コード変更申請をしない限り,漏えいした住民票コードがその
まま使用されることになる。実際に,平成19年5月に人口約2万
5000人の愛媛県α町において,ほぼ全町民の住民票コードを含
む住民票情報等の漏えいが発覚したが,その後住民票コードの変更
を求めた町民は同年10月末日時点で4097名だけであった。
このように,住基ネットにおける住民票コードを用いた共通番号
システムは,情報セキュリティの観点からみて,構造的に脆弱なシ
ステムといわざるを得ない。
(b)第2に,住基ネットは,全国の地方公共団体や国等の機関がネ
ットワークで強制的につなげられているシステムであるから,原告
の権限が及ばない多数の機関が存在し,その当然の帰結として,ネ
ットワークを構成する全機関が同一レベルの個人情報保護条例やセ
キュリティ対策水準を維持することはできないという構造的欠陥が
存在する。
コンピュータネットワークシステムのセキュリティレベルは,そ
れを構成する端末のうち,セキュリティレベルが一番低い端末のレ
ベルに下がってしまうという特質を有する。そのため,原告が国立
市民のプライバシーを守るために,自らの義務と責任において情報
セキュリティに万全を期したとしても,セキュリティレベルの低い
機関があれば,原告は,国立市民の住基ネット情報をその低い水準
のネットワーク上にさらすというリスクを冒すことになる。しかも,
原告は,自らの権限が及ばない機関のセキュリティ水準を調査する
ことも対策を指示することもできず,その結果について直接の責任
をとることもできない。
そうすると,「事故前提社会」の考え方に基づき,ストーカーや
配偶者暴力(以下「DV」という。)の対策を先進的に行ってきた
原告及びその市長であった被告とすれば,そのような対策及び運用
がネットワークを構成する全機関に同一レベルで整ったことを確認
することが住基ネット再接続を行う上で必要であると考えることは
合理的であった。
(イ)ストーカーやDV等の被害者対策が不十分であること
原告は,平成18年11月1日に国立市住民基本台帳の閲覧等に関す
る条例及び同条例施行規則を改正し,ストーカー及びDVの被害者以外
にも,特に生命又は身体,財産その他の権利利益を著しく侵害されるお
それがある者にも住民票の閲覧等の拒否の申出を認めるとともに,申出
者の親族等に係る住民票の閲覧等の拒否の申出をすることができること
とし,住基法よりも保護の範囲を広げている。
原告は,平成20年6月17日に総務省に対して,上記条例等に基づ
いて閲覧等の拒否を認めた国立市民について,住基ネット上の情報も削
除されることが保障されるのか等を質問したが,具体的な住基ネット上
の支援策は示されなかった。
このように,住基ネットに接続する全機関において,原告と同等の支
援策・保護策が整備されていない状況では,国立市長であった被告とし
ては,国立市民の生命・身体を保護するために,住基ネット再接続を留
保することが必要であった。
(ウ)国及び地方公共団体の情報セキュリティが不十分であること
総務省が平成21年10月29日に公表した「地方自治情報管理概
要」(同年4月1日時点での地方公共団体における行政情報化の推進状
況調査及び個人情報の保護に関する条例の制定状況等を取りまとめたも
の)や,内閣官房情報セキュリティセンターが同年2月3日に公表した
「第2次情報セキュリティ基本計画」によれば,外部委託業者に対する
リスクコントロールが不十分であることなど,地方公共団体のセキュリ
ティの現状はいまだ十全とはいい難い状況にあり,原告の市長であった
被告としては,全国の地方公共団体が接続する住基ネットへの再接続に
は慎重を期せざるを得なかった。
また,平成20年4月22日に内閣官房情報セキュリティセンターが
作成した「政府機関の対策実施状況報告(2007年度)の概要」によ
れば,国の機関においてもいまだ情報セキュリティが十分ではなかった。
(エ)プライバシー保護のための独立の第三者機関が存在しないこと
日本にはプライバシー保護のための独立の第三者機関が存在せず,国
際的な安全基準を満たしていないことも,住基ネットに再接続する上で
重大な問題であった。
(2)争点(2)(被告が本件各支出について損害賠償責任を負うか否か。)につ
いて
(原告の主張)
ア専決権者として保険年金課長,総務部長及び市民課長(以下,併せて
「本件各専決権者」という。)が行った本件各支出は,財務会計法規上の
義務に違反する違法なものであり,被告は,本件各専決権者に対する指揮
監督義務違反に基づく損害賠償責任を負う。
(ア)地方自治法138条の2は,地方公共団体の長の誠実執行義務を規
定しているところ,地方公共団体の長から財務会計行為の専決を委ねら
れた補助職員もまた,その範囲において長と同じく上記の誠実執行義務
を負うものと解されるから,原因行為に財務会計的観点から看過し難い
違法行為があった場合には,当該財務会計行為を行ってはならない義務
を負っている。
そして,被告が本件不接続を継続したことは,住基法に違反するもの
で,その違法は重大かつ明白であり財務会計的観点から看過し難いもの
であったから,本件各専決権者は本件各支出を行ってはならない義務を
負っていた。それにもかかわらず,本件各専決権者は本件各支出を行っ
たものであるから,本件各支出は財務会計法規上の義務に違反する違法
なものであったというべきである。
(イ)被告は,平成▲年▲月に国立市長に就任する以前は,平成11年5
月から平成19年4月まで国立市議会議員を務めていたが,市議会議員
として住基ネット接続に強く反対し,国立市議会でも,住基ネットや住
基ネットサポート委託の内容について質問や発言をしていた。また,被
告は,平成19年4月に国立市長選挙に立候補するに当たり,本件不接
続の継続を表明し,国立市長に就任後も,国立市議会において本件不接
続を継続する旨答弁していた。このように,被告にとっては,住基ネッ
トは市議会議員時代から国立市長退任に至るまで,一貫して政策上の重
要な関心事であり,本件各費用の支出についても十分関心を持っていた。
また,原告による現況届の郵送については,原告の市報で継続的に広報
されており,国立市長であった被告はそのことを十分に知っていた。
(ウ)そして,被告は,国立市長として本件各支出について本来的に権限
を有する者であったから,本件各専決権者が財務会計上違法である本件
各支出をすることを阻止すべき指揮監督上の義務を有していたにもかか
わらず,故意にこれを阻止しなかったものである。このような被告の行
