弁護士法人ITJ法律事務所

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○ 主文
本件訴えをいずれも却下する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
○ 事実
第一 当事者の求めた裁判
一 原告ら
(一) 被告愛媛県知事が昭和四八年三月一六日付及び同年一〇月四日付でなした
別紙一記載の各土地につき、公共用財産(里道及び水路)としての各用途を廃止し
た処分は、無効であることを確認する。
(二) 被告建設大臣が昭和四九年一〇月一七日に前項掲記の愛媛県知事の処分に
対する原告らの審査請求を却下した裁決は、これを取り消す。
(三) 被告四国財務局松山財務部長が昭和四八年一〇月五日付で訴外四国電カ株
式会社に対してなした別紙一記載の各土地の売払処分は、これを取り消す。
(四) 訴訟費用は被告らの負担とする。
二 被告ら
1 本案前の裁判として、
主文と同旨。
2 本案の裁判として、
(一) 原告らの請求をいずれも棄却する。
(二) 訴訟費用は原告らの負担とする。
第二 主張
一 原告らの請求の原因
1 被告愛媛県知事関係
(一) 被告愛媛県知事は、昭和四八年三月一六日及び同年一〇月四日に別紙一記
載の各土地(里道及び水路)の用途廃止処分をした。
(二) 被告愛媛県知事の右処分は、建設省所管国有財産取扱規則三条、一七条に
違反した重大かつ明白な瑕疵があるものである。すなわち、
(1) 原告らのうち、A、B、C、D、E、F、Gは、本件里道に接して、別紙
二記載のとおり、それぞれ山林又はみかん畑を所有していて、その所有山林の管
理、育成、又はその所有するみかん畑の管理、みかんの栽培等のために、本件里道
を利用しているものであり、また、原告H、同I、同Jも本件里道に接した土地に
立木を所有していて、その管理、育成等のために、本件里道を利用しているもので
ある。更に、原告D、同C、同Fは、前記土地で栽培しているみかんに対する夏期
渇水期の給水や、消毒用薬剤の稀釈用液の取水等のため、本件水路を利用している
ものである。
(2) しかも、本件里道等は、徳川時代以来、<地名略>地区住民が、近隣の田
畑、山林の耕作、管理等のために農道、林道として利用し、又は行楽その他の用に
供する一方、<地名略>地区区長を中心として同地区住民が、これを補修、改善等
をしてきたものである。したがつて、本件里道等は、認定外道路等として国有財産
法三条二項二号の公共用財産であるとはされていても、本件里道等について<地名
略>地区住民が有する利益は、一般国道における公衆の通行の利益などとは異質の
ものであり、原告Jを除くその余の原告らは、右地区住民として、本件里道につき
慣行通行権又は入会権的通行権が、また、本件水路につき慣行利用権又は入会権的
利用権があるものである。
(3) 以上の次第で、原告らには本件里道の通行権があり、仮にしからずとする
も、法的保護に価する程度の通行上の利益を有し、また、原告Jを除くその余の原
告らには、本件水路の利用権があり、仮にしからずとするも、法的保護に価する程
度の利用の利益を有する。
(4) しかるに被告愛媛県知事は、本件里道等を訴外四国電力株式会社(以下四
国電力という)に対し、原子力発電所用地として売り渡す目的で、その用途廃止処
分をなしたものであるが、用途廃止処分をするに当たつては、前記規則三条、一七
条の趣旨に従い、現地調査又は地元民からの事情調査、公聴会等のしかるべき方法
により、本件里道等の利用の実態を調査しなければならないのに、これをなさず、
前記目的を達するために、本件里道等の前記の利用実態を故意に無視して、すでに
利用者のない里道等であるとし、又は、法規上当然要求されているとみられる調査
手続を行なえば、容易に判明すべき本件里道等の利用の実態を、右調査手続を怠る
という重大な過失によつて、利用者のない里道等であると誤認し、前記用途廃止処
分をして、もつて前記原告らの権利若しくは法益を侵害したものである。
(三) したがつて、被告愛媛県知事がした前記用途廃止処分には重大かつ明白な
瑕疵があるので右処分は無効である。よつて右処分の無効確認を求める。
2 被告建設大臣関係
(一) 被告建設大臣は、昭和四九年一〇月一七日、前記愛媛県知事がした本件里
