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主文
被告人を懲役年に，被告人を懲役年に処する。A13B8
被告人らに対し，未決勾留日数中各日を，それぞれその刑に算入する。150
理由
(犯罪事実)
第被告人両名は，平成年月以降，障害年金及び児童手当以外に収入がな1183
い世帯として市から生活保護法に基づく生活保護開始決定を受け，生活扶助費C
等(生活扶助費，住宅扶助費，教育扶助費，医療扶助費，一時扶助費及び冬季薪炭
費をいう。)及び通院移送費を受給していたものであるが，実際には，平成年18
月については被告人の，その後は被告人両名の通院移送費として，被告人ら10A
が市内の病院に通院する際にその移送に当たっていた有限会社に支払われたDE
金銭の一部を同会社の従業員らを通じて受け取っていたため，被告人らの世帯には，
平成年月以降，別紙収入表の「収入額」記載のとおり，毎月万円ないし1810240
万円(合計万円)の収入があった。しかし，被告人両名は，これを秘して9178478
市から生活扶助費等及び通院移送費名下に金員を詐取しようと企てた。C
被告人両名は，共謀の上，生活保護を受けている者として，収入の変動があ1
った場合には同市福祉事務所長等にすみやかに収入の届出をなすべき義務があるの
1に，前記のような収入があった旨を同市福祉事務所長等に届け出ず，別紙一覧表
の「支給月」欄記載のか月分の生活扶助費等につき，同市福祉事務所職員らを13
して被告人両名の世帯に対する生活扶助費等の支出命令書等を作成させて同市会計
課長ほか名に提出させ，同人らをして，被告人らの世帯の収入に変動がないF2
旨誤信させて前記支出を決定させ，よって別紙一覧表の「振込入金日」欄記載の1
とおり，平成年月日から平成年月日までの間，同課事務担当者ら1811119111
をして，被告人両名の世帯に対する生活扶助費等名下に札幌市区町条丁目abcd
番号所在の株式会社銀行支店に開設された被告人名義の普通預金口座efGHA
に，現金合計万円を振込入金等させ，人を欺いて財物を交付させた。3885835
被告人両名は，別紙一覧表の全部につき両名共謀の上，真実は前記のとお22
り収入を得ていたのに市福祉事務所長等に届け出ずにこれを秘して，かつ，同C
表番号ないしについては，更に被告人両名の移送を行うことにより同市か73107
ら通院移送費の支払を受けていた有限会社の実質的経営者である及び同社従業EI
員とも共謀の上，通院移送費請求書記載のとおりに同表「被移送者」欄記載の被J
告人両名を移送した事実がないのにあるかのようにも装った上，同表「請求日」欄
記載のとおり，平成年月日ころから平成年月日ころまでの間，18103019119
前後回にわたり，前記をして，市内から前記市福祉事務所に請求書及び107JDC
医療扶助通院移送費支給申請書を郵送等により提出させて通院移送費の支給を求め，
いずれも同市福祉事務所職員らをして被告人両名の世帯に対する通院移送費の支出
命令書等を作成させて同市会計課長らに提出させ，それぞれ同表「支出決定F
者」欄記載の同人ほか名をして，被告人らの世帯の収入に変動がなく，かつ，同2
表番号ないし記載の事実については実際に請求書どおりの移送が行われた73107
旨誤信させて，前記支出を決定させ，よって，同表「振込入金日」欄記載のとおり，
平成年月日から平成年月日までの間，前後回にわたり，同課1811619111659
事務担当者らをして，被告人両名の世帯に対する通院移送費名下に前記が管理すI
る北海道石狩市条丁目番地所在の株式会社銀行支店に開設された名ghijKLM
義の普通預金口座に，合計億万円を振込入金させ，もってそれぞれ人を欺い2215
て財物を交付させた。
第被告人は，法定の除外事由がないのに，平成年月日ころ，札幌2A191118
市区条丁目番地号室において，覚せい剤であるフェニルメチルアミノklmnop
プロパンの塩類若干量を含有する水溶液を自己の身体に注射し，もって覚せい剤を
使用した。