為は財務会計上の違法行為に該当するものというべきであり,被告は,
上記違法行為により原告が被った本件各費用相当額の損害を賠償すべき
義務を負う。
イ被告は,専決をさせた者として,本件各支出がされたことについて直接
の損害賠償責任を負う。
(ア)本件各支出は本件各専決権者による専決により行われたものである
ところ,専決は,委任と異なり,専決を委ねた者が本来的権限を失うも
のではなく,当該権限を自ら行使することもできるものである。このよ
うな専決の性質からすれば,専決の場合,ある財務会計行為は,専決権
者(補助職員)による財務会計行為であるとともに,専決をさせた者
(長)による財務会計行為であるといえる。すなわち,本件においては,
本件各支出は,本件各専決権者による財務会計行為であるとともに,専
決をさせた者である被告による財務会計行為でもあるといえる。
(イ)そして,本件各支出は被告による本件不接続の継続という政策決定
から発生したものであり,上記のとおり,被告は本件各支出を現実に十
分把握していた。そうすると,本件各支出について本来的権限を有する
被告としては,違法な政策決定である本件不接続の継続を撤回し,本件
不接続の継続から発生する本件各支出を行ってはならないという行為規
範を与えられていたところ,この行為規範に従って本件不接続の継続を
撤回することは容易であった。それにもかかわらず,被告は,本件不接
続の継続を撤回せず,これにより本件各支出を発生させたものであるか
ら,明白な行為規範違反があり,本件各支出は,被告による違法な財務
会計行為であるということができる。
(ウ)したがって,仮に本件各専決権者が財務会計上の違法行為を行った
ものではないとしても,被告は,上記(ア)の指揮監督義務違反による損
害賠償責任とは別に,本件各支出について直接の損害賠償責任を負うも
のというべきである。
ウ以上によれば,被告は,原告に対し,不法行為に基づき,本件各費用相
当額の損害賠償金39万8040円及びこれに対する不法行為後の日であ
る平成21年7月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅
延損害金の支払義務を負うというべきである。
(被告の主張)
ア本件不接続の継続と本件各支出には因果関係がなく,本件各支出がされ
たことについて被告が責任を負うことはない。
(ア)本件においては,被告が本件不接続を継続するという判断をしたと
しても,これを前提として何らかの財務会計行為を行わざるを得なくな
るわけではない。地方公共団体が住基ネットに接続していない場合に,
現況届を当該地方公共団体の負担で社会保険庁に送付しなければならな
い義務はないし,住民異動データのバックアップ事務を当該地方公共団
体の負担で行う義務もない。本件不接続という状況の下で,従前どおり
住民自身が現況届を社会保険庁に送付することとしてもよかったし,バ
ックアップ事務をしなくともよかったのである。
すなわち,本件各費用は,本件不接続を継続したために支出をしなけ
ればならなかったものではなく,原告の関係各課において,住民サービ
スを考慮したり,再接続に備えた準備をした方がよいと考えたりした結
果,支出がされたものである。
(イ)本件郵送費支出については,従前どおり住民自身が現況届を社会保
険庁に送付することとしてもよかったが,住民の利便性を図る必要があ
る一方で,各受給権者について年1回だけの郵送費であって,その費用
は住基ネットに接続した場合と比べて低額であり,職員の事務負担も従
来の業務時間内で十分に対処することができるものであったため,原告
が現況届を郵送することが財務会計行為として合理的であった。住民の
負担で現況届を送付してもらうという方法も考えられたが,住基ネット
に接続している他の地方公共団体の住民とは異なる負担を課すことにな
るし,厚生労働省から年金受給権者のデータの提供を受けて原告の住民
基本台帳データと照合して届け出る方法については,住民基本台帳デー
タと年金の届出住所が異なる場合に照合に時間がかかるという難点があ
った。そこで,保険年金課長は,現況届の郵送費を原告が負担するとい
う方法が合理的であると判断し,本件郵送費支出を行ったものである。
このように,本件郵送費支出は,住基ネットに接続している他の地方
公共団体の住民と比較して,原告の住民の負担が増えないようにとの配
慮に基づく支出であり,本件不接続とは別個の判断に基づく財務会計行
為である。
(ウ)本件委託料支出については,再接続に備えた準備をすることなく,
再接続する段階になって初めて委託契約を締結して委託料を支出する方
法もあったが,この方法では,再接続するまでの間の住民異動データの
連続性を欠くことになり,その連続性を回復するために莫大な費用を要
するため,最小限度の準備作業のために本件委託契約を締結することが
財務会計行為として合理的であった。バックアップ事務を民間業者に委
託せずに原告の職員が行う方法も考えられたが,専門性が不十分であっ
た。そこで,総務部長及び市民課長は,バックアップ事務を民間業者に
委託するという方法が合理的であると判断し,本件委託料支出を行った
ものである。
このように,本件委託料支出は,住基ネット再接続に備えた準備をす
るという判断に基づく支出であり,本件不接続とは別個の判断に基づく
財務会計行為である。
(エ)以上のとおり,本件郵送費支出は保険年金課長による郵送費負担に
ついての判断に基づきされたものであり,また,本件委託料支出は総務
部長及び市民課長によるバックアップ事務委託についての判断に基づき
されたものであるから,被告による本件不接続の継続によって本件各支
出がされたものではない。
イ本件各専決権者による本件各支出は,財務会計法規上の義務に違反する
ものではない。
(ア)本件郵送費は保険年金課長による郵送費負担の判断に基づき支出さ
れたものであり,本件委託料は,総務部長及び市民課長によるバックア
ップ事務委託の判断に基づき支出されたものであるところ,これらの判
断には何ら違法性がないから,本件各専決権者が行った本件各支出につ
いて,財務会計法規上の義務違反は存在しないことは明らかである。
(イ)また,本件各専決権者は,本件不接続を撤回する権限を有していな
いから,その職務上,本件不接続を撤回する義務を負うことはなく,し
かも,国立市長の下位に位置付けられる補助職員にすぎないから,本件
不接続の継続を撤回する権限を有する国立市長に対し,これを撤回する