道等の用途廃止処分に対し、原告らが行政不服審査法に基づいてした審査請求を却
下する裁決をした。
右却下裁決の理由は、本件里道等に対する原告らの通行等の利益は単なる反射的利
益であり、したがつて、原告らには前記用途廃止処分に対し不服申立をなすべき権
利はないというにある。なお、右裁決は昭和四九年一〇月二〇日原告らに通知され
た。
(二) しかしながら、前記の(二)の(1)(2)(3))のとおり、原告らは
本件里道等に対し、通行権等があると見るべきであり、被告建設大臣の右裁決の理
由には、判断を誤つた違法がある。
なお、前記規則一七条二項によれば、建設大臣は部局長(本件里道等については愛
媛県知事)から出された用途廃止申請書を、予め点検し、用途廃止事由の外、処分
方法及びその他参考となるべき事項を承認することとなつている。したがつて、被
告建設大臣において、右規則に従い、忠実に本件里道等の用途廃止申請書を点検
し、疑義を直し、あるいは自ら調査していれば、原告らが、前記用途廃止処分によ
り侵害されたと主張する権利、利益は、単なる反射的利益であるとの理由で、原告
らの不服申立の適格性を否定する判断は導出されなかつたはずであり、この点にお
いても、被告建設大臣のした前記裁決には重大な瑕疵がある。
(三) よつて、被告建設大臣がした前記裁決を取り消すことを求める。
3 被告四国財務局松山財務部長関係
(一) 被告松山財務部長は、昭和四八年一〇月五日、別紙一記載の各土地な訴外
四国電力に売り払う処分をした。
なお、原告らは、同年一一月五日、四国財務局長に対し、行政不服審査法に基づき
右処分の審査請求をしたが、同局長は昭和四九年一〇月二八日右請求を却下する裁
決をした。
(二) 被告松山財務部長のした前項の売払処分は、前記愛媛県知事がした用途廃
止処分を前提とするものであり、前記のとおり右用途廃止処分は無効と見られるの
で、ひいては、右売払処分には重大な瑕疵があるものとなる。
(三) また、右売払処分は、大蔵省訓令二号普通財産取扱規則三条、九条に違反
し、原告らの前記通行権若しくは通行の利益を無視し、四国電力の私的利益を図つ
てなされた不適正な売払処分である。
(四) よつて、右売払処分の取り消しを求める。
二 被告らの本案前の主張
1 被告愛媛県知事
(一) 行政事件訴訟法三六条所定の「法律上の利益」は当該行政処分の根拠とな
つた法規が、個別的、具体的に保護しようとする利益であることを必要とするもの
と解すべきである。
しかるところ、本件里道等は国の所有に属し、国有財産法三条二項二号所定の公共
用財産として、同法九条三項及び建設省所管国有財産取扱規則三条の規定により、
愛媛県知事が、これを道路法の適用を受けない、いわゆる認定外道路等として管理
しているものである。
(二) しかして、公衆が本件里道を通行することができるのは、愛媛県知事が道
路管理者として、本件里道を公の目的から一般交通の用に供していることの反射的
利益としてその通行の自由を享有し得るに止まり、本件里道な通行することによつ
て、その者が、これを通行する権利はもとより、法律上の利益も取得できるもので
はない。
(三) なお、原告らの本件里道使用の実態についてみると、原告らの住居はその
肩書地のとおりであり、原告らがその住居から別紙二記載の各土地へ行くために、
通常一般的な道順を選べば、本件里道を通行することはない。
もつとも、過去においては、本件里道地先の海岸へ行くために、本件里道を通行す
ることがあつたかも知れないが、右海岸は訴外四国電力が、昭和四七年三月二八
日、愛媛県知事の埋立免許を受け、工事を施行したことにより、海岸線の前面に埋
立地ができ、そのため、別紙一の番号15の旧里道部分を除いては、すでに用途廃
止処分前に海岸に通ずる里道としての効用はなくなり、海岸への通行の実態はなく
なつていた。他方、別紙一の番号15の旧里道については、その用途を廃止した昭
和四八年一〇月四日に、右里道とほぼ同一の海岸地に通ずる代替道路が新設され、
十分代替的効用を果たしている。したがつて、仮に原告らが、右海岸地に行くとし
ても右里道の用途廃止処分をしたことは何ら支障を生じない。
(四) 本件水路は、自然水の排水路であり、降雨の際には雨水が流れるが、湧水
は少ないため、右水路の流水を利用することはできず、また、右水路の流水を利用
