弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中「当審の未決勾留日数のうち八〇日を原判決の本刑に算入する。」
との部分を破棄する。
     原審における未決勾留日数中四二日を本刑に算入する。
     その余の部分に対する本件上告を棄却する。
         理    由
 検察官の上告趣意について
 記録によれば、被告人は、本件公訴事実中の常習累犯窃盗(第一審判決判示第一)
の事実について起訴前である昭和四九年八月二一日勾留状の執行を受け、その後第
一、二審を通じ引き続き勾留を継続されていたものであるが、その間、同年一一月
二八日第一審判決の宣告を受け、これに対し同年一二月九日控訴を申し立てたとこ
ろ、原裁判所は、昭和五〇年四月三日右控訴を棄却するとともに、「当審の未決勾
留日数のうち八〇日を原判決の本刑に算入する。」旨の判決を言い渡したことが認
められる。他方、被告人は、昭和四九年四月二七日八丈島簡易裁判所において道路
交通法違反罪により罰金三万五〇〇〇円に処せられ、同裁判は同年五月一四日確定
し、同年五月一三日同裁判所において別に犯した道路交通法違反罪により罰金三万
円に処せられ、同裁判は同年六月一九日確定し、更に同年九月一〇日東京簡易裁判
所において傷害罪により罰金五万円に処せられ、同裁判は同月二五日確定し、以上
の各罰金刑の換刑処分としての労役場留置の執行が本件勾留中である昭和四九年一
〇月二八日から同五〇年二月一九日に至る間引き続き行われたことも、本件記録上
明らかなところである。
 ところで、右のように未決勾留と競合して罰金刑の換刑処分たる労役場留置の執
行が行われた場合には、その重複する部分の未決勾留日数を本刑に算入することが
違法であることは、論旨引用の当裁判所昭和二九年(あ)第三八九号同三二年一二
月二五日大法廷判決・刑集一一巻一四号三三七七頁の趣旨及び昭和四六年(あ)第
二〇一〇号同四七年四月一三日第一小法廷判決・裁判集刑事一八四号一一七頁並び
に昭和四九年(あ)第一三三九号同年一一月二九日第三小法廷判決により明らかな
ところであるから、原審における未決勾留日数のうち被告人の本刑に算入すること
の許される日数は、前記労役場留置の執行が終了した日の翌日である昭和五〇年二
月二〇日から原判決言渡の日の前日である同年四月二日までの四二日にすぎない。
しかるに、原判決は、これを超えて原審における未決勾留日数八〇日を第一審の刑
に算入する旨言い渡したものであるから、前記判例に違反したものであり、上告論
旨は理由があるといわなければならない。
 よつて、刑訴法四〇五条二号、四一〇条一項本文、四一三条但書により、原判決
のうち被告人に対し原審における未決勾留日数中八〇日を第一審の刑に算入した部
分を破棄し、刑法二一条を適用して原審における未決勾留日数中四二日を本刑に算
入することとする。原判決のその余の部分については、上告趣意としてなんら主張
がなく、したがつてその理由がないことに帰するから、刑訴法四一四条、三九六条
によりこれを棄却し、当審における訴訟費用については、同法一八一条一項但書に
より被告人に負担させないこととし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決
する。
 検察官豊島英次郎 公判出席
  昭和五〇年九月一七日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    藤   林   益   三
            裁判官    下   田   武   三
            裁判官    岸       盛   一
            裁判官    岸   上   康   夫

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