よう指導,助言をする義務を負うこともない。そうすると,本件各専決
権者としては,本件不接続を前提として日常業務を行うしかなく,その
ような状況で本件各支出をしたものであるから,その行為に財務会計法
規上の義務違反がないことは明らかである。
ウ被告は,本件各支出がされたことについて損害賠償責任を負うものでは
ない。
(ア)被告の指揮監督義務違反について
本件各支出が適法である以上,被告がこれを阻止すべき指揮監督上の
義務を負うことはないし,被告に故意又は過失も認められない。
また,本件各支出は,本件各専決権者がした郵送費負担及びバックア
ップ事務委託の判断に基づきされているものであり,国立市長であった
被告としては,本件不接続を継続してもそれに伴う支出が必要になると
は考えないものである。それにもかかわらず,本件不接続の継続という
政策決定をした以上,被告が本件各支出を阻止すべき指揮監督上の義務
を負うというのは,被告が把握することができない支出を阻止すべき義
務を負わせる点で,無理を強いるものである。
(イ)専決をさせた者としての損害賠償責任について
専決をさせた地方公共団体の長は,補助職員が財務会計上の違法行為
をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,故意又は過失によ
り上記違法行為をすることを阻止しなかったときにのみ責任を負うとい
うべきである。そして,住民訴訟は,違法な財務会計行為によって地方
公共団体が被った損害を回復する手段であるから,補助職員による財務
会計行為が違法でなければ,地方公共団体の長に責任が発生するという
ことはあり得ない。
本件においては,本件各支出を現実に行ったのは,飽くまでも本件各
専決権者であり,被告は本件各支出の決裁手続に全く関与していないの
であるから,本件各支出を被告による財務会計行為ととらえる余地はな
く,被告が指揮監督義務違反とは別個の直接の責任を負うことはない。
第3当裁判所の判断
1争点(1)(被告による本件不接続の継続が住基法に違反する違法なものか否
か。)について
(1)原告は,本件不接続の継続は住基法に違反する違法なものであって,そ
の違法は重大かつ明白であり財務会計的観点から看過し難いものであったか
ら,本件各支出は財務会計法規上の義務に違反する違法なものであったと主
張する。
そこで,本件各支出が財務会計法規上の義務に違反する違法なものである
か否かを判断する前提として,被告による本件不接続の継続が違法なものと
いえるか否かについて検討することとする。
(2)そもそも住基法30条の5第1項が,「市町村長は,住民票の記載,消
除又は第7条第1号から第3号まで,第7号及び第13号に掲げる事項
(・・・(略)・・・)の全部若しくは一部についての記載の修正を行った場合に
は,当該住民票の記載等に係る本人確認情報(・・・(略)・・・)を都道府県知
事に通知するものとする」と規定し,同条2項が,「前項の規定による通知
は,総務省令で定めるところにより,市町村長の使用に係る電子計算機から
電気通信回線を通じて都道府県知事の使用に係る電子計算機に送信すること
によって行うものとする」と規定していることからすれば,住基法は,市町
村長が住民票の記載,消除等を行った場合に,都道府県知事に対し当該住民
票の記載等に係る本人確認情報を送信しないという事態を全く想定していな
いものというべきである。
また,住基法30条の7第3項から6項まで及び同法30条の10第1項
は,市町村長から都道府県知事に対し,住民に係る本人確認情報の通知があ
ることを前提として,都道府県知事又は指定情報処理機関は,国の機関等か
らその事務に関し求めがあったときは,保存期間に係る本人確認情報を提供
することを規定しているから,仮に市町村長が住民票の記載,消除等を行っ
た場合であっても,都道府県知事に対し当該住民票の記載等に係る本人確認
情報を送信しなくてもよいということになれば,一部の住民について正確な
本人確認情報が保存されないという事態が発生し,国の機関等からその事務
に関し求めがあったときに正確な本人確認情報を提供することができなくな
ることは明らかである。
さらに,都道府県知事は,市町村長から通知された本人確認情報を保存す
ること(住基法30条の5第3項),本人確認情報の適切な管理のために必
要な措置を講じること(同法30条の29第1項),区域内の市町村の住民
基本台帳に脱漏若しくは誤載があり,又は住民票に誤記若しくは記載漏れが
あることを知ったときは当該市町村長に通報すること(同法12条の5)な
どの責務を負っているから,都道府県知事が,本人確認情報の正確性を担保
し,その保存,提供等の事務を適切に実施するためには,住基法30条の5
第1項に基づき,区域内の全ての市町村長から,全ての住民に係る本人確認
情報の通知を受けることが必要不可欠である。
そうすると,住基ネットについて一部の市町村の不参加があると,国の機
関等を始めとする本人確認情報の利用者において,従来のシステムや事務処
理を残さざるを得ないことになり,また,本人確認情報の提供又は利用が必
要な業務が行われる都度,不参加の市町村の住民については,ネットワーク
以外の手段により当該事務に必要な氏名,住所等の情報を収集するか提出さ
せることになるから,そのような場合には,本人確認情報を国の機関等,都
道府県及び市町村で共有することにより住民サービスの向上と行政事務の効
率化を図るという住基ネットの目的は達せられないことになる。また,住基
ネットは,市町村間をネットワーク化し,住民基本台帳事務の広域化及び効
率化を図ることを重要な行政目的としているところ,市町村においてネット
ワークによらない住民基本台帳事務の処理方法を残すことになると,住基法
が目的とする市町村における住民基本台帳事務の効率化は著しく阻害される
ことにもなる。
したがって,市町村長は,住基法に基づき,都道府県知事に対して住民票
の記載等に係る本人確認情報を電気通信回線を通じて送信するため,住基ネ
ットに接続すべき義務を負っているものと解するべきであるから,国立市長
であった被告が本件不接続を継続して東京都知事に対して住民票の記載等に
係る本人確認情報を電気通信回線を通じて送信しなかったことは,住基法に
違反する違法なものであったというべきである。
(3)これに対し,被告は,住基ネットを含む住民基本台帳事務は市町村の自
治事務(地方自治法2条8項)であり,その適正な運用のために市町村長が