しなければならない人家、農地等も存在しなかつた。しかも、用途廃止をした水路
の付近には、自然水の排水のために代棒水路が新設されている。したがつて、本件
水路の用途を廃止したことにより、原告らの権利、利益が侵害されることはあり得
ない。
(五) なお、原告らのうち、H、I、J、E、G、C、Dは、用途廃止をした里
道及び水路付近に土地を所有していない。
(六) 以上のとおり、原告らには、本件里道等の用途廃止処分によつて侵害され
る法律上の利益はなく、したがつて、原告らには本件無効確認訴訟によつて回復す
べき法律上の利益は存在しないから、原告らの本件訴えは不適法なものとして却下
を免れない。
2 被告建設大臣
被告建設大臣が、原告らの審査請求を却下する裁決をしたことを記載した書面は昭
和四九年一〇月二〇日に原告ら方に到達したが、原告らは、その日から約八か月を
経過した昭和五〇年七月一七日に至つて本件訴えを提起したものであるから、原告
らの本件訴えは行政事件訴訟法一四条一項所定の出訴期間を徒過したものとして却
下を免れない。
3 被告四国財務局松山財務部長
被告松山財務部長が別紙一記載の各土地を四国電力に売り払つたのは、普通財産と
しての売り払いであつて、行政処分としての性質を有するものではない。したがつ
て、原告らの本件訴えは行政処分でない行為を、行政処分として取り消すことを求
めるものであるから、不適法なものとして却下を免れない。
三 被告らの本案前の主張に対する原告らの答弁及び反論
1 被告愛媛県知事関係
(一) 被告らの本案前の主張1の(一)の事実は認める。
(二) 同(二)の主張は争う。
(三) 公共用物である道路等に対して、特定人がその利用等の具体的関係を有す
るに至つた場合には、その公用廃止処分をその特定人が争いうることは当然のこと
である。のみならず、ある財産が公共用物とされた経緯には、さまざまな理由があ
り、本件里道等についていえば、原告らが、その祖先以来、<地名略>地区の居住
民とともに、いわば総有的に利用、管理してきたものであり、これが本件里道等が
公共用物とされた所以である。したがつて、原告らの本件里道等の利用関係は、一
般の公衆の公共用物利用とは異なる実態を有するものである。
(四) 前問(三)ないし(五)の事実のうち、原告H、同J、同Iが本件里道の
付近に土地を所有していないことは認めるが、その余の事実は否認する。同(六)
は争う。
2 被告建設大臣関係
(一) 前同2のうち、原告らに被告主張のとおりの裁決の通知があつたことは請
求の原因で主張しているとおりである。その余の事実は否認する。
(二) 原告らが、被告建設大臣を相手として本訴を提起したのは、昭和五〇年一
月一八日であり、その訴えの内容が被告建設大臣のした本件里道等についての処分
を争う趣旨のものであることは、訴状の請求の趣旨の記載からも明らかである。な
お、原告らは、昭和五〇年七月一七日付(同日裁判所受理)の訴状の訂正等の申立
書により請求の趣旨を補正し、被告建設大臣がした前記裁決の取り消しを求めるこ
とを本訴請求の趣旨としたが、本件訴えは被告建設大臣が処分をなしたことを原告
らが知つた日から三か月以内である昭和五〇年一月一八日に提起されたことに変わ
りはない。
3 被告四国財務局松山財務部長関係
(一) 前同3の主張は争う。
(二) 被告松山財務部長がした前記売り払いは、被告愛媛県知事がした前記用途
廃止処分と密着した一連のものであり、用途廃止すなわち売り払いという関係にあ
るもので、単なる普通財産の売り払いとは異なるものである。また、右売り払いを
用途廃止処分とは独立のものとみても、右売り払い先の四国電力は当該土地を原子
力発電所用地として使用するために右売り払いを受けたものであるところ、原子力
発電所はまだその安全確保の技術が完全なものではなく、事故時はもちろん平常運
転時においてさえも、原子炉内で産出する放射性物質等を周辺環境等に放出し、そ
の放射線に被ばくさせることによつて、原告らの生命、身体等に重大な損傷を及ぼ
す虞れのあるものである。このような危険な施設の設置のために右売り払いはなさ
れたのであるから、右は行政事件訴訟法三条一項所定の処分性が認められるもので
ある。
四 本案前の主張についての原告らの反論に対する答弁
1 被告愛媛県知事
被告らの本案前の主張に対する原告らの答弁及び反論1の(三)の事実は否認し、
