弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人大貫大八の上告理由一点について。
 論旨は、本件においてa市選挙管理委員会がポスターに検印した違法行為は、自
由民主党公認の八木沢Cの当選を得しむる目的で故意に検印したものと推定でき、
選挙の自由公正を害するものであるから、選挙の結果に異動を及ぼす虞がある場合
に該当すると主張する。
 しかし、本件の場合、委員会がポスターに検印したことが違法であることは原判
示のとおりであるが、上告人が原審においてポスター検印の違法行為が八木沢候補
の当選の便宜を図る目的で故意に為されたものと主張した形跡は認められない、の
みならず原審は、本件ポスターが掲示されたのは、その枚数を最大限に見ても一四
〇枚、掲示された時間は、選挙の前日午前〇時三〇分頃から一時間三〇分ないしは
二時間三〇分位で、この時間をはるかに超えたと認められるのは一枚だけであり、
又その文言は「市長に八木沢(又はやぎさわ、ヤギサワ)を自民党a支部」とある
に過ぎないこと、本件選挙における候補者二人は旧a町民にはよく知られておつて、
その立候補の事実並に八木沢Cが自由民主党に属することは本件ポスターの掲示さ
れた選挙の前日には、a市民には既にあまねく知られていたものと認められること、
及び右両名の得票が八木沢C一〇、三〇八票D九、一〇二票でその差は一、二〇六
票であつたこと等諸般の事情を綜合して、本件ポスターの掲示がなされたがため選
挙人が投票意思を決定する上において多大の影響を受けたものとは到底認めること
ができず、即ちかかるポスターの掲示がなかつたならば二候補者の当落について現
実に生じたところと異つた結果を生じたであろうとの可能性があつたものとはいい
得ないと判断し、そして本件における違反ポスターに対する検印並びにこれが掲示
の所為が本件選挙の結果に異動を及ぼす虞があるものと認めることができないと判
示した原判決は正当であつて、所論の違法はない。
 同二点について。
 論旨(1)は原判決は検印の違法につき選挙管理が公正に行われず選挙の自由公
正が害せられたかどうかの判断が為されていないと主張するが、一点に説明したと
おり、原審は諸般の事情を考察して、本件検印の違法は選挙の結果に異動を及ぼす
虞れがないものと判断しているのであるから、右の違法があつても選挙の自由公正
の原則が著しく害されたものと認めなかつたことも自ら明かである。論旨引用の判
例は本件に適切でない。論旨(2)は違反ポスターの影響力の重大なことを主張す
るが、原判決も影響力を無視しているわけでなくたゞ本件の場合、右掲示の時間も
短かくその他諸般の事情を考察して、結果に影響があつたものと認められないとし
たのであつて、その判断は正当である。論旨は理由がない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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