住基法の条項の解釈について独自の判断をすることは最大限尊重されるべき
であって,本件不接続を継続した被告の判断は違法ではない旨主張する。
確かに,憲法が地方公共団体の住民自治及び団体自治を保障している(憲
法92条から94条まで)ことに鑑みれば,地方自治法に規定する自治事務
については,法定受託事務と比較して特別な配慮をすべきものである(地方
自治法2条11項から13項まで参照)。
しかしながら,地方公共団体は国の法令に違反してその事務を処理しては
ならないことは当然のことであって(地方自治法2条16項参照),そのこ
とは自治事務についても同様である。そして,上記(2)で述べたとおり,住
基法上,市町村長が都道府県知事に対して住民票の記載等に係る本人確認情
報を電気通信回線を通じて送信するために住基ネットに接続すべき義務を負
っていることは,同法30条の5等の規定に照らして明らかである。また,
住民基本台帳に関する事務の広域化による住民サービスの向上と行政事務の
効率化を図るという住基ネット導入の目的は正当かつ合理的なものであって,
住基ネットは憲法13条の保障する個人に関する情報をみだりに第三者に開
示又は公表されない自由を侵害するものでもない(平成20年最高裁判決参
照)から,住基法が,市町村長に上記のような義務を課しており,住基ネッ
トに接続するか否かの判断権を市町村長に付与していないことが,憲法が保
障する地方公共団体の団体自治(憲法92条,94条)を侵害する違憲無効
なものとはいえない。
なお,被告は,東京都新宿区,同中野区,同板橋区及び同杉並区等の地方
公共団体において,住基ネットとの切断に関する独自の条例を制定している
ことを指摘する。しかしながら,これらの条例は,いずれも住基ネットに接
続することを前提に,送信情報の管理の安全性が侵害される差し迫った危険
性があるときなどに住基ネットの運用停止等をすることができる旨を定めた
ものであるから,これらの条例が住基法に反するものではないからといって,
住基ネットにおよそ接続しないという本件不接続の継続が住基法に反しない
とはいえないことは明らかである。
また,そもそも,当時国立市長であった被告において,住基ネットに接続
すれば国立市民の個人情報や生命・身体等を保護することができないため本
件不接続を継続するとの判断をしたのであれば,東京都知事からされた平成
▲年▲月▲日付けでされた是正の要求について,国地方係争処理委員会に対
する審査の申出(地方自治法250条の13第1項)をし,その手続におい
て本件不接続の継続が違法ではない旨主張して国の関与の取消しを求め,最
終的には裁判所の判断を求める(同法251条の5第1項)ことが,地方公
共団体の長としてあるべき事務処理であるというべきところ,被告は,法が
定めた手続を履践することなく独自の判断に固執したものであって,手続的
な視点からみても正当性がないことは明らかである。
そうすると,住基法に基づく住民基本台帳事務が市町村の自治事務である
からといって,被告が本件不接続を継続したことが同法に違反する違法なも
のであることには何ら変わりがないというべきであって,被告の上記主張は
採用することができない。
(4)また,被告は,「事故前提社会」の観点からは住基ネットに構造的な欠
陥があること,住基ネットにおけるストーカーやDV等の被害者対策が不十
分であること,国及び地方公共団体の情報セキュリティが不十分であること,
プライバシー保護のための独立の第三者機関が存在しないことからすれば,
住基ネットの制度や運用は安全とはいえなかったので,国立市民の個人情報
や生命・身体等を保護するために,住基法3条1項及び36条の2に基づき,
住基ネット再接続を留保するという判断をしたものであり,その判断は違法
ではない旨主張する。
しかしながら,住基ネットにシステム技術上又は法制度上の不備があり,
そのために本人確認情報が法令等の根拠に基づかずに又は正当な行政目的の
範囲を逸脱して第三者に開示又は公表される具体的な危険が生じるとはいえ
ないことは,平成20年最高裁判決が判示しているとおりであり,被告が
種々主張する点を考慮しても,原告が住基ネットに接続することにより,国
立市民の個人情報や生命・身体等に対する具体的な危険が生じるおそれがあ
ったとは認められない。
そして,住基法3条1項は「市町村長は,常に,住民基本台帳を整備し,
住民に関する正確な記録が行われるように努めるとともに,住民に関する記
録の管理が適正に行われるように必要な措置を講ずるよう努めなければなら
ない」と規定し,同法36条の2は「市町村長は,住民基本台帳又は戸籍の
附票に関する事務の処理に当たっては,住民票又は戸籍の附票に記載されて
いる事項の漏えい,滅失及びき損の防止その他の住民票又は戸籍の附票に記
載されている事項の適切な管理のために必要な措置を講じなければならな
い」と規定しているにとどまる一方,同法30条の5第1項及び第2項は,
市町村長が住民票の記載等を行った場合に都道府県知事に対して当該住民票
の記載等に係る本人確認情報を電気通信回線を通じて送信することを明示的
に規定していることからすれば,同法3条1項及び36条の2が,市町村長
が住基ネットを利用した本人確認情報の送信をしないことを許容するものと
は到底解されない。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
(5)以上検討したところによれば,被告が本件不接続を継続して東京都知事
に対して住民票の記載等に係る本人確認情報を電気通信回線を通じて送信し
なかったことは,住基法上の義務に違反する違法なものであったというべき
である。
2争点(2)(被告が本件各支出について損害賠償責任を負うか否か。)につい

(1)そもそも,地方自治法242条の2第1項4号所定の当該職員に損害賠
償の請求をすることを当該普通地方公共団体の長に対して求める訴訟は,財
務会計上の行為を行う権限を有する当該職員に対し,職務上の義務に違反す
る財務会計上の行為による当該職員の個人としての損害賠償義務の履行を求
めるものにほかならないから,当該職員の財務会計上の行為をとらえて上記
規定に基づく損害賠償責任を問うことができるのは,たとえこれに先行する
原因行為に違法事由が存する場合であっても,同原因行為を前提としてされ
た当該職員の行為自体が財務会計法規上の義務に違反する違法なものである
ときに限られると解するのが相当である(最高裁判所平成4年12月15日