第被告人は，法定の除外事由がないのに，平成年月日ころ，前記3B191118
号室において，覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパンの塩類若干量を含p
有する水溶液を自己の身体に注射し，もって覚せい剤を使用した。
(法令の適用)
被告人両名についてそれぞれ以下のとおり法令を適用する。
罰条
判示第のの所為11
包括して刑法条，条項602461
判示第のの各所為12
別紙一覧表の番号ごとにそれぞれ刑法条，条項2602461
判示第の所為(被告人のみ)2A
覚せい剤取締法条の第項号，条4131119
判示第の所為(被告人のみ)3B
覚せい剤取締法条の第項号，条4131119
科刑上一罪の処理
判示第のの別紙一覧表のうち，複数回分の通院交通費の請求について一個122
の支出命令及び支給がなされた別紙罪数一覧表「別紙一覧表番号欄記載の番号」2
欄記載のものにつき
刑法条項前段，条(別紙罪数一覧表の番号欄１ないしごとにそれぞれ一5411048
罪として同表の「犯情の重いもの」欄記載の番号の罪の刑で処断)
併合罪加重
刑法条前段，条本文，条(犯情の最も重い判示第のの別紙罪数一45471012
覧表番号の罪の刑に法定の加重)47
未決勾留日数の算入
刑法条21
(量刑の理由)
被告人らは，市内に在住し，生活保護を受けていた者であるが，その生活保1C
護給付の一部として，被告人らが自宅から市内の病院へ通院する際の費用(通院D
移送費)が被告人らの運送に当たる介護タクシー会社に支払われていた。ところが，
被告人らは，同会社に支払われた通院移送費の一部に当たる金銭を同会社からもら
っていた(環流金)ため，被告人らの世帯では平成年月以降のか月で合計181013
万円に達する多額の収入があった。にもかかわらず，被告人らは，共謀の上，8478
収入のあったことを届け出ずに，市からか月分の生活扶助費等合計万C13388
円を詐取し(判示第の)，また，収入があったことを届け出ずにこれを秘し583511
て通院移送費を請求するとともに，その一部については前記介護タクシー会社の者
とも共謀して，実際には被告人らが市内に借りたマンションやホテルから通院D
したのに，あたかも市内の被告人両名方から市内の病院までという正規のルCD
C2ートを往復したかのようにも装って(架空移送)，市から通院移送費として合計
億万円を騙し取った(判示第の)。さらに，被告人両名は，それぞれ覚せい21512
剤を使用した(判示第，第)。23
被告人らは年以上にわたって毎月生活扶助費等を不正受給し続けたり，多数21
回にわたって通院移送費の不正請求を繰り返していたものであって，本件詐欺は常
習的な犯行である。被告人と介護タクシー会社との間で作り上げられた通院移A
送費の環流システムは第三者には容易に把握し難いものであっただけでなく，架空
移送分に係る通院移送費詐欺の犯行では，介護タクシー会社の者において運行表に
虚偽の行程を記入してその体裁を整えるなどして，犯行の発覚を免れるための周到
な手段を講じていたもので，本件詐欺の犯行手口は巧妙なものである。
被害額は，億円余りにのぼる。平成年・年度の市の生活保護費予算は21819C
億円余りであるから，本件は，一地方都市の生活保護予算のかなりの部分を食12
い物にした，未曾有の巨額公金詐欺事案といえる。被告人らは，一切被害弁償をし
ておらず，被告人は被害弁償したいとは述べているもののその見込みは全くたA
っていない。
また，このような犯行は，国民の生活保護制度の在り方に対する信頼を大きく
揺るがせたものであり，その社会的影響の大きさも看過することはできない。
なお，弁護人は，市の不適切な対応によって被害が拡大したということを被告人
らに有利な事情として考慮すべきであると主張するところ，確かに，市生活保護C
費詐欺事件検証第三者委員会報告書によれば，被告人両名に対する通院移送費の支
給の必要性について，もっと調査を尽くし，慎重に判断すべきであったと指摘され
ているが，市の対応に不適切な点があったとしても，一般市民はさておき，それに