その余の主張は争う。
2 被告建設大臣
前同2の(二)のうち、本訴の提起された日、訴状の訂正等の申立書が提出された
日はいずれも認めるが、その余の事実は否認し、主張は争う。
3 被告四国財務局松山財務部長
前同3のうち、売り払いが用途廃止処分と密着した一連のものであり、用途廃止す
なわち売り払いの関係にあり、単なる普通財産の売り払いとは異なるとの主張、本
件売り払いには処分性があるとの主張はいずれも争う。その余は不知。
五 請求の原因に対する答弁及び被告らの主張
1 被告愛媛県知事
(一) 請求の原因1の(一)の事実は認める。同(二)のうち、原告Aほか六名
が別紙二記載の山林又はみかん畑等を所有しているとの事実は不知、その余の事実
は否認し、主張は争う。
同(三)の主張は争う。
(二) 本件里道は誰もが通行できる公道であつて、原告らがそこを通行してきた
からといつて、特に原告らに特定の権利が発生することはない。現に、原告らが、
本件里道をこれまで通行してきたのは、特定の権利の行使としての通行ではなく、
一般的な、公共用物の自由使用の一環としてのものであり、原告らが本件里道等の
補修、改善をしてきたとしても、それをしなければ原告らの所有土地の使用に不便
をきたす関係でこれをしたもので、このことが原告らに特定の権利を発生させるこ
とはない。
(三) 被告愛媛県知事は、昭和四八年二月二七日、訴外四国電力から本件里道の
一部である<地名略>先の里道の用途廃止申請を受けた。そこで、被告愛媛県知事
は右里道の公共性について調査、検討したところ、右里道の利用が不可欠のもので
あつた隣接の農地のすべてが、用途廃止申請人四国電力に売り渡され、その所有と
なつていること、その付近に里道に代わる町道が開設され、昭和四一年以降、その
付近の住民は町道を利用し、右里道はほとんど利用されていないことがいずれも明
らかになつた。
ついで、同年九月一八日、四国電力から右の里道を除くその余の里道等の全部につ
いて用途廃止申請及び代替道路等の寄付採納願があつたので、被告愛媛県知事はこ
れらの里道等の公共性の存否について調査、検討したところ、右里道の利用を不可
欠のものとしていたその付近一帯の農地、山林のほとんどが用途廃止申請人四国電
力に売り渡され、その所有となつており、四国電力に売り渡されていない農地等に
ついても、四国電力が代替道路を新設して寄付することにより、本件里道を通行す
る必要性がなくなつていること、また、本件水路についても、四国電力が代替道路
を新設し、それを寄付することにより、本件水路を併存させ、保持しておく必要性
がなくなつていることがいずれも明らかとなつた。
(四) 知事が用途廃止処分をなすには、適宜な方法で、建設省所管国有財産取扱
規則一七条所定の必要性の存否を認定すれば足るものである。そして、被告愛媛県
知事は前記事実を、伊方町土地改良区理事長、伊方町長及び伊方町農業委員会から
の事情聴取により知り、本件里道等の公共性がなくなつたものと判断したのであ
る。
2 被告建設大臣
(一) 前同2の(一)の事実は認める。同(二)のうち、建設省所管国有財産取
扱規則一七条二項の規定は認めるが、原告らがその主張の土地、立木を所有してい
るとの点、原告らがその所有する土地、立木等の管理等のために本件里道等を利用
しているとの点、原告らが本件里道等の補修等をしているとの点はいずれも不知。
その余の事実は否認し、
主張は争う。
(二) 原告らが本件里道を利用すべき権利又は法律上の利益を有しないことは、
被告愛媛県知事の主張(1の(二))掲記のとおりである。したがつて原告らの審
査請求を却下する裁決をしたことに何ら誤りはない。
3 被告四国財務局松山財務部長
前同3の(一)の事実は認めるが、本件売り払いが行政処分であることは争う。同
(二)(三)の事実は否認し、主張は争う。
六 被告らの主張に対する原告らの答弁
1 被告愛媛県知事関係
(一) 請求の原因に対する答弁及び被告らの主張の(二)は争う。
(二) 同(三)のうち、被告愛媛県知事が四国電力から本件里道等の用途廃止申
請、代替道路等の寄付採納願を受けたとの事実は不知。その余の事実は否認する。
(三) 同(四)のうち、伊方町土地改良区理事長から事情聴取したとの点は否認
する。その余の事実は不知。
2 被告建設大臣関係
前同2の(二)の主張は争う。
第三 証拠(省略)