第三小法廷判決・民集46巻9号2753頁参照)。なお,本件訴訟は,地
方自治法242条の3第2項に基づくいわゆる第2段目の訴訟であるが,上
記で述べたことは当然に本件訴訟にも該当するものと解される。
アそこで,上記の見地から本件各支出が財務会計法規上の義務に違反する
違法なものであったといえるか否かについて検討する。
普通地方公共団体の長は,当該普通地方公共団体に対して,その事務を
誠実に執行すべき職務上の義務を負うところ(地方自治法138条の2),
長が財務会計上の行為をするに当たっては,この誠実執行義務もまた,財
務会計法規上の義務の一内容を成すものと解される。そして,国立市長で
あった被告は,予算執行権限(地方自治法149条2号,220条1項)
を有する普通地方公共団体の長として,本件各支出について本来的な権限
を有していたのであるから,上記誠実執行義務に基づき,本件不接続を継
続するという自らの違法な判断を是正・撤回して住基ネットに接続するこ
とによって,本件各支出を阻止すべき行為規範を課されていたものという
べきである。
ところで,本件において,国立市長であった被告は,本件各支出につい
て本件各専決権者に専決させたものであり,保険年金課長,市民部長及び
総務課長の職にあった本件各専決権者は,そもそも住基ネットに接続すべ
きか否かを判断する権限や本件不接続の継続という被告の判断を是正する
権限を有していなかったことは当事者間に争いがないところ,このように
財務会計行為を行った執行機関又は職員が原因行為を是正する権限を有し
ない場合には,その原因行為が著しく合理性を欠き,そのために予算執行
の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵があるときでない限り,これを尊
重し,その内容に応じた財務会計上の措置を執る義務があるというべきで
ある(上記最高裁判所平成4年判決,最高裁判所平成15年1月17日第
二小法廷判決・民集57巻1号1頁,最高裁判所平成17年3月10日第
一小法廷判決・裁判集民事216号357頁参照)。
しかしながら,本件においては,上記1(2)で述べたとおり,東京都知
事に対して住民票の記載等に係る本人確認情報を電気通信回線を通じて送
信するため,国立市長である被告が住基ネットに接続すべき義務を負って
いることは住基法上明らかであっただけでなく,被告による本件不接続の
継続は,住民の利便を増進するとともに,国及び地方公共団体の行政の合
理化に資することを目的とする住基法に明らかに違反する(同法1条参
照)ものであったところ,前記争いのない事実等(3)イ及びウのとおり,
本件各支出がされた平成▲年▲月▲日以降の時点においては,既に平成2
0年最高裁判決及び平成19年東京高裁判決が出され,その内容が原告の
市報に掲載されていただけでなく,平成▲年▲月▲日付けで東京都知事か
ら地方自治法245条の6に基づく是正の勧告まで受けていたのであるか
ら,被告による本件不接続の継続の判断が著しく合理性を欠くものであっ
て,予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵があることは,本件
各専決権者にも明らかであったものと認められる。
そして,国立市長であった被告から本件各支出の専決を任された本件各
専決権者は,本件各支出を専決するに当たって,被告と同様に誠実執行義
務(地方自治法138条の2)を負っていたのであるから,被告による本
件不接続の継続の判断が著しく合理性を欠くものであって,予算執行の適
正確保の見地から看過し得ない瑕疵があったにもかかわらず,その是正を
働きかける等の努力をしたり,本件各支出をしないという判断をしたりす
ることなく,漫然と本件各支出をしたことは,財務会計法規上の義務に違
反する違法なものであったというべきである。
イしたがって,本件各専決権者がした本件各支出は,財務会計法規上の義
務に違反する違法なものであったというべきである。
(2)次に,違法な本件各支出がされたことについて,本件各専決権者に本件
各支出を専決させた被告が損害賠償責任を負うか否かについて検討する。
ア一般に,普通地方公共団体の長の権限に属する財務会計行為を補助職員
が専決により処理した場合は,長は,上記補助職員が財務会計上の違法行
為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,故意又は過失によ
り上記補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止しなかったとき
に限り,自らも財務会計上の違法行為を行ったものとして,当該違法行為
により当該普通地方公共団体が被った損害について損害賠償責任を負うも
のと解するのが相当である(最高裁判所平成3年12月20日第二小法廷
判決・民集45巻9号1455頁,最高裁判所平成9年4月2日大法廷判
決・民集51巻4号1673頁参照)。
イそこで,被告に上記のような指揮監督上の義務違反があったか否かにつ
いて検討するに,前記争いのない事実等(3)イ(ウ)及び証拠(甲11,1
3,14,乙1の17)によれば,本件各支出がされた平成▲年▲月より
前に発行された原告の市報においては,住民が国立市役所又はその出先機
関に現況届を持参すればこれを原告が社会保険庁に送付することが繰り返
し広報されており,国立市長であった被告は上記各市報の発行前にその内
容を確認して決裁していたこと,平成▲年▲月開催の国立市議会の定例会
において,国立市議会議員から,本件不接続を継続している状態での住基
ネットサポート料の支出等について質問がされ,国立市長であった被告が
住民異動データのバックアップ事務を行っている旨答弁するとともに,市
民部長が具体的な金額等について答弁していることがそれぞれ認められる。
これらの事実によれば,被告は,本件不接続を継続することによって,本
件各費用の支出が必要となり,本件各専決権者が本件各支出を行うことを
知っていた,あるいは少なくとも容易に知り得たものと認められる。
また,上記(1)アで述べたとおり,東京都知事に対して住民票の記載等
に係る本人確認情報を電気通信回線を通じて送信するため,国立市長であ
る被告が住基ネットに接続すべき義務を負っていることは住基法上明らか
であっただけでなく,被告による本件不接続の継続は,住基法に明らかに
違反し,同法の目的達成を妨害するものであったところ,平成20年最高