つけこんで不正な利益をむさぼっていた被告人らに市の対応の是非を論ずる資格な
どないというべきであるから，弁護人の主張は採用することができない。
31A1781()被告人は，平成年月ころ，介護タクシー会社の者に通院移送費の
割を自己に支払うよう要求し，その後平成年月下旬ころから回の通院移送1871
のたびに万円を要求し，本件犯行に至るころには，市から市まで往復した10CD
場合には万円を受領し，さらに実際には市の自宅から市の病院までの通院10CD
移送がなかった場合にも通院したように装うように同会社の者に要求し，その際の
通院移送費の自己に対する支払いは折半を求め，かつ万円未満の端数は切り上げ1
て自己に渡すように求めるなどし，市から同会社に支払われる通院移送費を環流C
させるシステムを作り上げるとともに，被告人にも介護タクシーを利用するよB
うに仕向けたものであって，本件詐欺の首謀者である。被告人は，被告人のAB
通院移送費分に係る環流金の一部を同被告人に渡していたほかは，環流金の大部分
を自分のものにしていたと認められ，前記被告人及びの世帯の収入のうちのAB
大部分を利得し，次々と自動車を購入したり，女性との交際費や飲食店での飲食代
等の遊興費にあてるなどして贅沢三昧の生活を送っていたものであり，結局のとこ
ろ，遊興費等欲しさから詐欺の犯行に及んだもので，動機に酌量の余地は全くない。
()また，被告人は，懲役刑に処せられて服役した前科が犯あるほか，平2A2
成年月に覚せい剤使用の罪により懲役年月，執行猶予年の判決を受け157164
たにもかかわらず，その執行猶予期間中に本件詐欺の犯行に及んだものである上，
その執行猶予期間が経過してから約か月で，またしても判示第の覚せい剤使用42
の犯行に及んでいることからすると，その規範意識は甚だしく鈍麻しているといえ
る。
()被告人の犯行動機も，自らの生活費，遊興費等にあてたいという利欲的41B
なもので酌量の余地はない。被告人は，被告人から介護タクシーを利用すれBA
ば金をもらえると聞くや，自ら運転する車での通院も可能であったにもかかわらず，
通院移送費の支払を受けるため介護タクシーを利用するようになり，被告人かA
ら，自己の通院分に係る環流金の一部を受け取っていた。その金額は，少なくとも
平成年月以降はか月につき万円前後という巨額なものになっていた。1931150
このように，被告人は，通院すれば，通院移送費の一部が自分にも環流されるB
ことを知りながら，介護タクシーによる通院を続け，多額の環流金を受け取り，ま
た，そのような収入を秘して生活扶助費等を不正にもらい続けていたものであって，
判示第の犯行で被告人の果たした役割も大きい。1B
()また，被告人には覚せい剤使用の罪による前科があり，その執行猶予期間2B
が経過してから年も経たないうちに判示第の覚せい剤使用の犯行に及んでおり，23
覚せい剤に対する親和性が抜け切れていないものといえる。
以上の次第で，被告人両名の刑責はいずれも非常に重く，特に本件詐欺の犯行5
の首謀者である被告人の刑責は，被告人のそれと対比しても際だって重いとAB
いうべきである。
もっとも，被告人については，公判廷で反省の弁を述べていること，身体障6A
害級であるなどの事情が存在する。1
また，被告人も反省の弁を述べている上，同被告人については，判示第の7B1
犯行の首謀者といえないばかりか，その犯行による実際の利得も被告人のそれA
と比べるとかなり少ない。
そこで，これら一切の事情を総合的に考慮すると，被告人両名にはそれぞれ主8
文の刑を科するのが相当である。
よって，主文のとおり判決する。9
(求刑被告人につき懲役年，被告人につき懲役年)A15B10
(検察官小西威夫，私選弁護人多田絵理子【主任，被告人両名】，私選弁護人野田
信彦【被告人両名】各出席)
平成年月日2071
札幌地方裁判所刑事第部2
裁判長裁判官井上豊
裁判官中川綾子
裁判官田中結花
各別紙省略

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