○ 理由
一 被告愛媛県知事に対する訴えについて
1 用途廃止前の本件里道等は、国有財産法三条二項二号所定の公共用財産である
こと、建設省所管国有財産取扱規則三条により被告愛媛県知事が認定外道路等とし
て管理していたことについて、原告らと被告愛媛県知事との間では争いがない。
しかして、一般に公共用物は、その管理者がこれを公共の用に供していることか
ら、一般公衆は、これを利用する自由を享有するが、一般公衆はその利用によつて
特定の権利又は法律上の利益を有するに至るものではないものと解される。もつと
も特定人の公共用物の利用が、特定の権利又は法律上の利益に基づくものであるこ
とを認めるべき特別な事情のある場合は、右と別異に解することも許されるものと
考えられる。そこで、次に原告らについて本件里道について特別な事情が存在する
かについて判断するに、成立に争いのない乙第四号証、証人Kの証言、原告本人
F、同B、同Dの各尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、Jを除く原告らは、い
ずれも伊方町九町地区の住民であり、本件里道は、同地区の住民らが、農林業、漁
業、又は行楽の用等に使用してきたこと、なお、原告Dは別紙二掲記の土地を所有
していて、そこに植栽しているみかん等の栽培のために本件里道の一部を利用して
年間五、六回位水運びをしていたこと、本件里道は、古くから右地区住民らにおい
て補修、改良等の作業がなされていたことが認められるが、これらの事実をもつて
してはまだ前記特別な事情があると認めることはできない。
なお、原告らは本件里道に接して土地又は立木を所有しているので、本件里道を利
用する必要があるとして、請求の原因1の(二)の(1)のとおり主張するけれど
も、前顕乙第四号証、成立に争いのない同第二三な4いし第五一号証、原告A名下
の印影が同原告の印章によるものであることについて当事者間に争いがないから同
原告作成名義部分は真正に成立したものと推認され、その余の部分については弁論
の全趣旨により真正に成立したものと認める同第二一号証、原告F名下の印影が同
原告の印章によるものであることについては当事者間に争いがないから、同原告作
成名義部分は真正に成立したものと推認され、その余の部分については弁論の全趣
旨により真正に成立したものと認める同第二一号証、原告B名下の印影が同原告の
印章によるものであることについては当事者間に争いがないから同原告作成名義部
分は真正に成立したものと推認され、その余の部分については弁論の全趣旨により
真正に成立したものと認める同第二一号証、原告本人Jの尋問の結果によりいずれ
も真正に成立したものと認める甲第二ないし第四号証、証人Kの証言、原告本人J
の尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すれば、原告Aは昭和四五年四月一五日にそ
の所有していた別紙二掲記の土地を四国電力に売り渡したこと、原告Fは昭和四四
年七月七日、原告Bは同月一四日に、それぞれその所有していた別紙二掲記の土地
を、四国電力に対し、同電力が地質等諸調査の結果により発電所用地として適地で
あることを確認することを停止条件として売り渡す合意をしたこと、西国電力は遅
くとも昭和四七年三月には、地質等諸調査の結果により右土地が発電所用地として
適地であることを確認したこと、原告Aは、原告Jとの間で、昭和四八年一〇月一
四日に別紙二記載の原告A所有の土地に生育していた立木を、原告Jに売り渡す合
意をしたこと、しかし、右立木は四国電力の申請に基づく仮処分決定の執行により
伐採、収去されていることがいずれも認められる。原告本人F、同Bの各尋問の結
果によるも、右認定を左右するに足らず、他に右認定を左右すべき証拠はない。な
お、前顕乙第四号証及び証人Kの証言及び弁論の全趣旨によれば、原告C、同E、
同Gも本件里道の付近に別紙二掲記の土地を所有していることが認められるが、こ
れらの原告がその所有する土地のために本件里道を利用していたことを認めるに足
る証拠はない。また、原告H、同Iが本件里道に接した土地で立木を所有している
ことを認めるに足る証拠はない。
そうだとすると、原告らにおいては本件里道を利用する必要がある土地、立木等を
所有しているとはいえないものである。したがつて、前記原告らの主張は、前記原