裁判決及び平成19年東京高裁判決が出され,その内容が原告の市報に掲
載されていただけでなく,被告は,平成▲年▲月▲日付けで東京都知事か
ら地方自治法245条の6に基づく是正の勧告まで受けていたものである。
そうすると,被告は,遅くとも本件各支出がされた平成▲年▲月▲日よ
り前から,本件不接続を継続する旨の判断を是正・撤回して住基ネットに
接続することにより,本件各専決権者が本件各支出を行うことを阻止すべ
き指揮監督上の義務を負っていたものというべきである。それにもかかわ
らず,被告は,上記指揮監督上の義務を怠って漫然と本件各支出をさせた
ものであるから,上記で述べた事実関係に照らせば,被告が上記義務を怠
ったことについて,故意又は少なくとも過失があったことは明らかという
べきである。
そうすると,被告は,本件各専決権者が本件各支出を行うことを阻止す
べき指揮監督上の義務を怠ったことにより,原告が被った損害について損
害賠償責任を負うものというべきである。
ウそして,本件各支出は被告が本件不接続の継続という判断を是正・撤回
していれば不要であったものと認められるから,原告は,被告の上記違法
行為により,本件各費用相当額である39万8040円の損害を被ったも
のというべきである。
なお,原告は,被告が国立市長を退任した後に住基ネットに再接続した
際,本件委託契約に基づきバックアップしていた住民異動データを用いた
ものと推認されるが,本件委託契約は日々生じる住民異動データを順次バ
ックアップしていくために締結されたものであり,本件委託料支出がされ
た平成▲年▲月より前の時点で被告が本件不接続の継続という判断を是
正・撤回していれば,それ以降の本件委託料支出はそもそも不要であった
ものと認められるから,原告が本件委託料相当額の損害を被ったことには
何ら変わりがないというべきである。
(3)以上によれば,被告は,原告に対し,不法行為に基づき,本件郵送費等
相当額の損害賠償金39万8040円及びこれに対する不法行為後の日(本
件各支出がされた後の日)である平成21年7月1日から支払済みまで民法
所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負うものというべきであ
る。
第4結論
よって,原告の請求は理由があるからこれを認容することとし,訴訟費用の
負担について民事訴訟法61条を,仮執行の宣言について同法259条1項を,
それぞれ適用して,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第38部
裁判長裁判官定塚誠
裁判官竹林俊憲
裁判官馬場俊宏
別紙
関係法令の定め
第1地方自治法
12条
(1)8項
この法律において「自治事務」とは,地方公共団体が処理する事務のうち,
法定受託事務以外のものをいう。
(2)9項
この法律において「法定受託事務」とは,次に掲げる事務をいう。
一法律又はこれに基づく政令により都道府県,市町村又は特別区が処理す
ることとされる事務のうち,国が本来果たすべき役割に係るものであって,
国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又は
これに基づく政令に特に定めるもの(以下「第一号法定受託事務」とい
う。)
二法律又はこれに基づく政令により市町村又は特別区が処理することとさ
れる事務のうち,都道府県が本来果たすべき役割に係るものであって,都
道府県においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律
又はこれに基づく政令に特に定めるもの(・・・(略)・・・)
(3)11項
地方公共団体に関する法令の規定は,地方自治の本旨に基づき,かつ,国
と地方公共団体との適切な役割分担を踏まえたものでなければならない。
(4)12項
地方公共団体に関する法令の規定は,地方自治の本旨に基づいて,かつ,
国と地方公共団体との適切な役割分担を踏まえて,これを解釈し,及び運用
するようにしなければならない。・・・(略)・・・
(5)13項
法律又はこれに基づく政令により地方公共団体が処理することとされる事
務が自治事務である場合においては,国は,地方公共団体が地域の特性に応
じて当該事務を処理することができるよう特に配慮しなければならない。
(6)16項
地方公共団体は,法令に違反してその事務を処理してはならない。・・・
(略)・・・
213条の2
市町村は,別に法律の定めるところにより,その住民につき,住民たる地位
に関する正確な記録を常に整備しておかなければならない。
3138条の2
普通地方公共団体の執行機関は,当該普通地方公共団体の条例,予算その他
の議会の議決に基づく事務及び法令,規則その他の規程に基づく当該普通地方
公共団体の事務を,自らの判断と責任において,誠実に管理し及び執行する義
務を負う。
4245条の5
(1)2項
各大臣は,その担任する事務に関し,市町村の次の各号に掲げる事務の処
理が法令の規定に違反していると認めるとき,又は著しく適正を欠き,かつ,
明らかに公益を害していると認めるときは,当該各号に定める都道府県の執
行機関に対し,当該事務の処理について違反の是正又は改善のため必要な措
置を講ずべきことを当該市町村に求めるよう指示をすることができる。
一市町村長その他の市町村の執行機関(・・・(略)・・・)の担任する事務
(第一号法定受託事務を除く。次号及び第3号において同じ。)都道府
県知事
二,三・・・(略)・・・
(2)3項
前項の指示を受けた都道府県の執行機関は,当該市町村に対し,当該事務
の処理について違反の是正又は改善のため必要な措置を講ずべきことを求め
なければならない。
(3)5項
普通地方公共団体は,第1項,第3項又は前項の規定による求めを受けた
ときは,当該事務の処理について違反の是正又は改善のための必要な措置を
講じなければならない。
5245条の6
次の各号に掲げる都道府県の執行機関は,市町村の当該各号に定める自治事
務の処理が法令の規定に違反していると認めるとき,又は著しく適正を欠き,
かつ,明らかに公益を害していると認めるときは,当該市町村に対し,当該自
治事務の処理について違反の是正又は改善のため必要な措置を講ずべきことを
勧告することができる。
一都道府県知事市町村長その他の市町村の執行機関(・・・(略)・・・)の担
任する自治事務
二,三・・・(略)・・・
第2住民基本台帳法(以下「住基法」という。)
11条(目的)
この法律は,市町村(特別区を含む。以下同じ。)において,住民の居住関
係の公証,選挙人名簿の登録その他の住民に関する事務の処理の基礎とすると
ともに住民の住所に関する届出等の簡素化を図り,あわせて住民に関する記録
の適正な管理を図るため,住民に関する記録を正確かつ統一的に行う住民基本
台帳の制度を定め,もって住民の利便を増進するとともに,国及び地方公共団
体の行政の合理化に資することを目的とする。
22条(国及び都道府県の責務)
国及び都道府県は,市町村の住民の住所又は世帯若しくは世帯主の変更及び
これらに伴う住民の権利又は義務の異動その他の住民としての地位の変更に関
する市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)その他の市町村の執行機関
に対する届出その他の行為(・・・(略)・・・)がすべて一の行為により行われ,
かつ,住民に関する事務の処理がすべて住民基本台帳に基づいて行われるよう
に,法制上その他必要な措置を講じなければならない。
33条(市町村長等の責務)
(1)1項
市町村長は,常に,住民基本台帳を整備し,住民に関する正確な記録が行
われるように努めるとともに,住民に関する記録の管理が適正に行われるよ
うに必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(2)2項
市町村長その他の市町村の執行機関は,住民基本台帳に基づいて住民に関
する事務を管理し,又は執行するとともに,住民からの届出その他の行為に
関する事務の処理の合理化に努めなければならない。
45条(住民基本台帳の備付け)
市町村は,住民基本台帳を備え,その住民につき,第7条及び第30条の4
5の規定により記載をすべきものとされる事項を記録するものとする。
56条(住民基本台帳の作成)
(1)1項
市町村長は,個人を単位とする住民票を世帯ごとに編成して,住民基本台
帳を作成しなければならない。
(2)3項
市町村長は,政令で定めるところにより,第1項の住民票を磁気ディスク
(・・・(略)・・・)をもって調製することができる。
67条(住民票の記載事項)
住民票には,次に掲げる事項について記載(前条第3項の規定により磁気デ
ィスクをもって調製する住民票にあっては,記録。以下同じ。)をする。
一氏名
二出生の年月日
三男女の別
四世帯主についてはその旨,世帯主でない者については世帯主の氏名及び世
帯主との続柄
五戸籍の表示。・・・(略)・・・
六住民となった年月日
七住所及び一の市町村の区域内において新たに住所を変更した者については,
その住所を定めた年月日
八新たに市町村の区域内に住所を定めた者については,その住所を定めた旨
の届出の年月日(・・・(略)・・・)及び従前の住所
九選挙人名簿に登録された者については,その旨
十国民健康保険の被保険者(・・・(略)・・・)である者については,その資格
に関する事項で政令で定めるもの
十の二後期高齢者医療の被保険者(・・・(略)・・・)である者については,そ
の資格に関する事項で政令で定めるもの
十の三介護保険の被保険者(・・・(略)・・・)である者については,その資格
に関する事項で政令で定めるもの
十一国民年金の被保険者(・・・(略)・・・)である者については,その資格に
関する事項で政令で定めるもの
十一の二児童手当の支給を受けている者(・・・(略)・・・)については,その
受給資格に関する事項で政令で定めるもの
十二米穀の配給を受ける者(・・・(略)・・・)については,その米穀の配給に
関する事項で政令で定めるもの
十三住民票コード(番号,記号その他の符号であって総務省令で定めるもの
をいう。以下同じ。)
十四前各号に掲げる事項のほか,政令で定める事項
712条の5(住民基本台帳の脱漏等に関する都道府県知事の通報)
都道府県知事は,その事務を管理し,又は執行するに当たって,当該都道府
県の区域内の市町村の住民基本台帳に脱漏若しくは誤載があり,又は住民票に
誤記若しくは記載漏れがあることを知ったときは,遅滞なく,その旨を当該住
民基本台帳を備える市町村の市町村長に通報しなければならない。
830条の3(住民票コードの記載の変更請求)1項
住民基本台帳に記録されている者は,その者が記録されている住民基本台帳
を備える市町村の市町村長に対し,その者に係る住民票に記載されている住民
票コードの記載の変更を請求することができる。
930条の5(都道府県知事への通知)
(1)1項
市町村長は,住民票の記載,消除又は第7条第1号から第3号まで,第7
号及び第13号に掲げる事項(・・・(略)・・・)の全部若しくは一部について
の記載の修正を行った場合には,当該住民票の記載等に係る本人確認情報
(住民票に記載されている同条第1号から第3号まで,第7号及び第13号
に掲げる事項(・・・(略)・・・)並びに住民票の記載等に関する事項で政令で
定めるものをいう。以下同じ。)を都道府県知事に通知するものとする。
(2)2項
前項の規定による通知は,総務省令で定めるところにより,市町村長の使
用に係る電子計算機から電気通信回線を通じて都道府県知事の使用に係る電
子計算機に送信することによって行うものとする。
(3)3項
第1項の規定による通知を受けた都道府県知事は,総務省令で定めるとこ
ろにより,当該通知に係る本人確認情報を磁気ディスクに記録し,これを当
該通知の日から政令で定める期間保存しなければならない。
1030条の6(他の市町村への本人確認情報の提供)
市町村長は,他の市町村の市町村長その他の執行機関であって条例で定める
ものから条例で定める事務の処理に関し求めがあったときは,条例で定めると
ころにより,本人確認情報を提供するものとする。
1130条の7(都道府県知事の事務)
(1)3項
都道府県知事は,別表第一の上欄に掲げる国の機関又は法人から同表の下
欄に掲げる事務の処理に関し,住民の居住関係の確認のための求めがあった
ときに限り,政令で定めるところにより,保存期間に係る本人確認情報
(・・・(略)・・・)を提供するものとする。
(2)4項
都道府県知事は,次の各号のいずれかに該当する場合には,第1号又は第
3号に掲げる場合にあっては政令で定めるところにより,第2号に掲げる場
合にあっては条例で定めるところにより,当該都道府県の区域内の市町村の
市町村長その他の執行機関(以下この項及び第30条の10第1項第4号に
おいて「区域内の市町村の執行機関」という。)に対し,保存期間に係る本