告らには本件里道の利用について特定の権利等を認めるべき特別の事情がないとし
た判断を左右するものではない。
2 証人Kの証言及び原告本人Fの尋問の結果によれば本件水路付近の田畑の耕作
者が、本件水路の流水を利用していたこと、伊方町九町地区の住民が本件水路の補
修等をしていたことがいずれも認められるが、このことから、原告らが本件水路に
ついて特定の権利又は法律上保護すべき利益を取得していたものと認めることはで
きない。なお、原告D、同C、同Fが本件水路を利用していたことを認めるに足る
証拠はない。
3 以上のとおりとすれば、原名らは、本件里道等の用途廃止処分の無効確認を求
めるために必要な行政事件訴訟法三六条所定の法律上の利益を有しないものといわ
ざるを得ない。
二 被告建設大臣に対する訴えについて
被告建設大臣のした裁決が昭和四九年一〇月二〇日に原告らに通知されたこと、原
告らが、被告建設大臣を相手として本訴を提起したのは、昭和五〇年一月一八日で
あること、原告らが、同年七月一七日訴状の訂正等の申立書を裁判所に提出したこ
とについてはいずれも当事者間に争いがない。ところで、右訴状における請求の趣
旨は「被告建設大臣が昭和四八年一〇月四日付でもつてなした国有里道(本件里
道)用途廃止処分は無効であることを確認する」というものであること、前記訴状
の訂正等の申立書によつて、請求の趣旨はこの判決の事実の第一の一の(二)の趣
旨に変更されたことは、いずれも本件記録上明らかである。そして、右新旧の各請
求の趣旨を比較すれば、原告らは、前記訴状の訂正等の申立書によつて訴えの変更
をなしたものと認められるが、右新旧の各請求はいずれも本件里道について原告ら
の権利、利益が侵害されたとして、被告建設大臣の処分を争つているものであるこ
とは前記各請求の趣旨及び本件記録上明らかなその各請求の原因に照らし明らかで
あるから、新旧各請求の間には密接な関連があり、かつ、その争点である処分の違
法性についても実質上共通するところがある。したがつて、訴えの変更による新訴
は旧訴提起の時に提起されたものと認められるから、原告らの訴えの出訴期間の徒
過をいう被告建設大臣の主張は理由がない。
しかしながら、前記「被告愛媛県知事に対する訴えについて」の項で認定、判断し
たとおり、原告らは、いずれも本件里道等の用途廃止処分を争う法律上の利益を有
しないものであるから、延いては、右処分に対する行政不服審査法所定の異議申立
に対する被告建設大臣の裁決を争う法律上の利益をも有していないものと認められ
る。
したがつて、原告らの被告建設大臣に対する訴えは、行政事件訴訟法九条所定の法
律上の利益を有しないものによる訴えとして、却下を免れない。
三 被告四国財務局松山財務部長に対する訴えについて
被告松山財務部長が昭和四八年一〇月五日に別紙一記載の土地を四国電力に売り払
つたことについては当事者間に争いがない。しかし成立に争いがない乙第五六、五
七号証によれば、右売り払いは、普通財産の売り払いであつたことが認められるか
ら、右売り払いは私法上の行為であると見られる。なお、右売り払いは、愛媛県知
事のした用途廃止処分と密着した日になされたことは弁論の全趣旨に照らし明らか
であるが、このことは右認定を左右するものでなく、他に右認定を左右すべき証拠
はない。また、原告ら主張の如く、右売り払いが原子力発電所の建設用地に供する
ためであつても、右判断を左右するものではない。
したがつて、原告らの被告四国財務局松山財務部長に対する本件訴えは、行政処分
でない行為を行政処分として提訴した不適法なものである。
四 むすび
よつて、原告らの訴えは、いずれも不適法なものとみられるので、これを却下し、
訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九三条一項本文を適用し、主文のとお
り判決する。
(裁判官 柏木賢吉 金子 與 岡部信也)
(別紙一、二、省略)

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独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
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