人確認情報を提供するものとする。
一区域内の市町村の執行機関であって別表第二の上欄に掲げるものから同
表の下欄に掲げる事務の処理に関し求めがあったとき。
二区域内の市町村の執行機関であって条例で定めるものから条例で定める
事務の処理に関し求めがあったとき。
三当該都道府県の区域内の市町村の市町村長から住民基本台帳に関する事
務の処理に関し求めがあったとき。
(3)5項
都道府県知事は,次の各号のいずれかに該当する場合には,第1号又は第
3号に掲げる場合にあっては政令で定めるところにより,第2号に掲げる場
合にあっては条例で定めるところにより,他の都道府県の都道府県知事その
他の執行機関(以下この項及び第30条の10第1項第5号において「他の
都道府県の執行機関」という。)に対し,保存期間に係る本人確認情報を提
供するものとする。
一他の都道府県の執行機関であって別表第三の上欄に掲げるものから同表
の下欄に掲げる事務の処理に関し求めがあったとき。
二他の都道府県の執行機関であって条例で定めるものから条例で定める事
務の処理に関し求めがあったとき。
三他の都道府県の都道府県知事から第10項に規定する事務の処理に関し
求めがあったとき。
(4)6項
都道府県知事は,次の各号のいずれかに該当する場合には,第1号又は第
3号に掲げる場合にあっては政令で定めるところにより,第2号に掲げる場
合にあっては条例で定めるところにより,他の都道府県の区域内の市町村の
市町村長その他の執行機関(以下この項及び第30条の10第1項第6号に
おいて「他の都道府県の区域内の市町村の執行機関」という。)に対し,保
存期間に係る本人確認情報を提供するものとする。
一当該他の都道府県の都道府県知事を経て当該他の都道府県の区域内の市
町村の執行機関であって別表第四の上欄に掲げるものから同表の下欄に掲
げる事務の処理に関し求めがあったとき。
二当該他の都道府県の都道府県知事を経て当該他の都道府県の区域内の市
町村の執行機関であって条例で定めるものから条例で定める事務の処理に
関し求めがあったとき。
三当該他の都道府県の都道府県知事を経て当該他の都道府県の区域内の市
町村の市町村長から住民基本台帳に関する事務の処理に関し求めがあった
とき。
1230条の10(指定情報処理機関の指定等)第1項
都道府県知事は,総務大臣の指定する者(以下「指定情報処理機関」とい
う。)に,次に掲げる事務(以下「本人確認情報処理事務」という。)を行わ
せることができる。
一第30条の7第1項の規定による住民票コードの指定及びその通知
二第30条の7第2項の規定による協議及び調整
三第30条の7第3項の規定による本人確認情報の別表第一の上欄に掲げる
国の機関及び法人への提供
四第30条の7第4項の規定による本人確認情報の別表第二の上欄に掲げる
区域内の市町村の執行機関及び同項第3号に規定する当該都道府県の区域内
の市町村の市町村長への提供
五第30条の7第5項の規定による本人確認情報の別表第三の上欄に掲げる
他の都道府県の執行機関及び同項第3号に規定する他の都道府県の都道府県
知事への提供
六第30条の7第6項の規定による本人確認情報の別表第四の上欄に掲げる
他の都道府県の区域内の市町村の執行機関及び同項第3号に規定する他の都
道府県の区域内の市町村の市町村長への提供
七第37条第2項の規定による本人確認情報に関する資料の国の行政機関へ
の提供
1330条の11(指定情報処理機関への通知等)
(1)1項
委任都道府県知事は,第30条の5第1項の規定による通知に係る本人確
認情報を,指定情報処理機関に通知するものとする。
(2)2項
前項の規定による通知は,総務省令で定めるところにより,委任都道府県
知事の使用に係る電子計算機から電気通信回線を通じて指定情報処理機関の
使用に係る電子計算機に送信することによつて行うものとする。
(3)3項
第1項の規定による通知を受けた指定情報処理機関は,総務省令で定める
ところにより,当該通知に係る本人確認情報を磁気ディスクに記録し,これ
を当該通知の日から政令で定める期間保存しなければならない。
(4)4項
前条第1項の規定により指定情報処理機関が行う第30条の7第5項の規
定による本人確認情報の同項第3号に規定する他の都道府県の都道府県知事
への提供は,総務省令で定めるところにより,指定情報処理機関の使用に係
る電子計算機から電気通信回線を通じて相手方である都道府県知事の使用に
係る電子計算機に送信することによって行うものとする。ただし,特別の求
めがあったときは,この限りでない。
1430条の29(本人確認情報の安全確保)1項
都道府県知事又は指定情報処理機関が第30条の5第1項又は第30条の1
1第1項の規定による通知に係る本人確認情報の電子計算機処理等を行うに当
たっては,当該都道府県知事又は指定情報処理機関は,当該本人確認情報の漏
えい,滅失及びき損の防止その他の当該本人確認情報の適切な管理のために必
要な措置を講じなければならない。
1536条の2(住民票に記載されている事項の安全確保等)1項
市町村長は,住民基本台帳又は戸籍の附票に関する事務の処理に当たっては,
住民票又は戸籍の附票に記載されている事項の漏えい,滅失及びき損の防止そ
の他の住民票又は戸籍の附票に記載されている事項の適切な管理のために必要
な措置を講じなければならない。
第3国立市事務決裁及び専決等に関する規程(以下「専決規程」という。)
12条(用語の意義)
この規程において次に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。
(1),(2)・・・(略)・・・
(3)「専決」とは,あらかじめ認められた範囲内で常時市長に代って決裁
することをいう。
(4),(5)・・・(略)・・・
210条(部長の共通的専決事項)
部長が専決できる共通的な事項は,次のとおりとする。
(1)から(6)まで・・・(略)・・・
(7)1件30万円以上100万円未満の工事請負費を除く支出負担行為及
び1件100万円以上の支出命令に関すること。
(8)以下・・・(略)・・・
311条(課長の共通的専決事項)
課長が専決できる共通的な事項は,次のとおりとする。
(1)から(8)まで・・・(略)・・・
(9)1件30万円未満の支出負担行為及び1件100万円未満の支出命令
に関すること。
(10)以下・・・(略)・・・

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